まわりの色に馴染まない? strange girl
うさぎ先生の悩殺コスチュームのおかげで、生徒たちは大人しくなった。
ようやく、うさぎ先生が僕を紹介してくれる。
「今日からこのクラスの相談員をしてくれる、ロボットのハルディ・ターメリック君です!」
「みんな、僕がハルディ。雪だるまじゃないよ。僕はみんなを助けないとスクラップになってしまうんだ! だから、どんどん相談しに来てほしい」
「わーっ!!」
「きゃーっ!!」
また生徒たちが騒ぎ出してしまった……。ううっ、なんだか自信なくなってきた。
「みんな、ハルディ君も一生懸命なの。ハルディ君に相談してあげてね!」
う、うさぎ先生……。
「はーい、先生。わかりました」
って、おいおい生徒たちよ。なんで僕の時は騒いで、先生の時には幼稚園児みたいな純真な返事をするんだ? しかも、全員でハモるなっ!
それはともかく、うさぎ先生のおかげで、スクラップから免れられる可能性も出てきた。
ありがとう、先生。器がでかい。でかいのは胸だけではなかった。
自己紹介後ホームルームが行われ、それも終わり、先生は教室から出ていった。
その途端ーー。
「うわぁあああっ!!」
ここはライブ会場か!
「ぎゃああああっ!!」
ここは動物園か! 始業式が始まるまで休憩時間だからって騒ぎすぎだよぉっ。うさぎ先生助けて……。
もし、このままなにもできなければスクラップかもしれないと考えつつ、騒いでいる生徒たちをにらみつける。
しかし、視線は自然と一人さびしく本を読んでいる最後列、右端の子の方を向いていた。
僕は不思議に思い、彼女へ近づいて話しかけた。
「初めまして、僕ハルディ。ねえ、なんで君はそんなに静かなの?」
「……」
うっ、無視ってやっぱり凹む。でも、スクラップになりたくないからくじけない。
「ねえねえ、本を持って固まっていないでさ。みんなみたいに元気よくね?」
「……」
「返事がない、ただのしかばねのようだ」
「あっ、あのう。私、生きてます……」
確かに、大きな目はまばたきを繰り返しているし、黒のセミロングをかきあげているから生きている。
それにしても、なぜだかブレザーの上からでもわかるCカップくらいの胸に目がいってしまう僕。
「あっ、あのっ、聞いてます? 私、生きてますから返事を……」
「僕がしかばねだと言いたいの?」
にらみつけてやると、彼女はすぐに僕から視線をそらしたので、
「あっ、ごめんね、怖い顔をして。君の名前は?」
「きっ、木中こりすですっ」
「なんだか自信なさそうに自己紹介するね。みんなを見てごらん。あんなに楽しそうにはしゃいで。ほら、君も仲間に入れてもらいなよ」
「む、無理です。私なんて……」
「いいから、こっちにきなよ」
僕はこりすの手をひっぱって、机に腰かけて騒いでいる女子3人組の前まで連れていった。
「なあ、君たち。彼女が一人さびしそうなんだ。仲間にいれてあげてくれないかな?」
「ネクラのこりすなんてマジ無理だから。そいつたまにヒッキーになるし」
真ん中にいる金髪ミニスカートの女子が吐き捨てると、こりすは「あ、あ……」とうめいて席に戻ってしまった。
僕は慌ててこりすの下へ向かい、
「な、なんか性格悪そうな人たちだったね。じゃあ、もっと優しそうな人を……」
「い、いえ、私は。本が友達なので……」
こりすの目から流星のような涙が一滴。
「でも、一人でいるのってとってもさびしいことだよ。みんなと仲良くならなくっちゃ!」
と、僕は諭したつもりだったが、逆効果のようだ。
「……無理です」
彼女は声を震わせながら一言こぼすと、俯いてしまった。
あーっ、もやもやする。このままではスクラップだ。
でも、そんなことよりこりすがみんなと仲良くすることを頑なに拒む理由はなんだろう?