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悪いスライム、策を練る。

 色々と実戦経験の無さが痛い。そもそもあたしの土魔法は空中では使いにくい魔法だ。高速飛行スキルとかではないから空中にいる時点で的でしかないし。それに今気付いたけど、ワイバーンってあたしと相性最悪の魔物だわ。土魔法しか無いのに空中戦は無理じゃない? 収納してある体内の石とか土とかはまだ使えるけどね。空中に魔力だけで土を発生させるには本当に莫大な魔力が必要になる。体内から吐き出した土でもいいから、有るものを再利用するのは魔力消費がとても少なくて済むんだよね。


 あたしは体内に入ってる土を吐き出して土強化で盾に変える。炎の玉をなんとか食い止めた。体が小さいのはこういう時に便利だ。盾は狭い範囲で受けた方が頑丈だからね。

 さらに吐き出した土をストーンランスにしてワイバーンに射出しつつ地面に降りた。空中戦は苦手だからワイバーンを飛ばさせないようにしないとね。ストーンスパイク! トゲを何本も出して地面に縫い付ける。……躱される。無理ゲーだねこれ。ちょっとバランスを崩せたけどそれだけだった。


 地面に接していれば土魔法はより真価を発揮するけど、しかし空を飛ばれたら落とし穴とか意味がないし、どうしたら良いんだろ?


 ちょっと火を食らったのでヒールをかける。まあこっちも簡単には死なないよ。ヒーラーだしね。高速移動やステップを繰り返し狙いも付けさせない。空中でジグザグに飛ぶピンクのスライムの姿はさながらピンポン球のようだね! 早く人間になりたい!


 思い付きで穴を掘り地面を突き進む。ワイバーンだってずっと飛んでいるわけにはいかないよね。体をできるだけ縮めて気配を殺し、一気にクレイランスで地面を突き破る。さすがに自分に当たる(・・・・・・)のにストーンは使えないよね。


「アザレア、出てきた?!」


「いえ、ただクレイランスだけですね?」


「ど、どこにいるんでしょう。まだ土の中?」


「この戦い方、めちゃヤバい。ワイバーンじゃなかったらもう死んでる」


「確かに、飛べなければいくらでも地面から槍が出てきますからね」


「そ、それに造形も自由にできるなら檻に閉じ込めたりもできます。飛べないと勝ち目が薄いですよ!」


「いや、終わったな」


 突然ギルドマスター、ブレイズさんが喋ってみんな驚いてるね。あたしはさっきのクレイランスで……。おっと、ワイバーンはこちらを見失ったから勝ち名乗りかなんなのか上を向いて遠吠えしてる。その視線の先にはピンク色でぷるぷるの極上美少女スライムが! ただの球体ですね、すみません!


 めっかっちゃった! 身体中から土を吐き出してウォールに乗せて作った質量爆弾、落ーとーすーよー!


 自分の体を土で包んでクレイランスで土塊に見せかけて空に飛ばすとかスライムにしかできないかなりの荒業を使ったので敵も味方もみんなあたしを見失ったようだね。

 ブレイズさんには分かってたみたいだけどね! 魔力を感知したりできるのかな?


 うん、直径二百メートルは有りそうな闘技場を覆うような大量の石槍がウォールで固定された状態で空中にとどまっています。準備オッケーです。魔力の壁、ウォールを消します。ウォールに乗せておいた石槍が重力に従って落ちます。名付けてストーンレイン!

 ちなみにさっき地下で大量に土を吸収しておきましたので足元が崩れてワイバーンは飛べません。飛ぶってそんなに簡単じゃないんだよね!! 動けないワイバーンに向けて魔力で加速した槍を叩きつける!


「ピギャアアアアっ!!」


 切なげな叫び声を上げて、ワイバーンは蜂の巣になった。ミンチよりひどいよ。

 ふう、ヤバい敵だったわ。経験値足りないから! いきなり空中戦は無理だから! 勝ったけど!


「Bランク認定! 次だ!」


 あれえ、休みとか無し?! この状態でAランク相手とか厳しくない?! ブレイズさん鬼畜過ぎる! まああたし体力めちゃ有るみたいだけど。魔力が強いからだね。ちなみに魔力が強いとは魔力吸収力の強さ、つまり回復も速かったりする。それでも連戦は辛い!


 Aランクの敵はマンティコアという蠍の尻尾とコウモリの羽がついたライオンだ。ワイバーンの後に出てくると言うことはワイバーンとは比べ物にならないくらい強いんだよね? しかも飛ぶ!


 ちょっと休ませてー! うおっ、いきなりブレス来た!


 炎の息ってかレーザーだ。確かにこれはワイバーンじゃ勝てんわ。狙いをつけさせないようにステップで動き回る。空から毒や酸を降らせるけどなんかバリア張られる! まあ毒持ちのマンティコアに毒は効きづらそうだ。神経毒と出血毒じゃ系統が違うけどね。ランスの雨も結界に弾かれるな。もう体内の土もほとんど無いので一旦下に降りて土に潜る。土を食べまくる。闘技場に撒き散らしたストーン等も回収する。スパイクを闘技場全体に立てていく。向こうの動きも把握できないけどこちらの動きも分からないだろう。体をギリギリまで縮めてストーンランスをいくつか下から放ちながら闘技場の角から顔を出してマンティコアの位置を確認する。あ、目の前に大きなマンティコアのお尻が見えた。なんかランスやスパイクを避けて疲れて座ってるらしい。

 この状況ならやるでしょ。かんちょーっ!! ストーンランスを尻子玉に突き立てた。


「ギャバアアアアアアアアアアアアアアっっ!?」


「アザレア、女の子は浣腸してはいけない」


「あ、あざれあさん、それはさすがにドン引きです……」


「ま、まあこれも戦いだから仕方ないですね」


「容赦無いな」


 三人もブレイズさんもドン引きである。幾人かの冒険者たちもお尻を押さえて「おうふ……」とか唸っている。これは死闘だよ?! 河童だって尻子玉狙うじゃん?!

 ま、まあマンティコアうずくまっちゃったけど。今がチャンスだね!


 一気に高空までステップで飛びあがり体内の石を隕石として叩きつけるために固めに固める。魔力をガンガンに注ぎ込む。どうせここで終わりなんだから惜しみなく行くよ!

 魔力でさらにギュルギュル回転もかけちゃう。


「食らえ、メテオランス!!」


 闘技場をぶっ壊すつもりで槍を叩きつける!!


「ギャオオオオオッ!!」


「うおっ、レーザーきた!」


 カウンターのレーザーでメテオランスの軌道が少しずれた。でも翼にダメージを与えた。土の上なら負けないよ!


 真正面から撃ち合うのは不味そうだけど地中に潜ったらあのレーザーで焼かれそうで怖いよね。隠れてる場所が分からなかったら大丈夫だろうけど。できるだけ深い落とし穴を掘って誘い落とそうかな?


 もう、メテオランスで倒せたら良かったのに!

 手駒は何か有ったかな。せめて剣とか有れば金属も土魔法で操作できるから落としまくってやるのに。無い物ねだりか。


 スパイクつき落とし穴だけは準備しておこう。殴り合いは勝てなさそうだなー。いや、やってみる?

 石を靴下に詰めるみたいに触手の先端に溜めて即席ハンマーだ。鞭みたいに叩きつけたらちょっとはダメージ出そうじゃない?


「おらあっ!」


「マ、マンティコア殴ります?」


「普通は殴らないわよ」


「アザレアって普通だっけ?」


「あんな普通のスライムがいるか」


 四人とも酷くない? 普通じゃないのは可愛さだけですよ! ただの球体だけどね!


 ぶん殴りまくったマンティコアはさっきの尻子玉への一撃もあって完全に怒り狂ってる。あたしも翼や脚にダメージを入れていく。

 分身とかできたらなあ。ステップで空中に展開したウォールを蹴って一気に後方に飛ぶ。すると狩猟本能を刺激されたマンティコアは追い掛けてきた。よし! 終わり!


 マンティコアはまんまと落とし穴の上に……手足や翼にダメージを与えたので崩れる地面から逃げようともがくも上手くいかない。特大の岩を生成(吐き出)して、頭の上から落とす。


 これでもう死んでくれる?


「ギエアアアアアア……」


「うー、スライムだから呼吸しないのになんか息があがってる気がする! もう一個追加! それから生き埋め!」


 闘技場で飲んだ土を全部吐き出してマンティコアの落ちたスパイク付き落とし穴をみっちり埋め尽くす。

 会場全体から「えげつない」という声が聞こえるが、負けるより良いでしょうが!


さすがに疲れきった上に生き埋めにされたマンティコアは、もう土の中から出てくることはなかったよ。掘り出して素材にしたけどね!






 次回、なんと、アザレアは酷くない。

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