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ドクター機島の闇

 灼耶とこりすの悲鳴が聞こえた入り口の方へ、僕はひた走る。一体、何が起こったんだろう? 心配だ。


 入り口にたどり着くと、人だかりができている。僕は有象無象をかき分けて前進すると、自動ドアの前にもやし体型で白衣を着た男がいる。もやし白衣は両手に拳銃を持っていて、ひざまずくこりすと灼耶の首もとに突きつけている。


「お前ら、動くなよ! 店員1人だけ動いてよし。すぐに店長を呼んでこい! 警察を呼びやがったら、2人の命はないと思えっ」


 横暴な犯人に、僕の怒りが頂点に達したその時、犯人の前に歩み出た者がいた。エリートのエリーザだ! って、犯人は動くなって言わなかったか。大丈夫か?


「こら、そこの銀色! 店員以外動くなって言っただろっ」


「あたしは……、店員よ!」


 無理があるだろ、青いエプロンつけていないし!


「嘘つけっ、エプロンしてないだろ!」


「外したのよ。そんなことより2人を離しなさい!」


 エリーザは猛進する! 犯人は目を見開いているので、驚いているのだろう。これで一件落着……。と思えたのはほんの一瞬だった。犯人はなんと、発砲すらすることなくエリーザを打ち負かしてしまった。僕は先ほどの光景を思い出した。もやし白衣は、右手の銃を黒ズボンのポケットにしまった。代わりにポケットから、赤いボタンが1つついた黒いリモコンを取り出した。それを放り投げて足で踏んだ瞬間、エリーザは石のように動かなくなった。


「ハハッ。ドクター機島の傑作も、一瞬でこの様だ」


 なぜか、モアイを知っているもやし白衣。僕は不審に思って尋ねた。


「なにっ、お前モアイ……、いや機島を知っているのか?」


「フン、雪だるま。いや、ハルディ・ターメリック。お前のことも知っているぞ。なぜなら、俺は機島の元助手だからな。そして、お前を停止させるリモコンも、このポケットに!」


 そうか、エリーザから聞いたことがある。かつて、モアイにはたくさん助手がいたと。しかし、なぜ皆解雇したのかは謎だ。それにしても、停止リモコンは怖いな。でも、怯えているのは僕だけじゃないだろう。人質の2人も震えている。恐らく、彼女たちは死の恐怖だけに震えている訳じゃないだろう。こりすは内向的の特徴からして、野次馬に囲まれ気疲れしているだろう。一方、マスクをつけても顔中の紅潮を隠しきれていない灼耶は、人々に注目され苦しんでいるはずだ。犯人は、そんなことなど知るよしもないだろう。


 色々思考だけはできるが、現状の打破は難しそうだ。下手に手を出しては2人が射殺されると思うし、僕も停止させられる可能性が高い。交渉する道を探ろう。僕はカウンセラー気取りで、優しくもやし白衣に話しかけた。


「なあ、ちょっと聞くけどさ。一体何があったんだ? こんなことをしても犯罪になるだけだぞ」


「すべて機島が悪いんだ! あいつのせいで、職を失った。俺は不器用だ、会社勤めなどできない。だから機島が憎い! 奴は己の研究のために部下を皆解雇したっ。おかげで今は大好きなゲームも買えない! だから、この店で騒動を起こしてやろうと思ってなっ」


「なるほど、機島のモアイ像は確かに理解しがたい奴だ。どれか好きなゲームをあげるよう、店長に談判してくる。だから、2人を解放してくれっ」


「そうか。いわゆる失敗作のお前は、機島のことをよく思っていないのだな。機島の思想は危険だ。助手の中には反発するものも多かった。奴は、自らの思想を強行したのだ。おかげで、俺たち助手はお先真っ暗……。それにしても話のわかるロボだな。お前の条件、呑んでやる。但し、お前を完全には信用していない。先に店長を呼んでこい!」


 僕はうなずくともやし白衣に背を向けて、店長がいると思われる奥まで走った。だが見当違い、奥にはいなかった。次に目星をつけたのは、スタッフルームだ。中を覗いてみる……。やはりいない。全く、こんなときにどこへ行ったんだ? 探している間頭を支配しているのは、こりす、エリーザ、灼耶の安否。時間が経てば経つほど不安になってくる。カードゲームコーナーにはいない。テレビゲームコーナーにもいない。一体店長はどこに消えたんだーっ!?

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