旅のスライム、ダッシュする。
赤の星編はもう少しで終わります。
さて、デニスまではテレポートして続きを旅するわよ。うん、良い具合に襲われてる馬車がいるわね。なんなの。あたしに旅をさせたくない神様でもいるのかしら?
うーん、襲われてるのはゴブリンで襲ってるのはインプだわ。魔物の星ならではの光景ね。どっちを助けたら良いものか分からないわね。
「そこの商人さんは悪徳だったりするのかしら?」
「善良な商人です! 助けて!!」
「邪魔するなら殺す!」
うん、どうもゴブリンを助けた方が正解みたいね。この世界色々と難しいわ。そう言えばどっかの戦争でもゴブリン助けたわね。
しかしインプとか戦いづらい相手だわ。イリスに似てるし。まあ殺さなければ良いか。
「アイアンインゴットバインド」
「きゃっ!」
「何これー、動けないよー!」
鉄インゴットを変形して腕と脚を縛らせてもらったわ。なんかいやらしい感じがするわね。まああとはデニスのお代官様に任せましょ。たぶん死刑なんだけど。魔物よね。
「ご飯食べたいよー」
「死ぬのやだー」
「あの、この娘たち助けてやれませんかね?」
「ゴブリンが紳士!」
なんなの、赤の星では緑色の生物は紳士じゃないと駄目なルール有るの?! 空が赤いから黄土色に見えるとか思っちゃダメよ!
「まあそのゴブリンさんに感謝するのね。ご飯なら食べさせてあげるわ」
「ありがとー」
「ご飯だー」
緩いわ。強盗なのに。でもまあ力が正義の魔物社会なのよね。いい加減慣れないわ。とりあえず貯めておいたステーキとかサラダとか出してやる。好き嫌いは駄目よ。そう言えば最近ユキメがラーメン屋をオープンしてたわ。カルさんが教えたみたいね。今晩はラーメンにしよう。チャーシューとモヤシ盛り盛り増し増しね。メンマとかは有るのかしら?
辛子高菜も美味しいわよね。スープはトンコツなのかしら? 魚介系な気がするわ。
「ちゃんと働くならダンジョンに入れてあげるわ」
「働くー」
「頑張るー」
「働く気が有るのになんで強盗なんかしてるのよ……」
この子達がゴブリンなら瞬殺してたわ。あたしも差別主義者ではないんだけど、やっぱりビジュアルって大事よね。悲しい話だわ。あたしもピンクのプルプルボールより女の子の形の方が好きだしね。……よく考えたらボールの形の女って怖いわね。
「えーと、お嬢さん、アザレアダンジョンの場所はご存知ですか?」
「あら、ゴブリンさんはうちで商売するつもり?」
「うち?」
どうもこのゴブリンさんはアザレアダンジョンで武器のレプリカを買い付けするために旅をしているらしい。うーん、ついでだし全員テレポートで送るわ。イリスにインプの面倒を見てもらう。五体もいるから面倒臭そう。まあ尻子玉……じゃなくてナイトメア要員にでもすれば良いわ。
ゴブリンさんは馬車ごとダンジョンまで来れて感激しているわね。最近このダンジョンからエリオールまでは大きな街道で繋がってるから帰りも楽々よ。何故か入り口にも駅舎みたいなのができてるし。エミリアさんだっけ、ブレイズさんの姪御さんは優秀だわ。……許可出した記憶はないんだけど、必要なら仕方ないわよね。
エミリアさんに一回は会っとくべきかしらね。仕事仲間みたいなもんなのにブレイズさんに任せっきりだわ。
さて、旅を続けるわよ。テレポート。もうね、ショートジャンプ使って行っちゃってもいい気はするわ。でも普通に走ろう。うん、ステップで空を駆けるのは普通ではない気もするけどね。音速までは加速して良いかな?
あ、またゴブリンが襲われてたりしないわよね? スルーするわよ。
しかしなかなかアナさんの国までは遠いわね。王都までは二千キロはあるんだから仕方ないけど。うーん、でも一時間くらいでパッと着いちゃったらそれは旅としてどうなのかと思うわよね。そもそもあたし、自分の心を整えるために旅をしてるはずなんだから、ゆっくり行けば良いわよね。うん。時速五十キロくらいでのんびり行こう。港町が有るし、ちょっと海鮮でも食べていこう。
そう言えば乗り物って馬車しかないのね。カルさんなら車とか作ってそうだと思ったんだけど。良く考えたらあたしこの世界のことはまだまだ何にも知らないんだわ。ずっと引きこもってたし。
ちなみに馬車と言ってももちろん魔物なので魔法攻撃とかできるらしい。下手したらさっきのゴブリンやインプより強いわよ。
どうも天海嘯スタンピードで発生した魔物が理性を獲得しはじめて、住民が増えたことで食料が減った結果強盗みたいなことする子供が増えたみたいね。外をちゃんと出歩かないとそういうとこが分からないのよね。引きこもりは良くないわ。
スタンピードでダメージが有ったのかこの町の中も少しぎすぎすしてるわ。でも時折アザレアダンジョンの話題が出てくるわ。楽園だと言う噂になってるみたいね。
イリスやケイシーやユキメに念話で伝えると喜んでいる。
ブレイズさんとかリゼさんログさんは食べ歩きしてるみたいね。楽しむところが多くて良かったわね。
建設とかは一通り終わっちゃって、手を加えるとしたらダンジョン増やすくらいなのよね。支所とか作れるのかな?
ちなみにアルトくんだけ仕事してるわ。トイレ掃除はスライムに任せて良いのよ。カルさんは今日もサンシャインを泣かせながらキュウリかじってるわ。あ、カルさんは常にあたしの行動を見てもいるわね。念話で仕事もしてる。並行していくつも処理できるなんてどんな脳をしてるんだろ?
そういうとこも魔神様だわね。
根魚の煮付けとか食べてから釣り堀が有るというので、参考に向かってみる。裏に差し掛かったところで女の子の悲鳴が。またぁ?!
いや、天海嘯後で荒れてる時期だから仕方ないのよね。オークに連れ去られそうなケットシーらしき猫人の女の子を見つけた。
「何やってんの?」
「なんだ? 余所者か」
「助けてください!」
こういうの事情を聞いたら助けない方が良いことも有るのよね。例えば猫人の方が泥棒だったり。今回はどうなのかしら?
「無理矢理は良くないわよ。手を放しなさいな」
「けっ、お前もこいつと一緒におか……」
「はい、アウト」
もー、なんなの。悪いオークなんてうちの近所やお客にはいないけど、誇りのないオークやリザードマンもいるのね。
とりあえず一回殺して縛ってから蘇らせる。猫人の娘に話を聞くと普通に悪いやつらしい。周囲の人にも確認を取れたので簀巻きにして海に投げ込んでおく。
そのあとは猫人の娘とキャッキャウフフしたわ。釣り堀で。鯛とかハマチみたいな魚が釣れたから刺身で食べたわ。ここらはもうアナさんの国だからアナさんの国にも醤油は伝わってるのね。本当にあたし何にも知らないわ。
猫だから魚好きってわけじゃないと思うけど猫人の娘、リディアちゃんはずいぶんお刺身が好きみたいね。ああ、魔物って生肉とか平気なのよね。お腹壊してる魔物とか聞いたことないわね。
ユキメによるといないこともないらしい。最終決戦のつもりでドラゴンに挑んだらお腹を壊して寝込んでた、とかあるのかしら。締まらないわ。冒険者たちもがっかりするでしょうね。
あたしの配下は病気にならないけど。ダンジョンに管理されてるからかな?
リディアちゃんはグランスグレインを案内してくれると言うので、一緒にアナさんのダンジョンに向かうことにした。彼女も一応冒険者らしい。二人で仲良く歩いてるとイリスからかなり不機嫌な念話が飛んできたので、イリスもテレポートで呼び出した。抱っこされたわ。
旅の間はあたしも色々知ったり考えたりしてるので遊べないのは仕方ないと思うけど、イリスやカルさんはあたしと遊びたいみたいね。
まあ毎日帰ってるんだからそこで遊べば良いんだけど。この日も結局ダンジョンに戻ってカルさんと寝たわ。リディアちゃんはアザレアダンジョンに感激していた。どうもかなり知名度が高まってるみたいね。冒険者の憧れとか言ってたし。
アナさんのダンジョンも改装が、やっぱりされてるみたいだわ。
楽しみのような不安なような。変なコースターとかできてないわよね? 死ぬ可能性があるようなやつ。監修しないと駄目かもしれないわね。ダッシュで行きたいけどリディアちゃんとイリスを連れてるから、ここからは歩きか、馬車の旅ね。歩くか。別に急ぎの旅でもないし。
次回、アナさんの都。




