世界一嫌いな生みの親
第一章~内向的少女~
今日からいよいよ学校デビュー。学生は多感で性に目覚めるらしいので、
「おはよう、エリーザ! 昨日は学生に話を合わせるため、エッチな本を読んだよ」
エリーザはなぜか顔をひきつらせて、
「い、いや。過激すぎるんだけど……」
「過激? 僕たちロボットからすれば、興味深いじゃない」
「それはあくまでロボットの場合!! 多感な子たちはいきなり過激なものを見たらびっくりするらしいの」
「そ、そうなのか……」
人間ってやっぱり難しい。できるかな? って考えるとああ、またマイナス思考が……。しかも、陰鬱な時に、世界で一番嫌いな人間まで入室してきた。
「おはよう。エリーザ、ハルディ。今日は天気も良いから気分も良い。幸せに酔いしれそうだ」
「ずいぶんと爽やかな笑顔を向けてくるね。僕をスクラップにするつもりのくせに。このモアイ像」
僕がモアイ像と呼んでいるこの面長で富士山級のわし鼻を持ち、マッドサイエンティストみたいに常に白衣を着ている初老の男こそ、僕の生みの親『ドクター機島』だ。
なんでも、科学の進歩に少しだけ貢献したから、『ライトノーベル賞』なるものをもらっていい気になってる。
「モアイ像か。そういや、似てるかもねぇ。しかし、これでも賞をとっているんだよ、私は」
「だからどうした!?」
「まぁ、そうけんか腰になるな。エリーザから聞いたけど、スクラップを免れるために学生たちの悩みを聞いてあげるみたいだねぇ……」
モアイは口の端を歪めて笑う。
「な、なんだよ。悪いか?」
「いや、がんばってくれよ。人の役に立つことならば私も歓迎するよ。さて、研究の続きをしますか!」
モアイは右手をヒラヒラとふって去っていった。
あいつの心情もダヴィンチコードのように難解だ。
モアイはほうっておこう。学校に持っていくものは……。
サビ止めオイル、エネルギー補給オイル、エッチな本……。あっ、最後のはいらないか。
それらをリュックに詰めて背負う。
僕は「行ってきます」とエリーザに告げ、研究所を飛び出した。