とても悪いスライム、のんびりする。
なんか号泣してしまった。スライムなのに。うーん、どうも理性を司るメイン核が感情を司る核を生み出そうとする過程で一部変質してしまったみたいね。理屈じゃなく言うのならあたしが人間になりたい気持ちが心を変質させたってところかしら。
最近あたし赤ノート先生に全く頼らなくなったわ。色々覚えてしまったし、赤ノート先生に聞いてもできないことがあるしね。だいたいのことは力ずくで乗り越えられるようになってしまったから必要なくなってるとも言える。カルさんのお陰でもあるわね。
あれからみんなですき焼きを美味しく食べて、その日はイリスと寝たわ。人型なのにモチモチされた。テイムされるところだったわ。
「さて、今日は何をしようかしら」
「のんびりする」
「農園に遊びに行こうか」
「そうしよう」
「私も行くー」
あ、ダンジョンの攻略は終わったらしい。敵のボスもコアも破壊されたみたいだ。うちのダンジョンのお得意様たちも超強かったし、まあ武器とかもユキメのパワーアップさせた謎兵器だしね。ダンジョンコアを使わせてるのだけどあたしよりその方面の使い方は確実に上手いわね。ユキメのダンジョンになってない?
まあこのダンジョンはみんなが好き勝手してるけどね。
悪いスライムとして頑張るつもりだけど、正直あたしが戦う必要はほとんど無いのよね。仲間も強くなりすぎている。暇になりそうだわ。開発を進めようかなあ。
スパリゾートエリアと遊園地エリアを明確に分けるのと、宿泊施設に地上階を設けて、遠くを見渡せるタワーを作ろうかと思ってる。それができたら開発も終わりね。それもほとんど最初のスライムのいっちゃんや開発担当のクレちゃんが他のスライムを使ってやってくれるからあたしのやることは本当に無くなってしまった。
冒険者登録してるんだし、せっかくだから七魔神の領地を見学に行くのも良いわね。テレポート使えるようになったからいつでも帰ってこれるし。それを旅と言っても良いのかしら?
「河童さん見つけたー」
「あの河童いつもこの辺り泳いでるわね」
「可愛い」
「テイムしちゃうの? スライムじゃないけど」
「したい」
「モンスターテイマーにジョブチェンジ?」
イリスはサキュバスじゃないなにかね。性欲が変な方向に向いてしまったのかしら?
三人で遊んでいたのだがユキメたちも来た。ユキメ、ケイシー、ブレイズさん、リゼさん、ログさん、サンシャイン、アルトくん。勢揃いである。
アルトくんはグレーターデーモンになってるみたいね。強くなってるけどやってることはトイレの管理とか渋めの仕事ばかりなのよね。称号にベルフェゴールとか書かれてそうね。何かやりたいことがあればやっていいのよ?
スーパーの店員? 何故そこを選ぶ。お客様と触れあえる? 遊園地のぬいぐるみでもやる? やりたいらしい。何故バイトばかり。まあうちって従業員の食費や宿泊費全部タダの超優良ホワイト企業だから好きにすれば良いと思うけどね。
ちなみに遊園地のぬいぐるみは河童とか人化した私とかだ。アイドル扱いである。ケイシーをぬいぐるみにカウントして良いかは分からないがケイシーの分体もサービスさせる。まあコースターに乗れるから文句は無いらしい。コースターのレールもスライムたちに管理を任せてるので安全性は増した。あたしが常に見て回るのは面倒だからね。
スライムたちもずいぶん進化したわね。あたしも楽で良いわ。
「ゴンドラでゆっくり川下りもたまには良いわね」
「緑ー」
「ここはどこも楽しいですね!」
アルトくんも遊んだりするんだ? そりゃするか。カルさんはいつもひたすら間延びしている。
しかし河童もゴンドラに乗るのか? 泳げば? たまにはここでも泳いでるらしい。河童よく出るもんねここ。農園の管理はサンシャインに任せてたっけ。
「お昼からはプール行くー?」
「いいよ。ボールを持っていこうね」
「楽しみ」
「久々に体を動かせますね」
「久々にみんなでスライダーで遊ぼうよ」
三人はほぼ分体任せなんだから好きに遊べば良いのに。まあ仕事が遊びみたいなものなのか、この三人には。
「アザレアは飛び込みはやらないのか?」
「あたしあんまり恐怖心無いのよね。高さも速さもあんまり」
「もったいないな」
ブレイズさんは飛び込み好きよね。水着姿が変態的だけど体付きが良いからね。
飛び込みは、まあ感情を作る核を着けたらやってみても良いかもね。コースターとかスライダーはわりと楽しめるんだけど。
「それにしてもお客増えたわね。ゴンドラ何艘あるのかしら?」
「今は二十艘かな。まあ行き帰りがあるから実質十艘だな」
特に意味はないけど河童のお皿を撫でてみた。意味はなかった。
うん、やっぱり青い空に緑、最高にのんびりした気分になれるわね。前世のあたしはほとんど病院通いで出歩くと言っても病院の庭くらいだったのよね。学校も一応行ってたけど出席日数はギリギリだったわ。
大人になれないと言われていたけど結局二十四歳までは生きられたのね。お酒も少しだけ飲めて、楽しかったわ。
過去のことは何だかもう他人事のようだわ。血管が悪くて詰まったり裂けたり良くしてたのね。運動はできないから白ゴス着て日傘差してベンチでボッチ飯してたら黒ゴス着たあの子が隣に座って何も言わずにお弁当食べてたっけ。あれはなんか対抗心とかだったのかしら? 気にしてくれてたみたいだけど。たまに貧血で倒れたらあの子が助けてくれたわ。迷惑かけっぱなしだったわね。
あれ? ずいぶん思い出せてしまったわ。こうやってみんなといると分かる。あたしはやっぱり寂しかったのね。今は幸せよ。みんなが大好きだわ。
プールに移動して解散。あたしはイリスたちと温水をかけあったり、ボール遊びして楽しんだ。ケイシーとブレイズさんに付き合って飛び込みもやってみたけど、なんか姿勢によって水の跳ねかたが変わるのは面白かったわ。
コースターは移設中だからスライダーで遊ぶ。なんかパイプになってる! すごいくねくね曲がってるわ! ケイシー発明家ね!
「ぐるぐるして溺れそう」
「ケイシーもよくこんなの作りましたね」
「いい完成度になったよ」
「本当ね。よく思い付いたわ」
「もう一回やるー」
カルさんもはまったようだ。リゼさんとログさんを連れて何回もぐるぐるしている。あたしはフードコートでかき氷食べてるよ。温水だから長く浸かると暑い。
館内放送で六時のお知らせ。なんか本当に日本にいるみたいだわ。こういうの憧れてたのかしら。前世のあたしは運動はできなかったはずだしね。
楽しいわ。あたし今最高に輝いてる。回復魔法使ってるわけじゃないわよ?
ソフトクリームも食べちゃお。桃のアイスも食べたいなぁ。全部食べちゃおう。あたしいくらでも食べられるしね。前世のあたしは栄養は完全に管理されてたから美味しいものは食べられなかったわね。塩とかもほとんど取れなかったのよね。でも料理は作ってたけど。家族とかに。
自分の食べるものも美味しく工夫したかったんだわ。
両親は何故かいつも謝ってたけどあれは意味が分からなかったわね。悪いのは弱い私だわ。
今はとっても強くなったのよ。河童と相撲しても勝てるし、ドラゴンだって倒せるのよ。自由に旅だってできるわ。あの子に感謝しておいて。
「晩ごはんなに食べるー?」
「昨日はすき焼きだったから今日は海鮮丼とか食べたいわね」
「あ、私もー!」
カルさんがご飯文化持ち込んでくれて良かったわ。まあ元々は芦田さんが持ち込んだらしいけど。芦田さんにも会えたらお礼したいなぁ。
いつかまた、あの子にも会えたらな。
今日はケイシーやユキメと寝た。たまには良いね! もふりたおしたとも!
次回、旅に出る。明日は三話更新!




