スライム、スライムの国の王都に着く。
そう言えばアナさんはスライムなんだからここってスライムの国のはずよね。スライムいるのかな?
猫人リディアちゃんによると、王都に近いほど多いらしい。
ふーん、と思いながら歩いてると不良の狼男に絡まれた。イリスがのしてしまったけど。イリス強いね。ダンジョンの外で無理はしないで欲しいけど。
あたしはもう大抵の敵には負けないわ。ちなみにあたしより強い魔力の人にブレイズさんとかリゼさんもいたから、本当にあたしより強い人なんて魔神様たち以外ほとんどいないことが分かった。いても大抵どこかのダンジョンに隠ってるので実質外で負けることはほぼ無いわ。まあ相性の問題は有るけどね。
一番の天敵は風属性かな? エアロスライムとか捕まえるのが大変だわ。スライムバスケットは楽しいけどね。選手でもスライムでも楽しいわ。
お、スライム。ノーマルスライムね。
「ぷるぷる……いじめないで!」
「いじめないよー」
「すごい強いスライムさん!」
なんかいじめないと言ったら一斉にスライムが湧いてきた。スライムにはあたしがスライムだと分かるみたいだね。リディアちゃんはあたしがスライムだと知ったとき驚いていたわ。あ、イリスがスライムもちもちし始めた。スライムたちもテイムされてるのか喜んで寄っていってるわ。連れ帰らないわよ? このスライムたちにも生活が有ると思うし。
お、あそこの商人さん人間の姿だけどスライムだわ。なるほど、分かるわね。小さいし。でもスライムって女の子ばっかりなの?
て言うか分裂して増えたり魔力からスポーンするから単為生殖どころの話では無いわね。あたしたち、単細胞動物だったわ。
人化してるってことは相当強いスライムなのかしら。魔力は高いわね。商人だからか隠してるけど。
「ぷるぷる、あたし悪いスライムだよ!」
「助けて!」
「小粋なスライムジョークだよ! お姉さんは何を売ってるの?」
「スライム糊とかスライムフィルムだよ。ガラスに貼ると割れにくくなるよ!」
「知ってる!」
「楽園ダンジョンのアザレア様が作ったらしいよ!」
「あたしだよ!」
「どうりですごく強いスライムだわ!」
「スライム同士の意思疎通高速すぎませんか?」
「スライムは賢い。嘘もほとんど吐かない。アザレアは戦闘では嘘吐き」
「失礼だね! あたしは正直スライムだよ!」
スライムと話してると前世の記憶よりスライムの本能に引っ張られるわね。不思議だけど心地良いわ。
そのスライム、ノエルさんに王都の案内を頼む。スライムだからと絡んでる人がいないわね。ここはスライムの楽園なんだわ。兵士さんもスライムが多い。なるほど、王都の中心に近づく度にスライムが増えていくわ。人化スライムも多いわね。アナさんのダンジョンが人気なのかスライム以外も多いけど。だんだん人が増えていくわね。スライムをうっかり踏んだらしい猿の獣人さんが土下座して謝ってるわ。スライムは単細胞……おおらかだから謝られたらすぐに許してるわね。まあここでスライムに下手なことするとアナさんが出てきそうだしね。今ならあたしもいるし。うん、誰もスライムを侮らない楽園だわ。外だとスライムを見たら殺せと言われてたりするし。
スライムは弱い魔物だけど強くなると手に負えなくなると言うのが赤の星の常識なのよね。この常識絶対アナさんのせいだわ。アナさんて昔、国をいくつか滅ぼしてるのよね。まあ悪い魔神の国だったらしいけど。カルさんも同じね。バンパイアの魔神ドリンさんもあんな性格だけど、自分の国の魔神を殺してあの立場になったらしい。魔神はだいたい似たような話が有るわね。
それにしても王都は広いわね。十数キロも続いてるわ。今日は面白そうだからスライムの宿を探して泊まることにした。旅の醍醐味ね。あ、カルさんも来た。夜は一緒に居たいらしい。カルさん怖がりだからな。最強なのに。赤ノートでカルさんの強さを調べたら赤の星でも青の星でも最強らしい。道理であたしなんか敵わないわけだわ。
ちなみに青の星にも五柱魔神がいるけど、四体までは封印されていて一柱はダンジョンに隠れ住んでいるらしい。うーん、封印されたらあたしも太刀打ちできないかもしれないわ。ただカルさんほど強い魔神はいないのよね。
カルさんとアナさん、魔力量はほぼ同じらしいけど戦闘になると相性の問題があるから分からないっぽいわ。二人とも仲が良くて争ったことはないらしい。久しぶりに赤ノート先生を読み込んだよ。二人ともけっこう無茶はやったみたいね。何柱か魔神殺ししてるし。こわっ。
スライム宿はスライムでも快適に泊まれるように小さなスライム向けベッドとかあって、せっかくなのでそこで寝ようとしたらカルさんとイリスにやはり抱き枕にされたわ。カルさんもイリスも他のスライムに浮気するくせに独占欲が強すぎよ!
ちなみにイリスはカルさんと浮気するのは許すみたいだわ。魔物は強さが全てってのは分かるけどイリスほど独占欲が強くてもそうなのね。
翌日はスライム屋台とかスライム鍛冶屋とかを見て回る。スライムってあまり火を使わないのね。だからか屋台は果物を使ったおやつが多い。草食スライムが多いのね。うちのダンジョンは肉食スライムが多いし火は恐れないわ。まああたしが火を使いすぎなのかも。この体燃えないからね。長時間火に曝されたら危ないかも知れないけど。本来スライムとは相性の悪い火が効かないんだから土属性スライムって弱点がほとんど無いわね。まあやっぱり水分がないと駄目だし空を飛ばれたら面倒だけどね。
アナさんは属性は無いらしい。って言うかほぼ無敵でしょ。赤の星と青の星を併せても魔力はナンバーツーに入るんだから。修行つけてもらおうかしら? まあバトルジャンキーじゃないから良いんだけど。これ以上戦闘力は要らないわ。
スライム鍛冶師は酸で溶かして造型したり体内で圧縮したりしているわね。うちのスライムにも最近はアイアンスライムとか生まれてるからユキメにもやらせてみようかな?
新しい武器をオリハルコンベースにしたり魔石を乗せたり。
ちなみにあたしも炎のナイフとか雷のナイフとか氷のナイフとかを作って収納してるわよ。これで属性的に相性が悪くて勝てないと言うことはほぼ無くなったわね。魔神様以外なら勝てる! はず。
王都を歩いてるとやはりスライムが寄ってくる。中には商売してるスライムもいるし。ケットシーのリディアはスライムのもちもちが気に入ったのか片端から抱き締めてるわ。イリスやカルさんも浮気しているわね。あたしももちもちしても良いのよ! ちょっとくらいはね! もちもちされました。
もっちゃりもっちゃりぽよんぽよーん。もっちゃりもっちゃりー。あたしは美少女、ピンク色の球体よ~。もっちゃりもっちゃりー。
だんだん王都の中心に近づいてきたわね。温泉の煙があちこちから上がっててお城は山に半分埋まってるみたいな造形ね。ロールプレイングゲームみたいだわ。お城は誰でも入れるけど、中にあるのはダンジョンらしい。
アザレアダンジョンと同じで入り口が五つほど有るみたいね。
うちは今のところ四つまでで、ナイトメアコースの出入り口は必要ない限り開かないわ。あそこは入るときは投げ込まれるしね。床に扉が付いてるの。雰囲気がマジで地獄。ヘルモード。
このお城の中のダンジョンは冒険者用が三つ、牢獄が一つ、現在開発中のリゾートが一つね。やっぱりアナさんもリゾート開発始めたんだわ。どうなってるか楽しみね。




