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優しいスライム(sideユキメ)

 庭には二羽鶏が、じゃなくて今日は二話更新します。

 私たちのダンジョンマスター、スライムのアザレア様は極めて恐ろしい方だと思います。初めて出会ったあの頃から、あの方は一流冒険者の強さを持っていました。山賊とはいえゴブリンを瞬殺。ギルドでは私たちがまず勝てないワイバーンやマンティコアまで倒されました。今なら私たちにも倒せますけど、その戦い方もえげつなかったのを覚えています。アレはどうなんですか?


 その時に見ていた人たちは私たちも含めて、彼女の本質を理解していなかったのですけどね。その段階では生き埋め虐殺スライムとしか言えませんでしたしね。地中に潜り地面から槍を出したり落とし穴を作る魔法も凶悪ですし。


 彼女は確かに最初、ヒーラーと言ってましたが、戦場で次々に仲間の傷を癒し、ついにはまさかの死者蘇生。そんなことができるのは赤の星でも青の星でも、聖女と呼ばれる人だけです。

 彼女の場合は戦場で戦いながら回復ができるので普通の聖女とも呼べません。そもそも普通に聖女がいたら困りますが。そもそも敵陣を壊滅させる戦闘力を持つ死者蘇生が可能なヒーラーって何でしょう。完全に魔物としては魔王級ですね。


 そんな彼女に付けられた二つ名、戦場のスライム聖女。いい得て妙だと思いました。

 そんな彼女なので時には苛烈ですが、時には優しいのです。私たち魔物の憧れ、ダンジョンで、知り合って間もない私たちに色々自由にさせてくれる。

 その代わりに仕事をさせてると彼女は言いますが、ほとんどは分体に任せて私たち三人は好きなことをしています。後から来たサンシャイン様やブレイズ様、ログ様や、配下にはなっていませんがリゼ様も、喜んで仕事をしています。

 ブレイズ様は遊んでる? いえ、外交関係はあの人が軸でやってますからあながち遊んでるだけとは言えないんですよ。いつもプールに飛び込んでる気がしますが。


 カル様は偉大な魔神様なのでここにいるだけで色々メリットが有りますので遊んでるだけとは責められませんね。責めても返り討ちですけど、そもそも私の刀たちはカル様の魔力のお陰で強化されていってますので助かっています。オリハルコンの炎を纏う刀……美しいです……。ぐぇへへへへ。


 おや、何か見ましたか? アザレア様が良くこのダンジョンでは幻覚が見えるのだと言ってましたわ。アザレア様が遊んでるだけとかケイシーが遊んでるだけとかイリスが遊んでるだけとか私が刃物を愛でてるとかブレイズ様がイケメンとかサンシャイン様がキュウリを奪われてカル様に泣かされているとかリゼ様がご飯を食べて泣いてるとかログ様が引きこもって消滅してるとかアルト様がトイレの掃除をしているとかは全て幻覚だと仰ってました。

 私も良く見るのですが幻覚なのでしょうか? 特にログ様は本を読んでたり釣りをしてたり一人でおられるので見えないだけでは。見えなくなる幻覚って透明化とかでしょうか?

 ちなみに私は刃物を愛でていますけどね。たまに舐めてます。え? 見えない? アザレア様は目がお悪いのですかね。スライムにはもともと目が無いので悪いのですかね?

 もともと光を感知することは体の表面全体でできるらしいです。死角がないのはすごいですね。


 アザレア様に任されているのであちこちに屋台やレストランやフードコートを作り、更に宿泊施設の接客やメイドまで、私の仕事は実に多岐に渡ります。なので分体が多く、その分体たちと日夜コミュニケーションを取らなくてはならなかったりします。

 誰がどんなものを好むか。このダンジョンを住み処にしている魔物のお客様は現在非常に多いため、質の良いサービスを提供するためには情報が欠かせないのです。

 時にはイリスやケイシーとの連携も必要です。たくさん動かれたお客様にボリュームの多い料理を提案したりスライムが好きなお客様にスライムゼリーを提案したりします。まあ可愛いので食べられないと言われたりもしますけど。あと普通のスライムはかじると酸っぱいらしいですよ。酸とか吐きますしね。イリスが一度、アザレア様を舐めたらしいです。ちょっとうらやまし……おっと、また幻聴ですよ。


 まあ私もイリスやケイシーに負けないくらいのアザレア愛は有るんですよ?

 でも何故かアザレア様、私とはあまり寝てくださいませんね。角が当たると痛いとか? 刃物を枕元に置いていたりたまに刀を抱き枕にしてニヤニヤしながら寝てるのとかが悪いんでしょうか?

 幻覚と言うことにして一緒に寝てほしいですね。アザレア様はほっぺとかもちもちして素敵な抱き心地なんですよね。胸をもちもちされ返されたりしますけど。人間形態だと小さな女の子そのものです。すごい変身能力ですね。

 最近は血も流れているそうですが、アザレア様が怪我をする事態なんて想像がつきませんね。私たちが前線に出るようになれば余計にです。

 そもそも私たちの大将なのだから怪我をさせては駄目なのですが。ちょっと斬ってみたい……とかは思いませんわ。ええ。


「イリスはどうですか? アザレア様の血が気になりませんか?」


「アザレアの血? 何か生き物に噛まれたり爪を引っ掻けたりすれば見れるかも?」


「でも多少の物理ダメージは通りませんよね」


「うん、たぶんそれくらいじゃ無理ね……」


「そもそもアザレアさんの血が見たいとか二人の発想が怖い」


 まあケイシーの言う通りではあるんですけどね。スピードが絡まないとケイシーはまともです。ブレイズさんに吸血させるのはどうでしょう。吸っていいものか分かりませんが頼んでみます。


「アザレアを吸血? 酸っぱいんだろ? 嫌だな」


「役に立ちませんね」


 ブレイズさんは仕事ができると思っていたのですが幻覚の一つでしたか。しかし血を吸ったら溶けそうな気もします。この策は無しですね。まあそもそもアザレアさんの血を見る必要も無いんですけどね。でもそこに有るのに見えないと好奇心が湧きますよね。本人に頼んだら引かれました。ちょっと自分でも試してみたいと言うので刀を出してみたら逃げられました。また嫌われてしまったでしょうか?

 落ち込んでいたらぷるぷる震えながらやってくれました。アザレア様の血は赤かったです。作り物らしいですけど。


 アザレア様は最近は旅に出られていますが、何かの前準備なのでしょうか? 本人は傷心を癒すためとか言ってますが日帰りで心は癒えるのでしょうか。そもそも普通のスライムには心なんて無さそうなものですが、実はいっちゃんたちも繊細だったりするのでしょうか?


 いっちゃんなら私と料理を作っています。最近は人化して包丁も鍋も振るっていますのでとても頼りになりますよ。いっちゃんはアザレア様の生み出した最初のスライムらしいのでこのダンジョンの管理もいくらかしているのですが、その辺りはイリスともやっているのでなかなか料理だけともいかないようです。


「最近いっちゃん見かけないと思ったら裏方に回ってたのね」


「ぷるぷる、アザレアさまー。あそんでくださいー」


「たまには遊んであげて下さいね」


「もちろん良いわよ」


 なんだかアザレア様がそのうち遠くに行ってしまう気がするんですよね。どこにも行かれないように抱き締めていたいものです。アザレア様は時々遠くを見るようになってしまいました。ちょっと、かなり、私は心配しています。何が彼女の心を苦しめているんでしょうか。本当に心配。


 偉大で恐ろしくも優しいスライム、アザレア様。私たちは貴女をお慕いしております。刃物を舐めるのは控えますので今日は一緒に寝てくださいね!






 次回、アナさんのお話。

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