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22 『金剛の聖女』と呼ばれている聖騎士団の寮母ですが『飯炊き女』をやっています

「シチューはまだお代わりがありますからねー!」


「はーい、俺おかわり! あとパンも!」


「俺も!」


 私が調理場からダイニングに向って叫ぶと、次々と空の器を掲げて騎士が並ぶ。


 動きやすいひざ下丈のスカートに平靴、エプロンを付けて私は、聖騎士団の『飯炊き女』をやっている。


 グランドルム国王に最初にこの話をした時には目を白黒させていたけれど、私にとってはこれが日常で、やりたい事だ。


 さすがに洗濯なんかは聖域の侍女さんたちにお願いしているが、3食ご飯を作って、私たちを守ってくれる騎士さんたちに提供するのは楽しい事だった。充実してもいた。


 聖騎士団には、元はローリニア王国から抜けてきた騎士さんだけだったが、志願兵も集まり、結局何十人という単位になり、中には小食の魔法兵さんもいる。代わりに、魔法兵さんは甘いものを好むのでお菓子作りにも励んだ。


 材料は王国から支給されるいい素材ばかりだし、離宮にこの食堂を作ってもらえたので、私は大満足である。


「私も、おかわりを」


「ガウェイン様」


 最近、ガウェイン様の気持ちはもうとっくに知っていたけれど、私の方もその気持ちに当てられてつい意識してしまう。


 後ろに行列ができているというのに、私はぼんやり彼の綺麗な顔を眺めてしまうし、彼も私をあまりに愛おしそうに見て来るので、少しだけ見つめ合ってしまうのだ。


「飯の後にしろ!」


「おい、並んでるんだぞ!」


 騎士さんたちは聖域に来ても相変わらずで、そんな野次に理性を取り戻してお代わりをよそって椀を返す。パンも渡して、次々とそうして並んだ騎士さんたちを捌いていく。


 最近は大鍋1つではとても足りなくて、大鍋2つにメインを作るようにしている。この国の料理を教えてもらう事もあったし、私がお菓子作りをしていると、聖女の人が何人か一緒にお菓子作りをしたがった。


 聖域も最初は退屈な場所だと思ったけれど、自分が自分らしく過ごしていい、と言われてその通りにしたら、それはそれで周りにも……いいか悪いかはおいて置くとして、影響を与えているようだ。


 紅玉の聖人様と蒼玉の聖女様が、最近手作りお菓子でいい感じだと聞いて、ちょっと嬉しくなったり。近く、新しい住人がこの聖域に増えるかもしれない。


 訓練場も作ってもらったけれど、聖域の守護を任されている守護騎士団の名目で、大掛かりな魔物を狩りにいったりという仕事もしている。怪我をしないかハラハラして見送るのだが、聖人や聖女の作る料理には相当強力な加護があるのか、今の所大きな怪我を負って帰って来た人はいない。


 食事の時間が終わり、散り散りになった騎士さんたちを見送って皿洗いをしていると、今日は非番のガウェイン様が袖をまくって黙って手伝ってくれる。これが当たり前になってきたので、後にしろ、という野次が飛んだのだ。


「あの……ルーシー様」


「はい、ガウェイン様」


「……夕飯は、好物が食べたいです」


 お互いに好きあっているものの、私たちは敢えて、まだ、関係を曖昧にしていた。何もかもがめぐるましく変わり過ぎたから、お互いにまだ、と何も言わずに分かっていた。


 気持ちが通っているから、何も焦る必要は無いという気持ちもあるけれど。


「ふふ、わかりました。王宮にお願いしておきます。他の方には内緒ですよ」


「楽しみにしています」


 こうして、『金剛の聖女』である私は聖域で聖騎士団の『飯炊き女』をしています。


 ……金剛石と橄欖石の子供だと、どっちの石の子が生まれるのかな? 今度、仲良くなった聖女の方に聞いてみよう。

最後までありがとうございました!

また新作アップも、連載もしていきますので、お気に入り登録してくださっていると通知が行きやすいかと思います!

これからもよろしくお願いします!

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