湿地で戦って。
村を襲っている兵隊は蹂躙し、村の人々は回復していく。クレス君もルシアと連携してどんどん帝国の兵士を倒していく。
敵兵と真っ先に戦って殺されたらしい兵士や屈強な村人をリザレクションで蘇生し、大怪我を負った人を集めさせてエリアヒールで回復する。
その人たちがそのまま感謝を告げてから走っていき、敵の兵士を蹴散らしている。あたしがいるだけで村の兵士でも軍隊とやりあえるわ。
これ、敵の目からしたら恐怖でしかないわね。殺した兵が次々に蘇って襲いかかってくるのにゾンビみたいに聖属性とか弱点じゃないんだもの。
怪我をしたら早い段階で退かせて回復する。あたしの回復魔力を浴びれば強くもなるし体力も回復する。そして戦って勝てても負けても経験値が積み上がっていく。敵にとって最も大切なのはあたしから殺すことだ。
弓兵がそれに気付いてあたしに弓を浴びせるけど、魔力もこもってない矢なんてあたしに効くものか。身体中に刺さる矢をそのまま収納してウエポンシュートで打ち返す。どんどん敵兵が減るだけね。
ついでに遠くの敵を威圧感を込めた魔力の矢で貫いて正気を奪う。突然狂って頭を抱えて転げ回る兵士はホラーだわ。まあ原因はあたしだから仕方ないわね。
イリスは次々と敵の頭を聖属性が付いたオリハルコンメイス(国宝級)で叩き潰していく。分体も全部同じ武器になってるからイリスだけで一軍潰せそうね。ただ分体の武器は体から離すと無くなるのね。もったいない。
イリス分体はあたしのサポートに慣れてるから死体や怪我人の回収、軽度な怪我ならその場で回復、火の着いた家を水魔法で消火と、八面六臂の大活躍だわ。あたしより活躍してるわね!
まああたしは回復しながら敵を倒してるけど。ちょうどいいので敵の武器や矢を拾いまくる。敵の死体は消化吸収して魔力に変えていく。あたしって無限に戦えるわね。
体を五十メートルほどに肥大化させて巨大ロリ幼女になって、指先から触手を村中に伸ばせば敵は最早逃げるしかできない。まあ逃げるなら放置ね。あたしの恐ろしさを帝国中に知らせてね? 何人かは正気を削って足手まといを増やしてもやる。
まあこの巨人形態で触手を伸ばすのは味方も怖いと思うので戻っておく。後はイリスに任せれば良いわ。
赤ノート先生によるとダンジョンを作ったら配下の分体も召喚できるのね。やはり早めに作らなくては駄目だわ。分体を作って本体はダンジョン作りに向かうのが良さそう。王都に着いたらすぐにやろうかな。
村の炎は完全に鎮火し、怪我人も無し。さすがは戦場のスライム聖女ね!
村の人々は怯えながらもあたしと使役者のルシアに感謝していった。まあ燃えたものは戻せないから敵の物資は村人たちに全部あげた。
「あの、報酬などは?」
「それならルシアがこの村を助けたと冒険者ギルドに伝えて。武器とかはもらえたからあたしはそれだけで良いわ」
「あ、有り難う御座います。村が潤います」
「そんなに資材とか有るのに略奪してきたってことは完全に侵略目的ね」
ここに砦を作って王都を狙うつもりだったのね。万全の準備で村を攻めたんだわ。まああたしが来てしまったわけだけど。分体でも置いて警戒したいところね。
「私が見張らせる」
「じゃあイリス、分体を周囲の村に広げてね」
「分かった」
あたしたちはルシアの試験のために湿地に向かわないと駄目なのよね。まあもう慣れただろうから更に魔力を渡しておきましょう。もう三千くらいになったから後は自分で強くなってね。
ちなみにカリーナやクレス君も回復魔法で魔力を強引に譲渡してるからそれぞれ六千~一万くらいになってる。もうすっかり魔王だわ。勇者になるのかな?
のんびり湿地を目指して歩く。イリスがあたしを抱き締めたがるのよね。それをルシアが奪い取る。戦場で度胸が付いたのかな?
まああたしは一人で歩けるわ。ショートジャンプで空に飛び、五メートルくらいの高さを歩く。パンツ? いや、スライムボディだからね、そんなもの無いわよ。スカートは椎茸みたいな形になってるわ。
上を見て残念そうな顔をするクレス君なんていなかったのよ。イリスが何故か鼻血を流していたりもしないわ。幻影が見えすぎね!
カリーナならあたしの隣でスカイと飛んでるわ。ルシアはちょっと緊張してるのか剣鉈に風の刃をまとわせて素振りしてるわね。スカートはきっちり覗いてたけど。
単細胞生物に何を期待してるのかしらね?
さて、沼地が見えてきたわね…………。って、なんかゾンビがいっぱい涌いてますが。グール?
けっこう強めの感染力が高いヤバめのゾンビらしい。うーん。スライムってゾンビ化するのかしら。スライムボディにゾンビ化や病気は無効らしい。……スライムボディが一番のチートだと……?
ただゾンビをノーマルスライムに食べさせるとゾンビスライムにはなるらしい。あたしは聖属性スライムだから食べても魔力に変わるだけらしいわ。食べたくないけどね。
ゾンビは回復魔法で倒せるみたいだわ。試験と関係ないグールはあたしが消してもいいよね?
「それが楽だな。私もグールと戦うのは嫌だし、汚いし」
「正直なことね。じゃあエリアヒール。一発ね」
「普通のヒールなのにけた違いの威力だね」
まあ魔力が違うからね。圧の高い魔力を自由にコントロールできるから普通に魔法の効果が高くなってしまう。
さて、ルシアの敵らしいゾンビキメラがいるみたいだわ。ライオンに無理矢理ドラゴンの鱗と翼を付けて背中に人間をぶっ挿してから泥水をかけてスライム状にしたような、どろどろな見た目をしていて実に醜悪。頭が少し禿げて骸骨が見えてるわ。うへえ。
リザレクションとかで一発で浄化してしまいたい。まあルシアの試験相手だから無視して周りの雑魚をヒールを連打して消してしまう。
「見事なものだな」
「これくらいはねえ。さて、ルシアは頑張れるかな?」
「うん、かなりの魔力を感じるな。あれは私より強いかも知れない」
「強引に魔力を底上げしてるだけだから今のカリーナの方が圧倒的に強いわよ」
「私の方が……? ん? 何故かすさまじい魔力を体内に感じるな」
「カリーナやクレス君に回復魔法をかける時はわざとレベルの高い回復魔法で魔力を譲渡していたからね。ルシアの倍くらい有るかな」
「それはすごい。有り難う」
「ルシアを見てもらう報酬だと思って」
「もらいすぎな気がするけど?」
あれ、感謝されてるのに目付きがブレイズさんだわ!
もらっときなさい。返してもらう術なんて無いからね。
ルシアは遠距離から風魔法の矢で徹底的に削っていくつもりらしい。実際に一発入る度に五メートルはある巨体が弾けて砕け散る。数発でもう決着が着きそうだわ。まあマンティコアを多少タフにした程度の魔物だから、今のルシアには通用しないわね。
ルシアは回復魔法も使えるから風と一緒に回復魔法も乗せているのね。アンデッドなのに体を回復できなくて、ワンサイドゲームだわ。あっけないわね。
「ルシアってこの数ヵ月で強くなりすぎだと思うんだが……」
「あたしのせいね!」
「だろうな」
呆れられるのはもう慣れたわ。まあ魔神が隣を歩いていたらヤバいわよね。
結局危なげなくゾンビキメラは頭を失って倒れた。魔法生物だからかダンジョン内で魔物の死体を消した時のように消えてしまったわ。討伐証明は?
ああ、だからカリーナが来てるんだわね。
「うん、文句ない。ってかあれだけ強ければAにも届きそうだぞ」
「Cじゃつまずけないわね」
そもそもこれ、パーティーで受ける任務だし、あたしも手を出せばSは余裕なんだけどね。あたしは使い魔スライムだよ!
次回、もちもふ祭り。
アザレアのもちもち触感を体験してください。
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