スライム、ボールになる。
さて、まだ敵性ダンジョンも攻めてこないので今回はスライムバスケットのルールを煮詰めていくことにした。あたしはスライムの感覚を知るためにボールサイドで混ざってみた。
イリスとルールを煮詰めてみる。
「エアロスライムとピンクのスライムは五点とか十点にするべき」
「結果の累計を常に取るようにしてスライム種ごとに点数を変えるのは?」
「そうする」
クレイスライムやロックスライムは重いしね。エアロスライムやあたしは空中移動は禁止だ。エンジェルスライムもステップで飛べるしね。翼で飛べよ。
チームは五対五だ。イリスチームとケイシーチームでまずやってみる。
イリスチーム。イリス、ブレイズ、サンシャイン、ユキメ、カルさん。
ケイシーチーム、ケイシー、リゼさん、アルトくん、ログさん、何故か来てるドリンさん。
これは面白い試合になりそうだ。ちなみに魔法は無し、身体強化も無しなのでカルさんやドリンさんもちょっとスポーツができる女の子って感じだ。ただぶつかることもあるので防御魔力は許される。
得点はとりあえずあたしとエアロスライムの得点は三点からスタートだ。
まず試合開始十秒前にスライムたちがフィールドに入る。選手たちは自陣で待機だ。この段階でスライムに触ると減点だけど故意でなければ構わない。
試合開始と共に足元のスライムを掴みにかかる面々。スライムは自由に逃げていい。スライムを踏むのはラフプレイで三秒間フィールドを出ないといけない。審判やラインズマンにはあたしの分体が入っている。プレイヤーに攻撃するのは禁止だが、ラフプレイはあるので、酷い場合は退場だ。
イリスがゲットしたスライムをブレイズさんにロングパス、ダンク。すげえなブレイズさん。普通に身体能力高いわ。ちなみに魔力使用を感知されたら三秒間フィールドを出される。一般的なファールの罰だ。イエローカードやレッドカードも導入してみた。酷い場合は一発退場だ。
カルさんやドリンさんはすぐ退場になるかと思ったが意外にも冷静なプレイスタイル。コンスタントにスライムを入れていく。
サンシャインとドリンさんは低身長を生かして敵の足元を抜いていく。ポイントガードみたいだな。プレイスタイルがだんだんみんな固まってくる。
スライムゲッター、ランナー、パサー、シューター、ガードという役割ができてきた。楽しいなこのスポーツ。
あたしも角に追い詰められてイリスに捕まった。捕まるとスライムは抵抗できないルールだ。スライムが抵抗するとフリースローが与えられる。
誰かがファールすると持ってるスライムは離さないと駄目だが、その間はスライムも動いては駄目だ。
イリスからサンシャイン、ブレイズさんにあたしが渡され、シュート。かごのスライムだ。得点が加えられるとスライムはフィールドに戻れる。次は捕まるまい!
これはスライムにも選手が生まれそうだね。絶対に捕まらないノーマルスライム選手とか個性が出てきて面白いな。名スライム選手をゴールしたら五ポイントとかにルールが変わりそうだ。
試合はイリスチームがキャプテンのイリスのスライムゲットの速さで得点を伸ばし、ケイシーチームは足の速さで得点を稼いでいく。五分間の試合で両チームとも得点が百点を超えた。すごい白熱するな!
ちなみに会場にするためにわざわざ木張りの床にスライム樹脂をコーティングしている体育館を作った。他のスポーツにも使えそうだ。
観客席も大きめに作ったのでお客様が集まって見学している。もう一つあるコートで何人かやり始めている。正式にチームを作ってるわけじゃなくて子供も混ざってるのでごちゃごちゃだが、それなりに楽しそうだ。そのうちチーム登録できるようにしようかなぁ。
プロスライムバスケットチームとかそのうち出てくるんだろうか?
イリスチームが勝利したので別コートでやってた人たちの中で上手い人を五人集めて試合してもらう。ファールしないようにね!
「ヘイ、パース、ヘイ、パース!」
「カットー!」
「ピンクスライムが行ったぞ、ガード!」
「ピィー! 反則、スライムダメージ!」
なんかもう形になってきてるんですけど。かごの周辺三メートルは地面を踏んでいいのはガード側だけ、なんてルールが出てきた。ガードは籠に触ってはいけないらしい。タッチするとフリースローだ。まあスライムはドリブルできないし逃げるから、そこがバスケットとはかなり違うね。
イリスが頻繁にルール提示してくるんだよね。
「フリースライムも作るべき」
「どんなルール?」
「ゴールしたスライムを十秒モチモチできる」
「却下」
スライム死んじゃうわそのルール。まあ捕まったらモチモチされるけどね。あたしも全力で逃げるけど。スライムがルール違反したらモチモチする? わざとルール違反したらファールで。三十秒くらい退場だな。
お客様チームが意外と強く、イリスチームがエアロスライムなんかをゲットするとガードに三人入ったり、かなり高等なプレーが始まった。
イリスがゲットしたあたしをそのまま持ってシュートエリアに入りジャンプ、シュートと見せかけてブレイズさんにパス、そこからブレイズさんのダンク! ぬごーーーッッ!!
空中では進入禁止エリアにも入って良いしスライムを持っていなければアタッカーも入っていいらしい。これで味方シューターと敵のガードが待ち伏せるテクニックが生まれて、ゴール下の争いが激化した。
スライムを持っていない状態ではある程度接触が許されるのでゴール下にシューターを入らせまいとガードが体を張る。スライムを空中で受け止めてガードを躱すスライムレイアップシュートが発生。どんどんバスケになっていくな。
でもスライムバスケットはバスケットボールではない。五人が一斉にスライムを掴んで同時シュート、時間差シュート等を行う。どんどんゲームが高度になってくな! あたしもプレイヤーやりたくなってきた!
第二試合もイリスチームが勝ったので負け抜けで、また別のお客様チームが入ってきた。
さすがに連戦で疲れたイリスチームが敗北。かなりハードなスポーツになってきたもんね。
スタミナの余ってるケイシーチームはダッシュタイプのチームだ。一斉にスライムを掴んで走り出す。相手はガード型チームでシュートをカットしたりパスカットしてロングシュートで決める。
体力の余ってるケイシーチームがその機動力でスライムを追い詰め敵陣をかき乱し、乱打でポイントを稼ぐスタイルを確立した。すげえ、このスポーツどんどん進化するな!
選手六人にした方が良いかも知れない。コートの広さから五人が適正なんだけど。そこも作戦か。
なんか観客の人がどんどんチームを作ってるのでお客様チーム対決も観察してみる。
スライムを掴んではシューターにパスするキャッチアンドスロースタイルが生まれた。ガード型チームには通じないが全員で走るチームにはカウンターを決められそうだ。
ここにカウンター戦略が生まれる。
ガード型チームがゾーンディフェンスし始めたところで魔物のスポーツセンスに戦慄したわ。この人たち地球のスポーツに放り込んでみたいわー。基礎能力が違いすぎるけど。
「スライムダメージの判定、大丈夫?」
「まあ、あたしは大丈夫だけどね。ノーマルスライムに対しては判定を厳しくしても良いかもね」
「アザレアは戦争前に遊ぶスタイルだよね」
「緊張しちゃうのかもね」
これから先の戦争は大規模なものになる。ダンジョンの潰しあいなんて簡単なわけないからね。敵がガッツリ守ってるゴールにランナーやシューターを突っ込んで行かせないと駄目なんだ。
このスポーツって訓練にもなるかもね。楽しいんだけど。
スライムダンク!
次回、開戦。




