ボッチクイーン、再び戦場へ。
三話目です。
しっかりみんなでキャッキャウフフした。あー、これすごい幸せだわ。ボッチクイーン卒業だな!
夜になってみんなでロイヤルスイートに。ここ寝室もたくさんあるのよね。
本物のユキメにご飯を作ってもらう。和食フルコースだ。
突き出しはなんか謎生物の酢味噌あえ。リゼさんもカルさんもキャイキャイ言いながら食べてる。
小さいお鍋が用意されて火の魔石で温められている。ねえ、こんなに地球日本スタイル誰が持ち込んだの? 知識チートはもう諦めるしかないな。そんなに都合の良いこと有るわけないしね。
鍋が温まるまでと焼き魚、牛串らしき物が並べられる。ユキメが五人いる!? 作業めちゃ速いな!
え、分体の強い方から四体集めたの? すでに戦場ね!
鍋が煮えると炊き込みご飯が持ってこられた。釜飯らしい。具は竹の子っぽい春の野菜だ。スゲーな赤の星。もうあたしやること無いわ。
まあ堪能しましたけど。デザートのフルーツ盛り合わせまで頂きましたけど。
あたしめちゃ良い暮らししてない? 聖女様とか言われてるのに不味くね? あ、モンスターこういうの気にしないのか。強い人が全てを得られるのね。
「それで、私が赴いた理由なのですが」
リゼさんはおもむろに話し出した。ご飯全部平らげてるけど真面目な顔で話し出した。
「どうもブルセリオンが性懲りもなくコーシン領を狙ってるようなのです」
「香辛料?」
「ダモン国王領ですよ」
ユキメ物知りだね。あたしが物知らずか。王領を狙うとかよっぽど強いのかな?
「……軍を出す許可だけ頂ければ私が片付けて参ります。終わったらまたここで遊んでも良いでしょうか」
真面目な人かと思ったら欲望漏れ漏れだよこの人! あー、そうだよね、あたしら魔物だもの。欲望強くないと魔物じゃないよね。
「それならあたしも参加するわよ。カルさんにはここにいてもらった方がダンジョン進化するし」
「本当ですか? 是非!」
おう、モンスターって断らないスタイルだよね。慎みなんかモンスターに必要ないけど。
あっさりあたしまた戦争に行くことになったし。仲間はダンジョン管理が手を離せないから残る。
ええ、ええ、分かってるわ。あたしはボッチクイーンだもの。まあリゼさんもいるからマシか。なんか仲良くなっちゃったし。
でもまた戦争か~。前回の傭兵より強そうだし物資多いかも?
ブルセリオンって奴はグレーターデーモンらしい。かなり強いみたいだね。
そういえばあたしが蘇生させたアルト君はうちの従業員になりたいと度々訪れている。さすがにそろそろ認めてあげないと可哀想かなあと思い始めてる。モンスターらしくない発想だわ。
さて、みんなで夜も遅くまで話して楽しんだので、王領コーシンに向かう。王領って言うのは支配者がいないので国で管理している土地らしい。コーシンさんと言うのはそこの代官さんだそうだ。その土地をしつこく狙ってるのがブルセラ……じゃなくてブルセリオンというグレーターデーモンだそうだ。
んー。なんか油断しちゃ駄目なのは分かるんだけど楽勝かもね。リゼさんが味方についてるし。前回よりも敵は強いかも知れないけど、脅威は感じないな。
リゼさんはテレポートであたしをコーシン領に連れてきてくれた。おお、これは覚えないと!
やっぱりこの人実力者だよ。
コーシン領の領都はつまりコーシンの中心の町なのだけど、とても落ち着いた町だ。イギリスっぽい? 大きな川や橋もある。すごく歴史を感じる町だ。でも守りもかなり高そう。こんなとこ襲おうとするってよっぽど馬鹿じゃないなら何か秘策を持ってるってことじゃないのかな?
「ねえ、リゼさん、ブルセリオンって何か秘策が有るのかな?」
「推測は立ちます。天海嘯の余波でモンスタースタンピードを狙っているのかと」
「天海嘯?」
「青の星が赤の星の人々を拐っていくのはご存知ですか?」
「召喚だね。聞いたことあるよ」
「その召喚は当然赤の星と青の星が最大限近付いた時に起こるのです。それが天海嘯期と呼ばれる時期なのです。だいたい一年に一度は天海嘯期が訪れます」
「なんか胸くそ悪くなるね」
「全くです。青の星のクソ野郎に奴隷にされている同胞はとても多いのです。そしてこの時期、召喚のための魔力が赤の星で氾濫し、それにより魔物が一気に活性化。無法者が増えてスタンピードが起こる」
「そういう仕組みなのね~」
吐く器官無いけどゲロを吐きそうな話だ。つまり私たちは仲間や家族を拐かされた挙げ句混沌に放り込まれるのだ。青の星のせいで。
んー、青の星滅ぼしたい魔神様の気持ちが分かるわ。この赤と青の対立を知ってるだろう芦田さんがやる気無さげなのも分かるわ。こんなもんどうしろってのよ。召喚術式を使用不可能にできる人なんていないだろうから全知全能でも止められない。あの人の全知全能使えなさすぎる。
「地道になんとかするべきなんだろうかな~、そもそも人間って馬鹿だから戦争が無くなることなんてないんだよなぁ」
「まあ私たちはモンスターですけどね」
適度にストレス吐き出せる分、モンスターの方が平和なのかも知れないなぁ。青の星は召喚した魔物で戦争しまくってるんだもんねえ。まああたしらの戦争なんて可愛いもんだよね。阿呆を虐殺するだけだもん。
ん?
まあ非道だからこそ迂闊に手を出さないってことよね。モンスターの法は人間とは視点が違うのよ。
リゼさんに連れられてコーシン領のレストランに入る。この人意外と食いしん坊。体型はすらりとしてるのに。まあ魔物は食いしん坊多いんだけど。あたしは無限に食えるよ?
張るお腹が無いんだもの。収納するから。大食い大会が成立しない生物だよ。
「では、パスタで行きますか。ボンゴレビアンコを」
「あたしはナポリタンで良いや」
ナポリタンって日本で生まれたらしい。イタリア人にナポリタンって言うと嫌な顔をされるらしいから気を付けて。あと、イタリアでパスタをズルズル啜ると怒られるよ。
「うん、良いお店に当たりました」
「ほんと、美味しいね! あたしもボンゴレ頼もうかな」
「カルボナーラも頼んでシェアしませんか?」
「良いねえ!」
ここのボンゴレはトマトを軸にした赤と白ワインを軸にした白が両方ある。だからどこから持ってきたのよその知識! あたしほんと知識チート無理だわ!
まあ両方頼んでシェアした。生ハムサラダとかも頼んだ。いや、リゼさんめっちゃ食うな。
風景はイギリスなのに料理はイタリアンって。まあイギリス料理も美味しいのはあるよ。日本人が作ればフィッシュアンドチップスはごちそうだし。イギリス人油けちって黒い油で揚げてるからね。中国人もよく分からない油で揚げてる。中華は日本で食べようね。中国の高級食材日本産だし。干しアワビとか。
まあそれは良いか。たっぷりパスタとイタリアンを楽しんだのでコーシンさんに会いに行こう。
なんか観光に来た風になっちゃってるけどだいたいリゼさんのせいだから!
のんびり景観を楽しみながらお城みたいな建物に向かう。なるほど、ここは防衛拠点でも有るのね。
「晩御飯は何が出ますかね」
「なんでもう晩御飯の話してるの?!」
「お腹が空きました」
「消化速いね!」
駄目だこの大食いモンスター。あれ、カルさんの国よくもってるね。
コーシン城? に、辿り着いた。リゼさんは顔パスだった。あたし怪しいスライムだよ? 人化してるからポヨンポヨンしてないけど。
なんかこの城の主も濃い気がする。警戒して損は無いだろう。うん、絶対カルさんやリゼさんのお仲間がいるよ。
濃い人の気配が執事さんや兵隊さんから匂ってきてるよ。みんなマッチョ!
次回、悪いスライムがやっぱり悪巧み!




