第八十四話 天覧兜割
迷宮は、下へ向かえば向かうほどに冒険者の数が減っていく。
迷宮の構造上、下に潜れば潜るほどに魔物は強く苛烈になるのだから当然といえば当然のこと。冒険者を選別するように階層主がいるのだからなおさらである。
上級以上の冒険者が王都でも百人を大きく上回ることはないというのが、五十階層以降の下層域の苛酷さを物語っている。
そうして足を踏み入れるものが限られてくる下層、七十六階層。
深層の一歩手前のその階層で、五十一階層を勢いよく進んでいる三人の少女とは裏腹に、慎重に警戒して進んでいるパーティーがあった。
人数は十人ほど。その人員の全てが上級中位以上という猛者。それを率いているのは、クグツ・ホーネットだった。
彼らは逃げていた。
本拠地としていた王都には彼らの醜聞が取り返しのつかないレベルで広がってしまった。ライラとの決戦に向けて、クグツは他にも悪事に手を染めていた。綿密な調査をされれば、ほころびは広がる。そうなる前に、先手を打って逃げ出したのだ。
長としての地位を捨てて、残った組織を囮に全ての事情を知っている腹心のみを率いての逃走。ある意味では英断ともいうべき選択を即断できたのはクグツだからこそだろう。結果、追っ手もなくテレポートスポットから七十五階層に転移し、七十七階層を目指している。
七十七階層から迷宮は一つになっている。逆を言えば、七十七階層に行けば世界各地に広がるどの迷宮の入り口にも出られるのだ。
むろん、迷宮を使っての越境は固く禁じられている。そのために、冒険者の出入りをチェックしている受付があるのだ。
だがしかし、どんなものにも裏道はある。この世界の全ての迷宮の入り口を冒険者ギルドが管理している訳でもない。また上級上位の冒険者となれば、後ろ暗いところはあっても引く手数多だ。クグツとて、王都の他にも伝手は確保してある。
だからこその逃走。
それは成功しつつあった。たどり着いた七十七階層。そこから、どこか適当な場所へと逆走しようとした彼らは、ふと違和感に気が付く。
七十七階層はワンフロアの構造をしている。二十階層、四十四階層、五十階層とほとんど同じだ。差異を挙げるならば、一本、青々とした樹が生えているということぐらいだろう。
その樹に、赤い実がなっていた。
「実が、成っている……?」
彼らの脳裏をよぎったのは、とある迷宮伝説だ。
七十七階層の階層主の噂。七十七階層に踏み込み、時として帰ってこない冒険者がいるという事実からささやかれる七十七階層の出現条件。その一つに七十七階層の樹に実が成っているとき、七十七階層の主は現れるというものがあった。
その場の全員の背筋にぬるりと悪寒が走る。
慌てて出入り口に向かうが、そこはすでにセフィロトの文様が刻まれた扉に寄って閉ざされていた。どうしようもなく彼らは知らされる。自分達は、七十七階層主に捕まったのだ、と。
七十七階層主を超えたのは、大英雄イアソンしかいない。あのライラとトーハですらも、七十七階層主は目にしていない。
経験豊富な冒険者である彼らは、即座に警戒態勢に移行する。何か現れるのか、何が現れても抵抗し打ち倒すためにクグツを中心に陣形を組む。それはなるほど、仮にも深層に足を踏み入れている冒険者だけあって、見事な練度だった。
だが、たった一人しか超えていないという七十七階層の試練の威名に、偽りはなかった。
「この樹、なんの樹だかわかるか?」
声をかけられて、彼らはキョトンと目を瞬かせ、次いで愕然とした。
七十七階層に生えている樹の幹にもたれかかるようにして、一人の男が立っていた。
「これは、この世界の樹だ。ここにはかつてあったかもしれない世界が結実している。知恵の実、禁断の果実……まあ、呼び方はなんでもいい。あったかもしれないこの世界の正史、そうなったはずの情報が実る樹で、リンゴにしか見えないこれには知識が詰まっている」
こんこん、と拳で幹を軽く叩いて説明を続けるのは、クグツ達も見知った男だった。
その人物は、そもそも最初からそこにいた。それこそクグツ達が七十七階層に入ってくる前から幹にもたれかかって立っていたのだろう。もちろん、彼らは七十七階層に入ってすぐにその男の姿を目にしていた。その大柄な体躯も、無精ひげを生やした面構えも、腰に差してある一対の双刀も、背中に背負った大剣も、すべて目に入れていた。
だが、彼らはそれでもなお、声をかけられるまでそこにそいつがいたということを意識していなかったのだ。
「『栄光の道』への勧誘の時、コロ坊に食べさせたのはこの実だ。七十七層は、この実を食べて本来あったかもしれない自分と意識を競わせる試練だ。精神を超越するための篩。そうして、あと一つの世界の真実を知ってなお進み戦い抜くかどうか。それがここ、七十七階層の試練だよ」
唖然が愕然に、愕然が絶句に、絶句が戦慄に。状況を理解して深まる彼らの畏怖を気にした風でもなく、男は幹にもたれかかっていた身を起こす。
否が応でも知らされる実力の格差。ゆっくりと死神の鎌が彼らの首筋に添えられているようだった。
「よう、クグツ。久しぶりじゃぁねえか。ご機嫌か?」
「貴様は……」
見知ったその人物に、クグツは声を失う。
「なぜ貴様がここにいる、クルクル……」
「なぜ? なぜもなにもあるのか? 俺は最初の自己紹介の時に言ったはずだぜ。俺こそが、七十七階層の主だとな」
クルクルというあからさまな偽名を名乗って王都に潜んでいた男だ。
なぜか七十七階層でクグツ達を待ち受けていた男が、くつくつと笑い声を漏らす。
「それにしても見事に負けてくれたよなぁ。お前がペラペラ自白し始めた時は、思わず笑っちまったぜ?」
何を、とメンバーが気色ばむが、クグツをあざ笑う声は止まらない。
「負ける時もよぉ、才能がどうの資質がどうの見苦しいぜ。それが全てだとか、たった一つしかないだとか、ガキがよくやる勘違いさ。負けるの耐えきれないなら、お前は諦めればよかったんだよ。日々の小さな幸せと不幸を積み重ねて、退屈と安寧に身を任せればよかったのさ。それで人間ってのは生きられるんだからな」
「うるさい……」
地の底で自分を待ち受けていたかのような死神の揶揄にクグツは拳を握って震わせて、しかし一言も反論できなかった。
残酷なほど、それは事実だった。
「お? なんだよ、言いたいことがあるなら吐き出せよ」
「僕だって好きでこんなことになったわけじゃ……こんなはずでは……そうだ! こんなはずではなかったんだ! 僕はもっと……もっと違ったはずなんだよぉ!」
「こんなはずではなかった? ははっ。こりゃ傑作だな。お前は、どうしようもなくこんなやつなんだよ。……ここに実っているお前の運命を教えてやろうか? お前は、本来ならライラ・トーハじゃなくコロナの嬢ちゃんに嫉妬して、危機感を覚えて陥れようとする。それに失敗して落ちぶれるっていう運命を歩むはずだったんだよ」
「黙れぇっ。なぜ貴様のような、正体もしれない男にそんなことを言われなければならない……! わけのわからないもしも話なんて知ったことか!」
「正体が知れないとは心外だな。俺は意味もない嘘なんて吐かねえし、俺が誰かっていうのは教えてやっただろう?」
あまりにもあっさりと、彼はクグツの言葉を切り捨てる。
「言っただろう? 俺の名前は、お前だって知ってるはずだぜ。いいや。この世界でたった一つしかない大陸、空間の無限概念さえ内包しない、地平に果てがあるちっぽけなこの有限世界で、歴史の上限すら決められているこの球形限界世界の中で、俺の名前を知らないような人間はもういないはずだぜぇ!!」
「バカな」
その男の言葉に、クグツの周囲にいるメンバーが狼狽える。彼らは、知っているのだ。体感しているのだ。一度戦い、目の前の男の強さを知らされているのだ。
だが、それでもなお信じられるものではない。
「そんなわけがない……それは三百年前の……ありえない、ありえるわけがない! 貴様が、あのクルック・ルーパーであるわけがない!!」
「信じる信じないは勝手だ。そうさ。お前だけじゃない。これから知る奴ら全員そうさ。俺は他人に生き方を強制するようなひでえことはしないのさ。どいつもこいつも好きに生きて――俺に殺されろよ」
自分勝手な言葉を吐いて、にたりと笑う。
クグツは顔をゆがめてクルック・ルーパーを名乗る男をにらみつけた。
「……っ。そうか。貴様がクルック・ルーパーだとしても、そんなことはどうでもいい」
七十七階層主であったとしても、たとえ伝説の人物であったとしても、もはやそんなことは疑問ではない。
こいつの頭がおかしかろうがなんだろうが、目の前に立ちふさがっているというのは事実なのだ。
「三百年前にはばかった悪党が、なぜ今更顔をだした? なぜあんな小賢しい真似をしていた? しかも七十七階層の階層主だと? わけがわからない。貴様の自称する立場も、今までの行動も、まるで理解できない。お前は……クルック・ルーパーとは何者なんだ!?」
「……っはっはっは。クルック・ルーパーとは何者か。なかなか素晴らしい問いかけだな」
何が琴線に触れたのか、そいつは初めて感心したように頷く。
「そうだな。一つだけ教えてやるよ。俺が今更になって顔を出したのは、そろそろこの世界が滅びるからだ」
「なに?」
何を言っているのか。
世界が滅びる。そんな現実味のない言葉を、しかし目の前の男は至極真剣な顔で語っていた。
「ああ。この世界の歴史は上限がきた。あとは堕ちて潰れるしかない」
「何を言っている? お前が世界を滅ぼすとでもいうのか……?」
「は? ははっ、はははははは!」
事情を理解できないクグツの問いは的はずれだったようだ。男はさもおかしなことを聞いたというように笑いだす。
「俺が世界を滅ぼすって!? バカ言うなよ! 俺がそんな大層なことができるように見えるのか? こんなちっぽけな体で、こんな小さな武器しか持ってない俺なんかに、世界なんて滅ぼせるわけがねえだろう!? 俺なんかじゃあ、今からお前らを殺すことぐらいしかできねえさ!」
「……何故だ。貴様のやっていることは、言っていることは全てむちゃくちゃだ! お前は誰の味方で、誰の敵なんだ! なぜ僕が、貴様なんぞに殺されなければならない!」
「なぜ、なぜって、そればっかだなあ。そもそもよぉ、悪いことをしたなら報いがあるのが当然だろうよ。お前には倫理ってものがないのか? いたいけな女の子たちの友情を好き勝手にいじくって、バチが当たらねえわけがねえだろうに」
それは誰もが好む勧善懲悪の論理。悪を挫く正義の味方を賛美する愛すべき道理を、よりにもよってそいつが語るのは、壮絶にねじくれていた。
だというのに、そいつはしたり顔でクグツに言い聞かせる。
「お前はなぁ、何の罪もない女の子達の友情をひき裂いて、互いに戦わせようとしたんだぜ? そんな悪いことをして何の罰も下されないって本気で思っていたのか? そんなわけないだろう。信賞必罰のこの世の中で、そんな道理ががまかり通っていいわけがねえ。たとえお前の悪行をお天道様が見逃したって、他ならないこの俺様が許さねえ。悪事に染まった野郎どもに天罰が下らねえってんなら、そんな悪い奴らは俺が皆殺しにしてやるよっ。なあ! どうしてか分かるか!?」
わかるわけがない。
もしも目の前の男が本物のクルック・ルーパーだとするならば、史上で最も裁かれなければいけない害悪こそがやつなのだ。
だが、どうしようもなくねじくれた男の言動に、クグツは一つの間違いを悟る。
「そうか……お前は――」
「人を騙すも殺すも他人の記憶をもてあそんで争わせて好き勝手して悪行三昧に明け暮れる――そんな楽しいことをしていいのは、この俺だけだからなぁ!!」
「――狂っているんだなッ、この狂人がぁ!」
限界だった。こんなやつと、もう一言も言葉を交わしたくなかった。一声叫び、クグツは糸を繰る。
それを合図に、全員が動き出す。七十七階層は閉ざされている。もはや目の前の男を倒さなければならないのは、このフロアに足を踏み入れた時から決まっていた。だからこそ、実力差を知っていても、彼らはわずかにあるはずの勝機を掴むために果敢に武器を振るう。
次の瞬間、クグツの仲間が死んだ。
一人の首が飛んだと思えば、腹を裂かれて背骨を断たれ、のどを貫かれて心臓を割られた。
誰一人、一合たりとも刃を交わせずただ一方的に蹂躙された光景に、呆けるしかなかった。
飛びかかっていた半分は、上級上位の冒険者。この世界でも上位に入る練達の武人たち。その囲いが一瞬で崩れて死んだ。
「俺が狂ってるって? 違うね。この世界がおかしいんだ。人類が許しがたいほど狂っているんだ。だから俺は、事の正誤なんてもうどうでもいいんだよ」
バタバタと悲鳴も上げずに瞬殺された死体の真ん中にいるのは、一人の狂人。
抜き身の、刃。背中に背負っている大剣には触れもせず、抜き放ったのは腰にぶら下げていた双刀の二本。両手の延長だとばかりに自然に馴染んでいるそれは、今の今までクグツが目にしなかったことがなかった凶器だ。
鬼をも殺す、猫の爪。
おそらく、世界で最も有名な一対の刃。切ることに特化した薄刃に曲線を描く刃渡り。この世の多くを斬り裂いたクルック・ルーパーの双刀だ。
しかし、だというならば背中に背負った大剣は一体何なのか。クグツは恐怖に混乱しながらも、そう思う。かのクルック・ルーパーが大剣を使っていたという話は聞かない。ではクルック・ルーパーを名乗る男は使いもしない大剣を背負っているか。
ヒントの足りない状況で、クグツはその答えを出せない。
瞬く間に九人を切り殺した男が、ああ、と天を仰いで嘆く。
「しかし、クグツよぉ。お前は仲間に対してひでえことするよな。この俺と戦えなんて、そんなの死ねって命令したようなもんじゃねえか。クグツ。お前は本当ひでぇ奴だぜ」
音もなく抜き放った抜き身をぶら下げた狂人が、ゆっくりとクグツに近づく。
「かわいそうだよなぁ。見ず知らずの奴だったらともかくよぉ。いま死んだ奴らは、ここまでお前についてきた忠臣だったんじゃねえのか? お前の悪事を知ってもなお、お前についてきた仲間じゃなかったのかよ。それをさぁ、お前の寿命をたった数十秒伸ばすための捨て駒に使うなんて……お前はひどい奴だよ、クグツ」
あまりの言い様に、プツンとクグツの頭で何かがぶちキレた。
クグツにもあった。
苦楽を共にし死線を一緒に潜り抜けた同胞に対する仲間意識が、確かにあった。
「ふざけるなぁああああああああ!」
首が、切れた。
「え?」
いつ、その刃を振るったのか。
クグツの首に深々と刻まれた傷口から鮮血が噴き出す。
とっさに、クグツは首を抑えて治療する。冒険者カードの機能を行使。経験値を消費しての治癒。即死でない限り、意識がある限り、溜め込んだ経験値が許す限りの回復を約束する。
「はっはっは。いい機能だよな、それは。偉大なる宇宙樹の恵み、さすがはセフィロトシステム様だぜ」
「なんなんだ……お前は……貴様はいったい何者なんだぁ!」
リルたちの戦いのときだって、まるで動きが見えないなんてことはなかった。
人を殺すことに特化しきった、ありえないほどの練達者。クグツが概念から理解できない単語をぽんぽんと話すあり方。なるほど、こいつは確かにクルック・ルーパーであり、七十七階層主なのだと思い知らされた。
そんな奴が、どうして自分の前に現れる。
「貴様はなんなんだ! 何をするために地獄の淵から這い上がってきて地上をさまようッ、この亡者が!!」
「俺は、クルック・ルーパー。地の底で人類の害悪を誓った、ただのクズさ」
それ以上は応える気がないと、彼は言外にそう告げる。
「冥途の土産だ。見せてやるよ」
かくん、とクグツの膝が落ちた。
なぜ、と思って見下ろせば簡単なこと。無造作にふるったクルック・ルーパーの刃がクグツの腹を半分切り抜いていた。
腹を半分も切り裂かれては、体を支えられないのも道理だ。崩れ落ちたクグツは、なす術なくクルック・ルーパーを見上げる。
双刀の片割れを振り上げられたそこには、理想があった。
「天覧――」
天を示した切っ先から地に至って踏み込むつま先までに、万人が思い描く理想から一分のズレもない。武具を腕の延長線とし、体の一部に。呼吸をするかのように練り上げられた力は澱みなく清廉に全身を流れていた。武具も、素晴らしい。鋼鉄でもなければ、銀でもない。クグツが初めて見る金属の輝きは、一つの至高の武具であると見るものすべてに知らしめる。それらが合わさった光景は一枚の名画よりも洗練されており、一瞬を写し取った絵画とは異なり流れる水よりも滑らかに動くのだ。
美しい。
息をするのも忘れて、クグツは武技の極致に見入った。
「――兜割」
振り下ろされた刃が自分の頭に入るのが、やけにゆっくり感じた。
ずぷり、と刃が頭に入りこむ。一切の抵抗なく皮膚を裂いた刃は水でも通り抜けるように骨を断ち、脳みそに入り込み、綺麗に二つに分けていく。そうやって自分の頭がカチ割られるのすら、クグツは芸術の一部として受け入れた。
技に見入ったまま、クグツは絶命した。
「はっはっは……クグツよぉ。お前はいいやつだった。そう思うぜ。リルドールの嬢ちゃんたちの戦いの前に、俺の名前まで出してくれた。最高だぜ」
二つの死体になった彼に、クルック・ルーパーは餞別の言葉を送る。
「お前は、本当にいい傀儡だったよ」
双刀を鞘に納め、クルック・ルーパーは背負っていた大剣を鞘ごと外した。
背中の飾りになってしまったこの品。昔にこの迷宮の奥底まで一緒に歩いていった一品だが、さすがに本気で戦うとなれば少しばかり邪魔である。
どうせ使うこともないのだから、背負い続けるのは未練がましいにもほどがある。
「悪いな相棒。ここで待ってろよ。この思い出の場所なら、まあ、文句もでねえだろ?」
何に語り掛けてか、大剣を幹に立てかけたクルック・ルーパーは彼らしくもなく微笑む。そして少しばかり身軽になった彼は、ゆっくりと歩き出した。
「さあ、行くか」
待つのは嫌いではない。
だが彼は、いつだって自分から敵に向かっていた。そうして、もう自分の敵になるほどに、待ち望んだ相手は成長した。それこそ、英雄と呼ばれて称賛されるほどに、彼女たちは実った。
ならばこそ、価値がある。
「忘れっぽいガキどもに、俺たちを思い知らせてやらねえとな」
恐怖すら風化させてしまう人類の愚かさをあざ笑い、クルック・ルーパーは歩き出す。
四章がこれで終わりとなります。
五章のラスボスは一体誰なんでしょうね。
以下、四章のキャラ捕捉です
・コロナ
もしものコロ。リルに出会わなかったら、というよりは、クルクルに出会ってコテンパにされなかったらというコロの未来形。ぶっちゃっけ、コロネルの上位互換と思って書いてます。主人公っぽいかと言えば首をかしげざるを得ないほどの脳筋になりました。IFコロという設定は途中で思いついてぶち込んだです。反省はしてません。なぜか不自然なほど急速にシスコンになりましたが、この作者が姉妹を書くと、姉はほぼ百パーセント妹猫可愛がりするシスコンになるで仕方ありません。諦めてください。
・クグツ
ある意味、もしものリル。コロに出会わなければ、あるいは戦闘面でリルに少しばかりまともな才能があれば、クグツのようになったかもしれないという人物。かませで小悪党をコンセプトに書いたキャラで、公開自白は小悪党のロマンということで自白の世界中継を断行。
・フクラン
ヒィーコがリルたちに出会わず、どこかのクランに所属して組織人になったら意外とこんな感じかもという風に書きたかったんですが、ぜんぜん伝わってないだろう自覚はあります。
・カスミ
常識人を装った立派な自爆キャラに成長したと思います。
攻城塔へレポリスは、一応史実にあるロマン兵器。古代ギリシャに実在したとされている移動要塞で、何もしないうちにぬかるみに嵌められて敵に拿捕された挙句、解体されて巨像の資材にされたという面白兵器。まあ、紀元前に五十メートルの攻城塔とか、フィクションの変態兵器だろうというのが通説です。
・ウテナ
投げ銭ってロマンだよね、という。羅漢銭って、みんな五百円玉で練習したことあるよねっていう。
才能はカスミンパーティーで随一だけど、才能に対しての武器チョイスがあからさまに間違っているのと、カスミを超える気がゼロなので、割と持ち腐れな子。本人が現状で満足だからよろしいのです。
・エイス
なぜか四章で一番キャラが立ったんじゃなかろうかという小動物。
ちなみに危険察知と思われていてエイス自身もそう思い込んでいる魔法だけど、正確には危険回避。危険から逃れるためだけにある魔法で、その副次的な効果で危険の分布図がわかる。エイスは自覚してないけど、命の危険にさらされた瞬間だけ逃げるための身体能力が異様に上昇する。だから死なない。そして四章ラストで冒険行きたくないって泣いてるのは七十七階層にどこぞのおっさんがいるのを本能と魔法で察知しているせいだから、やる気を出したこのおっさんが地上に出たらたぶん泣いて冒険に行きたがる。能力の上限を超えて死ぬところには死んでもいかないので、ひたすら死なない。
・テグレとチッカ
ごめんね。この小説、男はモブか敵か死ぬかなんだ。途中でごっちゃにして、本当にごめんね……!
ということで、残りは五章、六章、七章の予定です。
五章は三章超え、六章は二章越え、七章は一章越えを目指していきます。まだまだ続くこれからのリルたちの活躍にお付き合いいただければと思います。




