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襲撃vs奇襲

 アリスがマグナムの起動を指示した時、ホームは敵の襲撃を受けていた。先ほどのナンバーズ三人が到着したのだ。

「来た。皆、ちょっと早いけど作戦通り……よ。持ちこたえて、ここで終われない」

 アリスが指示を出す。 当然、敵の真の狙いはこっちだろう。

 敵三人の姿はモニターに映し出されている。顔は同じだが、装備は違う、個性を気にするのかも知れない。もう、入口の前に立っている。

「トラップは意味無しか……ごめんなさい、後はファントムお願い」

 指示するアリスには策ありなのだろうか。

「がんばります」

 いつになく明るく答えるファントムは、戦闘用マシンである。しかし、未完成であるとともに、先日撃った砲撃の影響で不具合も生じている。最強の戦士達に対してどれほどの対応ができるか、おじけづくことも無く赴く彼は、AIであるがゆえに勝機の無さも理解している。だが、皆を守るため、対応可能な戦力は彼だけであることも理解していた。

 今、格納庫の入口が開いた。ファントム自身が開けたのだ。動けない自分の方へ誘導するために。

「ご招待されるとはね」

 一人が嬉しそうに言う。三人はそこへと移動する。

 言葉を発した一人は躊躇なく踏み入る。後の二人は後方などを警戒しつつ続いて中へ入る。

「この前のはおまえか?」

 同じ顔をした者の真ん中の一人が問う。ミサイルを迎撃したことについてだろう。

「そうだ」

 ファントムはあっさり肯定する。

「聞いておいてなんだが、話せるのか」

「あなた達は何者でございましょうか?」

 ファントムは時間稼ぎも兼ねた問いを返す。

「面白い、そうだな、少しお話ししてみようか」

 時間稼ぎの意図をくみつつも応じる。本来の目的なのだろうか。

「話をするのはかまいません」

 ファントムはゆっくりと応じる。

「ほほう」

 見た目からは、想像していなかった返答に関心したか。

「さて、お前たちは何者だ?

 最初は武蔵が手配したものと考えたが、タイミングがおかしい」

 これだけ聞ければよいのかもしれない。

「我々は、別な星から来ました。武蔵殿と合流したのは偶然です」

 ファントムは答える。本当のことを言う必要もない。

「ふむ、機械と問答しても意味がなかったか」

 読まれている。

「わたしの問いにも答えていただきたいのですが」

 ファントムは会話を続けながら、胴体上部の一部を開くと、そこから多関節の腕が四本現れた。先が刃になっている。時間稼ぎにはあまりならなかったのか、十分だったのか。

「同類だよ。別な星から来たのさ」

 律義に先ほどの問いに答え、ファントムの戦闘態勢と合わせる様に武器を構える。真ん中の者は大鎌、左は大剣、右は槍を持っている。

 左の一人が斬りかかる。それはファントムに届く前に火花とともにはじかれた。と同時に四本の腕が襲うがはじかれた剣を即建て直しそれらを受け流す。

「電磁バリアか、おもしろい、が」

 大鎌持ちが腰の後ろから拳銃らしき武器を取り出し天井を数発撃ち、一発をファントムに向けて撃つ。弾はファントムにあたり火花を飛ばして跳ねた。

「まずいですね」

 バリアは天井に設置された装備だった。

「硬いな」

 撃った銃は地球の物では無い、威力はそれなりだったのだろう。はじかれた先で当たった壁がえぐれている。

「それだけが取り柄でして」

「ぬかせ」

「今は、ですがね」

 本当の力は出せないと言いたいのだろうか。

「それは残念だ」

「では、今回はお引き取りいただきたく」

「俺たちにも立場があるのでな。 それに、三人で相手するのも申し訳無いくらいだが」

「ふむ。 奥には、第二、第三の私が居るかもしれませんぞ」

「お前たちはビームセイバーで行け、腕は俺が引き受ける」

 ファントムの言葉は無視して、大鎌持ちが指示する。

「了解」

 二人が応じる。大鎌持ちがリーダーなのだろう。

「時間切れですか、残念です」

 いつもののんびりした口調は、とても残念そうには聞こえない。

「残念か、そうだろうな」

「いえ、きれいなお嬢様方を道ずれにしなければならないことがです」

「なに?」

 その時、ファントムは光に包まれ、その光は瞬間的に広がり、攻撃に向かう三人の少女を飲み込んだ。

「ばかな……」

 大鎌持ちが発した言葉も光に溶けていった。



 同時刻、米空母。

 艦内に警報が鳴り響く。

「侵入者です」

「詳細を知らせろ」

「おそらく一名、身長百八十センチ以上はありそうな男です。剣と短銃で武装しています。甲板を突破され、艦内に侵入されました」

「あらあら、たいへんそうね」

 ナンバーズ8がにやにやしながら聞く。

「申し訳ありません、警備を固めますのでお部屋へお戻りください」

 ちらりとモニターを見て、

(まさか、小次郎か?)

 顎に手を当て考えてる風に。

「いや、俺が行こう。 じゃまだから、他の奴は下がらせておけ。 あと、艦内放送をオンにしなさい」

「よろしいのですか?」

 その問いにナンバーズ8は聞きかえすなよと言う風ににらむ。

「は、了解いたしました。館内放送を入れろ」

 部下に指示を出す。部下が慌ててスイッチを入れる。

「どうぞ」

「小次郎、やはり生きていたか」

 出てくる兵を麻痺銃と峰打ちで倒しながら進んでいた小次郎の動きが止まる。

「やはりとはね」 相手には聞こえ無いだろうが声にだした。

「聞こえていたら、甲板に戻れ、少し話をしないか、他のやつは引かせる」

「はいはい」 そう答えて、小次郎は来た方向へ歩き出した。

「皆さん、痛かったでしょうが謝りませんよ」

 倒れている兵士たちに向かって言葉をかけながら進み、甲板に出るとナンバーズ8が待っていた。

「おもしろい恰好だな」

「時間があったから、いろいろ作ってみました」

 小次郎の手に持っていた刀の刀身が伸びる。内部に入った際には短くしていたのか。銃は胸のホルスターにしまい、刀を両手で持つ。そしていつのまにか、周りにドローンが十機浮いている。

「そんなおもちゃに意味があるとでも?」

「武蔵と遊ぼうと思って作ったんだがな」

「武蔵はどこだ?」

「僕も知らない」

「とぼけやがって、まぁいいか」

 武器を構えてから、

「じゃあ、俺が遊んでやるとしよう」

「話ってのは、終わりなのか?」

「ああ、もういい」

「そうか、では、 巌流 佐々木小次郎 参る」

 小次郎は人外の速さで斬りこむ。ナンバーズ8が受けた瞬間、ドローンからビームがその華奢な四肢目指して伸びる。ビームが体を焼くが、二機が落ちていた。

「いつのまに」

 小次郎が関心した様に言う。

 追跡者が手を上げると、その手にブーメランらしきものが戻ってきた。

 そして、受けた火傷は消えていくところだった。

「そんなものか」

 余裕があるというアピールはクローンの自己顕示欲かもしれない。

「そうだな。でも、薬はやめようぜ、ずるい」

「ふん」つまらなそうに鼻を鳴らす

 とはいえ、ドローンの機能はレーザーだけとは思えなかった。脳波コントロールだろうが、動きは対して早くない、つまり見え見え過ぎだからである。近づいて自爆程度だろうか、なんにしても手を出してみないとわからなかった。

 その時、ドローン全機が腹を向けた。

 フラッシュが光る。

「?!

 やはり子供だましか」

 目をつぶって斬りかかる。が、数歩進んだところで足が止まる。

 少女の小さな胸の間から、矢の様なものが突き出ていた。

「悪いな、お前たち相手にまともにやって怪我したく無かったもので」

 小次郎の言葉とともにその視線の先、

 ナンバーズ8は後方を向く。

「お前……は」

「こちらも悪く思わないでください。わたしも地球が大好きなのですよ」

 先日喫茶店に来た男だ。ボウガン風の武器を構えたまま小次郎の傍に移動する。

「では、さようなら」

 小次郎は躊躇なく首を落とした。

「米軍の皆さん、どうします? こちらは目的を達したので、これ以上の戦闘は望みませんが」

 聞こえる様に言って、様子を見るため少し待っていると、責任者らしき者が出てきた。

「今は、指揮官不在のため代理でわたしが話を聞かせていただく」

 言い終わった瞬間。

「おまえはどいてろ」

 そう聞こえたとき、今度は代理と言った者の首が落ちた。

 代理の体がゆっくりと倒れ、後ろに立つ人物の顔があらわになった。

 小次郎が刀を構えると、ドローンがすべて破壊されて落ちた。

 上を見ると、宇宙船が姿を現した。

「嘘だろ」

 小次郎が小さくつぶやく。

「久しぶりだな」

「まいったな」

「ナンバーズだけなわけ無いだろう」

「今回はそこまでするのか」

「俺におとなしく殺されろ」

「私は長生きしたいのでね、武蔵のためになんざ死ねるかよっと」

「では、大人しく武蔵の居場所を教えてくれるか?」

「ほんとに知らないのだが」

「それでは、さよならだな」

「待て、お前たちが来たのなら、やっぱりそっちに付こうかな?」

「何を今さら」

「とはいえ武蔵を追う理由次第だがな」

「俺達も知らないのさ」

 その時、小次郎は現担当者に、

「ここはなんとかする、お前は逃げろ」

 小声でそう言って、敵に斬りかかる。

 相手も剣で受ける。

「行けっ」

 小次郎は、つばぜり合いをしつつ言い放つ。現担当者は、すぐに海へ飛び込んだ。

「あいつはいつでもやれるから、今はお前だ」

 敵は、そちらに目もやらずに小次郎と向かい合う。

「そいつはありがたい」

 小次郎は上段から大振りで斬りかかる。見え見えの攻撃を受けるために相手は剣を上げるが、そこに受けるべき刃は無かった。次の瞬間、下から刀身が上がる。刀身の長さを変えた変則技だ。

「ぬお」

 右手が血の糸を引いて剣ごと宙に舞っていた。

「秘剣燕返し、なんちゃってな」

 まさに必殺の一撃を決めた小次郎は、すぐにとどめを刺しに行くはずだったが、動くことができなかった。

 首筋に刃があたっている。その刃を持つ者他鬼気を放つ数名の人影が後ろに立って居た。

「なぜ、殺さない?」

 小次郎は刀を落とし両手を上げて聞く。

「とりあえず、武蔵を見つけるヒントくらいいただけませんこと?」

 首に刃を突きつけながら、美女が聞く。

「こいつは殺すって言ったぞ」

 今腕を切り落とされ苦しむ男をこいつと指さす。

「あたしはやさしいのですよ」

 小次郎の胸のホルスターに収まっていた銃を奪いつつ答えた。

「そいつはありがたい」

 小次郎はありがたく無さそうにぼやく。次の瞬間、落とされたはずのドローンのうち二機が爆発した。機能が生きていたのだ。

 敵の視線がそちらを向く。一瞬で視線を戻すが、小次郎の姿は無かった。海の方から何かが落ちた様な音がした。

「なんで見逃したの?」

 宇宙船に向いて言う。

「なんでわたしが?」

 宇宙船から苦情が返る。

「そうですか、まぁいいでしょう、武蔵に小次郎ですか……」

 その時、ごとりと音がした。腕を切られてひざまづいていたはずの男の首が滑り落ちたのだ。

「あの一瞬に、やはりやっかいな男ですね」



 マグナムとナンバーズの戦闘は、ナンバーズが押していた。体躯に対して大きいと思われる剣を軽々と振り回す。

 マグナムは刃の無い棒が一本とプラズマブレードの二刀流だ、受けと攻撃用だろう。

「がんばるね」

 ナンバーズは余裕か遊んでいるのか言葉をかける。

 マグナムは答えない。

 その時、遠くに光が見えた。二人とも光の方に目を向ける。

「何をした」

「基地ごと消滅させた」

「なんだと?」

「あとはおまえだけだ」

「このやろう」

 攻撃速度が増す。今までは手を抜いていたようだ。戦闘が好きなのか、やはり楽しんでいたのだろう。

 先ほどのやりとりでは基地に向かったナンバーズとは因縁ありそうであったが、作戦遂行が何より優先するのだろう。そして本気を出した強さは、マグナムを圧倒する。

 ついに右手が落とされた。

「残りの手足を落としてから持って帰ってやろう」

「わたしも自爆できるんだがな」

「やってみろ、せっかく持って帰ってやると言ったんだがな」

 どうせ自爆するなら、持ち帰った先でという提案ではあるが……

「意識を残してくれるなら話に乗ってもいいが? まぁ、怖くないなら近づくといい」

 恐怖はそもそも無いのだろう、だが自爆は困るのか、思案しつつなのか、じりじりと迫る。

 その時、マグナムは体勢を崩し膝を付く。膝関節の部品に異常が出たのだ。もっとも他の部品も近い状態だろう。

「ここまでのダメージは大きい様だな」

「自爆の威力に違いは無いし、誘いかもしれんぞ」

「考えても仕方ない、どうせ俺も捨て駒だからな、好きに自爆しろ」

 強がりとともに、剣が振り下ろされた。事実、マグナムには、もはやかわす力は無かった。

 が、剣は止まっていた。

「遅くなった」

 振り下ろされたはずの剣は、兵馬が相手の手を押さえ止めていた。

「兵馬か」

 その名を口にしたマグナムは小さな笑みを浮かべた様に見えた。

 兵馬は落ちたマグナムの腕に気づき。

「貴様がやったのか」

 怒りの目を向けて問う。

「そうだと言ったら?」

 悪鬼の表情で答えたナンバーズは縦に割れて倒れた。いつ抜いたのか、兵馬は刀を握っていた。

 その結果を見たマグナムは、

「メグ……交代だ……」

 と言って目を閉じ倒れた。

 その顔に光がさしてきた、ようやく雲から月が現れたのだ。今日は満月だった。

 そして、メグが目を少し開いた。月明かりに照らされたメグの顔はいつも美しい。

「兵馬……さん」

 戦いは終わった。


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