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アザレア、傭兵団と戦う。

 うーん、どうやらオークやゴブリン、ワーウルフなんかの混成傭兵団、ゲヒモフ傭兵団が山賊と化してエリオールを襲おうとしているらしい。この規模の町を狙うってことは相当に強くて名もある傭兵団なのだろう。不味い時に来ちゃったかなあ?

 いや、逆に考えれば武器とか揃っちゃってる傭兵を狩り放題、上手くすれば素材やお宝がっぽりなんじゃない?


「そんな考えができるのはアザレアだけ」


「でもアザレア様なら地下から宝を奪うとか奇襲をかけるとかできそうでは?」


「たぶん恐ろしい惨状になりますよ、アザレアさんだし」


 良い度胸だケイシー、歯を食いしばれ。そこのギルドマスターもウンウン頷いてるんじゃねえ。


「うむ、アザレアは戦力で考えている。本当に良いタイミングだ」


「一回しか会ってないのに期待しすぎじゃないですかねぇ!」


 まあ前回のギルドランク決定試験では酷い戦いを見せたとは我ながら思ってる。搦め手の方が得意なのも理解してる。でも脳筋。

 でもお宝がっぽりも捨てがたい。良いタイミングなのは間違いないだろう。適当にお宝だけ頂いて火とか放っても良いし。最悪落とし穴で殺せるだけ殺して逃げても良いし。


「ほら、もう凶悪なこと言い出しましたよぉ」


「残酷さでは負けませんね」


「普通じゃない」


「普通じゃないな」


 酷く有りませんかねえ!! まあそういうことなら協力しますよ。お宝はぶんどった分は本人の取り分で良いらしい。力が正義のモンスターだからね。

 作戦会議室にとブレイズさんにドナドナされる。すでに地図が広げられ数人が検討しているようだ。その中の一人、銀髪で青い目、白い肌で眼鏡をした人間に見える人にブレイズさんが声をかけた。


「シュレイ、客だ」


「ん、それが例のスライムですか」


 例のって、いったい何を聞いたのかな? おっと、魔力が漏れちゃった。ブレイズさんがビクってなった。ざまあ。

 ケイシーがシュレイ様はレッサーデーモンの男爵だと教えてくれた。人間にしか見えないんですけど。この人も村を滅ぼせる人なのか。


「作戦は大きく変更する。恐らくは敵の主要拠点と思われる三つの拠点のひとつにアザレアを突貫させる。どこが有効か皆の意見を」


「そのスライムが只者じゃないのは今ので分かりましたが、大丈夫ですか?」


「全く問題ないと考えている。俺と同等の戦力と考えろ」


 ちょっ、盛りすぎ! 奇襲搦め手ありありならけっこう行けるけど!


「冒険者をE拠点、騎士団をC拠点に派遣する予定です。B拠点からC拠点に救援に向かわせるのはどうですか?」


「A拠点からバックアタックを受けるが?」


 シュレイさんの提案にブレイズさんが聞き返す。なんとなくわざとらしいな。あたしに聞かせてるんだな、これは。


「さすがにA拠点に一パーティを突っ込ませる訳には行きませんし、敵も三方から攻められれば本拠地を空にはできないでしょう。それにC拠点はかなり激戦になります。奇襲が得意そうな彼女たちは持って来いだ」


「問題はB拠点でどこまでやらせるかだな」


 ふむ、構図が見えてきたね。A拠点を中心にして、南にB拠点、そこから東にC拠点、そこから更に北にD拠点、その三拠点が怖いと。向こうにボス含め四人くらい強いのがいるんだろう。そしてD拠点とC拠点でDは奥まっているから手前のE拠点から冒険者を攻めさせる。恐らくはこれは一時的には陽動と見せて、本隊はEからDに向かう冒険者チームなんだろう。ギルドマスターのブレイズさんがそれを率いるんだ。ブレイズさんて明らかにこの中では最強だもんね。

 そしてシュレイさんにとって未知数の私に頼まれているのはB拠点の撹乱。逃げられるならC拠点ヘ、そう考えているわけだ。


 面白い。シュレイさんにあたし舐められてるね? 挑発も入ってるのかな?

 B拠点ぶっ潰してCも救援に行ってやろうじゃないの!

 あ、ブレイズさん、ニヤリと笑ったな? やっぱり策かコノヤロー!

 ブレイズさんはここであたしを目立たせる気なんだ。


「では、適当に頑張ってもらうか」


「そうさせてもらいますわあー、ホーッホッホ!」


「私はスライムの高笑いを初めて聞きました」


「怖い」


「怖い」


「面白い奴だ」


 なんなの、あたし弱いスライムだよ! ちくしょう誰も信じてない目をしている!!


「分かっただろ、シュレイ」


「得心が行きました」


「なに二人で勝手に分かってるの?!」


 もー、腹立つ! 絶対に傭兵団ジェノサイドしてやる!! そんなヒーラー聞いたこと無いけど!!


 作戦の決行は三日後と言うことなのであたしたちは目的地の正確な位置を聞いてからダンジョンで最終調整することにした。サンシャインはお留守番してもらわないと駄目だし、三人やスライムたちを紹介しておきたい。


 帰ろうとするとブレイズさんにあたしだけ呼び止められた。乙女と二人きりになりたかったの? スライムフェチなの?


「ここだけの話だが、お前のダンジョンはいつ解放できる?」


「はい?」


 目上の人にはい? って返すのは失礼だっけ。やっちゃった。やるよね。


「お前やお前のパーティーの急激な成長や進化を見ればそれしか考えられないだろうが」


「完璧にバレてーら」


 やばっ、もう少し秘密にしときたかったけどハッチャケすぎたか。もうここは認めて協力を仰ぐのが一番か。


「当然ですけど解放までは秘密に」


「新ダンジョンの扱いは法で決まってる。保護し、成長させるようにとな。だから怯える必要はない。なんなら魔神様の一柱に守ってももらえるぞ」


「マジですか」


 つまりはあたしが怯えすぎていたのだ。魔物に攻められるから知られない方が良いと。……もっと周知してくれてたら良いのに。あ、モンスターに言うのは無駄か。実力至上主義って隠密能力とかも知性も含まれるんだね。

 つまりブレイズさんはその魔神様の決定で動いている。魔王にすらなれてないのに魔神ですか。逆らえそうにないな。


「カル・ダモン様は慈愛深き魔神、心配する必要はない。まあ最悪自己責任なんだがな。はっはっは」


「全然安心できませんわ!」


 でもそれが赤の星クオリティなんだよなぁ。……魔神様か。会ってみたい気もする。なんか良い香りしそうな名前だし。


「とりあえず最低なら二週間、最大なら……一年かな?」


「ずいぶん短いな。ダンジョンはできて長いのか?」


「四ヶ月は経ちませんね」


「早いな。ダンジョンマスターたちの呆れる強さも頷ける。俺も引退してダンジョン作るか?」


「貴族って魔窟に住んでますけどね~」


「それ嫌いだから。望んで無いから。俺が貴族ってなんで思った?」


「推定この町の領主のシュレイさんが頭が上がらない感じだったからですよ~」


「一本取り返されたか」


 まあ隠す気無さそうだけどね。貴族って食えないよね。つかやっぱり使う気満々だなコノヤロー!

 良いんだけどさ、資源回収だし。


 うーん、帰りつつ三人に相談するか。


「ああ、やはりバレますよね。私も迂闊(うかつ)だったかも知れません」


「私も強くなりすぎました。遊んでただけなのに」


「それがダンジョン」


「どの道バレてたか。仕方ないから三人にも開発協力とダンジョンボスやってもらうからね」


「それはなんなりと」


「タダで遊ばせてもらってますもんね」


「大丈夫」


「じゃあ帰ったら早速三日後の作戦を練るよ! 地形図予測とかもらってきたから」


 準備万端整えてジェノサイドしてお宝ガポガポ、その後でC拠点救援して騎士団に恩も売りまくり!

 全く完璧な計画だぜー!!


 まああたしだってさすがにそれは考えが甘いと思ってるけどさ。考え甘いよね?






 次回、だいたいアザレアが酷い。

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