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人間が雑魚過ぎて。

 さて、スライムに喧嘩を売った奴らを殺そうとしたんだけど止められたわ。魔力感知が鋭くなりすぎて分かるけど魔力が多い奴のでも多分二十から二十五くらいね。あんまりにも雑魚過ぎて魔力放っちゃったら全員即発狂だわ。ルシアちゃんもね。ルシアちゃんに今すぐもっと魔力送ったら多分破裂しちゃう。しばらくは魔力に慣らさないとね。


「ス、スライムだって?」


「人化するスライムなんて聞いたことねえ。ハッタリか?」


 あたしは今、人間のお嬢様にしか見えないのね。スライムなら一発で見破れるんだけど人間には難しいみたいだわ。


「人化できるスライムなんてごまんといるわよ! ほら!」


 溶けるように小さく、丸くなる。ぷるぷるピンクの美少女ボディに変身よ!


「ほら美少女!」


「ただの球体ですぅ!」


「ツッコミできる子は好きよ! あたしはアザレアね!」


 ルシアちゃん、見事なツッコミね。楽しい旅になりそうだわ。まずは青の星の事情を探らないとね。あと帰る手段掴まないと。


「けっ、スライム程度簡単に殺せるぜ!」


 お、斬りかかってきた。殺しにきたって判定で良いのよね?

 サービスで避けないであげるわ。カキーン。ぷるぷる。まあ斬れないわね。スライムも切れないとか雑魚過ぎ。お、三人がかり? ぷるるん。やっぱり全員雑魚ね!

 いくら斬りかかってきても魔力一万も無いんじゃあたしのスライムボディは破れない。ほとんどの人間には無理ね。


「みなさーん、この人たちスライムも斬れない雑魚ですよー! よっわ! クソザコ! 恥ずかしくてあたしなら生きていけなーい!」


「ぐっ、ちくしょー!!」


「なんで斬れねえんだ?!」


「正解はねえ、貴方たちが超絶雑魚のポンコツ野郎共だから!」


 周りの冒険者たちがあたしの煽りの酷さについに爆笑したわ。これで勝ったわね!


「くっ……貴族舐めんなよっ!」


「まあ、力で勝てないから権力? 貴方たちの家はそんな雑魚でプライドがないのにどこが貴族なの? 潰れた方が世のためね!」


「ちっ、ちくしょー!!」


 それしか言えなくて逃げたわ。扉を出て閉めたところで落とし穴にストーン。埋めー。剣で斬りかかってきといて自分は殺されないとか思ってないでしょうね?

 これ人に見られないようにすれば貴族でも殺し放題だわ。まあ落とし穴無くても勝てるし、魔神には通じないだろうし落とし穴は貴族専用にしましょう。見られてないわよね? うん、魔力で見る限り外には他に人は居ないわね。意外と小さい町?


「ルシアちゃんは大丈夫?」


「は、はい。あの、有り難う御座います!」


「別にルシアちゃんがあたしを呼んだんだから良いのよ」


 しばらくは使役されたふりしておこう。その方が動きやすそうだわ。

 さて、ルシアちゃんとの旅はどんな感じになるのかな。


 とりあえず他に巻き込まれて召喚された魔物でも探す?

 いや、まずはこの子鍛えないとね。この子ハイエルフになってるし鍛えないと拐われたりしそうだわ。

 赤ノート先生に魔力五百くらいの魔物の場所を教えてもらって、あ、青の星の冒険者ギルドのシステムは……試験とか一々出掛けないと駄目なのね。面倒臭いわ。倒した魔物の納品でお金は稼げる、と。青の星でも魔石は燃料にしたり加工して魔導具にして売られたりするのね。皮とか肉も普通に売れるのね。ほうほう、肉屋に売ったりはギルドの規約に違反したりはしないのね。ただ騙されたりするから目利きじゃないならやめた方が良いみたいね。


「あ、あの、十五歳になってスキルが発現したのでメイシャー王都の学園に行かないと駄目なんです!」


「学園? 良いわね」


 前世で学校に通えたのは卒業がギリギリできる日数だったわ。病気が有るのは分かってたから緩かったはず。手続きは一切親任せだったから分からないわ。頭もバカになったわ。元々バカだった可能性は否定できないけど。学園、行ってみたいわね。調べものも……赤ノート先生でできるか。じゃあ遊びに行く感じね!

 青の星にもダンジョン作ってやろうかしら。それも楽しそうだわ!


「そうだ、一つ言っておくわ。あたしに着いてくると大変よ? 誘拐された魔物は赤の星に帰したいしあたしも帰るつもりよ」


「え、そうなんですか……?」


「この召喚が赤の星の魔物にしてみれば誘拐、洗脳、つまり大犯罪なのは分かる? そのうち赤の星の魔神がこの星を滅ぼしに来るかも知れないわよ?」


「え、そ、そんな! 私たちは魔物を召喚できなければ天海嘯(そらつなみ)期を乗り越えられません!」


「はい?」


 あ、うっかりまた言っちゃったわ。言うわよね、衝撃受けすぎたら。なんなの、青の星も天海嘯(そらつなみ)に苦しめられてるってこと?

 ……赤ノート先生。天海嘯(そらつなみ)ってなんなの?


 赤と青の双子星が最接近する時期に起こる宇宙での魔力の密集により起こる魔力の嵐。両星の重力が宇宙空間に最大限干渉して起こる。濃密な魔力の雨により両星に魔物が大量発生する。これを天海嘯(そらつなみ)スタンピードという。


 さっさと調べておけば良かった。これ芦田さんは知ってたのね。だからどうしようもなかった。天海嘯(そらつなみ)はただの自然現象だったのね! アナさんに教えておくべきだったわ。こんなもんどうしようもないじゃない。

 そして召喚も止められないってことね……戦争より天海嘯を人間が何とかするのが無理だわ! 人間って雑魚だもの!


「これは場合によっては青の星出張も必要かしら?」


「え?」


「天海嘯の度に赤の星から魔神が来てスタンピードを抑えたらどうかな?」


「そ、それなら大丈夫かもです!」


 よし、なんとなく希望が持てたわ!

 カルさんやアナさんを説得できれば……。赤ノート先生を役立たず扱いしてたバチが当たったわね。それに、召喚の引力が変に強かったのも天海嘯の影響だった可能性が高い。下手したら召喚って人間がやらなくても起こってるのかも? そもそもこの召喚スキルも自然発生してるみたいだし。


 天海嘯(そらつなみ)を物理的に解消するとして、上手にカルさんを説得できるかしら。脳筋のあたしには難しいわね。まずはアナさんを説得だわ。


 ……その前にスタンピードを乗り越えて実家(赤の星のダンジョン)に帰らないとね。


「まあ良いわ。まずはスタンピードを乗り越えて学園に行くわよ!」


「は、はい!」


「ちょっといいかい」


 おっと、ギルドを出てないのに熱く語ってしまったわね。なんか大柄で二十代くらいのスラッとしたマッチョでビキニアーマーで髪も目も赤いお姉さんに話しかけられたわ。


「私はカリーナ。Aランク冒険者よ。それよりそっちのスライムさん、貴女たちからみて召喚は誘拐なのね?」


「ええ、泣いてる子もいるはずよ。子供を無くした親も多かったわ」


「……っそう」


「貴女も誰かを誘拐したの?」


「私の使役獣はグリフォンよ……。召喚した時はまだ雛だったわ」


「酷い話ね」


「ごめんなさい……」


 初めてじゃないかしら。酷いのはお前だって言われなかったわ。まあ貴族殺してるから間違いなく酷いのはあたしだけどね。どうしてかブレイズさんが宇宙を越えて睨んできてる気がするわ! 被害妄想かしら?!


「謝るのはあたしにじゃないわね。その子の親だわ。赤の星にくる人間なんていないと思うけど」


「今の話を聞けば何人かはいるんじゃないかしら……」


「そうですよ、きっと!」


「下手に刺激したら怒る魔物も多そうだけど?」


 そんなことしたらカルさんに(ちり)にされそうね。でもまあ。


「死ぬ覚悟があるなら良いわ。そもそも貴女そのグリフォン大事にしてるでしょ?」


「分かるの?」


「謝れる人だからね。本当に謝るべきは謝れない人だけど。魔物を下に見て奴隷にしてる人も多いでしょう?」


「ええ……」


 だよね。強制使役ができるんだから多くの人はそうでしょうよ。これは思った以上に根が深そうね。


「じゃあ貴女にはしばらく彼女(ルシア)を鍛えてもらうわ。すぐに強くなると思うから」


「え?」


「忙しい?」


「いえ、少しでも罪滅ぼしになるなら!」


「じゃあ早速グリフォンちゃんに会わせてもらおうかしら!」


「えええ、畏れ多いですぅ……」


 まあルシアの意見は却下よ。カリーナの助けを得られるのは有り難そうなのよね。この人この若さでAランクだなんて多分貴族だし、謝れる貴族の味方なんて貴重な拾い物をしたわ!


「じゃあ呼ぶわね。外に出ましょう」


「あうあう……」


「グリフォンを見れるのよ。良かったじゃないの」


「あうあうあー」


 魔力漏らしてないのにルシアの正気度がピンチだわ!

 そしてカリーナに呼ばれたグリフォンちゃんもあたしの強さが分かったのか縮こまって震えちゃったわ。なんかごめん。






 次回、アザレア、口笛が吹けない。




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