野菜達の逆襲(笑)
妖精達のちょっとした悪戯話です
あるハロウィンの日、一人の少女が三つの野菜を家からこっそり持ち出し、近所の林の中に捨てた。少女の目的はなんてこともなくただ夕飯に嫌いなカボチャと人参それとトマトが出ると聞き食べなくてすむよう林へ捨てただけだ。
さて、話は少々変わるが日本では米1粒に神様が宿るといいます。それならば野菜にも何かが宿っていても驚きませんよね?何が言いたいか、というと野菜には妖精が宿っているということです。
こんな少女な小さな我が儘がまさか野菜界を騒がす出来事になるなんて野菜を捨てた少女も、野菜を売った八百屋のおじさんや野菜を育てた農家の人だって予想はできなかったでしょう。
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その日、カボチャの妖精パンプは凍えるような夜の風によって目を覚ました。本来であれば、野菜の妖精は宿っている野菜が食べられたり駄目になった時に別の野菜に宿るため、現在、ハロウィンの夜に出る夕食ように買われたこのカボチャに宿っていることはなかった筈なのだが、パンプはいつもと変わらないカボチャに宿っていた
パンプは不思議に思い、野菜の妖精だけに伝わる不思議な呪文を間違えないようにゆっくりと唱えた。すると、不思議なことにみるみるカボチャが縮み、深緑色のカボチャ型の帽子を被った手のひらサイズの羽根の生えた少年の姿へと姿を変えた。
「で、ここ何処だろ?」
パンプは現状を知るために周囲をキョロキョロと辺りを見回すと、ふと視界に赤い物質が映った。よくよく見てみると、それはトマト型の帽子を被った赤髪の野菜の妖精にだったようで、小さな羽と喉を震わせ男泣きをしていた。
「ちくしょーーー!トマトの何が悪いんだーー!!」
直感的に関わったらめんどくさいタイプの妖精だと判断し、移動しようとするが、一歩遅かったようでトマトの妖精がこちらに気付き飛んできた。
「なぁ、なんでこんな所にいるんだ?もしかして、お前も俺と同じで捨てられたのか?お前ってカボチャの妖精だよな?ハロウィンの夜に捨てられるなんてドンマイだな!」
息なりのマシンガントークにパンプは渇いた笑いを出すだけだったが、トマトの妖精にトウキックが放たれ赤い液体が撒き散らされた。勿論、パンプが放ったものではない。トウキックを放ったのはオレンジ色の人参型帽子を被った女性の野菜の妖精だった。
「他人への気遣いを覚えなさい!この駄トマトが!!」
透き通った声で叱られたトマトだが既に気を失っているので、聞こえてはいないだろう。赤い液体はトマトエキスだということにしておく。
人参の妖精はトマトの頭を鷲掴みにして持ち上げパンプに向かって頭を下げた。
「ごめんなさいね、この駄トマトとは野菜室から一緒なのだけど気を使えなくて。ここにいるってことは貴方も恵美さんの家から?」
恵美さんというのはパンプが宿っていたカボチャを買った人のことだ。
「うん、僕のいたのはその恵美さんの家だよ。」
買われてその家にいる間に恵美さんという人達の会話を聞いていたため名前は分かる。
「そう、じゃあやっぱり美代ちゃんね。この駄トマトが言うことに間違いはなさそうね。あの子人参もトマトもカボチャも嫌いらしいからこうやって捨ててしまったようね。」
「そっか…捨てられちゃったのか…これからどうしよう…」
彼ら野菜の妖精は宿っている野菜を少しずつ美味しくして人間により美味しく食べてもらうことによって得た妖精エネルギーを妖精女王に献上している。
捨てられるということは妖精女王に献上できるエネルギーを失うということと同義なため野菜の妖精は本能的に捨てられることを嫌がるのだ。
しかも、一度捨てられてしまった野菜達はその後美味しく食べられたとしても妖精エネルギーを妖精女王に献上出来なくなる。これは妖精達の中では穢れがエネルギーの中に混じるからだと言われている。
「何だか一方的に捨てられるだけってのも悔しいよな」
「そうだね、ハロウィンだしちょっと悪戯しちゃおうか?」
「ウフフ、いいわね。私たちで美代ちゃんを調k…悪戯しちゃいましょう。」
3匹の妖精達はハロウィンの夜に少女に悪戯を仕掛けることにした。人参の妖精だけは仕返しという目的より相手を責めたいというドSな考えに支配されていたのは表には出てこない話である。