5月(さつき)に再来5人組
第四章~桜の後には恋が散る~
いとあわれな桜も散りゆき五月晴れ。今日は遠足という勉強をしなくていい日らしいのに、ビル街を背景に歩道を歩く学生諸君は気だるげだ。
目的地はこの辺りで1番高い山のふもと。
僕は楽しみでしょうがなかった。昨日の帰宅後はエネルギー補給オイルを大量摂取した。それから、無駄なエネルギー消費を避けるため、スリーブモードで夜通し眠っていた。
おかげで今日は元気だ。ビルをバックに3年1組の列の先頭を歩いている。両手に花という状態で。
僕の右には、発展途上であろう胸が際立つ体操服を着て、下にジャージを履いているこりす。左には、麦わら帽子を被り市販の白ジャージを身につけているエリーザがいる。
なんでエリーザには服を買ってあげるのに、僕は白いメタリックボディを常に晒さなければならないんだ。モアイ、このやろう! さらに、エリーザは充電のみで糧を得られるのに対して、僕は充電に加えてオイルまで飲まなければならない……。いや、疲れた後の一杯は最高だ。ありがとうモア……、って危ない危ない。スクラップの危機を植えつけてきた張本人に感謝するところだった。
学校に赴任して、1ヶ月が経つ。しかし、こりす、勇利、引龍以外結果を出せていないので、常にスクラップと隣り合わせだ。モアイも僕に圧力をかけてくる。『最近、結果を出せてないようだな』と。そんなことはない。あれから押田たちチンピラは大人しくしてる。こりすだって感謝してるらしく、僕の手を握ってるし。えっ、手を?
「ハルディさん。そっちは車道であります。早く歩道に戻るであります!」
おっと、考え事に耽ってうっかり飛び出すところだった。それにしても、こりすは相変わらず敬語とタメ口の境界がわからないらしい。
「ハルディさん。もう動かないように腕を掴むます!」
「ちょっと、こりすっ! 僕と腕を組んでる……。はたから見れば、恋人じゃないかっ!」
こりすは一瞬きょとんとしたが、すぐに紅潮して腕を離してしまった。僕の恍惚タイムは終了。
冷静になった僕にエリーザの視線が突き刺さる。もしや、嫉妬か?
立ち止まって考えこんでいる僕に、後ろから催促する声がする。
「ハルディ君、早く歩いて」
「ごめんごめん、うさぎ先生。それにしても、またけったいな格好してるなぁ」
「いいじゃない、動きやすい服なんだからさぁ。この忍び装束」
「いや、上下黒い装束なのは忍者らしいけどさ。半袖だし、ショートパンツの下に網タイツとかあざとすぎる! 教師の服装としてはルール違反だよ」
「いや、ハルディ君もルール違反してるわよ。あたしは二人一組になりなさいって言ったのに、三人一組になって!」
「いいじゃん。第一二人一組とか、奇数なら余って悲しい思いする子が絶対出てくるから」
「それもそうね。特例で許すわ。せっかくの遠足を楽しもう!」
学生より教師が遠足ではしゃいでいる。
「よし、先生から許可がおりた! こりす、エリーザ、はりきって歩こう」
とか言いつつ、さりげなく2人の手を握る策士な僕。こりすの手は柔らかいし、エリーザの手は初めて握るから新鮮だし。じっくり、恍惚タイムを満喫しようじゃないか。
なんだ? 突然背中に鈍い痛みがっ。僕がふりかえると、
「よう、ロボット。二人一組のペアなのに、なんで自分だけ3人なのかな? しかも女に挟まれて」
どうやら、ナックルダスターを拳にはめた押田が俺の背中を攻撃したらしい。奴の背後には、押田と同じく、遠足なのにブレザー姿のミソノとチンピラ3人の姿がある。もしや、また良からぬことを企んでいるのではないかと心配だ。




