第 20 話。野党との一大決戦。
「さぁ~みんな行くわよ。」
お城から城下から女性達が一斉に山の麓に向かい、山の麓では誰もが必死で大木を切り倒しが続き。
「お~い、倒れるぞ~。」
一度に二本、三本と倒れ、兵士に交じり城下の男達も一緒に大木を運び、並べ、何と三本、四本と積み上げ、兵士達を守る盾が出来上がった行く。
「よ~し、これで完成だ、次に行くぜ。」
兵士もへとへとだ、だが自分の命を守ってくれる盾だ、お互い其れだけは分かって要る。
「お~い、合図は未だか。」
「其れが未だなんだ、奴らも簡単に登って来れないと思うんだ、其れに狼の大群が何時襲って来るかも知れないからなぁ~。」
「だけど何で連合国が有るって知ったんだ、オレ達も知らなかったんだぜ。」
「そうだなぁ~、でもあの時突然連発銃の音が、其れよりも早くやろうぜ。」
兵士達も野盗がどの様な方法で連合国の存在を知ったのか分からないと、其の間でも大木が次々と倒されて行く。
「みんな、お昼よ、さぁ~私達が心込めたおもすびよ、しっかりと食べてね。」
「え~、もうそんな時刻なのか。」
「お~い、みんなお昼が届いたぞ早く食べようぜ。」
「さぁ~さぁ~皆さんもよ。」
兵士達も続々と集まり、お昼のおむすびを食べ始めた。
「ねぇ~、何時頃出来るの。」
「う~ん、そうだなぁ~、此処はもう少しで終わると思うんだけどなぁ~。」
「でも本当に野盗が来るの。」
「いゃ~其れがオレ達にも分からないんだ、猟師さんが合図してくれるって聞いてるんだけど。」
「じゃ~未だ合図が無いの。」
「だけど今がお昼と言う事は、もう直ぐ合図が来ると思うんだ、あんた達も早く下りた方がいいよ。」
「分かったわよ、じゃ~みんな頑張ってね、みんな下りましょうか。」
おむすびを届けた女性達は城下へと戻って行く。
「お~い、みんな休みも取りたいけど、後少しで終わると思うんだ、辛抱して始めようか。」
兵士達も城下の男達もおむすびを頬張りながら早くも作業を始めた。
「熊笹は一体何処まで続くんだ。」
「オレも知らないんだ、でも何でこんなにも多いんだ此処の茂り方は異常だ、其れに全然前が見えないぞ。」
野盗は鉈で熊笹を切りながら登って行くが、熊笹の茂り方は異常だと、頂上まで続いて要るとは知らない。
其れにしても余りにも狼の姿が見えないと猟師達も不思議だと思って要る。
「済みませんが通る事は出来ますか。」
「あっ、源三郎様だ、何処に行かれるのですか。」
「私も少し向こう側を見たいと思いましてね。」
源三郎は菊池の入り口付近まで来た。
「はい、でも気を付けて下さいね、お~い、源三郎様が隧道に入られるぞ。」
隧道の付近には大木が数本積み上げられ数十人の兵士が早くも臨戦態勢に入り、源三郎は馬に乗ったまま隧道内を進み、暫く進むと向こう側の入り口付近が明かるく見えて来た。
「中隊長はどちらに居られますか。」
「此処は危険ですよ。」
「皆さんが危険な任務に就いて居られるのに、私だけが安全な所に要る訳には参りませんよ、其れで今の状況ですが。」
「今中隊長はこの先に居られます。」
「そうですか、では私も参りますので。」
馬を降り中隊長が要ると言う場所へ向かった。
隧道の外側には特撰隊が立ち木に身を隠し、野盗を迎え撃つ態勢は整って要る。
「中隊長。」
「えっ、総司令、如何されたのですか、もう野盗が直ぐ近くまで迫っておりますので。」
「そうですか、其れで猟師さんからの情報は入りましたか。」
「先程ですが、野盗は約五百でやはり幕府の残党でした。
其れよりも何処で手に入れたのか我々と同じ連発銃を持っておりまして。」
「連発銃を持って要るのですか、其れに五百とは多いですが中隊長の作戦は。」
「我々は此処で迎え撃つだけを考えております。」
「ですが五百の全部を殺すのは無理では無いですか。」
「我々は一人も隧道を通す訳には参りませんので。」
「中隊長は正か此処で戦死される覚悟では無いでしょうねぇ~。」
「私は既に覚悟は出来ておりますので。」
「私も中隊長のお気持ちは理解出来ますが、中隊長が此処で戦死されるよりも野盗を隧道に誘い込むのも作戦の内だと思うのですが、如何でしょうか。」
「総司令のお言葉ですが私は野盗を一人でも通す訳には参りません。
其れに一人でも通す事に成れば其れこそ大変な事になると思うのです。」
「勿論ですが、ですが幾ら野盗だと言っても隧道の中を一気に通り抜けると言うのは不可能だと思います。
横に並んで突撃して来るので有れば菊池側から狙い撃ちで、其れに死体を乗り越えなければ前には進みませんよ、死体を乗り越えれば狙い撃ちで隧道の中は死体の山が出来ますからね、野盗を全滅させるには野盗に隙を見せるのも作戦の一つと考えなければならないと思うのですが。」
源三郎は何も無理して隧道の入り口だけを死守する必要は無いと考えて要る。
「私は中隊長もですが特撰隊からも戦死者が出ると覚悟はしておりますが、菊池側で迎え撃てば我が軍の犠牲者も少なるなるのではないかと考えたのです。
ただどの状況で隧道に誘い込むか、其れは中隊長に考えて頂きたいのです。」
「良く分かりました、私の判断で野盗を引き込み一気呵成に壊滅させて見せます。」
「そうですか、では特撰隊の兵士にも話をして下さいね、中隊長、何も逃げるのでは有りませんからね、野盗を全滅させる為の作戦だと思って頂きたいのです。
菊池側の兵士にも伝えて下さいね、私は次に行きますのでどうか無理はしないで下さい。」
源三郎は最前線に着いてから作戦を考えた。
確かに中隊長は隧道に一人の野盗は入れないと其れも作戦で有ろう、だが其れでは中隊長と特撰隊が全滅し、野盗の集団は隧道に雪崩れ込み歩兵からも多くの犠牲者が出る、其の様な事に成れば別の野盗も隧道に突撃して来る、其れを防がねば連合国は壊滅する。
源三郎は馬に乗ると隧道に入り、菊池側の前戦へと向かった。
山の麓では半町程の広さで大木が切り倒され大木は兵士を守る盾として積み上げられて要る。
「皆さ~ん、大丈夫ですか。」
「わぁ~大変だ、源三郎様が来られたぞ。」
「何か有ったんですか。」
「いいえ何も有りませんが、皆さんが苦労されておられ、私だけが何も出来ないので其れでは駄目ですから私も皆さんの。」
「まぁ~オレ達に任せて下さいよ、オレ達は絶対に大木から先には入れませんからね。」
「はい、誠に有り難い事ですが、皆さんも気を付けて下さいね。」
「もう帰った方がいいですよ、此処は危ないですから。」
「はい、申し訳有りませんが、私は次に行きますので。」
源三郎が見た山の麓では大木は並べ積み上げ枝も付いた状態で、山を見ると切り株は根元近くまで切り取られ、野盗が身を隠すところも無く、上から突撃して来れば大木の影から一斉射撃を受けるだろう、大木の並びは隧道から続いて要る。
城下からも女性達がおむすびを届け、歩兵部隊は大木の影から山を見ながらおむすびを頬張っており、源三郎は何度も立ち止まり兵士に声を掛け命だけは大切にする様にと話して行く。
暫く行くと後藤が居た。
「大丈夫ですか。」
「皆さんの協力で予想以上の盾が出来ましたので。」
確かに言う通りで大木は切れ目無く何処までも続いており、兵士達は野盗を迎え撃ち全滅させるのだと。
「私もこれ程にも早く完成するとは思っておりませんでしたので驚いております。」
「野盗は何も考えず突撃して来ますので、半町程の広さが有れば野盗は狙い撃ちに出来ますねぇ~。」
「確かに其の通りだと思いますが、決して大木は乗り越えないで下さいね。」
歩兵の事だ無理して大木を乗り越えるだろう、だが其れは戦死を意味するので有る。
「皆さん、決して大木を越えては駄目ですよ、野盗は必死で撃って来ますのでね戦死する事も有りますのでね、大変ですが何卒命だけは無駄にしないで下さいね、お願いしますね。」
「オラは源三郎様に助けて貰ったんですよ、だから今はどんな事が有っても死ぬ訳には行かないんです。」
「オラもですよ、オラは源三郎様の為にも今は絶対に死にませんからね。」
「其れは有り難いですねぇ~、皆さん、私の為では無く皆さん自身の為に戦死しては駄目ですよ、絶対にですよ、これは私との約束ですからね必ず守って下さいね、お願いします。」
「オレは約束しますよ、絶対に戦死はしませんから。」
源三郎が行くところでこの様な会話が必ずされ、元官軍兵に戦死は駄目だ、戦死する事は許さないと、これが余計彼らの心理を動かせ、歩兵達は官軍の上官と違い命は大切にするんだと、その様な言葉は官軍でも聞いた事が無いと言う。
菊池側の山の麓を時を掛けゆっくりと馬を進め、兵士達と話して行く。
そして、昼を過ぎ、野洲に入った頃。
「パン。」
と、一発の銃声が、其れは猟師が撃った火縄銃の音で野盗の軍勢が菊池の隧道の入り口へ後一町と迫ったと言う合図で、其れが正に戦闘開始の合図で有る。
「よ~し、全員狙いを定め、私の合図で一斉射撃だ。」
中隊長は特撰隊の動きを見ており。
「よし今だ、撃て一斉射撃開始。」
中隊長の号令とほぼ同時に連発銃から一斉に火が吹き、最初の一撃で百人程が倒れた。
「各自自由射撃開始せよ、自由に撃て。」
特撰隊からも続けて連発銃の火が吹き次々と倒れて行く、だが野盗も反撃を開始し、仲間の死体を盾に必死に撃って来る、火縄銃と何処で手に入れたのか連発銃も持って要る。
「バン、バン、バン。」
と、特撰隊の兵士達に向け必死に撃つ、中には弓を引く者、だが弓を引く者は身体を隠す事も無く矢を放つので特撰隊の兵士は狙いを定めやすく、弓隊は四半時で全滅させる事が出来た。
其れでも何も考えず撃ち捲くり、特撰隊の居る付近の大木には流れ弾が当たり、特撰隊の兵士は反撃すら出来ず苦戦し、中隊長は作戦を変えた。
「中隊の半分は連射し、半分が狙いを定めてくれ。」
特撰隊の兵士達はこの時まで多種多様な攻撃方法を訓練し、其れが今回試され、弾丸の装填のその内で何も考えず撃ち捲くるのでは無く、常に平常心を保ち連発銃の残り弾数を考え撃つ。
中隊長が突然作戦の変更を伝えたが兵士は誰が連射し、誰が狙いを定めるのかも暗黙の了解が出来ており、其れが今回役に立つと中隊長は考えた。
中隊長の思惑通りに行くのか、其れだけは分からないが兵士は即応した。
其れでも必死で撃ち捲くり数発が兵士に命中し倒れた。
「全員隧道に入れ、隧道に入るんだ。」
と、中隊長は叫んだ。
急遽作戦を変更した、其れは源三郎が言った隧道の中では大勢の人間が一度に通る事は無理だと。
「中隊長、何故ですか、何故逃げるんですか、我々は未だ負けてはおりませんが。」
「これは作戦で退却では無く、奴らを隧道に誘い込むんだ。」
「分かりました、お~い全員隧道に入るんだ、菊池側から応戦する。」
兵士は傷付いた兵士を抱え、必死で隧道へと入って行く。
「お~い、奴ら逃げて行くぞ、早く追うんだ。」
野盗は兵士を追い掛け、数十人が隧道に入った。
「よ~し、此処で反撃を開始する、みんな狙いを定めて。」
兵士は隧道に入って来る野盗に狙いを定めた。
「よし今だ一斉射撃だ。」
「バン、バン、バン。」
菊池側の出口から野盗に向けた兵士達の一斉射撃で、菊池側の出口の後半町と言う所で特撰隊の反撃で次々と倒れて行き、出口近くは野盗の死体の山で有る。
「よ~し、今の内に弾薬の補充を。」
やはりか、源三郎の読みは的中し、これで当分の間は攻めては来れないと、改めて源三郎の存在は大きいと思うので有る。
「戦死されたお方は居りませんか。」
「中隊長、全員が無事で十五名が負傷しておりますが命に別状は有りません。」
「では其の方々を。」
「今城下の人達が来て荷車で運んで行きました。」
「そうですか、えっ、何故城下の人達が此処に。」
「中隊長さん、オレ達の為に兵隊さんが命を掛けてるんでしょう、だったらオレ達も何が出来るか分かりませんが怪我をされた兵隊さんを運んで町の女達がお世話しますんで。」
「皆さん、本当に有難う、我々は皆さんの為にも奴らは絶対に通しませんのでね。」
「皆さん、おむすびだけど今の内に食べて下さいな。」
「えっ、貴女方は。」
「私達だって連合国の人間ですよ、女の私達に出来る事は皆さんの為におむすびを作る事だけなんですから文句は言わず早く食べなさいよ。」
中隊長が女性に怒られたと、兵士は笑って要る
「済みません、みんなお母さん達が一生懸命おむすびを作って下さったよ、今の内に食べて下さいね。」
特撰隊も隧道の外で野盗を迎え撃つ兵士達もおむすびを食べ、その顔には少しだが安堵の表情だ。
「中隊長の判断が我々を救ったのだと思います。」
「いいえ、其れはねぇ~総司令が申されたのです。
外側で戦うのは我々にも多くの犠牲者が出、其れは戦死と言う事で、総司令は戦死は許さない。
其れよりも最初の一斉射撃で野盗は百人は倒せるので直ぐ隧道に誘い込み出口半町の所で連続射撃すれば出口は野盗の死体の山で簡単に入って来れないと、私は総司令の申されて通りに作戦を変えただけですよ、其れよりも負傷された方ですが如何ですか。」
「あの人達なら大丈夫ですよ、皆さん元気ですから。」
「其れは良かった、ですが皆さんは下がって下さいね、戦は我々が。」
「ねぇ~中隊長さん、この戦は私達領民の為だと思うのよ、だから私達に出来る事が有れば何でも言って欲しいんですよ、手伝いますから。」
「ではさっきの負傷者のお世話と、念の為にお湯と新しい布が有ればお願いします、其れと男の人は荷車の準備を負傷者を運ぶ為に必要ですから。」
「よ~し、オレ達に任せて下さいよ。」
と、城下の人達は大急ぎで戻って行く。
「特撰隊は配置に就いて下さい。」
「外の様子は見なくてもいいんですか。」
「我々はこの出口でゆっくりと待ちましょう、何も危険を犯す事も有りませんしね、其れはねぇ~全員が死んだと言う証も有りませんので、其れよりも少しでも動けば確実に殺して下さい。」
「じゃ~中隊長は未だ生きてると思ってるんですか。」
「そうですよ、私の経験で事実我々の仲間も生きておられますからね。」
「だったら全員で。」
「いいえ、数名で監視に就き、時々交代して下さい。」
「よ~し、私が最初に。」
「では私も行きますので。」
数名が名乗り上げ、後の者は休みを取る事にした。
中隊の動きを見ていたが暫く経っても隧道からは銃撃音も聞こえず、其れを確認して野洲側に入った。
野洲側の麓で菊池の発砲音が聞こえたのだろうか、兵士達は緊張した様子だ。
「皆さん、大丈夫ですか。」
「あっ、源三郎様だ、源三郎様、さっきの発砲音は。」
「あれですか、隧道で野盗の侵入を防いでおられる特撰隊ですよ。」
「え~じゃ~野盗は菊池に来たんですか。」
「いいえ、其れは無いですよ。」
「何で分かるんですか。」
「其れならば簡単ですよ、皆さんの協力で隧道に入っても菊池側に出る事が出来ず、其れに出口は野盗の死体で前には進め無いのです。」
「でも、何で其処まで分かるんですか、源三郎様は見られてたんですか。」
「いいえ、私は鉄砲の音で分かるんですよ、侵入したのならば今でも戦闘は続いておりますが、その音が聞こえないと言う事は隧道で足止めされて要ると考えれば間違いは有りませんよ。」
「ふ~ん、やっぱり何でも分かるんですねぇ~。」
「いいえ、でも菊池は別として野洲から山賀の山を野盗は何時越えて来るかも分かりませんのでね、皆さんはくれぐれも気を付けて下さいね。」
「オラは母ちゃんと会ったんですよ、オラは母ちゃんもだけど、此処の人達の為にも奴らは絶対に入れませんからね。」
「大変有り難いですが、何時襲って来るのかも分かりませんからね十分気を付けて下さいね。」
「まぁ~オレ達は此処に来るまで幕府軍と何度も戦ってますんで、其れにオレの母ちゃんを奴らに取られない様に絶対に入れませんから。」
「そうですよ、皆さんも奥さんを野盗に奪われると大変な事になりますからね。」
「オレ達は奴らが来るのが分かるんですよ。」
「えっ、何か秘策でも有るんですか。」
「まぁ~ねぇ~、其れよりもオレは野洲に残りたいんですがいいですか。」
「は~い勿論ですよ、私はねぇ~皆さんを大歓迎しますのでね、でも必ず生き残って下さいね、私は皆さんの弔いだけは嫌ですからね。」
其の時。
「カ~ン、ガチャガチャ。」
と鳴子の音が聞こえ。
「奴らが来たぞ、みんな配置に。」
歩兵は切り開いたところに鳴子を仕掛けていた。
兵士達は野洲のお城でやっとの事で再会を果たした妻の為にも此処で戦死する訳に行かないと、彼らだけで秘策を考え、其の第一弾が鳴子で有る。
「其れにしても何で数人づつ組むのだろうか、普通ならば一人一人が散らばるはずだ。」
これが第二の秘策なのか、野盗は鳴子の音で警戒しながら下りて来るが。
「バン、バン。」
と発射音がしたが野盗が倒れた様子も無い。
「行くぞ。」
と野盗が一斉に下りて来た。
「バン、バン、バン。」
野盗の人数は分からないが其れでも百人以上は確実に居る、源三郎は大木の影に隠れ見て要ると。
「よ~し、連続攻撃の開始だ。」
と合図と同時に兵士達は確実に野盗を倒して行く。
よ~く見ると、野盗一人に対し二発の弾丸が命中し野盗はその場で全く動かない、と言う事は一発で仕留めるのでは無く二発が命中すれば確実に殺せる。
そして四半時程の戦闘で二百人以上が切り開いたところで倒れて要る。
「よ~し、みんな射撃を中止してくれ、だが少しでも動けば撃ち殺すんだ。」
一人では確実に殺す事は出来ないとしても、二人が同時に撃つ事で野盗の殆どが死んで要る。
「バン。」
其れでも未だ生きておれば確実に殺されて行くこれが戦なのだ、だが一体何人の野盗が山を越えて来たのかも分からず大木の影に身を隠し此方の様子を伺って要る。
激しい戦闘が半時近く続き、百、いや二百人程の死体が散らばって要る。
「お~い、みんな大丈夫か。」
「お~い、誰か手を貸してくれ、十人が怪我だ。」
源三郎は何も考えず声の聞こえる方に走った。
「大丈夫ですか。」
「はい、大丈夫です。」
彼の足に矢が刺さっており、源三郎は肩を貸し負傷した兵士を抱え運んで来た。
「大丈夫ですか。」
「う~ん。」
其れはさっきの兵士だ。
「しっかりして下さいね、貴方は絶対に死んでは駄目ですよ私と約束したのですからね、貴方はこの野洲に残ると言われたのですかね。」
兵士は源三郎の呼び掛けに。
「大丈夫ですよ、こんな事ぐらいで死んでたまるもんですか。」
兵士は大怪我をして要るが命は助かる、其処に数十人の領民が駆け付け負傷した兵士達を連れ出して行く。
其の時。
「ぎゃ~、た、助けてくれ狼だ、狼だ、誰か。」
森の中から叫び声があちらこちらから聞こえて来た。
「わぁ~狼だ、た、助けてくれ。」
次々と森の中から出て来る。
「よ~し、皆殺しだ、一斉射撃開始。」
歩兵部隊の一斉射撃が開始され、身体には確実に命中し次々と倒れ、其れでも狼が恐ろしいのか反撃する事も無く倒れて行く。
その後半時が過ぎ森からは叫び声は聞こえず、辺り一面は死体で埋まり、その死体に狼の大群が群がり中には未だ生きて要るのか時々叫び声が聞こえる。
歩兵からは一人の戦死者も無く、怪我人だけで有る。
「皆さん、大丈夫ですか。」
「えっ、未だおられたんですか。」
「はい、私は何も出来ませんので、其れで先程怪我をされたお方を。」
「ねぇ~源三郎様って肝っ玉が据わってるのか、命知らずか、もう本当に無茶だよ鉄砲の弾が飛び交ってる中を行くんだからなぁ~。」
「そうでしたかねぇ~、私は何も考えておりませんのでね、其れに怪我をされた方が居られましたからねぇ~、私は其の方を助けに行っただけですよ。」
無茶で動いたのでは無く、怪我人の声が聞こえ咄嗟的に身体が動いたのだ。
「だけど一体何人居るんだ。」
「分からないよ、今は狼が夢中で食べて要るからなぁ~下手に行く事も出来ないよ。」
平地で戦死した者は未だ良い、森の中からは今も狼の大群の攻撃に晒され叫び声が遠くから聞こえ一体何人が狼の犠牲になって要るのかも分からない。
其れにしてもあれ程静かだった山に何時狼の大群が現れたのか、其れが分からない。
「よ~し半分は休みを、半分は警戒に入ってくれますか。」
野洲もだがどの戦闘地でも中隊長は軍人の言葉使いでは無く、領民の其れも平民の言葉使いで命令するのでは無く、だから兵士も命令されて要るんだと言う意識も無く納得し任務にと言うよりも、自分達の為に戦って要るので有る。
あれから半時経つが一人も出て来ない、狼も死体で満足したのか、今度は猪がやって来た、烏までもが死体に群がっており、辺り一面が死体で、其れに腕や足が散乱し猪や烏が肉の争奪戦を繰り広げて要る。
人間は欲望の為に殺し合うが生き物は違う、毎日が、いや何時も生死を掛けた戦いで、狼も猪も烏も生きる為に目の前に有る死体に群がって要る。
歩兵は緊張の連続だ、だが今は襲って来ない。
「皆さん、命だけは大切にして下さいね。」
源三郎は其れだけを言うと、上田へと向かった。
「バン、バン、バン。」
と、銃声が鳴り響いた。
「今の銃声は、上田、いや野洲だ、だが野盗に向けた発砲では無い。」
と、源三郎は独り言を言いながらも考えて要る。
「一体、何が起きたのだろうか、其れよりも上田へ。」
銃声は烏を狙った音で有ると、後で分かり上田に近付くと。
「バン、バン、バン。」
と、連発銃の発射音で、しかも広範囲で聞こえ、やがて上田の領内付近に来ると、銃声は連続で付近一帯から聞こえて来る。
「バン、バン、バン。」
と、連発銃の発射音が聞こえて来る。
「う~ん上田は激戦を繰り広げて要るのか。」
戦場からは次々と荷車に乗せられた負傷兵が運び出されて来る。
「これは大変だ。」
源三郎が思うのも無理は無い、上田には一千人以上の野盗が攻撃を仕掛けて要る。
だが上田を守る歩兵は余りにも少な過ぎる、何か方策はと必死で考えるが、例え方策が見付かったとしても上田の陥落は目に見えて要ると、それ程にも上田は危険な状態で有る。
「う~ん、何か有るはずだ。」
其の間にも負傷した兵士が運び出され、例え源三郎でも今の状況を好転させる事などは不可能で有る。
五人、十人と負傷兵が運ばれて行き、麓では尚も激戦が続いて要る。
上田の山からは続々と野盗が下り戦闘に加わって行き、何時城下に攻め込んでも不思議ではない。
「お~い、源三郎様。」
「えっ、何処だ。」
「源三郎様。」
菊池の歩兵部隊が応援に来たので有る。
「何故貴方方が。」
「中隊長が隧道だけだから応援に行けって。」
「本当ですか、今上田は陥落寸前で皆さんが来られこれで一安心です。」
「よ~し、オレ達の腕前を見せるんだ、オレ達は第一大隊でも最高の腕前を持った中隊でしてね、一町以上離れた所からでも的に命中させる事が出来るんですよ、よ~しみんな行くぞ。」
彼らは官軍時代でも最高の腕前を持った部隊で、今まで幕府軍に対しても一般の兵士では無理でも彼らは確実に倒せると言う。
駆け付けた中隊の兵士は麓よりも遥かに離れた所から狙いを定め撃ち始め、すると野盗の集団は大木を切り出した平地と言うのか身を隠すところも無いところでバタバタと倒れ、これが火付け役となり上田の歩兵も命中させて行く。
歩兵が撃つと死体が増えて行き、其れでも次々と現れ一体何人が越えて来たのかも分からないが死体が増えると仲間の死体を盾にし攻撃して来る。
だがあれ程優勢だった野盗に死者が増え次第に形勢が変わって来た、其れと共に上田の中隊からは負傷する兵士も出なくなり始めた頃。
「ぎゃ~、助けてくれ狼だ。」
「助けてくれ、狼の大群だ。」
やはりだ狼の大群だ、だが何故今頃になって来たんだ、もっと早く来れば上田の歩兵は、狼の援軍が遅いと狼に不満でも言ったのだろうか、上田の山に登って来た数は分からないが、数百、いや千頭以上の狼に襲われ逃げ惑い山を下りると今度は歩兵から狙い撃ちに、だが山に留まる事は狼の攻撃に会い逃げる場も無く仕方無く当たり構わず撃つが全く命中する事も無く五十人、百人と狼に襲われ、其れはこの世の地獄の様にも見える。
野盗は歩兵よりも狼に対する反撃と言うのか防衛と言うのか、果たして何時まで続くのだろうか、戦闘が開始され半時が、いや一時以上が過ぎ次第に叫び声が減って来た。
「よ~しみんな今の内に怪我人を頼む、他の者は弾薬の補充だ。」
其の間でも時々山の中腹から叫び声が聞こえて来る。
「まだまだ安心は出来ませんので、其れと狼の動きを見てて下さいね。」
「中隊長、大変でしたが、如何ですか。」
「怪我人が続出し、今の我々だけでは応戦出来ませんでしたので非常に助かりました。」
「彼らは菊池から応援に駆け付けてくれました。」
「皆さん有難う、でも菊池は大丈夫ですか。」
「出口は死体で埋め尽くされ向こう側から入る事が出来ませんので野洲か上田へ応援に行って下さいと。」
「野洲は大丈夫ですか。」
「野洲からも怪我人は出ておりますが、拡張した農地に死体が出始めた頃に狼の大群が襲い掛かり、此処と同じで狼の餌食になっております。」
「でも今回は狼の動きが違う様に思うんですが、さすがの狼でも野盗があんまりも大勢で登って来たんで驚いたんですかねぇ~。」
「私も良くは分かりませんが、其れにしても狼の応援で助かったのは事実だと思います。」
「え~源三郎様は狼が我々の仲間だとでも申されるのですか。」
「いいえ、正かですが野盗から見れば、我々には狼が見方だと思うでしょうからねぇ~。」
連合国には狼の大群が見方に就いており、狼は何時も山に登って来る者を見張って要るんだと、官軍や幕府軍が、いや残党の野盗達に知る事になるだろうが正か狼が連合国の見方だとは思ってはいない。
「でも一体何人が集結し我々の連合国と襲う事を企てたのでしょうか。」
「私も分かりませんが、何としても企てを阻止しなければなりません。
其れで貴方方の半数を松川へ行って頂きたいのですが、宜しいでしょうか。」
「もう上田は多分大丈夫だと思いますので、今から半分は松川に向かいます。」
「皆さん、申し訳有りませんが宜しくお願いします。
私は上田の城に行き弾薬を持ち松川に向かいますので。」
「オレ達に任せて下さいよ、みんな其れでいいか。」
「我々の半分が松川に行く様に言われたが協力してくるか。」
「よ~し、オレ達の分隊が行くぜ。」
「じゃ~オレの分隊もだ、みんなも頼むぜ。」
「お~、オレ達に任せろって。」
其れは実に簡単に決まり、上田を離れ松川へと向かった。
其の頃、松川では未だ静かで、何時攻撃が始まるのか兵士達は大木の陰に身を隠し待って要る。
「なぁ~何時奴らが来るんだ。」
「そんな事オレが知るか、オレの方が知りたいんだ。」
「其れにしても静かだなぁ~。」
「そうだよ、余計に気味が悪いよ。」
「そうだなぁ~、だけど他はどうなってるんだろうか。」
「其れも全然分からないんだ、其れに狼の動きも分からないからなぁ~、奴らも山に登って来てると思うんだけど、今頃は狼に襲われても不思議じゃないと思うんだ。」
「オレも同じ事を考えてたんだ、何で狼が出て来ないんだ、狼の大群が襲ってくれたらオレも助かるんだけどなぁ~。」
松川の歩兵も何故狼が野盗を襲って来ないんだと考えて要る。
だが其れは突然起きた。
「バン。」
と、一発の銃声が鳴り響き、其れは一人が謝って引き金を引き仲間が倒れ、大量に出血して要る。
其の時。
「ぎゃ~、狼だ、狼が、わぁ~。」
一人が襲われ、其れからは狼の大群が襲い始めた。
「逃げろ、早く逃げるんだ。」
もうそなると大混乱を始め、山を下り始めた。
「お~い野盗だ、奴らが来たぞ。」
「みんな未だだ、広い所に来たら一斉射撃だ。」
歩兵部隊は切り開いたところに出て来るのを待って要る。
「よ~し、一斉射撃だ、皆殺しにするんだ、撃て、撃てって撃ち捲くれ。」
「バン、バン、バン。」
歩兵部隊が一斉射撃に入ると次々と倒れて行く。
「おい、なんだか変だぞ、奴ら何かに追われて要る様だぞ。」
「あっ、狼だ、きっと狼だ、じゃ~さっきの銃声は。」
「そんな事よりも目の前の奴らをやっつけるんだ、一人も生きて入らせるなよ。」
「奴らは皆殺しだ。」
歩兵部隊は山を下りて来る、いや逃げて来る野盗に狙いを定め次々と撃って行く。
百、二百、いや五百は居るだろうか、目の前は死体で山の様に折り重なっており、其れでも山からは必死で下って来る。
その後から今度は狼の大群が襲って来る。
「わぁ~やっぱり狼だ、狼の大群が奴らを襲ってるんだ。」
「みんな注意するんだぞ、山から狼の大群が襲ってる、だけど何時我々の方に向かって来るかも分からないんだ、今は狼に注意するんだぞ。」
歩兵は狼の動きに全ての神経を集中させなければならず、皆が音も立てず狼だけを見て要る。
その後も山から下って来るが狼の追撃に逃げ場を失い広い空き地に逃れるが、其れが返って狼に取っては好都合となり狼は次々と襲い死体の山が出来て要る。
其の時、丁度、源三郎達が駆け付けた。
「えっ、狼の大群が野盗を。」
「あっ、源三郎様だ、今オレ達も動けないんですよ、狼が山から野盗を追い出し襲ってますんで、オレ達も奴らよりも今は狼の動きを見てるんです。」
「源三郎様、さっきの銃声が鳴ってから狼が野盗を襲いだしたんです。」
「ではさっきの銃声が。」
「そうなんです、オレ達は未だ一発も撃って無いんですよ。」
源三郎は高い山の向こう側を知らない、向こう側でも山の麓から背丈以上も有る熊笹が群生し、熊笹は密集し、今まで狼に襲われた者達の殆どが熊笹で切り、切り口から出血し狼は血の臭いで集まって来た。
だが今度の野盗は鉈で熊笹を切り倒しながら登って来ており、野盗は傷付く事も無く山を越えて来た。
「若しかですが、若しかして野盗の一人が謝って引き金を引き仲間に命中し出血したのでは有りませんかねぇ~、其れで狼は血の臭いを嗅ぎ付け襲った考えられませんか、野洲でも何人も撃たれ出血してから狼の大群が襲った様に思えるのです。」
「そう言えば上田でも我々が撃ってからでしたよ狼に襲われたのは。」
「ですが何も確証は有りませんので断言は出来ませんが、この山に生息して要る狼は血の臭いで襲って来るのかも知れませんねぇ~。」
菊池から駆け付けた兵士達も同じ様に感じて要る。
「皆さんは怪我は無かったのですか。」
「今も言いましたがオレ達は未だ一発も撃って無いんですよ、でも物凄い死体の数で一体何人が山を越えて来たのかも分からないんですよ。」
「では皆さん気を付けて下さいね、私は松川の城に参りますので。」
其れだけを言って松川の城へと向かい、兵士達は目の前で繰り広げられている狼が野盗を襲い食べて要る様子を大木の陰から見て要る。
一方、山賀では其れよりも恐ろしい事態が起きようとして要る。
「小川大尉、兵の配置ですが、どの様になって要るんですか。」
「各小隊は待機小屋で監視任務に就かせております。」
「其れと猿軍団からの合図ですが。」
「今のところまだですが、軍団から半時程前の情報では大よそ千五百で半数が連発銃、半分が火縄銃と弓隊だと聞いております。」
「何だと千五百の半分が連発銃だと。」
「はい、ですがどの様に登って来るのか、其れが分からず其れで待機小屋で。」
「まぁ~其れは仕方無いでしょう、では部隊の配置は。」
「余り大勢が登りますと狼の攻撃を受ける事も有り得ますので、今は途中で待機して頂きたいのです。」
「そうか、其れで一番登って来る可能性が有るのは何処なんだ。」
「我々の、いや猿軍団に言い方で一番と言っておりますが、其の一番が女性達も登って来られました所で熊笹も少なく勾配は同じですが比較的登りやすいと考えられます。」
「では其処には。」
「今は特撰隊を配置しております。」
小川も猿軍団が言うところの一番に特撰隊を配置し、残りの一番小屋には二個小隊を、二番から五番小屋には各一個小隊を配置して要るが一向に登って来る気配も無く、どうやら他から攻めた野盗の情報が入ったのだろうか、其の後、半時程が過ぎた頃。
「キャ、キャ。」
と、猿軍団からの合図で。
「あれは登り始めたと言う合図だ、二時は掛かるなぁ~。」
「大尉、何故分かるんだ。」
「キャキャと二度鳴いたと言う事で二時ぐらいで登ると言う合図です。」
猿軍団の鳴き声で決めていた。
「其れで伝令は。」
「伝令は必要有りません、全員が知っておりますので。」
一方、お城の空掘りに有る鍛冶屋では。
「なぁ~鍛冶屋さん、何時頃出来上がるんですか。」
「後少しで完成しますから一人が二個持って下さいと、火縄も十本くらいは要ると思いますので。」
「分かりました、仲間から足の速い者を選びますから、其れで次も直ぐ出来ますか。」
「朝から溶けた鉄を流し込んでいますんで、五十個ですが。」
「お~い手の空いてる者は火薬を詰めてくれ。」
空掘りの鍛冶屋は百個の一合手投げ弾を作り始めたが、何しろ急な事で鍛冶屋も必死だ。
「大尉、狼が出現しないが何故だろうか。」
「私も先程から考えて要るのですが、全く分からないのです。」
山賀でも狼の動きが読めないと。
「他でも同じだろうか、何故か今日に限って狼が動かないのでしょうか、千五百もの来ると言うのに。」
小川も不思議で仕方が無いと、だが狼は密かに活動を開始した。
兵士達は野盗の動きだけを見ており、狼の動きまでは知る事は出来ない。
「キャ、キャ、キャ。」
突然猿の鳴き声だ。
「突然の鳴き声だ、一体何が起きたんだ。」
小川は不審に思った、猿軍団は最初二時は掛かると予想したが、猿が予想した刻限よりも半時以上早く登って来た。
「あっ、一町程先で熊笹が。」
其れは一番では無く五番の監視小屋で。
「みんな攻撃の用意だ。」
第五小隊も予想外だった。
「未だだ、まだまだ、よし今だ一斉に撃て。」
「バン、バン、バン。」
と連続で発射された。
「えっ、今のは何番だ。」
余りにも遠くの発砲音で四番か五番かも分からない。
「大尉、上がって来ます。」
其れは特撰隊が待つ一番で。
「よ~し、全員用意だ。」
特撰隊の銃口は登って来る野盗に狙いを定めて要る。
「よ~し、一斉射撃開始だ。」
「バン、バン、バン。」
と、特撰隊の一斉射撃が開始され、続いて二番からも攻撃が開始され、三番、四番と続き、当然反撃も開始され、山賀の山では連発銃の発射音で何も聞こえない状態となった。
「装填。」
「よし。」
特撰隊もだが中隊の兵士達は二人で一組と言う方法を取り、一人は必ず発射、其の間に装填する、その方法ならば絶えず連発銃からは弾丸が発射され次々と倒れて行く。
其れでも怯む事も無く登りながら連発銃を撃ち、中隊の兵士も数十人が倒れ、小隊の兵士は半数近くとなり形勢は不利となって来た。
「大尉殿、中隊長がやられました、其れと第五小隊の小隊長もです。」
「何、中隊長がやられただと。」
「大尉、この間々だと中隊は全滅する、体制を立て直す、直ぐ下山するんだ。」
「はい、伝令、中隊は直ぐ下山せよ、下山するんだ、負傷兵は連れて行け。」
「隊長、中隊長は。」
「仕方無い小屋に入れ扉を閉め、岩を置き開かない様にするんだ。」
「うっ。」
「小川、大丈夫か。」
「私は大丈夫です。」
小川も負傷した。
「特撰隊は直ぐに下山せよ、直ぐ下山するんだ。」
だが特撰隊からも十名程が戦死した。
「戦死した者は小屋に入れ、閉めて岩を置くんだ。」
吉田も必死で指示を出す。
「伝令だ、我々は下山する、応戦態勢を作れ。」
伝令は弾丸が飛び交う中を下山して行く。
「全員下山するんだ。」
吉田も応戦しながら最後から行き、野盗は遂に頂上に着き、勢いが付いたのか下山する兵士達に向かって撃ち、歩兵も振り向き撃つが、野盗は狙い撃ちの状態で五人、十人と倒れ、だが未だ生きて要る
「おい、大丈夫か。」
「うん、大丈夫だ。」
「よし、オレの肩に捕まれ。」
肩を貸す兵士、二人で仲間を助け下がる兵士、其れでも兵士は次々と倒れて行く。
「お~い、早く、早く来るんだ。」
一時以上掛かりやっと麓近くまで辿り着いた。
「全員で一斉射撃だ。」
「バン、バン、バン。」
と横一列に並んだ兵士から一斉射撃が開始され、大木を切り倒した空き地に突撃して来る野盗は次々と倒れ大木の陰に隠れ応戦し始めた。
「お~い、吉田さんは何処だ。」
「私は此処に。」
正太達数人が必死で運んで来た物は吉田も初めて見る物だ。
「正太さん、これは何ですか。」
「鍛冶屋さんが作った一合手投げ弾で、導火線に火を点け敵に向かって投げて下さい。」
「分かりました、火縄は。」
「お~い、火縄だ。」
吉田も初めてだが、正太もどれだけの威力が有るのかも分からない。
「吉田さん、火を点けますので直ぐに投げて下さい。」
「分かりました、では火を点けて下さい。」
正太は吉田の持つ手投げ弾の導火線に火を点け、野盗に向け投げると、隠れた大木の傍に落ち。
「ドッカン。」
大音響を轟かせ、其れと同時に数人が吹き飛び、肉片が飛び散った。
「何だ、今のは大砲か。」
野盗もだが、迎え撃つ態勢の兵士達も何処から大砲を撃ったのだと後方を見るが、大砲など何処にも無い。
「正太さん、恐ろしい武器ですねぇ~。」
「オレも初めてでこんなに恐ろしいと思って無かったんです。」
「其れで何個有るんですか。」
「今五十個持って来ました。」
「よ~し、手投げ弾をあの大木に集中して投げるんだ。」
数人の兵士が持つ手投げ弾の導火線に火を点け。
「これでもくらえ。」
火の点いた手投げ弾を次々と大木付近に投げつけ、落ちた瞬間次々と爆発し、大木に隠れた野盗は次々と吹き飛ばされ、中には肉片となる者、片腕が飛び、頭だけが飛ぶ、正しく大砲以上に恐ろしい武器だ。
一個の手投げ弾で五人も六人も吹き飛ばされて行く、どうやら後ろへと下がったのか、手投げ弾十個で何人が吹き飛ばされたのか分かず、その後、反撃も無く、膠着状態が続き、野盗が一発撃つと歩兵からは数十発も集中攻撃で反撃は次第に収まり、時には半時以上も撃ち合いも無い。
「みんなおもすびよ。」
「貴女方危ないですよ。」
吉田が慌てて止めたが何と無謀な事をするんだ。
「隊長さん、何処からも鉄砲の弾は飛んで来ませんよ。」
「ねぇ~隊長さんも今の内に食べて下さいよ。」
「有難う、お母さん達がおむすびを届けて下さったよ、みんなにも配って下さい。」
兵士達は届けられたおむすびを配って行く。
「あ~おむすびがこんなにも美味しい食べ物とは思わなかったよ。」
「オレもだ、今まではなぁ~んだ又かと思ったけど、これは本当に有り難いよ。」
兵士達は美味しい、いやこの世で一番旨い食べ物だと言いながら食べて要る。
「兵隊さん、大丈夫か。」
「うん、大丈夫ですよ、う~ん。」
「痛い、痛い、誰か助けてくれ。」
「お~い、早く新しい布を。」
山賀の城下にはもう百人以上の兵士が運ばれ、兵士も痛みを我慢する者、叫ぶ者、城下の女達も男達も傷口を押さえ飛び散る血を浴びて要る。
医者は鉄砲の弾を取り出し、女達が、男達が傷口に新しい布で押さえて要る。
「何でもいいから針と糸を持って来てくれ。」
「先生、何をするんだ、針と糸で。」
「傷口を縫い合わせるんだ。」
「え~、そんなぁ~。」
「縫わないと傷口から血が止まらないんだ、早く持って来い。」
女性は強い、男達は痛みで暴れる兵士を押さえ、女達は針と糸で縫い合わせると、傷口から出血は止まり女達は口に含んだお酒を傷口に吹き掛け。
「これでいいわよ。」
やはりこの世で一番強いのは女性なのか、男達も最初は大量の血が噴き出るのを見て慌てていたが、次々と運ばれて来る兵士を見ても次第に慣れて来たのだろう。
城下のお寺にも負傷兵が収容され兵士達は唸り声を上げる者、少しは痛みも和らいで来たのか、眠って要る兵士も要る。
旅籠でも同じ状態で治療が終わった兵士達が部屋に運ばれ、其れでも唸り声を上げて要る。
「さぁ~お粥だよ、ゆっくりとね。」
女性達は優しく接してくれ兵士達もやっと安心したのか頷き一口一口とゆっくりと口に運んでいる。。
「大尉、大丈夫なのか。」
「はい、こんな傷、蚊に刺された傷ですよ、う~ん。」
「なぁ~んだ、ほ~大きな蚊に刺されたなぁ~、これは痛いだろうなぁ~。」
「はい、少し痛いですよ。」
「誰か、小川大尉が大きな蚊に刺されたんだ。」
「えっ、大きな蚊に刺されたって、う~んこれは大変だ、隊長が大きな蚊に刺されたんだ、早く連れて行ってくれ。」
「少佐殿、自分は大丈夫です。」
「何を言ってるんだ、お前は大きな蚊に刺されて痛いんだろう、早く運び出せ。」
兵士も笑うに笑えない、小川の腕には矢が刺さって要る。
「さぁ~さぁ~大尉、此処はオレ達に任せて。」
「小川、邪魔だ、早く行け、早く行くんだ邪魔だ、邪魔なんだから。」
吉田は小川は責任感の強い男で以前も腕に矢が刺さったまま片手で連発銃を撃ったのを知って要る。
「吉田さん。」
「正太さん。」
「吉田さん、次の五十個を持って来ましたよ。」
「正太さん有難う、危険ですから下がって下さい。」
「吉田さん、オレ達も連合国の一人だ、今度はオレ達が投げるから、吉田さんは何処に投げればいいのか言って欲しいんですよ。」
「正太さん、今野盗も成りを潜めてますよ。」
「だったら引きずり出せばいいんですよ。」
「引きずり出すんですか。」
「そうですよ、オレ達の連合国を攻撃したらどうなるか野郎達に見せるんですよ。」
正太は正規軍よりも、野盗は許す事は出来ないのだと。
「吉田さん、オレは官軍や幕府軍のどちらも許せないんだ、だけど野盗が一番許せないんだ、どんな事が有っても全員を殺してやるんだ。」
「正太さん、分かりましたよ、じゃ~立ち木の間を其れも上の方へ投げれますか。」
「よ~し、じゃ~火を点けて下さい。」
吉田は遠くへ投げろと言った、だがそんな遠くまで果たして投げる事が出来るのか、導火線に火を点けた。
「さぁ~行くぞ、野郎ども死んでしまえ。」
と、正太は力一杯吉田の言う方へ投げた。
すると隠れて要る後方で。
「ドッカン。」
大音響と共に大爆発した。
「わぁ~。」
と十数人飛び出した。
「撃て。」
歩兵の連発銃が火を噴き、次々と倒れた。
「正太さん、大成功ですよ。」
「よ~し、今度は別の所だ。」
正太は導火線に火を点けられると、別の方向へ投げた。
「ドッカン。」
又も大爆発し逃げる様に立ち木から出ると。
「バン、バン、バン。」
と、連発銃が火を噴き倒れて行く、だがその後ろではもっと恐ろしい事が起きた。
「ぎゃ~。」
「わぁ~狼だ、助けてくれ。」
やはり狼はいた、その後、一人の叫び声で他の野盗は立ち木に隠れて居たが仲間の叫び声に大慌てで数十人が逃げる様に出て来た。
「よ~し、今だ一斉射撃開始。」
歩兵が一斉に連発銃の引き金を引いた。
「バン、バン、バン。」
と、連発銃が火を噴き、次々と倒れて行く。
狼の大群が追い出して行く様にも見え、百人、二百人と一体何人要るんだ、其れよりも狼の大群に大混乱を起こし何も考える事無く、ただ狼から逃げる事だけで必死で、もうその様になると制御も効かず山から逃げる、だが其処には連合軍が待ち構え狙い撃ちし弾丸は確実に命中し、有る者は頭から、有る者は胸から、其れは身体の何処を狙って要るのかも分からない様にも見えバタバタと倒れて行く。
戦では無く虐殺にも等しい、だが見方に依れば狼に噛み殺されるよりも良いかと思える。
「なぁ~吉田さん、野盗ですけど一体何人居るんですか。」
「私も分からないんですよ、正太さんと同じで一人も連合国には入れないですからね。」
狼が野盗を襲い始めて半時程が過ぎ、もう下りて来ない、だが死体には数千頭もの狼が食らい付き、其れは凄惨な状態で付近には早くも烏の群れが集まり、狼が去るのを待って要る。
そして、森の奥からは猪の大群も来た。
「正太さん、私は今までこんなにも凄惨な戦は見た事は無いですよ。」
「オレも狼がこんなにも恐ろしいとは思って無かったんですよ。」
兵士達も目の前で繰り広げられている世にも恐ろしい光景を見て、今はどの様に感じて要るのだろう。
あの時、下手をすれば、あの時、少しでも隧道に入るのを躊躇っていたならば、数千のいや数万頭も要るだろうか、狼の群れに襲われ、身体は喰いちぎられ、最後には烏に目の玉までも食われ無残な姿になって居たはずだと。
「なぁ~、オレはもうどんな事が有っても連合国の外には出ないからなぁ~。」
「オレもだよ、あの時も狼は要ると思ったけど、正かこんな大群が要るとは思わなかったんだ、オレはどんなに辛い事や苦しい事が有っても絶対に出ないからなぁ~。」
「オレ達はやっぱりあの時、源三郎様に命を助けられたんだ、オレは連合国の人達に少しでも恩を返す様にするよ。」
「オレもだ、其れにしても狼ってこんなにも恐ろしいのか。」
「お前は狼を知らないのか。」
「オレは話しには聴いてけど、世の中で一番恐ろしいのは狼だって、オレは今其の話しを信じるよ、オレはもう二度と、いや絶対に狼の姿だけは見たくないんだ。」
「お前は狼の姿を見た時にはもう遅いんだぜ、狼は音も立てずに近付くんだからなぁ~。」
「もう止めてくれよ、オレは狼に見付からない様に連合国からは出たく無いんだから。」
山賀に来た兵士達は吉田と一緒に山に登って来たが、あの時、源三郎からこの山には数万頭もの狼がおり、狼の餌食になりたく無ければ急げ、生き延びたいので有れば必死で山を下りなければ狼の攻撃を受け、噛み殺されとる、だが其の時でも誰もが狼の姿は見ていない。
今初めて狼の大群を見た、狼の大群は野盗を食べ、後ろには猪の大群も、最後には烏も数万羽が待って要る。
其れだけの数になると野盗の姿は骨と着物だけになり、一体誰なのかも判別出来ない。
だが犠牲者は野盗だけでは無い、頂上近くの小屋には戦死した仲間を残しており、今は仲間を連れ戻す事も出来ない。
部隊からも何人もの負傷者が居る。
「皆さん、私は城下に行き怪我をされた人達を見て来ますので、狼は恐ろしいですが、今は野盗を食べ終わるまでは何も起こらないと思います。
ですが、若しも、若しも狼が襲って来る様で有れば仲間と我が身を守る為に狼を撃ち殺して下さい。」
吉田はそう言い残し城下へと向かった。
一方、城下でも大混乱して要る。
其れは今まで経験した事が無い戦で多くの傷付いた兵士が運ばれ、医者も経験した事が無く、男は血だらけの兵士を運び、男達も女達の着物も血がべっとりと付き、其れは誰の血なのかも分からない程で、子供達はお寺の境内で即席の釜戸でお湯を作り、城下の道端でも子供達が中心となってお湯を作って要る。
城下の店と言う店には負傷者で溢れており、城下の領民は戦の恐ろしさを初めて体験したので有る。
「皆さん、有難うご苦労様です。」
吉田は領民の一人一人に声を掛け礼を言う、旅籠に入ると負傷者は呻き声を上げて要る。
「大丈夫ですか。」
兵士は頷くだけで精一杯なのだ。
「少佐殿。」
小川だ。
「大尉、大丈夫か。」
「其れでどうなりました。」
「其れがなぁ~、鍛冶屋さんが恐ろしい武器を作ってくれたんだ。」
「恐ろしい武器ですか、其れは何ですか。」
「其れがなぁ~、一合手投げ弾と言って、導火線に火を点け敵に向かって投げると大爆発し、四人も、いや五人も六人も吹き飛ばされ、まぁ~小型の大砲だが、人間が持ち運びが出来大砲以上に恐ろしい武器だ。」
「では野盗は其の手投げ弾で。」
「やはり狼の大群が、まぁ~数千頭はいたかなぁ~、狼の大群から逃げたんだが最後は連発銃の餌食だ。」
「では終わったのですか。」
「其れが未だ分からないんだ、其れに狼の大群で目が離せないんだ。」
「そうですか、やはり狼の大群ですか。」
小川にすれば何故もっと早く来ないんだ、早く来れば中隊長も戦死する事も無かったと考えるが、これが戦だ、戦になれば誰かが戦死し、誰かが負傷する、戦死者も無いと言う戦は無く其れが戦だ。
今回の戦の相手、いや敵は野盗で、半数は幕府の残党で、だが全てが侍では無い、戦の経験も無い村や城下を焼き払われた農民や町民達で、だが彼らは野盗となり何の罪も無い女や子供までも平然と殺して行く。
野盗が襲って来るならば反撃し全員を殺せ、そうで無ければ他の野盗も知る事にもなる。
今度の野盗も一人残らず殺さなければならない、其れが源三郎の指示で有る。
「如何されたのですか。」
源三郎が来るとは思って無かった。
「いゃ~私も何か出来ないかと思い、菊池から此処まで来たのですが、何れの所でも狼の大群が野盗を襲ったんですが、何故か狼の出方が遅いので、若殿ならば何か知っておられやもと思いましたので。」
「えっ、狼の出現が遅いのですか。」
若殿は腕組みし考えるが分からないと、其れでも暫くすると。
「私と松之介とで以前山に行った事が有りまして、でも二人共まだ子供であの熊笹で前が全く見えず、其れで改めて日を変え、今度は鉈を持って行き、私と松之介で切り開きながら登った事が有るのですが、でも帰った時姉上から大目玉を食らったんです。」
竹之進も松之介も山には狼の大群が生息して要る事を知らなかった。
「えっ、若殿が若様と二人で、正か二人切りで行かれたのでは無かったのでは。」
「其れが二人切りでして、でも其の時には一頭も狼の姿は見ていないのです。」
やはり何かが狼の出現を遅らせたのは間違いは無い。
「若しかすれば、熊笹を鉈で切り開いのが狼の出現を遅らせたのでは。」
「私も姉上に怒られてからは二度と山に入った事は無いのです。」
「若殿は狼よりも雪乃殿の方が恐ろしいのですね。」
「其の様な事を申され姉上に知られれば私は殺されますので、どうかこの通りです。」
若殿は頭を下げた。
「私も松之介もこの世で一番恐ろしいのは姉上ですから。」
傍の家臣達は下手に笑えないと言う顔をして要る。
「実はねぇ~、私も雪乃殿が一番恐ろしいのですよ、ですが言わないで下さいね。」
源三郎はわざと身震いし、若殿も大笑いして要る。
「では野盗は鉈か何かで熊笹を切り開いたのでしょうか。」
「まぁ~今は確かめる事は出来ませんが、其れならば納得できるのです。
今まで登って来た者達は熊笹を掻き分けて登って来ましたので狼が直ぐ近付きましたが、今度の野盗は我々の攻撃を受け、負傷者か戦死者が出るまで一頭も現れなかったのも事実でして、其れが原因ならば話しも分かります。」
「義兄上の申されます事が本当だと思います。」
「ならば山賀も同じですねぇ~。」
「若様は知っておられるのでしょうか。」
「いいえ、多分知らないと思います。」
「若殿、馬の交換を直ぐに、私は直ぐに山賀に向かいますので。」
源三郎は其れだけを言うと、馬を乗り換え山賀へと馬を飛ばした。
源三郎は未だ知らないが、連合国を攻撃した野盗は山賀の人数が最も多く、其れよりも山賀に向かった歩兵もあの中隊長も大打撃を受け、中隊長と小隊長が戦死し、中隊からは戦死者が続出した。
源三郎が山賀に着いたのは戦が終わりに近く、城には行かず、城下へと向かった。
「えっ、一体何が有ったんだ、城下が。」
源三郎が見たものは城下を歩く男も女も着物が血で染まり、気が抜けた様な表情をして要る。
「皆さん、如何されたんですか、お着物が血だらけですよ。」
「あ~源三郎様、もう大変だったんですから。」
源三郎はこの後、山賀で起きた凄惨な光景を聞かされ。
「えっ、何故だ。」
源三郎は絶句した、何時もの源三郎では無く、何も言えない、何も聞けない、山賀は一体どうなるんだ。
麓の状況は兵士達は、果たして戦場となった麓まで行けるのか、気持ちだけが焦り、何も出来ない。
「源三郎様、今と言うよりは数日は行かない方が。」
「そんなにも凄惨な状況なのですか。」
「オレ達は麓までしか行って無いんで分からないんですが。」
「オレ達も戦って知らないんですが、戦だけはもう二度とやって欲しく無いんです。」
領民が言うのが本音だろう、だが時には戦を避けて通る事も出来ない状況も有る。
「私も戦を好んではおりませんが、時には避けて通れない事も有りますのでね。」
数日後、麓の現状を見て、これでは当分の間は野盗も官軍も連合国へは攻めて来る事は無いだろうと、源三郎は思うので有る。