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スライム、ギルドに入る。

 さて、美味しいご飯も食べたし……お腹ふくれないけどね、スライムだから。ちょっと寂しい。


 スライムも冒険者になれるらしいのでヒーラーで登録することにする。みんなは山賊ゴブリンの報告をして素材を売るらしい。色々貴重な薬草とかレアアイテムも見つけたそうで、そのお金で宿泊準備したいらしい。


 なんか友達を家に誘う感覚を思い出してものすごく楽しみになってきた。ピンクのボディがぷるぷるするようだ。


「アザレアさん、すごく揺れてますね!」


「揺れてる? 楽しみだからかな!」


「私も楽しみです!」


「ふふ」


 どうやらカーシーのケイシーもオーガのユキメもインプのイリスもダンジョンは楽しみなようだ。私もすごい楽しみだよ! あー、スライムって楽しみだとぷるぷる震えるんだなあ。新発見だよ。


「さて、ここが冒険者ギルドです!」


「ようこそ、アザレアさん、私たちの拠点に」


「歓迎する」


 おお、けっこう綺麗な白い建物だ。壁が壊れていたりしないんだな。


「よく壊れるんで綺麗なんですよ……」


「魔法で修理できるのでみんな気軽に壊したりするんです……」


「喧嘩も多い」


「物騒な話だね……」


 綺麗な理由が怖かった。まあ今の時間は人が少ないようだ。仕事は朝のうちに受けるし、報告は夕方が多い。今は少し遅めのお昼を食べたところなので人は少ないらしい。まあこういうとこって絡まれるのはお約束だよねえ。


「アザレアに絡むとか……Aランクでもないと即死」


「えっ、そう?」


「う、うーん、はっきり言ってランクが違うと思いますよ?」


「私たちでもCランクですけど勝てる気がしませんしね」


 やっぱり引きこもってるうちに強くなりすぎたのね。これからはみんなのダンジョンマスターとしてもっと強くならないと駄目だろうなあ。ダンジョンを守らないと。


 さて、ギルドに入ろうか。三人に少し遅れてギルドの中に入る。ドアを触手で閉めてぽよぽよ遅れて着いていくと獣人らしいおっさんに道を塞がれた。


「なんだあ? スライムがギルドに来るとかふざけてんのか?!」


 ん、なんかいきなり犬? 獣人に絡まれたぞ。ケイシーみたいなモフモフだ。ケイシーは白い毛だけどこの獣人は茶色い。踏みつけに来たので大型化する。


「小さいね、ネズミ獣人かな?」


「は?!」


 ギルドの天井に付くくらいの大きさになってるので本当にネズミに見える。ちっさ、ぷぷぷ。


「あたしに喧嘩を売るんだね? 買うよ?」


 スライムになってからあんまり血を見るのも怖くなくなってるんだよね。ゴブリン退治も平気だったし。モンスターの感性になってるなぁ。


 獣人の脚を触手で掴み天井の高さまで釣り上げてぶらぶら振ってやる。何回かバンジージャンプさせてあげる。あ、漏らした。臭いな~。


「ねえ、このお漏らしネズミどうしたらいい?」


「ぎゃっはっは! お漏らしネズミだってよ! ガランの奴いい気味だぜ!」


「スライムの能力が見た目によらないことくらい知らないのかよ」


「スライムちゃん、そんな馬鹿食っちゃって良いぞ!」


「え、臭いからやだ」


 ギルド中が大爆笑である。どうも評判の悪い男のようだ。これからはお漏らしネズミの二つ名をもらって……田舎に帰るんだろうな。可哀想なことをしたかも。そっと降ろしてやることにした。


「目立ちすぎ」


「あー、やり過ぎた?」


「ま、まあ手加減して怪我をする方が馬鹿らしいですよ」


「本当に馬鹿な獣人がいたものですね。見た目は弱そうな相手の実力が遥かに上なことなどいくらでも有りますのに」


 みんなけっこう辛辣だ。まあ冒険者は自己責任なんだろうな。特に赤の星にはモンスターしかいない。実力至上主義も手伝ってるんだろう。弱いことはますます許されないと感じる。また引きこもらないとね。


 お漏らしネズミは泣きながらギルドを出ていった。みんな笑うか冷たく睨んでるだけだ。シビアだなあ。


 ちょっと実感したわ。あたしはモンスターの星に生まれ変わったんだ。スライムで。


 元の大きさに戻ってぽよよんぽよよんとカウンターに向かう。隣が酒場になっててそこからざわめきが聞こえてくる。時々大きな笑い声も。モンスターの星でもこういうとこは人間みたいなんだなあ。カウンターは役場みたいな感じだ。ケイシーたちは先に色々報告をしているらしい。イリスに誘われて受付カウンターに登る。


「ぷるぷる、あたし悪いスライムだよ!」


「よ、ようこそ冒険者ギルドへ。変なスライム……」


 ぼそりと失礼なこと呟かれた。見たところ猫の獣人のようだ。キジトラ柄で目は青い。語尾はにゃ、ではないのか。猫の顔だからかすごく若く見える。


「それでは初登録と言うことですので色々と説明させていただきます。私はケットシーのクラリスと申します、宜しくお願いいたします」


「あたしはアザレア! 悪いスライムだよ!」


「そ、そうですか。悪いスライムって強調したいのかしら……さっきみたいに暴れたりするのかしら……」


「暴れないよ! 小粋なスライムジョークだよ!」


 ぷるぷる。そもそもあたし魔物なんだから悪いので当たり前じゃないのかな? まあ暴れたりしないけど。攻撃されない限りは。


 そのあともぶつぶつとクラリスさんは文句を言いつつ説明してくれた。

 ランクはFから始まり、E、D、Cと上がっていく。ケイシーたちはCランク、一人前の冒険者らしい。モンスターは実力至上主義、強ければランクアップ。古の魔神クラスなら3Sまで有り得るらしい。まあ普通にそこまで行くのは魔神クラス以上くらいらしいけど。このあと戦闘テストをするそうだ。ちなみに死んでも自己責任。依頼は指名されることもあるが無視しても問題がない。そもそもお金で人を買うようなことは気分悪いもんね。モンスターなら問題は力で解決。ラフすぎない?


 貴族とか殴っても大丈夫らしい。殴られる貴族が間抜け。まあ軍隊とか差し向けてくるのかと言えば、恥の上塗りになるからまず無いらしい。貴族もモンスターは実力至上主義で、王様を倒せたら王様になれるらしい。面倒くさいから誰もやりたがらないそうだが。

 モンスター……自由すぎるだろ……。


 強ければお金を払わないで物を買ったり……さすがにそれは無理らしい。一応治安組織は有るのね。騎士とかは力自慢が多いそうだ。それ本当に治安組織として機能してる?


 さて、試験ということで闘技場に案内される。野生モンスターと戦うらしい。それ大丈夫なの?

 Sランクのギルド員が死なないように守ってくれるそうだ。モンスターはC、B、Aの三種類。Cに負けたら、戦えてたらD、ダメージを与えられたらE、戦いにならなかったらFらしい。


 Cランク、ジャイアントボアという魔物が最初の敵だ。見てくれるのはSランクの、なんと、ギルドマスターさんだって!

 ブレイズさんというバンパイアさんだ。銀髪をオールバックにしていて赤い目。見た目はかなり若いけどバンパイアの年は分からないな。強そうな気配を感じるね。勝てるかな?

 まあ彼と戦うわけではない。ちなみに日光とか大丈夫らしい。


 ジャイアントボアは五メートルくらいの体高の猪だ。そのジャイアントボアが小さく見えるくらい闘技場は広い。


 いきなり高速で走ってくるジャイアントボア。え、開始の合図とか無いの? ああ、こういうとこも実力至上主義なのね。モンスターが開始の合図をするはずがない。

 ケイシーたちは私を観客席から見守ってくれている。他にもさっきのガランをやっつけた時に応援してくれた冒険者たちが見てくれている。


 私は魔力の壁、ウォールを階段状に組み上げ既に上空でのんびり毒を吐いている。リアルに出血毒を。強酸も吐いている。空中に攻撃できないジャイアントボアはもがいて死ぬだけだ。あたしの敵にはならないね。


「それまで! Cランク認定! 次!」


 さっぱりしてるね! そんな簡単に決まるんだ。この辺りはモンスターも気持ちがいいかも知れないね。


 猪は片付けられて、次はBランクの飛竜、ワイバーン……いきなりドラゴンだよ!

 さてと、どこまであたしは戦えるのかな? 楽しみだわ!


 ゆっくりと出現するワイバーン。これは召喚魔法か。まるでテレビのノイズのようにその巨体が出現する。体高はさっきのボアくらいだけど、全長は倍くらいあるかな? 尻尾があるから十メートルは軽く超えている。前足はなくて鱗の生えた鶏みたいにも見える。


 あたしが空から観察していると、ワイバーンはいきなり炎の玉を吐いてきた。うわおっ!!






 次回、アザレアが酷い。

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