おしカケ!
その日の二条 彼方の朝食は何時にもまして侘びしいものになっていた。
ご飯、味噌汁、そして物価の優等生の卵(生)。
六畳一間の真ん中に置かれたちゃぶ台に並んでいる。
「やっぱ、朝には塩鮭ぐらい欲しいな……」
生卵をちゃぶ台の角に叩きつけ、ご飯上に卵を落とす。殻は流し台の三角コーナーに投げ入れた。
少し醤油を垂らし、黄身を箸で割って少しかき混ぜ、醤油と卵とご飯が絶妙に絡み合ったのを見計らい、口にかき込む。
「少し醤油が多かったか……」
そう自分で評価した。
一人で黙々と食事を進めていると、外から足音が聞こえてきた。
そして、彼方の部屋の前で足音が止まると、
ガチャ……ガチャガチャ……!
ドアを開けようとして阻まれた。鍵がかかっているのだ。
しばらく悪あがきをしていたが、諦めたのか静かになる。
……カチャン!
軽い金属音を立て、鍵が敗北宣言をした。
そして、ついにドアが開く。
「もう、なんで鍵してるの」
トタトタと足音を立てて、活発そうな少女が部屋にやって来た。
そんな事はお構いなしに、彼方は味噌汁をすすった。
「また手抜きして……ちゃんと作りなよ」
少女は壁に掛けてあったエプロンを手に取り、制服の上からエプロン姿になる。
そして流し台にいくと、まだ洗われていなかったフライパンを洗い出した。
「面倒だ。睡眠の方が大切だしな。あと、それは帰ってきて洗うぞ」
「どーせ、ロクなもの食べてないでしょ?ウチきなよ」
彼方がかまわないと言ったにも関わらず、少女はフライパンを洗うと、他の食器類も洗い始めた。
「遠慮するよ」
「別に遠慮しなくてもいいのに……。幼なじみのよしみだし」
少女の言葉から分かるように、少女――三郷 友那は、彼方と幼なじみという関係である。無論、二次元(フィクション)の幼なじみ出なく、三次元(リアル)の幼なじみだ。
この生まれてこの方16年と2ヵ月、家はお向かいだし、何者かの陰謀が働いたとしか思えない高確率で幼稚園から同じクラスとなることが多かった。現に、今だって同じクラスである。
ほとんど毎日と言ってぐらい顔を合わせ、互いの家だって知り尽くした間柄で、なにを今更な感じであった。
「そう言うけど、ママさんやパパさんは仕事忙しいだろうし、ゆーなだって大変なんだろ?」
「ん〜〜?まぁ、大変と言えば大変だよ?もうすぐコンサートだし」
すべて洗い終わり、蛇口を閉める音がし、流れていた水が止む。流し台からやって来た友那が、エプロンを着たまま彼方の向かいに座った。
「今度はドームでするんだ」
「ドーム?東京の方か?」
「うん、そうだよ。もしかして来てくれるの?」
少し期待が籠もった目で友那は彼方を見る。
そんな事はお構いなしに、ズズズと音をたててお味噌汁を啜っていた。
彼方は猫舌なのだ。
「無理言うなって……行ける訳ないだろ」
「え〜〜、なんで」
「人混みは苦手なんだ。知ってるだろ」
「むぅ〜〜、知ってるけどさぁ」
友那は頬を膨らましてむくれた。納得ができないようだ。
「まぁ、頑張ってアイドルしてきなよ」
「ぶぅ〜〜、ぶぅ〜〜」
未だ不満なようで、友那は口をとがらした。
「アパート家賃上げちゃうよ?」
「なら、余計に人が入らないだろうな」
「ムッ」
「今だって、俺ぐらいしか入居してないんだからな」
「ムムッ」
「それに、家賃が上がると言うんだったら、余所に移れば良いだけだしな」
「ムムムッ」
「……はぁ」
意味のないやり取りに彼方は嘆息し、食べ終わった食器を片付け始めた。
未だに、友那が彼方を睨みつけて『むー』とか唸っているが、無視だ。
「今、大フィーバー中の人気アイドルが、幼なじみの一人がコンサートに来ないくらいで怒るなよ」
「だってだってぇ」
「だってじゃない」
駄々をこねだした友那をほったかして、彼方は流し台で食器を洗う。
なにやら文句を言う声をシャットアウトして、彼方は手を動かす。
そんな時、ふと友那がアイドルになることになった頃を思い出した。
昔から友那は可愛らしくて美少女だった。小学校の頃から人気者で、ラブレターは絶えることはなかった。
中学になると芸能スカウトの目にとまり、芸能界にスカウトされた。
友那の両親は大いに喜び、お祝いムードだったのだが、当の本人は芸能界に興味がないらしく、この誘いを拒否していた。
その後も、何度も芸能事務所の人間が友那のもとを訪れて、熱烈にスカウトしていたのだが、友那は頑として首を縦に振ることはなかった。
だが、高校受験が控えた中学三年の冬だった。帰路の途中で、突然友那が言い放ったのだ。
「私、アイドルになる!」
そこからは見事にとんとん拍子に進んでいった。
以前からスカウトに来ていた芸能事務所と正式に契約。様々なレッスンを積み重ね、見事半年後にデビュー。瞬く間に人気がうなぎ登りとなり、一年たつ頃には、トップアイドルの仲間入りを果たしていた。
ただ、トップアイドルともなると、仕事が忙しくなる。高校もなかなか行くことも出来ず、会うことも少なくなった。今日だって、マトモに会話をしたのは一週間ぶりだ。
「さて」
キュッキュッと音をたてて蛇口を閉めると、タオルで濡れた手を拭き、学生鞄を手に取った。そのまま、玄関口に向かっていく。
「あ、ちょっと待って!」
急いでエプロンを取り、壁に掛けていた所に戻すと、自分の学生鞄を持って彼方を追いかける。
「早くしろよ」
「ムッ、彼方が勝手に行ったんじゃない」
彼方はドアを閉めて、ポケットから鍵を取り出す。202号室と黒いマーカーで丸っこい字が書かれたプラスチック製の札と、犬のキーホルダーが付けられていた。
「それ、付けてくれたんだ」
犬のキーホルダーを友那は嬉しそうに指差した。
「ん?まぁな」
カチンと金属音をさせて、202号室の鍵は閉じられた。
「えへへ〜、嬉しいな。だってそれ、初めて全国ツアーしたときのだから」
「……なんでまぁ、ツアーグッズに犬のキーホルダーなんだか」
ポケットに鍵を入れる。
少しコンクリートが剥げた通路を歩き、金属製の階段を降りていく。小さな庭には花壇があり、様々な花が咲いている。
住み始めて3年になる小さなアパートを彩っている。
築30年。六畳一間、風呂トイレ別、そして家賃が四万円。
そんな物件のアパートが彼方の家だ。
アパートの名前は『フレア荘』といい、部屋数は六室。駅から徒歩20分と少し遠いが、スーパーは近い。だけど、何故だか人が入らない。
今入居しているのは、彼方と一階にもう一人ぐらいである。
(幽霊が出るわけじゃないのにな)
別に外観がボロく、幽霊アパートといった感じでもなく、実際に誰かがこのアパートで死んだわけもない。
利便性は悪いと言えば悪いが、困るほどでもない。
なのに、なぜ入居者が増えないか?それは、"ごく普通のアパート"だからであろう。
駅を利用するなら、駅に近いところに住まいを構えるし、学生なら学校に近い場所か、店の多い駅近くに住むからだ。フレア荘のように、駅や学校にまあまあ距離があり、周りには店といった店はないような立地の"ごく普通のアパート"に好んで入居する筈がない。
まだ、奇抜なアパートだったりしたら分からないかもしれないが。
「あ!そう言えば、103号室の鈴木さん。結婚するから昨日引っ越していったよ」
……どうやら、フレア荘の住人は一人になってしまったようだ。
●
夕日で朱く染まった道を彼方は一人で歩いている。
友那は授業が終わった後、仕事のためにマネージャーさんに連れられていった。
(さて、晩飯はどーすっかな……)
そんなことを彼方が考えていた時だった。
ふと、交差点の方を見ると、白のワンピースに大きな麦わら帽子の少女が、信号が赤なのに横断歩道を渡ろうとしていた。
(おいおい……)
そう思った瞬間、体は動いていた。
少女の腕を掴み、ぐいっと引き寄せる。
「危ないだろおい」
「…………へ?」
「へ?じゃないよ。信号はちゃんと確認しろよな」
「えっと、私に触れて……る?」
「……何を言ってるんだ君は?」
彼方は訝しんだ目で少女を見るが、あることにハッと気がついた。
「しまった!今日はタイムサービスの日じゃないか!こうしてられん」
「あ、ちょっと――」
少女をほったらかし、彼方は走っていった。
タイムサービスは一分一秒を争う。常に貧乏生活をおくる彼方には、ある意味生命線である。
歴戦を戦ってきた主婦達に混じり、サービス品を勝ち取らなければ、そのうち道草を食べないといけなくなる。
あの時は、まるで野原にいる牛になったような感じだった。
「よっし!」
ひとっ走りしてスーパーに着いた彼方は、頬を叩いて気合いを入れ直し、人であふれる店舗に突入していった。
この時には、先程助けた少女の事なんて忘却のかなたにやってしまっていた。
…………数十分後
ほくほく顔の彼方がスーパーから出てきた。
両手には大きなスーパーの袋を持っている。
どうやら満足できる買い物きたようだ。
「……久しぶりに動物性タンパク質を得ることができる」
切実な台所事情が伺いしれるセリフを言いながらも、彼方は満面の笑みだ。
ガサガサ音をさせて彼方は歩く。辺りはすっかり暗くなっていた。
「……うん?」
ふと、電柱のほうを見た。今にも消えそうな声がしたからだ。
「犬……?」
白い毛並みの犬が、丸まっていた。ちょっと泥で汚れているが、白い毛並みは十分綺麗だった。
野良犬なのか、首輪はつけていなかった。
「お前、どうしたんだ?」
彼方が頭を撫でてあげると、犬は頭を上げて彼方を見上げた。
「……ん?腹が減ってるのか?」
彼方はガサゴソと袋の中を探る。お目当ての物を見つけ、少し口元を緩ませた。
「ほら、喰え」
そう言って彼方が差し出したのは魚肉ソーセージ。貴重な動物性タンパク質の一つである。それを、彼方は野良犬に差し出したのだ。
野良犬はお腹が減っていたらしく、勢い良くがっついてきた。
「はは、凄い喰いっぷりだな。ほら、もう一本やるよ」
そして、もう一本魚肉ソーセージを出す。
「じゃあ達者でな」
彼方は魚肉ソーセージを置いていくと、立ち去っていった。
●
心持ち軽くなった袋を両手に持ち、彼方は近くの雑木林を歩いていた。
「うん?」
雑木林の奥が光った気がした。
こんな場所に光源があるはずがない。
「あ、また」
再び、光った。
青っぽい人工的な光に思えた。
「……なんだろ」
好奇心に押されて、雑木林に足を進めようとするが、
『好奇心は猫も殺す』
そんな言葉が脳裏をよぎり、結局家路につくことにした。
「早く帰らないとな」
少し早歩きで家路を急ぐ。
だが、運命は避けられないのかもしれない。先程の判断で避けたはずの事態も、姿形を変えて降りかかるのだ。
「な、なんだ!?」
彼方の上空を青い光を発する円盤が、雑木林の方から飛んできた。
そして、グングンと高度を上げて星空に消えていった。
「……今時のフリスビーは進化してるな」
円盤が消えていった星空を見上げ、彼方はポツリと呟いた。
少々、現実から逃げていた。
そんな時、雑木林の方から草を掻き分けて何かやってきた。
「む?」
その音に気がついた彼方が、その方向をみた。
「うぅ、置いてかれたッス」
「…………」
「このまま、未知の惑星で老いていくッスか……」
「…………」
彼方の前に現れたのは、かなりの不審者だった。
その格好は一言で言えば"宇宙服"であった。
頭部はヘルメットに覆われおり、気密服は光沢のある布地で、体にフィットするように作られているみたいであった。
ただ、その気密服に色々と機械のような物が取り付けられていた。
「あぁ、確かこの惑星には第三種知的生命体が確認されてたッス。しかも異星間交流がまだない発展途上だったスね。見つかったらいろんな所を弄られて、モルモットにされたあげくにバラバラにされて瓶に保存されるッスぅ〜〜!」
どうやら、ヒステリックになっているようだ。
しゃがみ込んで、頭を抱えだした。
(……関わりたくないな)
そう思った彼方は、出来るだけ足音を立てないように通り過ぎようとする。
だが、暗くなり足元が見えていなかった。
――カン!
足元に転がっていた空き缶を蹴ってしまい、辺りに音が響き渡った。
無論、この音に反応して、宇宙服の人が彼方の方を見た。
その時、時が止まった。
彼方は缶を蹴ってしまった格好のまま固まり、宇宙服の人はしゃがみ込んで彼方を見る格好のまま固まっていた。
交差する視線。
先に動いたのは彼方だった。
「お邪魔しましたぁ〜」
そう言って、その場から離脱を試みた。
「ちょっと待つッス」
宇宙服の人が止めた。
だが、彼方は関わりたくなかったので、走って逃げ出した。
「ちょ、ちょっと待つッスぅ〜」
宇宙服の人が追いかけようとしたが、石に躓いて転けていた。
「はぅ〜〜、転けたッス〜〜」
そう言いながら、宇宙服は起き上がった。
「あ、逃げられたッス」
道路の先を見ても、既に彼方の姿は見えなかった。
「でも、発信機は取り付けたッス。これで万事オッケーッス」
宇宙服の人は、雑木林の奥に消えていった。
次の日……
彼方は学校からの帰路についていた。
この時には、昨日の出来事なんてすっかり忘れ去っていた。
「うむ、晩御飯はどうしよう……」
頭の中は、晩御飯の事でいっぱいだ。彼方にとって食事は最高の楽しみであるのだ。
冷蔵庫にある食材を思い浮かべ、彼方のレパートリーから出来る料理を検索する。
「うん、カレーにしよう」
そう決めた頃には、すでにフレア荘の前に着いていた。
小さな花壇に花が咲いているが、名前は知らない。
(家庭菜園でもしてみるか……)
そんな事を思いながら、202号室の鍵を開けた。
「……ん?」
開けたつもりだったのだが、何故か鍵がかかっていた。
「もしかして、鍵してなかったか?」
頭を傾げながら、再び鍵を回した。
今度はちゃんとドアが開いた。
「ただいま〜、と」
いつもなら、一人暮らしの彼方には返ってくる言葉はない。たまに、仕事が早く終わった友那が、大家の娘という立場を利用して、マスターキーで勝手に部屋に侵入していることがあるが、今日はマネージャーさんに連行されていたのでいるはずがない。
はずがないのだが……
「あ、帰ってきた」
何故か、返事が返ってきた。
一瞬、頭の処理が事態に追いつかず、思考が停止してしまった。
とりあえず現状を認識すると、玄関に立てかけていた傘を手にとった。一本400円のビニール傘だ。
(泥棒か?)
その傘を刀を構えるように持ち、ソロリソロリと声の発信元に近付く。
「あれ、声がしたんだけどな〜?」
ひょいと少女の顔が覗かせた。
その瞬間、彼方は動いた。
「成敗ーー!!」
「にゃにゃにゃあ!!」
「な、なんスかぁ!?」
「ひゃあ!!」
ドッタンバッタンガコンガタンゴロゴロゴロ……
適当に傘を振り回し、侵入者を威嚇する。剣道あたりを少しでもかじっていればマシだったかもしれない。だけど、彼方は文化系の美術部員だ。残念ながら、運動神経は平均より少し劣っている。
部屋に乱入し、傘を振り回す彼方に、それから逃げる侵入者達。
事態は混迷の一方だった。
ぜえ、ぜえ、ハア、ハア……
数分後には、部屋にいた皆が疲れて倒れ込んでいた。
「……ところで、お前達は何者だ」
「……今更それ?」
「今更ッス……」
「……きゅう…」
何とか息を整えた彼方は体を起こした。他の侵入者の面々も体を起こす。
「とにかく、警察に――」
「ちょっと待つッスぅぅ!!」
電話しにいこうと立ったところに、侵入者の一人がすがりついてきた。
「国家機関はダメッス!瓶詰めにされるッス!!」
「瓶詰めはされないだろ。ブタ小屋には入れられるだろうが……」
「そんな!意思疎通が出来ない生き物と一緒なんて、喰われちゃうッスぅぅ!」
「いや……ちょっと違う」
第一、ブタは肉食じゃないし、とは言えなかった。
新たに背中に重みと感触を感じたからだ。
「う〜〜ん、スリスリ〜〜」
白いワンピースの少女が、彼方の背中に飛びついて頬ずりをしてきたのだ。
人間とは思えないくらい軽かった。
「な、なにをする!離れろ!」
「もう少し〜〜、久し振りの人肌を」
何とか振り落とそうと、体を捻ったり左右に振ったりするが、少女はなかなか離れない。離れるどころか、彼方を掴む腕は強くなっていた。
「何なんだ一体」
背中から離れない少女に、足元ですがりつく少女。
端から見たら、意味が分からない光景じゃないか。
背中に嫌な汗が流れるのを感じ、とても不吉な予感がした。
「……どふっ!」
腹部……といっても鳩尾に衝撃を受けた。
その直前に、白い弾丸が突っ込んで来るのが見えていたのだが、身動きが出来るような状態じゃなかった。
彼方はそのまま尻餅をついて倒れてしまった。
「いたた……」
何故か、馬乗りになっている少女と目があった。
長い白髪が綺麗に流れるが、彼方はその上に付いているものに目がいっていた。
「……耳?」
そう、人間の耳とは別に、動物の耳らしきものが付いていた。
形からして、犬の耳みたいだった。
「なんだ、これ」
「――きゃう!」
彼方は好奇心に押され、その耳を摘んでみた。
「おぉ……この感触」
ふにふに
「あ……ひん!」
ふにふに
「ふあっ……あやっ……」
何やら色っぽい声を出して喘いでいるが、彼方は全く気付かない。
耳の感触の虜となっていた。
気付いた時には、犬耳の少女は頬を上気させ、ハアハアと艶やかな息をしていた。
「……大丈夫か?」
「……うぅ、ヒドいです」
ウルウルと瞳を潤した目で、しかも上目遣いで彼方を見てきた。
そんな仕草に、彼方はドキッと胸がときめきそうになった。
いや、実際ときめいた。
「う、なんかすまない」
「ううん、主が触りたいならいいよ?」
「そ、そうか……」
なにやら不穏な単語が入っていたのは気のせいだろうか。
「あるじぃ〜」
甘えるように、彼方の胸に顔をうずめた。
そのまま、すりすりと頬ずりをする。
「ちょ、まて……!」
足にはがっちりしがみつかれ、背中と胸の両方には頬ずりをされ……。
誰かに見られたらヤバい状況じゃないか。いや、むしろ何故このような状況に陥った……!
冷静さを欠いた頭で考えるが、答えは見つかるはずがなかった。
そして、更に事態を混迷に導く人間が現れた。
「彼方〜」
友那は呼び鈴も押さず、彼方の部屋のドアを開けた。そして固まった。
ついでに、彼方の方も固まった。
三人の少女は、思い思いに彼方に触れている。
「かぁ〜く〜ん」
「あ〜〜いや〜〜これはですねぇ〜〜。すべて――」
「かーくん!!」
般若の面が、友那の背後に見えた気がした。
スタスタと歩いてくるのが異様に迫力がある。
よっぽど怒り心頭であるらしく、昔に恥ずかしいからという理由で止めた呼び方で言っていた。
そんな事にも気付かず、友那は政治家っぽい言い訳をしようとした彼方を問い詰める。
「なにやってるの!!もしかしてあれ、18歳未満禁止とかいう感じの展開にしようとしてたの!?」
「んなわけあるか!!……ってクソ離れろ……!」
何とか彼方はロック状態から抜け出そうとするが、全く動かない。むしろ、彼方を拘束する力が強くなっていた。
「官憲だけは〜、国家権利だけは〜」
「う〜〜ん、スリスリ」
「ふあっ……あるじ」
そんな彼女達を見て、ついに友那の……堪忍袋の緒が切れた。
そりゃもう、ぷっちぃーんと。
「あんたたち……」
ゴゴゴゴゴゴ……
背景に、燃え盛る炎の炎獄がみえた気がした。
「私のかーくんから離れなさぁーーい!!」
夕暮れのフレア荘に、友那の声が響きわたった。
「これより、二条家緊急家族会議を行いまーす」
友那の宣言により、二条家緊急家族会議が開催された。
ちゃぶ台を中心に友那と彼方、そして少女三人が取り囲む形だ。
「二条家家族会議って、関係者は俺だけじゃないか」
ぼそっとこぼした彼方の言葉に、友那は素早く反応し、ギロリと睨みをきかせた。
睨まれた彼方は身がすくんだ。
「まず、あなた達の自己紹介から!」
そう言われて始めに話し始めたのは、彼方の背中にへばりついていた白いワンピース姿の少女だった。
「私は白井 香苗」
そう言って、彼女は宙に浮かび上がった。
人間の体が、フワフワと宙に浮かんでいるのである。
あまりの突然のことに、彼方と友那は口をあんぐりと開けて唖然としていた。
そんなことに構わず、香苗は続けた。
「まぁ、見ての通りの幽霊よ」
香苗はその場でくるんと一回転して見せた。
その時、チラリと見えた白い物は、彼方の心の中に仕舞っておくことにした。
「年は15。生きていたら20になってるわね」
「と言うことは、五年前に亡くなったのか?」
「うん、病気でね」
「そうか……」
しんみりとした空気が漂った。
「って、そんな訳ないでしょ!」
「なによ、疑うの?」
「当たり前でしょ!そんな非科学的な存在認めますか!」
「じゃあ、これならどうよ!?」
そう言うと、香苗は友那に飛び込んだ。
文字通り、体の中に。
友那のお腹あたりから、香苗の下半身が生えてる形だ。見ていても気味悪い。
無論、やられている方はもっと気味悪いだろう。
「――いやああああぁぁぁぁ!!」
友那がつんざくような悲鳴をあげる。
「どう、信じた?」
「信じた信じた。信じたから、早く出て!」
「ふふん」
香苗は友那の体から上半身を出した。
友那はよっぽどビックリしたのか、胸に手を当てて呼吸を落ち着かせようとしていた。
「なかなか綺麗な体だったよ。内臓に病気はなさそうだね」
「そ、そう?ありがとう」
お礼を言う友那は、ちょっと複雑そうな表情だった。
だが、だいぶ落ち着いたみたいだった。
「でも、意外。男性経験はないんだね。ちゃんとあったよ」
「〜〜〜〜〜っ!?」
ボンと頭の上から水蒸気が出た気がした。友那の顔が首まで真っ赤になる。
あえて、なにがあったのかは挙げないでおこう。
「どどど、どこ見てるのよ!」
「どこって、ねぇ?」
「俺に同意を求められてもな」
真っ赤な顔で、友那は彼方を睨みつけるが、彼方は困った顔で頭をポリポリと掻いていた。
「うぅ……その反応、何だか複雑だよ……」
「はぁ?」
「……もう、彼方の馬鹿!離婚よ!」
「結婚どころか恋人ですらないんだがな」
友那が、『う〜〜っ』とうなり声をあげて睨んでくるが無視だ。でないと話が進まない。
「で、なんで俺の部屋にいた?」
「ほら昨日、私と出会ったでしょ?」
「昨日?幽霊とか?」
頭の中で検索してみるが、やはり覚えがなかった。
「いや、覚えていない」
「交差点!幽霊とは知らず、私を助けようとして」
「……!」
そこまで言われて思い出した。
昨日のタイムセールの前に出会った少女だ。
「あぁ、思い出したが、何故ここにいるかの理由になっていないぞ」
「理由?」
香苗は空中でくるりと一回転して、彼方の首もとに抱きついた。
「触れるからよ」
「はぁ?」
「だって、私幽霊だよ?今まで他人と触れ合いがなかったんだもん」
「それで触れる俺のとこに……」
「憑いてきたの」
「…………」
つまり、この少女に取り憑かれたということか。
彼方は溜め息をついた。
「なんか、もう疲れた」
「うん、憑きました」
「…………」
そんな笑顔で言われてもなぁ。
ポリポリと頭を掻いた。困った時の彼方の癖だ。
「……参ったな。お祓いっていくらするんだ?」
その呟きには、誰も答えてくれなかった。
●
「次はおいらッス」
次は、国家機関を恐れていた少女だ。
「ロロ=メビウス。レティンクル座ゼータ連星系のセルポという惑星から来たッス」
「……宇宙人とでも言いたいのか?」
「そうッス。ヒューマノイド型と言われる宇宙人ッス」
確かに、どこらかどうみても同年代の少女だ。
だが、それゆえに信憑性がなかった。
アニメや漫画で出てくるようなタコみたいな奴や、グレイ型とか言われる目がアーモンド形の奴とかだったら否応なしに信じることができるが、同じ人間の形をしていると、少女が可哀想な人にしか思えなかった。
「あ、その目は信じてないッスね?」
「いや、まぁな」
「確かに、信じられないよ」
彼方と友那は顔を見合わせた。
「うんうん、そんな非科学的な存在なんて信じられないよね」
香苗は空中でうんうんと腕を組んで頷いているが、その本人が一番非科学的だ。
「大体、どうして宇宙人が日本語喋ってんだよ。……微妙に変だし」
するとロロは、頭につけていたカチューシャを指差した。
「それはこの翻訳機を介して喋ってるからッスけど……変ッスか?」
「語尾に"ッス"がついてるよ」
「まるで体育会系だな」
「そうッスか……。言語登録が上手くいってなかったスかね……」
ロロはカチューシャを外し、いじくり始めた。
「◇☆▲%●□☆」
「のうっ!」
「きゃ!」
「にゃあぁ!」
「あぅ!」
ロロの本来の言葉なのだろう。なんとも言えない高音の声で、内臓がきゅっと締まるようで更に頭が爆発するような感覚に支配された。
「……皆さん、大丈夫ッスか?」
カチューシャ型翻訳機を再び取り付けたロロは、心配そうに彼方たちをみる。
「……頼む、その翻訳機は外さないでくれ。俺達がどうにかなっちまいそうだ」
「そ、そのようッスね。分かったッス」
ダメージは大きかった。
三半規管がやられたようで、平衡感覚がなくてフラフラする。
ただの声でこうなるとは思わなかった。不意打ちだ。
ただ、これでロロが自分達とは違う"人間"である事が分かった。
地球上の人間であんな声を出せる人間なんていない。
「とにかく、今ので俺達とは違うことは分かった。だが、俺の部屋にいた理由はなんだ?」
すると、ロロはキョトンとした表情で彼方を見た。
「覚えてないッスか?昨日、第三種接近遭遇をしたじゃないッスか」
「第三種接近遭遇?」
「ほら、雑木林で宇宙船を見たッスよね!?」
「…………」
しばし彼方は思案した後、思い出して手をポンと叩いた。
「フリスビーじゃなかったんだな」
「あんなデッカいフリスビーどこにあるッスかぁ!」
だが、そこで彼方は『んっ?』という顔をした。
「それが、ロロがここにいる理由にならんぞ?」
「理由はそのあとッスよ。その後、こんなのと会ったスよね」
すると、ロロは脇に置いていたヘルメットみたいな物を手に取ると、頭の上からスッポリと被った。
その姿は、まるで宇宙服を着た……
「あ、あ〜〜っ。あの時の不審者か。お前だったか」
「不審者は酷いッスよ」
ロロはヘルメットを取った。
頬を膨らまして怒っていた。
「第一、あの時まだ大気組成を調査中で、ヘルメットを取っても大丈夫か分からなかったんスからね!」
「酷いよ彼方。いきなり不審者扱いなんて」
「いやいや、そんな事情しらないから」
彼方は、自分が非がない事を示そうとするが、残念ながら女性優位になりつつある社会、彼方が悪いとなってしまうのだ。
「せっかく第三種接近遭遇したのにいきなり逃げ出すッスしね」
「弱虫」
「おい、友那。そこまで言われる覚えはないぞ」
「ふん!」
どうやら虫の居所が悪いようでご機嫌斜め。ツーンとそっぽをむいてしまった。
彼方は溜め息を吐き、ロロに向き直った。友那の事は後回しだ。
「逃げ出したことは置いといてだ。何故ここにいるかの話が見えてこないのだが?」
「実は……おいら、置いてかれたッスよ」
「……はあ?」
「宇宙船の事故でこの星に不時着したッスけど、おいらが調査に出ている間にピューっと」
「ピュー?」
「どうしようかと思って彷徨っていると、たまたま彼方さんと第三種接近遭遇をして、保護を求めようと思ったスけどね」
「逃げられちゃったのね」
香苗の言葉にロロは頷いた。
「まぁ、何とか発信機を付けることが出来たッスから、住まいが分かったんスけど」
「いや、だから何故ウチに……!」
「そんなの決まってるッス」
さも当たり前のように、人差し指を立てて言った。
「第一発見者が、遭難者を保護するのが宇宙の決まりッス!」
「……それは宇宙人との接触がない星でも適用されるのか?」
「この星にも、"シーマンシップ"とかいう似たようなものはあるッスよね?」
「俺、船乗りじゃないんだけどな……」
彼方はそう呟いて頭を悩ました。
「と言うことで、不束者ですがよろしくッス」
その時だった。
「ダメダメダメ〜〜!!」
「がふっ!」
友那の右ストレートが彼方の腹に決まった。
「そそそんな同棲みたいなこと、羨まし――じゃなくて不健康なこと見逃せません!」
「落ち着くんだ友那、まず俺を殴るな。待て、それをどうするつもりだ。正気に戻れぇぇ!」
その日、冷蔵庫が宙を舞った。
●
「ハァ、ハァ……死ぬかと思った」
汗だくの彼方は膝をつき、肩で荒い呼吸をしていた。
「死んだら私の後輩だね」
「……洒落にならんぞ」
げっそりとした表情で宙に浮かぶ香苗を見上げた。
「私がいなかったら本当に仲間入りだったよ?」
確かに、香苗がいなければ彼方はどうなっていたか分からない。
お星様になっていたかもしれないし、土に還っていたかもしれない。幽霊になっていたかもしれない。
友那が、彼方目掛けて投げ飛ばした冷蔵庫を、香苗がポルターガイストで冷蔵庫を止めたのだ。彼方の目と鼻の先で。
その他にも色々と投げつけられる物を避けるのが大変だった。
「ゴメンね……」
今、友那はシュンとして反省していた。
「あるじ、大丈夫か?」
犬耳の少女が心配そうに彼方を見ていた。
「大丈夫、大丈夫だ。それより君は誰だ」
彼方の問いに、犬耳少女は困った顔をした。
「誰、と言われても名前がないのだ」
「名前が……ない?」
名前がないとはどうゆうことだろう?
まさか、記憶喪失なのだろうか?だけど、それなら『名前が分からない』と言うはずだ。
「そう、我には名前がない。捨てられたのだ」
「「捨てられたぁ!?」」
彼方と友那が叫んだ。
「捨てられたってどうゆうこと!」
「そうだ、誰に捨てられた。場合によれば警察に――」
突然、犬耳少女の体が光り出した。
その光の中で、少女の体が変化していく。体が縮みだし、全身が白の毛に覆われていく。お尻からは尻尾みたいなものが生えていた。
そして……
「「犬!?」」
そこには、白い犬がちょこんとお座りの状態でいた。
「うわっ、かわいい〜」
香苗がきゃあきゃあ言いながらくるくると犬の周りを飛んでいる。
「我は犬なのだ」
尻尾を振りながら、白い犬は喋った。
「しかも、捨て犬。我は昨日あるじに助けてもらわなかったら命はなかった」
「まさか、お前は……!」
彼方の頭の中に、昨日魚肉ソーセージをあげた犬を思い出した。
確か、あの犬の毛並みも白色だった。
「あの時の魚肉ソーセージは美味かった」
その言葉で確信した。あの時の犬だ。
「……で、ウチになにしにきたんだ」
「恩返しだ。何でも言ってくれ」
そう言うと、再び体が光り出し、人間の体となった。
「掃除、洗濯、料理の家事はもちろん、夜のお仕事まで何でもできるよ?」
かくんと可愛らしく首を傾げる。言ってることはかなり危ない。
案の定、その言葉に反応した人間がいた。
「ダメダメダメ〜!!そんな不健康なこと見逃せません!」
友那が少女と彼方の間に立ちはだかった。
心なしか、友那の頬がほんのり赤く染まっている気がする。
「あなたに関係ないよ。あるじに言ってるの」
「幼なじみだもん!かーくんは私が守る!」
『なにからだ』と言いたかったが、止めておく事にした。
「第一、かーくんのところにあなた達を住み着かせてなるものですか!」
そうだ。
幽霊に取り憑かれるのもゴメンだし、宇宙人を保護するのはNASAの仕事だ。いや、日本ならJAXAか?もうどっちでもいい。
それに犬の恩返しも、気持ちだけで十分だ。
「かーくんと一緒に住んでもいいのは私だけなの!」
「なんでやねん」
友那の言葉に、思わず彼方は関西弁でつっこんでしまった。
いきなり突拍子もない事を宣うのでしょうかこの幼なじみは……!
「それは困るッス。かなり困るッス!知らない星で路頭に迷うのはご免ス!」
「私だって、みすみす触れ合いが出来る人を手放さないよ!」
「恩返しできないと我は困るのだ」
三人から抗議がでるが、友那はどこ吹く風。彼方に抱きつく。
ふわっとした髪から匂うフローラルの匂いが鼻腔をくすぐった。
「かーくんは誰にも渡さない!」
『う〜〜』と三人に向かって威嚇の声を出す。
「ちょっと借りるだけよ」
「ダメったらダメ!出て行って!」
「なによぉ!ケチ!」
香苗がポルターガイストでティッシュペーパーの箱を浮かした。そして友那に向かって飛んでいった。
パコンと友那の額に当たった。
「いったぁぁ……」
おでこを押さえて友那はその場にうずくまった。
「……やったね」
ゆらりと友那は立ち上がった。
前髪が垂れて、表情は伺い知れないが、怒っているのは確実だ。
何というか……オーラが禍々しい。
「覚悟!」
友那が香苗に飛びかかった。
だが、香苗は不敵な笑みを浮かべ、その場に浮かんでいるだけだ。
何故なら、幽霊の香苗には物理攻撃は効かない。
彼方なら、触れ合いが出来るから物理攻撃が可能かもしれないが、すでに友那は体内に潜ったことで通り抜けることは分かっていた。
「無駄だよ。あなたの攻撃は通り――ぎゃふ!!」
友那の腕がエルボーの要領で首に引っかかり、香苗は空中から叩き落とされて床に転がった。
友那も意外だったらしく、自分の腕を見ていた。
「な、なんで?どうして私に?」
その時、友那は何か思い出したらしく、ポケットを探り出した。
しばらくして、目当ての物を見つけたらしく、ポケットから手を出した。
「これかも」
友那の手の中には、一つの御守りがあった。
その御守りに彼方は心当たりがあった。
「それは俺が友那の初コンサートの時にあげた御守りじゃないか」
「うん、肌身離さず持ってるの。彼方がくれたものだから」
嬉しそうな友那に、彼方は少し照れくさそうに頬を掻いた。
「そっか、その御守りのせいだね。守ろうという心に反応したんだよ」
ふわふわと香苗は浮きながら言った。
そのままゆっくり移動して彼方の背中に抱きついた。
「う〜〜ん、暖かい」
「あ!ちょっと離れてよ!」
友那は香苗を引き剥がそうとするが、友那の手は香苗の体をすり抜けてしまった。
「むぅ……かーくんは私が守るの!」
「ひゃ!」
今度は香苗を掴むことが出来て彼方から引き剥がした。
だが、直ぐにスルリとすり抜けてしまった。
「あなたは私の邪魔になるわね」
「とっとと成仏してよ!かーくんに取り憑かせないんだから」
両者の視線がぶつかり、火花を散らしていた。
出来るならよそでやってほしい。
そろそろ晩御飯の支度がしたいのだ。
「あのー彼方さん?」
ロロが遠慮がちに声をかけてきた。
「おいら、ここにおいてくれるんスかね……」
少し目を潤ませ、両手を合わせて彼方を見てきた。
そんな目で見られると困る。
彼方は目を逸らした。だが、そこにも同じような目をした犬耳少女がいた。
「あ……いやぁ〜〜……」
たじたじだった。
「ダメダメダメ!絶対ダメ!」
「なんでッスか!」
「そうだ、なんで!」
「ダメなものはダメ!」
何とも稚拙というか子供っぽい理由なんだろう。
「おいらは彼方さんに保護してもらわないと困るッス!!」
「あるじと一緒にいるのだ!」
「ダメダメダメ!出て行って!」
「嫌なこった〜」
ワーワーギャアギャアキィキィ!
彼方をほっぽりだして互いに言い合いを始めた。友那は一様に『ダメダメダメ』と言い、一向に認めようとしない。対する三人はタッグを組んで友那に対抗する。
というか、何故友那が拒否しているのだろうか?
言い合いがエスカレートし、物が飛び交いだした。
無論、彼方の私物である。
その様子を見て、段々と腹がたってきた。
人の物を投げやがって、しかもそのうちのいくつかは壁にぶち当たって壊れている。
幽霊だか宇宙人だかなんだか知らないけど、人の部屋で好き勝手にしやがって。
友那も友那だ。勝手に人の部屋に上がり込んで、人のことを勝手に決めてくれるんじゃない。
自分の事は自分で決める!
そして、彼方は叫んだのだった。
「お前たち、俺の部屋から出て行けぇ!!」
どうも、作者の月見 岳です。
あとがきということで、何書きましょう。
これといって書くことがありません。何を書けばいいのでしょう?
というか、あらすじもいまいちどう書けばよかったのか分からないんですけど……
まあ、愚痴もこれぐらいにしてまじめにしましょうか。
今回は連載でなく短編です。誰がどう言おうと短編です。長いですけど。
おかげで中途な終わり方になった気もしますが、忘れます。というか、忘れてください。少し長くなりすぎたかなって思って、無理やり区切りをつけたんです。
今回のものはプロットなし設定なしの思いつきで書きました。ですから、ちょくちょくおかしいところもあるでしょうが目をつぶってください。
では、縁があればまた……。