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闇の帝国    作者: 大和 武
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第  8  話  司令官の決断。

「フランチェスカ、只今戻りましたよ、あれ、何方か、来られているんです


か。」


 「はい、実は、先程から農場の人達がお待ちされていまして、皆さん、何


か、深刻なお顔をされておられますが。」


 「判りました、食事は、話しが終わってからでもいいですか。」


 「はい、私は、別に後でも、宜しいので、では、飲み物だけでも。」


 「ありがたいですね。」


 と、司令官は、手前の会議室に入って行く。


 「やぁ~、皆さん、大変、長い間お待たせしました。


 其れで、何か、私に、お話しでも有るのでしょうか。」


 その農民達は司令官と一緒に来た人達だった。


 司令官は農民達が相当深刻な問題を抱えていると思った。


 「司令官、我々は、この先、一体、どうなるんですか。」


 「えっ、何がですか、何も変わらないと思いますよ。」


 司令官は彼の言った意味がわからないので、暫くの沈黙が続き。


 「一体、何が、あったんですか、何でも宜しいですから、お話し下さい


よ。」


 すると。


 「司令官、オレ達は、肩身が狭いんですよ。」


 「えっ、其れは、どう言う意味なんですか、この農場で何があったんです


か。」


 「司令官、何も無いから辛いんですよ。」


 彼らは、何を言いたいんだ、何も、問題が無いから辛いとは、司令官も、


全く、理解が出来ない。


 「何も、問題が無ければ、私は、それで、良いと思いますが。」


 「司令官、此処の人達は本当に優しいんですよ、だからね、余計に辛いん


です。


 オレ達は、ここに不満があるんじゃ~無いんですよ、それなのに。」


 司令官に理解してくれと言っても、理解のしようが無い。


 「不満も無い、其れに、親切な人達ばかりだと、では、一体、何が言いた


いんです。


はっきりと言って下さいね。」


 またも、沈黙が続き。


 「あの~、司令官、実は、この農場の外に新しい農場を造る作業に入って


いますよね。」


 「そのとおりですが、あれには色々な事情が有りましてね、其れが、何


か。」


 そうか、何か、新しい農場に関係が有りそうだと。


 「司令官、新しい農場は大きいんですか。」


 ほら、きたか、司令官は頷き。


 「其れは、大変な大きさですよ、城門を出て、左へは大きな川のところま


でですがね、馬車で二日は掛かりますよ、それと、城門の前からは半日のと


ころまで掛かるんですがね、其れが、何か。」


 農民達は大変な驚きだった。


 「え~、そんなに大きな農場なんですか。」


 「其れが、どうかしたのですか。」


 「じゃ~、司令官、その新しい農場てってのは一箇所だけなんでしょう


か。」


 「いいえ、その様な農場をですね、私が以前居りました城まで10箇所ほ


ど造る予定なんですが、其れが、何か。」


 またも、大変な驚きで、だが、彼らには、新しい農場の話などはしていな


い。


 「それじゃ~、新しい農場に入られる人達は決まっているんですか。」


 農民達はお互いの顔を見合い、頷いている。


 そうか、やはり、新しい農場の事なんだと司令官もわかった。


 「でも、私も、詳しくは聞いておりませんが、正式には、まだ、決まって


いないとは思いますよ。」


 彼らは、この農場に不満は無いと言っているが。


 「司令官、言い難い話なんですが。」


 「いいですよ、話して下さい。」

 

 農民達は直ぐには話が出来ないのだろうか、沈黙が続き、暫くして。


「はい、じゃ~、実は、オレ達も新しい農場を造りたいんですが。」


 やはりだった、其れは、不満が有るって事なんだと言いたいのだろう。


 「では、この農場から出るって言われるんですか。」


 農民達は頷き。


 「はい、司令官、その通りなんです。


でもね、本当にこの農場に不満が有るからじゃ~無いんです。


 オレ達は、この農場に不満があるなんて言ったら、オレ達はバチが当たり


ますよ。」


 それじゃ~、何故、この農場を出る必要が有るんだ。


 この農場に居れば、安心して農作業に就くことが出来るんだ、それなの


に、何故だと聞きたいところだが。


 「それじゃ~、何故、新しい農場に行きたいんですか、あの地では最初の


城壁造りから始まるんですよ、そんな苦しい作業に何故なんですか。」


 「司令官、其れは、みんなもわかっているんです。


 この農場に来た時には城壁も出来上がり、農地には小石も無かったんで


す。


 オレ達はね、司令官、何の苦労もして無いんですよ、それに、将軍は、収


穫した作物は農民が必要な量だけ取れと言われましたよ、だって。」


 「うん、其れは、私も知って要るよ、はじめに聞いた時には驚きました


よ、閣下はね、何時も言われているんですよ、オレ達兵隊は日頃、何もする


事無く食べ物を頂いている。


 食べ物は農民が大切に育てた物だから、農民は、半分じゃ少ないもっと多


く取れと。」


 「司令官、オレ達の居た城でも同じだったんでしょう。」


 「うん、本当の話はね、城主は半分でも多いと言われてたんだ、だけど、


悪い重臣達は、自分達のために多くを取り上げる必要が有ると考えたんで


す。


その結果、あの城の領民の多くが他国へと逃げる事になったんです。


 でも、貴方方は農民だ、農民は土地を耕し、作物を収穫する事で生きてい


るんですよねぇ~。」


 「はい、そのとおりなんです、其れに、あの土地にも大きな岩がたくさん


有りましたが、オレ達は何も出来なかったと言うよりも、何もしなかったん


ですよ。」


 「ですが、今は、作れば作るほど、皆さんも元気になれると思っておりますが。」


 確かに、以前の土地にも大量の岩石が有った、だが、彼らは、その岩石を


掘り出す事もしなかったのである。


 「はい、確かにそのとおりだと思います。


 でも、司令官、オレ達は農民なんです、オレ達の土地を最初から造りたい


んです。


 それにですよ、今じゃ~、兵隊さんも一緒になって手伝って下さるり、子


供達の面倒も良く見てくれるんですよ、こんなありがたいところなんです


が、でも、オレ達は、もう一度、最初からやって見たいんです。


 司令官、お願いですから。」


 「ですがね、どの様な説明をするんですか、不満も無いのにですよ、閣下


なら、何故なんだよ、オレ達に不満が有るのか、じゃ~、その不満を言って


くれって。」


 司令官は困った、不満も無いが、この農場を出て、新しい農場を最初から


造るんだと、其れに、彼らは簡単だと思って要るのだろうか。


 「じゃ~、聞きますが、皆さんは、あの大きな岩を簡単に動かせるとでも


思って要るですか、私も、見ましたがね、其れは、大変な間違いですよ、た


だね、この農場には、色々な道具も有りますから、出来ない事は有りません


が、でも、皆さんだけで出来ると思って要るのであれば、それこそ、大変な


間違いですよ。」

 

 農民達は何も言わず、下を向いている。


 「それにですよ、貴方方は、その前に、何か忘れていませんか。」


 農民達はお互い顔を見合わせ、首を振っている。


 「判りませんか、多分、今の貴方方じゃ~、わからないと思いますよ。」


 彼らは、司令官の言った意味がわからない。


 「じゃ~言いましょうか、貴方方の身体を見て、何か感じませんか。」


 農民達は自分達の身体を見たが、全く、何の意味なのかわからない。


 「其れじゃ~言って上げましょうか、貴方方は以前に比べ、体重が増えて


いると思いますよ、其れはね、食べ過ぎているからなのですよ。」


 「えっ、司令官、オレ達はそんなに食べてはいません、ただ。」


 「ただ、何ですか、言えないでしょう、閣下と共に来られた人達は、私


が、此処に着た時と同じだと思います。


 でもね、貴方方は以前に比べ、体重は確かに増えていますよ、貴方方は知


らないと思いますがね、あの人達はね、何時、何処から農民が逃げ込んで来


てもいいように、何時も、穀物などの種を保管しているんです、だから、何


時も最初に食べ物を作って届けて下さっているんですよ、だけど、今の貴方


方にどれだけの蓄えがありますか。」


 「はい、一応、来年の種だけは。」


 「それ以外、貴方方が食べたと思いますが、どうですか、間違っています


か。」


 農民達はうな垂れている。


 「其れにですよ、閣下が許可を出され、貴方方が開墾に入ったとしましょ


うか、収穫が出来るまでの食料はどの様に確保されるんですか。」


 農民達は何も考えず、ただ、新しい農場に行きたいだけなんだ、新しい農


場で作った作物は、全て自分達だけの物なんだとでも言いたいのか、だが、


こんなバカな事を考えて要るのは何人いるんだと思い、司令官は腹が立って


きた。


 「貴方方のような考え方を持って要るのは、他にもいるんですか。」


 「はい、他は知りませんが、今のところは、我々だけだと思います。」


 と、小さな声で言って、彼は、また下を向いた。


 「判りましたね、今の話はね、聞かなかったことにしますから、明日から


は、心を入れ替えて下さいね、じゃ~、帰って下さい。」


 と、司令官は、数人の農民を帰した。


 彼らが帰ったあと。


 「ねえ~、あの人達の事は。」


 「いや、別に、今日の話は無かった事にしますので、君もわかっていると


思いますのでね。」


 「勿論です、口外は致しません。」


 「だけど、他の人達はどの様に考えて要るのでしょうかねぇ~。」


 「実は、私も、その事を考えておりました。


 確かに、今回は、あの人達だけですが。」


 「そうなんだ、だけどね、閣下の事だから、何かの考えがあって、あの農


民達を入れたと思うんですよ。」


 「私が、思ったことを申し上げても。」

 

 「勿論ですよ、聞かせて下さい。」


 と、司令官は、フランチェスカの顔を見る。


 「私は、将軍の事ですから、一番監視のしやすいところに置いたと思うん


です。」


 「えっ、正か。」

 

 だが、其れが正解だったのだ司令官も知っていた、だが、フランチェスカ


までもが判ると言う事は、彼らは、既にわかっているはずだ。


 判っていながら、何も言わずに開墾に入るとは、彼らも、別のことを考え


て要るに違いない。


 「でも、之は、私が勝手に思っただけなんです、誰にも言ってはおりませ


んので、お許し下さい、余計な事を申し上げて。」


 「いいえ、いいんですよ、私は、何も、君を責める気持ちは有りませんか


らね。」


 だが、フランチェスカの目には涙が溢れていた。


 「フランチェスカ、私こそ、余計な心配をさせてしまいましたね。」


 と、司令官は、優しくフランチェスカを抱くのだ。


 フランチェスカの涙は止まらなかった、だが、司令官は優しくキスをする


と、彼女も其れに答え、熱く続いた。


 「フランチェスカ、遅いですが、夕食にしようか。」


 「はい、直ぐに。」

 

フランチェスカは急いで、台所に向かった、台所からは美味しそうな匂いが


漂う。


 「今日ね、猪の肉が届いたのよ。」


 と、フランチェスカはうれしそうな顔で言った。


 「そうですか、其れは本当に良かったですね、先程から、私のお腹がね、


待っていましたよ。」


 と、司令官も二コ二コとしている。


 「うん、之は、美味しいよ、君も早く食べないとね。」


 二人の夕食は遅かったが、何時に無く、静かな夜に、二人は、何時も以上


に燃えた。


 明くる朝、司令官は、昨夜、農民達から聞いた話が気に成り、ロシュエの


宿舎へと向かった。


 「閣下、お早う御座います。」


 「お~、司令官、一体、何事なんだよ。」


 ロシュエは、少し驚くのだが。


 「いえ、別に、何も御座いませんが、昨日同様、閣下は、開墾地に向かわ


れるのでは無いかと思いましたもので。」


 「さすがだねぇ~、司令官は、オレの動きを読んでいるよ、そのとおり


だ、オレはね、開墾地を見たくなってねぇ~。」


 「閣下は、今度の開墾地を熱心になられておられますので。」


 「うん、そうなんだよ、オレはね、この開墾地を、司令官が連れて着た人


達にお願いしようと思ってたんだよ。」


 「えっ、其れは、誠で御座いますか。」


 司令官も、ロシュエの考えはわからなかった。


 「だって、そうだろうよ、あの人達だって、自分達も農地が欲しいと思っ


て要ると思うんだ、オレもなっ、今度ばかりは読みが浅かったかなぁ~っと


思って要るんだ。


 其れに、正か、正かだよ、ウエス達が農民を連れて戻ってくるなんて、一


体、誰が想像出来る、オレ達の時はよ~、何も考えなかったんだよ、だが


よ、今回は違うんだ、奴らの出方も見ないとねぇ~。」


 司令官の驚きはそれだけでは無かった。


 「オレはね、司令官の目の届くところにだよ、即ち、直ぐ側を司令官にお


願いしようと思ってるんだ。」


 其れは、農場の開墾中もだが、此れから先も、司令官の目が届くところに


農場を造るという計画なのだ。


 「其れによ~、司令官、彼らも不満が有るんじゃ~無いのかよ~。」


 司令官の心臓は止まりそうになった、それは、昨夜、数人の農民が言った


話は誰も知らないはずなのに。


 「いいえ、私は、何も聞いておりませんが。」


 司令官はとぼけたが。


 「だがよ、不満があったとしても当たり前なんだ。


オレも、司令官も知らないだけかも知れないんだ、だって、そうだろう、多


くの農民を苦しめたウエス達が農民を連れてきたんだ、誰だって、早く、他


の土地に行って欲しいと考えると思うんだ、だがよ、オレは、その反対で、


奴らを監視するためには、一番、良く見える場所に置く、其れが、今回の開


墾地だって事なんだ。」


 「私は、其処まで考えておりませんでした。」


 「其れの監視に、今は、野盗隊が入ってるんだがよ~、司令官に隣の場所


を開墾してもらうとだ、野盗隊も楽になるんだなぁ~、之が。」


 「はい、確かに、そのとおりになりますね、今の野盗隊は、狼と奴らの両


方を監視ですから大変だと思います。」


 「その結果どうなると思う、後は、大きな川、前は、森だ、そして、この


農場の城壁からは全てが見えるんだ、奴らの直ぐ横には、司令官達が開墾に[


入る、これで、完全に出入り口を塞いだと思うんだよ、だからよ~、司令


官、みんなに頼んで欲しいんだ。」


 「閣下、私も、何れかの時期が来ましたときに、私自身が、開墾に入る気


持ちだったんですが。」


 「司令官、突然な話で申し訳ないんだが。」


 「では、閣下、私も早急に話をします、みんなも喜ぶと思いますので。」


 「だがよ、監視って言葉は駄目だよ、あくまでも、開墾なんだからよ


~。」


 「はい、勿論で御座います。」


 之は、一体、何と言う巡り合わせなんだ、昨夜、数人の農民が来て、話を


したばかりだと言うのに、だが、此処までくるのには長い時間が掛かった。


 勿論、司令官も早く開墾に入りたかった、だが、それも、今頃に成って終


わりを告げ、開墾に入れるのが、こんなに早くなるとは予想もしなかったの


だ。


 「では、閣下、私は、今のお話を伝えに参りますので、失礼します。」


 司令官は急ぎ農場に向かった。


 なんで、あんなに司令官は急ぐんだ、やはり、農民達からも不満を聞かさ


れていたのだろう、其れでなければあれほど急ぐ必要は無いはずだと、ロシ


ュエは思った。


 事実はロシュエの思うとおりで、だが、司令官は言わなかった、いや、言


えなかったのだろう。


 一方、司令官は大急ぎで農場に着いた、だが、既に、殆どの農民は農作業


に入っている。


 「やぁ~、司令官、一体、如何したんですか、そんなに急いで。」


 「うん、それよりも、みんなを集めて欲しいんだ、大急ぎでなっ。」


 司令官が最後まで話す前に、数人の農民は走って行った。


 「お~い、司令官が大事な話しが有るってよ、大急ぎで集まって欲しいん


だ。」


 「よし、判ったよ、直ぐに行くから。」


 数人の農民は次々と伝え、話を聞いた農民達は次々と走って集まってく


る。


 だが、時には、違う話が伝わり。


 「お~い、司令官に何かあったんだって、だから直ぐに行ってくれ。」


 農民達は、何が起きたのかわからず、次々と走って広場に集まってくる


と。


 「お~い、司令官が死んだって。」


 「何を言ってるんだよ、司令官は生きてるぞ。」


 何が、何処で、どう間違ったのか、司令官は死んだと言うのだ。


 その司令官は、笑って聞き流し。


 それから、間も無く、殆どの農民達は集まり、農民達は何かを話してい


る。


 「みんな、聞いて欲しいんだ、実は、今、将軍から話があって、我々も開


墾に入る事に成ったのです。」


その時、広場で大きな歓声が上がった。


 やはり、この農民達も待っていたのだ、自分達の農場が造れると言う事


が。


 「其れで、数日の内に開墾作業に入る人達を選びたいと思うのですが。」


 「司令官、オレ達全員で行けば。」


 「いや、其れは駄目ですよ、この農場での作業も有りますからね。」


 「それじゃ~、司令官、オレ達の休みを利用すればいいんじゃないか。」


 「それでは、休みが無く成りますよ。」


 「司令官、オレ達は、農民だ、農民に休みは要らないんだから。」


 「そうですか、でも、大変厳しいですよ。」


 「司令官、今の農場はどうなるんですか。」


 「其れは、新しい農場が軌道に乗るまでに数年は掛かると思いますので、


其れに、この農場は大切な農場なんですからね。」


 「だけど、司令官、新しい農場に行くと、この農地は一体どうなるんです


か。」


 農民達は嬉しいのだが、その嬉しさも何か半分のようだと、司令官は思っ


た。


 其れは、長い間、今の農地を耕していたので愛着が湧いてくる、雨が降り


過ぎては心配になり、雨が降らなかったら、また、心配になり、そんな苦し


い思いを過ごした農地なのだ。


 「司令官、私は両方を耕したいんですが。」


 この農夫の言葉がみんなの気持ちを代弁しているのだ。


 「皆さん、先のことを今考えても無理ですよ、今から、両方を耕すのです


か、其れで、宜しいのですか。」


 「司令官、今更、何を言ってるんだよ、オレはね、両方を耕すよ、みんな


も同じだと思うんだ。」


 その時、またも大きな歓声が上がり。

 

「判りましたよ、それじゃ~、これで決まりですね、では、皆さん、明日


からでもはじめますか。」


 司令官の声も、何故か弾んでいる、農民達のある者は二コ二コ顔で話、有


る者は、此れから先のことを考えると不安でいっぱいだという顔付きであ


る。


 それでも、司令官は、何か、晴れ晴れとした顔だ。


 今まで、何度と無く、新しい農地を開くと言う話は有った、だが、何時も


直前になったところで、其れは、何かの理由、其れの多くは野盗の襲撃であ


り、ロシュエや司令官の知らない他国からの攻撃で有った。


 だが、今回は、全く予想もしなかったのである。


 其れは、あの強国だった時の司令官だったウエスが表向きは5千人の兵隊


と、これも、表向きは6千人ほどの農民を連れ、いわば、投降してきたので


ある。


 後で、わかったことだが、本当の農民は数百人ほどで残りの5千人以上が


農民の服装をした兵隊で、彼らは自分達は農民だと言うのだ、其れは、本当


の農民達は脅かされているために、彼らは、兵隊だとは言えなかったのであ


る。


 其処で、ロシュエが考え付いた方法として、彼ら本物の農民は別として、


偽者の農民の処遇である。


 そして、取った策がロシュエ達の農場に一番近い所を開墾させると言う事


になった。


 本来ならば、その場所は川向こうの農民達に開墾させる予定地だったが、


偽者の農民を監視するためには、城壁の手前を開墾させる事で監視も容易に


なると考えた。


 それでも、監視は必要だ、今は、野盗隊が狼と偽者達を監視して要る。


 ロシュエの考えは、二番目の農地を開墾する事で、司令官が監視に入れる


というのだ。


 司令官も嬉しさ半分、不安が半分有る、開墾と奴らの監視、この両方を行


なわなければ成らない。


 司令官は、ロシュエがあれから直ぐに出かけたのであろうと思い、城外の


開墾地へと向かった。


 今の農場も大変な広さだ、農地から城門までは相当な距離がある。


 この内側では、緊急時以外は馬を走らせることは禁止されている、其れ


は、子供達の為だ、馬は降りて、馬車も走るのではなく、馬の歩く速度が基


本とされている。


 其れにより、農場内の子供達は何の制限も無く、広いところを走り回れる


のだ。


 例外は無く、たとえ、司令官でもだ、だが例外は有る、城外で開墾を行な


って要る人達に届ける食事と、戦の時で、それ以外は認められていない。


 司令官は広い農場を歩き、ようやく城門に辿り着いた。


 新しい開墾地は城門を出た直ぐ側にあり、司令官はロシュエを付近を探し


て要約見つけた。


 「閣下、遅くなり申し訳御座いません。」


「いや~、司令官、何もする事は無いんだ、それでどうだった、話をしてく


れたのか。」


 「はい、閣下の申される事を全員に話を致しました。」


 「うん、其れで、どうだったんだよ。」


やはり、ロシュエも、気に成るのだ。


 「はい、全員が賛成してくれました。」


 「そうか、そうか、其れは何よりも良かったよ~、有難うよ、司令官。」


 「閣下、とんでも御座いません。


 其れよりも、彼らは、閣下に感謝致しております。」


 ロシュエは、司令官が以外な事を言うと思った。


 「なぁ~、司令官、この付近の土地は全て岩石だらけなんだよ、其れを開


墾するんだ、一体、誰が喜ぶんだよ~。」


 司令官は口が滑ったのだ。


 「閣下、みんなは大変だとわかっておりますが。」


 司令官は冷や汗を流している。


 「司令官よ、本当の事を話して欲しいんだよ。」


 ロシュエの言葉に、司令官は全てを知られて要ると思い。


 「閣下、申し訳御座いません。」


 と、頭を下げたので有る。


 「なぁ~、司令官、この最だ、全部話しなよ、気分が楽に成るぜ。」


 「はい、閣下、全てをお話します。


 実は、先日の夜で御座いました。」


 「うん、うん、其れで。」


 と、ロシュエは頷くだけで。


 「はい、私の宿舎に数人の農夫が、私の帰宅を待っておりました。」


 「うん、其れで、どんな話をしたんだ。」


 「はい、彼らは、今の農場でも生活に対して、何の不満も無いと言うので


す。」


 「そりゃ~、そうだろうよ、此処に居れば外敵に襲われる事も無いんだか


らよ~。」


 「はい、其れは、私も十分承知いたしております。


 ですが、あのウエス隊長が、5千人の兵隊とは別に6千人ほどの農民を連


れて着た。


彼らは、着たことよりも、何故、奴らが先に農地の開墾に入ったのか、其れ


が、判らないというんです。」


 やはりだった、だが、その理由を話す事はできない。


 「だってよ~、司令官、今、此処に居る農民の殆どが兵隊なんて事を言え


るかよ~。」


 司令官は頷き。


 「はい、勿論、私もそのとおりだと思います。


 ですが、彼らは、その事よりも、自分達の農地を開墾したいと言うので


す。」


 「おい、おい、司令官、なんでだよ、今の場所はなぁ~、あの人達のもの


なんだぜ、それとも何か、誰かが出て行けと言ったのか、オレは許さない


ぜ。」


 と、ロシュエの口調は怒っている、だが、顔は怒って無いのだ。


 「閣下、私の説明が至りませんでした。


 彼らも、閣下の申されたとおり、承知して要るんです。


 其れに、閣下と共に来られました人達は何時も親切で、何の不満も無いん


です。


 ただ、閣下も大変の思いをされておられますのに、奴らが、先に開墾に入


ったことが許せないというのです。」


 だが、あの時の、農夫達はそんな話はして無かった、司令官のつくり話な


のだ。


 「うん、そりゃ~、そうだろうよ、オレだって、何も知らないとだ、何故


だ、奴らが開墾出来るんだと思うんだ、其れが、当然の話だからなぁ~。」


 「はい、私も本当の話は出来ませんので、この開墾は将軍の命令だって言


ったんです。」


 「何、オレの命令だって、オレは。」


 「閣下、申し訳御座いません。


 ですが、将軍の命令とあれば、喜ぶんですよ。」


 「えっ、なんでだよ、オレはよ~、命令ってのが大嫌いなんだぜ、其れ


は、司令官も知って要るはずだ。」


 「はい、勿論、承知いたしております。


 ですが、時と場合によっては、閣下のご命令がものを言う事も有ると思い


ました。


 其れが、今回の話なんです。」

 

 「だってよ~、本当の話か、そうかわかったぞ、本当の話が出来ないか


ら、オレが命令したと言う事に。」


 「はい、さようで御座います。


 農民達も閣下のご命令で有れば喜んでいるんですよ、私も、彼らに聞いた


んです。」


 「えっ、なんて聞いたんだ。」


 「はい、私も、なんで命令に喜ぶんだと、すると、将軍が、オレ達に命令


を出すと言う事は、将軍は、オレ達に手伝って欲しいんだと、言われている


んだ、其れに、オレ達のことも忘れて無いってことだと、この様に申しまし


た。」


 「ふ~ん、そうか、オレの命令は手伝って欲しいと、うん、之は、上手な


解釈の仕方だなぁ~。」


 と、ロシュエはニヤリとするのだ。


 司令官も此処まで嘘を通す事に、自分自身もその気になってきたので有


る。


 「だがよ~、司令官、これだけは言っておくが、この土地の開墾は中途半


端じゃ~無いぜ、それだけは覚悟するんだなぁ~。」


 「はい、承知致しました。」


 「それとだが、この付近の開墾にはよ、特別な道具が必要なんだよ。」


 「えっ、閣下、私は、今、使っております農具で十分だと。」


 「そりゃ~よ、最初はいいんだよ、だが、大きな岩を掘り出すようになれ


ばだ、今の農具じゃ~、何の役にも立たないんだ。」


 「閣下、その様な道具が無ければ。」


 「オレ達もなっ、最初は簡単に考えていたんだがよ~、オレの身長も有る


様な大きな岩が相手じゃ~何も出来ないんだ。」


 司令官は思いだした、以前居た城でも今回と同じ様に開墾に入ろうとした


のだが、専用の道具や工具が無かったために開墾が出来なかったので有る。


 「閣下、私も、思いだしました。


 以前、居りました城でも、今回と同じ様に開墾作業に入ったのですが、道


具や工具も無く、仕方無く開墾を断念した事を。」


 「そうだろうよ~、幸いと言っては何だがよ~、オレ達には、技師長が居


るんだよ、この技師長が色々な道具を考案し、其れになっ、此処の鍛冶屋は


なぁ~、その辺の鍛冶屋とは別格なんだ、その鍛冶屋ってのはよ~、技師長


が書いた絵を基に何でも作るんだからよ~、本当に驚きだぜ。」


 「へぇ~、其れは素晴らしい鍛冶屋ですねぇ~。」


 司令官は、驚きと言うよりも感心するのだ。


 「それにだよ、仲間の中には、大工仕事の得意な者達も居たんで大いに助


かったんだ。」


 司令官は、ロシュエの話で最初の頃を想像している。


 「其れが、今の大工部隊と。」


 「そうなんだよ、其れにだ、オレと一緒に着た兵士達もそうだったんだ、


兵士の中には器用な兵士も居るんだ、だから、オレは、兵士も農民も関係な


く仕事に就いてもらったんだ。」


 「じゃ~、農民だからと言って農作業ではなく、何でも出来ると言う事な


んですか。」


 「うん、そのとおりだよ、だから、あの時だって、農民の姿でホーガンを


持ってたろ。」


 「はい、私も、あの人達は確か、農場の人達ばかりだと思っておりまし


た。」


 「あれはね、オレの命令じゃ~無いんだ。


 あれは、みんな自分達の農場は自分達が守るんだと言う事なんだ。」


 司令官は、この農場には多くの兵士が居たはずだと思っている。


 「閣下、ですが、この農場には多勢の兵士が居りましたが。」


 「うん、其れは判ってるんだよ、だがな、最初の頃は兵士も大変だったん


だ、此処じゃ~、日夜に関係なく狼や猪に襲われていたんだ、だから、此処


じゃ~、農民が兵士に兵士が農民になるって話なんだ、だから、今でも、兵


士達は休みを利用して農場に行くんだよ。」


 司令官は、改めて此れから先が大変だと思うのだ。


 「司令官よ~、此れからは本当に大変だよ、開墾と監視だから、そうだ、


その前にだ鍛冶屋に行くか、道具と工具を作ってもらいによ~。」


「はい、承知しました。」


 「司令官よ、此処の鍛冶屋は素晴らしいぞ、剣や槍も作るが、農機具も作


るんだぜ。」


 「はい、勿論、承知、致しております。」


 此処の鍛冶屋は、兵舎と農家の間にある、其れは、兵士達の使う槍などの


修理から、農作業で使う道具までの製造と修理を行なって要る。


 「よ~、みんな、元気でやってるかぁ~。」


 「えっ、将軍、其れに、司令官も、一体、何の用事なんですか。」


 「お~、すまんなぁ~、忙しい時に、それで、忙しいとわかって悪いんだ


がよ~、少し、相談に乗ってもらいたいんだが、済まんなぁ~。」


 「え~、将軍の相談って、正か、将軍のために剣を作れって、話じゃ~無


いですよねぇ~。」


 と、鍛冶屋は大笑いをする。


 「いや、な~に、簡単な事なんだからよ~。」


 「将軍の簡単なってことが一番恐ろしいんですよ~。」


 と、また笑うので有る。


 この農場の全員が、ロシュエを信頼している、其れに、普段、ロシュエは


彼らの言葉使いにも気にして無いので有る。


だが、いざ、有事となれば、農場の全員がロシュエが出す指示と言うのか、


命令には誰もが、例え命を懸けでも従うので有る。


 「その前に聞くがよ~、今、何か特別な仕事でも有るのか。」


 「そうだなぁ~、隊長さん達の剣の修理も終わり、ホーガン矢の補充も終


わってとこかなぁ~。」


 「それじゃ~、今は、何も。」


 「将軍、其れが有るんですよ、これなんですがね。」


 「え~、一体、何を作ってるんだよ。」


 「ええ、それがねぇ~、将軍、今、新しい農地の開墾が始まったんでね、


大きな岩石の移動に必要な道具と、他の工具類をね、それも大量に必要だと


思ってね先日から作りはじめてるんですが。」


 其れは、ロシュエの思ったとおりだった。


 此処の鍛冶屋は、何時もの事だが、此れから必要になるだろう思われる道


具や工具類を、先に造るので有る。


 「やはりなぁ~、作り始めていたんだ、それじゃ~、今、作ってる道具類


は何処で使うんだ。」

 

 「将軍、今、作ってるって、それじゃ~決まったんですか、まぁ~ね、オ


レ達もね、その内、将軍の命令があるだろう思ってましたから。」


 「そうか、それじゃ~、司令官、今、造ってる道具類の全部を使えよ。」


 「えっ、それじゃ~、司令官も、いよいよ、始めるんですか、こりゃ~大


変だよ、将軍、その農地は広いんですか。」


 鍛冶屋達は嬉しい悲鳴を上げるのである。


 「そりゃ~、此処の数倍はあるよ、だってよ~、大きな川までなんだから


よ~。」


 「でも、将軍、その大きな川って、一体、何処なんですか、オレ達は何も


知らないんですがねぇ~。」


 「そうか、本当はなぁ、オレも知らないんだよ、司令官は行ったんだがよ


~。」


 「なぁ~んだ、将軍も知らないのか、其れじゃ~仕方ないか。」


 ロシュエも司令官も、鍛冶屋も大笑いするので有る。


 「司令官の話じゃ~、馬車で二日は掛かるところなんだ。」


 「それじゃ~、道具類だって、大量に要るんでしょう。」


 「勿論だ、それとだよ、今、5千人ほどが、その川近くで、大小数ヶ所の


池を造るために行ってるんだがよ~、その場所でも大量の道具や工具が必要


になるんだ。」


 鍛冶屋達の驚きは普通で無かった。


 「え~、将軍、そんな話聞いてませんよ。」


 「オイ、じゃ~、あの時だよ、隊長達が剣の修理とホーガン矢を大量に作


って。」


「ですがね、殆ど持って行かれたんですよ、やはり、護衛の為だったんです


ね。」


 「うん、そのとおりなんだ、すまん、許してくれよなっ、オレが、言うの


を忘れていたんだ。」


 と、ロシュエは、舌をペロリと出し、頭を下げたので有る。


 「まぁ~仕方無いか、将軍じゃ~、怒る事も出来ないしなぁ~。」


 と、職人達も笑うので有る。


 「済まんなぁ~、じゃ~、此れから造る道具や工具類は司令官のところで


使うんで、それとだが、今から造る道具類なんだが、此れから先、当分は必


要に成るんだ。」


 「其れじゃ~、オレ達の仕事も当分有るってことかぁ~、良かったよ


~。」


 「お~、そうだ、材料は不足じゃ無いのか。」


 「其れを、将軍に聞かないと思ってたんだ、だいぶ前にになるんですが、


第一隊長が来られて処分してくれって言われたんですが。」


 ロシュエは、直ぐに解った。


 「あれか、あれは、オレが言ったんだ、で、処分は終わったのか。」


 「其れで、相談なんですが、オレ達は、あの剣や槍を利用する事を考えた


んですが。」


 「お~、聞こうじゃ~無いか。」


 ロシュエは、一体、何に使うのか知りたかった。


 「いや~何ね、剣や槍は丈夫なんですよ、だから、これを利用して道具や


工具類を作っても。」


 「おお、いいよ、全部使っても。」


 確か、ウエス達が数千本の槍と矢も数百本、其れに剣も数百本を差し出し


たので有る。


 鍛冶屋はそれらを利用しようと考えたのだ、槍の柄は丈夫だ、其れに剣も


だが、一体、どんな道具や工具に変わるのか、これも、また、楽しみになっ


てきた。


 「じゃ~、みんな、よろしく頼むぜ。」


 ロシュエと司令官は戻って行くが、司令官は、少しの不安を覚えたのだ。


 其れは、先日から行なわれて要る開墾作業なのだ、大小、どれ程に岩石が


有るのだろうか、其れは、今の農場に築かれた城壁の規模を見ただけでも想


像は出来る。


 だが、果たして、1万人の人達だけで出来る作業なのか、ロシュエは言っ


た。


 城壁はどんなことがあっても造らなければならないと、今、考えても、最


初の頃、ロシュエと共に着た人達は想像出来ない程の苦労をしたことに間違


いは無い。


 「司令官よ、今頃に成って不安になってきただろうよ、だがよ、やり始め


たら、後には引けないんだ、司令官の決意をみんなに理解させないと、この


作業は続かないぜ。」


 「はい、私は、簡単に決めたのが、今になって、後悔しております。」


 司令官は素直な言葉となっていた。


 「うん、うん、オレもな、司令官の気持ちが良くわかるんだ、オレも、あ


の当時は、簡単だと思ってたんだよ~、其れがだ、開墾が進むに連れて、大


きな岩が次から次えと出てきたんだ、仲間達もだ、何度も止め様と言ったん


だよなぁ~、司令官よ、オレは、言ったんだ、この土地の開墾を止めて、ま


た、放浪するのかって、だけどなぁ~、みんなの答えなんて直ぐに出るもん


じゃ無いんだ。


 それこそ、何日も、何時間も話し合いを続けたんだ、みんなはね、放浪は


もう二度としたくない、だけど、こんなに厳しい開墾も続けたく無いって、


だけどね、オレはだ、信念だけは変えなかったんだよ。」


 「閣下、信念で御座いますか。」


 「そうだよ、オレが、じゃ~判った、開墾は止め様と、言ったら、みんな


はどうなると思う、みんなは、オレを信じ、多くの犠牲者を出して、そし


て、要約、この地に辿り着いたんだよ、狼に襲われた仲間、其れに、自らの


命を絶ってまで、仲間を助けた人達もいるんだぜ、オレはなっ、そんな仲間


達の為にも、絶対に、信念だけは曲げなかったんだ。」


 「其れは、私も十分理解しております。」


 「司令官、みんなが理解出来て様が、出来て無かろうが、この開墾事業だ


けは、信念を貫くんだ、司令官、前の農民を見りゃ~、良くわかるんだ、彼


らは、こつこつとなっ、それこそ、小石をだ、確実に持って行くだろう。」


 「はい、実に、ゆっくりとしている様に見えますが。」


 「司令官、そうじゃ~無いんだ、彼らはな、この開墾作業が、一ヶ月、い


や、半年か、一年以上は掛かるってわかってるんだよ。」


 ロシュエは、司令官に開墾作業は本気に成らなければ出来ないと言ってい


る。


「えっ、そんなに掛かるのですか。」


 「司令官、それなんだよ、彼らは、この開墾作業を始めるときから、この


土地の開墾は時間が掛かると読んでるんだよ。」


 司令官は、これだけの人数が居れば、数ヶ月で終わるだろうと考えていた


のだ


 「オレは、この地に着いてから仲間達の動きをじっくりと観察したんだ、


するとな、オレ達と違って、農民と言うのは、どんなに苦しかったとしても


諦めず、目の前のものから、こつこつとやるんだ、それにだ、農民というの


は、オレ達のようにな、なまくらじゃ無いんだ、言葉は悪いがよ雑草なん


だ、踏まれても、踏まれても、必ず、元の様に起き上がるんだ。」


 「閣下、私も、彼らの辛抱強さに感心しております。」


 「司令官よ、別に明日から作業に入る必要は無いんだ。


 今は、時間を掛けて、司令官の信念を伝える、と、同時にだ、彼ら農民の


話を聞いてやる事の方が大事だと思うんだよ。」


 「はい、閣下、大変、良いお話を伺い、私も、彼らと一緒に進めて参りま


す。」


 「司令官、オレは、ぐだぐだと言ったが、司令官の後ろには多勢の仲間が


居るって事なんだ。」


 「はい、閣下、私もその様に存じております。」


 司令官は、ロシュエの話は大変有り難かった。


 確かに、此れからの開墾は大変な苦労をする思うのだ、別に急ぐ必要は無


いんだ。


ロシュエが言った様に、自分の信念が何処まで貫き通せるか、其れだけが心


配なのだ。


 「閣下、私は、今から農場に戻り、みんなに話して見ます。」


 「うん、其れでいいんだ、だけど、急ぐなよ。」


 「はい、有難う御座います。」


 と、司令官は、ロシュエに敬礼し、農場に戻って行く。


 司令官は、戻る途中、何故か、考える事もしなかったのだ、農場に着く


と。


 「誰か、代表を知らないか。」


 「あっ、司令官だ、えっ、代表達ですか、でしたら、明日からの準備会合


だって会議室に集まってますよ。」


 「そうですか、判りました、有難う。」


 この農場には、数ヶ所の会議室が有る。


その内の一つが農家と兵舎近くにあり、司令官は、その会議室に向かった。


 一方、会議室では、十数人の農民の代表達が、明日から始まる開墾に向け


ての準備会合に入るところで。


 「やぁ~、皆さん、お揃いで何よりです。」


 「司令官も、わざわざ、明日から始まる開墾作業の準備会合に来て下った


んですか。」


 司令官は、何やら、何時もと違うと、農民達は思った。


 「ねぇ~、司令官、何かあったんですか。」


 「うん、そうなんですよ、皆さんが、明日から始めようとされている開墾作業に就いてなんです。


 私も、あれから、色々な事を考えましてね、それで、皆さんにお聞きした


いのです。


 皆さんは、開墾作業に必要な道具や工具を用意されたと思いますが、どの


様な物を揃えておられますか。」


 「司令官、何を言ってるんですか、オレ達は農民ですよ、その農民が、道


具を持たずに開墾に入ると思いますか、其れは、何時も使っている道具です


よ。」


 他の代表達もうなずいている。


 「その道具は、確かに、何時も使われているのはわかりますよ、ですが、


今の農場に大きな岩や小石といっても、拳くらいの石は有りますか。」


 「司令官、何を言ってるんですか、この農場には、小石なんて物は有りま


せんよ、全部、土だけですよ。」


 「そのとおりですが、皆さんは、今、使ってる道具で、農場の開墾が出来


ると思われますか。」


 司令官の話し方が何時もと違う、だが、農民達は司令官の言った言葉の意


味がわからないのか、首を振っている。


 「オレは、司令官に言ってる意味がわかりませんが。」


 「それじゃ~、皆さん、この農場の城壁なんですが、使われている、大き


な岩や他の石ですがね、一体、何処から持ってきたか知っておられます


か。」


 「そりゃ~、えっ。」


 「そうですよ、この城壁の岩は、全て、この農場を造る時に掘り出された


大小の岩なんですよ。」


 「でも、司令官、この農場を造る時に出たと言われましたが、外の草地


に、そんなに大量の岩が有るとは思いませんが。」


 この農場に農民達は、殆ど外に出ることは無く、城外を事を知る必要も無


かった。


 「それじゃ~、司令官は、此れからは、オレ達が入る農地なんですが、こ


の農場以上に岩石は有るって言うんですか。」


 「私は、その様に思っているんですよ。」


 司令官は、以前の城を思い出し。


 「ではね、聞きますが、以前、私も、皆さんも、城の周辺で農作業をされ


ていたと思いますが、その時はいかがでしたか。」


 「う~ん、あの頃ですか、あの頃も、岩が多いので大変だったと覚えてい


ます。」


 「そうなんですよ、農地を造ると言う事は、大きな岩は不要だと思いま


す。


 皆さんが、此れから始めようとしている草地なんですがね、大きな岩の殆


どが土の中に隠れていますよ、その隠れている岩石を、皆さんが、日頃使わ


れている道具で掘ったらね、確実に道具は壊れますよ。」


 「え~、それじゃ~、オレ達は、一体、どうすればいいんですか。」


 「はい、私は、その事も含め、皆さんと、色々な事を検討し、話し合いた


いと思っているんですよ。」


 「じゃ~、司令官、道具は。」


 「それなんですがね、先程、鍛冶屋にお願いして来ましたよ、それも、特


別製をね。」


 「司令官、今から作ったんじゃ~、直ぐには出来ないと思いますが。」


 農民達は、少し焦り出した。


 「勿論ですよ、鍛冶屋さんだって、予想もしなかったんですかねぇ~。」


 「そりゃ~、判るけど、じゃ~、何時から開墾に入れるんですか。」


 司令官は、直ぐには入れないことを理解させる必要が有ると思っている。


 「皆さん、聞いて下さいね、道具と言いましたが、鍛治屋さんはね、皆さ


んが使う道具だけを作っているので有りませんよ、其れに、まだ、必要な物


があるのですから。」


 「えっ、まだ、他にも有るんですか。」


 「そのとおりですよ、大小の岩石を運ぶ為には、頑丈に作られた荷車や馬


車も要るんですよ。」


 「えっ、荷車や馬車も要るんですか。」


 「当然でしょう、じゃ~、聞きますがね、皆さんが掘り出した岩石をどん


な方法で運ぶんですか、皆さんが身体を使って運ぶんですか、子供達だった


ら、遊びで放り投げるでしょうが、それも、数個程度であればね、先程も言


いましたが、この農場の城壁を見られても判ると思いますが、数え切れない


程の量なんですよ、更に言えば、この農場も相当な大きさですがね、でも、


皆さんが開墾しようとする土地は、この数倍以上もの広さあるんですよ。」


 「そりゃ~、知ってますが、でも。」


 「私もね、皆さんの気持ちはよ~くわかりますよ、私は、何も開墾しない


と言ってるんでは有りません。


 その前に、道具を揃えることも必要なんですよ、今、鍛冶屋に作って頂い


ておりますがね、全員の、いいえ、半分は必要では無いでしょうか。」


 司令官は、時間を掛けなければならないと思っている。

 

 「じゃ~、司令官、何時になれば、道具が出来るんですか。」


 「其れは、私にもわかりませんよ、鍛冶屋さんはね、皆さんが使われる道


具だけを作られて要るのでは無いんですよ、皆さんを守る、兵士の剣や槍な


どの修理も行なわなければ成りませんので。」


 「でも、司令官、今は、敵もいないと誰かに聞きましたが。」


 「よ~く、聞いて下さいね、今の敵は人間では無いんですよ、草原には


ね、数百頭の狼の群れと、森にも、狼や猪が数百頭も、其れに、大きな熊も


いるんですよ、その狼や猪からの攻撃に対し、一体、誰に守ってもらうんで


すか。」


 「だって、司令官、その為に兵隊が居るんじゃ無いか。」


 司令官は、その言葉に怒りを感じた。


 「今、なんて言ったんです、皆さん、何か、間違った考え方をしています


よ、兵士だってね、人間です。


 この農場の兵士が、狼の、いや、森や草原に住む動物の恐ろしさを一番知


って要るんですよ、相手は音も出さずに近づいてくるんです。


 その狼が目前に現れた時の恐怖、その恐怖を貴方方は理解は出来ないでし


ょう。


 「司令官、オレ達だって、狼の怖さは知っていますよ、だけど、狼が怖い


からと言って開墾を止める訳には。」


 「判っていますよ、其れじゃ~、聞きますがね、貴方方を守る為に兵士が


犠牲になってもいいんだと。」


 「だって、その為に訓練をしてるんじゃ無いんですか。」


 この農民の代表達は、何としても早く開墾に入りたいのだと。


 「判りましたよ、私が言ってることが判らないので有れば、何時でもはじ


めて下さい。


 但しですが、今は、兵士の人数が不足していますので、開墾に行かれた人


達の全員を守ると言う事は出来ないと思いますからね。」


 司令官は、一度、突き放した、其れに、必ず、守れると言う約束は出来な


い言うのだ。


 「だって、この農場には多くの兵隊が居るじゃ無いですか。」


 「じゃ~、反対に聞きますがね、兵士は休む必要は無いとでも言うのです


ね。」


 「オレは、そんな気持ちで言ったんじゃ無いんですが。」


 「でも、同じ事ですよ、確かに、皆さんを守る、之が、兵士達の任務で


す。


 ですがね、先程も言いましたね、兵士だって人間なんだって、皆さん以上


に兵士は、恐怖を感じて要るんですよ、其れに、城壁が完成するまでは兵士


をはじめ、多くの支援が無ければ、新しい農場は出来ませんよ。」


 「司令官、其れは、我々だけでは農場は出来ないと言われるんですか。」


 「その通りですよ、この地に来られた人達はね、農民も兵士も関係なく働


かれたと聞きましたよ、其れはね、農民は兵士達と一緒に力をあわせ、お互


いの協力があってはじめて、この農場が完成したんだと、農場の人達も言っ


ておられますよ。」


 「それじゃ~、オレ達も兵隊や、他の人達からの協力を無ければ駄目だっ


てことになるんですか。」


 「私は、その様に思いますね、私は、別に明日から開墾を始める必要は無


いと思っているんですよ、少々、開始の時期が遅れたところで、何も変わら


ないと言う事ですよ。」


 「司令官、オレは、良くわかりましたよ、確かに、司令官の言われる話は


当たり前だと思いましたよ、其れに、道具も必要だしねぇ~。」


 この農夫は、はじめて言ったのだが、他に何か考えて要る様子で有る。


 「それと話は変わりますがね、全員が賛成されたんですか。」


 「えっ。」


 突然、司令官は、農民達の考えて要る事とは別の話をした。


 「司令官、オレ達は全員が開墾に行くと。」


 「其れは、貴方の勝手な考えでは有りませんか、私は、全員が賛成したと


は思えないんですがねぇ~。」


 「でも、みんなが喜んでいましたよ。」


 「喜んだことと、賛成したこととは別の問題ですよ。」


 「う~ん、そのとおりですが。」


 「私は、別に、全員が開墾に行かれる必要は無いと思います。


 この農場に残りたいと考えておられる人達も居られると思いますよ。」


 「えっ、司令官、この農場に残りたいと思う人達もいるんですか。」


 「私は、居られると思いますよ、その時、皆さんは如何されるんです


か。」


 「そんな事、考えたことも無かったですよ。」


 「其れは、困りましたねぇ~、此処に残りたいと思われる人を強制的に連


れて行く事は出来ませんよ。」


 「其れは、判りますが、新しい農場が、オレ達の夢だったんですよ。」


 「でもね、其れは、全員では無いと思いますよ、今の農場で作物を作り続


けたいと思われる人達は、この農場に残られてもいいのでは無いですか、全


員が行く必要も有りませんからね。」


 「あの~、司令官。」


 先程の農民で、彼は何かを考えて要る様子だ。


 「何ですか、宜しいですよ、何でも言って下さいね。」


 「はい、有難う御座います。


 司令官、オレは、この農場に残りたいんですよ。」


 「えっ。」


 と、他の農民は正かと思ったのだ。


 彼は、この農場でも、みんなからも人望の厚い人物なのだ、その彼に、一


体、何があったのか。


 「そうですか、貴方は、残りたいと思われて要るんですね。」


 「はい、そのとおりです。


 私も、本当は、新しい農場が出来る事は大変嬉しいんです。


ですが、私はね、司令官、今、この農場に対して愛着があるんですよ、毎


日、朝から夕方まで、美味しい作物が出来ます様にと、今まで、必死にやっ


てきたんです。


 其れを、新しい農場を作るからと言われても、今の農地の耕作を止めよう


とは出来ないんですよ。」


 司令官はやはりだと思った。


 此処に来て数年が経ち、農民の中には、この農場に落ち着きたいと思う者


も居るだろうと考えるのだ。


 「そうですね、確かに貴方の言われる事はもっともな話ですね。」


 「司令官、私は、別に新しい農場を造る事に反対はしていません。


 ですが、私の様に考えて要る人達も居ると思いますが、如何でしょうか、


私達よりも、司令官から直接聞いていただければ、私も大変助かるんです


が。」


 「そうですね、わかりましたよ、他の人達は如何ですか、私が直接聞くと


言う事に了承していただけますか。」


 一部の農民を除き、他の農民は司令官に任せると。


 「司令官、さっき言われた道具なんですが、何時頃まで掛かるんです。」


 「私も、其れはわかりませんよ、鍛冶屋さんに無理をお願いしております


のでねぇ~、私が、鍛冶屋さんには強制は出来ませんので。」


 「それじゃ~、何時になれば開墾に入れるんですか。」


 この農夫は、司令官の話を理解できないのか、それとも、理解する気持ち


が無いのか。


 「貴方は、私の話を聞いて無かったのですか、それとも、聞く気が無いの


か、貴方はどちらなんですか、貴方がどうしても開墾に入りたいと言われる


のであれば、貴方一人で行かれては如何ですか、私は引き止めはしませんか


ら、但し、応援は無いと思って下さい。

 

 私は、皆さんの事を思って要るから話をしているんですよ、どうですか、


それでも、貴方は行きますか。」


 この農夫は、それ以上は言わなくなった。


 「それでは、今から、他の皆さんに説明に入りますので、農場で農作業中


の皆さんを集めていただけますか。」


 農夫達は、農場に戻り、新しい農場の開墾について話が有ると言う事を説


明すると、やがて、農場で作業中の農民達が集まってくる。


 農民の中には、明日からの開墾に期待を膨らませる農民も多く、司令官の


説明に期待して要る。


 「皆さん、聞いて下さいね、今から司令官が新しい農場造るためのお話し


が有ります。


 皆さん、静かに聞いて下さい、お願いします。」


 農民の代表が話し、司令官と代わり。


 「皆さん、農作業が大変忙しい時に申し訳有りませんが、新しい農場を造


るための作業に就いてお話しをしたいと思います。


 まず、農場の大きさですが、今の農場にある城門を出ると、直線の路が有


ります。


 その路を半日進んだところに目印が有りますが、そこが、皆さんが入られ


る予定の一番手前の目印です。


 更に、半日進むと、目印が有ります、この目印までが、路に面するところ


で、今度は城門から左方向ですね、左方向に二日ほど進んだところに大きな


川が流れています。


 この川までが、新しい農場となります。」


 この時、大きなどよめきが起きた。


 其れは、殆どの農民達は新しい農場の大きさを知らなかったためで。


 「司令官、少し聞いてもいいかね。」


 「はい、宜しいですよ。」


 「オレは、新しい農場を造るんだって話は聞いたんだけど、今の話じゃ


~、オレの想像したよりも遥かに大きな農場じゃ無いのかね、そんな大きな


土地をこれだけの人数で開墾するんですか。」


 「そのとおりと言いたいんですがね、約半分くらいになると思います


よ。」


 彼の不安は当然だ、今、耕作している農場も大きい、だが、話だけだが数


倍はあると聞かされれば、驚くのも当然なのだ。


 しかし、本当に開墾する土地は半分だと言う、それでも、今の農場よりも


大きいのだ。


 確かに、司令官と共に着た農民は1万人ほどなのだ、その中には、女性も


子供も含まれて要る、だから、本当の大人の男達は半分にも満たない。


 「ですがね、司令官、半分くらいと言われましたが、それでも、今の農場


よりも大きいと思うんですよ、其れを、我々だけで開墾するんですか、そり


ゃ~、幾ら何でも無理というものですよ。」


 司令官は、心の中で占めたと思った。


 「其れは、私も十分承知しておりますよ。」


 「司令官、それじゃ~、何故、明日から開墾作業に入れると言われたんで


すか。」


 「私はね、皆さんを励ます積もりだったんです、その時はね、でもよ~く


考えて見たんですよ。」


 彼は、新しい農場を造ることに不安を感じて要る様子で。


 「司令官、オレは、別に新しい農場を造る事に反対はして無いんですよ、


でもねぇ~。」


 「みんな、聞いて下さいね、私も別に反対はしておりません。


 ですが、新しい農場と言っても、簡単に造れるんじゃ無いんですよ、今か


ら説明をしますので、第一にですね、新しい農場を造るためには、予定地内


の岩石を掘り出す必要が有ります。


 その岩石の量ですがね、私も、全く、見当がつかないんですよ。」


 「司令官、そんなに有るのかね。」


 「今、直ぐ隣でも開墾に入っていますが、大小の岩石が次々と掘り出され


ています。」


 「それじゃ~、オレ達が前に住んでたところと同じ位に有ると思って


も。」


 「その様に思っていただいても宜しいですよ。」


 「それじゃ~、オレ達、全員が作業に入っても直ぐには終わらないと言う


んですか。」


「そうですね、でも、作業に入る前に色々な道具が必要なんですよ、その道


具をね、今、鍛冶屋さんに作って頂いております。」


 司令官は、大量の道具が必要だと。


 「皆さん、道具は数百個も必要なんですよ、その道具がある程度の数まで


出来なければ開墾作業には入れ無いと言う事なんです。」


「それじゃ~、道具が出来るまでは、今の農場で、と言う事なんですか。」


 「私は、その様に考えておりますが、其れまでの間に、皆さんは、話し合


いをされて準備を進めて欲しいと思いますが、他の皆さんは如何でしょう


か。」


 「司令官、それじゃ~仕方が無いでしょう。」


 「司令官、そのとおりだよ。」


 と、殆どの農民が賛成した。


 「それと、話は変わりますが、皆さんの全員が、新しい農場を希望されて


いるのでしょうか、中には、今の農場に残りたいと思われて要る人も居られ


るのでは無いんでしょうか。」


 司令官の話に農民達は驚いた、初めから行くと決めていた農民は。


 「えっ、司令官、誰が残るんですか、オレは行きますがね。」


 「皆さんの中には、新しい農場に行きたいと思う人も居れば、今まで耕し


てきた農地に愛着があるので、この農場に残りたいと思われていた人達も居


ると言う事です。


 私は、この問題は直ぐには解決すると言う様な問題ではないと思いますの


で、皆さんは、時間を掛けて話し合って頂きたいのです。」


 一方、ロシュエの元には、大変な問題が起きた。


 其れは、ある、母子からの話しが発端だった。


 「あの~、将軍様は居られますでしょうか。」


 この母親は、何かに脅えている様子だ。


 「はい、今、食事中ですが、宜しいですよ。」


 と、イレノアは、何時もの様に微笑ながら、母子の3人を食堂に案内す


る。


 「あの~、将軍様、お食事中、申し訳有りません。」


 「いや、いいんだよ、其れよりも、あんた達、食事は。」


 母親は、暫く時間を置き。


 「はい、まだです。」


 「イレノア、すまないが、三人分、頼むよ。」


 「は~い。」


 と、何時ものニコヤカな返事である。


 「まぁ~、座って下さいよ。」


 と、ロシュエは、子供達の表情が、何かに脅えている様子だと。


 「奥さん、何かあったのかね。」


 母親も脅えている。


 「あの~、将軍様、私も随分と迷ったんですが。」


 「何をだね。」


 「はい、こんな話をしても良いのかと。」


 この母親は相当な脅え方で、其れが、恐怖心と成って顔に表れている。


 「奥さん、何も心配する事は無いからね、何でも話して下さいよ。」


 その時、イレノアが、にこやかな顔で、食事を運んできた。


 「お話中に申し訳有りませんが、焼きたてのパンとスープです。


 お代わりしてもいいのよ。」


 イレノアは、子供達の顔を見ている、だが、子供達は直ぐには手を出さ


ず。


 「いいんだよ、さぁ~、食べなさい。」


 それでも、子供はパンにも手を出さない。


 「ねぇ~、奥さんが、先に食べては如何でしょうか。」


 と、イレノアは母親に進めた。


 「それじゃ~、頂きましょうか、その前に、お父様に報告するのよ。」


 「はい、ママ。」


 と、女の子が手を合わせ、何かを言っている。


 「奥さん、大変、聞きづらい話なんだが、ご主人は。」


 「はい、一年ほど前に死にました、と、言うよりもあいつらに殺されまし


た。」


 子供達は、報告が終わったのか食べ始めた。


 「そうですか、其れで、奴らとは、一体。」


 「はい、大きな城の兵隊にです。」


 ロシュエは、子供達の食べ方を見ている。


 二人の幼い子供達は満足な食事も取って無かったのだろう、必死に食べて


いる。


 この農場の生活では子供から大人もで、食べる事には不自由は無いと思っ


ていた。


 だが、この母親も満足な食事も取って無かった。


 今は、食事の事よりも肝心な話を聞きたいのである。


 「其れで、奥さんの話とは、何ですか。」


 「はい、将軍様、私達、母子は何とか、あいつらから逃げることが出来た


んです。


 将軍様、あの兵隊達は、私達の住んでいました村の全員を殺したんで


す。」


 「えっ、だって、奥さんと子供は何処に。」


 「はい、私と子供は、主人や他の人達の死体の下に隠れました。


 あの兵隊達は、本当に死んでいるのか確かめるために、死体に槍を刺して


行くんです。


 将軍様、之が、人間のする事なんでしょうか。」


 イレノアは、奥で涙を流し、ロシュエは、何も言わなかった。


 「私と、子供達は兵隊が村を離れるのを待ち、出てきたんですが、後で見


た主人の身体には、10箇所以上も槍を刺したんですよ。」


 「其れで、奥さんと子供は助かったんだね。」


 「はい、その通りなんです。


 其れで、私達は、焼け残った家に入り、その家に住んでいた人達の服を盗


んで着替えましたが、その家族は全員、表で焼き殺されていました。


 私は、服を盗んだことは悪かったと思っています。」


 「いや、奥さん、其れは仕方の無いことだよ、オレは、奥さんを責める積


もりは無いんだからね。」


 奴らの行為は人間の行為じゃない、そんな奴らを見逃す事は出来ないと、


ロシュエは、心の奥底から怒りを覚えたのだ。


 「じゃ~、奥さんと子供達はどうして、この農場に着たんだね。」


 「はい、数日後、また、奴らが戻って着たんです。


 でも、今度は、多勢の農民も一緒だったんです。」


 「一体、全部で何人くらいの人達だったんですか。」


 「はい、今、この農場を出たところで開墾されている人達の倍は居た様に


思います。」


 其れは、若しかして、ウエス達が連れてきた人達では無かったのか。


 「じゃ~、若しかして、ウエス達のことでは無いのかね。」


 「私は、名前は知りませんが、兵隊達は、司令官と呼んで居た様に思いま


す。」


 やはり、ウエス達に間違いは無かった。


 「ご主人や村の人達を殺したのは、その兵隊なんですか。」


 「はい、将軍様、あの兵隊達の顔は一生忘れることは出来ません。」


 ロシュエは、思い切って聞く事にした。


 「其れで、奥さん、さっきの話なんですが。」


 「はい、実は、あいつらは農民の服を着てあの開墾に行っているんで


す。」


 「奥さん、オレもね、奴らは、兵隊だと知っていますよ。」


 「え~、其れじゃ~、あの多勢いた人達は、一体、どうなってるんです


か、全員殺されたんですか。」


 ロシュエは、考えた、ウエスが連れて着た農民は数百人のはずだ、其れ


に、5千人の兵隊と農民の服を着た兵士達5千人、この母親の話では、今の


倍近い人達が居たと言っている、だが、数百人の農民は何も言わない。


 それとも、全く知らないのか、数百人の農民達は別の所から連れて来られ


たのか、じゃ~、多勢居たという農民は。


 「奥さん、今の話に間違いは無いですね。」


 「将軍様、私が嘘を言う必要が何処にあるんでしょうか、其れに、農民の


服を着た兵隊に見つかると殺されると思い、今まで、何も言えなかったんで


す。」


 「わかりましたよ、奥さん、もう、何も心配する事は無いからね。」


 「はい、有難う御座います。」


 「其れで、奥さんと子供達は殆ど隠れてたんですね。」


 「はい、そのとおりです、あいつらは、私の顔を覚えていると思い、外に


も出る事が出来なかったんです。」


 「其れで、奥さんは、兵隊と農民が服の交換をして要るところは見られた


んですか。」


 「私は、其れは見ていませんが、でも、農民の服を着た兵隊は綺麗に並ん


で歩いていましたが、兵隊の服を着た人達はバラバラで歩いていましたか


ら。」


 やはり、ウエスの策略だった、兵士達を拉致した農民が同じ様な人数に成


ったので早い時期に服を交換させたのだ。


 ウエスは、時期を見て何食わぬ顔をし、この農場に着たのだ。


 確かに、あの時は一瞬で判断し、兵士にさせられた人達の顔も見て無かっ


た。


ウエスは、農民の姿をさせた兵隊が時期を見て農場を乗っ取るだろう、その


時までは、全て我慢をするつもりだった。


 その為に、武器も隠し、両方の農民を脅かせば時間を稼ぐ事は出来ると判


断した。


 その策略に、ロシュエは、騙されたのである。


 「奥さん、本当に有難う、此れからは、何も心配する事も無いからねぇ


~、お~い、イレノア。」


 「はい、直ぐに。」


 イレノアの顔は涙が止まらず。


 「申し訳有りません、むさ苦しい姿をお見せしまして。」


 「いいんだよ、オレも、心の中で泣いたよ。」


 「有難う御座います。」


 と、イレノアは頭を下げた。


 「イレノア、其れでだ、テレシアに奥さんと子供達のことを。」


 「はい、承知しております。


 テレシアさんには、母子は特別だと言う話ですね。」


 「うん、其れが、今、最善の策だと思うんだ、テレシアには暫く頼むと言


ってくれ、それと、あ~いいよ、之は、オレが行くから。」


 と、ロシュエは表に出て。


 「お~い、二人ほど来てくれよ。」


 と、兵士を呼んだ。


 「はい、将軍。」


 「大至急、司令官と隊長を呼んでくれ、大至急にだ、行け、早く。」


 一人は、司令官が、説明を行なって要る広場に、一人は、隊長の宿舎にと


向かった。


 「司令官、お話中、申し訳有りませんが、将軍が、大至急来て下さいとの


事です。」


 「わかりましたよ、で、何かあったのか。」


 「私も、良くわかりませんが、何時もの将軍の顔では無かったです、恐ろ


しいほどの顔付きでした。」


 「よし、わかった、馬を借りますからね。」


 「はい。」


 司令官は馬に乗り換え、大急ぎでロシュエの宿舎に向かった。


 「隊長、隊長、大変です。


 将軍が、大至急来て下さいと。」


 「えっ、何があったんだ。」


 「はい、私も良くわかりませんが、今、母子と話をされておられましたの


で。」


 「そうか、君の馬を借りるぞ。」


 と、四番隊の隊長は馬を走らせた。


 そして、五番隊の隊長にも告げ、五番隊の隊長も、ロシュエの宿舎に馬を


走らせた。


 その頃、イレノアは、母子を裏から出し、テレシアの家に向かった。


 逃げ込んだ農民を匿うための家で、表からは全く見る事は出来ない作りに


成っている。


 イレノアはテレシアに説明と、今後の生活に必要な物を揃えるので、時間


が必要と考え、遅くなりそうだとロシュエに告げていた。


 一方で。


 「閣下、閣下。」


 と、司令官が飛び込んできた。


 「お~、司令官、済まんなぁ~、忙しい時によ~。」


 「いいえ、私は別に。」


 その時、二人の隊長も飛び込んできた。


 「将軍、何があったんですか。」


 「まぁ~、座ってくれよ。」


 三人は座り。


「あの野郎は、本当に飛んでも無い奴だよ。」


 ロシュエの怒りは最高潮に達していた。


 「閣下、あの野郎とは、誰の事なんですか。」


 「あのウエスって野郎の事だよ、あの野郎に、オレ達は完全に騙されてた


んだよ。」


 「将軍、一体、何の話しなんですか。」


 「すまん、オレも、ついカッと成ってしまって、実は、少し前の話なんだ


が、幼い子供とその母親が来てたんだよ、それで、あの母親の話を聞いて、


オレ達は、ウエスって奴の策略に騙されてたって話なんだ。」


 ロシュエは、怒りの余り、話しが司令官と隊長達は意味がわからない。


 「将軍、一体、何に騙されたんですか。」


 「お~、すまんなぁ~、司令官も隊長達も覚えていると思うんだよ、ウエ


スが5千人の兵士を連れてきた時のことを。」


 「勿論ですよ、あの兵士達の剣や槍は全て取り上げ、今は、道具に利用す


る為にと、鍛冶屋にお願いしておりますが。」


 「司令官、その兵士と言うのは農民なんだよ。」


 「え~、将軍、でも、あの時は、誰も気付いてはおりませんが。」


 「隊長、その通りなんだ、オレ達は、兵士の姿を見ただけなんだ。」


 「それじゃ~、兵隊の姿は農民で、農民の姿は兵士だと。」


 確かに、あの時、兵士の姿は見たが、顔までは見て無かった。


 ウエスだけが中に入り、我が農場の兵士達も武器の収容作業で正か、農民


だとは誰も思わなかったのだ。


 「閣下、よ~く考えて見ますと、兵士と農民の人数が殆ど一緒だったと思


います。


 でも、此方には、数百人の本物の農民がおりましたが、何故、言わなかっ


たのでしょうか。」


 「母親は、多勢の農民を見たと言うんだ、だったら、その多勢の農民は、


一体、何処に消えたんだ、母親は、こうも言ってたよ、農民は整然と歩き、


兵士はバラバラで歩いてたと、普通は反対だよ、兵士は訓練されているから


整然と歩くはずだ、この話しが本当だとすると、ウエスは、5千人の農民を


人質に、農民の姿に変えた兵士は、数百人を人質に取ったと言う事なんだ


よ。」


 「でも、将軍、ウエスは、なんでそんなことをする必要があるんです


か。」


 四番隊の隊長は、ウエスの策が読めないのだ。


 「閣下、私もその様に思います。


 あの時も、ウエスは、素直に武器を差し出しました。


 なのに、兵士と農民を入れ替える必要が有るんですか、この農場では幾ら


でも仕事はあるんですよ、仕事が有るって事は、食事もいただけると言う訳


ですから、それに、我々は、ウエス達を殺す気持ちも無かったと思うんです


が。」


 「確かに、司令官の言う事も一理有るんだ、だけどなっ、ウエスの狙いは


他に有ると思うんだ。」


 「将軍、他の狙いって、正か。」


 「オレは、その正かだと思うんだ、奴はなぁ~、時間を掛けて、この農場


を乗っ取るつもりなんだ。」


 「ですが、我々も、それ以上の戦力を持って要るんですよ。」


 「確かに、その通りだよ、1番から、5番の全隊が、この農場の守りに就


いていれば、ウエスが、どんな策略を考えても、攻略は無理なんだ、だがよ


~、今、池を造る作業員を守ると言う名目で、1番隊と2番隊が行っている


だろう、オレは、3番隊と4番隊が交代に行く様にと考えていたんだよ、そ


うなるとだ、この農場には、5番隊だけなんだ。」


 「それじゃ~、その時にですか。」


 「まぁ~、オレだったら時間を掛けるね、だって、そうだろう、別に急ぐ


必要もないんだよ、オレ達が安心するまで時間を掛けるんだよ、それにだ、


大きな池の次はだ、小さな池を数ヶ所も造るんだ、オレだったら、最初の農


場が完成するまで我慢するよ。」


 「閣下、私であれば、次の大池を造る時に残った者達で農場を攻撃します


ね、最初の農場からでもですが、どちらの農場からも、相手が見難い位置に


成ります。


 今は、例え、武器があっても隠し場所が有りませんが、2箇所目と、其れ


に、最初の城壁の内側であれば、見つかる事は、まず、無いと思います。」


 ロシュエは、自分で有れば、どんな方法を取るか、話に出すと言う事が、


敵も同じ戦略を取ると考えたのだ。


 「でも、将軍、武器は。」


 やはり、問題は武器なのか。


 「オレはねっ、武器なんか、如何にでもなると思ってるんだよ。」


 「ですが、どんな方法で調達するんですか、開墾に使う道具を盗むんです


か。」


 「まぁ~、それも簡単な方法だと思うんだよ、今は、誰も、道具の管理を


していないからよ、毎日、1本のクワを盗んだとしてもだ、誰も、気付かな


いと思うんだ、だが、オレの考えは違うんだ。」


 「閣下、武器を作られるんですか。」


 司令官も、同じ方法を考えて要るのかも知れない。


 「でも、将軍、武器を作ると考えても、その作るための工具や道具が必要


に成りますが、道具があれば出来ると、えっ、そんな。」


 5番隊の隊長も武器を作る方法がわかったのだろうか。


 「そうなんだよ、クワが1本あれば、ナイフが3本作れるんだ。」


 「先端を使うんですか。」


 「そうだよ、此処には、大量の岩石が有るんだ、其れにだ夜になれば、監


視される事もなくなるんだぜ、クワの先端部分を時間を掛けて石で研ぐとだ


なぁ~、立派なナイフが出来上がるんだよ。」


 「閣下、ですが、ナイフだけで残った兵士達を襲うんですか、一人や二人


を殺せても直ぐに知られてしまうと思いますが。」


 ロシュエの考えた方法とは、司令官の考えもしない方法で有る。


 「司令官も隊長も、少し別の方法を考えて欲しいんだよ、オレ達があの戦


で使ったホーガン矢、それに、敵のヤリ、それに、剣を全部回収したと思う


のか。」


 「将軍、正か、私達も一応は回収しましたが、全ては、じゃ~、ウエスっ


て奴は、あの辺りには相当数のヤリなどが放置されたままだと知って要るん


ですね。」


 この地は、特に、狼が大量に要ると知って要るので、例え、数千本の矢じ


りが放置されたとして、危険を冒してまでも回収する必要が無かった。


 「それにだよ、例え、オレ達が監視して要ると言ってもだ、側で監視はし


ていないんだよ、少し離れた所からで十分なんだよ、それに、司令官や隊長


も奴らは武器は持っていないとわかれば、何処を見ている。」


 「将軍、私は、当然、奴らを見ませんね、奴らに背を向けていますよ。」


 「其れが、普通なんだ、オレ達は、名目上でも護衛なんだからよ。」


 名目上でも、狼から農民を守ると言う事は、内側の作業現場を見るのでは


なく、外側を見るのが護衛の任務なのだ。


 「一日だよ、一人が数個の矢じりを見つけたとしてもだ、数千個は確保出


来るんだよ、仮に、弓を作るにしても、必ず、良い木で作る必要も無いん


だ、木材の切り出し現場でも、全ての木が真っすぐじゃ無いんだ、中には、


木は細いが、適当に曲がりの有る木、そして、どの木にも絡まっているツタ


が有るんだ、そのツタを細く引き裂き、束ねて作ると、もう立派な弓が出来


るって事だ。」


 「閣下、それじゃ~、奴らは時間を掛けて武器を作り、護衛部隊の動きを


観察する、そして、何度か全員が頭の中で訓練し、やがて、時期が来た時に


農場を乗っ取ると言う話なんですね。」


 「うん、オレは、そう思ってるんだ、でなきゃ~よ、何の為に、兵士と農


民を入れ替えるんだよ~。」


 「確かに、将軍の言われる通りかも知れませんねぇ~、じゃ~、イレノア


さん達は、何故、ウエスが逃してくれたと言われたんですか。」


 「オレはね、イレノア達も騙された思ってるんだ、オレは、不思議だと、


今頃になって感じてるんだよ、あの当時は、イレノア達は何処に向かって行


けば助かるなんて知らなかったはずだ、それなのに、この農場まで直線で着


たんだ、じゃ~、一体、誰が、オレ達の農場を知ってるんだ。」


 確かに、ロシュエの言う通りなのだ、あの娘達の誰かに、其れは、イレノ


アで無かったとしても良いのだ、一人の娘に、そっと、この森の外れの路を


真っすぐに行けば大きな城壁が有る、其処に助けを求めれば助かると耳打ち


すれば良いのだから。


 「閣下、あの城から、私の居りました城までは、道も有りました。


 其れに、城から、この農場に何度と無く着ておりましたので、知らず、知


らずの内に道が出来たのだと考えております。」


 人は、同じところを歩く、たとえ、回り道になったとしても、危険を避け


て安全な所を行き来する、其処が何れ道となる。


 「イレノア達は、助けられたんじゃ無いんだ、イレノア達が、逃げ込んだ


この農場で話をするだろうよ、城の司令官が助けたと、オレは、初めから、


この農場の住人を安心させるために、イレノア達を出したと思ったんだ、其


れが、証拠に、イレノアが言ったよ、ウエスが助けてくれたと、そして、オ


レ達は、イレノアの言葉を信じたんだ、其れに、武器も無い、そんな兵隊に


戦が出来るはずが無いと、オレ達も信じたんだ。」


 あの時は、ロシュエ達に殺される事は無いと安心していたのだ、ウエスと


数人が農場に入り、様子を見たので。


 「だって、自分達は、あの時、人手不足だったんですよ。」


 「その通りなんだ、技師長の考えた、大きな池と数ヶ所の小さな池を造る


人間が不足してたんだ、ウエスは、反対もせずに、5千人の兵隊の姿をした


農民を連れて行ったんだよ。」


 其れが、ウエスの考えた策略だったのか。


 「将軍、その母子ですが、何故、今頃になって、話をする気になったんで


しょうか。」


 「其れは、オレも知らないよ、子供は、オレの前でも、恐怖心からなの


か、脅えているんだよ、母親も同じだったんだが、農夫の姿をした兵士が恐


ろしかったと言ってたよ。」


 「閣下、この話は、まだ、誰も知らないのですね。」


 「司令官、勿論だ、だから、直ぐに呼んだんだよ。」


 「将軍、何か方策は考えておられるんですか。」


 ロシュエは、とんでも無い方法を考えついたので有る。


 「オレはだ、ウエスが、何も気付いてないと考えてだよ、今、農場の開墾


に入っている奴らと、兵士の姿をさせられた農民を交換しようと考えてるん


だ。」


「閣下、その様な事をすれば、ウエスには、5千の兵士が集まるんです


よ。」


 「お~、確かに、5千人の兵士は居る、だがよ、武器は何処に有るんだ、


それにだ、武器を作るにもだ、あの場所は戦のあった場所じゃないんだよ、


道具だけなんだ。」


 「ですが、その場所には、我々の2大隊が常駐しておりますよ、2個大隊


の武器は、ホーガンなんです、仮に、ホーガンが奴らの手に渡ったら大変な


事に。」


 「司令官、例えだよ、2個大隊が全滅し、全てのホーガンが奪われたとし


てもだよ、ホーガン矢はどうして補充するんだよ~、其れに、今、ホーガン


矢を作れるのは、この農場の鍛冶屋だけなんだぜ。」


 「確かに、そのとおりで御座いますが、我々の兵士は、敵に狙いと定めて


放ちますが、敵は必死ですから、次から次へと放ち、直ぐにホーガン矢は無


く成りますねぇ~。」


 「そうだろう、そうなるとだ、後は、持久戦だが、敵の相手は、オレ達の


大隊よりも、恐ろしい狼の大群がだ、狼は賢いからよ~、この人間は簡単に


襲える事がわかりゃ~、そりゃ~、奴らは、次から次へと狼の犠牲に成るん


だ、司令官や、隊長は、そんな危険を犯すかよ~。」


 ロシュエの言う通りでだ、各大隊の兵士は、ウエス達に不穏な動きがあれ


ば、直ちにホーガン矢を放っても良いと命令が下っている、だが、ウエス達


は知らない。


 だから、兵士達の狙いは狼ではなく、ウエス達なので、最初の一撃で数千


人以上が犠牲になるのは間違い無い。


 果たして、その様な危険を冒してでも、ウエス達は襲ってくるのであろう


か。


 「それじゃ~、将軍は、ウエス達を一緒のところに集める方が得策だ


と。」


「うん、オレは、そう考えたんだ、其れが、成功すればだ、この農場の開墾


は進むと思ってるんだが。」


 「閣下、ウエス達も納得しなければならないのですね、其れに、反論も出


来ないと。」


 「まぁ~、数人か数十人の兵士は、その中に入って要るだろうが、でも、


食べ物も有るんだ、納得するしかないんだ。」


 「閣下、ウエスには、何と言われるのですか。」


 「うん、オレか、オレは、何にも言わないよ、ただ、みんなには両方の仕


事を覚えて貰う必要が有るんで、一度、交代させるって、これだけの話


だ。」


 「将軍、じゃ~、この交代で終わりと言う事ですね。」


 ロシュエは、ニヤリとしている。


 「まぁ~、その通りだ、そして、ウエス達は、その後も、池を作るためを


作業を続ける事になるんだなぁ~。」

 

 「ウエスも、これで、終わりって話ですか。」


 司令官もニヤリとした。


 「其れでだ、隊長達は、何時頃の交代予定だったんだ。」


 「別に、予定は無かったんですが、明日からでも準備に入りますので、3


日後には、出発出来ますが。」


 「よし、決めたぞ、その時、此処の農民姿の兵士も一緒に連れて行くん


だ、それとだ、説明は不要だ。」


 「はい、将軍、了解しました。」


 「1番大隊と2番大隊が戻ってくるまでに、10日は掛かるとしてだが、


兵士は馬で行くのか。」


 「はい、全員が馬に乗りますが、食料馬車も一緒です。」


 「じゃ~よ、農民達の帰りは歩きかよ、そりゃ~、大変だ、農民達が、帰


る時は全員を馬車に乗せてくれ。」


 「はい、じゃ~、帰りの食料も必要に成りますねぇ~。」


 「うん、後は、司令官と良く相談してくれよ。」


 「はい、わかりました。」


 「閣下、此方の農民の件なのですが、如何様にすれば。」


 「そうだなぁ~、戻って着た農民達には、暫くのんびりとさせてやりたい


んだ。」


 「はい、勿論で御座います。


 今度は、お互いが仲間なので、大きな問題にはならないと思います。


 それと、奴らが去った後に、見学を兼ねて、新しい農地の開墾に入らせた


いと思いますが。」


 「それじゃ~、何か、2箇所の農地を3つの農民グループにさせようと、


さすがに司令官だ、オレは、そんな事は考えもしなかったよ~。」


 「閣下、では、私は、3番隊と4番隊の出発後、3つのグループ全員に話


をします。」


 「うん、司令官に任せたよ、じゃ~、後の事は宜しく頼んだぜ。」


 司令官と、二人の隊長は、ロシュエに敬礼し、部屋を後にした。


 一方で、イレノアと一緒に大食堂に来た母子は、初めて見るのか、大変な


驚き様で。


 「ねぇ~、ママ、私、こんなに大きなお家、見るの初めてよ。」


 「そうね、ママもよ。」


 と、母と娘の会話で有る。


 テレシアは、何も聞かずに。


 「ねぇ~、お母さん、お風呂に入れば、気持ちがいいわよ。」


 「えっ、そんなのが、本当にいいんですか。」


 「勿論よ、さぁ~、さぁ~、行って、イレノア、案内してね。」


 「は~い、わかりました。」


 「お風呂から上がったらね、美味しい食事を用意をして置くからね。」


 と、テレシアは、何時もの優しい伯母さんの顔で有る。


 「それと、着替えも、全部有るからね、あんた達の着てた服と下着は捨て


るはね。」


 「有難う、何から、何までも。」


 と、母親は涙を流している。


 「いいのよ、全部は新しくは無いけれど、きれいに洗濯して有るから


ね。」


 「はい、じゃ~、ママと一緒に行こうね。」


 母子は手を繋ぎ、イレノアが案内する風呂場に行く。


 この大食堂には、何時も、テレシアと数人の女性が居る。


 「でも、あの母親、悲しい目をしていたね、相当、辛い出来事があったの


ねぇ~。」


 と、テレシアも、悲しい思いが溢れてくるので有る。


 「そうよねぇ~、私達も、あの時は悲しくて仕方が無かったけれど、あの


母親の目は普通じゃ~無いもの。」


 「ねぇ~、私達から聞くのは止めましょう。」


 「私も、其れが、一番だと思うのよ、母親が話し出すまではねっ。」


 この風呂場も、技師長の考案なのだ、女性用と男性用に分かれ、毎日は入


れないが、それでも、2日に一度の割合で入る事が出来るので、誰からも不


満の声は上がらなかったのだ、技師長は新しい風呂場の建設に入る矢先の戦


で、今は、まだ建てられていない。


 その風呂場からは、時々、大きな声でキャ、キャ、キャと、女の子の声が


聞えてくる、余程、気持ちが良いのだろうか、長い風呂だが、要約、風呂か


ら上がった親子は、古着だが、綺麗に洗濯された服を着た。


 其れは、何十日振りの着替えだろうか、母親も覚えて無かった。


 「テレシアさん、イレノアさん、其れに、皆さん、本当に有難う。


 皆さんの好意に、私は、何のお礼も出来ないので心苦しいんですが。」


 「あんたねぇ~、私達は、お礼を言って欲しいからじゃ無いのよ、貴女も


農民でしょう。」


 母親は頷き。


 「はい。」


 「私達もだけどね、私達以上に、将軍は、農民を大切にされる人なのよ、


それにね、将軍だって、お礼を言って欲しいからじゃ無いのよ、本当に、あ


の将軍はね、バカがつくくらい優しいんだよ、私達農民に対してはね、ねぇ


~、そうでしょう、イレノア。」


 イレノアも頷き。


 「本当なんですよ、私達はね、将軍に、何時も心の中で感謝しているの、


だけど、将軍には、直接言う事は無いのよ。」


 「えっ、何故なんですか。」


 「だってさぁ~、あの将軍はね、オレは、礼を言って欲しいんじゃないん


だって、必ず言うよ。」


 と、テレシアは、大笑いするので有る。


 「さぁ~、さぁ~、話は、何時でも出来るよ、お腹が空いたでしょう、早


く、食べなさいよ、私達はね、今から、貴女達、母子の部屋の模様替えと、


着替えの用意も有るからね。」


 「えっ、私達の部屋って。」


 「そうなの、将軍が言われたでしょう、母子は特別だって、あれはね、こ


の農場でも、一部の人だけが使う部屋なのよ。」


 「そんなぁ~、私達は、今でも、十分なんですけど。」


 「私は、将軍とお話をされていた時、将軍は、特別だと言われると思った


んです。」


 「まぁ~、イレノアも、すっかり、将軍の奥様って感じになったわねぇ


~。」


 「えっ、将軍様の奥様だったんですか、大変、失礼しました、どうか、お


許しを。」


 母親は頭を下げたが。


 「そんな事は、止めて下さい。


 確かに、今の私は、ロシュエ将軍の妻と言われておりますが、私自身は、


その様な大それた人間では有りません。


 其れに、私も、将軍に命を救われ、此処に居られる、皆さんのお陰で、今


は、本当に幸せなんです。


 でも、私は、将軍の妻で有る前に、この農場にお世話になっている、一人


の女として、皆さんのお役に立てれば良いと思っておりますので、どうか、


此れからも、一人の女性としてお付き合いして下さいね、お願いします。」


 母親の目には涙が溢れていた。


 あの将軍と言い、イレノアやテレシアも、みんな、本当に優しく、親切な


人達なんだと、思うので有る。


 「貴女が、将軍の事をどう思うと、イレノアも、私達もそうだけどね、此


処の女性全員が、将軍が大好きなんだからね、それにだよ、此処の女性は


ね、好き有らばと、何時も将軍を狙ってるんだからね、そうでしょう、イレ


ノア。」


 イレノアもわかっているが、困惑している。


 「えっ、だって、将軍様には、奥様が。」


 「まぁ~、それだけの男だって話よ、それにね、将軍って人はね、そんな


人間じゃ~、無いって、誰もでも知って要るんだよ、だって、イレノアを見


りゃ~、わかるでしょう、将軍を信じきってるんだもの。」


 「はい、わかりました、其れで、私達は、此れから、一体、どうなるんで


すか。」


 母親は、まだ、心配なので有る。


 「まぁ~、将軍の事だから、暫くは、この特別の部屋に居ろって、言うと


思うのよ。」


 イレノアは頷き。


 「テレシアさんの言う通りです。


 ですからね、何も心配は有りませんよ、将軍や司令官もですが、此処の兵


隊さんは、本当に私達農民を大切にされますから、安全だと確認が出来るま


では、此処に居て下さいね、それから、後の事は、何も、考えない事です


よ。」


 「そうだよ、だって、この農場に着たと言う事は、私達の仲間になったん


だものね。」


 と、テレシアは、優しい目で語り掛けるので。


 「有難う、御座います。


 じゃ~、皆さん、甘えさせて頂きますので、宜しくお願いします。」


 と、母親は、イレノアやテレシア達に頭を下げたので有る。


 その頃、ロシュエは鍛冶屋に向かっていた。


 鍛冶屋では、早くも道具作りに入っていた。


 「よ~、どうだ。」


 「あっ、将軍、一体、何の用事なんですか。」


 「うん、実はなぁ~、司令官とも話をしてたんだが、第2次の農場造りの


事でだ、道具の事なんだがよ~。」


 「はい、司令官からも、道具を作って欲しいと言われましたが、其れ


が。」


 「うん、其れは、いいんだが、此れからは、長期の工事になると思ってる


んだ、それでなんだが、大きな岩石を運ぶ為にだ、今よりも、少し大きな道


具が欲しいんだ。」


 「じゃ~、今、作ってる道具は。」


 「いや、其れは、其れで、使う事になるんだ、だけど、この農場の時で


も、大きな岩石で大変苦労したと思うんだ。」


 今の、農場を造る時でも、想像以上に大きな岩石が掘り出され、運搬には


苦労した。


 「将軍、じゃ~、之は、これで、使うが、この道具よりも大きなって言わ


れましたが。」


 「うん、大型で、しかも、大量に運べるといいんだがよ~。」


 「わかりましたよ、一度に、大量の岩石を運べればいいんでしょう。」


 「うん、何時も無理を承知で頼むんだが。」


 「将軍、勿論ですよ、作りますよ、其れに、頑丈に作りゃ~、いいんでし


ょう。」


 「有難うよ。」


 「将軍、外で作業する人達に比べりゃ~、オレ達の仕事は楽なもんです


よ、オレ達は、みんなのために、頑丈で、大量に運べるって道具を作ります


から安心して下さいよ。」


 「じゃ~、みんな、頼むぜ。」


 と、ロシュエは、手を振り、戻って行く。


 そして、全ての準備が終わり、今日、農民姿の兵士達を輸送する日で有


る。


 「お~い、全員、集まってくれよ、今から、簡単な話なんだがよ~、此処


で、岩石運びの作業に就いている者は、川の近くまで移動する。」


 ロシュエは、農民姿の兵隊を見ていた、彼らは、予想もしなかった話で驚


いている。


 「実はなぁ~、みんなには悪いんだがよ~、此処だけの仕事じゃなくて、


他の仕事も覚えてもらう必要が有るんだ、其れでだ、君達は、一度、大池を


造る作業に、そして、ウエス隊長の兵士は、此処で岩石運びの作業を経験し


てもらおうと思ったんだよ~、それとだ、農地造りで耕している人達は、そ


のまま残り、今までと、同じ作業を続けて欲しいんだ。」


 農民姿の兵士達は、ウエスの作戦が見破られていないと思って要る。


 「でも、隊長、何時まで、司令官の居られるところに居るんでしょう


か。」


 「うん、私も、わからないが、30日くらいだと思うんだ、あの将軍の言


い方では。」


 「そうですね、司令官の考えられた作戦で、今まで、一度も、失敗した作


戦は有りませんからねぇ~。」


 「その通りだ、其れで、我々の事も知られてないはずだ、だから、少しの


辛抱すれば、此処に戻ってくれば作戦は決行するんだ。」


 「はい、隊長、我々の軍隊は最強ですから。」


 「その通りだ、正か、武器を次の農場造りの頃から始めるとは、敵も思っ


て無いだろうから。」


 「私も、早く、武器を作って、此処の農場を乗っ取りたいですねぇ~。」


 その時で有る。


 「此れから、出発するが、君達の護衛には、第3番大隊と第4番大隊が左


右に分かれ任務に就くので安心する様に、それと、先頭は、我々の農場でも


最強の部隊が行く、では、出発せよ。」


 ロシュエの号令で、農民姿の兵士達を守る様に出発するのだ。


 だが、護衛の兵士全員は、馬に乗っているが、農民姿の兵士達は歩いて行


く。


 司令官の考えで、農民達は、馬に乗せる必要は無い、農民にとっては、馬


や牛は大切な働き手なのだと言うのだから。


 「閣下、奴らも、少しは驚いている様子でしたが。」


 「そりゃ~、そうだろう、突然、川近くに移動すると言われたんだからよ


~。」


 でも、何か、滑稽ですよ、奴らは、今でも、我々に知られていないと思っ


てるんですからねぇ~。」


 「司令官、其れで、いいんだ、奴らにすれば、久し振りに、ウエスに会う


事も、それにだ、数十日もすれば、此処に戻れると思って要るんだからなぁ


~。」


 と、ロシュエは、笑いを堪えている。


 「将軍、では、行って参ります。」


 「うん、宜しく頼みますよ、彼らも無事に戻って来るまでは、大変だろう


が、1番大隊と2番大隊の隊長には宜しく伝えてくれよ。」


 「はい、将軍。」


 4番大隊の隊長とロシュエの会話は、誰が聞いても、農民姿の兵士達の話


だろうと思うのだ。


 「隊長、聞きましたか、やはり、一度、行って、暫くすれば、此処に戻っ


て来る様ですよ。」


 「うん、私も、その様に聞えた、向こうに着いたら、司令官にお話しをす


るよ、それで、みんなにも伝えろ、向こうに着くまでは、お互い余計な話は


するな、若しも、敵に知られたら、今までの計画が台無しになるんだと。」


「はい、隊長、順番に伝えて行きます。」


 「頼むぞ。」


 だが、3番隊、4番隊の兵士達は知っていた、だが、彼らは、知らない振


りをする。


 其れよりも、隊長からは、農民姿の兵士達をいたわる様に、だから。


 「皆さん、申し訳ないですね、我々だけが、馬に乗って、これも、狼を早


く発見して狼に襲われないようにする為なんですからね、辛抱して下さい


ね。」


 「いや~、兵隊さん、オレ達は大丈夫ですよ。」


 「そうですか、私達も、隊長から、皆さんを守る様にと言われております


ので。」


 「そうですか、ありがたい話です。」


 農民姿の隊長も、とぼけているが。


 「疲れたら言って下さいね、私達は、皆さんを無事に送り届ける事が任務


なんです。」


 「はい、有難う、でも、我々は農民ですから、少々の事では大丈夫ですか


ら、心配は入りませんよ。」


 「そうですか、では。」


 と、彼は、4番隊の中隊長なのだ。


 中隊長は、馬を小走りさせ、隊長に報告に行く。


 彼ら、農民姿の兵隊を守ると言う名目と、大池を造る作業も経験して欲し


いと言う名目で出発した、3番大隊と4番大隊は、農民姿の兵士の監視を続


け、4日後の夕方には、ウエスの居る現場に無事到着したので有る。


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