四人娘、修行を開始する。
ダンジョンまで近くて良かったな。その日の早いうちにダンジョンに着いた。解放したらギルドにも知らせないとね。山賊とかに侵略されたりしないと良いけれど。
さて、三人を案内したらさっそく三人の寝室を作ろう。ベッドとかは買えてないけど。そのうち羽毛布団とか作ろうかなあ。あたしは魔力切れで地面で寝てるからなぁ。でもモフモフ感は感じれたのでふかふかも良いのではないか。楽しみになってくるな。
「アザレア、温泉あるの?!」
「イリス温泉好きなの? 岩風呂とか個人用のも作ってるよ。温水プールもあるし」
「プールも?! 水着買ってない!」
イリスに温泉が見つかったようなんだけど、なんかすごいイリスらしくないハッスルしている。あ、エリオールは海に隣接してるから泳ぐ風習が有ったのか? 教えておけば良かったな。修行しに来てるのに遊びを勧めるのも変だしね。まあいっか、温泉好きそうだし。
「どうせ四人とスライムしかいないんだから今日は裸でも良いんじゃない? 解放したらさすがにプールでは水着着てもらうけど」
「うーん……よし、泳ぐ!」
「お湯かぁ……お風呂に入らないと臭うからなぁ……」
「わ、私は個人風呂でお願いしますわ」
「え、どうせならみんなで遊んで感想聞かせてよ。タオルならあるよ」
「た、タオルですか……」
そのあとイリスとあたしでみんなで遊ぼう攻撃してユキメも遊ぶことになった。……ユキメって着痩せするんだね。
カーシーのケイシーは裸でもモフモフだ。色気はない。
イリスは小さい子だから犯罪臭が半端ない。せめてタオルは装着させた。
プールではまずは体を洗ってからウォータースライダーに乗せた。けっこう絵面がヤバい。
「ひゃああああ……」
「いやああああ……」
「あ、これ楽しいです!」
イリスとユキメは絶叫したが意外なことにケイシーはハマったらしい。何度も階段を登り繰り返し滑り降りていた。
このウォータースライダーは水量や水温、螺旋構造、質感(表面をツルツルにするのが大変だった)等で非常に苦労した逸品なので気に入ってくれて嬉しい。プールの水温を下げないように工夫するのも大変だった。いっちゃんと頭を悩ませて源泉からお湯を持ってくるのにかなり工夫した。ダンジョンなのに配水管とか作りまくったし。主にあたしが。マ○オと呼んで良いよ。上水と下水をどうするか相当に悩んだ結果下水は別のスライムたちに代わり番こで飲んでもらった。結果クリーナースライムとかスプリングスライムとかいう謎スライムが誕生して温度調整や掃除が簡単になった。あと地底湖ができたのでダンジョンの攻略難易度は上がった。
「広い」
「深いプールと浅いプールは別れてるんですね」
「ジェットバスとかできたら良いんだけどね……スパちゃんって新種のスライムのリーダーと研究してる」
「未知の世界」
「わーーーい!」
「ケイシーったらいつまでやってるのかしら」
温泉施設が充実しているダンジョンなんてたぶんうちくらいだろう。良い仕事した。あたしは浮かぶだけだけどね。良いんだ。三人が嬉しそうで満足した。
「さて、まだ少し早いけど晩御飯作ろうか」
「何を作る?」
「油を大量に買ってあるので……パン粉焼きとか作ろうかな。カリカリで」
「お腹すいた」
「楽しみですねえ」
ジャイアントボアのお肉を分けてもらってある。これに卵とパン粉を付けてカリカリに焼くのだ。この世界の料理はわりと進んでいるのでソースとかも気合いを入れて作ろう。果物やお酢を合わせて、醤油も有るし。うん、美味しそうだな。早く作ろう。
「わあーーー!」
「ケイシーまだやってる……まあいっか、ユキメ、ご飯手伝って」
「はい、斬るのは任せて下さい」
へっ? あ、そういえばユキメって剣士だった。
結論から言えばユキメは料理は上手かった。しかし、食材を切ってる時の顔は怖かったよ。うふふ、とか笑いながらボア肉やキャベツっぽい葉野菜が切り分けられていった。いや、斬り分けられて、か。日本刀で食材を斬ってはいけません。
ちなみにダンジョンと言ってもあたしの家なのでかまどとか薪とかしっかり揃えてある。水回りはバッチリだしゴミもクリーナースライムたちが食べてくれる。
あれ、この三人て修行に来たんだよね? なんかこのダンジョンの目的としては間違ってないんだけど……ね。こういう施設として作ってるし。
ご飯終わったらダンジョンを他のスライムたちと掘り進めてコアルーム用意してダンジョンコアを作ろう……。みんなそのうち修行の目的を思い出すよね、きっと。
ボア肉は熟成が済んでないので筋を切ってから玉ねぎっぽい野菜のみじん切りとまぶして一時間くらい置いておく。卵液に少しハーブを利かせてソースも胡椒とか使って……次はクリームソースも用意しよ。パン粉を付けたらボアの脂で焼いても良い。今回は癖が少なくなるようにサラダ油を使って焼く。
カリカリジャイアントボアのパン粉焼きの完成です。スープはネギっぽい風味の根菜(らっきょう?)が有ったのでそれをスライスしてボア肉とスープに入れてみた。出汁は謎鶏のガラだ。レッサーコカトリスというらしい。パンは簡単に切って生ハムとかポテサラを乗せるようにしてみた。サラダとかはユキメがハッスルして斬りまくったのであたしはドレッシングだけ作ったよ。玉ねぎ擬きを油で炒めてお酢と醤油で調整した。
「いただきます!」
「美味しそう」
「とても上手く作れました」
「召し上がれ」
ケイシーは遊びすぎて、ご飯も好きなので凄い勢いだ。イリスも気に入ったようだ。ユキメは……自重しようね。あたしも食べるか。うん、カリッカリだね。みんなも美味しそうに食べてくれている。
「ご飯終わったらあたしは深いところを掘ってくるけど、みんなはどうする?」
「腹ごなしに魔力吸収のトレーニングをしようかと」
「それならなるべく深い層が良いよ。いっちゃんに案内してもらうね」
「私はプールです!」
「うん、ケイシーはプールじゃないけどね。気に入ってくれて嬉しいよ」
「私は攻撃魔法練習する。水が得意」
「イリスは温泉の管理してるスパちゃんの魔法を見てみると良いかも。色々教えてあるから」
狭い範囲に高水圧をかけるトレーニングとかさせてウォーターカッターを編み出させてある。それに水との親和性の高いスライムは水の精霊にも好かれていてそばにいるだけでも水魔法は強化される。
これでみんな目的は決まったな。……ケイシー一番真面目なのに、一人だけ遊ぶのね。まあ温泉水には風の精霊を強化する能力も有るし、……カーシーは風の魔法が得意らしいし。良いんだけどね。
はあ、穴掘ってこよ。ご馳走さま。とりあえずスライムたちには宿泊施設の改良とダンジョンの予定通りの拡張を命じて、あたしは最深層へ向かった。
◇
それで不眠不休で掘り続け、八階までとりあえず階層だけは作った。これから横に拡張して迷宮化させていくわけだけれども、コアルームを先に作ることにした。
ダンジョンの規模を大きくすることは魔力吸収力の向上に、ひいては物資調達を簡単にする。無から有が作れるんだから当然だ。
でもその前にコアを作って、ダンジョンそのものの協力を仰ぐのが効率的だと赤ノート先生の判断だ。先生も最近は頼りになるなあ。あたしが色々覚えてきたのもあるけど。
前は難しいことを言われる度に固まってたからね。
そしてコアルームで魔法を使いまくる。このコアルームは独立した部屋にしてテレポーターを設置する予定だ。そう、コアができたらそういった施設も設置できるようになるのだ。
ダンジョン開発が一気に楽しく簡単になるよ!
ダンジョンは土地開発チーム担当のクレイスライムのクレちゃんに任せてある。クレちゃんはあたしと深層にいつもいるのでかなり強いスライムになってる。色はあたしと違って茶色いけど。いっちゃんもアクアスライムに進化した。スパちゃんは役に立つしスライムの楽園になりつつある。
コアルームでこもって修行しているうちに、あたしも、もう一段階進化を迎えていた。
次回、謝罪。