ヒーラーとして戦って。
スラバスとか他の作品を同時に書くとかやっても良いですか?
まああたしならあっという間に終わらせられそうだけど、それ冒険者たちの稼ぎを奪うことになるからね。青の星では表向きはヒーラーで行くわ。いや、表向きも何もヒーラーなんだけどね!
「なんで先に着いてるのよ!」
「空間をショートジャンプしたわ」
「このスライムならそれくらいやるわね……」
納得していただけたようで何よりだわ。
カリーナは少し顔が利くみたいだから臨時の診療所を開かせてもらえないか聞いてみよう。
「そうね、アザレアに戦場に出られたら終わっちゃうわね」
「あたしの二つ名は戦場のスライム聖女なんだけどね」
「納得」
「戦場の聖女ってすごいねぇ……」
この星ではシンプルにスライム聖女とか呼ばれるのかしら?
あんまり派手にはやらない方が良いかもね。……そんな遠慮あたしはしないけど。
何か来たらぶっ飛ばしてやるわ。ちょっと魔力を漏らせば倒れるでしょ。
そういえばこの大陸はスラローン大陸、国はメイシャー王国、町はファスタというのね。国の大きさとしてはかなり大きくて城壁のあるような町は十はあるらしいわ。大きいわね。
まあ建築関連は魔物より上みたいね。道も石畳だし。あ、貴族埋めたとこはきっちり石畳敷き直したわよ。
あ、カリーナ帰ってきた。カリーナはどうやら臨時の診療所にあたしが入る権利を取り付けてくれたみたいね。やるじゃないの。バシッと背中を叩いたら倒れたわ。はい、ミドルヒール。
「こ、この馬鹿力……でもヒールもめちゃ効いたわ……」
「本気で叩いたらミンチだったけど」
「絶対やめてよね!!」
リザレクションするから大丈夫よ。トラウマになるかも知れないけどキュアオールも有るしね!
正気を削ってからキュアオールとか良さげね!
「また何か酷いこと考えてるわね」
「貴女は明日から青の星のブレイズを名乗ると良いわ」
「何よブレイズって」
「水着で彷徨く変態バンパイアのおっさんよ。カリーナもビキニアーマーだからぴったりね」
「あ、うん、なんか私と同じ被害者なのが分かったわ。仲良くなれそう」
二人を並べたらあたし毎日酷い酷い言われるわね。あれ、すでに毎日言われてた気がするわ。いつか二人でお酒を飲めば良い。あ、愚痴大会になりそうね。アザレア愚痴大会とか嫌すぎる。
やがて冒険者がかなりの人数集まってきた。兵士や騎士はもう出てるから最初のゴブリンとか旨味がない群れは騎士が倒して、ドラゴンとか美味しい方は全員で叩く感じかな?
おっと、早速怪我人。ゴブリンに後ろから殴られた? この兵士弱すぎない? そんなものなの?
ヒール、ほれ、目を覚まして。一発で回復ね。周りのヒーラーは感心してる。あー、魔力量が違うからヒールもかなりの高位魔法に見えたんだわ。今のはエクストラヒールではない、ヒールよ。言いたかったのよこのセリフ! みんなさらに目を丸くしたわ!
頭を下げてから兵士は出ていく。ヒーラーの人たちは何か聞きたそうにしてるわ。あたしが使役獣のスライムなのはトラブルになるからあらかじめ周知しているはずよ。それでも使役獣に対する偏見が薄い気がする。
この国けっこう良い国なのかもね。クズ貴族は多いらしいけど、それはそれで楽しみだわ。落とし穴が唸るわよ!
戦況はどんどん加速して、まずは兵士が次々に運ばれる。騎士にも怪我人が出る。
エリアグレーターヒール。加減なんか知らないわよ。使い慣れた奴で行かせてもらうわ。拍手が起こる。いいから次次、どんどん行くわよ!
「スライムさん、魔力切れは大丈夫なのですかの?」
「敬語とか要らないわよ! あたしは今のなら五十発はいけるわよ!」
「おおおっのっ!」
なんか面白い治癒師のおっさんだわ。白髪に長い顎髭、鼻眼鏡みたいな丸眼鏡と丸い鼻。小さいからドワーフかもしれない。ドワーフには治癒師が多いらしい。異文化交流ね。ドローバンさんと言うらしい。色々サポートしてくれてるわ。イリスがいないから助かるわね!
「ツッチ! アザレアさんに良い魔力回復薬をのっ!」
「はいなっ」
「ああ、手持ちが有るから良いわよ、そちらこそ足りなくなったら言ってね」
「異空間収納ですかの?!」
「すごいですなっ」
なんかもう一人ドワーフが増えたわ。茶髪に丸眼鏡。二人とも身長は百三十前後だわ。そっか、亜人が多いから差別が無いのね。
「チビな治癒師チームだな」
「可愛い!」
「治ったら怪我人運んでねー」
なんか冒険者が集まってきたわ。暇なの? 兵士とか騎士は怪我を治すと職務だから出ていくけどね。まだ美味しい魔物がいないのかも。
それからしばらくして冒険者も出ていった頃、とうとう犠牲者が出たらしい。一応こちらに運ばれてくるみたいね。
さあ、戦場のスライム聖女、一世一代の大舞台だわ!
「クラカントさまあっ!!」
「なんてことだ、冒険者を庇って!」
「治癒師! 治癒師!」
「ほらこっち、連れてきなさい」
最近あたしの仲間が強すぎて使う機会がめったに無かったけど、人の世界ならかなり使うことになりそうね。
「助けてっ! 助けてくれっ!」
「もう無理だ! 首の骨が折れて心臓が止まっているんだッ!!」
「たすけ」
「黙りなさい。これだけ慕われてる人を死なせるものですか」
なんだかずいぶん可愛らしいイケメンだわ。優しいのが顔に出てるわね。周りを多くの人が囲っている。人を救える人にこそ救われる値打ちがあると、あたしは思う。
「リザレクション」
頭からも胸からも血を流していたその体が緑の光に包まれる。ついでに血の汚れもクリア。毒も受けてるからキュアオール。どう? てかやられ過ぎよ。
倒れていた騎士さん、クラカントさんはすぐに目を覚ましガバリと起き上がる。
一瞬止まる時間。その後、爆発するような大歓声。
クラカントさんはこっちを見て呟く。あたしが助けたのは分かるらしい。
「君は、いったい……」
「戦場のスライム聖女、アザレアよ」
あたしは逃げも隠れもしないわ。でもこのクラカントさんが上位貴族なら助けてもらおうかしら?
ちょっ、あんたらあたしをもみくちゃにするんじゃないわよ!!
取り巻きの人が襲いかかってきたわ! 落ち着きなさい! もちもちすんじゃない! だれよ!?
「天海嘯スタンピードはこれからよ! さっさと暴れる魔物を狩って、死人も怪我人も病人も、連れてらっしゃい!」
おおおおっ! と響く歓声。打てば響くってこのことかしら?
スタンピードはこれから激化するけど、士気は上がったわね。戦場のスライム聖女の面目躍如よね!
「先生と呼ばせて欲しいっのっ!」
「もう呼んじゃいますなっ! 先生なっ!」
ドワーフ二人も大興奮だ。仕事しろ。先生といわれても何も教えられないけどね。
戦況が進みガンガン怪我人が帰ってくるんだけどクラカントさんが死にすぎる。これ以上死んだら怪我を残すわよって脅したら大怪我で帰ってくる。ちょっとあんたねえっ!
「みんなに大切にされてる分自分も大切にしなさいなっ!」
「すみません聖女様、中々に危険な魔物がおりまして!」
ニコニコしやがってこの可愛い系イケメンが! 身長は百六十くらいだけどふんわりしたラウンドショートの金髪碧眼で童顔、ちくしょう可愛いわね! ふんわりした髪型が優しさを主張してるわね!
「分かった。行ってくるわ」
「えっ?」
あたしが倒してくるわ。怪我の状態からマンティコアみたいなレーザーブレス系ね。
「敵の種類は?」
「エルダードラゴンですが……聖女様?」
「ちょっと殺ってくる」
「ええええっ!」
一気に南門を抜けるショートジャンプ。千里眼発動。敵は……これね、ショートジャンプ。空間を光速で跳躍しエルダードラゴンの真上に。
「アイスランス、ウエポンシュート、ハイパワー」
作りおきのアイスランス、オリハルコン製、国宝待ったなしを、ちょっと強めに回転ウエポンシュート。エルダードラゴンに風穴が空く。騎士が倒れまくってるのでエリアグレーターヒール。死んでる子にもリザレクション。纏わりつかれると面倒なのでアイスランスを回収したらテレポートで仮診療所に戻る。この間一分。そのあと、当然伝説になる。
あたしの伝説ってたいてい子供が鼻で笑いそうなくらい大仰になるのよね。女神様の寵愛って方向性が間違ってると思うの。
次回、アザレア、宿でのんびりする。




