スライム、魔神と遊ぶ。
カル様が自由すぎる。そもそもあたしが勝てる相手ではないけれど、少し目を離すといなくなる。ユキメが料理しているのを見て涙目で震えていたり、だけど焼きそばはもらって食べたり、プールで飛び込みを始めたり、水着のまま迷宮にチャレンジしたりしている。探知できるけど本当にあちこちに行く。今度は鉱山まで走っていった。鉱石を採掘しているな。ちなみに一切迷わない。恐らく魔力で探知されてるな。速すぎるし行動が謎過ぎる。
テレポーターあるからそれだけじゃコアまでは行けないはずだから良いけど。
そもそも何をしに来たの? 遊びにきたのかな。それならそれで良いんだけど。あれ、河童のサンシャインの畑に入ってキュウリを生でかじりだした。料理はちゃっかりユキメにもらって食べてたのに、お腹空いてるのかな?
あ、サンシャイン涙目だ。さすがに自分よりはるかに強い相手だと分かるよね。御愁傷様。あたしはそこで野菜を盗まれるなら知らないと言ったはず。気に入ったのか三本目にいった! 河童は土下座して許しを乞うてるな。
堪能したのか地下水道を泳いでカル様は帰ってきた。常にこちらを探知していたのは分かっていたのでこちらも探知で見ていたがこの人本当に自由すぎる。
「ここ楽しいね~」
「しばらく泊まって行きます?」
「いくいくー」
こんなに色気のないエロ台詞初めて聞いたわ。まあこれだけ莫大な魔力を持っている人がいたらダンジョンもより成長するだろう。
ブレイズさんはまた飛び込みやってるな。カル様にはロイヤルスイートを勧めよう。高級羽毛布団買ってきて置いてある。キッチンも浴室も客室も寝室も有るしユキメ分体がサービスしてくれる。お酒もコピーして豊富に揃えてるし氷魔石の冷蔵庫も有る。冷え冷えの瓶ビールまで有るぞ。
「うっわー、すごい部屋だねぇ!」
「お気に召して頂けましたか?」
「固いよーアザレアちゃん。ブレイズちゃん相手みたいに話してよー」
「カルさんがそれで良いなら」
「良いよ良いよ、それで行こうー」
軽い。軽さんだな。まああたしも固いの苦手だしね。やり易いのは易い。しかし金髪を振り乱して走るのすごかったな。背中まである髪がほぼ後ろにたなびいていた。数十キロもある迷宮を数分で突破って、多分体を魔力化してたな。それじゃなきゃ空気圧で前に進めないはずだ。これが魔神の技術か。
「ねね、アザレアちゃん見てたでしょ、どうだった?」
「コアルームまで行かれそうで怖かったわよ」
「やだなー、ダンジョン保護法作ったの私だよー?」
そうだった。この人いろんなことに手を出してるんだよね。日本人だったりするのかな?
「醤油や味噌はどこで知ったの?」
「青の星」
えっ、青の星には有るの?
あそこ地球だったりするの? ここ未来の金星とかじゃないよね?
向こうが元火星とか。無いか。物理体系がかなり違うもんね。
「青の星行けるの?」
「行けるよー。召喚されて。今はテレポートできるけどもう知り合いいないし行かない」
やっぱり桁が違うな、この人は。魔神の魔力を分けてもらえてるのはすごい有り難いし。なんかもう魔力十万とか貯まってる。オリハルコンインゴット作っておいてねクレちゃん。
『わかりましたー』
「お? ちょっと強そうなスライムちゃんだねー」
「分かるの?」
「魔力操作を極めると微弱な魔力振動を追跡したりできるよー」
簡単にそんな超絶技術語られてもね。まあ青の星にテレポートできるってことはこの人青の星まで魔力を飛ばせるってことだもんね。化け物だ。
話してるうちに良い時間になったのでユキメコピーに晩御飯にしてもらう。高級魔物肉のステーキとかエリオール産海産物のお寿司とかグラタンだ。
対面に座って冷たい白ワインをお酌させてもらう。
「おいしー。私和食好きー」
「あたしも」
二人で楽しく食事をした。酔ったのかやたら甘えてこられて困った。怪力でベッドに引きずり込まれたし。スライムボディが変形できない。これ、なんかやられてるな。
結局翌朝まで抱き枕にされた。カルさんは胸が大きいしあたしはちびっ子サイズだから胸に挟まれて寝た。スライムじゃなかったら窒息してたよ。柔らかかったけど。
翌日もカルさんは自由だった。朝御飯にお味噌汁と焼き魚を頼んだり食後にまた河童畑を冷やかしに行ったり、やはり水着のまま走り回って冒険者たちを驚かせたり冒険者にサービスポーズして鼻血を抜けさせたり、そのまま温泉を楽しんだりまたスライダーで何回も遊んだり飛び込みをしたり。充実してるようで良かったけど。自由すぎる。
まあ見てないであたしも遊ぼう。かなり人が多くなってきたスパリゾート施設で目一杯遊ぶ。
遊んでると誰か魔力の強い人が来た。カルさんの気配がその瞬間に消えた。あれ? 完全に探知できないぞ?
あ、魔力の強い人こっちに来たな。あたしでも勝てるかどうかくらい強い。まあダンジョンで負けはしないけどね。魔神は無理だけど。あれは完全に物が違う。
「失礼します。アザレア様ですね?」
「どちら様?」
一応警戒はしておこう。まあだいたいどういう人か分かった。これだけ物腰が柔らかいと言うことはカルさんの関係者さんだろう。まだカルさんに帰られるのは困るなー。
「魔神カル・ダモン様の秘書を務めております、リゼと申します。カル様はどちらですか?」
「カルさんはさっき気配が消えたよ?」
「ちっ、逃げられたか」
たぶんこの人もデーモン系だな。青い目で銀髪をお団子にしてまとめてる。できる秘書な雰囲気だ。でもスパでスーツはやめようよ。
「遊んでいれば現れるかも」
「遊び、ですか」
「カルさんて楽しいこと好きでしょ? 楽しそうにしてたら出てきますよ」
「確かに」
性格分かりやすいよねカルさん。そんなわけでリゼさんと遊ぶことにした。あ、もう気配が見え隠れし始めた。いったいどんな高等テクニックでかくれんぼしてるのやら。
「スライダー……ですか。これは楽しそうですね。人もたくさん並んでますし」
「速いのは大丈夫?」
「ええ、たぶん」
おっと、自信なさそう。この人案外可愛いぞ。あ、ブレイズさん滑ってるし。あの人本当に楽しんでるな。まああたしは魔力うはうはだから良いんだけど。
「きゃあ!」
「おー、行ったねー」
リゼさんはすでに水着に着替えてシャワーを浴びている。やはり謎の着替え魔法のようなものが有るらしい。便利だけどあたしは変形するだけだからなー。ケイシーは毛玉だしイリスやユキメは欲しいと思うかな~?
「も、もう一回良いですか?」
「良いよ良いよ、何回でも」
二人でくっついて滑ってみた。キャッキャウフフしてたら絶対カルさん混ざりたがる。ほら気配が揺らいだ。
「アザレアさん、エッチですね!」
「えー、そんなことないよー」
「えいっ!」
「わきゃっ!」
浅いプールでお湯を二人で掛け合う。これこそキャッキャウフフよね!
あ、イリスが来た。
「アザレアずるい。私も遊ぶ」
「良いよ良いよ~」
ケイシーはずっとスライダーしてる。なんか高難易度のスライダーなるものを開発したらしくスライダーばっかり三本になってる。ユキメも分体に任せてこちらに来た。みんなでキャッキャウフフ。リゼさんも実に楽しそうでカルさんの気配はもはやはっきり捉えられる。あ、こっちに来たな。これ、なんかに似てると思ったら天岩戸だ。カルさんは天照大神だったのだ。
「わたしもまぜてー!」
「はい、捕まえました」
「あうっ!」
「でももう少し遊びますか。そんなに重要な話では有りませんので」
「やったー!」
その後、五人でめっちゃキャッキャウフフした。楽しかったよ。
リゼさんはカラメ・リゼにしようかと思ったんですけどカラメって語感が嫌なのでただのリゼさんになりました。
あと、河童は便利な子です。
次回、悪いスライムが悪巧み!




