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闇の帝国    作者: 大和 武
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第 18 話。 奇跡が起きたのか、いや正しく奇跡だ。

 綾乃達が山賀のお城で待つ事数十日が経ち、やがて三百名の女性全員が到着した。

 最初に着いた女性達の一部は山賀の空掘りで賄いの仕事に就く者、農村に入り農作業に就く者と分かれ、工事現場で賄いの仕事に就く者、其れでも女性達は今は生き残って要るのだと実感し楽しく毎日を過ごして要る。


 山賀ではあの一件から警戒は強化され小川も山に入り兵士達と共に監視任務に就いて要る。

 源三郎は百合姫を山賀から野洲に移らせ教育する事を考えて要る。


「百合様、我々の連合国ではねぇ~、武士やその家族もですが、其れよりも農民さんや漁師さん達を一番大切にして要るのです。」


「何故で御座いますか、領民も家中の者達全員が藩主の為にお役目に就いて要ると思うのです。」


「ではお聞きしますが、百合様や殿様、其れにご家中の方々は何を食べておられるのでしょうか。」


「勿論、お米や野菜に魚で御座いますが。」


「では、野菜は誰が育てて要ると思いますか。」


「勿論、農民ですよ。」


「では農作業は出来ますか。」


「私が何故其の様な農作業をしなければならないのですか、私は出来ませぬ。」


「そうですか、では何が出来るのですか。」


「えっ、何故で御座いますか、何故、私が仕事をしなければならないのです。」


「そうですか、では百合様は何も食する事は出来ませぬ、我々の連合国では働かざる者食うべからずと申しまして、連合国の住民は幼い子供から大人まで働いており、働く者だけが食べる事が出来るのです。」


「其の様な事を一体どなたが決められたのですか。」


「誰と言う事は有りませんよ、まぁ~自然となったのです。

 子供には子供の出来る仕事が有りましてね、其れと同じで大人には大人の出来る仕事が有るのです。

 百合様も何が出来るのかよ~く考えて仕事に就いて下さいね。」


「ですが、私は何が出来るのも分からないのです。」


「そうですか、ではお聞きしますが読み書きは。」


「其れならば、私も幼い頃より教えを受けておりましたので。」


「私はねぇ~何も難しい事は申しておりませんよ、百合様には何が出来るのか、其れをよ~く考えて頂ければ宜しいのです。

 連合国では武家の言葉使いは駄目ですよ、ましてや姫様が使う言葉使いは決して使ってはなりません.

これはどなたにでも同じ様に申しておりますのでね注意して下さい。」


 百合は先日まで姫様だと、だが連合国では殿様も無いと、源三郎は百合に対しあえて厳しく言った。


 一方で後藤達は菊池の測量も半分終わり、大工と五千名の新連合国軍は柵作りと田畑の拡張工事に従事する者達の為に住居と食事の為の大きな食堂の建設に掛かっており、現場で働く官軍兵と言うよりも元農民達や職人達は連合国に着て初めて平和な日々を送れる事に喜びを噛み締めて要る。


 其の中でも特に農民達は拡張された農地を耕すのが楽しみで作物が収穫出来る日を夢を描いて要る。


「う~ん、オラは何を作ろうかなぁ~。」


「オラもだ、でも野菜を作りたいんだ。」


「じゃ~オラはお米かなぁ~。」


「オラは農村の人に聴いたんだけど、山の向こう側から来た人達は此処では別の種籾が要るって。」


「えっ、じゃ~今までの種籾は使え無いのか。」


「オラも詳しい事は知らないんだ、だけど菊池から松川までは毎年不作で源三郎様は何としてもお米が多く出来ないかって考えられてたそうなんだ。」


「其れだったらオラも聞いたよ、山賀の国だけが毎年豊作で獲れたお米と麦を他の国へ配ってるって。」


「だから源三郎様は農地を広くしようと考えられたのか。」


「だけど本当に出来るのかなぁ~。」


「今頃何言ってるんだ、公平、オラ達は源三郎様に命を助けて頂いたんだぞ、公平も言ってたじゃないか戦は大嫌いだって、農民だから畑を耕す方が好きだって。」


「其れは今も同じだ、だけどオラは此処の土地で作物は育つのかなぁ~って思ってるんだ。」


「絶対に作って源三郎様に食べて貰うんだ、これはオラが作った野菜ですってなっ。」


「そうだなぁ~、オラも頑張るよ、其れで出来たら源三郎様に食べて下さいって。」


 やはり彼らは農民だ、源三郎は拡張した農地は五千人の新連合国軍兵に田や畑を作って欲しいと、其れが彼らの励みとなって要る。


「菊池の測量も残り半分くらいになりましたよ。」


「へぇ~もうそんなに行ったんですか。」


「吉三組の皆さんが協力して頂けましたので、私が最初に考えてた以上に早く進みましたよ。」


「でもオラ達はそんなにも行ってるって思って無かったんで、仲間もこの頃少し要領が分かって来たって言ってましたから、これからはもっと早く出来ると思うんです。」


「でもねぇ~皆さんも相当疲れて要ると思うんですが大丈夫でしょうかねぇ~。」


「オラ達は農民だから仕事が続いても大丈夫なんですよ。」


「ですがねぇ~余り無理をしても良くは有りませんのでね。」


「はい、でも休んだら何もする事が無いんで。」


「私も含め、皆さん達も菊池の測量が終わったら少し休みにしませんかねぇ~。」


「でもオラ達よりも柵や池を造ってる人達はどうなんですかねぇ~、オラも早く畑を耕したいんですよ、其れはあの人達も同じだと思うんです。

 農民だから田や畑を耕して要ると安心出来るんですよ、其れに少しでも出来たら嬉しいですから。」


「そうですか、分かりました、ではまた始めるとしましょうかねぇ~。」


 吉三達がこの数十日間休みも取らず働いて要るのが心配だったが、やはり農民だから一日もで早く作物を育てたいのだと、その後も菊池の測量は続けられて行く。


「鍛冶のあんちゃん。」


「お~これは珍しいなぁ~一体どうしたんだ。」


 げんたは久し振りに鍛冶屋の作業場へと来た。


「なぁ~あんちゃん、相談が有るんだけど。」


「えっ、相談って、技師長の相談は恐ろしいからなぁ~。」


 げんたも鍛冶屋の冗談だと分かって要るが。


「なんでだよ、オレは未だ何も言ってないんだぜ。」


「冗談、冗談だから、そんな怖い顔で、で其れよりもその相談って一体何を考えてるんだ。」


「前からなんだけど五合弾を考えた時から人が船に取り付けるんじゃなく五合弾だけを軍艦にぶつけさせる事は出来ないかって。」


「えっ、何て、五合弾を軍艦にぶつけるって言うのか。」


「そうなんだ、其れであんちゃんに聴きたいんだけど、五合弾に火薬を入れて蓋をして海の中に入れても海の水が入らない様に作れないかって。」


 げんたは一体何を考えてるんだ、火薬を入れた五合弾を海の水が入らない様に作れと言って来た。


「え~火薬を入れた五合弾に海の水が入らない様に作るのか、う~んこれは困ったなぁ~。」


 げんたの要求は余りにも困難で簡単に作れる物では無く、以前は髪の毛一本の隙間も作るなと、だが今回の要求は更に困難を極め髪の毛一本どころの騒ぎでは無く、完全に隙間が出来ない様にだと、一体何を考えてその様な困難な要求をするんだと鍛冶屋は考えるが、どんなに考えもげんたが何を作ろうとしているのか全く分からない。


「だけど技師長の頭の中には全体像は出来てるんだろう。」


「やっぱりあんちゃんだなぁ~。」


「まぁ~オレも考えて見るけど、其の前に技師長が考えた物を聞かせてくれないか。」


「分かったよ。」


 と、言った途端げんたの顔が輝いた。


 官軍の軍艦にげんたの考えた五合弾で五隻の軍艦は佐渡に行く事が出来ず海底へと沈んだ。


 あの時は五隻の潜水船に乗り込んだ兵士達が危険を犯して訓練に励み、官軍の軍艦の後部に取り付け爆破に成功したので有る。


 その後も考え、軍艦に爆薬を取り付けるのでは無く、五合弾を軍艦に衝突させ爆破させたいと、だが余りにも突飛な考え方に鍛冶屋の頭は混乱して要る。


「なぁ~技師長、其れだけでは五合弾は爆発しないと思うんだ。」


 だがげんたはニヤリとして。


「さすがにあんちゃんだなぁ~、オレも考えたんだ連発銃の弾を使う方法を。」


「えっ、何て連発銃の弾を使うって、一体何を考えてるんだ、技師長は。」


「え、へへへ。」


 げんたは今までに無い笑い顔をして要る。


 何と恐ろしい事を考えて要るんだと鍛冶屋は思うが、げんたの気持ちも分かる、今の五合弾を軍艦の後部に有る舵に取り付け、導火線に火を点け直ぐ潜らなければ五合弾の爆発の衝撃を真面に受け潜水船は軍艦と共に海底に沈むと、げんたは何としても兵士達の命を守りたいと考えたので有る。


「なぁ~げんた、いや技師長、何でそんな事考えたんだ。」


「兵隊さんは今でもあんなに危険な訓練をしてるんだぜ、若しもだよ兵隊さんが少しでも入るのが遅れたら軍艦と一緒に沈んで行くんだ、オレは何とかして兵隊さんを守りたいんだ、其れだけの事なんだ。」


「まぁ~オレも技師長の気持ちは分かるよ、だけど其の入れ物を作るだけども大変だと思うんだ。」


「其れも分かってるんだ、オレの注文は簡単に作れないと分かってるんだ、だけど頭の中じゃもう完成してるんだ。

 其れと、其れを潜水船の外側に取り付けたいんだ。」


 げんたは又も言った、何と潜水船の外側に取り付けたいと、げんたの考える事は全く理解出来ないと。


「げんた、いや技師長、ちょっと待ってくれよ、技師長は簡単に言うけどなぁ~、その何とか言う物を作るのはオレなんだぜ、技師長は頭の中に有る物を絵に出来るのか。」


「あ~もう出来てるよ、これなんだ。」


 げんたが描いた物とは。


「これは一体なんだ、なぁ~何て言うんだ。」


「名前か、まだ其処までは考えてないんだ。」


「そうか、でもなぁ~簡単には作れないと思うんだ。」


「其れくらいの事は分かってるよ、でもこれが出来れば兵隊さんに危険な訓練も要らないんだ。」


「分かったよ、まぁ~暫く考えて見るよ。」


 鍛冶屋に絵図面を渡し、洞窟へと向かった。


「この頃ですが浜に参られるのが少なくなった思うのですが。」


「十分承知致しておりますが、大勢の官軍兵が連合国に入り、其れとは別に山賀へは三百名近く女性達が入り、暫くは其の対応で浜に行く事が出来ませんでしたが今は少し安定しており、数日の内に浜に参る予定をしておりまして、城にも来ないので心配になって要るのです。」


 この数十日間大変な忙しさで、菊池へ五千の大軍が、山賀には三百名者女性が押し寄せ、其の間に二百名の官軍との戦が起こり、表向き野洲へは直接的な関係も無く、だが其れが余計浜に行く予定が立たずに今になったので有る。


「其れにしてもげんたから何も言って来ずでしたが、留守中でも来なかったのでしょうか。」


「何時もならば十日もすれば必ず来られた様に思うのですが、げんたさんに何か有ったのでしょうか。」


「確かにその様ですねぇ~、まぁ~何も言って来ないと言う事は何も起こらずに要るのだと思います。」


「何か忙しい事でも有るのでしょうか。」


「今は何も無いと思いますよ、其れと雪乃殿には申し訳無いのですが百合様の事ですが。」


「私も少し気に成っておりまして、暫くは見守りたいと思っております。」


「百合様には少し厳しいとは思ったのですが、連合国では働かざる者は食べる事は出来ませんよと申して置きましたので暫くの間様子を見て頂きたいと思うのです。

 二人を切り離したのも一日でも早く独り立ちして欲しいと、綾乃様の傍に居られるとどうしても甘えが生じ、将来の事を考えますと何時までも今のままでは百合様自身が壊れると考えましたので。」


「源三郎様が明日浜に向かわれるので有れば、其の時にでも私から少しお話しをさせて頂きますが。」


「申し訳御座いませぬが、宜しくお願い致します。

 私は其の足で菊池に向かい工事の進み具合を見たいと思っておりますので。」


 やはり雪乃だ、同じ女性の立場でも雪乃は元松川藩の姫君で、雪乃から話しをすれば百合の考え方も変わるのではと源三郎は思った。


「実は加世とすずの二人が野洲に来られた人達の様子を見たいと申しておりまして。」


「ほ~加世殿とすず殿がですか、何か訳でも有りそうですねぇ~。」


 源三郎は若しやと、以前、雪乃を里帰りと名目で加代とすずを同行させ、其の時、鈴木と上田も同行していた。


「先日の事でして、執務室の鈴木様と上田様にお茶をお持ちしたところ、お二人から野洲に来られた女性の事で自分達は男だから女性の事は分からないので、其の女性達の様子を見て欲しいと申されたと加世とすずが申しますので、私はお二人に同行し様子を見る様にと申しましたが、其れで宜しかったので御座いましょうか。」


「大変素晴らしい事ですねぇ~、私ならば大賛成ですよ。」


 やはりだ雪乃が思った通りで、源三郎も薄々気付いていたのだろう。


「私は加世とすずが。」


「私から鈴木と上田をけし掛けましょうかねぇ~。」


 源三郎も何故だか嬉しそうな顔をして要る。


「はい、是非ともお願い致します。」


 雪乃も嬉しくなった、加世とすずには今まで随分と無理を言って来た、その二人が幸せになるならばどの様な事でもすると、其れは源三郎も同じで鈴木と上田にはこれから先も無理な注文をしなけらばならず、その為に幸せな家庭を築いて欲しいと願って要る。


 そして、明くる日の朝、源三郎は久し振りに浜へと向かった。


「何か新しい物を考えて要るので来れなかったのか、いや其れにしても余りにも長過ぎる。」


 独り言を言いながらも浜へと、暫くすると浜に着いた。


「あら~まぁ~源三郎様じゃ、一体どうしたんですか。」


「やぁ~お母さんも久し振りですねぇ~。」


「そうですよ、源三郎様はもう浜を忘れたのかなぁ~ってみんなで話してたんですよ。」


「いゃ~飛んでも有りませんよ、あれからはもう大変な事ばかり有りましてね、数日前にやっと落ち着きましてね、其れでげんたの顔が見たくなったんですよ。」


「まぁ~そんな事言って、綺麗な女性が大勢来たって、みんなが言ってますよ。」


「え~もうそんな噂が流れて要るのですか、困りましたねぇ~。」


「そうですよ、源三郎様に隠し妻が出来たって。」


「そんなぁ~、でも大丈夫ですよ、雪乃殿が知っておられますのでね。」


「なぁ~んだ雪乃様が知ってるの、じゃ~何も面白い話じゃ無くなったわねぇ~。」


「え、正かお母さんが。」


「ウ、フフフ、分かったの、ぜ~んぶ私の作り話ですよ、でもみんなは源三郎様の事が心配で、これだけは本当なんですからね。」


「はい、承知しました。

 皆さんには心配を掛けておりますが、この様に私も元気ですからね。」


「其れで今日は。」


「私も忙しかったのですが、だからと言って浜の事は忘れてはおりませんよ、実はねぇ~昨日雪乃殿からもげんたを見て来て欲しいと言われましてね。」


「そうだったんですか、げんたなら多分洞窟に、いや鍛冶屋さんの所かな朝からげんたは鍛冶屋さんのところに行くってましたから。」


「じゃ~一度鍛冶屋さんの所に行って見ますよ。」


 源三郎はげんたが何かを考えて要ると思った。


「鍛冶屋さん、お久し振りですねぇ~。」


「えっ源三郎様、一体どうされたんですか。」


「いゃ~別に何も有りませんが、私も久し振りに来ましたらげんたは鍛冶屋さんの所だって聴きましたのでね、其れで。」


「技師長なら来ましたが、さっき洞窟に行きましたよ。」


「そうですか、其れでげんたは何か言ってましたか。」


「其れが又飛んでも無い物を考え付いてオレに其れを作れって、ですがこれは簡単に作れる様な物では無いですよ。」


「そんなに難しい物なんですか。」


「これなんですがね、技師長が描いた絵なんですよ。」


「鍛冶屋さん、一体これは何ですか。」


「全然分からないんですよ、でもこの筒の中に火薬を入れ爆発させるんだって言ってましたが。」


 やはりだ、げんたは新しい物を考えていた。

 そう言えば以前我々が想像出来ない物を作ると言ってたが、其れがこれなのか、だが一体これは何だ、絵だけを見てもさっぱり分からない。


「鍛冶屋さん、げんたは何か言ってましたか。」


「技師長は兵隊さんが大変な危険を犯して五合弾を舵に付け導火線に火を点け、少しでも乗り遅れると軍艦と一緒に沈むと、だから兵隊さんが取り付ける必要が無い方法を考え其れがこの品物だって。」


「そうでしたか、確かにげんたもあの時の訓練を見ておりましたからねぇ~。」


「オレはどんな方法で軍艦に五合弾を付けたのか知らないんですよ、其れで良かったら取り付けの方法を教えて欲しいんです。」


「分かりましたよ、では簡単に説明しましょう。」


 源三郎は鍛冶屋に説明すると。


「う~ん其れだったら技師長が言うのも分かりますねぇ~、下手をすれば五合弾が爆発し、兵隊さんと潜水船も沈み、中に居る兵隊さんも全員が戦死する事になるんですねぇ~。」


「今までは失敗した事は有りませんが、何か対策が無いか考えるのですが、正かげんたが其の様な物を考えて要るとは思わなかったのですよ。」


「兵隊さんは舵に五合弾を付けたんですか。」


「いゃ~其れが兵士が咄嗟的にと言うよりも、舵の部分は船頭が方向転換で動かし、其の時船体に着けたと聞いておりますが。」


「船体に付けたら五合弾の威力はどんなだったんですか。」


「船体に大きな穴が開いたと言っておりましたが。」


「えっ、そんなにも大きな穴が開いたんですか、で潜水船は。」


「五隻の潜水船に異常は無かったと、ですがもう少し導火線が短ければ兵士もですが潜水船も被害を受け下手をすれば沈没し兵士全員が水死した思われます。」


「う~ん、やっぱり大変だなぁ~、では五隻の潜水船が無事だと言う事は、源三郎様に怒られるかも知れませんが全部運が良かったんですか。」


「実は私も本当のところは其の様に思っておりまして、でも今のところ他に方法が無いと言うのが本音でしてね、早急に対策を考えねばならないと思って要るのです。」


「其れにしても技師長が考えた物ですが、技師長の言う様には簡単に作れる物じゃないんですよ。」


 鍛冶屋は深刻な表情でそれ程までにげんたの考えた物を作るのが難しいのだろうかと源三郎は思い。


「技師長の考えた物ですが、そんなにも作るのが難しいのですか。」


「この絵では分かりませんが、この部分ですが完全に密閉出来なければ海水が浸み込んで中の火薬は爆発しないんですよ。」


「完全に密閉ですか。」


「オレも技師長が求めているのは分かってますよ、其れにこの先端部分も完全に密閉するんですよ。」


「先端部分に何か付いていますが、其れは何ですか。」


「そうでした、技師長は此処に連発銃の弾を入れるって。」


「連発銃の弾をですか、でも一体何の為に連発銃の弾を付けるのですか。」


「そんなのさっぱり分からないですよ、オレも野洲の鍛冶屋としての意地が有りますからねぇ~。」


 連発銃の弾を付けるとは一体何の為に弾が必要なのか。


「この品物ですが技師長は人間の手を使わずにと言ったのでしょうが、ではどの様な方法で動かし軍艦に衝突させるのですか。」


「其れが全然分からないんですよ。」


 鍛冶屋もどの様な方法で品物を動かせるのかも聴いておらず、源三郎は想像すら出来ない。


「う~ん、其れにしても全く理解不可能な品物ですねぇ~。」


「技師長が一体何を考えてるのか全然分からないんですよ、オレ達にも鍛冶屋としての意地が有りますんで何とかして作りたいんですが、でも作る方法が浮かんで来ないんです。」


「私からでも技師長に聴いてみますので、余り深刻にならないで下さいね。」


「分かりました、そうだ技師長だったらさっき洞窟へ行きましたよ。」


「そうですか、では私も今から洞窟に行って見ますので。」


 源三郎は鍛冶屋の作業場を出、洞窟へ向かった。


 野洲の鍛冶屋の腕前は一流で、潜水船の空気の取り入れ装置を作ったのも彼らで、鍛冶屋に髪の毛一本の隙間も開けるなと、普通の鍛冶屋では不可能だと思える要求を見事に答えたが、其の鍛冶屋が余りにも無理な注文に頭を抱え込んで要る。


 確かに鍛冶屋が言う様に今回の品物は完全を求められ一部の失敗も許されるものでは無い。

 源三郎が聞いただけで果たしてこの様な物を作る必要がと言うよりも、げんたの要求は余りにも無茶だと思うので有る。


「あっ、源三郎様が来られたぞ。」


「えっあんちゃんが一体何の用事なんだ、オレは何も聞いて無いんだぜ。」


「お~い技師長。」


「此処だよ、あんちゃん。」


 げんたは潜水船の上に登り何かを考えて要る。


「げんた、久し振りですねぇ~。」


「うん、其れであんちゃんはオレに何か用事でも有るのか。」


 源三郎は正かと思った、今までのげんたならば何故浜に来ないのかとその訳を聴いており、だが今日は何の用事だと、この数十日間と言うものげんたは何かを考えて要るのは間違いは無い。


「いえねぇ~、昨日雪乃殿からこの頃げんたがお城に来ないので心配だと言われましてね。」


「えっ、ねぇ~ちゃんがオレの事が心配だって、まぁ~オレの事なら何でもないよ、オレもなぁ~この頃になると色々と考える事が有るんからなぁ~。」


 げんたは何時までも子供だと思っていた、だが今のげんたは大きく成長し、今では連合国にとっては最も必要な人物になったのだ。


「今鍛冶屋さんの作業場で聞いたんですがね、げんたが描いたあの絵ですが一体何ですか。」


「あ~あれか、さすがのあんちゃんでも分からないのか。」


「ええ、私には全く理解不可能な物ですよ。」


 鍛冶屋の説明で少しは理解出来るが、だがどの様な方法で動き、どの様な方法で爆発するのかも全く理解出来ないので有る。


「まぁ~簡単に言うと超小型の潜水船なんだ、だけどあんまりにも小さいから人間は乗れないんだ。」


「えっ、超小型の潜水船ですと、何でそんな超小型の潜水船を考え付いたんですか。」


「まぁ~ねぇ~色々と有ったんだ、其れで前の半分に火薬を入れ、後ろの半分は潜水船と同じなんだ。」


「超小型の潜水船の前半分に火薬を入れて、ですが少しでも隙間が有れば火薬は海水で。」


「だから完全に閉めて海の水が入らない様に作るんだ。」


「ですがそんなに簡単に作れるのですか。」


「オレ様なぁ~大天才なんだぜ、あんちゃんが深刻になる事は無いんだから。」


 げんたは余程自信が有るのか鼻を鳴らして要る。


「なぁ~げんた、鍛冶屋さんは頭を抱えておりますよ。」


「鍛冶のあんちゃんには別の物を作って貰うつもりなんだ。」


「別の物とは何をお願いするんですか。」


「鍛冶のあんちゃんには後ろ半分に入れる小型の装置を作って貰おうと思ってるんだ。」


「では超小型の水車型と風車型の装置ですか。」


「そうなんだ、其れを作って貰うんだけど、今其の大きさを考えてるんだ。」


 げんたは簡単に言うが、今の潜水船の装置でも鍛冶屋は相当苦労したはずで、だがげんたの話しだと超小型の装置になる事は間違いは無く、野洲の鍛冶屋の腕前が幾ら一流だとしてもげんたが言う超小型の装置を作るのは果たして可能なのだろうかと、源三郎は思った。


「大きさですか、五合弾の大きさでは如何ですか。」


「五合弾では後ろの装置が小さく成り過ぎるんだ、でもなぁ~あんまり大きくすると今度は前半分が大きく成り過ぎるから、で今考えてるんだけどこれは直ぐには出来ないからも知れないんだ。」


「ええ、其れは分かりますよ、今のところ官軍の軍艦が沖を通る様な気配も有りませんしねぇ~。」


「なぁ~あんちゃん、何でオレが考えたか分かるか。」


「えっ、申し訳有りませんが、私は其処まで考えた事は有りませんよ。」


「オレは官軍の兵隊は知らないよ、だけど潜水船の兵隊さんは知ってるんだ。

 官軍の軍艦は沈めても潜水船の兵隊さんが五合弾の爆発で死ぬのは見たく無いんだ。」


「ですが、戦では兵隊と言う人達は戦死する事も有るのですよ。」


「まぁ~其れはあんちゃんが侍だから簡単に言うけど、オレは侍じゃないんだぜ、オレだって戦になったら侍も兵達さんも死ぬ事は分かるよ、だけどオレが作った潜水船が沈没して中で死ぬのだけは見たく無いんだ、だから兵達さんが取り付けない方法を考えてるんだ。」


 気持ちは理解出来るが、げんたが言う様に兵士が爆薬を軍艦に付ける事も無く軍艦が航行不能か沈没させれば一番良い。

 だがその様な物が果たして作る事が可能なのか、げんたの理想なのかも知れないと源三郎は思った。


「気持ちはよく分かりますよ、私の知る人達が戦死されるのは大変辛い事ですよ、ですが私も戦に行く時は死を覚悟しており、其れは侍ならば当然の事ですからね。」


「だけど侍が死ぬって言っても、其れは敵に切られるからなんだ、だけど潜水船は入り江の外に出て行くんだぜ、若しもだよ、沖の深い海で沈没すると二度と浮き上がって来ないんだ、そんな事になったら兵達さんは海の底なんだ、侍は土の上で死ぬ事が出来ても兵達さんは海の底で誰にも見られる事が出来ないんだ、オレは人間は何時かは死ぬ事も分かってるよ、兵隊さんは侍と同じ様に死ぬんだったら土の上で死んだ方がみんなに知って貰えると思ったんだ。」


 げんたの中には切ない思いが有り、兵士達も同じ戦死するならば陸で死を迎えて欲しいのだと。


「よ~く分かりましたよ、げんたは何としても其れを完成させて下さいね。」


「あ~オレは絶対に作って見せるから、まぁ~あんちゃんはオレに任せるんだな。」


「そうですね、お願いしますね、其れで銀次さん達は何処に居られるんですか。」


「今、隣の洞窟を大きくするって。」


「では隣の洞窟ですか。」


「そうだよ、今は横穴が出来て無いから一度外に出るんだけど。」


「分かりましたよ、私は隣の洞窟に行きますのでね、其れとたまにはお城に来て下さいよ、殿様も雪乃殿も待っておりますのでね。」


「まぁ~其の内に行くからって言っててくれよ。」


「そうですか、では私は隣の洞窟に行きますのでね。」


 小舟で銀次達が掘り進んで要る隣の洞窟へと向かった。


 其れにしてもげんたの考えた物とは一体どの様な物になるのか、其れよりも果たして完成するのか、完成するので有れば何時頃になるのだろうか、げんたは何を考え付くのか分からないが、今は頭の中で色々な事を考え回転して要るのは確かで有る。


 源三郎が隣の洞窟に入るのは初めてで大きさも全く分からない。


「お~い、源三郎様が来られたぞ。」


「えっ、源三郎様が来られたって、何か有ったのかなぁ~。」


 源三郎が乗った小舟が隣の洞窟に入ると奥へと進み。


「何か有ったんですか。」


 銀次達は正か源三郎が来るとは思って無かった。


「いいえ、何も有りませんが、其れよりもこの洞窟は。」


「元太さんに聴きまして、一号窟よりも別の洞窟が必要になると思ったんです。」


「別の洞窟ですか。」


「先日もげんたがもう一ヶ所くらいは要るって言ってたんですよ。」


「そうだったんですか、其れでこの洞窟を掘り始めたのですか。」


「でもこの洞窟は入り口が大きいんで、沖から見えると思って仲間と話したんです。」


「そうですねぇ~、確かに銀次さんの言われる様に入り口が大きいですねぇ~、ですが入り口が大きいですから奥の隅々までが良く見えますよ。」


「奥が見えると困るんですよ、其れで仲間と考えた方法なんですが、源三郎様にも分かりますか。」


「えっ、私に分かる訳が有りませんよ。」


 と、辺りをきょろきょろと見渡すが、仲間が考えた方法だが一体どの様な方法なのかも分からない。


「そうだと思いますよ、実はオレもねそんな事したら潜水船が大変な事に成るって言ったんですが。」


「お願いですから、私に其の方法を教えて下さいよ、ねっ、この通りですから。」


 源三郎は銀次に手を合わせると。


「入り口なんですよ、入り口の左右に。」


「えっ、入り口ですか、でも入り口には何も有りませんよ。」


「じゃ~見てて下さい。」


 銀次が小舟に乗り、源三郎を入り口まで連れて行き。


「此処なんですよ。」


「ですが、何も有りませんが。」


「今は何も見えませんが、岩を沈める時には人数が要りますんで、数日に一度って決めてるんですよ。」


「私にも少し分かりましたよ、沖から見えない位の高さまで岩を置いて行くのですね。」


「でも掘り出した全部の岩を沈める事が出来ないんですよ、オレ達は最初の頃は何も考えて無かったんですが、仲間と考えて同じ岩でも上手に沈めると、最初の洞窟も沖からは見えないかも知れないって、其れで最初の洞窟とこの洞窟の間の海の中に岩を高く積み上げて行くんですよ。」


「ですが、大きな岩では海の中の作業は大変でしょう。」


「勿論、最初の内は大変でしたが、そうですねぇ~今日は出来ませんので明後日だったらその作業が出来ると思いますんで。」


「そうですか、其れにしても初めの洞窟から一度外に出なければなりませんから大変ですねぇ~。」


「其れで今奥で隣と通じる様にと掘削してるんですよ。」


 やはり銀次も分かって要ると、沖を通過する大きな船から潜水船の所在が分からない方法で有る。


「最初の洞窟とこの洞窟の間ですが、大よそ一町くらい離れてますので、其の間に岩を沈めるんですが半町くらいの幅で海の上は十尺も高さが有ればいいんで、その上に土を入れてから山から小さな木を獲って来て植えますとね、まぁ~沖から見ても此処に潜水船を隠す洞窟が有るとは思わないですから。」


「何と素晴らしい、私は其処までは考えておりませんでしたよ、其れが完成すれば最初の洞窟ですが入り口を拡げる事も出来ますねぇ~。」


「そうなんで、其れに入り口を拡げますと洞窟の中も少しは明るくなると思うんです。」


 源三郎は銀次が進める工事に大賛成だ。


「ですが銀次さん達だけでは大変だと思うのですが。」


「まぁ~今のところは大丈夫ですんで。」


 銀次は他の洞窟でも今の方法を使え無いかと考えて要る。


「菊池や上田、松川の洞窟でもこの方法で拡げたいのでは有りませんか。」


「でもそうなれば人手が。」


「人手ならば大丈夫確保出来ますので、其れよりも今日は無理ですから明日菊池へ参りましょう。

 菊池が終われば次に上田と松川にも参りましょう。」


「えっ、そんなぁ~、オレは何も。」


「人手ならば大丈夫ですからね。」


 銀次は未だ知らなかった、数十日前に五千人の官軍兵が連合国に入り、今は数百人規模で柵作りと大小の池を掘る作業に就いており、源三郎の考えでは千人くらいならば銀次の進める洞窟拡張工事に就かせる事が出来ると。


「銀次さんはご存知無いと思いますが、今連合国には五千人の元官軍兵が要るのですよ。」


「何ですって、今五千人の元官軍兵が居るって聞こえたんですが、何時官軍と戦が有ったんですか。」


 銀次達は野洲の浜で、其れも殆ど洞窟内で掘削工事に就いており、菊池と山の向こう側に通じる隧道の外側で起きた官軍との戦までは全く知らなかった。


「そうでしたねぇ~、もう何日、いや数十日も前の事ですが菊池の隧道近くで戦が起こり、今は五千人

おりますが狼除けの柵と大小様々な池を造る作業が有りまして、全員がその工事には就いてはおりませんので一千人くらいならば直ぐ手配出来るんですよ。」


「じゃ~今は戦も終わってるんですか。」


「勿論ですよ、ですからこの工事にも直ぐに入れるのですよ。」


 洞窟の拡張工事が菊池、上田、松川でも開始出来れば池の掘削工事で大量に出て来る土も拡張工事に使用出来、一石二鳥と言える。


「じゃ~菊池、上田、松川でも拡張工事に入るんですか。」


「洞窟が拡張出来れば、潜水船を洞窟内に入れる時も余裕が出来ると思いますよ。」


「オレも本当は其れが一番の目的でして、最初の洞窟の入る時も出る時も何か苦労してる様に思えてたんです。」


「そうですか、やはり銀次さんもその様に見えたのですか、まぁ~確かにあの洞窟の出入りは大変難しいと分隊長も言っておられまして、ですが現状では無理が有りまして、でも銀次さん達のお陰で其れも解消出来ると思いますねぇ~。」


「其れだったら良かったですよ、オレ達はこの洞窟が最初だったんですが、元太さんも言われまして此処の洞窟の出入りに慣れるまでは相当苦労するって。」


「私も何度か思ったんですが、でも正かこの様な方法が有るとはあの時には考えてはおりませんでしたよ、正に銀次さん達のお陰ですよ。」


「そんな事だったらオレ達でも少しは考えてますんで。」


「これは銀次さん達ですから考える事が出来たと思うのです。

 私は全く現場の事は分かっておりませんので。」


「オレ達は少しでも恩返しが出来れば其れだけで十分満足なんですよ、オレ達には源三郎様は命の恩人なんですから。」


「もう昔の事は忘れましょう。」


「いいえ、其れだけはどんな事が有っても駄目ですよ、オレ達が其れを忘れたら、其れこそ真面にお天道

様を見る事なんか出来なくなりますんで。」


 銀次は源三郎から受けた恩は一生忘れる事は出来ないと。


「其れと鏨が要るんですが。」


「そうでしたねぇ~、其れも大量に要りますねぇ~、分かりましたでは鍛冶屋さんにお願いして千本、いや五千本作って頂きましょうか。」


 野洲を始め、菊池、上田、松川の洞窟の拡張工事に入るとなれば数千本の鏨が、数百本は直ぐにでも必要で、他の鍛冶屋でも作らなければ掘削工事を進める事も出来ず、そうなれば潜水船の所在も遅かれ早かれ官軍に知られる事に、そして、下手をすれば軍艦の大砲で攻撃を受ける事にでもなれば連合国が保有する潜水船は全て沈められ官軍は一気に攻め込んで来る。

 その様な事態にでもなれば連合国は数日で壊滅させられると、源三郎は危機感を持って要る。


「この拡張工事ですが、銀次さんが思われて要る以上に大事な工事になりますよ。」


「オレ達は何も其処までは考えて無いんですよ。」


「官軍もあの五隻の軍艦が何処に行ったのか行方を探して要ると思います。」


「其れは分かりますが、でもオレ達の連合国に潜水船が有る事は知らないと思うんですよ。」


「其れは勿論ですよ、官軍は今も連合国の存在自体も、其れに潜水船に五隻の軍艦が沈められたとは考えてはおりません。

 ですが連合国の沖を通過した事は知っておりますので別の軍艦で調べると思うんです。

 其の時に若しもですよ、若しも何かの拍子で潜水船が発見され、その潜水船が連合国の洞窟に入った、さぁ~銀次さんならばどの様にされますか。」


「そんなの簡単ですよ、其れだったら数隻の軍艦で洞窟に大砲で、あっ、そうか、オレも分かりましたよ、そんな事になったら連合国の潜水船は全部沈められ、軍艦は浜に着き大勢の兵隊が攻め込んで来るんですね。」


「正しく其の通りでして、でも幸いな事にまだ連合国も潜水船の存在も知られておりませんので、まぁ~其の内に軍艦で無かったとしてもこの入り江に入って来るでしょうから、其の時には洞窟は見付けられるでしょうが、潜水船が其の前に別の場所に行けば潜水船の存在は知られる事は無いと思うのです。」


 銀次達が始めた洞窟の拡張工事は潜水船の存在を隠す事が出来る。


「じゃ~オレ達が始めた工事は源三郎様を助ける事にもなるんですか。」


「私では無く連合国を助ける事になりますよ。」


「オレ達も一生懸命にやりますんで。」


「そうですか、では明日の朝お城に来て下さいね、明け六つには出立しますので。」


「はい、承知致しました。」


 今日浜に来て今までに無かった事までも分かり、お城に戻る途中城下の鍛冶屋に寄り、鏨を大量に作って欲しいと頼み城へ戻った。


「源三郎、何か有ったのか、その様に急いで。」


「殿、先程久し振りに浜に行ったのですが、私が全く気付かなかった事が有りまして、銀次さん達は官軍の軍艦を含め、潜水船の隠し場所を発見されない方法を考え付かれ工事におり入っておられました。」


「ほ~潜水船の隠し場所の洞窟が発見され無い方法を見付けたと申すのか。」


「銀次さん達が考えた方法で工事と申しますよりも、あの方法ならば沖を通過する船から見ましても全く分からないと思います。」


「其れを銀次達が進めておると申すのか。」


「この方法を菊池、上田、松川までの洞窟で工事を行なえば採掘される岩石の捨て場所も確保出来ますので、宜しいかと思います。」


「そうか、では銀次を連れて参るのか。」


「私の説明よりも銀次さんが直接説明して頂く方が理解されると思いますので。」


「では人手も大勢必要になるのではないのか。」


「其れは十分確保出来ておりますので。」


「お~そうで有ったの~、あの者達が居ったの~。」


「五千人も居りますれば一千人くらいは工事に就いて頂けると思っております。」


 源三郎はその後も殿様に詳しく説明し、明日、菊池に向け出立すると。


「源三郎、次から次へと難問が起き、其の方がどれだけ苦労しておるのか余も少しは知っておるつもりじゃ、だがの~、今の連合国には源三郎だけが頼りなのじゃ、無理な問題ばかりが出て来るとは思うが身体だけは十分に注意致すのじゃぞ。」


「殿、有り難きお言葉、源三郎、誠嬉しく存じます。

 これからも私は連合国の領民の為に命を捧げる所存で御座います。

 殿、私は少し考え事が有りますので。」


「源三郎、頼んだぞ。」


 殿様は執務室を出て行く。


「銀次さん達も素晴らしいお人ばかりで、皆様には源三郎様のお役目のお手伝いをして頂き、私は安心しております。」


「私には多くの仲間があり、その方々ですが皆様が一生懸命なのが誠に嬉しいのです。」


 源三郎が常日頃領民の為にと必死なのが、げんたや銀次達にも通じ、例え問題が起きたとしても彼ら自身で解決して要る。


「何卒お身体には気を付けて下さいませ。」


「承知致しております。」


 源三郎はその後執務室に入ると鈴木と上田も同行する様にと伝え。


 そして、明くる日の明け六つ源三郎と銀次、鈴木と上田は菊池へ向かい、朝の五つには菊池に入った。


「高野様。」


「突然に如何されたので御座いますか。」


「今日寄せて頂きましたのは、連合国に取りまして大変重要な問題だと思ったのです。」


「その問題とは一体どの様な事なので御座いますか。」


「私からお話しをするよりも銀次さんから聞いて頂ければご理解出来ると思いますので。」


「では銀次さん、お話しを伺いますので。」


「じゃ~説明しますので。」


 銀次はその後高野に説明するが、高野よりも鈴木と上田の二人が驚き、浜の洞窟でその様な工事を

行なって要る事も知らなかったので有る。


「よく分かりました、では今から洞窟へ参りましょうか。」


 高野は源三郎達と菊池の洞窟に向かった。


「作業員さんですが。」


「今連合国には五千人の元官軍兵がおりまして、二個大隊ですが、私は第一大隊の第一から第四中隊の兵士達をこの工事に就いて頂く様に手配して頂きたいのです。」


「承知致しました。

 では洞窟を見た後、私から伝えますので。」


 後藤達は第二大隊の所属で柵と池作りに、洞窟の新しい掘削工事には第一大隊をと実に簡単で有る。


 だが、第一大隊の兵士達は驚くと言うよりも一体何が起きたのだろうかと、その後、源三郎達は菊池の洞窟の調査を終え、第一大隊の兵士達に説明するので有る。


「皆さん、本日我々の連合国では新しい工事を始める事になり、その工事に皆様の第一大隊に就いて頂きたいのです。

 その工事の内容とこの工事が何故必要なのか、其れと工事の方法を説明して頂きますので、皆さんよ~く聞いて下さいね、ではその説明を銀次さんにして頂きます。」


 源三郎に代わり、銀次が説明を始めた。


 第一大隊の兵士達はと言うよりも殆どが農民と町民で彼らは時々頷き、この工事がどれ程大事なのか、最終的には連合国の領民の為だと、だが彼らにはまだ領民だと言う意識が無いと言うのが現実だ。


「あの~今の話では連合国の領民の為だって言われましたが、ではオラ達はどうなるんですか。」


「其れはねぇ~皆さん次第なんですよ、我々の連合国では無く、自分達の国に戻りたいと考えておられるお方も居られると思いますが、其れを決めるのは我々では無く皆さん方なのですよ。」


「えっ、だったらオレ達が決めるんですか。」


「その通りですよ、ただ戻るのも自由ですが、我々の連合国では働く事が大切でして、仕事をされるお人は食べる事は出来ますが、皆さん方もそろそろ何でも宜しいですから仕事をして頂かなければ食べては行けないと考えて欲しいのです。」


「其の仕事ですが何でもいいんですか。」


「勿論ですよ、どの様な仕事でも宜しいですよ、ですが今はこの掘削工事に就いて頂きたいのです。」」


「じゃ~其の仕事をすれば食べる事が出来るんですか。」


「ええ、勿論ですよ、ですがこの工事も嫌だと言われるお方は連合国を出て行く事になりますが。」


「えっ、この国を出るって事はあの隧道から出るんですか。」


「其の通りですよ、但しですがね、隧道の外には狼と、其れに幕府の残党が、まぁ~其れよりも外に出ると言う事になれば食料は自分達で調達しなければなりませんからねぇ~大変だと思いますよ。」


「じゃ~オラ達の村に帰るのは。」


「勿論、自分の力だけで帰る事になりますよ。」


 兵士達は故郷に戻るのが良いのか、だが今故郷がどの様な状態なのかも全く分からず、其れよりも下手をすれば隧道の外に出た途端狼の大群が待ち受けて要る可能性も有り、連合国に残り仕事さえすれば食べて行ける。


「私は何も強制はしませんが、皆さん方も一度は戦死したのでは有りませんか、私は何故皆さん方を助けたと思いますか、どんなに考えても分からないと思いますよ、本来ならばあの時全員を殺す事も出来たのです。

 我々の連合国では農民さんや漁師さん達が一番大切だと考えております。」


「あの~、何でオラ達農民が一番大切なんですか。」


 さぁ~これからだ、源三郎が何故農民が一番大切なのか、其の話しを聞けば、第一、第二大隊の兵士達は納得するで有ろう。


「では説明しましょうか、私も元侍でしてね、隣の野洲の国の家老の息子です。

 ですがね家老の息子でも皆さんが育てられて要る作物の育て方は全く知らないのです。

 侍と言うのは皆さんから見れば何時も偉そうな顔をして要ると思われるでしょうが、侍から二本の太刀を取り上げれば何も出来ないのです。

 我々は連合国以外の国の事は全く知らないのですが、連合国の侍を見て頂ければ皆さん方の国の侍と何かが違うと思いませんか、多分直ぐに分かると思いますが、我々の連合国では侍の姿ですが、全員が農民さんの作業着を着ており、其れよりも侍は太刀は差してはおりませんよ。」


「あっ、本当だ、でも何で農民の作業着なんですか、其れに刀は。」


「我々の連合国では農民さんの作業着が我々の作業着でしてね、其れに刀は全く必要無いのですよ。」


「オラも何か不思議だと思ってたんですが。」


「連合国の侍の仕事ですが領民の命を守るのが仕事でして、菊池から山賀まで続く山中で任務に就く侍も連発銃と脇差だけで十分なんですよ。」


「でもあの時、何で官軍の指揮官だけを狙ったんですか、其れに何で分かったんですか。」


「其れでは教えましょうか、貴方方はこの隧道に来る以前ですが戻り橋の付近で大砲が川底に捨てられて要るのを見られた思いますが、でも其の前に私の配下の者が貴方方の動きを知っていたのです。」


「あっ、そう言えば大砲と大砲の弾が深い谷の底に有ったよ。」


「そうでしょう、でははっきりと申しますが、我々は山の向こう側に来る十数日前から知っておりましてね、大隊の殆どが農民さんと町民さんだと知っておりまして、官軍の指揮官だけに狙いを付け、その全てが成功し彼らは狼の餌食になったのです。

 仲間が官軍の全員が農民と町民だから助けるんだと決まりましてね、其れで貴方方を助けたのです。」


「オラは国に戻りたいと思ってるんですけど、でもその国が今どんな事になってるのか全然分からないんで、其れでオラはもう国に戻るのは諦めてこの国で野菜を育てたいんですがいいですか。」


「勿論宜しいですよ、私は貴方方農民さんに作物を作って頂かなければ飢え死にしますのでね。」


「えっ、でも源三郎様はご家老様の。」


「確かに私は家老の息子ですよ、でも私の父も作物は作れないので皆さんだけが頼りなんですよ。」


 話しは本当だが、彼らにすれば源三郎は今までの侍とは全く違い、国の侍とは同じだと思えない。


「じゃ~オラ達が一番大切だって言うのは本当なんですか。」


「勿論ですよ、私が嘘を言って何か得をすると思われますか、私の言う事が信じられないと思われるので有れば皆さんが直接連合国の領民さんに聴いて頂いても宜しいですよ。」


「じゃ~その工事が終わってからは好きな仕事に就いてもいいんですか。」


「は~い、もう其れで十分ですよ、今はねぇ~皆さんの協力でこの工事を早く終わりたいのです。」


「よ~し、オレは源三郎様が言われる工事に行く事に決めたぞ。」


「オラも行くよ。」


 其れからは次々と兵士が名乗り上げ、大隊の全員が工事に行くと。


「では皆さん協力して頂けるのですね。」


「勿論で、オレは行きますよ。」


「皆さん、本当に有難う御座います。」


 源三郎は大隊の兵士達に両手を付き頭を下げた。


「何でオラ達に頭を下げられるんですか、オラ達は農民ですよ、お侍様が農民に頭を下げるなんて。」


「いいえ、私は皆さんに無理をお願いしたのですから、皆さんが農民さんだとか町民さんだとかは関係は無いのです。

 私が無理をお願いしたのですから頭を下げるのは当然ですよ。」


 源三郎が手を付き頭を下げ、其れで全てが決まった。


「では今からどの様な工事を行なうのかその現場を見て頂きたいのですが、隣の野洲に有る洞窟を見て頂きたいのですが、皆さん宜しいでしょうか。」


「源三郎様、オラは行きますんで。」


「オラも行くよ。」


「鈴木様、お願いします。」


 鈴木は源三郎の言葉が何の意味か直ぐ分かり、馬を飛ばして行った。


 そして、全員が野洲に行くと、源三郎を先頭に大隊の兵士達が出立し、夕刻前には野洲に着いた。


「さぁ~皆さん、其のままで上田様、皆さんを。」


「はい、承知致しました。

 さぁ~皆さん其のまま進んで下さい。」


「あの~オラ達は農民で。」


「宜しいですよ、ですがなんせ急な事なのでおむすびと漬け物で申し訳有りませんが、其れと明日は一度全員で浜に向かいますが、浜には小舟しか有りませんので一度に行く事は出来ません。

 洞窟内では銀次さん達が説明してくれますので、何か分からない事が有ればその場で聞いて下さい。」


 兵士と言うよりも農民や町民達は城の中をきょろきょろと見ながらも大広間へと進み、やがて全員が座ると大勢の女性がおむすびを運んで来た。


「えっ、正か、あんたはおきよさんでは。」


「えっ。」


 と、おきよは顔を上げると。


「あっ、やっぱりおきよさんだ、お~い、英二、おきよさんが居るぞ~。」


「えっ、何でおきよが。」


 向かい側に座った英二が来ると。


「おきよ。」


「えっ、あんた、生きてたの。」


 おきよは目を白黒とさせ、英二は唖然として要る。


「あっ、お前。」


「あっ、お前さん。」


 一体なにが起きたと言うのだ、大広間では数年振りと言う夫婦の再会で食事どころのでは無くなり大声で泣き涙を流す者で大広間は大騒ぎとなった。


「総司令、大変です。」


 上田は執務室に飛び込んだ。


「上田様、一体何が有ったのですか。」


「総司令、大変です、今着いた者達と山賀から来られた女性達が夫婦でして、もう大広間は大騒ぎで食事どころのでは御座いません。」


「えっ、夫婦の再会ですと。」


 源三郎も大慌てで大広間へと向かった。


「何でお前がこのお城に居るんだよ~。」


「私はあんたが戦死したって官軍から聞かされて、そんな事より何であんたが。」


「おみよ。」


「お前さん、私、お前さんが死んだって聞いたのよ、其れで。」


 山賀から来た女性達の涙が止まらない、だが余りにも突然で何の言葉も交わさない夫婦もおり、騒ぎは暫く収まりそうにも無い。


「えっ、一体何が有ったと言うのですか。」


「私も突然の事で訳が分からないのです。」


 上田も何が起きたのかも理解出来ないと言い、源三郎は暫く何も言わず、ただ見つめていた。


「鈴木様、上田様、若しかすると大変な事になりますよ。」


「私も今同じ事を考えておりました。」


「お主もか、何と言う事だ、私は奇跡が起きたとしか説明が出来ないのです。」


 上田も其れ以上言葉にはならなかった。


 其れでも暫くすると少し落ち着いたのだろうか。


「皆さん、一体何が起きたのですか。」


「オラ達は大江と言う国から来たんです。」


「大江の国ですか、其れで。」


 この農夫は其れから話しを始めた。


「すると大江の国でも不作が続き、其れで官軍に入られたのですか。」


「そうなんですよ、官軍がオラ達の村に来て、官軍に入ればこの村に食料を届けるって、其れと兵士には食べ物も十分に有るんで全員で幕府を倒すんだって、でも今母ちゃんの話しを聴いたら、官軍からはその後一度も食料は届けられて無いって。」


「オラの村でも同じで、オラ達は官軍に騙されらんですよ。」


 官軍の兵士となった農夫の話しは源三郎が何度も聞かされた内容と同じで有る。


「では皆さん全員が大江藩の人達ですか。」


「はい、オレは大江藩のご城下で。」


「オレ達は大江から来たんです。」


「そうですか、分かりました、若しかすれば他の人達の奥さんも来られて要るやも知れませんので。」


「源三郎様、綾乃様は大江藩のご家老様のお嬢様です。」


「では山賀の山を登って来られた女性は。」


「はい、全員が大江から来ました。」


「そうですか、鈴木様は山賀の若様に、上田様は上田の阿波野様と松川の斉藤様に今からは大変ですが今の話を伝えて頂きたいのです。」


「我ら二人にお任せ下さい、なぁ~上田殿。」


「私もこれ以上嬉しい話は御座いませぬで馬で参ります。」


「いや、馬では危険ですので執務室に居られる方々と一緒に向かって下さい。」


「はい、承知致しました。」


 鈴木と上田は大急ぎで暗くなり始めた街道を速足で向かった。


「皆さん、今二人を向かわせましたので、明日、いや数日待って頂きたいのです。」


 何時もの源三郎ならば次の事も考えるが、今は次に何が起きるやも知れず考える事も出来ない。


「なぁ~上田殿、何と言う事だ、山賀より来た女性達のご主人が菊池の隧道より入った官軍兵だとはなぁ~、まぁ~それにしてもこれは正しく奇跡と言う他は有るまい。」


「私も驚きを通り越し唖然で、この様な事が実際に起きるとは夢にも思わなかったですからねぇ~。」


「確かに総司令のお顔も唖然とされておられたからなぁ~。」


「だけど、正かこの様な事態になるとは、あの時には想像も出来なかったからなぁ~。」


「阿波野様や斉藤様も驚かれる思うが、一番驚かれるのは若様だと思うんですよ。」


「其れは間違いは無い、山賀の山を登って来た女性達のご主人が生きて、今は連合国内に居るとは一体誰が想像する、だがなぁ~私は別の心配が有るんだ。」


「鈴木様は何が心配なのですか。」


「其れは、あの時我々が殺した官軍の指揮官達だ、正かとは思うんだが。」


「そうですよねぇ~、指揮官達が大江藩のご家中だとすれば、だが今更どの様にもなるものでは無いのですから、其の話しは我々から話す必要も無いと思うのです。」


「そうだなぁ~、其れよりも急ごうか。」


 鈴木と上田は心配する事も有るが、今は一刻も早く、松川、上田、山賀に知らせなければならず、街道は暗く提灯の明かりだけが揺れて要る。


 其の頃、大広間の騒ぎを聞き付けた殿様とご家老様が大広間に入って来た。


「源三郎、一体何事じゃ、大変な騒ぎになっておるが。」


「殿、実は兵士、いや農夫や町民の男達は菊池の隧道より入りし元官軍兵でして、女性達は山賀の山を越えて来た者達で大江の国から来たと言うので御座います。」


「何じゃと、其れでこの騒ぎになったのか。」


「元官軍兵は戦死したと知らされていたのです。」


「では女性達はその者達の内儀と申すのか。」


「其の通りでして、私は急ぐ必要が有ると思い、鈴木と上田に松川、上田、山賀へ知らせよと先程参らせたのです。」


「う~ん、まぁ~其れも仕方有るまい。」


「正かとは思うが知っておったのでは有るまいの~。」


「父上、飛んでも御座いませぬ、私も上田から聞き急ぎ参った次第で正かとは思いました。」


「源三郎、これは奇跡と申しても良いの~。」


「私も其の様に思います。」


「後の事は任せたぞ、宜しく頼む、この者達も幕府と官軍の犠牲者と言う事なのじゃ。」


「はい、承知致しております。」


 殿様とご家老様は静かに大広間を出て行く。


 源三郎が大広間の脇を見ると、其処には雪乃と加世、すずが涙を拭って要る。


「ねぇ~だけど大江のお殿様は。」


「其れが分かないんだ、オラ達と一緒のお侍様は他の国から来たとしか分からないんだ。」


「じゃ~お侍達は。」


「其れが全員が狼に。」


「ねぇ~狼って、でも何であんた達は生きて此処に来られたのよ。」


「其れがなぁ~。」


 農夫は官軍の指揮官だけが狙い撃ちされ狼の餌食になったと、そして、自分達は菊池の隧道から入って来たと詳しく話すが、其れはあちらこちらでも同じ様な話をして要る。


 野洲を出立した鈴木と上田は一時程して上田のお城に着いた。


「阿波野様、野洲で大変な騒ぎが起きたのです。」


「この様な刻限に来られたのですから余程重大な問題が発生したと、私も理解出来ますが、一体何が起きたのですか。」


「実は菊池から入った元官軍兵の一部ですが山賀の山から来られた女性達のご主人達だと言う事が分かったのです。」


「えっ、正か其れが誠ならばその人達に奇跡が起きたのですか。」


「正かこの世の中でこの様な事が起きるとは夢にも思っておりませんでしたので、奇跡だと感じました。

  野洲のお城ではもう大騒ぎでして、私と鈴木様が総司令の命を受け、明日でも良かったのですが自分の気持ちが抑え切れず失礼だとは思いましたがこの様な刻限にお知らせに参ったので御座います。」


「分かりました、其れでその人達ですが何れの藩なのかお分かりで御座いますか。」


「女性達は大江の国だと申されておられました。」


「大江の国ですか、では今から女性達を起こしますので上田様からお話しをして頂けますか。」


「勿論で、私で宜しければ、其れと鈴木様、今の刻限で向かわれるのは大変だと思いますが。」


「上田殿、私は何としても明日の早朝には山賀に着きたいのです。」


「鈴木様、此処から山賀に向かうのは大変危険で狼が出没し猟師さんでも家を出られませんので、明日の明け方までお待ち頂き、今日は鈴木様もお話しに参加して頂ければ女性達も安心すると思います。」


「承知致しました。

 では上田殿、二人で話しをさせて頂く事にしましょう。」


「どなたか起きておられますか。」


 数人の家臣が笑顔で現れた、彼らは別に盗み聞きしていたのではないが、野洲からの急用だと知らせが入り阿波野が待機させていた。


「今のお話しを聞かれた思いますので、腰元達を起こし話しをし女性達を大広間に集めて下さい。

 其れと殿にもお知らせください。」


 数人の家臣は直ぐに動き出し、阿波野と鈴木と上田は大広間に向かうが、家臣が腰元達に知らせると、城内の腰元達が一斉に動き出し大広間に通じる廊下と大広間に灯りが灯された。


 知らせを聴いたお殿様も大急ぎで大広間に向かうが話しを聞いた女性達は其れよりも早く大広間に集まった。


「皆さん、眠っておられるところ申し訳有りませんが、先程野洲から鈴木様と上田様が来られまして、皆様にはどうしてもお話しをしなければならないと申されておられます。

 私よりも上田様からお話しを聞いて下さい。」


「私は野洲の上田と申しますが、皆様は大江の国から来られたのでしょうか。」


「お侍様、オラは大江の国から来ましたが、大江の国で何か有ったんですか。」


「あの~私達全員が大江の国から来ましたが、其れが何か。」


「そうですか、ではお話しをしますので。」


 上田は野洲に入った官軍兵の中から大江の国から来た人達がおり、その歩兵が野洲に行った女性達の主人だと言う事が判明したと話した。


「えっ、お侍様、今の話しは本当ですか。」


「私は其れを知らせに参ったのです。」


「じゃ~オラの父ちゃんは戦死じゃなかったのか。」


「私の主人は生きてるの。」


 大広間に集まった女性達は正かと思った。

 官軍の知らせでは全員が戦死したと報告を受け、誰もが生き延びる気持ちも失せた。

 綾乃達の説得を受け、大江の国を出立し何としても生き残りたいとの一心で、今は上田のお城に要る。


 だが自分達の主人が生きて要ると告げられ有る者は涙を流し、有る者は大声で何かを叫び、女性達の喜びは最高潮に達し収拾が付かない。


「上田殿、今申されました話しは誠ですか。」


「殿様、誠で御座います。

 私も最初は信じる事が出来なかったのですが、野洲に来られた女性達全員がご主人で有ると。」


「阿波野、大変な事になったぞ、明日にでも野洲へ全員を連れて参るのじゃ。」


「殿、私が責任を持ちまして明日の明け方になるかと思いますが。」


「余は賄い処に参りおむすびの準備をさせるので、阿波野、後の事は任せたぞ。」


 上田のお殿様は其れだけを言って賄い処へと向かった。


 大広間に居る腰元達も涙を拭い、やはり同じ女性の立場で戦死した聞かされた主人が生きて要ると聞かされれば大喜びするのも当然だ。

 大広間の女性達の騒ぎは暫く続き、阿波野も鈴木と上田も何も言わず静かになるのを待ち、やがて大騒ぎも暫くして収まり。


「皆さん、私は大変申し訳ないと思うのですが、私は皆さんのご主人を知りませんので、其の方々全員が生き残られているとは正直申しまして確信が無いのです。」


「あ~やっぱりだ、私のぬか喜びかも知れないねぇ~。」


「オラもだ、お侍様、でも野洲の人達は全員生きてたんですか。」


「其れは私が見ておりましたので間違いは有りません。

 皆さんに何と言って良いのか分かりませんが、誠に申し訳御座いません。」


 上田は女性達に頭を下げた。


「お侍様、頭を上げて下さいよ、何もお侍様が謝る事なんか無いんですから、でも野洲の全員だとすれば、若しかすれば私達の亭主も生きてるかも知れないんですよねぇ~。」


「でも私は確信が有りませんので。」


「お侍様、私はいいんですよ、だって官軍からは全員が戦死したって聞いた時には、私も一度は死にたいと思ったんですから、そうだ野洲に幽霊でも見に行きますよ。」


 この女性は何と気持ちの強い女性だ、普通ならば果たして今頃は生きて要るだろうかと、だが其れも綾乃と言う家老の娘が城下の女性達を説得し道中での危険と、其れにましても山賀、いや連合国の山には狼の大群が生息し、山賀の城下に着くまで何度も危機を克服し、其れがこの様に強くなったのだと。


「皆さんが宜しければ明日の朝ですか、野洲に向かいたいと思いますが、皆さん、如何でしょうか。」


「お侍様、私は行きますよ、まぁ~奇跡が起これば亭主も生きてると思いますから。」


「お侍様、オラも行きますよ、官軍は戦死だって言ってましたが、オラは父ちゃんは死んだと思ってますんで幽霊でも見に行きますよ。」


 そして、上田の女性達全員が野洲に行くと決まった。


「では、明日の明け方には出立しますが、朝はおむすびと漬け物を用意しますので。」


「あの~お侍様、若しもですよ、若しも私の亭主が生きていたらどうなるんですか。」


「私もですが、いや源三郎様が考えられる思いますので、ですが何も心配される事は無いと思います。」


「じゃ~亭主は殺されないんですか。」


「えっ、何故ですか、誰が貴方方のご主人を殺すと言うのですか、源三郎様はねぇ~其の様なお方では有りませんよ、其れだけは間違いは有りませんからね。」


 女性達が思うのも無理は無い、幾ら亭主だと言っても元官軍兵で有り、連合国から見れば敵軍の兵士で敵軍ならば捕虜では無く銃殺されると思って要る。


「では皆さん、明日ですが、七つ半にはお城を出ますのでね宜しくお願いします。」


「お侍様、有難う、でも私は若しもの時でもお侍様達を怨む様な事は考えませんから。」


「私と鈴木は皆さんと一緒には野洲にへ行けませんので、私達は明日隣の山賀に向かい、皆さんと同じ話しをしなければなりませんので。」


「お侍様、じゃ~大江の国の人だけなんですか。」


「はい、今は貴方方以外の女性は来られておりませんので。」


「では、皆さん一度部屋に戻って下さいね。」


 女性達は何かを話しながら部屋へと戻って行く。


「上田様、鈴木様もお部屋の方に。」


「私達も明日七つには出立しますので。」


「承知致しました。

 女性達は私が責任を持って野洲にお連れしますので。」


 そして、早朝、いや夜も明けぬ七つには上田と鈴木は松川へと、七つ半には松川の大手門に付き。


「お頼み申します、私は野洲の上田と申します、総司令から大至急お伝えする様にと。」


「はっ、はい直ぐに。」


 松川の門番は大慌てで小門を開け、別の門番は若殿の部屋へと向かった。


「分かりました、大至急斉藤様に知らせて下さい。」


 家臣が城下の斉藤宅へと走った。


「若殿様、大変で御座います。」


「何ですと、野洲の上田様と鈴木様が分かりました。」


 若殿は着換えもせず執務室へ向かった。


「若殿様、何か有ったのでしょうか。」


「私も分かりませぬが、野洲の義兄上様に何か有ったのでしょうか。」


 若殿が執務室に入ると其処には上田と鈴木が待っていた。


「上田様、鈴木様、お待たせ致しました。」


「若殿様、実は。」


 と、上田は野洲で起きた事を話すと。


「えっ、正か其の様な事が、其れで上田様、阿波野様は。」


「はい、七つ半には女性達全員と野洲に向かわれと思います。」


「誰か女性達を大広間に、其れと父上にもお知らせ下さい。」


 松川の家臣は腰元に伝え、大広間に集まる様にと、そして、大殿様にも伝えに走った。


 其の頃、斉藤も家臣の話しを聞き大急ぎででお城へと向かい、腰元達も大急ぎで山賀から来た女性達を起こし大広間に集まる様に伝え、腰元達は賄い処へと向かった。


 大広間には次々と女性達が集まり、若殿と上田、鈴木も入った。


「皆さん、朝早く起きて頂きましたが、今から大切なお話しが有りますので静かに聴いて下さいね。」


 若殿は其れ以上話さず、上田がその後詳しく話すと、大広間に集まった女性達は大騒ぎとなり、其れは上田のお城と同じで、若殿も上田、鈴木も暫く何も言わず騒ぎが収まるのを待ち、其の時、斉藤が飛び込んで来た。


「若殿。」


「斉藤様、私からお話しを致しますので、此方の方へ。」


 若殿は斉藤を廊下に連れ出し野洲で起きた事を話すと。


「えっ、正か其の様な事が、私はとても信じる事が出来ませんが。」


「私も今上田様からお話しを伺い驚いて要るのですが、今上田様と鈴木様がお話しをされておられますのでお聞き下さい。」


「皆さん、ですが私は皆さんのご主人やご兄弟が必ず生きておられるとは申せ無いのです。」


 上田と鈴木はその場で手を付き頭を下げると。


「お侍様が何で謝るんですか、私は官軍が大嘘を言ったのに腹が立ちますが、お侍様は親切心で私達に知らせて下さったんですよ、私は仮に亭主が本当に戦死して要るんだったら諦めますよ。」


「誠に有り難いそのお言葉で、私達は救われます。」


「でも私は野洲に言って自分の目で確かめたいんですが宜しいんですか。」


「はい、勿論ですよ。」


「じゃ~今からでも行っていいんですか。」


「若殿、お持ち致しました。」


「有難う、申し訳有りませんねぇ~。」


 若殿は腰元達に頭を下げ、其れは腰元達と賄い処の女中達がおむすびと漬け物を運んで来た、やはり松川でも腰元達の機転で、女性達が今直ぐにでも野洲に行きたいと言うだろうと賄い処でおむすびを作っていた。


「竹之進、お前も参るのじゃ。」


 大殿様も上田と鈴木の話しを聞いていた。


「父上、承知致しました、斉藤様もお願いします。」


「若殿、では直ぐ準備に掛かります。」


「皆さん、もおむすびと漬け物を食べてからで、斉藤様も一緒に。」


 若殿と斉藤も女性達の中に入り、一緒におむすびを頬張り。


「大殿様、若殿様、私と鈴木はこの間々、山賀に向かいますので。」


「上田様も鈴木様もまずは腹ごしらえですよ、其の間に馬の用意も終わると思いますので。」


 余りにも突然の事で松川の馬番も用意で出来ていない、其れよりもまずは食べるのが先だと若殿は思い二人に食事を進めた。

 女性達は今何を考えて要るのだろうか静かに考える者、何故か涙が止まらずに要る者、其れでも食べ終わる頃女性達は急いで部屋に戻り半時後には若殿と斉藤が先頭になり野洲へと向かった。

 同じ頃上田と鈴木は松川から馬に乗り山賀へと飛ばし、二時半程で山賀に着いた。


「若、野洲の上田様と鈴木様が馬を飛ばして来られましたぞ。」


「えっ、正か義兄上に何か有ったので御座いませんか。」


 若様と吉永は何時もの様に執務室に居た。


「若様、失礼します。」


「これは上田様と鈴木様、野洲で何か有ったのですか。」


「はい、実は。」


 と、上田が若様に話すと。


「左様ですか、高木様、大至急女性達を大広間に。」


 高木は城内の女性達に、数人の家臣は北の空掘りに向かった。


 北の空掘りでは大江の女性達が賄いの仕事に就いており、其の女性達を呼びに行き、呼ばれた女性達は何の話しが有るのかも理解出来ず、其れでも急いで大広間へと向かった。


「上田様、其れで松川の兄上は。」


「はい、今朝早く、若殿様と斉藤様が先導され野洲に向かわれました。」


「若様。」


「綾乃様、お話しは大広間で皆さんと一緒にお聞き下さい。」


「はい、承知致しました。小百合、参りますよ。」


 綾乃と小百合、更に大江から来た家臣の妻達も大広間へと向かうが、綾乃達は何も話さず、其れよりも何かを考えて要る様子でやはり思うところが有るのだろう、城下にも多くの女性が移りその人達が集まるまで暫く掛かったが、其れでも全員が集まると。


「皆さん、お忙しいところ誠に申し訳有りませんが、先程、野洲から上田様と鈴木様が参られまして皆さんにどうしてもお話しをしなければならないと申されておられます。

 私も全てをお聞きしてはおりませんが、皆さん静かにお聞き下さいね、では上田様お願いします。」


 若様も吉永も全ては聞いていないが、其れでも恐ろしい程に奇跡的な話しだと感じて要る。


「皆様、数十日前の話しですが、五千人の官軍兵が菊池に有ります隧道から我々の連合国に入って来られ、其れでお話しをする前に皆様方のお国を知りたいのですが、宜しいでしょうか。」


 殆どの女性は隣同士で顔を見合わせて要る。


「上田様と申されましたが、私達は大江の国から連合国の山賀の山を越えて参りましたが、其れが。」


「左様ですか、では皆様は大江の国から来られたと言う事で話しをさせて頂きますが、実は官軍兵の中に大江の国から来られた農民さんや町民さんが居られるのが分かったのです。」


「えっ、お侍様、オラの父ちゃんは戦で死んだって官軍から聞いたんですよ。」


「お侍様、オラもだ、オラ達は官軍から直接聞いたんですよ、其れが何で菊池に要るんですか。」


「ではそのお話しをしますのでね、実はですねぇ~先日の話しですが。」


 上田は他の上田、松川とは違い言葉を選び話し、其れは山賀には大江の家老の娘で綾乃と小百合、更に大江の家臣の妻達がおり、其れが言葉の使い方を変えるので有る。

 山賀に残った女性達は大喜びするよりも、やはり綾乃や家臣の妻達に気を使って要るのか、其れとも上田の話しが本当なのか、まだ信じられないと思う女性達も要る。


「ねぇ~奇跡だよ、だって官軍は大江から来た全員が戦死したって、だけどお侍様の話しじゃ野洲に行った人達が旦那と会ったって、そんなの本当に奇跡の話しだよ、私はお侍様が何で嘘の話しをする為に野洲から来ると思うのって。」


「そうだなぁ~、オラもお侍様の言う話しは信じるよ、でもオラの父ちゃんが本当に戦死しててもオラはお侍様は怨まないよ。」


「有難う、私は今の言葉を聞き本当に嬉しいですよ、若しもですが、皆さんのご主人やご兄弟が戦死され野洲に居られなかった時には許して頂きたいのです。」


 上田は手を付き頭を下げた。


「お侍様、私はお侍様に感謝しますよ、だって私はこんなお侍様って初めて見たんだもの。」


「綾乃様、お聞きしたいのですが、大江のご家中ですが。」


「私が聴きましたところでは、別の部隊に参られ、大江の領民とは一緒では無いと、ですが何故其の様な事を聞かれるのでしょうか。」


「実は五千人の歩兵の殆どが農民さんや町民さんだと情報が入っておりまして、其れで。」


 上田は話しを止めた、其れはあの官軍の指揮官達は大江の家臣では無いと思ったが、やはり同じ武士として大江の家臣の妻達が聞いており、簡単に狼の餌食になったとは言えない、だが鈴木は違った。


 其れは鈴木が連合軍の第一矢を放ったからだ。


「綾乃様、上田、いや私が官軍の指揮官に連合軍として最初の矢を放ち、その後、連合軍は官軍の歩兵では無く、指揮官だけを狙い、指揮官をだけを殺し狼の餌食にしたのです。」


「其れは誠で御座いますか、其れで官軍の指揮官はどの様になったので御座いますか。」


「全員が狼の餌食になりましたが、歩兵からは一人の犠牲者も出しておりません。」


「皆様、上田様も鈴木様は決して嘘の話しをされてはおられません。

 私は皆さんのご主人やご兄弟が生きて要ると信じ野洲へ向かわれては如何ですか、私ならば直ぐにでも参らせて頂きます。」


 綾乃は領民の女性達が家臣の妻達に対し余計な神経を使って要ると思ったのだろう。


「そうねぇ~、若しも本当に戦死してるんだったら、今度は本当に諦める事も出来るし、私も野洲に行って見るよ。」


「そうだねぇ~、まぁ~父ちゃんに怒られるかも知れないけど、他の国を見るのもいいかなぁ~って、私も行くわよ。」


「では皆さんは如何されますか、同じ行くならそうですねぇ~、今からお昼の食事を取ってから出れば今夜は松川に泊まり、明日の早朝に松川を出れば夕刻までには野洲に着きますよ。」


 吉永は既に賄い処におむすびと漬け物の手配済みだと、若様に目で合図した。


「じゃ~オラも行くよ。」


「私も行くわよ、そうだ綾乃様も行かれたらどうですか。」


「えっ、私がですか。」


「綾乃様にも我々の連合国を見て頂ければ、少しは我々の事も理解して頂けると思いますので。」


「私だけが参ると言うのは。」


「では全員で行きましょうか、其れが一番宜しいかと思いますよ。」


 其れでも家臣の妻達は迷って要る。


「そうだよ、みんなで行きましょうよ、其れに若様もね。」


「勿論、私も参りますよ、私も久し振りに姉上様に会いたいですからねぇ~。」


「姉上様って。」


「今は源三郎様の。」


「えっ、じゃ~やっぱり源三郎様はお殿様なんですね。」


「義兄上は野洲のご家老様のご子息で、姉上は源三郎様の妻になれないので有れば自害しますと。」


「わぁ~何でお姫様が。」


「まぁ~其の話しは野洲に行って姉上に聴いて下さいよ、姉上は全部話してくれますからね。」


 其の話しで女性達全員が野洲に行く事を決め、其の日の昼、若様と上田、鈴木を先頭に野洲へと山賀に来た女性達は奇跡を信じ力強く歩いて行く。



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