魔神ネットワーク(sideカル・ダモン)
魔神ネットワークの定期交信日が来たよー。私たちは七人で集まって仮想の部屋のような場所を作り上げて交信するのー。
その七人、私、魔神女王カル・ダモンの他は最古のスライム、アナ・グランスグレイン、はぐれエンシェントドラゴン、グレイ・ジール、戦闘狂の獣神、ジルド・バッシュ、遊び人のバンパイア神祖、ドリン・ハーディー、研究好きなデーモンエンペラー、ライム・ススキ、トレントの王、世界樹オージン・ケイ、この六人ねー。
念話形式で、楽なのでいつもは文字列で会話しているのー。
アナ「はーい、みんな集まったー?」
グレイ「珍しいなグランスグレイン、一番乗りかよ」
アナ「アナでいいよー! 今日はカルちゃんが新しいスライムの魔王について報告してくれるのよー! トカゲちゃんもいつも来ないのに早いじゃん」
グレイ「トカゲ言うんじゃねえこのスライム女!」
オージン「仮想空間で大声を上げるでないわい」
アナ「世界樹のお爺ちゃんおはよー」
オージン「お前の方が年上じゃろが!」
グレイ「お前も上げてんじゃねえか」
ジルド「それで、そのスライム強いのか?!」
グレイ「出たよ戦闘狂……」
アナ「スライムはみんな強いんだよ!」
グレイ「最弱種族だろ!」
アナ「あたしに喧嘩売るとは良い度胸ね!」
グレイ「ぎゃああああッッ!!!」
ジルド「念話伝いで攻撃とか相変わらず器用なことしてんな……」
ドリン「やっほー! みんな元気そうだねー!」
ライム「おはよ……」
アナ「二人とも遅くない?」
ドリン「なんかケンアクだったから入りづらかったよー!」
ライム「寝てた……」
グレイ「そ、そもそも主役がまだじゃねえか……」
カル「お待たせー。きたよー!」
ジルド「遅いぞカル・ダモン! 勝負だ!」
ライム「念話で勝負してどうするのよ……」
ドリン「それよりねーねーカル、新しいダンジョンさー、なんかめっちゃ面白いらしいじゃないのー! 一人で楽しむとかズルくない?!」
カル「魔神が押し寄せたらダンジョン壊れちゃうよー」
ジルド「最強の魔神が入っても耐えてるなら大丈夫なんじゃねえのか? そこで勝負しようぜ!」
カル「壊れるから虎さんは来ちゃ駄目」
ジルド「お、おう」
グレイ「語尾が伸びてねえカルの威圧感半端ねえな……」
オージン「それで、そのスライムちゃんは穏やかな子なのかのう?」
カル「穏やかな時もあるけど、あれはアナちゃんと同種だよー」
アナ「わあ、それは会ってみたいわね!」
グレイ「アナと同種って……確実にヤバいヤツじゃねえか……」
アナ「何か言った? トカゲちゃん」
グレイ「いえ、何でもないです」
ライム「研究してみたい……」
ドリン「それでそれで、どんなダンジョンなの?! 楽しいとこあるの?!」
カル「控えめに言ってもめちゃくちゃ楽しいよー。あのねー、河童さんがいるの」
ジルド「河童?」
カル「温泉があってねー、温水プールにはスライダーやゴンドラやコースターがあるし、レストランの料理も全部美味しいのー」
グレイ「まてまて、一から説明しろ。ダンジョンの話だよな?」
ライム「スライダーとかコースターってなに?」
ドリン「楽しそう! 行ってみたい! 今から行っていい?!」
グレイ「ちょっと待て、さっきからアナが喋らねえけど……」
カル「あ、アナちゃんこっち来てるー」
ドリン「抜け駆けー! 酷いやアナちゃん!! 私も今から行くからねー!」
カル「ちょっとー、みんな来ちゃったら駄目だってー!」
グレイ「それで、その料理ってのはどんなもんなんだ?」
カル「グレイちゃん食いしん坊だねー。お肉もお野菜もお魚もあってー、中華やフレンチや和食もあるよー?」
ジルド「それはお前が青の星で食ったってやつか?」
カル「そーなの。不思議なんだけどねー、アザレアちゃんは青の星の料理を再現するのが上手なのよー」
オージン「隣接世界感応仮説か」
カル「どうもそうっぽいー」
ライム「研究したい!」
グレイ「おい、ライムがめっちゃ食いついてんぞ! コイツはこの乗りになるとドラゴンでも解体しまくるぞ?!」
カル「ライム、アザレアちゃんを傷つけたら貴女の体を実験しやすく分割してあげるから」
ライム「あ、行きません」
ジルド「ライムさえ引かせるとか」
オージン「最強の魔神は伊達じゃないのう」
グレイ「あ、おい、ドリンもそっちに行ってねえか?」
カル「あ、来てるね。アナちゃんはもう着いたよ」
アナ「きゃー!! 何これ楽しいー!! 水が流れてる滑り台めっちゃはやーい!!」
グレイ「あ、畜生、オレも行きてえ!」
カル「まあみんなが来ても耐えられるように鍛えてはいるんだけどー」
グレイ「よっしゃ、今行くぜ!」
ジルド「暴れないから行かせてくれ! 肉食いたい!」
カル「暴れないならいいよー」
ライム「私も解体しないから行きたい……河童見てみたい……」
カル「大人しくしてるならいいよー」
オージン「ワシも精霊体で行くかのう」
カル「どうせみんな来ると思ったよー……」
アナ「ぎゃー! これめちゃ速いよドリちゃんー!!」
ドリン「楽しいいーーー!!」
ジルド「くそ、遠いぞ!」
カル「ロングジャンプで魔力を探して跳べばー?」
ジルド「そんな器用なことはできん!」
グレイ「迎えに行ってやるから待ってろ」
ジルド「助かる!!」
カル「二人は仲いいねー」
オージン「ついたぞい。お、岩風呂まであるのか。さっそく」
カル「お爺ちゃんだねー」
アナ「カルちゃんも一緒に遊ぼー! ドリちゃんもいるしアザレアちゃんも連れておいでー!」
アザレア「うわ、なんか念話の強い場ができてると思ったら何ここ!! カルさん?!」
カル「あれ、閉鎖ネットワークなのに乗り込んできちゃったー。アザレアちゃんやっぱりすごいねー!」
アザレア「念話でチャットしてる?! 凄いな魔神!!」
◇
「それで、七魔神が全員乗り込んできたわけ?」
「そうなのー。しばらく遊んだら帰ると思うからー」
「いや、魔力的にはうはうはなんでいいけどね」
いやー、こうなることは予期してたんだけど、思った以上に食い付きが良かったなー。ダンジョンを走り回ってダンジョンの生命力を足した甲斐があったよー。アザレアちゃんも暴れるような相手には厳しいけどお客さんには優しいからねー。
今アナちゃんはドリンちゃんとゴンドラで植物園巡りしてて、そこにライムちゃんが合流したところでー、グレイちゃんとジルドちゃんはレストランに突っ込んでいったねー。あの二人はご飯大好きだからなー。オージンのお爺ちゃんは岩風呂に根をおろしちゃってるなー。
「アナさんはスライムなんだ。先輩だな」
「五万年以上生きててー、自分でも幾つか分からないらしいよー」
「とんでもないレベルで先輩だった!!」
「みんな万単位の時間生きてるねー。一番若いのはジルドちゃんで一万年ちょっとだったかなー」
「気が遠くなる話ね……」
「じゃあアナちゃん捕まえて紹介するねー」
「他の方々はどんな魔物なの?」
ドリンちゃんは身長百四十くらい、銀髪赤眼の可愛いバンパイアの子。ライムちゃんは研究者で金髪碧眼ショートヘア、デーモンの女の子だけど百七十くらい身長がある。でも猫背。グレイちゃんは不良ドラゴンで人化すると黒髪短髪に金の眼。百五十センチくらい。意外と脳筋で、目は銀色の白い虎の獣神ジルドちゃんとは喧嘩仲間だ。ジルドちゃんは身長百八十くらいで真っ白毛むくじゃら。目も銀色だよ。
オージンお爺ちゃんは白髪に緑の眼で身長はお爺ちゃんだけど百九十はある。本体は五百メートルを超える大木。アナちゃんは白ベースに頭の頂点は青くて毛先は白い、青い瞳のアザレアちゃん色ちがいみたいな子。身長も百二十くらいでアザレアちゃんと変わらない。スライムは小さい方が体を保ちやすいんだねー。顔は違うけど、遠い親戚に見えるー。
魔神はもちろん全員モンスターだよー。自由奔放なモンスターの中のモンスター。念話ネットワークでお仕事はしてると思うけど、こんな面白い遊び場を見つけたら、大人しくしてられるはずないよねー。
もし暴れたりしたら、その時はしっかり止めるけどね。
チャット回みたいなどうでも良さそうな回に重大な伏線を入れていくスタイル。
次回、魔神様が暴れます。お客様を饗すのがアザレアダンジョンスタイル。




