ボッチクイーン、外出を決める。
掘って掘って~また掘って~。もぐらスライムの称号ができて掘る能力が高まったらしく、穴掘りとか落とし穴とかの生産速度が高まった。
ダンジョンは結局、上階のリゾート階の下は訓練や防衛のための階層にすることに決めた。
リゾート階は温泉を引くことに成功して、温水プールやウォータースライダー、水風呂や熱いお湯で作ったゆったり浸かれるお風呂、長く入れるお風呂などを用意した。プールも浅いのと深いので分けてある。スタッフにはどんどん生まれてくる水色スライムを配置。ここに人(モンスターだけど)が溢れる日が楽しみである。誰かに試してもらおう。ちなみにその過程でスライムたちの一部が謎進化を遂げたが、それはまた帰ってからだ。
かなり強くなってきたので一度外に出てみることにしたのだ。
今のステータス、お願いします!
名前 アザレア
性別 女
種族 クレイスライム
魔力 538
スキル
・魔力操作
ウォール ステップ 身体強化
・土魔法
穴掘り クレイスパイク クレイランス 落とし穴 土強化 ストーンスパイク ストーンランス
・回復魔法
ヒール ミドルヒール エリアヒール グレーターヒール
・浄化魔法
クリア キュアポイズン キュアパラライズ
・触手
銛 貫通強化 吸収 注入
・種族スキル
溶解吸収 スライムボディ 軽出血毒 酸 収納 毒飛ばし 強酸 溶解強化 高速移動 サイズ調整
・特殊スキル
言語翻訳 アカシックノート ダンジョンメイカー
称号
ボッチクイーン もぐらスライム ダンジョンボス モンスターマスター 女神の寵愛を受けし者
もぐらスライムですー、どーもー!
いっちゃんもウォータースライムに進化したけど、あたしもクレイスライムに進化した。体が石っぽくなってきたけどプルプルでピンクなのは変わらないよ。そのうち硬さを変えられるようになるらしい。帰ってきたら防御面も鍛えよう。
そもそも核さえ壊されなければ死なないんだけどね。サイズも調整できる。今まで食べた土や飲んだ水の総量は相当なものだ。収納してあるそれの一部を使って体を大きくできるので三階建ての建物くらいのサイズになれるらしい。なんか無敵っぽくない? 収納スキルのお陰で溶かさなくても収納できる。収納したものは体の中で魔力と術式と言う計算式のようなものになっているらしい。魔力も術式も重さが無いのでかなり収納できるわけだね。ファンタジーだよねえ。
なので外に出てみます。ただし、あんまり目立つと色々なモンスターに狙われることになるそうだ。気を付けよう。
そもそもあたし戦ったこと無いから自分のスキル把握しきれてないんだよね。これはヤバイのでゴブリンくらい倒してこようと思う。
そう言えば、ダンジョンの魔力がもう少し高まるとダンジョンコアなる物が生まれてダンジョンとも意志疎通できるようになるらしい。生物だもんね、ダンジョン。
ちなみに、今の魔力はレッサーデーモンクラスらしい。村くらいは壊滅させるモンスターなんだってさ。あたしも村くらいは壊せるってことか。危ないスライムになってしまった。
ダンジョンの入り口はまだ広げない。防衛施設を整えてからね。
なので核を通せる五センチの穴から……うーんうーん、少し広げよう。あたし硬くて出られなくなってる。十センチくらいまで広げた。これは見つかりやすそうだ。出てから穴を塞いでおく。空はやっぱり赤いなあ。
ぽよよんぽよよんぽよよん。高速移動を身に付けたあたし! ピンク色だけど三倍速いぜ!
ぽよよんぽよよんぽよよん。とりま河童のサンシャインに会いたいな。どうして親はそんなキラキラネームにしたのか問い詰めたい。親に聞かないと駄目か。
サンシャインの場所は赤ノート先生が教えてくれた。川の上流にキュウリ畑があるらしい。もろきゅうとか食べたいな。
そんなことを考えながら森の中を川沿いに上がっていく。赤ノート先生によるとこちらは北らしい。赤ノート先生さすがに万能やな。
と、森の中から金属音が聞こえてきた。誰か戦ってる。サンシャインかも? 助けに行かないと!
……ゴブリンの群れと毛むくじゃらの犬みたいな人間と鬼と小悪魔っぽい三人組が戦ってる。これどっち助けるのが正解なのかな?
ゴブリンは緑色の肌で子供のような身長、腰が曲がり鷲鼻、醜悪な水が腐ったような臭いがしている。……今度は河童じゃないな? ゴブリンだ。
「ゲギャギャ!」
「苗床だー! 殺すなよ!」
「くっ、誰がゴブリンなんかと!」
うん、ゴブリンは消滅させていいね。一応声をかけるべきかも知れないけど奇襲で殺していい案件だろう。……なんかあたしがスライムだからか相手がゴブリンだからか殺しに忌避感がないな。
言語翻訳もなにげに仕事してる。それぞれの言葉が分かるぞ。グランスグレイン大陸公用語らしい。ゴブリンも山賊みたいなポジションらしい。この赤の星にはモンスターしか居ないからね。善良なゴブリン、探さなくても居るらしい。この星には人前に出る良いゴブリンもいるから殺さないであげてください。こいつらは殺すけど。とりあえずストーンランスぅ。ストーンランスは地面から出た二メートルくらいの槍を相手に投擲する高威力の魔法だ。太く長くすれば更に強くなる。威力は魔力依存だね。
敵の後ろからストーンランスを撃ち込み、本体は前から突っ込んで触手の銛を撃ち込み強酸や出血毒を流し込む。あっという間に五匹のゴブリンを仕留めた。あと三体。
「げぎゃ!? なんだ?!」
「スライム?! 敵なの!?」
「あ、味方です! 山賊みたいなんでゴブリン倒させてもらいますね!」
「あ、有り難うスライムさん!」
自己紹介は後だな。とりあえず残りも仕留めよう。ゲギャゲギャ言いながら走りよってきたゴブリン二匹を落とし穴に落とし、中に仕込んだ石のトゲトゲ、ストーンスパイクで倒す。……三メートルくらい掘ったんだけど充分威力あったみたいだ。……グロい。リバースする器官が無くて良かったよ。緑と赤のぐちゃぐちゃミンチができてます。モザイクかけとけ! 埋めるか。
残り一匹。あれ、冒険者さんたち引いてない? ああ、さっき酸を流し込んだゴブリンもいい感じにモザイク案件になってるね。凄い腐臭がする。
残ったゴブリンも引いてるけど地面からストーンスパイクして殺しておく。慈悲はない。石の槍を数十本出すかなり凶悪なスキルだ。
「これだけ?」
「い、い、今のところはこれだけですぅ!」
「近くに盗賊村が有るようですが少し遠いのでもう大丈夫でしょう」
「有り難う」
白毛のモフモフ垂れ耳犬娘さんは盛大にキョドってるな。目は青くて綺麗だ。ほぼ二足歩行の犬。ロングソードらしき剣に茶色の革鎧に革ブーツ、頭に乗っかってる革帽子は垂れた耳の間で少しずれて乗っかってる、いかにも駆け出し冒険者と言った服装だ。
鬼っ子さんは黒髪黒目で小さい角が二つ額にちょこんと付いてる。牙も少し見えてるけど八重歯みたいな感じだ。じみ目の生成りの和服を着て日本刀を大小二本差している。
もう一人は小悪魔さんだけど茶髪に赤い瞳。短くてエロい黒のビスチェが全く似合ってないロリっ子さんだ。尻尾と蝙蝠の羽が付いてて尻尾は黒い矢の形になってる。典型的な小悪魔だね。杖を持ってるから魔法使いかも。モフモフ可愛い犬娘と綺麗系の鬼娘とロリ悪魔っ娘の三人娘だね。
「あたしはアザレア、悪いスライムだよ!」
「悪いスライムなの!?」
「小粋なスライムジョークだよ! 良いスライムだから武器構えないでね!」
「脅かさないで下さい。さすがに勝てそうに有りません」
「面白かった」
あ、小悪魔ちゃんに受けた。犬娘ちゃんはやっぱりキョドってるし鬼娘ちゃんは真面目な感じだね。……それにしても私ってそんなに強くなってるのね。ゴブリン八匹瞬殺だったしね。
「みんなのお名前は?」
「あ、失礼いたしました。私はオーガの剣士でユキメと申します」
「あ、私は、カーシーのケイシーです! 魔法剣士で頑張ってます! よろしくお願いします!」
「イリス。インプで僧侶」
おおー、ファンタジー世界だなあ。オーガのユキメちゃんは身長百六十五くらいかな? カーシーのケイシーちゃんがちょっと小さくて百五十くらい、インプのイリスちゃんはさらに小さくて百三十五くらいかな?
あたしは三十センチくらいだけどね! 大きくもなれるよ!
サンシャインはイリスちゃんくらいか少し小さい。チビだね!
「怪我をしてない? あたしはヒーラーだから治すよ!」
「あ、有り難う御座います!」
「魔力切れてた」
「あの強さでヒーラーですか……修行しないと駄目ですね……」
修行かあ。いずれうちのダンジョンに誘おうかな。まだ防衛階層の作りが甘いから今は駄目だけど。まあそんな悪い子には見えないけどね。
三人をエリアヒールで一度に癒すとまた驚かれた。
「そう言えばこの近くには村とか町は有るの?」
「ええ、小さいですがエリオールという町が有りますよ。この川の下流に有ります」
「あ、アザレアさん、遊びに来ませんか?」
「ご飯奢る」
「お、良いかもね。特に予定無かったし」
ダンジョンに誘うにも連絡先は知っておきたいもんね。サンシャインはまた今度会いに行こう。
町かあ。冒険者登録とかしちゃったりして?
町に行けるなら調味料とか欲しいしね。料理しても食べるのはスライムだけだけど。食材も無いし。