没4
この作品はscpをリスペクトした部分があります。
甲高いアラームの音で目が覚める。うん?何だろうか。いつもより動きずらい。俺は眠い目を擦りながら自分の腕と体を見た。どうやらスーツを来て寝てしまったらしい。お陰でシワシワだ。今日は2着分もアイロンをかけないといけないな…。まあ、昨日はあのクソみたいなデカブツを捕まえ直したからな。俺はヤツの悪口を呟きながら、服を脱ぎ、下着姿になった。部屋にある自己健康管理機器を用い、検査をした。今日も体重も体温も通常通り。唯一言えば、疲労値が高いのみか。俺は他のスーツを来て寮を出た。俺はすれ違うエージェント仲間に挨拶をし、エージェントセンターに向かった。1、2分歩いて白く大きめのドアの前に付いた。ICカードをタッチパネルに置くと、電子音がしたあとドアが開いた。中には白衣を来た博士、そして俺と同じようにスーツを着こなしたエージェントがいた。
「おはよう、ナーカル君。君はいつでも健康だね。良い心がけだ。」
後ろを見ると、少しポッチャリめで白髪混じりの眼鏡の博士、ガーネット博士がいた。
「おはようございます、ガーネット博士。昨日はどうやらスーツを着たまま寝てしまったみたいで。」
「ハッハッハッ!君も昨日の任務には堪えたか。まあ、よくあの危険生物を捕らえることが出来たと私達も感心している。感謝しよう君たちに。」
少しガーネット博士の顔が暗くなった。
「そして、彼らに冥福を…。」
「はい、今回はかなり被害が甚大で…。私の力不足です。」
ガーネット博士は私の肩に手を置いた。
「そんなことは無い。君は十分頑張ったさ。」
「ありがとうございます。」
「そういえば、君には休暇を与えたはずだったのだが…。」
「少しばかり、顔を出したくなっただけです。」
「そうか。ただし無理は禁物だぞ。良い休暇を。」
私は礼をした。博士はにこやかな表情で自身の机に向かい、書類を手にまた廊下に戻って行った。
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「ようこそ、はじめまして諸君。私はここの博士のキバラク=ナンダルだ。宜しく。」
帽子を取ってそのスキンヘッドを見せ、お辞儀する。
「私のスキンヘッドで眩しくて、目が痛くなってしまった者はすぐに医療チームのお世話になれるかもな。さて、と。まずは採用おめでとう。君たちはこれから、エージェント、研究員、博士となる卵たちだ。そこで、改めてここの説明をしよう。」
キバラクがボタンを押す。映像が流れ、それに合わせて彼が話す。
「我々『サルベージ財団』は創立から114年立つ由緒ある財団だ。表向きは金融企業なのは皆さんご存知の通り。しかし、君たちがここに来た理由は紛れもない、裏側で働くためでしょう。もしも、間違えた方は今でも表向きに連絡して戻ることが出来るぞ。」
彼は少し歩いてポインターで映像を指しながら話し始めた。
「裏向きでは我々は異常物体の捕獲、管理、あわよくば応用的な使用、そして世界の発展に基づく発明を目的としている。しかし、それら全ては必ずしも我々に協力的ではない。」
映像はとある異常物体によって被害が出ている様子の動画が流れている。
「今見てもらっているように、ここにあるものは半分くらいは油断すれば君たちの命はない。もしくは人ではなくなる可能性さえある。ただし、細心の注意をすればもっと死亡する確率は少なくなる。まあ、君たちはそんなこと覚悟の上でここに来たんだろうけどね。さてと、まだまだ話すことはあるよ…」
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私は真っ白な廊下を歩いていた。私はエージェントの証であるエンブレムを手に取ってみていた。昨日のデカブツの捕獲の功績が認められ、Lv4のライセンスを頂いた。会議室の前を通り過ぎた。中からキバラク博士の明るく陽気な声が聞こえる。なるほど、今日は新人が来る日か。私はまた歩き出した。カフェテリアに着き、腰を下ろした。
「注文は何にしますか?」
声の聞こえる方を見るとそこには白いつるつるボディの少女のようなシルエットをしているロボットがいた。本名は長くて言うのがおっくうだが、愛称は「ミーロー」。彼女も異常物体のひとつだが、我々には全くの敵意を持っていない。むしろ癒してくれる。この財団のマスコットになっていて、(一応)人工AIとして、表向きでも活躍している。まあ、出どころがわからないためまだ監視下だが。ここまでは彼女は普通の人知能入りロボットに見えるが、彼女には異常な点が二つある。ひとつが、まるで人のように動きが軽やかなこと。現在の技術よりも高度である。2つ目は、彼女は対面したモノの心が読め、それに合わせて声や仕草を変えて、相手の心をがっちり掴む。因みに今彼女は俺のガールフレンドのラキナの声真似をしてる。
「あの…すいません。どうされました。」
「ああ、すまない。少し考え事を。」
「お疲れのようですね。なるべく無理はなさらずに。」
「ああ、ありがとう。そうだ、と、注文はブルーマウンテンで。」
「かしこまりました。」
私はノートパソコンを手提げから取り出し立ち上げた。少しでも配属の異常物体への知識を高めるために配属外のも見ておこうとした。運ばれたコーヒーを啜りながら色々な調査書を眺めていた。因みに、うちのカフェテリアは作業OKだが、話すのは一時間までと決められており、他からの飲食物の持ち込みは禁止されてる。また、カーディル博士とネイビル博士の立ち入りはいかなる理由でも禁止されてる。まあ、当たり前と言っちゃ当たり前だ。あの二人はやかましすぎる。なんか遠くからバイオリンとやけに上手い歌声が聞こえた気がしたが、気のせいだと思った。俺がここにいて30分ほどたった時、誰かが肩を叩いた。振り向くとそこにはラキナがいた。彼女は俺のガールフレンド。うん、可愛い。自然とおしゃべりすることが大好きで天然である。因みに彼女もかなりの腕前の博士である。
「おはよう、ナーカル。」
「おはよう、ラキナ。調子はどう。」
「私は大丈夫。あなたは?」
「ああ、まずまずだよ。」
彼女に隣に座るよう促した。彼女は向かいの席に座った。
「今日何の日か知ってる。」
「うん?何だろう。何かあったか?」
俺は腕時計を見た。2月14日…そうか!
「バレンタインだ。」
俺が指を指して答えた。
「正解!じゃじゃーん!」
ラキナは小さめのプレゼントボックスを差し出した。
「チョコレートだよ。どんなチョコかは開けてからのお楽しみ。」
彼女はふふふっと笑った。
「部屋に戻ったら開けるよ。ここで開けたらまずいからね。」
「感想待ってるよ。」
二人で微笑みあった。その時、急に警報が鳴り出した。
『緊急速報、緊急速報。異常物体発生を確認。機動部隊は捕獲に出発するため集合せよ。博士やエージェントはその他は待機。呼び出し次第すぐに集合せよ。また、ライセンスレベル4以上の博士はすぐに第3会議室に集合せよ。繰り返す』
「新しい異常物体か。」
「しかもdangerクラスみたいね。」
「じゃあ、またね。私向かわなくちゃ。」
「ああ、応援してるよ。頑張って。」
ラキナは走ってカフェテリアを出た。俺はプレゼントボックスをポケットにしまい、情報を調べた。
……
状況は一言で言えば最悪だ。送られた資料写真には次々とまるでチョコの色に変わっていく人々と建物。いや、色になっているのではない。よく見ると砕けているものもあるため、チョコそのものになっている可能性もある。とにかく、情報を見て、今は待機しよう。
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俺は廊下を突っ走る。自体は最悪の状況を辿った。機動部隊は全滅に近い形になり、通信が遮断。恐らく全員チョコになったか波に飲まれたか。一部の街の人間は暴徒と化し機動部隊を襲う。範囲は街の中心部から半径1キロに到達しようとしていた。俺は第三会議室のドアを思い切り開けた。
「ライセンスレベル4エージェント・ナーカルです。今回の件について、出動の許可を下ろしてもらうために来ました。」
そこにいた博士たちは皆唖然とした。
「…ナーカル。お前は今日休暇と言ったろ。」
私はうなづいた。
「そうですが、こんな状況じゃ。私達エージェントも黙って見ていられません。」
「出しゃばるな、この小僧。」
機会から出た声が鋭く出た。
「ネイビル、暴言は寄せ。彼も勇気あって来たのだ。」
少しの沈黙のあとガーネット博士が切り出した。
「ナーカル、気持ちは有難いがお前の体も気遣え。無理は禁物だと言ったろ。」
「私1人の疲労とあの街、いや、この世界、どちらが大切ですか。」
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俺とクリアランスレベル3のエージェント5人ほどが派遣され、ヘリコプターで現場に向かった。まさに惨状であった。チョコに塗れた人間が逃げ惑う人を襲い、その人々は次々とチョコの波に飲まれていく。
「何か気づいたことはあったか。」
同情しているカーディル博士が聞く。
「あのチョコの波に飲まれてない人もいるようですが、そのような人も皆、中から出てくる人形の存在に何かを奪われた後に飲まれています。」
「その何かとは?」
「わかりません。プレゼントボックスや何かしらラッピングされているように見えますが。」
「あーー、分かった。」
エージェントが博士の方を見た。
「アレだ。バレンタインのプレゼントとかいう。」
少しのあいだ、したの惨劇の音とヘリコプターのプロペラ音だけ聞こえた。
「この中でバレンタインプレゼント持参した浮かれた天使ちゃんはいるのか。」
俺はポケットに手を突っ込んだ。あった。
「すみません、持ってますが。」
カーディル博士がこちらを睨む。
「…ラキナからか?」
「はい。」
カーディル博士は過去に1度ラキナにフラれて根に持っているのだ。
「僕も持ってますが、義理チョコです。」
他のエージェントが名乗り出た。
「二人も持ってたら6人入るのに大層なスペースは出来るだろう。行ってこい。この浮かれクソ共が」
ヘリコプターが下降し、チョコの海の近くに降りた。おれが合図し、6人はチョコの海に突っ込んでいった。しかし、その隙間は観測したものと同等だった。
「義理チョコは駄目なのか。」
そんな悲しそうに呟くな。しばらくするとチョコの海の中からチョコにまみれた人間が現れた。
「ソレを…離せ…我らと共に…全世界の愛するモノのために…」
そう呟きながら俺一直線に向かってくる。銃で撃つとそれは倒れた。しかし、それはチョコでなく。全身チョコで恐らく消化器官もチョコで満たされた人の残骸だった。2、3体と次々と出てきた。
「皆俺を守れ!俺のチョコが取られた瞬間負けだ!博士、どちらが中心部か教えてください。」
「うぃうぃ、そっからエージェント・リーナフルの方向だ。」
「了解!」
俺たちはチョコゾンビを打ち倒しながら進んでいった。
「うわ、やめろォ!嫌だァァァァァ!!!!!!」
1人が悲痛な叫びをあげ、チョコの海に引きずり込まれた。
「怯むな!進めぇぇぇ!!」
俺は叫び自分を奮い立てた。どんどんとチョコゾンビの数は多くなる。また一人押し潰され、流された。そして、中心にたどり着いた。そこにあった幻想的な形をしたものがあった恐らくコアだろう。何故かチョコゾンビのヤローは出てこない。俺はそれに近づいた。触れようとした時それは急に形を変えた。
「おのれえ、よくも私に触れようとしたな。異端者め。」
それは人型、天使のような姿になり叫んだ。
「私以外の愛を受け取る人間め。汚らわしい。穢らわしい。さっさとその異端のチョコを捨てろ!我らと同化し、全ての人類が愛を同等に受け取るのだ。」
「断る!全員撃て!!」
4人でそれに向かって発砲した。しかしダメージの入った気配はしない。
「馬鹿め!そんなものが効くか!」
それは腕を伸ばしエージェントを一人巻き込んだ。くそ、考えろ。どうすればヤツを…。もしヤツがこの海全体だとしたら俺には触れられない。
「もう1回走るぞ!!全力で俺を守れ!!その代わり俺の前か後に立て!!」
4人は縦列に陣形を取り、走った。無数の腕は俺らを襲ったが、俺がチョコを落とす程には至らなかった。
「行くぞォォォ!!」
ヤツは怯み、高度をあげた。掛け声とともに2人で俺を投げ飛ばした。ヤツに手が届く。
「触 る な ぁ ぁ ァ ァ ァ ァ ァ!!!!!」
ヤツの身体はバラバラと崩れてコアだけになった。
「今だ!ぶっ壊せ!!」
俺はカーディル博士の叫び通り着地とともにそれを踏んづけた。それはパキッと音を立てて割れた。蠢いていたチョコの海はまるで崩れるように消滅していった。残されたのは荒れた土地と無数の人の残骸、そしてキツいチョコの匂いだった。
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………
流石に疲れた。ここまで疲れたのも久しぶりかもしれない。ひとつ疑問なのは何故破壊命令が出たのか。いつもなら捕獲するはずだが…。まあ、あんな危険なもの終了させる以外にはないか。俺はポケットからプレゼントボックスを出した。俺はそれを開け、中身を見た。小鳥をかたどったチョコがあった。俺はそれをかじった。チョコと共にバニラの味が広がる。俺は無意識に涙を残した。
────ありがとう、愛する人よ。
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ああ、くそ、クソ、クソ!!!
なんで戦場に浮かれたもの持ってきた奴が役に立つんだよ。俺はお陰様で大目玉だ。あっちの判断の前に破壊命令を勢い余って出しちまった。まあ、どっちみち破壊しようと思ってたらしいがな。とにかく、今日はネイビルと飲みに行く。クソガキが!!




