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プロローグ

よろしくお願いします。

 産まれて最初の言葉。とりあえず「How do you do」でいいのかな? 変換はうまくできた。システム的には異常なし。


 僕の名前はハルディ・ターメリック。メイドインジャパン。丸い顔に丸いからだ。足がついてるから雪だるまなんていうなよ!


 辺りを見渡すと白い部屋、白い壁。目の前には名画『ビーナスの誕生』のビーナスを彷彿させる顔に、細身の女型ロボット『エリーザ』がいる。


 体が銀色なので、背景の白に溶け込んでいて紛らわしい。敵もいないのに保護色か? さらに、銀色のワンピースを着ている。擬態してるつもりか?


 僕は人工知能として人類のサポートをしたいのだけど、何をしたらいいのやら……。

 なぜなら僕は失敗作のようだ。皮肉屋で融通がきかないから生まれてすぐ出来損ないって烙印を押されていて。自己肯定になるけど、僕は純粋だ!




「本日は晴天なり、本日は晴天なり、本日は晴天なり、本日は晴天なり」


 見ず知らずの人に聞かれたら、いきなり壊れたかと思われるだろうな。僕は今単語の発声練習中だ。


 指導をしてくれているのはエリーザ。彼女は1年前から稼働しているらしい。給料もでないのによく人間のいうことを聞くものだ。


 ついさっき人間は働くと対価をもらえるという知識を授かったけど、覚えたところで何の役にたつのだろう? そんなムダ知識はよく吸収するトリビアンな僕は、常に人間からスクラップという間引きの対象にされてしまう。それをなんとか止めてくれるのがエリーザだ。


 僕は皮肉は言えるけど、人間を喜ばせる術は認知していない。僕を皮肉屋に仕立てるべく奴が設計したのだ。きっとそうだ。ああ、またマイナス思考が……。


 こんなときはエリーザに悩みを打ち明ける。


「ねえ、エリーザ。どうして僕をいつも助けるの? 僕なんてスクラップになってリサイクルされて資源になった方が世の中のためだよね」


「ハルディ、バカなことを言わないで! 心を持ってしまった以上、あなたにも存在価値があるのよ。あなたにしかできないことがきっとあるから」


「僕にしかできないこと?」


「あ、そうだ。あたしね、この間仕事をもらったの。人間の、それも学生たちの心の相談。人間にはね、思春期ってものがあってね。それはそれは複雑なものなのよ」


 なんだか訳のわからない単語の羅列に今にも故障しそうだ。まず、人工知能なのに、ディクショナリー機能がない僕って……。またもやマイナス思考……。


「ほら、悩まないで。うる、うるるっ、こっちまで悲しくなってくるじゃない!」


 エリーザもマイナス思考なので瞳から大量のオイルを撒き散らす。


「エリーザ、そんなにオイル流すと錆びるよ」


 皮肉屋な僕は気の利いた言葉が言えないんだよ。でも、体をくっつけると彼女は泣き止む。エリーザいわく抱擁と言うらしい。


 くっつきつつ、涙の雨が上がって太陽のように破顔したエリーザが言う。


「あなた、あたしの代わりに学校行ってみる? 役に立てばあなたもスクラップから免れられるはずだから」


「ひきうけた!」


 返事の速さ約0.5秒。こういう都合のいいときは処理速度が高い。


 学生たちの心の相談。スクラップを免れられるためにもできるだろうか?

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