話の終わりに少々頭のおかしな結末
雨が降ってきた
────なら良かったのに、今日は月が見えない程の星空でやがる
俺、ミシャル=ナーベラスは会社から帰ろうとしたら既に電車が無くて立ち往生してるのだ。バカか?
へ、何とでも言ってくれ!ん?
光だ。もしかして?
「お客さん、乗りますか?」
助かった、バスか。小さいバスだがこの際どうでもいい。早く乗って帰ろう
¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥
「お客さん、どこまで?」
「ああ、ラブニッシャの二丁目まで頼む」
「かしこまりました〜 チッ」
………舌打ちっつーのはだなもっと小さく打つもんだろうがよ。聞こえる様に打ってどうするんだよ
「あ、舌打ちじゃなくてコレ、ライトの点灯スイッチを押した音なんですよ。ご心配無く〜」
うっわ、怖いな。コイツ、頭の中が読める系か。厄介だな
「私からしたら、あんな所に立ってるあなたのが怖いですよ。随分と変な所にある会社にお勤めなんですね」
「余計なお世話だ。この格好を見りゃ分かるだろ?
左遷だ左遷」
「アロハシャツじゃないですか。私怒りますよ?」
「何でそうなる!とにかく!アロハシャツを強制的に着せられる会社何かに飛ばされた訳だよ。あ、そう言えばさっきライトを点灯したと言ってたが、前のライトは両方点いてる筈だよな。どこのライトを点灯したんだ?」
「外にぶら下げてる提灯………」
「へ?」
「冗談ですよ、冗談!後ろのライトですって」
一瞬、ビビった。提灯何てぶら下げて無いのに。
しかし、本当に今日は夜空が綺麗だな。お別れ日和ってか
「はっはっは…!」
「………笑ってると事故るぞ。運転手
∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀
気づけば車内の時計は午前二時を回っていた。外は真っ暗で人一人居ない。聞こえるのは虫の音ぐらい
「むかしむかしある所にー」
「えっ!ちょっと!昔話何か聞きたくないよ!」
「普通のサラリーマンが居ましたー」
無視か。てか昔話ってのはもっとおじいさんが出てくるとかカメが出てきて「あーそぼ」とかそんな感じじゃないのか?あ、浦島太郎の元は吉原に行くとこから始まるからいっか………って良くないわ!
「サラリーマンはある日、道端で子供がドブに嵌ってるのを発見しました。その時、サラリーマンの脳内にほっとけばいいじゃんと言う………まぁ怠惰ですか
そんな感じの感情といや、助けろよと言う常識が混ざり合いました」
端からめんどくさい話だ。昔話じゃ無いのか?子供向けの話では無いとは思ったが、何かが可笑しい
「混ざり合った末に出た答えは"助ける"では無く、
"助けてもらう"でした。サラリーマンは道を歩いていた男性を説得し、子供は救出して貰いました。
そうして、しばらく経ったある日」
………疑問符だ、頭に疑問符が浮かんだ。サラリーマンは随分とまどろっこしい事をするもんだ。助けるでも見捨てるでも無く、頼るだと?卑怯じゃないかそれは。お前、線路の先に五人の人と1人が居ます。さて列車はどちらに進ませるでしょうか?って問題で近くの人を見つけ、その人に選ばせる。って言ってるみたいなもんだぞ。
「サラリーマンは休日なので、ラジオを聞きながら感情を無にしていました。その時、玄関から音がしました。おそらくノックでは無いな、とサラリーマンは思ったので電話を片手に出てみる事にしました。扉を開けたそこには」
「ドブに嵌ってた子供が居たんだろ」
「正解です。よく分かりましたね〜」
「そりゃおなじみのパターンだからな」
「まるで鶴の恩返しみたいですね」
運転手と同時に俺も笑った。笑い声がバス内に良く響く。ちょっとだけ気分が回復した気がした
「その子供の格好はフリースに三角巾と言うまぁ何とも子供とは思えない格好だったそう。しかし、それよりも驚いたのはその子供は身体が透けていた事。
その瞬間、サラリーマンは悟った。この子供、幽霊であると」
幽霊だったんかい。恩返しとかじゃないんかい
ん?幽霊って三角巾何てしてたっけ?
「子供は部屋に入って来ると、寝てしまった。叱ろうと思ったのだけど、寝言を聞いて止めてしまった。
その寝言とは お母さんお父さん………会いたいよ…
だったそうな」
大分可哀想な話だな。お母さんとお父さんは先に成仏してしまったんだろうか………にしても雨すら降らないな。気分を沈められぬな、全く
「それから子供の幽霊はサラリーマンの家に住み着く………と言うか居座る事になりました。別に悪い事もしないしま、いっか。そんな感じでサラリーマンも
気にしない事にしたそう。しかし」
その時、運転手は哀混じりの溜息を零した
「サラリーマンはよく分からない理由で突然、会社を解雇させられてしまった。そうして、立て続けに不幸が襲う訳でございます。同級生が事故に遭ったり、
母親が急死したり、果てには自宅のアパートが放火される事などもあったそう」
「だけど、サラリーマンは決して幽霊に怒ろうなんて事は思いませんでした。でも、時々幽霊が空を見上げては自分の手を見つめるのだけは気になったそうです」
切ない話になってきたな。夜も深くなってきたし。
しかし、本当に今日は綺麗な夜だ。まるで幸せの予兆の様な………
「ある日、サラリーマンが街を歩いているとどこからか声が聞こえてきました。サラリーマンは"ああ…
遂に俺は死ぬのか"と軽く笑いました。だけど、声は
こう言ったのです」
「 "お前に擦り寄ってきた子供は本来、地獄行きの
子供だ。だが、何故か成仏が出来ない。私も子供も
理由が分からない。ただ、子供は無邪気だからお前に擦り寄ってきたが、あの子供は不幸を呼ぶ だから三日後またここに来い。解放してやる" と」
「それを聞いて、すぐさま男は帰りました。それから子供に色々と沢山聞きました。そして、知った全ての事をココロに押し込めて、子供にこう言ったのです
」
「"俺はもうお前の側には居てやれない。ごめん。
だけど、お前はいい子だから
きっと天国に行けるさ"と」
「それから三日後、男はタンスから何かを取り出しました。子供は"おじさん。それはダメ!"と言いましたが、サラリーマンは子供の透き通った身体を抱きしめ、"こめん………"とだけ言いました」
………クライマックスだな。何かめちゃくちゃな気がするけど。しかし、何で幽霊の身体を抱きしめられたんだろう?不思議だな
「そして、声がした場所に男は辿り着きました。だけど、そこには恐ろしい顔をした謎の怪物が居たのです」
「怪物は言います "解放して欲しいか?"とその問にサラリーマンは笑って"お断りだ"と言いました。その時、怪物の顔が一気にサラリーマンを飲み込もうとしましたが、ポケットに入れていた何かに火を着火しました。途端に怪物は苦しみ始めます。だけど、サラリーマンもすごい熱いです。けど」
「きっと子供が成仏出来るなら………と思えば楽なものでした」
「それから灰一つ残らず、サラリーマンは消えました。怪物も消えました。だけど、子供の幽霊だけは
無邪気にサラリーマンの帰りを待っていた。らしいですよ」
「………成程。で、それは実際の話なのか?」
「さあね。おや?」
その時、バスが止まった。そして、俺は雨が止んだのに気づいた
「もしもし、あなた両親は?」
運転手はドアを開けて、客に話しかけていた。どうやら子供らしい
「さあね。地獄にでも行っちまったらしいよ」
「そうですか。ま、乗ってくださいよ。夜が明けちまいますよ」
その子供はさっき話していた子供に格好がそっくりだった。しかも、身体が薄ら透き通ってる
変わった子供だなと眺めてると、突然その場で転んだ
「大丈夫?」
と、割と優しめに言ったつもりだったのだが………
立ち上がると、泣き出してしまった
仕方ないので、空いていた隣の席に座らせてやる
すると、俺の腕を出来る限り掴んだらしい。微かに腕は震えていた
「運転手、ゆっくり走ってくれるか?」
俺は運転手に言った
「あいっす」
と、軽めに言って運転手はバスを走らせ始めた。
ふと、隣を見ると
子供は夜空を涙目で眺めていて
俺も一緒に眺める事にした
やはりお別れ日和な夜空だ