とても酷いスライム、女の子とデートする。
三話投稿、三話目です。
アナさんのところまではまだ遠いし、どうもあの闇金業者が繋がってる業者とか貴族がいたみたいなんで、カルさんの要請であたしがしばらくお掃除することになった。一応あたしはカルさん配下の魔王の名前を使っていいらしい。
正義の魔王、アザレアが悪を討つ! まずはあたしだ! 駄目じゃん!
それで調査のために女の子たちをデートに誘います。拐われそうになってたインプちゃん三人娘です。奢るって言ったらすんなり着いてきたわ。そんなんじゃ騙されるわよね!
悪いスライムだからダンジョンまで誘拐。ユキメのレストランでハンバーグ食べるわよ。いや、リゼさんがハンバーグ食べに行くって聞いてから口がハンバーグになってるのよ!
もぐもぐ。じゅわーっと噛むたびに肉汁が溢れるわ。三人もニコニコね。イリスがすごい顔で睨んできて「浮気?」とか言い出した! あたしたち付き合ってたの?!
膝の上に乗せられて、ほっぺとかもっちゃりもっちゃりされたわ。三人もどこか頬が赤いわね!
「アザレアは私の。これは現実よ。もみもみもみ……」
「夢ですね、分かります」
「女の子同士で……」
「エロっ」
「エロくねえよ! スライムだよ!」
最後のはあたしが触手を入れちゃった子ね。だからエロくないから! 意味ちゃうから!
「それで、真面目な話だけど、悪い奴リストこれなんだけど、住所とか分かる?」
「もっちゃりもっちゃり……」
「イリス、ステイ!」
「これなら分かりますけど……アレス・デニス子爵……この人は違法奴隷の救済をしている方では……」
「マッチポンプって奴ね。助けた奴隷に手をつけてるらしいわよ。好みの奴隷しか助けてない。つまりどこにどの奴隷がいるか把握してたのね。実際奴隷を捕らえていた奴らは一人も捕まってない」
報告では逃げ足が速いのか鼻が利くのか逃げられた、だって。そんなわけないじゃん。で、取引の証拠が出たので真っ黒確定。
で、まあ表だって殺すと面倒だからスニーキングしてこいと。カルさんが正面から乗り込んでも問題はないけどね。あたしら魔物だし、強いが正義。
三人を送って住所をいくつか案内してもらって、一個ずつスニーキング。子爵は最後ね。真っ黒確定だから全殺しでも良いけど、また泣き出しちゃうから無理するな、ですってよ。
血も涙もあるスライムになったせいか平気。悪党は死ぬべきよ。血も涙もあるのにより凶悪に。あれね、泣いたらストレス軽くなる奴ね。
とりあえず女の子泣かす奴らは許さないわ。
一件目は小さい商店だけど違法奴隷の取引してるらしいわね。証拠は掴んでるから正面から行くわ。
「はい、逮捕ー」
「動くな!」
「奴隷はどこですか?」
「言わないとノーロープバンジー。楽しいよ?」
イリスたちも捜査官名義で連れてきた。商人は二、三回バンジーを楽しんでから吐いた。ゲロも吐いた。汚い。地下室がかなり広くて気分の悪い光景が広がっていた。商人はあの世に送ったわ。芦田さんに宜しくね。あそこあの世か分からんけど。
イリスは心配そうに見てるけどこんなクソヤロウでは心は痛まないわよ。
怪我人とかは治療してダンジョン送り。労働してもらうわ。……なんかすごい悪い人みたいね!
あたし悪いスライムだったわ!
二件目、三件目もイリスたちが踏み込んで殺していく。あたしは回復だけ。あとは奴隷をダンジョン送り。だから言い方。みんなリゾート送りよ。両親が死んでる子が多い。
考えたくないけど逃げ道塞ぐために親を殺してから拐ってるのかな。生き返らせて各自もう一回ずつ殺してやりたい。
四件目はかなり大きめの金貸し。表向きはクリーンな仕事をしてるけど借金を返した顧客の名簿を昨日潰したヤの事務所に売り付けていたのが分かってる。裏で何かしてるかもなのであたしがスニーキングね。
地面を掘って地下から入ると、案の定奴隷がたくさん。綺麗な奴隷が多いわね。これ、貴族向けに着飾らせてる?
ここもけっこう汚い関係の書類が有りそうだわ。地下から階段を掘って奴隷全員イリスたちに渡して踏み込ませる。その間にあたしは主人の部屋を探す。魔力探知。有るわね。
隠し扉の奥にごっそり黒い帳簿の山。あら、脱税とかしてるのかな?
奴隷関連にしては書類が多いわ。カルさんに送っとく。あんまり多いからカルさん泣き出したわ。金貸しは捕まえて色々吐かせるらしい。リゼさんに送ったら唐揚げ食べてたわ。今夜は唐揚げね。
さて、しばらくは書類を精査する。子爵を詰ませないのかって思うかもしれないけど、むしろ慌てて相手が無駄な一手を打つのを待った方がやり易くはあるんだよね。
仮にも名士みたいに思われてる奴だから、……正直ギッタンギッタンにして終わらせてやりたい。
あたしのバックにカルさん付いちゃってるしアレス・デニス子爵が真っ黒クロスケなのは既に明らかだ。さすがに偽装はない。関連してない闇奴隷の取引に関する帳簿にも必ず名前が出てる。偶然とか仕込みにしては数字がリアルに書かれていて、実際にその奴隷がデニス子爵の食い物にされている。
本人たちは助けてくれた人に操を捧げてる気持ちだろうから、まっすぐ乗り込んで行ったら救いたいその子たちに刺されるね。
ある意味余計なお世話なのかも知れないけど、傍目に見れば明確な犯罪、洗脳だ。
奴隷になって苦しんで、それでもいつか幸せになれるから許される、とか思ってる?
子爵に選ばれない子は九割超えるけど、みんな幸せになってるかなあ? そもそも何人も妾を抱えてるんだけど、本当にみんな養われてるのかなあ?
反吐が出る。
まあきっちり仕込ませてもらいますよ。彼の侍女の……妾の一人に少し仕掛けさせてもらったわ。楽しみにしておくといいわ。
さて、まあスニーキングもしとくけど今回はソフトよ。どんな結果だったかはデニス子爵との面会で分かるわよ。
ちなみにその侍女の子はモーリーと言うのだけど、まあ結論から言うと修羅場になった。待て、面会。
子爵との面会には貴族に顔の利くリゼさん、ブレイズさんと三人で向かったわ。テレポート使えるから歩きで行ったんだけど、先触れ入れてても貴族って馬車に乗ってないと舐められるみたいね。この世界の馬はもちろん魔物でそこらの冒険者じゃ勝てないわよ。貴女馬と喧嘩して勝てる?
この世界では更に魔物なのよ。強いわ。
まあそれは置いといて。馬鹿にされるわけよ、衛兵に。ごめん、ちょっと気絶する寸前くらいまで魔力漏らすわね。……魔物は実力社会。舐めてはいけない相手がいるのよ。あたしが前に執事の頭をいきなり潰したのなんてまるでお咎め無かったからね? 一人殺してるのに。それがこの世界なのよ。頭を柔軟にしないと心が壊れるわ。
それでうっかりしてたんだけど、あたしが魔力漏らすと相手の正気を削っちゃうのよね。その衛兵は立ったまま盛大にお漏らししたわ。うーん。弱いくせに貴族の可能性がある相手を舐めるって、かなり教育が行き届いてないわねえ。まあ自業自得だわ。
……あたしの方に漏らせ魔王とかあだ名つかないわよね? まああたしの本気の姿を見たら称号の効果もあって魔神様が漏らしかねないわ。
ユキメなんてカルさん怖がらせるのよ? SAN値は大切にしようね?
それで、なんかあたしが貴族の執事の頭を西瓜のように砕くのが趣味だと聞いていたらしい執事が慌てて丁寧に対応してきた。あの衛兵はたぶん解雇ね。情報統制緩いのかしらデニス子爵家。
応接室に招かれて、しばらくは緊張しまくりのメイドさん(恐らく善良な人と思われる)と、恐縮しながらお茶を飲んでいた。毒とか盛られてるかとちらと思ったけど、残念ながらそこまでは馬鹿じゃなかった。スライム毒効かないもんね。回復もできるし。
あ、ちなみにあたしは王なので子爵より遥かに上よ。魔神様がいるから普通の人の国なら公爵か大公くらいの身分かしらね。魔物は本当に力が全てなのよ。楽は楽ね。上がまともなら。
次回、殴り込み。




