スライム、ダンジョンと戦う。
一万PV突破したよ。嬉しいねえ。四十話おめでとう、有り難う!
さて、と、敵のダンジョンから魔物が大量に湧いたと斥候役のブレイズさんやログさんの分体から報告が入ったよ。いよいよ戦争です。敵方のダンジョンは南の海際にあるようだ。ブレイズさんによるとあたしのダンジョンができるまではそこが稼ぎ場だったんだけど、山の上なので人気は無かったらしい。ダンジョンなのに。
まあ目的が分かんないうちに潰すわけにもいかないね。なんか相手のダンジョンは山の中にあるために人気が低く、さらに最近お客が減ってるのでアザレアダンジョンの存在を気にしているらしい。
その挙げ句にあの下品なアークデーモンを送ってきたのは間違いなく下策だけど。
うちはスライム聖女の楽園とか呼ばれだしたしね。その呼び名はさすがに恥ずかしいわ。でもまあけっこうな数の命を救ったのも間違いない。女神様にチートもらってるんだなぁ。感謝感謝。
今回はダンジョンで防衛して敵をナイトメアに放り込んで魔力を蓄えた分だけこちらから兵隊を送り込んで敵方のダンジョンを攻略するコースで考えている。この間のアークデーモンくらいならブレイズさんとリゼさんなら勝てるけど、まだイリスたちでは怪しいなあ。
戦争を仕掛けてくるんだからあのレベルは五人は来るというのがブレイズさんの予想だ。ちなみにログさんはあたしの配下になっているので分体も何体かいる。配下になってないのはカルさんたち魔神以外ではリゼさんだけだね。ダンジョン開発を一部任せたら配下になりたそうに見てきたけど、カルさんの配下を奪うほど心臓強くないわ。心臓ないけど。カルさんなら「いいよー」って言いそうだけど。
敵陣からの距離は四十キロはあるから、行進速度次第だけど一日くらいかかるかも。近くに陣地を作ってから攻めてくるんだろう。あたしの分体にスニーキングさせてイリスたちの分体に敵兵を拐わせてナイトメア祭り再びってコースかな。強いのはブレイズさんの分体に任せよう。
この間の魔神様祭りのお陰でみんな強くなってるから分体もかなり強い。問題はないと思われる。
そういうわけであたしたちはプールでキャッキャウフフ中です。たのしー。
『敵襲です! 物資が無くなってます』
『ギャアアアアッ!』
『仲間が悪魔たちに拐われていきます!』
『お尻は狙わないでええええッ!!』
うん、何も聞こえない。あたしたちはみんなとプールで遊んでるのよ。敵の声ばかり送ってくるのなんで? 分体のみなさん、念話通信は必要な時だけしてね? あれ? 嫌がらせ?
スライダー久しぶりに滑りまくろう。しゅぱーっとね! たのしーわ!
「アザレア、ボールで遊ぼう」
「良いわね! イリスたちともなかなか遊べないしのんびりやりましょう!」
「たまにはいいね!」
「私も料理ばかりでなく遊びもしませんとね」
「じゃあ私も一緒に遊ぶのー」
「私たちも良いですかぁ?」
「運動の後のご飯も楽しみです」
「カルさん……キュウリを返して……」
「ふむ、ボール遊びも何か新しいゲームになりそうだな」
「検討しておきます!」
いや、サンシャインもブレイズさんもアルトくんも普通に遊ぼうね? 仕事なんてしなくても良いのよ。
『ギャアアアアッ! 尻がアアアアッ!!』
あ、これやっぱり嫌がらせだ! ごめんね遊んでて!
ボスのあたしたちが出ていく必要はないけどダンジョンアタック、一回チャレンジしてみようかしら。あたしは冒険者でもあるからね。まあ敵の冒険者がダンジョンに侵入してるみたいだからそっちが突破してくるなら楽しみましょうかね。
……考え方完全にモンスターだわ、あたし。まあ良いけどね。
「またスラバスする?」
「イリスはスラバス好きよねえ」
「スライムが好き。アザレアが好き。愛してる」
「告白されたーっ!」
『尻がっ! 尻がアアアアッ!!』
やめろや嫌がらせ。
イリスたちの愛情は感じるけどあたしスライムだからそういう感情は好意以上は出てこないわね。残念な体だわ。早く核分裂を覚えないと駄目ね。こればかりは赤ノート先生に聞いても感覚が掴めないから意味がないのよね。本当に全知って使えないわ。
うーん、開発も一段落ついたし暇だなー。遊べばいいんだけど。
ナイトメアコースは地下二十階まで作ってる。敵さんがゴールまで辿り着いたら入り口に戻されるけど逃げれば尻子玉を貫かれる。逃げなくても貫かれるけど。
クレちゃんといっちゃんに防衛は任せてある。リゾートの入り口では敵意判定して入り口を塞ぐとかして対応している。敵意があれば尻子玉コース……じゃなかった、ナイトメアコースだ。無間地獄だね。まあ敵に容赦する意味を感じないわ。あたしスライムだし。
ちなみにリゾートに踏みいられてもお客様たちが対応してくれるのよね。怪我をしたら治さないとね。あたしに無理を言ってくるお客様っていないし。勇気が無いのか配慮してくれてるのかは不明だわ。
謎なことにどんなに強い分体を生み出しても一人たりともリザレクションは使えないのよね。あれはあたし専用魔法みたいだわ。スラバスとかで死んじゃうスライムがいたら怖いから誰かに使ってほしいけど、まあリスポーンするからダンジョンの中なら良いか、と思っちゃうのよね。
「アザレア、どうも冒険者の有志たちが敵ダンジョン、南海山ダンジョンに向けて突撃を始めている。どうする? 支援するか?」
「うーん、自己責任とは言うけど味方してくれる人は救援したいわね」
「エンジェルスライムを何体か派遣して、死者はここまで運ばせるのではどうだ?」
「ブレイズさんはさすがね。それで行きましょう。アターックっ!!」
「ぐおっ、不意打ちはやめろ!」
ボールをぶつけてブレイズさんに水をぶっかけてやったわ。お湯だから冷たくないのが残念ね。
……完璧に遊びながら作戦会議してるわね。こんな光景あんまり見たことないわ。
まあダンジョン攻略なんて一週間や二週間じゃあ終わらないんだから、こういうペースでも良いのかも知れないわね。
ナイトメアコースにけっこう強いのが入ってきてるわね。倒されたユキメやケイシーの分体をこちらで消す。分体とはいえレイプされたりは気分が悪いわ。
犯して良いのは犯される覚悟が有るものだけ? もう一つ言えばその実力が有るものだけよ。ダンジョンの能力を乗り越えてあたしやカルさんに勝てるなら存分にやればいいわ。つまりは不可能ね。あたしスライムだし。
んー、アークデーモンかと思いきや今回は人化ドラゴンパーティーか。獣人や淫魔っぽいのもいるけどなかなかのパーティーだわ。半分くらいの能力はあるイリスやケイシーの分体も、ユキメもやられてるわね。五階くらい突破されてる。ナイトメアモードなんだけどねぇ。変に実力付ける前に潰そうかしら。まああたしが楽しめるほど強くなれたら行ってみても良いわね。
「一応言っとくがダンジョンマスターはリスポーンしづらいから死なんでくれよ。リスポーン前にダンジョンコアを破壊されたら死ぬからな?」
「それなら大丈夫よ。ナイトメアコースにはゴールが無いもの」
「……ここにいる限り無敵か。ずるいダンジョンマスターもいたものだ」
「別に。攻略できるようにダンジョン作るダンジョンマスターなんかいないでしょ。いないよね?」
「相手方のダンジョンはどうだろうな?」
「う、うーん。たぶん攻略できてしまう気がするわ」
「狡いダンジョンマスターはお前だけだ」
「酷い」
「確かにな。お前は酷いよな」
「ブレイズさんも残酷なくせに!」
「モンスターだからな」
全く。モンスターって酷いのね! あたしは前世人間だったらしいから酷くないわよ! みんな優しいって言うもん!
次回、泣く。




