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闇の帝国    作者: 大和 武
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第 45 話。新たな情報と潜水船は。

「なぁ~親方、あの工藤って官軍の人だけど。」


「げんた、わしも今聞いて驚いてるんだ、正か官軍の軍艦を考えてたって事は大変な事になるぞ。」


「親方、オレ達が造った潜水船って、官軍は知ってるんですかねぇ~。」


「銀次さん、わしも気になるんだが、さっき源三郎様がわしらが潜水船を造ったって言った時、あの人は驚いてたから多分だけど官軍も知らないと思うんだ。」


「銀次さん、あの人が一緒になってくれたら、オレも少しは。」


「げんた、源三郎様の事だあの人は野洲に残すと思うんだ、まぁ~其れは源三郎様に任せてだ、其れよりもオレ達の仕事も変わるかも知れないぞ。」


「いいや、わしは源三郎様はそんなお方じゃないと思うんだ、わしらは銀次さん達が原木を切り出してく

れないと潜水潜は造れないんだからなぁ~。」


 銀次は仕事が変わると心配しているが、親方は仕事が変わるとは考える必要も無いと思って要る。


 だが、問題は工藤と人物が何処まで介入して来るのか、其れが全く分からないので有る。


「技師長、親方、銀次さんお話しが有ります。」


「あんちゃん、オレ達に何の話が有るんだ。」


「工藤さん、このげんたが技師長でして、今新しい潜水船の構想に入って貰って要るのです。」


「総司令、技師長、私で宜しければ是非ともその潜水船を拝見させて頂きたいと思うのですが如何でしょ

うか。」


「技師長は如何ですか。」


「オレは別にいいよ、何時でもだ。」


「技師長、工藤さんは軍艦の基本的な設計をされたので、技師長の考案した潜水船を見られて意見が頂け

ると思いますよ。」


「あんちゃんはどうするんだ。」


「私ですか、私はねぇ~げんたが中心になって、げんたが考えた潜水船を多く造って欲しいと考えて要る

のですがねぇ~。」


「源三郎様、じゃ~わしらもこの間々潜水船を造れるんですか。」


「勿論ですよ、親方が居られないと私は大変困りますのでね。」


「じゃ~今まで通りで宜しいんですか。」


「はい、是非ともお願いします、銀次さんもですよ今更辞められては困りますのでね。」


「源三郎様、有難う御座います、オレも嬉しいです。」


「工藤さん、技師長の頭の中は我々では全く理解出来ない事を考え付きますので、大変でしょうが何卒宜

しくお願い致します。」


「総司令、私も全力で技師長を支えて参りますので、技師長、宜しくお願い致します。」


 さすがに元官軍の少佐だけの事は有る、源三郎が言わんとする事を理解し、この先、げんた達を支えて

行くと言うので有る。


「オレはあんちゃんの為にやってるんだ、其れにあんちゃんの困ってる顔なんか見たくもないし、オレは

こんな人間で読み書きも出来ないんで、工藤少佐、オレに読み書きと軍艦の基本を教えて欲しいんだけど

いいですか。」


「分かりました、技師長、これからは私の知る限りの事を皆さんにお伝えしますので、其れと私はもう官

軍の少佐では有りませんのでこれからは工藤と呼んで頂いても宜しいですよ。」


「少佐殿、私は突然の事で何も分かりませんが、今別の部屋で司令部におりました頃の事を書いて要るの

ですが、宜しければ少佐殿のご都合の良い時にでも一度見て頂きたいのです。」


「はい、承知致しました。


 井坂さん、私はもう少佐では有りませんので。」


「う~ん、ですが。」


「井坂さん、その内に慣れて来ますからね何も急がれる事は有りませんよ、出来るならば井坂さんも工藤

さんに協力して頂ければ有り難いのですが、如何でしょうかねぇ~。」


「源三郎様、私は喜んでさせて頂きます。」


「菊池様、上田様、この様な話しなりましたが、如何でしょうか。」


「源三郎殿、私も大変良い事だと思います。

 其れで先程のお話しで我々に配属して頂けると申されました中隊の事ですが。」


「はい、私は菊池様の所が一番手薄で危険だと考えております。


 工藤さん、先程のお話しでは第一中隊が駐屯して頂けるとお聞きしたのですが。」


「はい、第一中隊で御座いますが、第一中隊は我が部隊の中でも射撃の腕前は私が保証致します。

 其れに中隊長は我が部隊では一番の腕前でして、各小隊長も中隊長と比べ引けは取りませんので。」


「そうですか、工藤さんのお墨付きならば心配は有りませんねぇ~。」


「私も其れを聴いて安心致しました。

其れで運用方法に関しましては如何なものでしょうか。」


「菊池様と野洲や他の国とは条件が違いますので、如何でしょうか、私は中隊長、小隊長に現地を見て頂

き、其れから検討されても宜しいかと思うのですが、中隊長、如何でしょうか。」


「はい、私も現場を拝見してからが良いと判断致します。」


「菊池様、中隊長からも了解して頂きましたので帰国されてから海岸と隧道を見て頂いては如何かと思う

ので御座います。」


「分かりました、高野は戻り次第、いや直ぐには無理だと思うので、数日後にでも中隊長と小隊長に見て

頂き、その後にでも判断して頂くける様に手配せよ。」


「殿、私も其れで宜しいかと存じます。」


「其れから、上田と松川に付きましては野洲とよく似た状態なので問題は無いと存じます。」


「義兄上、宜しいでしょうか。」


「若殿、何か。」


「はい、実は先日私と家臣数人で松川の洞窟に入ったのですが、その洞窟と申しますのが上田様のご領地

の洞窟と繋がっておりまして。」


「えっ、其れは誠なのですか。」


「はい、勿論で私も正かと思っておりましてもう大変な驚きで御座いました。

 其れも上田の阿波野様と上田の出入り口近くで会ったのです。」


「総司令、私もあの時は驚きました。

 ですが其れ以上に上田の入り口から入った所から人間の手が加えられたと思われる様で御座います。」


「いゃ~其れは初めてお聞きしましたが、阿波野様、何故人間の手が加わったと思われるのですか。」


 源三郎は予想外の展開になって来たと思うのだ。


 正か人間の手が加わった洞窟が存在するとは、今まで考えもしなかったので有る。


「入り口は狭いのですが、内部も有る程度の高さが有り、其れよりも私も洞窟は知っておりますが、洞窟

内に入りますと直ぐに岩が平らに削り取られているのです。」


 げんたは腕組みをし何かを考え始めた。


「其れは野洲の洞窟の様にでしょうか。」


「はい、正しくその通りで、其れと海の水が丁度満潮の時に舟が着ける様に、そうですねぇ~半町以上の

奥まで削り取られております。」


「そうですか、其れで奥行きは何処まで有るのですか。」


「義兄上、阿波野様の申されておられますのが岸壁だと言うので有れば、松川から上田まで続いておりま

したので、私は大昔の落武者が大勢洞窟にいたのでは無いかと考えております。」


「落武者ですか、ではその落武者が洞窟内を削ったと申されるのですね。」


 其れは源三郎達が知らないだけなのか、其れとも今の今まで誰も言い伝えを聴いて無かったのか。


「其れでどの様に進めておられるのですか。」


「はい、技師長からこの洞窟を潜水船の係留地にしたいと、其れで色々な指示を受け、松川の漁師さん達

と家臣の共同で内部の調査と一部ですが掘削工事に入っております。」


「総司令、上田も同様で御座います。」


「あんちゃん、親方も弐号船よりも胴体が少し細い潜水船を参号船から造るって聞いてるんだ。」


「親方はもう考えておられるのですか。」


「源三郎様、潜水船の胴体を少し細くすれば、その洞窟には多く入れる事が出来ると思うんです。

 野洲に帰る前に銀次さんには原木の手配を、其れも参号船、四号船、五号船と続けて造りたいと、わし

が勝手に考えてるんですが。」


 げんたもだが、親方も、更に銀次達も交えて早くも参号船の建造に入る様に準備を進めており、其れを今確かめる事が出来たので有る。


「親方、銀次さん、本当に有難う、私も其れまでして頂けますと随分と助かりますよ。」


 野洲では家臣も領民も一致団結しており、其れは誰からの命令でも無く、誰もが自らの意思で、其れは最初の頃の官軍と同じで有った様に、だが今の官軍は違う、誰かが必ずと言って良い程命令を出し、その命令には絶対と言っても良い程従わなければ厳罰を与えると言うので有る。


 工藤も今は帰る事も出来ないので有れば、この地に留まる決意をするので有る。


「総司令、私は誠に感心しております。


 私はまだこの野洲しか知りませぬが、どなたも命令を出される事も無く、皆様方が自ら意思で行動に移

られておられると感じております。」


「そうでしたか、私はなにも考えておりませんのでねぇ~。」


「あんちゃん、野洲の鍛冶屋さんが今頃松川の窯元さんの所で詳しい打ち合わせをしてると思うんだ。」


「鍛冶屋さんが窯元さんとですか、其れは何かの為にですか。」


「うん、そうなんだ、鍛冶屋さんは最初から歯車を作るよりも、溶けた鉄を型枠に入れて作る方が強いっ

て、其れで窯元さんに型枠の焼き物が出来ないかって相談と、作れるんだったら沢山作って欲しいって頼

みに行ってるんだ。」


「義兄上、私もその話しは伺っており、窯元さんにも全面的に協力をお願いしております。」


「ですが、歯車の型枠の焼き物ですが、一体何処で使うのですか。」


「あんちゃん、山賀だよ、山賀のお城の北側に鉄を作る為の。」


「あ~、あれですか。」


 源三郎はすっかり忘れていた。


「あんちゃん、丁度今頃山賀の正太さん達が鉄を作る為の作業場を作ってるんだ、其れでその作業場が出

来ると、窯元さんに焼いて貰った型枠に溶けた鉄で歯車が出来るんだ、出来た歯車の最後の仕上げを鍛冶

屋さんがやってくれるんだ。」


 鍛冶屋は山賀で鉄を作る為の作業場でも多種類の歯車を作り、補修時にも交換用の歯車が必要だと、そ

の歯車を作る為に鉄を焼いて打っていたのでは他の仕事が出来ないと考え、窯元に歯車の型枠を作って欲しいと、其の型枠に溶けた鉄を流し込めば最後の仕上げだけで終わると考えた。


「そうでしたか、其れにしても窯元さんも大変忙しくなるのですねぇ~。」


「はい、ですが窯元さん達も喜ばれておられました。

 型枠と言っても数種類も有り、型枠の出来方次第で歯車の出来も変わって来るので、今まで以上に神経

を使うと、其れに連岩も作らなければならないので、其れは今まで以上に仕事が増えたと申されておられ

ました。」


「ですが連岩を作り上げ運ぶとなれば松川では人員が不足して要るのでは。」


「其れが松川でも数百人の領民が運ぶ作業に入っております。」


「そうですか、其れでその連岩ですが、主にどちらへ運んでいるのですか。」


「はい、今は菊池へで御座います。

 菊池の隧道を補強する為に、今は七割から八割は菊池へ、残りが上田の浜に新しく作っております隧道

に使われております。」


「総司令、お願いが有りまして、実は菊池の左官屋さんだけでは人数が足りませんので。」


「分かりました、では野洲の左官屋さんにお願いして見ますので、どなたか左官屋さんを呼びに行って下

さい。」


 若い家臣は飛び出し、其の時、雪乃達がお茶を運んで来た。


「皆様方、お茶で御座います。」


 加世もすずも、其れに他の腰元達も。


「雪乃殿、有難う御座います。」


「源三郎様、何か御座いましたら、何時でも。」


「はい、その時には宜しくお願い致します。」


 雪乃も他の腰元達も引き上げた。


「高野様、今、隧道は。」


「はい、今は隧道の補強を急いでおります。

 其れと菊池にも洞窟が有ると思いますので、そちらの調査も行っております。」


「工藤さん、何か必要な物と言いますか、何か有れば。」


「はい、各中隊を駐屯させて頂くのですが、伝令用として小隊分の馬をお借り出来ればと思いまして。」


「工藤さん、伝令ですか。」


「はい、軍隊では何か突発的な問題が有れば、伝令がその役目を行なうのですが、その為には馬が必要な

ので御座います。」


「分かりました、では各奉行所にも多くの馬がおりますので、その馬を伝令専用とさせて頂いても宜しい

でしょうか。」


「私は何時でも宜しいかと存じます。」


「其れでは、他の方々は。」


「義兄上、私も賛成で御座います。」


 各国の殿様は賛成し、奉行所の馬を使う事に成った。


「工藤さん、其れで小隊用の馬と申されましたが、其れはどの様な時に使われるのですか。」


「総司令、先程も山賀の若様が申されましたが、幕府軍の侍が侵入したと、私は軍隊方式を使い方によっ

ては便利だと考えております。」


「其れは、何か突発的な出来事の対処する為にでしょうか。」


「はい、普段は中隊の人員が有れば殆どの問題は解決出来るのですが、仮に幕府軍が百人、いや五百人が

攻撃して来たと考えて下さい。

 其の時、中隊隊長が後一個小隊か二個小隊が居れば幕府軍を壊滅させる事が出来ると判断した時に応援

を要請したい、ですが応援に行くにも馬がいない、応援が来ず中隊は反撃も出来ずに多くの犠牲者が多く

出た、ですが一個小隊が応援に行く事で幕府軍はまだ応援部隊が来ると考えさせるだけで反撃も少なく犠

牲者も少ないか、其れよりも幕府軍は戦意喪失させる事の方が重要だと思います。」


「ですが、そんな少人数で戦意が喪失するのでしょうか。」


「はい、勿論、総司令のご心配は理解しておりますが、敵軍にすれば仮に少人数が駆け付けると言うのは、後からは大勢の兵士が加勢すると考えますので。」


「失礼ですが、その方法は軍隊方式なのですか。」


「別に軍隊方式とは申せませんが、軍の応援は小隊よりも中隊を応援に向かわせるのですが、今は各国に

一個中隊だけ、ですが其れを反対に大勢の兵士が駐屯して要る様に見せる方式を考えたのです。」


「そうか、本当は中隊の人数だけど、小隊が其れも二個小隊が駆け付ける事で、相手にすれば後からも追

加の応援が駆け付けると思わせるのですね。」


「はい、その通りでして、例えば野洲に五百人以上の幕府軍が攻撃して来た。

 其の時、菊池の方向からと上田の方向から各一個小隊が駆け付けると、敵軍は他にも大勢の兵士が要る

と考え、戦意が喪失せずとも、落ちる事は間違いは御座いません。

 簡単に申しますと、敵軍を騙す作戦で味方の犠牲者も抑える事が出来ると考えております。」


「其れはやはり軍隊の考え方なのでしょうか。」


「はい、その通りでして、心理作戦は大昔の兵法でも使われておりましたので。」


「工藤さん、よ~く分かりました。

 私としましても味方からは犠牲者を出したくは有りませんので大切な作戦だと考えております。

 一個小隊分では無く、二個小隊分の馬の準備を各国にお願いを致したいと思うのですが、皆様方、如何

でしょうか。

 其れと工藤さん、その馬ですが、先程の伝令にでもですが、普段は伝令以外に小隊で使われる様な事は

無いのでしょうか。」


「勿論で御座いますが、普段から出来れば使いたいのです。

 私は以前から偵察隊専用の馬が有ればより迅速な対応が出来るのではないかと考えておりました。

 各中隊から偵察任務専門の小隊は馬で行なうのが理想的だと考えております。」


 工藤はやはり官軍の少佐と言うだけあって、官軍の良いところを利用したいと、其れは武家社会では余

り聴いた事が無いと源三郎は思って要る。


「皆様方、各中隊長、小隊長を含め、詳細の部分に付きましては、後日、帰国されてからお話し合いが必

要だと考えます。」


「総司令、私も工藤さんの申されます通りだと思います。

 官軍で学ばれた方法を利用出来るので有れば出来るだけ利用すれば良いと思います。」


 他の殿様方も阿波野の発言に頷いて要る。


「では皆様方が国に戻られてからお話し合いをすると言う事でお願い致します。」


 其の時、執務室から数人の家臣が来た。


「総司令、失礼します。」


「はい、其れで分かりましたか。」


「はい、最初の五百人の方々が百発お持ちだと聞いておりましたので、其れは別の物と考え、残りを数え

ましたところ五万発が有りました。」


「えっ、五万発も有るのですか。」


「はい、全ての弾倉から出し数えましたので、間違いは御座いません。」


「そうでしたか、其れは大変だったと思いますが、ご苦労様でした。」


 家臣は報告を済ませると戻って行った。


「五百人以外で連発銃が一千丁、弾薬が五万発も有ると、では簡単に考えまして、各国に二百丁と一万発

の配分とさせて頂きますので、工藤さん、連発銃の訓練ですが、一人当たり何発必要でしょうか。」


「総司令、最初は実弾は使わず銃の構え方から入り、実弾射撃に入りますと一人が使えるのは、総司令、

これは大変難しいです、五百丁ならば、一丁で五十発ですから多くは使えないのですが、百丁使うとなれ

ば一人が百発持ちますので、実弾訓練は十発が限度かと思われます。」


「工藤少佐殿、誠に申し訳御座いません。」


 中隊長達が突然起立し。


「何か有ったのですか。」


「はい、実は我々の毛布の中に。」


「はっきり言って頂いても宜しいですよ、毛布の中がどうしたと言われるのですか。」


「はい、あの夜私達中隊長全員で兵士全員に各自の毛布の中に弾薬を隠せと指示を。」


「えっ、では全員の毛布の中に弾薬を隠したのですか。」


「はい、その通りで、誠に申し訳有りません。」


 中隊長達が頭の中を下げた。


「其れで、一体、何発程有るのですか。」


 工藤も正かと思ったが、其れでも各自が隠したところで一人が百発でも多いと思ったが。


「はい、一人で千発は隠したと。」


 何と一人の毛布の中に一千発の弾薬を隠して要ると、だからあの時夜中に荷物を纏めていたので有る。


「一人が一千発か、では五十万発の弾薬を隠していたと、ですが何故その様な事をされたのですか。」


 工藤も呆れ果て怒る気もしなかった。


「はい、あの時は失礼で申し訳御座いませんが、総司令の申されますお話しが信用出来ず、一千丁の連発銃と五万発は取り上げになるだろうと、ですが五百名の兵と五十万発の弾丸は何としても見つけ出されない方法を考えておりまして、其れで各自の毛布の中に隠せと。」


「其れで、あの時兵士全員の動きが何故かぎこち無かったのですか。」


「工藤さん、五十万発の弾丸とはまた大量ですが、でもまぁ~其れだけ大量の弾薬が良くも発見されなかったのが不思議に思うのですがねぇ~。」


「総司令、前の隊長と言うのが国ではご重役の子息で、司令部でも何をしても見ぬ振りをされておりまし

たので、これは私が他から聴いた話しですが、有る大隊の隊長になると言う事が決定していたと、其れの

手土産では無いかとその当時は思ってたのですが、隊長は連発銃と全ての弾薬を佐渡で金塊と交換する様

になっていると話されていたのを思い出しました。」


「兵士達は知って要るのですか。」


「いいえ、彼らは何も知りませんので、私も今弾薬の数を聴くまでは忘れておりまして申し訳御座いませ

んでした。」


「そうでしたか、まぁ~今更中隊長達を責めても何も変わりませんので、其れよりも五十万発の弾丸が有

ると言う事は訓練には余裕が出て来たと考えても宜しいのでは有りませんか。」


 源三郎も少しだが気持ちに余裕が出て来た。


 各国に振り分ける連発銃が有ると言っても家臣の全員が使う事も無いだろうと、其れよりも射撃訓練で

も無駄な弾薬は使わない事の方が大事だと考えて要る。


「義兄上、私は射撃訓練も大事だとは思いますが、其れよりも食料の備蓄を考えなくてはならないと思っております。」


 竹之進も戦は出来る事ならば回避したいのだろう、源三郎が最初の頃、食料の備蓄目的で洞窟の掘削を

考えた、其れが何時の頃からか分からないが、戦を前提に考える様になったので有る。


 だが、源三郎は竹之進の発言で忘れかけていたことを思い出させてくれたので有る。


「若殿、有難う御座います。

 私は最初の頃の目的を忘れかけておりました。

 其れで山賀はどの様な策を。」


「はい、今城裏の洞窟の中に簡単には見付けられない所が有りましたので、其れを利用し山賀で収穫され

た穀物を保管する予定で御座います。」


 源三郎も知らない洞窟が見付かり、松之介は他の国の為にも大量の穀物を特にお米を備蓄したいと考え

て要る。


「若様、山向こうから来られました農民さん達のその後ですが。」


「はい、あの人達が持って来られました種もみを増やす為に今新しい田を作り、一部では既に稲穂が実り

まして雑用と備蓄用に分け保管しております。」


「其れは素晴らしいお話しですねぇ~、この野洲でも分別していると聞いておりまして海岸に有る新たな


洞窟の調査を始めております。」


 其れは山賀、野洲だけでは無く、他国でも同様に進めていると言うので有り、其れは大きな進展で連合

国の領民が数年間は生き延びるだけの穀物類が確保出来るまでは、まだ数年間は掛かるが、其れも今やっ

と軌道に乗り出したので有る。  


 其処で源三郎は新たな提案をする事に。


「皆様方には、私は大変感謝を致しております。


 其れで私は皆様方にご提案をしたく考えておりました。」


 源三郎の提案とは一体どの様な事なのか、一同は関心が有る様子で身を乗り出す様な気持ちで有る。


「実は先程から皆様方からも色々な報告を頂きましたが、この様な話しを連合国として共有したいと思っ

て要るのです。

 野洲で起きた事は数日の間には他国でも知ると言う事なのですが如何でしょうか。」


「源三郎殿、私は良い事だと思います。


 先程も高野が申しました様に菊池では左官屋さんが不足して要る。


 其れを他の国の方々にも早く知って頂く事で菊池に有る隧道の補強が早く終わり、では次はと手配する

事も可能で有ると考えて要るのですが。」


「義兄上、私も大賛成で御座います。

 山賀では鉄を作る作業とお米の生産が主になりますが、例えば上田様のところでもこの様な型枠を作って頂ければ、多くの型枠で溶けた鉄で作ると言う事も可能となり、其れは型枠を作るのは松川だけでは無く、他国でも作れると、その様になれば連合国内での工事の進み具合が各国でも分かれば人員不足が有る所には人員配置の手配する時も早くなると思うのです。」


「ですが書状として各国に届ける、其れも定期的に行う必要が有ると思うのですが。」


「総司令、如何でしょうか、連合国には中隊が駐屯しますので、そのお役目を中隊の伝令と言う事では駄

目でしょうか。」


 工藤は中隊の兵士を使う事で定期的に届ける事が可能だと考えたので有る。


「う~ん。」


 源三郎は別の事も考えて要る。


 書状を届けるだけで終わるのでは何かが足りない。


「工藤さん、兵士と言うのは偵察も行うのでしたねぇ~。」


「はい、各中隊には必ず一個小隊が偵察任務に向かえる様になっております。」


「私は書状を届けるならば誰にでも出来ると考えて要るのです。

 其処で工藤さんの提案に追加の任務として、戻られる時にですが周りの観察と言う事をお願いが出来れ

ば思うのですが、勿論何時もとは申しません。

 時には返事の急ぐ用件も有るとは思いますが、書状の中身も返事も必要としない用件も有ると思うので

す、その時に周辺で異常は無いか、見慣れない者はいないか、其れだけの事なのですが。」


「勿論、可能で御座います。

 私も総司令が申された様に書状を届けるだけでは意味も無いと思いますので、仮に異常が有れば最短の

国へ報告する事も可能で、時には中隊の出動も可能だと考えます。」


 中隊長達も納得しており頷いて要る。


「では、皆様方もその方向で宜しいでしょうか。」


 誰からの反論も無く。


「ではこれで終わりたいと思いますが、皆様方、お食事も準備致しておりますので。」


 其の時、雪乃達が食事を運んで来た。


「総司令、これからの私ですが、どの様にさせて頂ければ宜しいのでしょうか。」


「そうですねぇ~、井坂さんが書き出されました内容を後日拝見しますので、それと工藤さんにげんた技

師長が考案した潜水船を見て頂きたいのですが。」


「はい、勿論で私も早く拝見させて頂きたいと思っておりましたので。」


「技師長、其れで宜しいでしょうか。」


「うん、オレは何時でもいいよ、でも本当は余り見られたくないんだ。」


「何故ですか、げんたが考えた最高の潜水船ですよ。」


「だって、オレは考えただけなんだぜ。」


「技師長、私も今の今まで船が海の中に潜ると言う考え方は有りませんでした、船と言うのは川や海の上

に浮かぶと言うのが私もですが、誰でもが考える事で、其れに比べ技師長の発想力は普通の人では考えら

れないので、私は大変羨ましい限りです。」


「ねぇ~工藤さん、オレをそんなにおだてないでよ、オレはなぁ~単純だから直ぐ本気にするんだぜ。」


「其れがげんたのいいところですよ、まぁ~これからはね、げんたも少しは楽になると思いますよ。」


「技師長、私は今心の臓がドキドキと音を立てて要るのです。

 其れは私が考えた軍艦よりも、この世の中には遥かに素晴らしい船を考える人物が要るのだと、今改め

て感心しているというよりも私の頭が混乱して要るのです。」


「ふ~ん、そんなにいいのかなぁ~、だけどオレが潜水船を思い付いたのはなぁ~、あんちゃんの話を聴いてからなんだぜ。」


「えっ、総司令がですか、其れはどの様な話しからですか。」


 げんたが考案した潜水船は、源三郎がげんたに依頼した物からで、他の国の人達も初めて聞く話しだ。


「オレは城下で母ちゃんと一緒に小間物屋をやってたんだ、其れである日突然あんちゃんが来て水の中に

潜って息の出来る方法を考えて作ってくれって、だけどオレは水の中で息なんか出来ないって言ったんだ、だけど。」


「えっ、何ですと、総司令は水の中で息が出来る物を作れと技師長に言われたのですか、総司令も何と恐

ろしい発想をされますねぇ~。」


「私は別に恐ろしいとは考えてはおりませんでしたよ、私はねぇ~実に簡単に考えておりましたので。」


「あんちゃんはなぁ~簡単だって言うけれど、あれを作るのにオレは大変だったんだぜ。」


「技師長、その道具が有れば松川に有る洞窟に入るのは簡単でしょうか。」


「まぁ~簡単と言ったら簡単なんだけど、でも無理なんだ、だって潜水具は一人では使えないんだ。」


「潜水具と申されるのですか、其れでその潜水具とはどの様な物なのでしょうか。」


「そうだなぁ~簡単に言うとね、頭が入る大きさの樽に外が見えるくらいの口、いや穴かなぁ~、その開

いたところにガラスを付けて、樽の中にふいごで空気を送るだけなんだけど。」


 げんたの説明に工藤も頭を捻りながら考えて要るが他の者達には全く理解出来ないので有る。


「ではその道具には樽を使われるのですか、まぁ~其れにしても技師長の考え方には我々では全く及ぶこ

とは出来ませんねぇ~。」


「工藤さん、一度、げんたの頭の中を見たいとは思わないですか。」


「総司令、私は是非とも拝見させて頂きたいと思います。」


「あんちゃんは、オレの頭を割るつもりなのか。」


 源三郎も工藤も笑って要るが、げんたは本気になって要る。


「オレは絶対に嫌だかなぁ~、嫌だよ。」


「げんた、分かっておりますよ、冗談ですからね。」


「なぁ~あんちゃん、冗談でもオレの頭を割るなよ。」


 傍で聞いて要る、親方や銀次も中隊長達も笑って要る。


「ですが、総司令は何故その様な物が必要だと思われたのでしょうか。」


「まぁ~その答えは野洲の洞窟に入れば分かりますからねぇ~。」


「源三郎殿、今申されました潜水具ですが我々の洞窟でも使う事は必要でしょうか。」


「菊池様、私は必要だと考えております。


 潜水具が有れば、洞窟内に潜り、岸壁の工事も海底に有る岩も取り除く事が出来ますので。」


「その潜水具ですが、今は使われているのでしょうか。」


「上田様、今は使用しておりませんので、其の時になればお使いして頂いても宜しいかと。」


「あんちゃん、オレが潜水具を作ろうか。」


「そうですねぇ~、では五個くらい作って下さい。」


「うん、分かったよ。」


 げんたは簡単に引き受けるのだが。


「技師長、潜水具は簡単に作れるのですか。」


「上田のお殿様、オレは簡単に言ってるけれど、でも本当は簡単には作れないんだ、どんな事が有っても

潜っている時に樽の中に水が入らない様に作らないと駄目なんだ。」


「菊池様、上田様、松川の若殿、潜水具は技師長が苦心して作ったので、簡単には作れ無いと思いますの

で技師長に任せて頂きたいので御座います。」


「源三郎殿、私は技師長にお任せしますので、宜しくお願い致します。」


 菊池の殿様は、げんたに任せると、他の殿様も全てを任せる事に成った。


「あんちゃん、樽と硝子、其れに油紙が要るんだけど。」


「分かりましたよ、私が手配しましょう。」


「源三郎殿、私も戻り次第樽と硝子ですね、お届けしますので。」


「技師長、其れで樽の大きさですが。」


「うん、頭が入れば其れで十分だから。」


「其れと硝子ですが、大きさと言うのは。」


「う~ん、でも硝子って切るのは難しいんだ、下手をすると直ぐに割れるからなぁ~。」


「ですがご無理をお願いするのです、宜しければ切らせて。」


「でもオレが切るよ、う~ん、そんなに言うんだったら大きさはこれくらいの。」


 げんたは顔に両手を当て。


「技師長、分かりました、其れと後必要な物が有れば。」


「じゃ~油紙なんだど。」


「なぁ~げんた、油紙は多い方がいいのでは。」


「そうだなぁ~、油紙が少ないと水が入るからなぁ~、じゃ~油紙は多くして下さい。」


 殿様方も油紙が何に使われるのか分からないが、げんたが必要だと言うので有る。


「其れとふいごも要るんだ、まぁ~其れだけの物が有れば直ぐに作れるからね。」


 殿様方も樽や硝子を集める様に考えて要る。


「源三郎殿、先程のお話しに戻りますが、届けるならば中隊の兵達に届けさせて頂くと言うのは如何で

しょうか。

 若しもですが我が上田に幕府軍が来た時には、他の国からも応援が来て頂けると言うので有れば、兵隊

さんならば臨機応変に出来るのでは思うのですが。」


「私も良い方法だと思います。

 家臣が届けるのも良いのですが、兵隊さんならば、仮に幕府軍か、若しくは官軍が来た時には他の国へ

の連絡方法もご存知だと思いますので物を届けると言う理由を付け、付近の警戒も兼ねて出来ると思いま

すし、応援に駆け付ける事も出来、其れが連合国を守る為にもなると思いますので出来れはその方法でお

願い致します。」


「其れは情報の共有と言う事に成るのですね。」


「はい、正しくその通りで、先程も山賀の若様が申されましたが、幕府軍が来たと、まぁ~今回は大きな

事態にはならず一安心したのですが、これが若しも大軍が来たとなれば一国だけでは無理で、その様な時

各国に連絡が入れば、各国に駐屯している中隊が応援に行く事が出来れば相手も、いや敵軍も少しは考え

ると思うのですが。」


「総司令、私は、各国に駐屯させて頂く中隊ですが、毎日、小隊が巡回しては如何と思うのですが、如何でしょうか。」


「工藤さん、巡回と申されますと。」


「はい、例えば野洲に配属された小隊が野洲の特に山裾からご城下に至るまで巡回すれば、仮に侵入者を

発見した時には早期の対処が出来ると思います。」


「工藤さん、その巡回と言うのは、同じ所を同じ時刻に回ると申されるのですか。」


「総司令、私の考えは巡回は毎日、毎回別のところを時刻を決めずに回るのです。」


「と、言う事は仮に幕府軍か官軍が隠れており、我々の巡回を見た、でも次は何処から現れるのか分から

ないと言われるのですか。」


「はい、同じ場所を同じ時刻に見回りすれば侵入者に移動されても、我々は発見する事も無く、ただ来た

と言うだけで、私が司令部に居りました頃でも毎日が同じ巡回の繰り返しで、あれでは巡回が通り過ぎれ

ば侵入する事は実に簡単で有ると、其れでは何の為の巡回なのかと何時も疑問を持っておりました。

 連発銃も弾薬も大量に持ち出す事が出来たのは巡回が通り過ぎれば次に来る時刻も分かりますので、巡

回の時刻さえ分かれば誰でも簡単に持ち出す事が出来るのです。」


「工藤さん、ですが其れでは兵士達の負担が多くなると思うのですよ。」


「総司令、宜しいでしょうか。」


 源三郎は軍隊と言う組織を全く知らず、工藤もだが各中隊長達は源三郎の誤解とも言うべきなのか考え

方を何としても解きたいと思っており、其れが一人の中隊長の発言で有る。


「今、申されました負担ですが、総司令が思われておられる様な負担を兵士達は感じておりません。

 と、申しますのは、巡回に向かうだけでも我々の様な兵士は気持ちと申しましょうか、気分と申しま

しょうか其れが変わるのです。

 我々の隊長が考えておられます巡回とは、誰が見ても巡回している様には思わせずにさり気無く動くの

ですが、目と耳だけは何時も別のところを見て要ると言う方法だと思います。」


「総司令、私達は官軍の良い方法を使いますが、この方法ならば例えば田や畑で仕事をされて要る農民さ

んと会話するだけでも情報が入りますので、其れに世間話しの最中でも、今中隊長が申しました通りで目

と耳だけは別の所を見て要るのです。」


 源三郎は、何も官軍の方法を否定しているのでは無い。


 工藤が積極的に連合国の為にと話しをしている事は理解して要るので有る。


「工藤さん、私としましても中隊の方々が巡回されておられますと安心はしますが、でも余り兵士の負担

になる様な事だけは行わないで頂きたいのです。」


「総司令、其れは勿論の事で、今の話は各中隊長は隊に戻り次第兵士全員に説明をして下さい。」


「はい、了解しました。」


「其れとこれからは兵士達の意見も取り入れて行く事で我々もですが、連合国の皆さんに受け入れて頂け

ると思いますので、どうか宜しくお願い致します。」


 このような話しが終わりになる頃。


「最後に中隊の皆さんはこれからが大変だとは思いますが、其れよりも皆さんは元々が農民さんですので

連合国の農村に入り農作業に就かれても私は良いと思っておりますので、各国に向かわれます隊長方には

何卒最善のご配慮を賜りたく、宜しくお願い致します。

 中隊長さんも小隊長さん方もこれからは大変なご苦労をお掛けするとは思いますが、何卒宜しくお願い

致します。

 其れで明日から各中隊の方々は国別に配属となりますが、兵隊さんの全員に申し上げにくいのですが、

皆さんが着ておられます軍服の上着だけ脱いで頂きたいのです。

 其れと連発銃は荷車に積んで頂き、各国に到着されましても各国とも事情が異なりますので、中隊長と

小隊長と殿様を含め、ご家中の皆様方とご相談の上、決めて頂いても宜しいかと存じます。

 皆様方、本日は大変お忙しいところ誠に有難う御座いました。」


 源三郎の締め括りで、会議と言うのか、話し合いと言うのか分からないが全てが終わり、明くる日の朝、野洲に駐屯する中隊の全員が大手門の左右に整列し四個中隊は各国へと出発した。


「各国の駐屯地に向かう全隊員に対し、敬礼。」


 中隊長の号令で、工藤を含めた中隊の全員が敬礼する中、各国へと出発したので有る。


「のぉ~源三郎、余は正かこれだけの兵士が官軍を脱走するとは、全くの予想外で有ったのじゃ。」


「殿、私もで御座います。

 最初、猟師さんの話しで五百名以上の官軍兵を誘き出し全員を殺すつもりで御座いましたが、誠、私今

も狐か狸に騙されて要る様で、何度も眼を瞑り、暫くして眼を開けますと、やはり間違いなく官軍兵が其

処に居りましたので。」


「だが、今頃官軍の本部と申すのか分からぬが、大慌てで有ろうなぁ~。」


「はい、其れは間違い御座いませぬ。」


「其れにじゃ、大量の連発銃と弾薬が持ち去れたのだからのぉ~。」


 其処へ、見送りを終えた工藤と中隊長が戻って来た。


「殿様、総司令、誠に有難う御座いました。


 私はこの様なご配慮を頂き、今までも無き最高の気分で御座います。」


「お主はこの部隊の隊長と申されるのか。」


「はい、左様で御座います。


 総司令には我々全員の命を助けて頂き、更に全員には新たな任務までも与えて頂き何と御礼を申し上げ

て良いのか分かりませぬ。」


「名は何と申されるのじゃ。」


「私は工藤慎太郎と申します。」


「そうか、工藤とやら、これから先の事は全て源三郎に任せておる、何事も源三郎とよく相談するのじゃ、源三郎は決して悪い様にはせぬから、のぉ~源三郎、そうで有ろう。」


「はい、私も工藤さんがこれから先、良き相談相手となって頂けると思いますので、何事も心配無く存分

に楽しませて頂きます。」


「何じゃと、楽しくとな、では余も入れてはくれぬか。」


「殿は駄目で御座います。」


「源三郎、お主までも余を要らぬと申すのか。」


「いいえ、そうでは御座いませぬが。」


「まぁ~良いわ、皆が余を邪魔者扱いするので、この頃余は何もする事が無いのじゃ、のぉ~源三郎、以

前の様に余にも何か仕事を与えてくれぬか、でなければ余は寂しいのじゃ。」


 と、殿様は言いつつ笑っており、其れが今の野洲の殿様で有る。


「殿、今は何もお頼みする仕事は御座いませぬので。」


「工藤、この男はのぉ~、余を嫌っておるのじゃ。」


 工藤も中隊隊長達も笑いを堪えて要る。


「隊長、私が知る殿様は全く何もなされませんでしたが。」


「中隊隊長、余計な事を。」


「いいのじゃ、のぉ~中隊隊長、余の話し相手になってはくれぬか、頼む。」


 殿様は中隊隊長に手を合わせて頼んで要る。


「えっ、正かその様な。」


「殿、中隊隊長はこれから大変な任務に就かれるのですよ、中隊隊長の邪魔をされては困りますよ、そう

ですねぇ~中隊隊長。」


「なっ、分かったで有ろう、この野洲では源三郎に怒られる様な事はするなよ、源三郎は恐ろしい男じゃ

からな、あっ、そうじゃまだおるぞ、雪乃じゃ、あの雪乃がこの野洲で一番恐ろしいのじゃ、工藤も中隊

隊長も雪乃を知らぬが、源三郎以上に恐ろしいからのぉ~。」


 もう工藤も中隊隊長も小隊長も笑いを堪える事が出来ず大笑いをしている。

 何と言う殿様だ、家臣が恐ろしいと平気な顔で言い、工藤も中隊隊長達は頷いて良いのか分からないが、これが今の野洲なのだと改めて思うので有る。


「工藤さん、殿は何時もこの様な話を平気でされますので、何もご存知無いお方は私が恐ろしいと思われ

ますので誠に困っておりますよ。」


「総司令、ですが私は本当に羨まし限りです。

 私が居りましたお城では今の様な会話どころか、我々の様な者には日頃から何も話されませぬので。」


 中隊隊長達も頷いて要る。


「なぁ~あんちゃん、オレ達の野洲は変人ばかりなのかなぁ~。」


「そうですよ、工藤さん、野洲の殿は変人かも知れませんよ。」


 何とこの国では、家臣とも有ろう者が一国の殿様の前にして、其れも平気な顔で変人扱いをする。


「源三郎、余は変人だと申すのか。」


「はい、左様で、特に私は変人中の変人で御座いますが、これだけは殿には譲れませぬ。」


「何じゃと、源三郎が一番だと、では余は二番じゃのぉ~。」


 殿様は大笑いするが、工藤達は下手に笑う事も出来ずに。


「あんちゃんが一番で、殿様が二番だったら、オレは三番か、だけどオレが一番だぜ、なぁ~そうだろう

あんちゃん。」


「確かにそうかも知れませんねぇ~、あの様な潜水船を考えるのですかねぇ~。」


「そうじゃ、確かにげんた、いや技師長が野洲では一番の変人じゃ、間違いは無い。


 のぉ~源三郎、元官軍兵も変人の仲間に入ったと申しても良いのぉ~。」


 源三郎は大笑いするが、工藤達は変人の意味が分からず笑うに笑えないので有る。


「工藤さん、まぁ~今は領民は別としまして、殿を始め家臣達は元官軍兵の方々を仲間として迎えたと言

う事ですよ。」


「では、今の変人と申されます意味は私達を仲間として認識して頂いたと申されるのですか。」


「はい、その通ですよ、まぁ~後程げんた達と浜に行けば、私の言っている意味が分かりますからねぇ~、そうですねぇ~げんた。」


「あんちゃんは浜の人達を変人扱いするのか、オレは知らないぜ浜の母ちゃん達は怖いぜ。」


「そうでしたねぇ~、げんた今の話は誰にも言わないで下さいよ。」


「いいやオレはみんなに言うぜ、あんちゃんはなぁ~浜の人達は変人の集まりだって。」


 げんたも親方達も大笑いし、殿様も親方達も腹を抱えて笑って要る。


「げんた、言わないで下さいよ、お願いしますから。」


 源三郎はげんたに手を合わせて頼んで要る。


「なぁ~あんちゃん、オレはそろそろ浜に帰るよ、母ちゃんが心配だから。」


「源三郎様、オレ達も帰りますので。」


 銀次も浜に帰ると。


「総司令、私と中隊隊長と小隊長も一緒に浜に参りたいのですが。」


「分かりました、工藤さん、この野洲では腰の物は必要有りませんので。」


「はい、全て此処に置いて行きますので、其れと中隊隊長と小隊長は上着も脱いで下さい。」


「じゃ~あんちゃん、またなぁ~。」


「げんた、皆さんに宜しく伝えて下さいね。」


 げんたに親方、銀次と工藤達は野洲の城を出、久し振りに浜へと戻って行く。


「源三郎、あの工藤と申す元官軍兵だが、相当な人物だと思うのじゃが。」


「殿、私も先日から考えておりまして、工藤さんは官軍の司令部に在籍されておられましたので、私は官

軍の情報を話されるまで待つ事に致しております。」


「其れが良いぞ、工藤から話すので有れば我々としても良いが、無理に聴く事は無いぞ。」


「はい、承知致しております。」


「技師長、潜水具の話しですが。」


「潜水具かオレは潜水船よりも潜水具の方が苦労したんだ、だってあんちゃんは水の中で息が出来る物を

作れって、たったそれだけなんだぜ。」


「そうですねぇ~、確かに総司令が申されたのは簡単ですが、でも其れを作るとなれば大変な苦労をされ

たと思いますが。」


「工藤さん、あんちゃんも本当は何も分かって無かったんだ、だって工藤さんも一緒でしょう、命令する

方は簡単に言えるけど、でも実際は工藤さんじゃないんだ、他の人がやると思うんだ、オレもあんちゃん

から言われた時はそんなの簡単に出来るって思ったんだ、だけど水の中で息が出来ないかって考えたあん

ちゃんは物凄いと思ったんだ、だってそうでしょう、普通の人は水の中で息をするのは無理だって最初か

ら思ってるから考えられ無いんだ、だけどあんちゃんは何か道具が有れば水の中で息が出来るって。」


「ですが何故水の中で息が出来る物が必要だったのですか。」


「あの時、浜の洞窟で漁師の元太さん達が砕いた岩が海の中に落ちるんだ、だけど深くて取れないってあ

んちゃんに言ったんだ、浜の漁師さん達も海に潜れるけど、余り深くは潜れないんだぜ、だってそうで

しょう息が続かないんだから、其れであんちゃんが考えて、海の中でも息が出来る物を作ってくれってオ

レに言って来たんだ。」


「やはり、総司令の考え方は我々とは別の次元の様ですねぇ~、我々ならば最初から水の中で息は出来ないと諦めておりますから、其れよりも私はたったそれだけの言葉だけで潜水具を作り、その先に潜水船までも考案された技師長の頭は素晴らしいと思いますよ。」


 工藤も軍艦は考えたが、正か海の上を進む船を海に潜らせる方法を考え付いたげんたと言う技師長の頭

は素晴らしいと思うので有る。


「工藤さん、潜水船って言う船は誰も考えて無いと思うんだ、だって海の上からは海の中の魚は見えない

んだ、だったら船が海の中潜れば、海の上からは船は見えないと思うんだ。」


「ですが、技師長の発想力は本当に素晴らしいですよ、私はその様な発想は出来ないですよ。」


「だけど一番驚いたのはあんちゃんなんだ、あんちゃんはオレに海の中で息が出来る物を作れって言った

んだけど、あのあんちゃんでも船が海の中に潜るなんて考えて無かったって。」


「私は総司令が技師長と呼ばれた意味が今要約分かりましたよ。」


「オレは親方や銀次さん達もだけど、潜水船を造る時一番苦労したのは鍛冶屋さんと思うんだ。」


「鍛冶屋さんですか、でも親方も驚かれたと思いますよ、普通の人は船は水の上を進むものだと思ってお

りますからねぇ~。」


「うん、そうなんだ、オレも親方が居なかったら潜水船は出来なかったと思うんだ、でもその中で鍛冶屋

さんに一番の無理を言ったんだ。」


「無理と申されますと。」


「工藤さんは、潜水船で一番大事な事は何か知ってるのか。」


 工藤も話は聞いているが、潜水船とは一体どの様な船なのか実物を見ておらず、今は想像の中での話で

一番大事なものと聞かれても答えのしようが無いので有る。


「技師長、私は潜水船を想像しているのですが、実は全てを理解してはおりませんので、一番大事なもの

と聞かれましても全く見当が付かないのです。」


 工藤の言う事が普通で、普通ならば想像すらも出来ない船なのだ。


「工藤さんは想像だって言うけれど、潜水船で一番大事な事は海の中で息が出来る事なんだ。」


「はい、其れは私も考えましたが、ですが潜水船に中でも息は出来るのでは無いですか。」


「そうなんだ、工藤さんの言ってる事も間違いじゃないんだ、だけど潜水船って海の中を潜るんだぜ、海

の上だったら息は誰でも普通に出来るんだ、だけど潜水船の中で何時まで息が続くと思う。」


「えっ、正か、息が出来る様に何か機械を作ったと申されるのですか。」


「うん、そうだよ、だって潜水船って海の中に潜るから潜水船なんだぜ、潜るのが長いと中の人は息が出

来ないんだ、其れでオレは空気を入れる方法を考えたんだ。」


「空気を入れる方法ですか、う~ん、私は全く分かりませんが。」


 工藤も全く理解が出来ないのだと、軍艦を造る方法ならば考えられるが、潜水船とは工藤にとっては未

知の船で想像して要る船の形が頭の中でガタガタと崩れて行く衝撃を受けたので有る。


「技師長、私が想像した潜水船の形が頭の中で崩壊して行きますよ。」


「工藤さん、オレが考えた方法はねぇ~、簡単なんだ、だけどさっきあんちゃんがオレに言ったと同じで

頭の中では簡単なんだけど、今度は其れを鍛冶屋さんに話すのが難しかったんだ。」


「では、空気を入れる物ですが、鍛冶屋さんにすれば簡単に作れる物では無いと言われたのですか。」


「うん、そうなんだ、そんな物誰だって簡単には作れ無いよ、だけど野洲の鍛冶屋さんって最高の腕前な

んだぜ、其れにオレは読み書きが出来ないから絵を書いたんだ。」


「鍛冶屋さんは技師長の書かれた絵を理解されたのですか。」


「う~ん、其れは分からないけど、まぁ~一番苦労したのは髪の毛一本も通らないの隙間にしてくれって

言ったんだ。」


「えっ、何ですって髪の毛一本の隙間ですか、でも其れは無理な注文では無いのですか。」


「工藤さん、そんな事オレだって分かってるよ、だったら聴くけど、他に何か方法でも有ると思うのか、

船は海の中なんだぜ、其れに海の上には空気を入れる為に竹の中を刳り貫いた筒を出してるんだぜ。」


「う~ん、これは本当に難しいですねぇ~。」


「そうなんだ、他に方法が無いんだ、でも野洲の鍛冶屋さんって本当に最高の腕前なんだ、オレの無理を

分かって作ってくれたんだ。」


 親方も銀次も他の誰もが知って要る、野洲の鍛冶屋は最高の職人だと、その様な話しをしていると浜に

着いた。


「母ちゃん、オレだ、帰ったよ。」


「え~、げんた、ねぇ~一体何処に行ってたのよ、母ちゃんはもう心配で、心配で夜も眠れなかったんだ

からねぇ~。」


 げんたの母親はげんたが何処に行っていたのかも知らなかったので有る。


「オレはなぁ~、山賀って言う国と松川と上田の国のお殿様と話しをしてたんだぜ。」


「何だって、げんたが他の国に行って、その国のお殿様と話をしたって言うの、よくもまぁ~そんな大嘘

を平気な顔で、げんた、頭でも打って変になったんじゃないのかねぇ~。」


「なぁ~母ちゃん、オレが嘘なんか言っても仕方が無いんだぜ、其れにねぇ~今日官軍の兵隊さん達も一

緒なんだ。」


「げんた、やっぱり変だよ、何で官軍の、えっ、官軍って、源三郎様が言ってた軍隊が攻めて来たん

じゃ。」


 母親が理解出来ないのでは無い、源三郎からは幕府軍と官軍が野洲を攻撃するかも知れないと聞かされ

ており、母親はその官軍が攻めて来たと思ったので有る。


「母ちゃん、違うんだ、官軍の兵隊さんが野洲に逃げて来たんだ。」


「えっ、兵隊さんが逃げて来たって、だって何処にも見えないよ。」


 工藤と中隊隊長、小隊長は上着だけを着換えており、分からないのも当然で有る。


「母ちゃん、この人達が官軍の人達だよ。」


「えっ、正か。」


「技師長の母上で御座いますか、申し遅れました、私は工藤と申します。

 其れと私の隣が中隊隊長と小隊長で、今日は技師長が考案されました潜水船を拝見させて頂きたいと参

りました。」


 母親は驚くよりも唖然として要る。


 其れでも直ぐ普段に戻った、やはり日頃から源三郎から話を聴かされて要るからなのだろうか。


「げんた、じゃ~今から洞窟に行くの。」


「うん、そのつもりなんだ、母ちゃん何か有るのか。」


「何かって、今は無いけど、朝元太さんが持って来てくれたんけど。」


「そうか、だったら今晩の。」


「いいよ、今から始めるから。」


「分かったよ、じゃ~今から行ってくるよ。」


 工藤達は母親に頭を下げ、浜に出ると。


「お~い、げんた。」


「やぁ~元太あんちゃん。」


「なぁ~げんた、何処に行ってたんだ、親方も銀次さん達も誰も洞窟にいなかったから、みんな心配して

たんだよ。」


「あんちゃん、まぁ~その話は、後からするから、この人達を洞窟に。」


「分かったよ。」


 浜の漁師達は心優しい人達で余計な事は聞かないし、話しもしない、げんた達を乗せた小舟が洞窟に

入って行く。


「えっ、これは何と素晴らしいんでしょうか、私は洞窟の中に造船所が有るとは全く想像出来ないので

す。」


「少佐殿、自分達もです、正かこんなにも大きな洞窟が有るとは誰も知らないですねぇ~。」


「工藤さん、此処で潜水船を造ってるんだ、さぁ~着いたよ。」


 工藤達は周りをキョロキョロと、其れは彼らがどの様に考えても理解が出来ない程で有る。


「工藤さん、これが最初の潜水船なんだ。」


 工藤達は初めて見た潜水船は小型だが、その隣にはイ零弐号船が有り、その大きさに驚きの表情を浮かべている。


「少佐殿、この様な大きな船が海に潜ると言われましても、私は全く理解出来ません。」


「う~ん、だ、一体どの様な方法で進むのか、其れも全く分からないですねぇ~。」


「工藤さん、オレは何も秘密にはしてないよ、だけど今は水の中だから説明するよ。」


 げんたは潜水船がどの様に動くのか詳しく説明するが、中隊隊長も小隊長達も全く理解出来無いと言う表情で質問する事も忘れる程で有る。


「まぁ~オレの説明よりも中に入ったら分かるよ。」


 げんたは工藤達を弐号船の船内へと、船内に入った工藤達はげんたが考えた装置を見て、驚きと言うよ

りも唖然として要る。


「この装置を技師長が考案し鍛冶屋さんが作られたのですか。」


「うん、そうだよ。」


「技師長、私は船体部分の形は一応想像通りですが、推進方法も先程申されました空気の取り入れ方法も

全く想像出来なかったのです。」


「まぁ~其れも仕方が無いよ、だってオレ様は天才だからねぇ~。」


 げんたは潜水船を造ったのが自慢だと鼻を鳴らして要る。


「ええ、其れは間違いは有りませんよ、私も今まで色々な人達が考えられた物を見て来ましたが、潜水船

を考えた人は無かったですからねぇ~、其れよりも船内に有る空気の取り入れ装置は誰も考え付く事は出

来ないと思いますよ。」


「まぁ~其れよりも、これから造る参号船はねぇ~、この弐号船よりも大きくなるけど、もっと細くなる

んだぜ。」


「えっ、参号船は、之よりも大きく造られるのですか。」


「うん、そうだよ、親方も考えてくれるんだ、オレ達が行った松川の洞窟なんだけど、弐号船を細く造れ

ば出入りが楽になるんだ、其れと大きくすれば大勢の人が乗れると思うんだ。」


 げんたの頭の中には浜の人達もだが城下の人達を多く乗せ助けたいと願う気持ちが有る。


「技師長、この潜水船ですが、他の国でも造ると言うのは駄目でしょうか。」


「オレは別にいいと思ってるんだ、だけどあんちゃんにも聴かないと分からないんだ。」


「私は同じ造るので有れば菊池も上田も、其れに松川でも造れるので有れば、技師長の負担が減ると思う

のですが。」


「じゃ~、野洲と他に三つの国でも造るのか。」


「はい、その通りで、官軍もですが、幕府軍もまだ潜水船は知らないと思うのです。

 四つの国で造れば数十隻は直ぐにとは申せませんが、親方や銀次さん達も少しは楽になると思うのです

が。」


「そうだなぁ~、其れが出来たらオレも本当は助かるんだ。」


 源三郎もだが、げんたは今まで潜水船を造れるのは野洲だけだと考えていた、だが工藤が言う様に他の

三カ国でも造れるので有れば、数十隻の潜水船が出来、其れは幕府軍にも官軍にも大変な脅威となる事に

間違いは無い。


「技師長、私で良ければ総司令にお話しをさせて頂きますが、ですが問題が有ると考えて要るのです。」


「何か難しい話でも有るのか。」


「技師長、私は先程潜水船で一番大事なところは空気の取り入れる方法だと、その中でも髪の毛一本の隙

間まで要求されました空気の取り入れ装置ですが、何か図面の様な書き物は御座いませんでしょうか。」


「其れなら有るよ、隣の部屋で吉川さんと石川さん言うお侍がオレの言った事って言うのか、潜水船の造

り方を書き物にしてくれているんだ。」


「其れは大助かりですねぇ~、其れでその書き物ですが全部完成したのでしょうか。」


「いやまだ残っていると思うんだ、だってオレが言った事を全部書いてるんだぜ。」


 工藤は吉川と石川がどれだけの書き物をしているのかも知らずにいる。


 吉川と石川はげんたが話す内容を全て書き、其れを整理しながら書き写すのだから簡単に出来るもので

は無い。


「では、お二人は今でも書き続けておられるのですか。」


「うん、多分まだ続いて要ると思うよ。」


 二人は十数日掛けてもまだ続きを書いて要る。


 其れは最初から最後まで全て書き物として残す為なので有る。


「技師長、その書き物ですが、完成されているので有れば、私がお借りしたいと思うのですが、宜しいで

しょうか。」


「うん、いいよ、オレも何処まで出来てるのか分からないけど。」


「では帰りにでも寄せて頂きます。」


 其れからも工藤は潜水船の内部を見ていたが、夕刻近くになり。


「なぁ~母ちゃんが晩御飯を作ってるんだ、食べて行けば。」


「はい、ではお言葉に甘えさせて頂きます。」


 工藤達は洞窟を出、げんたの家に入り、隣の部屋に行くと、其処には若い侍が黙々と書き物をして要る。


「吉川さん、石川さん、毎日、ありがとう。」


「えっ、技師長でしたか、全然気が付きませんで申し訳有りません。」


「ごめんな、其れで書き物は出来たの。」


「はい、殆どが出来ましたので、今は綴っており、もう直ぐ終わりです。」


「じゃ~ご飯にしようよ、吉川さん、石川さん、この人達はえ~とそうだ、今は違うけど元官軍の兵隊さ

んなんだ。」


「えっ、官軍のと申されますと。」


 吉川も石川も其れは大変な驚き様で、正か野洲の浜に軍艦がやって来たのではないかと勘違いするのも

当然で有る。


「吉川さん、違うんだよ、この人達はねぇ~。」


「技師長、私が説明させて頂きます。

 我々は元官軍兵で官軍を脱走し、危ないところを総司令に助けて頂いたので御座います。」


「そうでしたか、私は正かと一瞬考えましたが、其れが正か脱走されたとは思いもしませんでしたので申

し訳御座いませぬ。」


「吉川さん、その話は何時でも出来ると思うんだ、其れでさっきまで書いて貰ってた思うんだけど潜水船

の書き物なんだけど、この人が他の国でも造れないかって、オレは其れだったら書き物が有るから造って

もいいよって言ったんだ。」


「ですが、総司令の返事が御座いませんが。」


「はい、勿論で御座います。

 其れで私が直接総司令にお話しをさせて頂きまして、許可を得れば、技師長とご一緒に他国に参りまし

て技師長が直接ご説明して頂ければ宜しいかと考えております。」


「吉川さん、石川さん、オレはいいと思うんだ、工藤さんは専門家だからオレも安心して話す事が出来る

と思うんだ。」


 げんたにすれば、今の今まで全てを考え、全てを説明しなければならなかったが、工藤は専門家だと、其れならば専門家からは色々な事も教えて貰えると考えたので有る。


「技師長、私は明日にでも総司令にお話しをさせて頂きますので宜しくお願い致します。」


「うん、分かったよ。」


「ねぇ~げんた、また何処かに行くの。」


「うん、そうなんだ、オレが野洲の洞窟で造った潜水船を他の浜でも造って欲しいと思ってたんだ、だけど今までは誰も潜水船は造れ無いとオレが勝手に思ってたんだ、だけど、母ちゃん、工藤さんって凄いんだぜ、軍艦を造った専門の人なんだから、だからオレは工藤さんと一緒に他の国でも潜水船を造って欲しいと頼みに行こうと思うんだ、だって親方や銀次さん達には少しでも楽になって欲しいと思ってるんだ。」


「じゃ~当分の間は帰って来れないのか。」


「母ちゃん、そんな事行ってからの話しなんだぜ、だって潜水船の造り方を全部覚えて貰うんだぜ、だか

ら母ちゃんは何も心配するなよ、オレだってもう子供じゃないんだからなぁ~。」


「うん、分かったよ、ねぇ~工藤さん、げんたの事を宜しく頼みますよ、この子は口は悪いですが、源三

郎様の為になるんだったらって何時も言ってますのでね。」


「お母さん、技師長の事は私が責任を持ちますので、どうか安心して下さい。」


 工藤もだが、中隊隊長と小隊長達も母親に頭を下げたので有る。


「まぁ~仕方が無いと諦めるけど、げんた、身体だけには気を付けてよ。」


「なぁ~母ちゃん、オレは大丈夫だから、オレは其れよりも母ちゃんの事が心配なんだ、オレはなぁ~、

母ちゃんはオレが居ないと淋しいと思ってるんだ。」


「げんた、何を今頃言ってるのよ、母ちゃんはねぇ~本当に大丈夫なんだからね、心配は要らないよ。」


 話しをしながらの食事も終わり。


「技師長、お母さん、有難う御座いました。

 私達は一度お城に戻りますのが、お母さんに作って頂きました晩御飯、私は母を思い出し嬉しくて涙が

出ました、また寄せて頂いても宜しいでしょうか。」


 中隊隊長と小隊長も頷いて要る。


「いいですよ、何時でも来て下さいね、待ってますから。」


 工藤達は野洲のお城へと戻って行き、吉川と石川は部屋に戻り片付けを始めた。


 そして、明くる日の朝、工藤は源三郎の執務室に入り。


「総司令、今宜しいでしょうか。」


「はい、勿論ですよ、何か有りましたのでしょうか。」


「はい、実は総司令にご相談が有りまして寄せて頂いたので御座います。」


「私にですか、其れはどの様な事でしょうか、お伺い致します。」


「はい、実は昨日技師長と洞窟に参りまして、其処で私は初めて潜水船を拝見させて頂いたのですが余り

にもの衝撃に言葉が出ませんでした。」


 やはり工藤も潜水船を初めて見て驚いてのだと、それ程までにもげんたの考案した潜水船は誰もが驚き

の様子で有る。


 工藤は分厚い書き物を持って来たが、源三郎は他の事を考えており、其れと言うのも工藤は官軍の中で

も司令部と言う最も中枢部に居り、兵力もだが其れよりも軍艦の建造に携わっていた元少佐で、その様な

人物が部下の説得を受け、五百人もの兵士達と本気で脱走するだろうか、若しも、源三郎がその様な立場

の人間ならば幕府軍は勿論の事、幕府以外に別の勢力が存在しないのか、存在するとなれば調査、いや偵

察に向かうのが普通では無いだろうか、更に野洲に来てまだ数日だと言うのに早くも動き出しており、果

たして工藤は本当に官軍と言う巨大な組織を脱走し連合国の一員として活動を行うのか、その真意を探ら

なければならないので有る。


 工藤は源三郎に対し、他の三カ国でも潜水船の建造を行なえば、野洲の負担が少なくなると説明した。


「よ~く、分かりました、其れでその書き物を持って行き、技師長が説明するのですか。」


「はい、その通りで御座いまして、実を申しますと、私は長崎と言う所の造船所で軍艦の建造に関する仕

事をしておりまして、私が得ました技術を潜水船にも応用が出来ないかと考えていたのです。」


「工藤さん、軍艦の建造は大変なのでしょうか。」


「はい、ですが軍艦の建造と申しましても、木造船に大砲を備え、乗組員の全てが兵士ですが、彼らの全

員が農民や漁民だけでは御座いません。」


「其れでは全員が正規の軍隊で訓練も十分に行われて要ると申されるのですか。」


「はい、その通りで御座います。

 司令部の考え方は陸軍の歩兵部隊は農民と漁民と言う領民達が中心ですが、軍艦ともなれば大砲の扱い

方から操船方法も全てが読み書きが出来る者でなければならないと考えております。」


「工藤さん、官軍の軍艦と言うのは我々が知って要る様な大型の船では無いのですか。」


「総司令、軍艦と申しますのは大きさもですが、何よりも頑丈に造られております。」


「頑丈に造られて要ると申されますと、鉄の板で造られて要るのでしょうか。」


「いいえ、基本は木造船ですが、船体部分は二重の厚い板で補強されており幕府軍の大砲弾が、其れも至

近距離から直撃しなければ外側の板が破損する程度で船内は大丈夫だと言う造りになっております。」


 工藤は官軍の軍艦は頑丈に造られており、幕府軍の軍艦から発射された大砲の砲弾が至近距離から直撃

しても軍艦は簡単に沈没はしないと言う、工藤が密偵として野洲を操りに来たので有ればこれ程まで詳し

く官軍の軍艦の秘密を話すだろうか、だが反対に考えれば幕府軍の大砲は旧式でその様な旧式の大砲なら

ば遠くまでは飛ばないと言う事まで知って要る。


 潜水船に大砲を設置する事は、幾らげんたが天才でも不可能で有ると工藤は考えて要るだろう、だが源

三郎は最初から大砲などを装備する事は考えていない。


「総司令、官軍の軍艦に装備される大砲は異国の物で破壊力は幕府軍の大砲の倍は御座います。」


「工藤さん、ですが今の潜水船では大砲を装備する事は出来ませんよ、其れに仮に装備しても海の中から

撃つ事は不可能ですからねぇ~。」


「はい、其れは私も十分に承知致しておりますので。」


「工藤さんは軍艦の建造を指揮されておられたのでしょうか。」


「はい、私は、子供の頃より異国の書物を見ておりまして、その中には軍艦の絵も描かれておりましたの

で大変興味を持っておりまして、其れを思い出しながら軍艦の図面を書きましたところ、上層部から命令を受けたので御座います。」


「官軍は何故それ程にも強力な軍艦が必要になったのでしょうか。」


 さぁ~源三郎は工藤から何を聞き出そうとしているのか、更に工藤は何を話すのだろうか。


「私が司令部におりました頃ですが、異国では鉄の板で出来た軍艦が建造されて要ると、ですがその軍艦

を購入したいと思っても余りの高額の為に今の官軍では資金が不足して要るので御座います。」


「工藤さん、異国の軍艦は鉄の板で造られて要ると申されましたが、その様な軍艦を官軍が持つと言う事

は幕府軍もですが、我々連合国にも大変な脅威になる事は間違いは有りませんねぇ~。」


「其れは間違いは無いと思いますが、見方を変えれば今の幕府以上に強力な組織が出来れば反抗する事も

不可能に近いのです。」


「工藤さん、ですがねぇ~、資金が無いので有れば購入は出来ないのでは有りませぬか。」


「総司令、其れが普通の考え方ですが官軍は今建造中の軍艦で佐渡の島を襲い、金塊を奪う計画が有るの

です。」


 やはり、井坂の話は本当だった、佐渡に行くとすれば連合国の沖を通過すると考えられので有る。


「其れならば軍艦には大勢の兵士が乗り込むのでは有りませんか。」


「はい、其れは勿論です。

 其れにもまして、軍艦は一隻では無く五隻を建造し、その五隻を持って佐渡の島を攻撃すると聞いてお

ります。」


「ですがねぇ~、今から五隻の軍艦を建造されて行くので有れば、う~ん、其れにしても何か有りそうで

すねぇ~。」


「総司令、長崎の造船所では一度に二隻の軍艦の建造が可能なので御座います。」


 その様な事にでもなれば大変な事に成る。


 二隻が同時に建造出来ると言う事は建造能力が優れていると言う事になるので有る。


「其れでは二隻が同時に完成する事になると思いますが、では軍艦の建造は何日くらいで完成するので

しょうか。」


「はい、一応、百五十日も有れば完成しますが、その後も色々な物を取り付けて行きますが、特に大砲は十門揃えると分かっておりまして、全てが完成し兵士の訓練も合わせれば、う~ん、そうですねぇ~百八

十日から二百日が一応の目標をなっておりますが、果たして現実的に考えますと出来るのかは分からなの

で御座います。」


「えっ、百八十日で五隻完成するのですか。」


「いいえ、五隻が完成するのは来年の今頃の予定で御座いますので。」


 何と全五隻の軍艦が完成するまで後一年だと工藤は言った。


 だが今の連合国には弐号船が有るだけで、次の参号船は造りが変わり、果たして官軍の軍艦が連合国の

沖を通過するまでに間に合うのだろうかと源三郎は考えるので有る。


「総司令、私は戦争を好んで要るのでは御座いませぬ。

 最初の頃は確かに今の幕府を倒し、新しい政府によって民衆の為に政治を行うと言う理想を掲げておりましたので、私も微力では御座いますが新しい国作りの為に参加致しました。」


 工藤も藩の中でも一番の下級武士で、其れは大昔の頃、足軽として活躍し、何れの時が来れば上級に上

がらせると言う口約束を信じ、戦国時代を戦い抜けたので有る。


 だが先祖は余りにも武勲を上げ過ぎた為上役から睨まれ、同僚からは良くも思われず、其れは数代前の

上司も知っており、先代に至るまで下級武士のままに据え置かれたので有る。


 他の同僚は出世し、その中の一人が前の隊長だと、工藤は涙を堪えて話したので有る。


「そうでしたか、では工藤さんは大変なご苦労をされたのですねぇ~。」


「総司令、私は苦労とは思っておりません。

 其れと言うのは、私の父はこれから先の世の中は剣術よりも学問が大切だと申し、私は長崎に参りまし

て異国の学問を学びました。」


 源三郎も初めて聞く話で、連合国とは言わば閉鎖された国家で高い山が有る為に向こう側の出来事も殆

ど入らない状態で、まして異国の事などは全く知る事も無く、聴くのも初めてで、以前、井坂が少しだけ

話をしてくれた程度で有る。


「では工藤さんは長崎で異国の事を多く学ばれたのですか。」


「勿論だと申し上げたので御座いますが、私は長崎に数年間も居たでしょうか、総司令、世界は大きく、我々が住む日の本と言う国は世界では東の端に有り、直ぐ東側は大海で、更にその向こう側にはまだ見ぬ

大陸が有ると言われておりますが、日の本からは今だ誰も行った事が無いと聞いております。」


「えっ、何と申されました、では、我々は東の果てに住んで要ると申されるのですか。」


「はい、その通りでして、其れも我々の住む日の本は島国でして、総司令、連合国の浜の向こう側にも大

陸が有るので御座います。」


 何と言う話だ、源三郎は余りにも衝撃的な話で頭の中が混乱して要る。


「工藤さん、では我々の連合国と言うのは、島国の一部だと申されるのですか。」


「はい、その通りで御座います。


 ですがその島国ではこの数百年間と言うもの鎖国が続き、其れが原因で異国の発展した技術が全くと

言っても良い程に入って来なかったと言う事も事実なので御座います。」


 工藤は長崎と言う地で数年間もの間異国の事を学んだと、だが何故その様に優秀な人物を幕府軍との戦

で最前戦へと向かわせたのだろうか、其れが源三郎には全く理解出来無かったので有る。


「工藤さんが異国で学ばれたと言うのを、当時の藩主はご存知無かったのでしょうか。」


「総司令、其れよりも、私が故郷に戻って来ますと、世の中では倒幕の機運が高まっており、我が藩も積

極的に参加したので御座います。」


 工藤は長崎では全く知らされて無かったのか、其れとも、その様な情報が入って来なかったのか、其れ

は今となっては分からない。


「では、工藤さんが必死で学ばれた事は無用となったのでしょうか。」


「総司令、其れが運命のいたずらとでも申しましょうか、同じ長崎で学んでおりました先輩が司令部にお

られたのですが、私は何も知らずに入隊したところ、その先輩は私が長崎で異国の戦術と軍艦の建造方法

を学んでいたと覚えておられまして、私は何故か直ぐに司令部に配属されたので御座います。」


 工藤と言う人物が異国の事を学んだ、其れは官軍にとっても一番重要な事では無かったのか。


「私は司令部より新型の軍艦を考える様にと命を受け、数年掛かりで図面を作り上げ、そのお陰とでも申

しましょうか、司令部で昇格したのですが、総司令、良い事は続かないものでその先輩の部下五十名が軍

を脱走したので御座います。」


「えっ、其れは誠なのですか。」


 やはり井坂の話は本当でその中の一人が井坂なのか。


「其れが原因で先輩は責任を取らされたのです。」


 何と言う話だ、田中が九州で会ったと言う人物なのかも知れないので有る。


「其れで、その先輩と言われるお方ですが。」


「はい、一応名目上は参謀と言われておりますが、私には其れ以上先輩の情報が入って来ませんでしたが、其れ以上に困った事が有りまして。」


 工藤の顔にはその先輩の事が心配だと言うのがありありと浮かんでいる。


 だが一体何が困ると言うのだろうか、若しかしてあの隊長と言われる人物の事なのだろうか。


「工藤さん、今困った事が有ると申されましたが、其れと今回五百名の兵士と任務に就かれた事と何か関

係でも有るのでしょうか。」


 源三郎はいよいよ核心に入って行く。


「その通りでして、私はその方が軍艦の艦長として乗られ、私もご一緒する事に成っておりましたが、あ

の隊長と言うのが藩の重役の子息で、私が携わり全面的に採用された話を何処で聞いたのか知らないので

すが、その先輩が左遷されたと知り、私を呼んだのです。」


「ですが、司令部の命令には拒否する事は出来ないのでしょうか。」


「普通の兵士もですが、軍隊では拒否する事は出来ないのです。

 特に私の場合は戦術も学んだと言う理由を付け、其れよりも私を利用したかったのだと思います。

 隊長として任務に就く様にとの話が有り、私も上層部からの命令に背く訳にも行かず赴任したの

ですが、一ヶ月も経たないうちに彼が隊長として赴任し、私を降格し偵察隊の小隊長となったので御座い

ます。」


 やはりだった、あの隊長と言うのは最初から工藤を利用すると同時に一刻も早く目の前から姿を消す方

法を考え、其れが一番危険な偵察任務の任務に就かせたので有る。


「其れでは、あの時も隊長の命令で任務に就かれていたのですか。」


「はい、正しくその通りでして、軍隊と言うのは階級が全てでして、上官の命令は絶対的で拒否が

出来ないので御座います。

 あの五百名の内、中隊隊長と小隊長は私が元少佐だと知っており、私が隊長として赴任すると知り殆ど

が志願して来たのです。」


「そうでしたか、では今の中隊隊長や小隊長の部下と言うのは。」


「彼が独自に集めた人達で全員が農村の出身なのですが、あの隊長に騙されたと全員が思っております。」


「其れで全てが分かりました。

 其れで先程の話しに戻りますが、げんた技師長と二人だけでは何かと不便だと思いますので吉川さんと

石川さんを同行させましょう、あの二人ならば書いた内容も知っておりお役に立つと思うのですが、如何

でしょうか。」


「総司令、有難う御座います。

 私も吉川さんと石川さんが技師長が申されておられました話を書き物にされておられ、あの方が同行し

て頂ければ鬼に金棒で御座いまして、私よりも技師長が一番助かるのでは無いかと思うのです。」


 源三郎は官軍の中でも指折りの人材を確保したので有る。


 工藤ならば官軍の新型の軍艦の長所も短所も知っており、今後、潜水船を建造するにおいて重要な人物

で有る事は間違いは無いと確信したので有る。


「では後の事は工藤さんにお任せしますので、何卒宜しくお願い致します。」


 源三郎は工藤に頭を下げた。


「総司令、これから私は知る限りを潜水船建造に参考にさせて頂きたいと考えております。」


「はい、よ~く分かりました、ではお願いしますね。」


「では、総司令、失礼させて頂きます。」


 工藤は重要な人物に間違いは無い、之からは、げんたの頭脳と生かせるだろうと思ったので有る。


 そして、明くる日の朝、工藤は吉川と石川を伴い、浜へと向かったので有る。


 源三郎は菊池の高野、上田の阿波野、松川の斉藤に対し、げんたと工藤が潜水船の全て教えるので潜水

船の建造する様にとの願いと、今後は全ての情報を五か国で共有する様にと書き記し山賀の吉永にも同様の書面を送ったので有る。









  

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