表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/72

スライム少女、緑のモンスターに出会いいきなり引きこもり宣言。

「とりま、お前の名前決めよーか」


「おう、名前も消されてるのか」


「前世の縁は断ちたいっていうのが転生では主流なんだよ、実は。前世の知識チートなんてよっぽど意識してないと「覚えてるわけないやーん」とか「異世界に有るか分からんやーん」とか「それ現代でも行けるやーん」とか「未来では通じないやーん」とか「前世不幸すぎてまともに人と付き合えないやーん」とか「前世と言葉違うから学習の妨げになるやーん」とかになるし」


「確かにねえ」


 なぜ語尾がやーん、なのかは分からないが。知識というのは時には邪魔になるのは事実だ。


「神は脚本家じゃねえからな。俺に無理は言うんじゃねーぞ」


「全能が思った以上に使えないのが分かったし頼らないよ」


 地球でそんなこと言ったら消されそうだけどね。でも神様になんとかしてもらおうと言うのはどこの世界でも間違ってると思う。


「そもそもだな、人間には自分の問題を自分自身で解決する義務があるんだ。助けられたら感謝しなきゃ駄目だが基本は自分を助けるのは自分だけなんだよ。そもそも何十億人神に頼ってんだよ。追い付かねえわ」


「なんか実感こもってるねえ」


 世界中の人が世界一金持ちになりたいとか世界一強くなりたいとか世界一可愛くなりたいとか、そう願って叶えなければならないなら世界が人の数必要になるし、死んだ大切な人を蘇らせて下さいとか願うならいちいち蘇らせるより人を不死にするだろう。ゲームのようにリスポーンするに違いない。つまりは神様に願うのは無礼だし願っても叶えられることはない。

 だからあたしは依怙贔屓(えこひいき)されて願ってもない状況にあるわけだ。本当に願ってもないけど。


「だいたい説明したか? なんか足りなかったらアカシックノートに聞け。長ったらしいから愛称は赤ノートで良いか。使えないしな」


「そもそもそんな旨いだけの話なんか無いもんね。勝手に期待して勝手に失望するほどあたしは間抜けじゃないから安心して」


「……さすがあの女の友達か。よし、お前の名前はアザレアで良いか?」


「アザレア?」


「ピンク色のツツジの仲間の花。花言葉は、青春の喜び、ってな」


「うわっ、キザい」


「全知全能をめくったら載ってたから現代人何人か密かにこの星に入ってんな。気をつけて行けよ。あんたは良い女だと思う」


「ありがと! あたしはスライムだけどね!」


 こうしてあたしは、白い世界を脱して、赤い星と呼ばれるモンスターしか住んでいない世界に、ピンク色のプルプルスライムとして転生することになった。





 ここは……。ん? なんかデジャ・ビュ?


 手足が、無い。夢じゃなかったか。視界が変なんだよね。自分の体もある程度分かるし。あ、空が赤い。夕暮れ?


 後ろは高い崖。視界の隅に赤いノートが見えてるし。……赤ノート、アーシースライムのあたしが生き残るためにまず摂取すべきものを安全に摂取するには?


『西に50メートル、小川がありますので水分をできるだけ摂取してください。スライムは水分を失うと防御力は向上しますが運動能力、再生能力、生命力は低下します』


 おう、……情報の区切りって誰が決めてるんだろ。細かいようで大雑把。あのイケメン少年神と言ってることが被ってるしあの子かも。


 まあ良いや。水を飲みに行けってことよね。もっちゃりもっちゃりポヨンポヨンと。なかなか進めない。これはさては私、弱いな?

 あ、ステータス見えるんだっけ。




 名前 アザレア


 性別 女


 種族 アーシースライム


 魔力 5


 スキル


・魔力操作


・土魔法


・回復魔法


・浄化魔法


・触手

 銛


・種族スキル

 溶解吸収 スライムボディ 軽出血毒 酸


・特殊スキル

 言語翻訳 アカシックノート ダンジョンメイカー


 称号

 ボッチ 女神の寵愛を受けし者



 なんか色々使える!

 魔力しか表記ないんだね。なんで?


『この世界は全ての物質が魔力で構成されています。魔力により体力や筋力は支えられ、魔力が高いものは生命力が強く反応が高く、知力や視力や感知能力にも影響するため、基本的には魔力が高いものが強くなります。技術や記憶力、運さえも魔力で決まります。応用能力も当然必要ですが修練における習得能力も魔力に依存します』


 おう、魔力万能説。


『魔力は損失しますので万能ではありません』


 お、答えてくれるな。魔力を強くするにはどうすれば?


『様々な方法が有りますが、そもそも魔力における最も大切な力は魔力吸収力です。魔力吸収力が高いと最大魔力量が高くなります。そもそもの魔力吸収力とはその人の魔力をコントロールする能力なのです。ちなみに魔力が百の人と魔力が千の人で体重は変わりません。魔力を質量化するようなコントロールは可能です。ですが魔力圧は確実に後者が高いです。魔力圧が高い方が当然防御能力や身体強化能力、傷や毒、病などの回復力が上回ります。このため魔力の高さは戦士のスキルにさえ影響を与えます。しかし魔法特化と筋力特化では魔力の使い方が変わりますので戦士も魔道士も両方できる人は少なくなります。そしてその魔力の高さを決めるのが貴女の魔力吸収力になります。それを鍛えるためには常に魔力を吸収できる環境下、ダンジョンなどに(こも)るのが有効です。他に……』


 検索の仕方を早速間違えた。長い。長いよ。長すぎる。色々気になる表記が多すぎる。早めに水を飲んで引きこもって色々調べないと。


 あー、面白いわ。色々スキルや称号有るし、早く調べないと。


 早く行こう。もっちゃりもっちゃりポヨンポヨンとね。


 水際。あっ!

 前世知識チートが発動する。水辺は動物が多いから気を付けなくてはいけないんだよ。鹿や猪や熊は人を殺せる動物だし狐や野良犬は人を殺せる菌や寄生虫を持ってるんだ!


 この近辺の危険生物、百メートル以内で。赤ノートに聞きながら進めば索敵にも使えるかも。


 だけど、ちょっと遅かった。あたしは出会ってしまった。


 伝説や物語に頻繁に登場する存在が、奴が現れた。


 緑色の肌で、鷲のような鼻をしている。目はギョロリと見開かれている。

 身長は百二十センチ程度の子供のような低身長で腰が曲がっていて、だけれど、侮ると意外な怪力で村を襲い、時には人間を拐う。

 人間と会話できたり、知性もある程度高い魔物。


 禍禍しい水が腐ったような腐臭がする。スライムなのに臭いとか味が分かるな。


 様々な物語で常に弱き人間の敵として描かれてきた存在!


 小説やゲームなどでも最も有名なファンタジーモンスター!


 ゴブ……頭にお皿、背中に甲羅。尻子玉を抜いていく。


 って河童かよ! そこはゴブリンだろうよ!! 河童だよ! ここ西洋ファンタジーちゃうんかい赤ノート! 河童ーッ! 河童出たー!


「うるせえ洋ファンタジーかぶれ! ゴブリンより河童の方がつええわ! つか表記が似すぎてんだよ!! そこが川岸ならむしろ河童だろうが!!」


「知るか!! ゴブリンに謝れ!! ちなみに赤ノートにはゴブリンもいると書いてるぞ!!」


「貴様! キュウリを寄越せとか相撲が得意とかお皿が弱点とか尻子玉を抜くとか薬が作れるとか、キャラクター性で明らかにゴブリンを上回る俺を馬鹿にしたな!!」


 やべっ、怒らせた。ただのスライムじゃ河童には勝てんわ。ゴブリンも怪しいのに確かにゴブより強いもんよ河童。でも川岸でしか出ないじゃん河童。

 つかファンタジーに異様に詳しくない? この河童。スライム対河童。うん、実力なら負けるな。こうなったら情報戦だ! 脳筋だけど情報戦!


「待て、河童。あんたは日本人かな?」


「おう……そうだ。ついに異世界転生は妖怪に進出したのかよ……」


「いや、わりとあるわよ、妖怪転生設定。九尾の狐とか人気」


「詳しいな! でもお前はスライムかよ! そこは鎌鼬とかでも良いんじゃね?」


「え、なんか地味だから嫌」


 赤ノートに『妖怪もわりと存在する』とか書かれているのが見えた。やめとこう。


「あたしは水が欲しいだけよ。邪魔をしないで!」


 武器はないか。いや、アーシースライムわりと強くない? 毒とか持ってるし。銛? 触手で普通の銛から、芋貝が持つような毒を通す銛などがスライムの肉体で作れる。これ使えそう。


「まあ水くらいはいいわ。飲んでけや」


「河童がわりと紳士? 河童紳士。お寿司食べたくなった。エビ味の煎餅とか」


「知らんわ」


 なんか河童はとろくさくポヨンポヨンと跳ねていくスライムのあたしを川まで運んでくれた。河童紳士。まあ河童だけど。尻子玉はスライムには無いよ。体重も軽いから相撲が強い河童なら楽勝か。いつかこの河童に相撲で勝つ。きっと喜ぶと思うし。


 川に着いたあたしは水を大量に飲むことにした。どうもスライムボディは水分が多い方が、栄養が多い方が動きやすいらしい。……河童いるけどキュウリはあるのかな?


 キュウリはお酢に漬けないと毒が有ると聞いた。しらたきとか焼き揚げ豆腐と合わせて酢醤油に漬けて食べたいね。カニかまも良いな。旨味成分と甘味が足せる醤油と砂糖とみりんで甘く煮た椎茸を足しても良いかも。


 あたし椎茸嫌いなのよね~。


 とりま、水を飲むか。ゴキュゴキュ。いや、体高20センチくらいのサッカーボールくらいの体なのにめっちゃ飲める。横幅とか広がらないし! ん? なんかすごい量が飲める。体積変わらないし。


 飲めば飲むほど強くなる? 体重とか筋力は上がってるかも?


 河童が腕力強いから取り落とされたりはしないね。このまま行くとヤバイかも知れないけどね。


 水がたっぷり飲めたらあとはご飯と住み処かな?


 他の河童とかゴブリンが怖いから早く逃げよう。河童に下ろしてもらう。


 小川から逃げたら河童が追ってきた。何がしたいんだよ、河童。アクセサリーでも落ちてた?


「俺の名はサンシャイン! 太陽光と書いてサンシャインだ!」


「河童がキラキラネーム自讚してきたー!!」


 あたしの名前も、アザレアだよ、と教えたら河童は川に帰って行った。なんだったんだ? あたしの名前はキラキラネームちゃうから!

 あたしは穴を掘る。あんな怖いモンスターがいるところで暮らせるか!

 あたしは引きこもるぞージョ○ョー!







 これ、すごく書きたかったんですよね。


 河童出せ、河童!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ