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スタンピードが終わって。

 六十話です。有り難う御座います!




 結局なんとか子爵も正気を奪ってからクレス君に連れ帰ってもらったわ。殺したらめんどくさいし。治癒師のみんなと仕事を続ける。

 ちょっとお漏らし子爵を連れて帰るの嫌そうな顔したクレス君がおかしかったわ。楽しい子ね。


 しかしこの正気を削る針って便利だわ。これからもクズにはこれで行きましょう。まさに這い寄る混沌ね。


 さあ、スタンピード。仕事しましょ。何故かドローバンさんとツッチ君の対応が女王に仕える兵士みたいになったわ。まあ仕事しよう。


 相変わらず怪我人が多いんだけど死人もどんどん連れてこられる。体の一部が残ってると生き返らせられるけど、全身腐食して生きてる細胞が少ししか残ってないと無理ね。骨髄とかでは無理だわ。そんなの持ってくる人いないけどね。


 ルシアが半身食いちぎられてカリーナに連れて帰られた。あんた何勝手に死んでんのよ。リザレクション。

 あれね、クレス君の死に癖が移ったのね。迷惑だから死なないでね。魔力もう少し移しとくか。


「治るからって無理はしない!」


「ごめんねぇ」


「ルシアもなかなか頑張ってるからあんまり怒らないでやって。まあ死ぬまで頑張るのはやりすぎだけど」


 そもそもあたしがいなかったら人生終了なの分かってる? 絶対に死なないように戦いなさい!


 今回もあたしが前線に出た方が良いのかな? それだと一向に冒険者の質が上がらないと思うから出かねてるんだけどね。まあルシアとカリーナにはもう少し頑張ってもらおう。

 学園に行くならしっかりとした実力も欲しいだろうしね。しかし学園か。

 楽しみだし頑張ろう。回復回復~。


「学園ですかの。ワシも講師で呼ばれておりますの」


「師匠はいつもなら蹴りますな」


「今回は先生が行かれるからの」


 ドローバンさんとツッチさんも学園に行くのか。何学園だっけ?

 メイシャー王都学園? 何の学園よ。魔法理論とか錬金術とか戦闘を習うのね。


 まあスタンピード終わらないんですけどね。三ヶ月あるからね、これ。もうあと一月ほどだけど。天海嘯(そらつなみ)期全部でスタンピードがあるわけでもないし。


 たぶん大きいスタンピード一回と小さいのが数度あるくらいだろう。回復だけで良さそうだね。


 それからはルシアもクレス君も死ぬことなくスタンピードは終えた。そもそも死ぬと終わりなんだから死ぬなって話だよね。二人とも説教だよ。


「ごめんなさいぃ」


「もう死にません」


「そもそも一回でも死んだら終わりだってのよ。あたしが突然赤の星に帰ったらどうするのよ。無いとは言い切れないわよ」


 さすがに二人も怖くなったのか青い顔でお互いの顔を見ている。だいたい二人とも簡単に死にすぎだ。しかもどう考えてもあたしを当てにして死んでるし。クレス君の最初の一回はがちだったけどね。命は大事にしなさい!


 反省会が終わったので祝勝会することになった。街に残っていた人が集まって冒険者ギルド前でお祭り騒ぎだ。ちなみに埋まってる貴族は森の中に埋め直した。さすがに死体の上でお酒飲めるほど豪胆じゃない。街にいつまでも埋まってるのも気持ち悪いしね。

 今にしてみれば正気を奪うだけで良かったかしら? まあもう生き返らせられないから仕方ないわね。……また魔物らしくない考え方してるわね。権力も持ってるし復讐とか考えるタイプなんだから殺しておけば良いのよ。……青の星だと不味いかしら。


「それで、クレス君の魔物はどこかしら?」


「僕の魔物は……あれ?」


「見つけた」


 おうっ、なんか後ろから抱き付かれた。さらにもちもちされている!!


「イリス?!」


「召喚された。アザレアと一緒に」


 な、なんだってー!

 近い場所にいたから巻き込まれたのかしら? ケイシーやユキメは大丈夫なの?


「魔力を感じられないから二人は来てないと思う。たまたま私だけ」


 赤ノート先生に聞いてみた。昔河童のサンシャインの場所が分かったしね。相手が望んでる範囲なら個人情報も分かるみたいだ。うん、他には仲間は来てないみたいね。細かい状況までは教えてくれないから心配かけてるかも分からないけど。カルさんは何故か場所も分からないわ。

 何となくだけど芦田さんが止めてる気がする。赤ノートの匙加減はあの人がコントロールしてるの?


「イリス、良かったね」


「恋人みたいですぅ」


「恋人。アザレアは私の」


「イリスのじゃないわよ!」


 あ、むくれた。けどもちもちはやめないのね。ほっぺたもちもちはやめなさい! 触手でペタペタするわよ!


「とにかく天海嘯(そらつなみ)は終わったんだし、王都に行くのよね」


「そうなんだけど、カリーナ、魔神の噂とか知らない?」


「魔神……封印を解くつもりとか?」


「いや、封印は放っておいたらそろそろ解けるらしいわ」


「本当に?! 大変じゃない!! 邪神教徒が暗躍してるのってそれでなの?」


「邪神教徒ですか……。話は聞いていますがなんだか不穏ですね」


 ふむ、カリーナもクレス君も何か知ってるみたいね。どうやらのんびり鍛えてる暇はなさそうよ。


「魔神が復活したらどうするんです?」


「ここの神様に頼まれててね。殺すわよ」


「!?」


「主神アシーダ様?!」


「アシーダ様、アザレア、会ったの?」


「まあねえ」


 そういえばイリスは僧侶だっけ。赤の星でも神様なんだよね。全然気にしてなかったけど。ほぼ引きこもりってやっぱり駄目ね。色々世間知らずだわ。もともと前世から世間知らずだったけど。


「アザレア。無理は駄目」


「分かるけど魔神相手だとたぶんギリギリの勝負になるわよ」


 カルさんほどの魔神はいないけど、それでもまだ魔神と余裕で戦える力は無いと思うのよね。どれくらい戦えるか分からないけどエターナルヒールは必要になるかも。数分あれば敵のやり口は分かるだろうし、それで魔力回復して戦えば何とかなるはず……一撃で消されなければね。


 うーん、一撃で消されそう。


「でもイリスがいれば勝てそうよ。協力してくれるわよね?」


「愚問。アザレアと私は一心同体。もちもちペタペタする」


「……本音が漏れてるわよ」


「仲が良いですぅ!」


「本当だね。まあ魔神と戦うとかはさすがに無理だけど、王都までは着いていくわよ」


「僕も魔神の情報を集めるくらいはやらせてください。封印が解けると言うなら急がなくては」


 カリーナとクレス君は本当にいい拾い物だったわね。これで魔神捜索の目処はたった。あとはあたしが鍛えないとね。……やっぱりダンジョンかしら。


「アザレアダンジョン青の星支店も作るわよ、イリス」


「分かった。楽しみ」


 千里眼とテレポートがあるから有力な土地があるなら王都から離れていても大丈夫だけど、どうせなら王都近くに作ればお客も増えそうね。赤の星でのノウハウも有るし、いいダンジョンにするわよ。ふふ、ワクワクしてきたわ。


「ダンジョンの中で修行すると強くなるって本当なの?」


「カリーナはダンジョンには入らないの?」


「何度かは入ったけど、大していいお宝もないし、空気も悪いのよね」


「それは死んだダンジョンじゃないの? 青の星だとそうなの?」


「作ってみないと分からない」


「まあそうよねえ」


 祭りが終わり、あたしたちは王都に向かう旅の準備に入った。ドローバンさんとツッチさんは先に王都に向かったらしい。

 ダンジョン作りも楽しみだけど、まずは王都への旅を楽しもう。


 学園にワクワクする気持ちも隠せない。魔神との戦いには怖さもあるけど、これから楽しいことがたくさん待っている。

 青の星は、何をあたしたちに見せてくれるんだろう。見上げた空は懐かしい青い光に満ちていた。地球に帰ってきたわけじゃないけどね。






 次回、襲撃。



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