story19.償いをしたい
story19.償いをしたい
:登場人物:
・アルジェ・ペルギール
・ローイズ・ブルッシェル
・七奈月 鏡花
・マリン・フィルミーオ
・キャエル・ビュランティス
ーー夜、路地裏にて
「人影〜…人影〜…」
「それらしい気配はないわね。」
「奥に進んだ方が早いんじゃないんですか…?」
「確かに」
「それもそうね」
「「じゃぁルジェ収穫期待してるね」」
「は?俺が行けって事かよ。」
「だって私達か弱い乙女だからぁ〜…」
「イズと鏡花は仕方がないが、お前にか弱いなんて似合わねぇからな。」
「あら、乙女なのは認めてくれるの?」
「今のところはな。」
「ねぇ話戻すけど気配感じないし、姿が今の段階で見えないんじゃやっぱり出来上がったほら話?」
「入って見てから決めましょ。」
「それだったら被害あってたのはなんなんだよ…それも噂流す為の…か?」
「それだったら損害賠償はきっちり支払ってもらわないと困るわ。」
4人で路地裏に入って行くと微かに誰かの喋り声が聞こえる。
1番多く聞こえる声が男性らしき声
「何かしら…」
音を立てず静かに声のする方に向かい覗いてみる。
気付かれないよう小声で喋り出すローイズ
「!…アレって…噂になってる少女…?10〜12ぐらいの子かな」
「…見た感じそうね…本当の噂だったみたいね。でも…あの子すごく怯えてるわ。あの目の前にいる男のせいかしら…」
『おいガキ!!なんで昨日は行かなかった?!行け言っただろうが!あ゛?!』
『っ…!』
『も、もう良いじゃろ!ワシらは悪どい事したくない!』
『鏡のくせに人間様に逆らうってのか?良い度胸してんな!人間様に逆らった罰だ。お前を割ってやるよ!』
そう言うと男は鏡を取り上げ地面に鏡を掴み地面に落として思いっきり踏み鏡を壊した
『!…』
少女は急いで近寄り鏡のガラスの破片を集めようと一欠片一欠片集めていく
『鏡ごときに必死になってwこれだから失声症のガキはw「鏡が私のお友達なの〜」ってか?ww』
「なんなの……双子ちゃんの時と同じような男…!腹立つ…」
「少女自身の行動じゃなく…脅されてたのね…多分鏡に吸い込まれたって言うのは違う鏡を使ってた感じ…」
「それより…どうするんだよ。助けるにもここは狭いからな?」
「ふふふ……しばき倒してあげなければいけないわね」
悪い笑顔をしてそう言うマリンに対してアルジェは本当に小さい声で「コイツ怖…」と言うのであった…
「危ないかもしれないから鏡と少女連れて3人は出ててね♡」
「あ…う…うん…程々にしないとダメだよ…?」
そして路地裏から出た3人。
「大丈夫かな?」と心配したローイズの後に言葉に表せない程苦痛に満ちてそうな男の大きな叫び声が聞こえた。
「手加減してないな…」
「痛そう…」
男に軽く同情している2人の隣で少女が一生懸命鏡を治そうとしているのをローイズが気付きふと聞いてしまう。
「その鏡…大事?」
そう聞いた瞬間少女はペンと紙を出して返事を書き始め書いた紙を見せる
“私の親代わりで唯一無二の友達なのとっても大事なの”
「…修復魔法してあげれるけど…お姉ちゃんが手出したらダメかな?」
「!」
ローイズの出した「修復魔法」の言葉を聞きパァーっと顔が明るくなり何回も頷く少女を見てローイズは微笑んで修復魔法をかける。
「はい、これで大丈夫だと思うな。」
「イズ、喋れないんじゃこれからまた同じ男に絡まれても言葉で助けとか呼べないだろ?可能ならしてみたらどうだ。」
「あ、そうだよね。ちょっとやれる事やってみるけど良いかな。多分鏡が喋れるまでに修復されるのはもう少し時間かかるから」
少女は少しは間が空いたものの頷いてくれ、ローイズは魔法で治るか試してみる。
「……どうかな…私…人の声出す為に治すなんてした事ないから…自信ないし声に影響ないかもしれない…逆に悪い影響が出て…失明とか起きそうで…怖いんだけども…」
「試しに喋ってみてください。「あ」って出せますか?」
「……ぁ…あ」
「「あ」は出そうですね。じゃぁ…ご自分のお名前言えますか?」
「…キャエル…キャエル・ビュランティス…って…言います。」
「うっ…言いにくいかもしれない…」
「あはは……キャエルちゃんですね。声…出せたお気持ちはいかがですか?」
「嬉しいです…!私…話じゃ…赤ちゃんの時に両親なくして…小さいながらそのショックからか、声出なくなってしまったので…」
「良かった。初めての挑戦で上手くいったなんて私凄いかも」
「ハイハイ、スゴイスゴイ」
「棒読みなんだけど」
「そう言えばマリンさんは…」
「しばらく時間かかると思うから、先にマリンの家に戻ろう。」
「そうだね。キャエルちゃんも!」
「は、はい…!」
ーーフィルミーオ家大広間
3人は先に戻り本人から先程はどういう状況だったのか、どうしてなったか、何があったかを聞き出していた
「つまりその男の個人的な恨みの感情で利用された…と言う事か」
「はい、急に声かけられて案内されたらあの路地裏で…言った事やらないと殺す…って脅されて…この場所には旅行で来てたので…余計嫌で…」
「ニュースとかでは結構長期間の内容があるけど長い旅行なんだね」
「そうなんです!この国はお洒落で良いって言う話を私の住んでた所でしてた方結構居て気になってたので…長い旅行で計画して来たんです!でも…酷い事いっぱいしちゃったから…損害賠償っていうのも確か払わない行けないんですよね…後……名誉毀損…?」
「名誉毀損…はいらないんじゃないかなぁ〜…ってお姉ちゃん思うけど」
「判断問題ですね」
そんな時マリンが帰って来て口を開く
「大丈夫!罪はあの男が背負うから♪だってボスみたいなもんでしょ?それに今回の件は利用されて脅迫されてのらしいし…私的にはそれが最もかなぁって思ってるし」
「でも…私…この国の人達に悪いことして…建物とかにも悪いことして…」
「確かに貴女のした事は許せないです。だけど、こうやって見る限りとっても悪い子には見えないし…貴女がしたくてした悪行ではないでしょう?私達は利用された方にまで酷い事をするような歪んだ性格はしていないんですよ。」
「でも!いくら私が利用されてやった事だとしても…自分の手で何回も何回も酷い事いっぱいしちゃったから…裏に脅してくる悪い人が付いてたとしても…その人が悪いとしても……私はその人の悪い事に加担した者扱いされて当然で…」
「……貴女は良い子ね。実は私会う前は貴女1人で計画した事を実行し悪い事をしてる子だと思ってたの、もし交渉が上手くいかなければ貴女をどうにかしようと思ってた。例え注意してやめてくれなかったら酷い事する気で居た。だけど…そう思ってた私はバカだったわ。詳しく詳しく奥深くまで調べず、ただ少しばかり調べた情報と国民の噂情報だけで決めつけて、実行して…悪になってたのは今回私かもしれない。だって…あの場面に出会わなければ…こんなに良い子を悪い子に仕立てあげて命を奪っちゃうところだったんだもの…その反省しようとする心意気を忘れずにね。本当に大丈夫だから…私なりの申し訳ないって言う気持ちなの。良ければ受け取ってくれないかしら…?」
「……だけど、お父さんお母さんに償いはちゃんとしなさいって…」
「お父さんお母さんが良い人だからこんなに良い子が産まれたのね。貴女がそんなに言うなら…償いとして明日のお菓子作り手伝ってもらっちゃおうかしら」
「え、それじゃぁ償いとしては…小さい…」
「良いの、これで十分な償いだから」
「…分かりました…!」
その時鏡の意識が戻った様で突然動き出しキャエルの周りをキョロキョロ飛び回りながら声をかける
「エルぅぅぅ!!!無事じゃったか?!無事じゃったか?!怪我はないか?!痛いところはないか?!」
「…うん、大丈夫だよ」
「エル…お、おまえぇぇ!!喋れるようになったのか!!!よ、良かったな!良かったなぁぁぁぁ!!!……ハッ……」
突然動きを止め3人の方を振り返る
「私は割られてしまい意識は飛び…この状況の理解はよく出来ませぬが…貴方様方が助けて下さったのでしょうか、この度は誠にありがとうございます…な、なんと御礼をすれば良いのか…」
「御礼なんて良いですよ。御気持ちだけで…」
「いえ!そういう訳には!」
「困りましたね。それじゃぁ…もしこちらが困っていたら助けて頂くっていうので…」
「お任せ下さい!」
「ありがとうございます」
ーー翌日
マリンがお菓子を作ってる中アルジェのいる部屋ではヴェディアルが何かをお願いしている
「にぇ!おえほんよんでよんでよんでよんで!おにぇがいなのよ」
アルジェに読んで欲しい本を何冊か持って目をキラキラさせている。
「あのなぁ…そう言うのはマリンかイズとかメイドに頼めよ」
「まんまはおかちつくってりゅからむりなの!みぇいどしゃんはいそがちぃからめっなのね。まんまがいってたのよ」
「じゃぁイズでいいだろ…」
「ぱぱがいいの!よんでよんで!!」
「大声で言うな…耳に来る……叩き起されて何かと思えば本読めって……」
「よんでよんで」
「あ〜分かったっつの読んでやるから待て…」
待てと言われてお菓子作りの様子を見ながら待機中
「ヴェル、1個食べてみる?」
「ううんおわったらたべりゅ」
「そう、じゃぁ楽しみにしててね。」
「うん」
「あ!うぅ……マリ〜っまた失敗したよ〜…」
「あらら…真っ黒…盛大に焦がしたわね…」
「こんなんじゃ上手く行く気がしない…」
「そんな事言わないの。頑張りましょう?ね?」
「うん…頑張る…」
「ところで3人はいつまでいてくれるのかしら?」
「ん…ん〜……キョウカはどれぐらい居たい?」
「え?あ、短くて後一日は居たいですね…ここ…すっごく綺麗だから」
「あら、ありがとう。でもオルピルナには勝てないわよ。」
「何故ですか?こんなにも綺麗なのに…同等なんじゃ」
「オルピルナは国全体が綺麗でほとんどが自然に満ちているわ。それに比べてここは建物ばかりで自然が見れるのは1箇所だけ、建物ばかりより自然がいっぱいで建物もある国の方が人気があるのよ」
「でも…両方綺麗だけどなぁ…」
「決めた!後2日いる!3日後には私もルジェも予定があるし、流石に長居は出来ないから」
「まぁ…ふふっ、ヴェル良かったわね。後2日もパパと居れるわよ」
「ふつか……ぇっと…あとにかいねんねしたらバイバイなの?」
「そうよ。」
「パパってあの目付きが少し悪い赤髪の…」
「そう…だけど目つき悪いは余計かなぁ…」
「昨日出会った子にもこう言われるんじゃ…相当ね。」
「あの方って…お姉さんの旦那さんだったの?」
「違うわよ。ヴェルが呼びたくてパパって呼んでるから実際はただの幼馴染」
「そうなんですか…でも私あの方目つき悪いから怖いな……話しかけただけで睨みつけられそう…」
「全然そんな事ないですよ。優しく接してくれますよ。」
「まぁ目付きに関してはあれただ気張ってるからだし、気張ってなければただの顔良い奴ね。ちなみにガチで目つき悪い時は寝起きよ。」
「それね〜、なんでだろうね。朝日が眩しいのかなぁ?」
「そうなんじゃない?朝弱い感じするし」
「ん〜寝足りないとかもあるかな」
「ところであいつ風呂上がってくんの遅いわね。寝てんじゃないの?」
マリンが発言した途端アルジェが来て言い返す
「誰が寝るか、セットに時間かかったんだよ。」
「毎回毎回セットしなくていいでしょ。そんなに自分の髪型が好きな訳?ナルシストねぇ」
「邪魔だからセットしてんだようっせぇな」
「まぁ良いわ。ヴェルがずっと来るの待ってたんだからちゃんといっぱい遊んであげてよ」
「わァってるっつの」
そう言ってヴェディアルと一緒に厨房から出て行くアルジェを見てまた話を続けようと目線を戻すとマリンが口を開く
「ところでイズ、結果発表来たんでしょう?いくつだったの?」
突然マリンはにこにこの笑顔で何かの結果をローイズに聞いた。
にこにこ笑顔の質問者の表情とは反対に回答者は青ざめて目線をキョロキョロと逸らし言葉を濁している
「あ、え〜…と、い、いやぁ、その、結果はぁ、ぁのぉ、ふ、普通って言うか、その、えっと〜……」
「結果ってなんの話しているの?お姉さん達ちゃんと周りの人も何を話しているか分かるように話さなきゃダメだよ?」
「うむ!流石はエル!その通りだ!」
「多分あれ…かな……この前あった中期考査復習国語って言う学生時代に習った事を今でも覚えて居てちゃんと調べる各教科学力調査みたいなの…あれ確か20まで続くって話ですよね?それで今回は教科が国語の部分を…」
「あら、良く知ってるわね。そうよ。丁度手紙もらった時から2週間後だから結果…出てなきゃおかしいのよねぇ?アレ35点以下だったら学び直し対象として呼び出されるからねぇ」
「わ、私なんかよりルジェの聞いた方がいいよ!うん!きっとその方がいい!」
「それならアルジェさんの結果私知ってますよ。手があかないアルジェさんの代わりに結果報告書見て伝えましたし」
「95でしょ?」
「え、はい。アルジェさん御本人から聞きましたか?」
「聞いてないわよ」
「じゃぁなんで…」
「多分残り5点無いのは文章問題の中で「○○のところで主人公が何を思い何々をしたのかを述べよ」とか言うとこでしょぉ?アイツそう言う感情を読み取る系だけは大の苦手だからねぇ…」
「まさにそこです…」(長い付き合いって怖いなぁ…)
「で、イズは?」
「うっ……よ…41……」
「ギリギリじゃない。いつもは26だったのに上がったんじゃないの良い子良い子♪」
「ふふん!そうでしょう!もっと褒めて良いよ!」
ワイワイと喋りながらお菓子作りを進めてもう約2時間色々なお菓子が完成した。
紅茶、コーヒー、ジュース等を入れてお菓子と一緒に机に置く、そしてみんなでおやつの時間として頂く
「それにしても……あれかなぁ…働いている店がブラックな場所だって言う人もいるし…そろそろ変えどきかしら」
「少しいじってみるのもありだね〜」
「そう言えばマリンさんのご両親は何処に?」
「お父様は運悪く連日に続いてしまった他所での食事会をしている所でお母様は今国全体を調査中です。」
「おじ様大丈夫…?連日で色々な場所行って違う人達と食事会をだなんて大変じゃ」
「年甲斐もなくだだってたけど…結局は途中迄お母様が引っ張っていってその後は付き添いの使用人さんが無理にでも引っ張っていってるそうよ。」
「相変わらずだな……」
「あはは……」
「ところでルジェ…」
「あ?んだよ」
「早く私にヴェル渡しなさい。早く変わって貰えない?」
「だったらコイツに言え、俺は乗られてる側だ」
「ヴェル〜そんな生意気鈍感無愛想口悪馬鹿野郎赤髪男よりママの方が良いわよ〜こっちにおいで〜」
(な…長いし早口…マリンさん散々言うなぁ…)
(ま…マリー…)
ヴェディアルはママに呼ばれたから戻らなきゃと思いアルジェの膝の上から降りマリンの方へと向かって歩き中間程に来た。
そんな時マリンの長い言葉にイラッと来たのかアルジェは仕返しと言わんばかりに満面の笑みで言葉を返す
「ヴェル君こんな高飛車凶暴猫被り口悪馬鹿野郎黒髪女よりパパの方が良いぞ〜こっちにおいで〜」
「は?ヴェル〜騙されちゃダメよ〜こんな奴の言葉信じちゃダメよ〜こっちよママの方においで〜」
「こんな奴の言葉なんか信じなくて良いからな〜ほらこっち、パパの方に戻っておいで〜」
「え…ぇ……んと…んと……ぇっと……」
ヴェディアルは両方から呼ばれてどっちに行けばいいかキョロキョロしている。
そしてローイズは小さな声で言葉を漏らす
「また始まった……本当に会えば会ったで喧嘩ばっか…でも…小さな喧嘩だし…いっか…」
「いや子供の前で喧嘩ってダメですからね?!間隔大丈夫です?!」
そして長いようで短い一日が終わり部屋に入る鏡花
(今日もたくさんのことあったなぁ…子供の前で目に見て分かる喧嘩してるのにいっかってなっちゃう辺り…慣れなのかな…慣れても意味なさそうな気がするけどね。さて寝よっと)「おやすみ」
次回へつづく・・・