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スライム、エリオールの危機に巻き込まれる。

 しばらくはダンジョンで遊びながら改築計画を練り上げることにした。

 相撲は定期開催になった。日本と違って賭けも有りだからかなり収益が出そうだ。

 他にはとりあえず釣り堀は欲しいかな。ログさんが釣り好きだったはずだ。ついでにユキメに料理してもらおう。持ちかえり用にスライム樹脂で作ったクーラーボックスを用意しても良い。氷も作らなきゃ。氷魔石をダンジョンコアで大量生産しよう。

 あー、なんかトラブルあるかも分からないからポーション関係も欲しいし、ダンジョンで得られる宝も何か工夫したいなぁ。


 幸いなことにカルさんがいてくれるから魔力は潤沢にある。でも物質化はガチで大量の魔力が必要だからそれでも魔力足りなくなる。

 度重なるスタンピードで魔物の素材は貯まってるんだけど使い道が微妙に無い。ドラゴンの鱗とマルコキアスとかいうモフモフの毛皮とローブを組み合わせたドラゴンローブとか作ってみるけど微妙に使い道が無いので宝箱行き、とかを繰り返している。

 まあ宝箱の質が良くなったのでダンジョンアタックしたい人が増えて、ダンジョン入り口とリゾート入り口を完全に分けることにした。カルさんがいたら平気だしね。


 ダンジョンは広域だけど更に深層に掘ることにする。クレちゃんに任せておけば良いかな。あたしは宝箱設置作業だ。ある程度はコアに任せておけば補充もしてくれる。二十階くらいは作りたいよね。罠は全部ワープで魔物もあたしたちの分体ばっかりだけど。ちなみにブレイズさんに頼んだら配下になってくれたので途中に水着一丁で水泳帽と水中眼鏡の変態バンパイアがボスとして登場する。分体をあたしが加工した。ブレイズさんの変態さを見せつけてあげるわ! さすがに殴られた。ぷるるん。


 でも、カルさん以外は配下になってくれるかもね。カルさんはあたしが配下みたいなもんだ。具体的な強さで言うとあたしが二千ならカルさんは二万くらい? 正直に言えば格上過ぎて実力を測りきれない。四万と言われても納得する。百万とか有っても今は計りきれないわ。

 カルさんは今日も元気にキュウリをかじって、サンシャインを泣かせているよ。


 そんな風にダンジョン改築しながらのんびり暮らしているとブレイズさんが報告してきた。


「アザレア、どうもエリオールのシュレイが困っているようでな。少し行ってくる」


「いーよいーよ。別に好きにしていいからね」


 配下だからと言って縛る気はない。みんな自由にしてほしい。


 ……自由にしてない配下いたかな?

 いないわ。


 で、帰ってきたブレイズさんがまた厄介事を持ってきた。どうもエリオールに繋がる街道の使用権を他の伯爵が主張し始め、無理に税金を取り立てようとしているらしい。ほうほう。


 あたしに喧嘩を売ろうと言うのね。エリオールは港もあるから海から回避もできるらしいけど陸路より明らかにコストがかかるから貧しい人は来れない。そんなもん許すわけないでしょ。


「ねえ、あたしがその伯爵潰したら何か問題有るかなあ?」


「お前は妙に優しいところがあるよな。モンスターは力が正義。潰せるなら潰してこい」


 わおう。モンスターアグレッシブ過ぎるやろ!

 スライムやケイシーたちの分体も戦力と考えて伯爵と戦争か。

 正直に言えば分体たちってオリハルコン並みにコストがかかるんだよね。カルさんがいて一日一体しか作れない。魔力圧の関係でこれ以上は生産速度が上げられない。圧力が高まるのに魔力の吸収が無いから差し引きでダンジョンの魔力が減るんだよね。

 配下は外で死なれるとリスポーンしないからなぁ。まああたしが蘇生する手は有るけども。

 どう被害を少なくその伯爵を消せるか……。あたしが最強のスニーキングのプロだと忘れてたわ。暗殺で行こうか。


 もぐらスライムに狙われたら最後。寝首を掻かれるのを覚悟すると良いわ。


 そういうわけで伯爵と顔合わせすることにした。さすがに顔の分からない相手は殺せん。この星進んでるのにカメラとか録音機とかはないのよね~。便利なのに。


 んで、カルさんの書状を持ってその伯爵、ルシャーノ・バンモルティエとかいうやたら仰々しい名前の伯爵の元に向かった。ブレイズさんによると最近傭兵が集まっている領地らしい。うわあ、戦争する気満々じゃん。天海嘯には引きこもっていたらしい。その分の魔物はコーシン領に流れていたと言うのだから堪らない。ぶっ殺してやろうか。いや、ぶっ殺すんだったわ。


 あたしの魂が時折軋む。あんまり殺しが好きじゃないみたいなのよね、あたしの魂。でもスライムあたしとしては生き残ることの方が重大だわ。そのためになら誰でも殺す。


 ……さすがにあたしもそれは物騒だとは思うわよ? 殺さないで済むなら殺さないわ。殺した方が楽だけど。


 先触れを出してガタンゴトンと質の悪い馬車で出かける。あたしは酔わないし平気。

 相手の伯爵も一応魔王級の強さはあるし、お金も持ってるので良い傭兵を雇ってる可能性は高いらしい。家なき子より強くて相性が悪いと苦戦するかも知れないわね。まあ飛べないなら穴に落とすだけだけど。


 さて、数日もかけてバンモルティエ領にたどり着いた。わりと大きい領地よね。ダンジョンやエリオールから見れば北東になるのかな。往復で一週間放置とか、カルさんを慰めるの大変そう。


 つっぶーすー、つっぶーすー、バンモルティエのりょーうーちー、と、チューリップが咲きそうなメロディで歌いながら馬車を降りる。

 付き人はブレイズさんだけだよ。この人焼き尽くさない限り蘇るらしいし。

 土に埋め(埋葬し)ても殺せるらしいけど、空飛ぶもんねこの人。今ならイーブンで戦える気がするわ。

 どうも強い敵を倒しても強くなるらしいのよね。ゲームみたいにモンスターを倒してレベルアップができるみたい。あたしはナキコ(家なき子)を倒したからかなり強くなってるみたい。えーと、無宿のなんとかさん。無郷だっけ? むきょー! 敵の名前覚える意味あるの? 殺すのに躊躇っちゃわない?


 今回の、あー、なんとか伯爵も名前覚えてないや。見た目で徒名着けてそれで呼ぼう。うん。


「ルシャーノ・バンモルティエな。さすがに初対面で殺すなよ? 後がウザいからな」


「一応ルールあるんだね。貴族だけのだろうけど」


「カル様が決めたルールもあるんだからな? あの人ゆるゆるだけどな」


「生まれたてのダンジョン潰しても許されそうな気はする。あの人が作った法律なのに」


「魔物は欲望に正直だからな」


 本当にぶっ飛んでるよね、赤の星。あたし青の星や地球に戻ったら生きていけない気がするわ。


 そしてまあ、ルシャーノの城が酷かった。使用人がみんなスライムごときが、みたいな目で見てくる。

 ちょっとそこの執事の頭を素手で握りつぶして見せる。あんたら自分の立場分かってんだろうな?

 喧嘩を売るなら片端から殺す。


「おいい! いきなりころしてるじゃないか!!」


「普通に殺すでしょ。自分の立場も分からんような雑魚は」


 そこにいたこちらを舐めくさっていた使用人も一斉に姿勢を改めたし、間違ってないと思う。あたしらしょせんモンスターだし。


 ものすごく青い顔をして他の使用人たちはあたしたちに丁寧に対応するようになった。ほら、モンスターってこう(・・)なんだって。力を見せつければ従うんだ。


「殺気をぶつけるくらいで済んだ気はするが?」


「あたし、舐めてくるやつに施す慈悲なんか持ってないわよ?」


「だろうな」


 応接間に案内されてあたしらはしばらくバンモルティエを待つことになった。よし、客を待たせたという理由で殺そう。


「さすがにそれは無茶があるわ」


「そうだよねえ。そうかなあ?」


「このスライム怖すぎる」


 冗句だよ、冗句。

 やがて執事らしい男が扉を開けて出てきたのは予想通りの禿げてデブなイボガエルの魔物だった。見事に魔物だなぁ。こういうのいるのは知ってたけど見たのは初めてかも。


「ようこそ、我がバンモルティエ領へ、アザレア様とブレイズ様」


 言葉は丁寧だがあからさまに上から見下す目線。よし、殺そう。

 その前に殺気をぶつけてやるとガマガエルは脂汗を流し始めた。


「この場で唐揚げにでもしてやろうか?」


「アザレア、ちょっと落ち着け」


「も、申し訳ありません。この度のご用件はなんで御座いますかな?」


 あたしと一緒だね。力で勝てないから情報戦に移ったよ。


「あんたの首を寄越せば終わりよ。この場で腹を斬りなさい」


「まあそれでもいいんだがな」


「さすがに死にたくは有りませんな。私とシュレイ殿の話にそこまで介入されても困りますしね。バンモルティエ領があの街道を作った際の利権の一部を持っているのも事実なのですから」


 けろけろ言いやがってこのカエル魔人。唐揚げにしてじゅわじゅわ言わせてやりたい。


「あたしたちは交渉に来たわけではないわ。宣戦布告よ」


「げろおっ!?」


「魔物のルールくらい分かってるでしょう? 今日は帰るから、せいぜいあたしを楽しませるのね」


 ブレイズさんが感心したように「お前は本当に悪いスライムだな」とか言ったのは聞こえなかったことにするわ。






 メリー七夕。

 次回、スライムSAN値を試してくる。

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