悪いスライム、町に行く。
ぷるぷる、あたしアザレア、悪いスライムだよ!
ぽよよんぽよよんと三人娘に着いていくと狼なども出るので狩る。毛皮とか売れるらしくて三人が解体してくれた。これで少しお金が手に入るらしい。さっきのゴブリン共の体からは魔石と言う魔力の固形化した物が取れたので、それも燃料として売れるらしい。全部あたしがもらった。普通は討伐したパーティーごとに分けるらしい。彼女らが討伐した分はちゃんと取ってたから気にせずに済んだ。死体は使えないので埋めといた。
体にアイテムを収納したら便利がられた。ただ見た目は食べてるみたいだけどね。収納スキルの影響で消化しなくても収納できる。ただ体の中で魔力に変換して持ってるらしい。魔力には重さが無いし、収納量は学校の校舎並みに有るので気にする必要はない。
三人に通貨のことなど聞いて歩く。通貨はグリン硬貨というらしく、単位はグリン、小銅貨三枚、三グリンで小さいパンが買えるくらいなので一グリン三十円くらいだろうか? 物価が違うので単純に換算はできないけどね。小銅貨十枚で大銅貨一枚、そのあとは十枚ごとに小銀貨、大銀貨、小金貨、大金貨となり、高額取引の場合はギルドで契約の形でお金を移すらしい。硬貨は重いしね。そもそも大金貨一枚で三百万円くらいだからまずそんな高額取引は無さそうだ。十枚くらいなら余裕で持ち歩けるしね。
……そもそもあたしって贅沢しなければ水と土で生きられるんだよねえ。お金いらないや。でも人化ができた時のために服とか装備欲しいかも。みんなにご飯を奢るのも良いしね。料理ができるモンスターを雇えばリゾートも捗りそうだし。帰ったら修行しつつダンジョン育てないと。なんだかやっぱり人付き合いって大切だよね。お客様増やせるように早く色々整えないと。
赤ノート先生によるとダンジョンコアができたら登録したアイテムの複製を作れたり、色々合成して良いものを作れるようになるらしい。例えば鉄の剣をベースにオリハルコンとかを充分な量用意すればオリハルコンの剣を作れるし、そこに火の魔石を合成して炎の剣を作ったりできるらしい。インゴットなら複製も作れるらしいし魔力が有る限り無限に作れる。夢が広がるね! まあ魔力が莫大にいるんだけど。
ダンジョンに宝箱置きまくって宝探しエリアを作るのもありだね。おお、楽しそう!
防衛エリアに罠を張りまくるのも良いね。楽しそうだ。そうなると色々買い物の必要性が出てくるね。鉄の作りの良い剣や鎧を買わないと駄目だからかなりお金はかかりそうだ。良いものなら大金貨が必要になるらしい。コピーして増やして売りに来れば良いかな。コピーにかなり魔力が必要になりそうだから早めに何人か来てもらって魔力吸収力増強に力を貸してもらおう。この三人が信用できるようならトレーニングもできるし喜んで来てくれる気がする。宿エリアとか作るのも良いかも。
「そろそろエリオールに着きますよ」
「帰ったらまずは宿に寄ってご飯を食べましょう」
「美味しい」
「すごく楽しみだよ!」
まずはご飯をたべて、その後はギルドとお買い物。あのゴブリンたちは立派な山賊なのでギルドに通報しないと駄目らしい。三人と宿に向かう。そう言えば門番的な人がいなかったな。まあこの辺りは辺境も辺境なので戦争とかも無いし、そもそもみんながモンスターなのでモンスターを恐れるのも変な話なのかも知れない。ドラゴンとかも町に住んでるらしくて襲撃とか、もしあっても間違いなく返り討ちになるらしい。そもそもドラゴンが負けるような敵に防壁とか無意味だろう。狼くらいなら子供のモンスターでも勝てるモンスターがいるらしく、こんな小さい町だけどその防衛能力は未知数だ。
外から来た野良モンスターが町に入り、馴染んで教育を受けたりして町の一員になることもよくある話だそうだ。赤の星は普通のファンタジー世界とは違う、魔物の、魔物による、魔物のための世界だ。
この赤の星から青の星に召喚されることがあるそうだ。赤の星では「誘拐事件」の扱いになるらしく、魔神の中にはいつか赤の星から青の星に軍隊を送り込みたいと考える物騒だけど優しい人もいるのだとか。魔神ってすごい強そうだけど封印もされてない魔神が何体もいるのだとか。この世界ヤバイかも。
そんなことを話しながら歩いていると目的の宿に着いた。おろし醤油亭って斬新な名前だね!
「というか醤油や味噌も普通にあるんだね。日本人頑張るなあ。あたし発酵食品は自信無いわ」
「日本人?」
「ごめん、こっちの話。おろしで焼き魚とか唐揚げ食べたいなあ」
「人気メニュー」
「有るの! やったね!」
「アザレアは変なスライム」
おっと、乗りすぎたか。イリスに笑われた。インプの笑顔可愛いな。でも大根おろし楽しみ! ピンクの体が震えるようだ。みんなで色々注文してシェアすることにした。
「女将さんは何の種族だろ?」
「彼女はマシラとか言ってましたか。猿の獣人らしいですよ」
獣人もモンスター扱いなのかな。まあこれだけモンスターが平和に暮らしてるならモンスターと青の星の人間も仲良くできるのかも知れない。獣人の人権が守られてると良いんだけど。まああたしが青の星に行く可能性は少ないだろう。わざわざスライムを召喚しないだろうし。
まああたしはダンジョンボスだから特別かも知れないけど、ダンジョンあるし召喚されると困るよねえ。
「あ、きたきた」
「これ何おろし?」
「これはブルーラディッシュおろしですね。魔物植物です」
「色が、青いだと……!? あ、味は普通だ!」
触手でカトラリーを使って青いおろしと醤油で焼き肉のような分厚いお肉を食べる。普通に美味い!
「アザレア、こっちも食べる?」
「有り難うイリス!」
同じヒーラー同士だからかイリスはあたしの面倒を見てくれる。スライムボディだと頭に料理をぶっかけてるみたいに見えるけどね。
「おろしと唐揚げ合うよね~」
「アザレアさん、味は分かるんですね」
「実に興味深いです。実力も高いですし」
「あ~、それはちょっと事情があるからね~」
どうしようかな。思いきってダンジョンの説明しちゃおうかな。この三人だけならよさそうだ。そのうち解放するんだし、帰ったら迷宮階層と防衛階層を増やせば良いし。ある程度は穴を掘ってあるしね。防衛階層も落とし穴だらけにはしてあるし。よし、誘うか。
「みんな、ダンジョンって知ってる?」
「もちろん! ダンジョン生活は憧れですよ!」
「まさか」
「え、もしかしてアザレアさんは……」
「しー、ユキメ、それは言っちゃ駄目」
「あ、すみませんイリス」
ケイシーがすごく食いついてきてユキメとイリスも私が何を言いたいかは分かったらしい。どうも赤の星ではダンジョンマスターは憧れの職業らしい。ダンジョンを作る条件を研究している学者さんとかいるとか。あまり大きな声で言えないのはモンスターが殺到してしまうからだろうか。冷静なイリスに感謝だ。
「三人を最初のお客さんとして迎えたいんだけど」
「行きます!」
「ケイシー、声大きい」
「ダンジョン生活……夢のようです」
「まだ完成はしてないんだけど、修行には向くと思う。食料とか買い込んで泊まりにおいでよ」
そうお誘いをかけると三人は現在の資金などを真面目に計算し始めた。スパリゾート階は色々作ってあるから楽しんでくれるかな?
このあとはあたしがギルドに登録して、保存してある素材で売れるものは売って、代わりに武器やインゴットを買って帰ろう。これから大量の資金が必要になってくるわね。
どっかにオリハルコンやミスリル銀の鉱脈とか無いかな? 赤ノート先生に聞いてみないとね!
次回、アザレアが酷い。