第 7 話 始まった農場造り。
ウエス隊長と5千人の兵士が出発して数日後である。
司令官と5人の隊長がロシュエの宿舎を訪れた。
「閣下。」
「お~、司令官か、おや、なんだよ、隊長達も一緒なのか。」
「はい、お忙しいところ。」
「いや、オレは、暇なんだよ、其れで、5人の隊長も一緒だと言う事は
だ、余程、大事な話なんだな。」
「はい、そのとおりで御座います。」
「よし、判ったよ、まぁ~から座って話を聞こうじゃ無いか。」
司令官と5人の隊長は座り、話を始めたとき、イレノアが飲み物を持って
きた。
司令官達は立ったのだが。
「司令官も隊長達も、此処じゃ~、そんな堅苦しい事はなしにしょうぜ、
さぁ~、座った、座った。」
イレノアは何時もの様に微笑ながら、テーブルに飲み物を置くと、会釈
し、部屋を出て行った。
「さぁ~、司令官、聞こうじゃ無いか。」
「はい、閣下、実は、隊長達と相談したんですが。」
「うん、うん、其れで。」
「はい、ウエス隊長と5千人の兵士、それと、ウエス隊長が連れて着まし
た農民達なんですが。」
「司令官、ウエスと5千人の兵士は新しい農場に必要な水を確保する為
に、5日も前に此処を出発したじゃないか。」
「はい、其れは、勿論承知いたしております、農民達も、後数日で出発す
ると聞いております。」
「それじゃ~、何も問題は無いじゃ無いか。」
「はい、私も、その様に思っておりましたが、隊長達は別の考えが有ると
言うんです。」
「ほ~、じゃ~何か、あの兵士達に何か問題でも有るのか。」
その時、一番隊のロレンツ隊長が。
「将軍、私達は、あのウエスと言う人物と5千人の兵士達をまだ信用して
おりません。」
「ほ~、まだ、信用できないってか。」
隊長達が何故信用できないんだろうかと、ロシュエは思った。
「はい、そのとおりです。
将軍は、正か、あの戦をお忘れじゃ無いと思いますが、あの城の城主を含
め、多くの家臣達は近隣の領民を長い間苦しめてきました、確かに、イレノ
アさん達を見逃した話は事実です。
でも、私達は、ウエスと言う人物は、この農場を攻撃したと言う事実が問
題なんです。」
「うん、其れは、判っているが、其れで、如何したいんだ。」
「はい、数日後には、ウエスが連れて着た農民達も新しい農場造りにここ
を出発しますが、其れで、私達、5人が相談したんです。」
「じゃ~、何か、農民達の護衛に就きたいというんだな。」
やはり、ウエス達の問題が出てきたのかと思った。
「閣下、そのとおりで、御座います。」
だが、ロシュエも判っていた。
「いや、司令官、本当は違うんだろうよ。」
司令官も隊長達の考えは、農民達を守ると言う口実だと考えた。
「将軍の思われるとおりです。」
ロシュエは腕組みをして。
「やはりなぁ~、其れで、如何する積もりなんだ。」
二番隊のオーレン隊長は、ロシュエと考えが同じだと知り。
「将軍、自分達はウエス達や、後日、出発する農民達の事よりも、今、森
で切り出し作業を行なって要る仲間達が大切なんです。
自分達が材木運びの護衛というのであれば、誰からも非難を受ける心配は
無いと考えました。」
「隊長さん達も上手い口実を考えたなぁ~、じゃ~よ、先にオレ達の仲間
を護衛するという口実でだよ、ウエス達を監視すると言う話なんだろう
よ。」
「えっ、何故ですか、私達は、まだ、何も。」
と、三番隊のフランド隊長も司令官も驚いたのだ。
「閣下、申し訳御座いません。
隊長達の言い分もわかって頂きたいのです。」
と、司令官は頭を下げた。
「よし、判ったよ、司令官、詳しく聞こうじゃ~無いか。」
「はい、閣下、有難う御座います。」
と、司令官と5人の隊長達は、ロシュエに詳しく説明を始めた。
説明は数時間続き。
「よし、判ったよ、じゃ~、司令官、今の話は口外しないと言う事で、早
速、準備に入ってくれと言いたいが、司令官よ~、既に、準備は終わってる
んだろうよ、まぁ~、オレには、事後報告と言う事になっ。」
「はい、閣下、申し訳、御座いません。
何時ながらの事で。」
「いや、司令官、いいんだよ、隊長達もよ、何も、気にする事は無いぜ、
じゃ~、隊長さん達よ、後は、任せたから、隊長さん達の作戦通りに進めて
くれよ。」
「将軍、有難う御座います。」
と、隊長達は、ロシュエに敬礼し、部屋を出た。
司令官は残り。
「司令官、隊長達に花を持たせたなぁ~。」
「閣下、決してその様な事はございません。」
「なぁ~に、いいんだよ、司令官もその方がいいだろうからよ~。」
「閣下は、全てお見通しだったんですか。」
やはり、ロシュエには適わないと思う司令官だ。
「いや、実は、オレも、少しだがよ、気になっていたんだ。」
司令官の思ったとおりだった。
ウエスと5千人の兵士はわかる、だが、農民達が問題だった。
「閣下、私も、考えておりました。」
「やはりな、司令官もオレも隊長達も同じ考えだって言う事だね。」
「はい、その通りでございます。
私は、兵士5千人は別として、農夫達ですね、農夫の人数に対して、女性
や子供達の人数が余りにも少ないと思ったんです。」
司令官も気がついていた。
「やはりなぁ~、オレも同感だよ、オレはね、本物の農夫は数百人だと思っ
てるんだ。」
「閣下、私も同じですね、ウエスは、兵士に農民の姿をさせていると思っ
たんですが。」
「司令官よ、司令官だったら、同じ事をすると。」
「はい、私も立場が変われば、同じ方法を取ります。
それと、問題は武器ですね、余りにも武器が少ないので。」
「いや、オレも、ウエス達はどこかに隠していると思ってるんだよ。」
「そのとおりだと思います。
一応、5千人の兵士達の武器は、此処に全て有りますが、農夫の姿になっ
ている兵士の数だけ武器は有ると思うんです。」
「そうだなぁ~、司令官、ウエス達が来た方角はわかっているなぁ~。」
「はい、勿論です、私は、此処に来た時よりも、あの戦でウエス達は一度
引き返したと思っておりますので、私は、此処に来る途中で何処かに隠して
有ると思っています。」
「うん、司令官の言う問題とは、農夫に身を隠した兵士達と、何処に隠し
たかわからない武器だなぁ~。」
「はい、私は、あのウエスと言う人物は相当、頭の切れる人物だと思って
います。」
「うん、オレも、そう思うんだ。」
「其れに、女性達もです、あの女性達も全員が農民だと言う証拠は有りま
せん。
だと、言って、全員が農民だと言う事も有りますので、農民達にも下手に
聞く事も出来ないんです。」
「そうだな、司令官だったら、どの付近に隠すんだ。」
「はい、私も立場を変えて考えたんですが、まず、あの戦で大敗しまし
た。
之は事実です、其れで、私は部下を引き連れて、一度、城に戻る事を考え
ます。
之は、体制を立て直すと言う意味です。」
ロシュエは、頷き。
「うん、そうか、其れで。」
「はい、でも、直線的に城に戻る事は、大変危険だと考え、一度、大きな
川の方向に向かいます。」
「その川の近くにも森は有るのか。」
「はい、御座います。
その付近が、丁度、中間に成りますので、その森に武器を隠す事もできま
すし、私ならば、其処に隠しますが。」
「でもよ、ウエス達はどんな方法で、その武器を持ち出すんだ。」
「はい、私も、其処まではわかりませんが、ウエスも、賭けに出たと思い
ます。」
「えっ、賭けに出るってよ~、どんな賭けに出るんだ。」
「閣下、私は、ウエス達の差し出した武器を見たんですが、弓が数百、矢
が数千です。
5千人の兵士が殆ど、剣とヤリだけとはねぇ~、それに、剣やヤリが殆ど
なんです、之は、誰が考えても可笑しいです。」
「うん、確かに、そうだなぁ~、幾らなんでも弓の数が少なすぎるなぁ
~。」
「閣下、私も、ウエスを信じたいです、之は、本当の気持ちなんです。
でも、明らかに、可笑しいです。
私の推測ですので、何も確信は有りませんが。」
司令官は、推測だと言うのだが、ロシュエも、同じ推測をしていた。
「司令官、オレもなっ、同じ様な推測をしていたんだ、あのウエス達は城
で栄耀栄華の生活を味わっていたと思うんだよ、仮にだ、オレが、そんなと
ころに居てだ、突然今日から農場で仕事をやれって言われても、出来ると思
うかよ~。」
「閣下、私も突然には出来ませんし、やりたくは無いですねぇ~、むし
ろ、一刻も、早く、昔の華やかな生活に戻りたいです。」
「うん、だとするとだ、あのウエスって野郎を監視する必要があるなぁ
~。」
「はい、私もその様に思っております。
では、どの様な方法を使うかですねぇ~、閣下、私が、考えた方法なんで
すが。」
「お~、聞こうじゃ無いか、多分だよ、オレが考えた方法と一緒と思うん
だがよ~。」
「はい、多分同じだと思いますが、ウエス達を二度と、この農場に戻れな
いように。」
ロシュエも同じだった。
ウエスには次の仕事も有ると言っている。
「司令官、オレは、あの時、確か言ったように思うんだが、今回、大きな
池を造り終わったら、次のところにもと。」
「はい、私も、聞いております。
私も、技師長の図面を拝見しましたが、ここから、城まで、10箇所の農
場を造る様になっております。
ウエス達は、その全てに池を造る様に命じていただければ幸いかと。」
「うん、判ったよ、だけど、技師長はだよ、池を造るのに何年掛かると考
えて要るんだろうか。」
「閣下、私も、其処まではわかりませんが。」
「そりゃ~、そうだなぁ~。」
と、二人は笑い。
「閣下、最後の池が完成すれば、後はどの様に。」
「うん、其れだなぁ~、問題は。」
ロシュエは、今回の問題は司令官の考えを採用する事に決めた。
「司令官の考えは。」
「はい、私は、ウエス隊を解散させるのでは無く、全ての池の管理をさせ
ては如何かと思っております。」
「池の管理だって、だがよ~、一体、何をさせるんだ。」
ロシュエは、司令官が別の方法を考えて要るとは思わなかったのだ、ロシ
ュエの考えでは、一度、ウエス隊を農場の戻し、農場から城までの防備に就
かせる積もりだった。
「はい、今、ウエス隊は5千人ですが、その5千人を10箇所、全ての池
の管理を行なわせるんです。
10箇所の管理をすると言う事になれば、10の班に分かれると言う事に
成ります。
そうなれば、幾ら、5千人の兵隊でも戦闘能力は落ちると言うよりも、全
く無く成りますので。」
「それじゃ~、司令官は武器を持たせない方法でウエス達に仕事を与える
んだ。」
「はい、そのとおりで御座います。
ウエスには、隊長だからと言って、中間地点で指示を出せとか、何とでも
話は出来ると思っておりますが。」
「いや~、司令官、さすがだ、オレなんか、何も考えて無かったからよ
~。」
「いいえ、その様な事はございません。
閣下は、全てを見られておりますので、私の考えた事などは早くから、お
考えだと思っております。」
と、司令官はニヤリとするのだ。
「司令官、じゃ~よ、さっき言った、武器なんだが、早く探す積もりなの
か。」
「いいえ、私は、別に急ぐ必要は無いと思っております。
ウエス達も、直ぐには行なわないと思いますよ、最初の池から、数日も歩
き武器を取り出し、反攻を企てるようなバカな真似は、私でも、閣下でもし
ないですから。」
確かに、司令官の言う通りである。
5千人の兵士全員が武器を取りに行く事は出来ないのだ、其れに、この草
原や森には、数百頭はいるだろう、狼の大群が待ち構えている。
その様なところに、数十人、いや、数百人の兵士が命懸けで武器を取りに
行く様な馬鹿はしないだろうと。
「オレ達は、この草原で、狼の恐ろしさを知って要るし、ウエス達も当然
知っているだろうからなぁ~、じゃ~、司令官は、ウエス隊を残し、池の管
理をさせるんだな。」
「はい、名目上は、ウエス隊に池の管理を任せるんですが、実は、その方
法ならば、ウエス隊の解体になると思っております。」
「よし、判ったよ、其れが目的なんだ。」
「はい、それとは別に。」
「えっ、まだ有るのかよ~。」
「はい、之は、隊長達にも話はしておりませんが、数日後、農夫達もここ
を出ますが、農場近くから開墾作業に入ります。
其れで、先程、隊長達が申しましたように、名目上ですね、彼らにも護衛
が必要だと思いますが。」
「確かに、そうだよなぁ~、ウエス隊に護衛がついて、農民には付かない
と言うのは誰が考えても不自然だ、其れに、農民達に不安を抱かせる事にな
るからなぁ~。」
「はい、其れで、私は野盗隊を護衛と言う名目で監視にと思ったんです
が。」
「そうか、一応は農民の姿だから護衛が必要だと言うのか。」
「はい、そのとおりで御座います。」
「司令官の事だから話は付いているんだろうよ。」
「はい、全く、そのとおりで、私の独断ですが、申し訳御座いません。」
「いや、いいんだよ、司令官の事だから、オレには話を通して有るからと
か、何とか言って、野盗隊に言ったんだろうからなぁ~。」
「申し訳御座いません。
野盗隊も、閣下のご命令で有れば、何の疑いも致しませんので、お許し
を。」
「いいって事よ、立場が変われば、オレだって同じ事をするんだからよ
~、で、野盗隊も判ってんだろうなぁ~。」
司令官は頭を二コリとして下げるのだ。
「はい、彼らも十分理解しておりますので。」
「よし、判ったよ、司令官に任せるよ、其れで、話は変わるが、あのウエ
ス、今頃は成功したと思って要るんだろうなぁ~。」
「はい、私もその様に思いますね、将軍も司令官も騙すのは簡単だと思っ
て要る事でしょうから、でも、正か、軍隊が護衛と言う名目上の監視とは、
ウエスも想像しないと思うんです。」
「オレだって、護衛だと信じるよ、だって、そうだろう、あの中には、技
師長と、此方からも兵士が行ってるんだから、だけど、実際、あの人数の兵
士じゃ~、狼の大群に襲われたら防ぎ様が無いんだからなぁ~。」
「はい、確かに、あの人数では、ウエス隊からも多数の犠牲者を出すと思
いますね。」
「まぁ~、オレとしてはだ、ウエス隊から数日遅れで、軍隊が駆けつけれ
ばだよ、ウエスには悪いが。」
ロシュエはニンマリとするのだ。
「閣下、若しかして、其れは。」
「うん、オレはなぁ~、悪い事を考えてるんだよ。」
「判りましたよ、彼らは、狼の本当の恐ろしさを知らないとすればです
ね。」
「うん、そうなんだ、此処の狼ってのは、本当に賢いんだ、其れに、オレ
達が一番よく知って要るんだ、武器を持って無いとわかれば大群を引き連れ
て来ると思うんだ、其れで、あの中から、数人か、数十人が犠牲になったと
ころで、オレ達の軍隊が到着するって事になればだ、ウエスだって、これで
助かったと思うだろうから、その後は、護衛と言う名の監視が出来るんだな
ぁ~、之が。」
と、ロシュエはニンマリとするのだ。
「閣下も、お人が悪いですね、私は、何も其処までの考えは。」
と、司令官もニンマリとし。
「何を、言ってんだよ、司令官には負けるよ。」
と、二人は、大笑いするのである。
その頃、農場を出発したウエス達はと言うと。
「司令官、これほど簡単に行くとは思いませんでしたねぇ~。」
「いや~、本当だ、私も、本当は成功するかと聞かれれば自信が無かった
んだ。」
「其れで、司令官、此れからは、どの様になされるんですか。」
やはり、ロシュエと司令官の思ったとおりであった。
技師長と数人の兵士は中ほどの馬車に乗っているために、ウエス達の話の
内容を知る事が出来ないのである。
「それなんだが、今の我々には食料も無ければ、武器も無いんだ、まぁ
~、食料は数日置きに農場から届けられるから心配は無いと思うんだ、私は
ね、しばらく、あの将軍の言ったとおり、池を造る作業を続けようと思って
要るんだ。」
「私も、農場を出た後、どの様な行動をとれば良いのか、色々考えてはい
るのです。
其れに、あの兵士達の武器ですね、私は、あの様な武器は見た事も無いの
です。
我々の軍が放った矢よりも、遥かに遠くまで飛ぶんですよ、其れに、仮
に、数人の兵士を襲って、あの武器を手に入れたとしてもです、我々には馬
も有りませんからね、其れに、多分ですが、一人でも逃す事になれば、我々
は数日以内に全員が殺されますからねぇ~。」
「それでは、司令官の言われる、暫くというのは数ヶ月なんでしょうか、
それとも、数年間とも。」
数人の隊長クラスと思われる兵士は真剣である。
「私も、今は、答えられないんだ、その為と言ってはなんですが、君に頼
みがあるんだ、今は苦しいが、時が来るまで辛抱するようにと、各隊長に伝
えて欲しいんだ。」
「はい、司令官殿。」
同じ頃、ウエス隊に同行している技師長が乗った馬車でも同じ様は会話を
していた。
「ねぇ~、技師長、あのウエスって隊長なんですが、何か隠している様な
気がしてなら無いんですが。」
「やはり、君もそう思いますか、私も同じなんですよ、この話は口外して
は駄目ですからね。」
「はい、勿論ですよ、誰にも言いませんから。」
「あのウエスって隊長ですがね、相当頭の切れる人物ですよ。」
「えっ、其れは、どう言う訳なんですか。」
「君も考えれば判る事ですよ、彼らはね、あの城から我々の農場を手に入
れる為に攻撃をしたんですよ、其れに、ウエスって隊長ですが、あの城では
司令官と呼ばれていたんですよ。」
「へぇ~、そうだったんですか、自分は、じめて聞きました。」
と、兵士は感心するのだ。
「私も、直接見たわけでは無いのですがね、我々の農場近くでの戦いで、
あの城の城主と数え切れない程の兵士が戦死したんですがね数千人くらいの
兵士が逃げたと言う話を聞いていますので。」
「じゃ~、技師長、一体、何人の兵士が逃げたのかわからないんです
か。」
「そうなんですよ、でも、数日前に農場に来た兵士は5千人と聞きましたがね。」
「はい、その兵士が、今、自分達と一緒に川に向かっているんです。」
この兵士は、ウエス達の兵士が5千人だと思って要るのだ。
「でもね、よ~く、考えて下さいよ、同じように着いた農民は、一体、何
人ですか。」
「自分は、何人か知りませんので。」
「そうだと思いましたよ、私の見たところでは数千人は居ると思います。
でも、本当の農民は数百人程度だと、私は思って要るんですよ。」
「えっ。」
「声が高いですよ。」
兵士は頭をピョコンと下げ。
「済みません、技師長、でも、全員が農民の姿でしたが。」
兵士は全員が農民だと思っている。
「そのとおりですよ、ですが、君が農民の服を着ると、どうなります
か。」
「はい、やはり、姿は農民ですね。」
「そうでしょう。」
「でも、技師長、何故わかるんですか、自分には見分けがつかないんです
が。」
ウエスの兵士達は、普通の兵士では見分けがつかないほど巧妙に姿を変え
ている。
だが、一般の兵士を騙せても、ロシュエや司令官を、そして、5人の隊長
を騙す事は出来ないのである。
「それなんですよ、君達を騙すほど巧妙に姿を変えているんですよ。」
「それじゃ~、将軍や司令官も騙されたんですか。」
兵士は落胆した様子で。
「君が心配する事じゃ~有りませんよ、我々の将軍は簡単に騙されません
よ、其れに、司令官もですよ。」
「じゃ~、なんで簡単に農場から出られたんですか。」
「いや~、本当は兵士は一人も入っては居ませんよ。」
「それでも、農場から出たと思って要るんですよ、自分は。」
「うん、其れはね、簡単な話ですよ、仮にですよ、あのままの状態だとし
ますね、食料はどうなりますか、将軍や司令官は武器を持たない兵士を飢え
死にさせるような人じゃ~有りませんよ、だと、言って、あの場で何が出来
るんですか、将軍が以前から考えておられた新しい農場造りですね、それに
はね多勢の人達が必要なんですよ。」
「それじゃ~、丁度、良かったんですね。」
兵士は少し安心した様子で。
「うん、其れは、其れで良かったんですよ、今、此処に居る5千人分の食
料と、数日後に出発する農民数千人分の食料ですね、其れを考えると良かっ
たと思いますよ。」
「でも、技師長、我々だって食べ物はいるんですよ。」
「其れは判っていますよ、新しい農場で作物が収穫出来るまではね、農場
から届けられると思いますからね。」
「じゃ~、自分達は技師長を守るためにですか。」
「いや~、其れはわかりませんがね、今でなくても良いですから、仲間に
伝えて欲しいんですが。」
「えっ、技師長、何か起きるんですか。」
兵士はまだわかって無い。
「私もね、君も言った様に、ウエスって隊長をまだ全面的に信用が出来な
いんですよ。」
「じゃ~、将軍も司令官も信用して無いって話ですか。」
「私は、そう思って要るんですよ、それでね、さっきも言ったと思います
が、信用出来ないって事は、何時、何が起きるかわからないんですよ。」
兵士は真剣な顔付きで聞いている。
「はい、自分に出来る事があれば、何でもします。」
「じゃ~、何か起きた時には、君を含めてですが、誰でもいいですから、
至急、将軍に知らせて欲しいんですよ。」
「でも、技師長は。」
「私の事なら、何も心配要りませんからね、其れよりも、将軍に知らせる
事の方が大切なんですよ。」
「はい、判りました。」
と、兵士は周りを見るのである。
「余り、今から神経質になる事は有りませんよ、私は、多分大丈夫だと思
いますが、一応、念のためですからね、よろしくお願いします。」
と、技師長はニコリとするのだ。
その数日後、農民の中から、男達が場外に出て開墾作業に向かう朝であ
る。
「みんな聞いてくれ、貴方方は此れから、門を出て新しい農場造りに入る
んだがね、みんなも見たと思うが、この付近一帯は狼の大群がいるんだ、
我々も最初の頃なんだが、頻繁に攻撃を受け、多くの仲間を失った。
之は、農場を造ると言う前にだ、狼から身を守る為の城壁造りと言っても
過言じゃ~無いんだ、狼の攻撃を受けないようにするためには、早く城壁を
完成させる必要があるんだよ、この城壁の端が大きな川にまで続くんだ。
みんなも苦しいだろうが、之は、君達の農場になるんだから全員の協力で
完成させてくれよ、それと、君達を狼や猪から守る為に、我々の仲間が護衛
する事になっている。
だから、みんな安心して作業に入ってくれ、道具や牛、馬も農場から提供
するからよ詳しい説明は、オレ達の仲間がするから、みんな、頼んだぜ、そ
れとだ、ホーガン、ホーガンは居るのか。」
と、大声で野盗隊のホーガンを呼んだ。
「将軍、此処に居ります。」
と、ホーガンは手を振った。
「ホーガン、みんなの安全を頼むぞ、お前達の責任は思いぞ。」
と、ロシュエはニヤリとし、其れを見たホーガンは。
「将軍様、後はオレ達にお任せ下さいよ、狼や猪なんか、オレ達の敵じゃ
~無いんで。」
と、ホーガンも意味はわかっている。
「じゃ~、頼んだぜ。」
「はい、将軍様。」
と、言ったホーガンは野盗隊の全員に。
「おい、野郎ども、将軍様のご命令だ、どんな事があっても、狼を近づけ
るんじゃ~無いぞ、それと、この場から逃げる奴は、このオレ様が殺してや
るからな覚悟するんだ、其れじゃ~、みんな行くぞ。」
「お~。」
と、野盗隊は大声を出し、城門を出て行くのである。
「オイ、司令官、何だよ、あのホーガン達の嬉しそうな顔、司令官は何を
言ったんだ。」
だが、ロシュエはホーガン達の大芝居だと判っている。
「いいえ、私は、何も申しておりません。
ですが、少し農民達を脅かせて下さいとは言いましたが。」
司令官はニヤリとするのである。
「あの野郎もわかってて楽しんでやがるんだ、それによ、野盗隊の連中も
知って要るんだろう、だから、みんな笑いを堪えてるんだからなぁ~。」
「ですが、閣下、ホーガン達もやりますね、本物の農民達は驚いておりま
す。
其れに、農民の姿をした兵士達は野盗隊の持って要る武器を見て何やら話
をしておりましたからね。」
「うん、オレも見たよ、農民姿になったところで、本物じゃ~無いんだ、
まぁ~直ぐにわかるんだからよ~。」
と、ロシュエはニヤリとしたのだ。
「閣下、何かを考えておられたんですね。」
と、司令官はロシュエの顔を見るのだ。
「いや~、直ぐにわかるよ、まぁ~見てなって。」
と、ロシュエはニヤリとした。
その頃、農場から数十人の代表が来て、なにやら人選を行なって要る。
「閣下、あれは。」
「あ~、あれか、あれは人選ってやつよ。」
「閣下、わかりましたよ。」
と、司令官もニヤリとした。
「なぁ~、司令官、緒戦、兵士は兵士なんだ、服装だけ変えたって駄目な
んだよ、あの兵士達は此れから当分、いや、相当長い間、苦しい作業に入る
事になるんだ。」
「閣下、奴ら相当、馬鹿なって事ですかね。」
と、司令官は人事のような顔をして要る。
「オイ、オイ、司令官もだぞ。」
「はい、私は、大馬鹿なやつですねぇ~。」
と、二人は大笑いするのである。
人選は早く終わり、農場の代表に連れられ次々と門の外に出て行く。
ロシュエと司令官は城壁の上に上がり見物するのである。
城門の上では数人の兵士が人数を数えている、其れは、本者と偽者を数え
ている。
「閣下、最後に出て行くのが本物ですね、彼らには何を。」
「あ~、オレはね、農場の代表に言ったんだ、本者の農民には無理はさせ
るなって、すると、代表達は、わかりましたと。」
「それでは、本者には。」
「オレも、其処までは言ってないが、代表達の事だ心配はして無いんだ
よ。」
と、ロシュエの行動は早いと、司令官は思うのである。
場外では、代表達が色々と説明している。
それから、間も無く、作業が開始された、本者の農民は小石を拾い、城壁
予定の所まで運び、偽者は大きな岩を運ぶのだが、やはり、此処で経験がも
のを言った。
代表達は本者に何を言ったのかわからないが、本者は開墾の方法を知って
要る。
だが、偽者は全くの経験が無いのだ、本物は少しでも大きな岩だと偽者を
呼び、その度に偽者は走って来る。
代表達は本者には優しく、偽者には罵声を浴びせている。
城門の上では、何を言っているのかわからないのだが、側には、野盗隊が
彼らを守るためにに立っている。
野盗隊は聞えているのだろうが、顔を見せないが肩が揺れている、其れ
は、笑っている様に見えるのである。
本者は普段どおりの作業を行なって要るように見えるが、偽者は大変で、
大きな岩が次々と掘り出され、その度に呼ばれるのである。
「閣下、あの状態を見ていると、本者は相当な恨みを持って要るように見
えますが。」
「うん、オレも、そう見たよ、だって、仕方無いだろうよ、今まで、
散々、本者を苦しめたんだから、此れから長い間は、本者に苦しめられる
ぞ。」
と、ロシュエは、何か喜んでいる様な顔付きである。
「ですが、余り苦しめると、本当に死ぬかも知れませんよ。」
「いいんだよ、其れが、奴らの運命だって話なんだから、でも、何人かは
死ぬなぁ~、ありゃ~。」
司令官もわかってはいるが、今の状態では仕方が無いのだと思うのだ。
あの城の兵士達のために、領民が何人犠牲になったのか、其れはわからな
いのだが残った本物の農民は、今までの悔しさを一気にぶつけている。
偽者は、この地に着けば食べ物はある、そして、時期を見て反撃する積も
りなのだろう、だが、現実は違った。
何時まで続くのか判らない城壁造り、果たして何人の、いや、何人かは辛
抱できず逃げ出すかも知れない、だが、逃げ場は無い。
農場を一歩出れば、其処は狼の大群がいるのだ、本物は気持ち良く農作業
に、偽者には厳しい城壁造りに、その時、農場から昼食の合図で有る。
代表の合図で数百人が食事に入るのだが、最初は本物に行く様に指示を出
したので、残る、偽者達はと言うと、全員がその場に倒れる様に座った。
本物達は悠然とした様子で場内に戻って行く、だが、偽者達は、何も考え
る事などできないほどに疲れきった様子で、まだ、一日目の半分も作業を行
なっていないと言うのにである。
ロシュエと司令官は下に降り、代表達を呼んだ。
「オイ、オイ、余り、最初から酷使するなよ、で、一体、なんて言った
んだよ。」
「将軍、私達は簡単に言っただけですよ、貴方方は、本物の農民だから小
石を集めて下さい。
そして、持てないと思う様な岩石は手を上げて下さい、と、それだけです
が。」
「ふ~ん、なるほど、其れで、本物はわざと大きな岩石を探しているんだ
なぁ~。」
「う~ん、其れは、判りませんが。」
と、言って、代表はニヤリとする。
「だがよ、偽者達は相当参っているぞ。」
「ですが、それも仕方有りませんよ。」
「一つ、お聞きしたいのですが、代表の皆さんが人選されておりました。
でも、実に簡単に決められておられましたが、何か基準でも有るのですか
ね。」
司令官は簡単に人選が終わったのが不思議だったのである。
「司令官、ちょっと失礼します。」
と、言って、代表が司令官の手を取り見たのである。
「司令官、私達、農民の手と司令官の手を見ていただければ直ぐにわかり
ますよ。」
と、数人の代表達も手を出したのである。
「失礼だと思いますが、司令官の手は美しいです。」
「えっ。」
と、司令官は思わず声を上げた。
「でも、私達の手は一日中、クワやスキで畑を耕しておりますので、手の
ヒラがざらざらとしています。
其れに、草抜きなど行いますので、手のヒラは傷だらけなんです。」
司令官は、代表達の手を見ただけだったが。
「失礼しました、私の勉強不足でした。」
「いいえ、司令官が悪いんじゃ~無いんです。
兵隊さんも、訓練で槍や剣を持たれますが、正か、一日中訓練は出来ない
と思いますよ、でも、私達、農民は夜明けから日暮れまで、一日中働いてお
りますので。」
「代表殿、私の勉強不足で、申し訳有りません。」
と、司令官は頭を下げると。
「司令官、頭を上げて下さい。
私達は、今、何の不満も有りませんので、其れは、私達の仲間全員が言っ
ています。
この農場では、将軍や司令官のお陰で安心して農作業に行けるんだと。」
「其れで、さっきの話だがよ、何か不満でも言って無かったか。」
「将軍、奴ら、不満どころか、口も聞けないほどへばっていますから。」
「オイ、オイ、少しは。」
「いいえ、将軍、私は其れでいいと思っているんです。
奴らは、農民を虐待してきたんですよ、あれくらいは、まだ、序の口だと
思います。」
「閣下、まだ、お昼ですよ、此れからの方が時間が長いんです。
一体、どんな事になるんですかねぇ~。」
と、司令官も言ったのだが、まだ、農場の開墾が始まったばかりなので。
「将軍、私は、彼に対して何の恨みも有りませんが、あの数百人の農民は
違います。
少しだけ話を聞いたんですが、あの城の兵隊達は、人間を殺す事をなんと
も思って無かったと言うんです。
その為と言ってはなんですが、彼らに対する憎しみを抑える事は出来ない
と、私は思うんですよ。」
「うん、そりゃ~、オレだって、気持ちはわかるよ、だからと言って、奴
らを殺しちゃ~、何にもならないんだよ。」
「はい、私も、其れは申しました。
其れで、私は言ったんですよ。」
「一体、何を言ったんだよ。」
「ええ、奴らを生かさず、殺さずってね。」
と、代表はニヤリとした。
「お~、そうか、生かさず、殺さずって、こりゃ~参ったね、オレは、あんた達を敵に回さないようにするよ、なぁ~、司令官よ。」
「はい、私も、今、その様に思いました。」
「私達が、将軍や司令官をですか、そんな、とんでも有りませんよ、其れ
に、あの人達に言ったんですよ、私達は、将軍や司令官、其れに、此処の兵
隊さんはね、我々、農民の見方だからだってね。」
「オイ、オイ、嬉しい事を言ってくれるじゃ~無いかよ、オレ達は農民の
見方だって、そんな事当たり前なんだからよ~、なぁ~、司令官、オレは
ね、あんた達が苦労して作った作物を頂いているんだよ、だから、反対にオ
レ達は、あんた達に感謝しているんだからよ~。」
と、ロシュエはニコットした。
「あの農民が聞いたんですよ、将軍様わって。」
「ですから、私は、全員の前で、大きな人物が大きな声で話された、あの
人物が将軍なんだって言ったら、彼らは驚いていましたよ。」
「えっ、なんでだよ~。」
「閣下、私も最初にお会いした時。驚かされましたよ。」
「えっ、なんでだよ~、オレは何時もと同じだよ。」
「将軍、私達は、将軍の姿を見慣れておりますが、将軍は、何時も、私達
の着古した服装で居られるからですよ、我々が着ない古い農作業用を着られ
ているんですからね、誰が見たって、農民ですよ。」
と、代表は笑うのだ。
「だって、いいじゃ~無いかよ、オレは、この服装が気に入ってるんだか
ら、それにだよ、イレノアが、何時も、綺麗にしてくれるんだよ、イレノア
の気持ちを考えたら捨てる事なんか出来ないんだよ、オレはね。」
其れが、ロシュエの自慢だった、みんなが使い古した農作業用の服をイレ
ノアが大切にして要る、だから、破れていてもいい、着れるだけでいいんだ
と。
「じゃ~、昼からもよろしく頼むぜ。」
「はい、将軍、任せて下さい。」
と、代表達は食堂に向かい、ロシュエと司令官もお昼を取りに行くのである。
「司令官、昼から外に出て様子を見に行こうか。」
「私も、お供させて頂きます。」
それから、暫くして、昼からの作業が始まった。
ロシュエと司令官も食事が終わり、門を出ようとしたときだった。
「将軍様、司令官様。」
と、誰かが呼ぶので、二人が振り向くと、数百人の農民が走ってくるの
だ。
「お~い、今、オレ達を呼んだのか。」
近くまで来た農民は別の農民だった。
彼らは、今、作業に入って要る農地に入る予定だった農民達である。
「将軍様、オレ達にも手伝わせて下さい。」
「お~、あんた達か、今回は済まなかったなぁ~、本当はあんた達に頼む
はずだったんだがよ、次はあんた達の農場を。」
「将軍様、オレ達は、そんな事はどうでもいいんですよ、オレ達の番とか
じゃ~無いんですよ、だって、オレ達は、同じ農民同士だ、それで、助け合
うと決めたんですが、駄目でしょうか。」
ロシュエも司令官も余りにも突然の話だったので嬉しかった。
外で、作業をして要る本物達と、今、ここに来た者達は住むところは別だ
ったが、それでも、同じ農民で有るのだ、同じ農民だから苦しさも良く知っ
て要る。
「判ったよ、有難う、じゃ~、手伝ってもらうか、指示はと、オレ達も外
に出るんで一緒に行こうかよ。」
と、ロシュエは、彼らの後ろを見ると、全員が何らかの道具を持って要
る。
たとえ、ロシュエが反対しても、彼らは行くつもりだった。
「さぁ~、行こうか。」
と、ロシュエは合図し、彼らも外に出て行く。
彼らとは、川の対岸に居た農民達である。
外に出て、2百ヒロほど行ったところで最初の作業を行なって要る。
ロシュエは考えていた、この第一号の農場は広い、今、本物の人数だけで
は不足するだろうと、それではと考え着いたのが、今から、作業に向かう彼
らである。
今の彼らと、先に作業を行なって要る本物達とは良く似た境遇のはずだ、
だとすれば、この二組に任せるという方法も有ると。
「あっ、将軍と司令官が来られたぞ。」
と、彼らは農場の代表である。
「お~、どうだ、余り無理をするなよ。」
と、ロシュエは気軽に声を掛けるのだが。
「将軍様、司令官様、なんとお礼を申し上げたら良いかわかりません。」
「いや、いいんだよ、ちょっと、聞きたいんだがよ、あんた達の仲間での
中で、誰か代表というか、リーダーみたいな人物はいないか。」
「はい、私が、一応、リーダーみたいな者ですが。」
「お~、そうか、じゃ~、ちょっと話しが有るんだがよ、此処じゃ~、作
業の邪魔になるからよ、そうだ、あの場所に来てくれないか。」
農民は、恐怖の為か身体が震えている。
「オレはなっ、言っとくがよ、何もあんた達をさぁ~、食べようって話じ
ゃ~無いんだよ~、だから心配するなって、オレはあんた達に話が有るんだ
が、聞いてくれるか。」
と、ロシュエは少し離れた所に行く。
「将軍様、オレ達、何か悪い事を言ったんでしょうか。」
と、彼は、川の対岸の農民で。
「いいや、何にもないよ、それどころか、さっき、あんた達は、オレにい
い事を言ってくれたんだからよ~、まぁ~何も心配するなって、それとだ、
お~い、代表達も何人か来てくれないか。」
と、大声で呼んだ。
数人が大急ぎで走ってくるが、司令官は、一体、何が始まるのか見当もつ
かない。
「まぁ~、みんなも座ってくれよ、じゃ~、あんたに聞きたいんだが、今
日の朝から開墾を始めたんだが、此処の広さを知ってるかい。」
農民のリーダーは、全く知らないので首をかしげ。
「えっ、広さと言われましたが、オレ達はどこまで有るのか、何もわから
ないんです。」
と、まだ、身体の振るえが収まっていないので。
「じゃ~、川向こうのあんた達に聞きたいんだが、あの川から、此処ま
で、この農場までだが、どれ位の日数が掛かった。」
「はい、川から此処まで、馬車で二日間掛かりました。」
「そのとおりだよ、じゃ~な、オレ達の居る農場から、司令官のお城まで
何日だった。」
「はい、閣下、五日で御座います。」
この時点でも、ロシュエの考えが判らない、司令官だ。
「うん、今、聞いたとおり、農場から城まで5日間掛かるんだ、其処にだ
よ、10ヶ所の農場を造る計画なんだよ。」
「え~、そんな大きな。」
と、農民達は初めて聞く農場の大きさに驚く。
川向こうの農民は。
「そんなに大きな農場を、オレ達だけじゃ~、とてもじゃないですが無理
ですよ。」
ロシュエはニヤリとして。
「うん、全く、そのとおりだよ。」
「将軍様、オレ達は歩いても数十歩の小さな農地だったんですよ、其れ
が、突然にそんなに広いところを耕せって言われても。」
彼の震えは止まっていた。
「うん、そりゃ~そうだ、オレだって、判るよ、話はまだ先が有るんだ
よ、実はな、あんた達を連れて着た、ウエスって隊長なんだけどよ、今、兵
士5千人を連れて川から水を引き、その水を溜める大きな池を3箇所ほど掘
る事になっているんだ。」
その時、あの農民の身体が大きく震えるのだ、其れを見たロシュエは。
「何も心配する事は無いんだ、オレ達が付いて居るからよ。」
司令官も川向こうの農民達も頷いている。
「確かに、この農場は大きい、だがよ、この大きな農場にだよ、あんた達
だけで開墾なんて事は出来ないんだ、其れはわかったと思うんだが、どう
だ。」
農民は頷き。
「もう、其れは判っております。」
「うん、其処でだ、オレの相談ってのはよ、あんた達、二組が共同で耕す
ってのはどうだろうかと思ったんだがよ、嫌なら、いやでいいんだよ。」
「将軍様、話は良くわかりました、でも。」
「そりゃ~、オレだって判るよ、あんた一人で決める事じゃ~無いってな
ぁ~、だが、よ~く考えて欲しいんだよ、今、あんた達が開墾に入ったとこ
ろなんだがよ、実はな、最初は、此処に居る川向こうの人達が入る予定に成
ってたんだよ。」
「えっ、じゃ~、オレ達は。」
「何も、あんた達を責める気持ちなんか無いんだよ、じゃ~、面倒だ、全
部話すからよ、よ~く聞きなよ。」
と、ロシュエは、二組の農民達に今までの事を話すと、農民達は何度も頷
き、何度も驚き、話は、一時間以上も掛かったが。
「どうだ、判ったと思うんだ、オレはね、あんた達、農民に安心して農業
を続けて欲しい、それだけなんだよ。」
「将軍様、オレ達は何も知らなかったんで許して下さい。
オレは、みんなに話をしますよ、みんな、わかってくれますか。」
「そうか、済まんなぁ~。」
「将軍様、オレ達は、みんな大賛成ですよ、なぁ~、みんな。」
川向こうの農民達は喜んだ。
「将軍様、オレは、最初に収穫した作物を献上します。」
「オイ、オイ、何を言ってるんだよ、オレはなぁ~、気持ちだけで十分嬉
しいんだ、ワハ・ハ・ハ。」
と、豪快に笑うロシュエである。
「代表さん達よ、そんな訳で、川向こうの農民も参加する事になったん
で、済まんが、作業分担をよろしく頼むよ。」
「はい、将軍、わかりましたよ、私達も大賛成ですから。」
「じゃ~、後はよろしく頼むぜ、オレと司令官は、次の場所に行くからよ
~。」
「はい、承知しました。
では、皆さん、説明しますので。」
と、代表達は川向こうの農民に説明を始めるのである。
ロシュエと司令官が暫く歩くと、野盗隊が居た。
野盗隊の任務は護衛と言う名の偽者達の監視である。
「お~、ご苦労さん、どうだ。」
と、野盗隊に声を掛けると。
「将軍。」
と、小声で。
「実はですね、奴ら、完全に駄目ですね。」
「えっ、本当かよ、何故なんだよ。」
と、ロシュエも小声で聞くのだ。
「そりゃ~、将軍、兵士も日頃は訓練で鍛えてますがね、奴らにしちゃ
~、農作業と言うよりも、開墾作業がこんなに苦しいと思わなかったでしょ
うから。」
と、野盗隊の兵士も元は農民だった。
「そりゃ~、オレだって、はじめはね驚いたよ、だがよ、オレも、其処ま
で酷使するとは思わなかったんだからよ~。」
「いや~、実は、私も驚いているんですよ、でもね仕方が無いんですよ、
今までは、農民を虐待してたんですからね、其れにですよ、今更、私は兵士
ですって言えないですからね。」
「オイ、みんな、血だらけじゃ~無いか。」
「そりゃ~、将軍、仕方有りませんよ、でも、農民は、一日中、こんな仕
事をやってますんで、手の皮が厚いんですよ、でもね、奴らはそんな事をし
た事が無いんで、岩を持つと、手のヒラが傷つくんですよ。」
「だけどなぁ~、何にも知らない人達が見ると、大騒ぎになるなぁ~。」
「それにですよ、将軍、見ていただいても解る様に、本物さんは、偽者を
片時も休ませないんですからね、こりゃ~、虐待ってもんじゃ~無いです
よ、完全な復讐ですね。」
ロシュエは驚き以上のものを感じた。
長年の恨みが此処に来て一気に噴出したと思えるからである。
「そうか、復讐か。」
側では、司令官も頷くだけで。
「将軍、奴らは手だけじゃ~無いんですよ、腕も、胸も、傷だらけで、お
まけに顔もでしょう、今日の作業で何人どころか、何十人、いや、何百人が
明日の朝起きれないと思いますがねぇ~。」
「う~ん、其れは困ったなぁ~。」
「将軍、オレも、元は農民だけど、農民は少々の事ぐらいじゃ~休まない
んですよ、奴等だって、正か、こうなるとは思わなかったでしょうが、何も
大きな怪我をした訳じゃ~無いんですよ、あんな傷なんてのは農民は年中な
んですよ、だから。」
ロシュエは考えるのだ、確かに、今は、偽者だって苦しいだろう、だから
と言って、何人、いや、何百人も休ませると、次から次えと同じ様に休ませ
る事になるのである。
其処で、ロシュエは思い切った賭けに出た。
「お~い、みんな集まれ、走れ、大急ぎだ。」
本物も偽者もロシュエの前に集まった。
「お前さん達に話がある、オレ達はなぁ~、お前さん達が偽者の農民だっ
てわかってるんだよ。」
その時、偽者達はあきらめの表情に成った。
「其れに、お前さん達の企みもすべてわかってんだ。
お前達の中で、ここから、夜に成れば逃げ出そうって考えてるバカも居る
だろうよ、逃げたっていいんだよ、だが、此処には、数百頭の狼の大群がい
るんだ。
オレの言った事は嘘じゃ無い、そして、この中から、ウエスに連絡を取る
って奴も居るだろうが、あそこに辿り着く事は不可能だよ。
お前さんはよ、今更、私は兵士ですって言ったて同じなんだよ、お前さん
達が生き様が死のうが、オレの知った事では無い、ただし、これだけは言っ
ておく、必死に作業する者には食べ物は有る、だが、サボる奴には残念だ
が、水だけって事よ、この作業地に居る野盗隊はお前達の護衛では無いんだ
よ、本物の農民を狼から守っているんだよ、
良くわかったかよ、お前達の仕事は、今回で終わりじゃ~無いんだ、当分
って事はだ、何年間も続くんだよ、まぁ~、その内に、何人、いいや、何百
人と狼の犠牲に成るだろうがよ、其れは、お前さん達が蒔いた種なんだ、本
当に苦労するよ、それと、お前さん達は農場内に入る事は出来ないんだよ、
偽者全員、外のテントで眠るんだ、まぁ~な、眠って居る間が本当の恐怖を
味わう事になるが、それも仕方無いって話だ、オレからはそれだけだよ、さ
ぁ~、みんな頑張れよ。」
その時、あの農民が来たのである。
「将軍様、有難う御座います。
お~い、みんな、今の話で、オレ達には将軍様が見方に成って下さるん
だ、みんな、元気を出して、行くぞ~。」
と、あの農民が言った、すると。
「お~。」
と、川向こうの農民達も歓声を上げた。
一方、偽者達は元気なく、作業に入るのだ。
「お~い、ホーガン、ホーガンは居るか。」
「はい、将軍、此処に居ります。」
と、ホーガンは手を振りながら走ってきた。
「ホーガン、倉庫に旧式の弓と矢は有ったよな。」
「はい、全部有りますが。」
「その弓百本と一人10本の矢を夕方までに持って来て欲しいんだ、テン
トは。」
「はい、夕方までに設営しようと思っています。」
「わかった、弓と矢をテントに入れてくれ。」
「では、将軍、奴らに武器を渡すんですか。」
「な~に、武器って言ったところで、百本の弓と一人10本の矢だよ、何
も出来ないはずだよ、奴らも狼から身を守りたいだろうからなぁ~。」
「でも、将軍、狼は賢しですよ、奴らの血の匂いは、既に、嗅ぎつけてい
ると思いますがね。」
「まぁ~、此れからの夜どうなるか、オレは知らないよって。」
昼からの作業は午前中の非では無かったのである。
それというのも、川向こうの農民達が加わったのだ、午前中の数倍の速さ
で、大きな岩石を掘り出すのだ。
偽者達は、次から次へと呼ばれ、少しでも遅く成ると罵声を浴びせられ、
だが、反撃する力も無い程に疲れきっている、それでも、偽者達は辛抱して
いる。
そうしているうちに、太陽は西の空に沈む頃となった。
「お~い、全員、今日の作業は終わりだ、本物さんと川向こうの人達は戻
って下さい。野盗隊の皆さん、有難う御座いました。
また、明日もよろしくお願いします。」
「お~、有難うよ、じゃ~な、オレ達は戻るから、みんな元気出せよ、オ
レ達には、将軍様や司令官様が見方だからよ~。」
「お~い、偽者さん達、すぐに食事が届けられるからなっ、しっかり食べ
て、良~く眠り明日も頑張って下さいね。」
と、代表たちも戻って行く。
最後の代表が入ったあと、数十台の馬車が出てきた。
馬車には夕食が積み込まれいた、その馬車もテント近くで切り離され、馬
だけが中に戻って行く。
偽者達は走り出したが、この部隊の隊長と思われる人物だろう。
「全員、止まれ、食べ物は順番に持って行くんだ。
我々は、姿を変えても軍人で有る、お前達も軍人としての誇りは有るはず
だ。」
「隊長、誇りって何ですか、司令官の話と全く違うじゃ無いですか。」
「そうだ、そうだよ、えっ、一体、何処の誰ですか、この農場には民兵だ
けだから、軍隊はいないって言ったのは。」
「そうですよ、あの時、司令官も言われたでしょう、民兵だけだ、武器は
簡単に手に入るからと、でもね、全く話は逆ですよ、全員が正規軍じゃ~無
いですか、何日か前に行っただけでも、5千人は居りますよ、其れに、自分
達が初めて見る武器も全員が持ってるんですよ、そんなの相手にどうやって
勝つつもりなんですか、ねぇ~隊長、何とか言って下さいよ。」
其れは、次から次へと出てくる不満で、ウエスも隊長達も読み違えたの
だ。
確かに、ロシュエの農場では普段兵士達も農作業を手伝うので、その姿だ
けを見た偵察隊は農民だけなので民兵だと報告したのだろう、だが、彼ら
は、全員が正規軍だ。
其れを、報告した者も、受けた者も騙されたのだ。
「君達の言いたい事はわかる、だが、現実は違っていたと言う事なんだ、
ウエス司令官も騙されたんだ、あの将軍だけど、その前に、何故、我々が兵
士だとわかったんだ、全員が農民の姿でいたはずだ。」
この隊長もなぜバレタのかわからないのだ。
この場に、ロシュエが居れば、言っただろう、お前達が偽者だと言ったの
はオレじゃ無いんだよ、オレ達の仲間なんだと、だが、果たしてわかるだろ
うか、自分達の姿は確かに農民で、だが、本物の農民では無いって事は直ぐ
にわかるんだと。
「それでは、全員、食べてくれ、それと、今夜から夜警に入る、第一中隊
から順次交代するんだ、他の者は、早く寝る事だ、明日もきついからな
っ。」
彼らが寝静まった頃、遠くで、狼の遠吠えである、其れは、何と恐ろしい
声なんだ、一体、何頭いるんだ、其れはわからない、狼の遠吠えは夜中中聞
こえ、殆どの者は眠る事さえ出来ず、朝になった。
城門が開き、朝食を積んだ馬車が出て来て、昨夜の馬車と入れ替わり、空
になった馬車は城門の中へと消えて行く。
「さぁ~、全員起きろ、朝食だ、早く食べて、今日の作業に入るんだ。」
隊長は兵士達を鼓舞するのだが、兵士達の足取りは重く、食事よりも眠り
たいのだ。
「オイ、しっかりとするんだ、我々は、これくらいの事で音を上げるよう
な兵隊では無いんだ。」
兵士達もわかっている、わかっているが、身体が思う様にならない。
暫くして、城門が開き、先頭は野盗隊である、野盗隊の次は農民達で、だ
が、農民達は全員が元気だ、昨夜、一体、何が有ったのか、偽者達は知らな
い。
話は、少し戻り、農民達が戻ってくると、テレシア達が待っていた。
「オイ、オレ達、何かやったのか、ここの女性達が二コ二コ顔でやってく
るぞ。」
彼らが、その様に思うのも無理は無かった。
其れは、ロシュエからの伝言で。
「あんた達が本物さんか、将軍からの伝言でね、本物さんが戻ってくるの
で思いっきり食べさせてやってくれってね。」
「えっ、将軍様がですか、でも、オレ達は、まだ何も出来て無いんです
が。」
テレシア達女性陣はニコニコしながら。
「何、言ってんのよ、私達の将軍のご命令なんだから。」
「あら、嫌だよ、テレシア、今まで、将軍様のご命令なんて言ったかし
ら。」
「あら、そうだったかね、私しゃ~、忘れたよ、ワハ・ハ・ハ。」
と、テレシアも豪快に笑い。
「さぁ~、さぁ~、本当に何も心配ないんだからね、私達の将軍はね、私
達、農民の見方なんだよ、之は、本当なんだからね。」
と、またも二コ二コ顔だ。
「じゃ~、あの将軍様と一緒の司令官様もですか。」
「うん、そうだよ、あの司令官もだよ、だけど、あの将軍を敵に回すと
ね、そりゃ~恐ろしいんだから、でもね、将軍と司令官は本当は優しい人な
んだよ、私達、女性陣には憧れの人なんだからさぁ~。」
その時、農民の家族が入ってきた。
「ねぇ~、あんた、私達、本当に此れから一体どうなるんだよ、私達は何
もわからないんだからね。」
「うん、話すと、長くなるんだけれど、オレ達は将軍様のお陰で助かった
んだよ、本当なんだから。」
「え~、一体、何を言ってるんだい、私達は。」
「あの将軍様はな、オレ達農民の見方なんだ、でもな、オレ達は、あの兵
隊達にだ、余計な事を話すと、家族を殺すって脅かされたんだよ、だけど、
オレ達が話をする前に将軍様が兵隊に言ってくれたんだよ、お前達は偽者だ
って、将軍様はね、オレ達農民にはとても優しくされるんだが、あの兵隊達
にはね、生き様が、死のうが、オレには全く関係は無いって、だから、オレ
達は本当に助かったんだよ。」
「じゃ~、私達は此れからどうなるのよ。」
「うん、今日から、オレ達だけの農場を造るんだよ、それに、この人達も
一緒だよ。」
川向こうの農民達も軽く会釈したので。
「だけど、その農場ってのはとても広いんだよ。」
「へぇ~、そんなに広いのかい。」
「そうだよ、此処から馬車で二日行ったところに大きな川があるそうなん
だ、で、其処までと、それから、門を出て、馬車で半日も掛かるところまで
らしいんだよ。」
「ええ、そんな広いところ行くのかえ~。」
「いいや、だから話をすると簡単じゃ~無いんだよ、オレ達だって、まだ
見た事も無いんだから。」
「でも、そんなに広いんじゃ~、耕すのも大変だよ。」
「そうなんだ、だから、この人達も一緒なんだけどね、本当は、この人達
が先に入る事になってたんだ、だからね、この話は、一度には出来ないん
だ、此れから、少しづつするからね。」
「うん、判ったよ、判ったけど、私達は、一体、何をすればいいんだ
よ。」
テレシアは待ってましたとばかりに。
「其れはねぇ~、此処でみんなの食事や洗濯をするんだよ。」
「えっ、だって、此処は。」
「うう~ん、違うのよ、此処とね、まだ有るんだけど、あんた達の家が建
つまでだけなんだけどね、共同生活するのよ。」
「じゃ~、この大きな食堂でなの。」
「そうなのよ、食事が終われば、みんなのために部屋が作れるのよ。」
「え~、そんな事も出来るんですか、じゃ~、私達は。」
「そうよ、将軍はね、あんた達を仲間だと認めたのよ。」
「えっ、仲間って言われても、将軍様は兵隊さんでしょう。」
「其れは本当よ、でも、この話は簡単じゃ無いのよ、この話はね、何れし
てあげるからね、其れよりも、みんな、食事が終わったら手伝ってよね。」
「判りました。」
この女性が、まだ理解できないのも当然で、朝は暗い顔だったのが、戻っ
てくると、明るい顔に成っている、その話を簡単にする方が無理だと言う事
なのだ。
話は再び戻り、朝になり、門から出てきた農民達は元気で、だが、野営し
た偽者達は寝不足と身体中が傷だらけの為なのか元気がない。
「さぁ~、みんな元気で作業開始、あんた達、今日も一日、よろしく
ね。」
と、農民のリーダーはニヤリとした。
そして、作業は思う以上に進み、最初の農民達が作業に入ったところは小
石も無く、次へと移る。
今日は朝から、ロシュエと司令官は森に入って行った。
「お~い、どうだ。」
「あっ、将軍、今日、正か、何かあったんですか。」
「いいや、何も無いんだがよ~、みんなの様子を知りたかったんだよ
~。」
「オレ達は、何時もと同じで、みんな元気ですよ、其れじゃ~、此れから
家を建てるための木の切り出し作業があるんで。」
「お~、済まんなぁ~、急に変わってよ~。」
「何も、将軍が悪いんじゃ無いですよ、だって一番悪いのは、奴らですか
らね、オレ達は何も気にしてませんよ。」
「そうか、有難うよ、で、今日は、何本切り倒すんだ。」
「そうですね、あの前に、選びますんで、其れが、終わり次第ですが、1
0本ってところですかねぇ~。」
「10本か、大変だなぁ~。」
「将軍、オレ達も造る物で、木を選ぶんで、どうしても、時間が掛かるん
ですよ。」
「そりゃ~、仕方が無いよ、其れで、今度の家なんだが、何時もと同じで
いいと思うんだが、それとだ、今、技師長が大きい川に行ってるんだ、其れ
で、技師長の家なんだが、オレも、どう、説明していいのか、わからないん
だが、技師長は、池が完成すると次の池を造るために移動するんだよ。」
「えっ、それって、若しかしたら、次からも使える様に作るんですか。」
「いや~、オレは素人だから聞きたいんだよ、新しい家を建てるのも大変
なんだろう。」
「そうですね、技師長の家の大きさも考える必要が有ると思うんです
よ。」
「そうか、色々と制約が有るんだなぁ~、建てた家をそのまま移動させる
って簡単なのかねぇ~。」
「そりゃ~、将軍、簡単じゃ~無いですよ、平坦なところを移動する事だ
って、簡単じゃ無いですから、将軍の家なんか、移動させる事は不可能なん
ですよ。」
ロシュエは、何度も、技師長の家を建てるほうが大変だろうと思っていた
のだ。
「う~ん、其れは無理か。」
「閣下、技師長の家なんですが、何れ、全ての池が完成すると、ウエス隊
に管理を任せると言われておりましたね、私は、場所を特定して、其処に管
理事務所に変えれば宜しいかと思いますが。」
「そうか、その方法があったか、それなら、別に移動させる事も無いから
なぁ~。」
「将軍、じゃ~、技師長が寝る家と現地で管理も出来る様な家と二軒を建
てれば問題は無いと思うんですが。」
「あっ、そうか、ウエス隊長の家もいるんだ。」
「でも、皆さん、移動されるんでしょう、だったら、大きな家は必要無い
と思うんですが、さっき、司令官が言われましたが、管理されるんですよ
ね、だったら、その人達が住まわれる事を前提に考えて建てればいいと思い
ます。」
「よし、判った、其れじゃ~、司令官、オレと一緒に行くか、オレもよ
~、その大きな川ってのを見たいんでなぁ~。」
「将軍、近近、大工隊の半数が出発するんですよ。」
「お~、そうか、じゃ~、オレも一緒に連れてってくれよ。」
「はい、一応、技師長の家と隊長の家を建てる様に木材も用意するんです
がね、大工隊は技師長と相談するって言ってましたよ。」
「司令官、こりゃ~、好都合だなぁ~、じゃ~、今から大工隊のところに
行ってくる
とするか。」
ロシュエは司令官と一緒に向かうのだが、その途中、ロシュエは森の中を
見るのだ。
「司令官、この森は、一体、どこまで続いているんだ。」
「はい、私も正確には知らないんですが、城門から、以前、私の居りまし
た城までは続いておりますが、この右側ですね、之は、まだ調査も出来て無
いんです。
我々の偵察部隊も相当奥深く行ったのですか、馬で5日間行ってもまだ森
は続いているそうなんです。」
「えっ、そんなに続いているのかよ~。」
「ですから、帰りも大変だったと聞いておりました。」
「余り、深く入ると危険だって事だなぁ~。」
「はい、私は、その様に感じております、偵察隊の話では、この森には、
大きな熊も数十頭見たと言っておりましたので。」
「じゃ~、当分は近くで切り出し作業に成ると言う事だ。」
「はい、そのとおりです。」
丁度、その時、大工部隊の作業現場に到着した。
「やぁ~、みんな、ご苦労さんだなぁ~。」
「えっ、将軍、一体、何が有ったんですか、突然来られて。」
「いや~、忙しい時に申し訳ないなぁ~、実は、少し聞きたい事が有るん
だ。」
「将軍、何かわかりませんが、オレ達にわかる事だったら何でも聞いて下
さい。」
「じゃ~、技師長とウエス隊長が出発した事は知ってると思うんだ。」
「ええ、自分達も数日後に出発する予定なんですが。」
「うん、其れでだ、オレと司令官も同行させて欲しいんだよ。」
「私は、別に宜しいですが、自分達は、技師長とウエス隊長の宿舎を造ろ
うと思ってるんですが。」
「オレはね、その事で少し聞きたいんだ、技師長とウエス隊長の宿舎を造
ってくれるのは、オレとしても、大変嬉しいんだ、だがよ、技師長は池が完
成すると、次の場所に移動するんだが、其れは知ってるんだろう。」
「はい、勿論知ってますよ、其れに、5千人の兵士達の宿舎も必要ですか
ら。」
「そうか、其処まで知ってたんで有れば、話は早い、其れでだ、技師長達
の宿舎の大きさなんだがよ~。」
「あ~、その事ですか、自分達も少し考えたんです。」
「ほ~、何をだ。」
「ええ、技師長とウエス隊長の宿舎もなんですが、問題は兵士達なんで
す。
将軍、あの兵士達が、全ての池を完成させた後ですね、彼らに、他の仕事
に就かせるんですか、それとも。」
「其処なんだよ、オレも、色々と考えたんだ、其れで、池が完成すると、
ウエス隊にはね、全部の池を管理させようと考えて要るんだ。」
「じゃ~、10箇所造って行きますんで、1箇所当たり、5百人が完成後
には常駐するんですね。」
「まぁ~、今のところはだけど。」
「将軍、それさえわかれば、自分達は何の問題も無いんです。」
「じゃ~、何か、技師長とウエス隊長の宿舎は特別な造りにはしないの
か。」
「技師長の宿舎は管理用にと考えていますが、ウエス隊長の宿舎は、後か
ら造る常駐用にしますので、特別な造りにする必要は無いと考えていま
す。」
「いや~、さすがだねぇ~、これじゃ~、オレのする事が無くなったよなぁ~。」
司令官はくすっと笑い。
「その様な事は御座いません。
閣下が考えておられる事は、此処のみんなも同じ考えだと言う事に成りま
すので。」
「じゃ~、オレの仕事が無くなって、オレは、一体何をすればいいんだ
よ、なぁ~、司令官、教えてくれよ。」
大工部隊は大笑いするのだ。
「いいえ、私は、何も存じませんので。」
「なぁ~、みんな、オレは、此処では邪魔者なんだよなぁ~。」
また、大笑いする大工部隊である。
「話は変わるだが、今、新しい農場造りに入ってるんだが、その農場に川
向こうと、先日着た農民さんに入ってもらおう考えてんだが、その人達の家
は。」
「その事でしたら、ここに残る部隊が建てる計画なんですよ。」
ロシュエの考えて要る事は、此処の農場では、誰もが考えて要る。
この農場では、全員が何らかの仕事に就いているので、ロシュエが最初苦
労した事も、最初に着た人達は知って要る。
其れは、最初に着た人達も司令官が連れて着た人達も、ロシュエは、農民
が一番大切なんだと言う事を知って要るからだ。
ロシュエは、農民を一番に、自分達兵隊は最後でも良いと、其れは、
常々、みんなに言っている、だが、ロシュエは強制はしない。
ロシュエの考えは、考えで、決めるのは農民だと、ただ、ロシュエは道筋
を作っているだけなのだ。
「うん、有難うよ、で、今、準備しているのは。」
「はい、技師長のと言っても、現場で作業工程を作るための、まぁ~、会
議室見たいなものなんですが。」
「そうか、みんな、忙しい時に邪魔したなぁ~、それとだが、出発する時
なんだが。」
「はい、今、この材料が完成すればなんですが、将軍、前日には、お知ら
せしますが、其れで、宜しいでしょうか。」
「うん、判ったよ、じゃ~、よろしく頼むぜ。」
と、ロシュエと司令官は別の作業現場に向かう。
「なぁ~、司令官、みんな、良くやってくれるよ、何も言って無いんだ
が、本当にオレは嬉しいよ。」
「閣下、私もです、先程、閣下も申されたとおり、本当に、閣下のお仕事
が無く成りそうですねぇ~。」
「うん、そうかも知れないよ、その内に、あんたの仕事は無いよって、言
われそうな気がするよ、なんか、嬉しいような、少し寂しいような気もする
がなぁ~。」
その時だった、子供達の大きな声が聞える。
「司令官、多勢の子供達だが、一体、何があったんだ。」
ロシュエも司令官も初めて見るのだ。
多勢の子供達が何やら楽しそうな声で、身振り、手振りでしゃっべってい
る。
「お~い、君達、一体、何の騒ぎなんだよ、こんなに多勢で。」
「わぁ~、将軍と司令官だ。」
と、言って、みんなが走ってくる。
「君達は。」
「はい、将軍、僕達は、お風呂部隊なんです。」
「でも、今は、お風呂は造れないと思うんだよ。」
「はい、其れは知っています。」
「じゃ~、なんで、森に行くんだ、森の中は危険だって知って要るんだろ
う。」
「はい、勿論知っています。」
「じゃ~、なんで行くんだ。」
「僕達、今は、何もする事が無いんで、其れで、みんなと話し合ったんで
す。」
「うん、其れは判るよ、お風呂場造りも、一時中断しているからなぁ
~。」
この子供達、一体、何を始めるんだ、其れに、一人の兵士も護衛に就いて
いない。
子供達が決めたんだとしても、森に入らせる事は出来ないと、ロシュエは
思い。
「君達が決めたのか。」
「はい、そうです。」
「其れにしても、危険だよ、一人の兵士もいないんだから、其れで、何処
まで行くんだ。」
「はい、入口までです。」
「入口で、何を始めるんだ。」
「切り出し部隊が入口まで蒔き木になるような木材を持って来てくれるん
です。」
「うん、うん、其れは判ったよ、だがよ、その木材を何に使うんだ。」
ロシュエは、二コ二コとしながら聞いて要る。
「はい、僕達はお風呂部隊なんですが、でも、今は、殆ど薪木を作れない
んです。」
「薪木が作れないって事は、斧やのこぎりが使えないって事なのか。」
「はい、そうなんです、僕達は、仮にも、お風呂部隊なんですよ、そのお
風呂部隊が薪木も作れないって、恥ずかしいって、誰かが言ったんです。」
「うん、そりゃ~、そのとおりだよ、お風呂部隊の君達が責任を持ってや
るんだからなぁ~、でもなぁ~。」
「で、誰かが、言ったんです、お風呂場が出来るまでに薪木を作れるよう
に練習をしようって。」
子供達は真剣に考えて要るのだと、ロシュエは思った。
「お~、其れは素晴らしい話だなぁ~、だがよ、この森の中には。」
「はい、僕達も知っています。
だから、あの入口まで、切り出し部隊が持って来てくれるんです。
その木材を、みんなで薪木を作ろうって決めたんです。」
「判ったが、作った薪木は。」
「はい、農場のみんなに分けます、何処の家でも、お父さんやお母さんが
薪木を作っていますが、僕達が何処まで出来るかわかりませんが、お風呂場
が出来るまでには、みんなが上手になれるようになればいいなぁ~って思っ
ているんです。」
「よし、判ったよ、だがよ、余り無理はするなよ、無理して、怪我なんか
しないようになっ。」
「はい、将軍。」
「じゃ~、みんな、気をつけるんだよ。」
子供達は、笑顔で手を振り、大工に作ってもらった特性の台車を引き、森
の入口に向かって行く。
「なぁ~、司令官、嬉しいねぇ~、あの子供達も自分達で考え、行動に移
して行くんだよ、これじゃ~、本当に、オレに仕事が無くなってしまうよ、
参ったなぁ~。」
と、言っているが、ロシュエは心の其処から嬉しかった。
一方、技師長とウエス隊長と5千人の兵士達も池を造る現場に到着した。
「技師長、この場所なんですか、我々が造るという池ですが。」
彼らが着いた場所の近くを大きな川が流れている。
「隊長、この一帯を大きな池と小さな池を3箇所造る事になっているんで
すがね、行き成り造りに取り掛かる事は出来ませんので、キャンプの設置
と、測量ですね。」
「技師長、では、先にキャンプ地の設置ですね。」
技師長は、急ぐ必要は無いと考え。
「まぁ~、その前に馬を休ませましょうか、それと、我々も少し休み、そ
れからでもいいと思いますが。」
「はい、判りました、第一から、第三中隊は、馬車から馬を切り離せて馬
を休ませろ、それと、第四中隊から第六中隊は、キャンプの準備に、第七中
隊と第八中隊は付近から薪木を集めろ、全員、作業開始。」
すると、各中隊は急ぎ作業に入る。
「技師長、キャンプ地の設置場所なんですが、あの林の手前で如何でしょ
うか。」
「そうですね、其れは、隊長にお任せしますので。」
川の手前、百ヒロの所に林が有る、その場所を最初のキャンプ地と決め
た。
「技師長、測量は明日から始められるのですか。」
何を、其処まで急ぐ必要があるのだと、技師長は思って要る。
「隊長、兵士も大変疲れております。
明日からは、まず、必要な物を作らねば成りませんので。」
「えっ、まだ、何か必要な物が有るんですか。」
ウエスは知らなかった。
測量を開始すれば、目印となる杭が必要に成るということが。
「隊長、測量には大切な物が有ります。
其れはね、目印となる杭が必要なんですよ、それも大量にですよ。」
「判りましたが、技師長、その杭なんですが、何本くらい必要なんです
か。」
「そうですね、測量の時には、千本以上が必要ですが。」
「えっ、千本以上もですか。」
「そうなんですよ、目印が無ければ、池の境界線がわかりませんので
ね。」
「千本以上の杭を作るだけでも、大変な作業に成りますね。」
「ええ、そのとおりなんですよ、丁度、あの林の木であれば、太さも丁度
ですから、長さは、隊長の身長くらいが良いと思いますね。」
「判りました、では、明日から、杭を作る作業に入りますが、その後
は。」
「隊長、林の木を切り出した後に、本来のキャンプ地を設置出来ればと考
えたんです。」
「技師長、わかりました。」
と、その時、第四、第五、第六の中隊長が来た。
「隊長、キャンプ地のテント位置ですが、技師長と隊長を中心に、その周
りに自分達中隊長と、その周りに各中隊兵士のテント設置で如何でしょう
か。」
「私に、異存は有りませんが。」
「よし、その方向で設置せよ。」
ウエスの号令である。
「隊長、それと、今日は、みんなも疲れておりますので、作業開始は明日
からでも良いでしょうか。」
技師長は今夜は早く眠りたいのだ。
「そうですね、皆さんも疲れておられると思いますから、食事が終われ
ば、早く眠る事にしたいですねぇ~。」
と、技師長はウエスを見た。
「技師長、私も同感です、では、その方向で進めてくれ。」
中隊長達は、技師長とウエスに敬礼をし、戻って行く。
テントの設置も終わり、付近一帯の数百箇所で焚き火をして要る。
其れは、狼などの野生動物避けだ。
野生動物は火を怖がるので、一晩中燃やし続ける、兵士達も疲れているの
だろう、各自食事が終わると、テントに入り、眠りに着く。
それでも、交代で警戒に当たらなければならない。
翌朝は快晴で、全員が食事中の時だ。
「隊長、南の方角から馬のひずめが聞えてきます。」
「えっ、野盗なのか。」
「いいえ、まだ、はっきりとは判りませんが、物凄い数だと思われま
す。」
技師長もはじめは野盗かと思ったのだが、今は、この付近には野盗はいな
いはずだと思った、だが、確信は無い。
「技師長、わかりましたよ。」
と、彼は、一番大隊の兵士だ。
「誰が来たんですか。」
「はい、多分、一番大隊と二番大隊だと思います。
これで、私も安心しました。」
と、この兵士はほっとした表情をした。
それも当然だった、彼は、一晩中警戒の見張りをしていたのだ。
何時、狼が襲ってくるかも知れないという恐怖と戦いながらの見張りだっ
た。
暫くして、兵士の言う通り、一番大隊と二番大隊が到着した。
「やぁ~、技師長、ウエス隊長、大変遅くなって申し訳ない。」
「えっ、如何させたんですか。」
ウエスの驚きは当然なのだ、正か、自分達の作戦が発覚したのでは無いか
と、だが、技師長はわかっていた、だが、何も、言う必要は無いと思ってい
た。
「実はね、ウエス隊長が出発された頃なんですが、将軍から命令が下りま
した。
直ぐにウエス隊長の護衛に向かうようにと、将軍は、ウエス隊が武器も無
しで出発されたのを心配されていましたから。」
よくも、まぁ~、こんな嘘の話を誰が信じると思うだろうが、ウエスは信
じた。
「本当なんですか、将軍が、私達の為に。」
「勿論ですよ、其れで、私達、一番大隊と二番大隊は、ウエス隊からは狼
の犠牲者と出してはならんと言われました。」
「本当に、ありがたい事です、我々も兵隊ですから、此処に有る物でも使
い方次第で武器に成りますが、でも。」
ウエスの言うのは本当だった、馬車には、斧やなたと色々の道具がある、
其れは、武器にもなるが。
「ウエス隊長、お気持ちは良くわかりますが、此処の狼は、特に凶暴なん
です。
隊長の居られた付近の事はわかりませんが。」
ウエスは考えた、確かに言われればそのとおりだ、自分達が居た城の周辺
には、狼は少なかった。
「ウエス隊長、この付近一帯に狼が何頭いるのか、我々も知らないんで
す。
以前、私の部下が調べたんですがね、此処の狼は大群なんですよ、数百頭
の群れが、数十有るのは確認できておりますが。」
一番大隊のロレンツ隊長の言う話は、一体、何処までが本当なのか、部下
達もわからないのだ。
「ロレンツ隊長、それでは、この付近一帯には数千頭もの狼がいるんです
か。」
ウエスと、部下達は恐怖心が顔に表れている
一番大隊のロレンツ隊長は涼しい顔で。
「まぁ~、其れくらいはいるとと思いますよ。」
ウエスも知らなかったのだ、自分達の知って要る群れは、多くいたとして
も数十頭なのだ。
「技師長、よくもこんな恐ろしいところに。」
「ウエス隊長、我々の農場を見られたとき、何故、こんな城壁かと思われ
たでしょう、我々は、あの城壁でも十分とは思って無いんですよ。」
「じゃ~、この農場も高い城壁を造られるんですか。」
技師長はニッコリとして頷き。
「其れは勿論ですよ、ロシュエ将軍はね、農民を大切にされているんです
よ、だから、何時も言われていますよ、オレは、農民が助かるんだったら、
オレの命は惜しくは無いとね。」
ウエスは思い違いをしていたのかも知れないのだ。
此処の将軍は、表面上、何時も農作業用の服を着ている、其れは敵を騙す
ためだと、自分達の城でも、この城壁は知っていたが、誰も、確かな事は知
らなかった。
「ウエス隊長、我々も平時は農作業に行くんですよ、兵士も農作業の苦し
さが少しでも判る事が必要だと、将軍も言われ、我々も、今では、その様に
思っています。
まぁ~、その話は、何れの機会にしましょうか、我々は、早速警戒に入り
ますので失礼しますよ。」
と、一番大隊と二番大隊の隊長は、技師長とウエスに敬礼し、部下を配置
に着かせるため戻って行く。
一番大隊の各中隊長も芝居が上手だ。
彼ら、一番大隊と二番大隊の本来の目的とは、ウエス達の護衛と言う名目の
監視で有る。
だが、ウエスは全く気付かない。
「一番大隊は、各配置に着き、ウエス隊の護衛に入れ、二番大隊はキャン
プの設営に入れ。」
と、一番大隊、ロレンツ隊長の命令である。
ウエスは早速行動に出た。
「第七、第八中隊は、一番大隊、二番大隊の馬の世話に入れ。」
一番大隊のロレンツ隊長は聞えていた。
「一番大隊と二番大隊に告ぐ、各自はウエス隊に馬のお世話になるので、
礼儀をわきまえる事である。」
「其れじゃ~、ウエス隊長、杭つくりに行きましょうか。」
「はい、了解しました。
第一から、第六中隊は、今から、左に有る林に入り杭を作るが、今日中に
1千本を作るので、各中隊長は作業工程を考え分担配置せよ、では、出発す
る。」
やはり、一部を除き、殆どが兵隊の姿をした農民だ。
ウエス達に脅かされているのだろう、表面上は兵隊だから行進だけでは見
破る事は出来ない。
一方、ロシュエと司令官が向かったのは、新しい農場に入る予定の人達の
住む家を建てる加工品を作っている現場に着いた。
「やぁ~、皆さん、ご苦労さん。」
「えっ、なんで、将軍が。」
「済まないなぁ~、少し聞きたいと思ってね。」
「何をですか。」
「もう、知って要ると思うんだが、新しい農場の事なんだ。」
「あ~、新しく入る人達の家じゃ無いんですか。」
「さすがだねぇ~、話しが早いよ、其れで、どんな調子なんだ。」
「はい、家は、今までと同じなんですよ、ただ、その前に、少しには話し
に聞いたんですが、其処には、川向こうの人達と、あの兵隊と一緒に来た人
達が同じ農場に住むって話本当なんですか。」
「うん、実は本当なんだよ、其れでだ、同じ場所に建てるのも可笑しいと
と思うんだがよ~、どうだろうか。」
「将軍、そりゃ~駄目ですよ、オレだったら、嫌ですよ。」
「やはり、そうだなぁ~、こりゃ~、難しい問題だよ。」
ロシュエは、二組の農民達を同じところで住まわす方法を考えていた。
確かに、最初は問題は発生しないだろうが、やがて、其れが何かのきっか
けで大きな問題に発展する可能性が有る。
「将軍、オレ達も色々と考えて要るんですが、よろしいでしょうか。」
「お~、いいよ聞かせてくれよ。」
「将軍、オレ達の所にも技師長から図面をもらっているんですよ、其れ
が、その図面なんですがねぇ~。」
と、大工部隊のリーダーが、ロシュエと司令官に図面を見せると。
「将軍、技師長が、此処と、此処に、印を付けたんですよ。」
「ふ~ん、この図面だと、二箇所に家を建てるんだ。」
「はい、そのとおりなんです、此処に池と牧場ですね。」
彼は、技師長が印を付けた理由を話すのだ、説明は暫く続いたが。
「そうか、技師長もわかってたんだなぁ~、じゃ~、この方法で行なって
くれ。」
「将軍、それとなんですが、あの子供達の話もご存知でしょうか。」
「お~、さっき、見たんだがよ、子供達はお風呂場が出来るまでには薪木
作りを覚えるんだってなぁ~。」
「実は、話はその事なんですが、あの子供達を見てると、早くお風呂場を
造ってやりたいと思ってるんですよ、将軍、農場の家も大事だとわかってい
ます。
でも、当分は、家を建てる事は出来ないと思うんですよ。」
「判ったよ、大工部隊は、早くお風呂場を造ってやりたいって言うんだろ
う、だがよ、少し考えて欲しいんだよ、子供達は、お風呂場が、今、完成し
よ、頑張ってるんだよ、其れはだなぁ~、農場に家が出来るまではお風呂場
はできないと考えたんだ、と、オレはね、思ってるんだ、本当に子供達の思
いを実現させる為には、少し後の方がいいんじゃ~無いかと、オレは思うん
だが。」
ロシュエも、大工部隊の気持ちはわかっている、だが、子供達の気持ちを
考えると少し後になってもいいと思ったのだ。
「やはり、将軍もでしたか、いえねぇ、オレ達も同じなんですよ、早く作
ってやりたい気持ちと、少し後に作るほうが子供達の為だと、言う気持ちと
なんですよ。」
「オレはねぇ~、あんた達の気持ちは本当にうれしいんだ、だがよ、少し
我慢する事だね。」
「判りましたよ、将軍。」
「だってよ~、あのお風呂場の材料は出来てるんだろうよ~。」
「えっ、なんで判るんですか。」
「だってよ~、オレ達は、家よりも早くお風呂場を作りたいんだって、顔
に書いて有るんだからよ~、ワッハ・ハ・ハ。」
と、ロシュエは大声で笑い、側の司令官も大声で笑うのである。
「まぁ~、皆さん、閣下は、全てお見通しって話ですよ、ハ・ハ・ハ。」
と、またも司令官は笑うのだ
「其れでだ、さっきの話なんだがよ~、家を建てるところに野営用のテン
トが有るが邪魔だったらよ別の場所に移動させたっていいんだからよ~。」
「はい、判りました、此方の家の材料も後少しで出来ますので、出来次第
に家を建てる様にしますので。」
「済まんなぁ~、何時も無理を頼んでよ、このとおりだ、頑張ってくれ。」
と、ロシュエは大工部隊に頭を下げたので。
「将軍、頭を上げて下さいよ、オレ達は、将軍が無理を言ってるなんて思
ってなんかいませんから。」
「お~、有難うよ、じゃ~なっ、オレが邪魔したんだ、許してくれよ。」
と、ロシュエは手を振り、司令官と農場造りの現場に向かって行く。
「閣下、先程の話なんですが。」
「子供達の話だろう。」
「はい、私は、此方側の家が出来た時点で、お風呂場の建設に入っては如
何と思いますが。」
「お~、やはり、司令官も、オレと同じ考えだなぁ~、いや~、オレも、
考えてたんだよ、子供達の事も、大工部隊の思いも、早く実らせてやりたい
となっ。」
「閣下、有難う御座います。
私も、閣下の事ですから、子供達と大工部隊の両方を大切にされて要ると
思ってはおりましたので、安心致しました。」
やはり、ロシュエは子供達の事が気になっていたのだ、確かに、家の建設
は急ぐ、だが、その前から、農場の子供達が運営するお風呂場を造る話はで
きていたのだ。
其れが、突然、ウエス達が来たために大幅な変更になったので有る。
それでも、ロシュエは考えていた、先程の子供達の行動で次はお風呂場の
建設に入る事を決めた。
「だがよ、少し問題が有るんだよ。」
「はい、私も承知しております。
あの本物さんに、何と説明するかですね。」
「うん、そのとおりなんだよなぁ~、あちらを立てれば、此方が立たずっ
て話なんだ、之が、今、一番頭が痛い話なんだ。」
「閣下、これも、何かの運命で御座いますね、閣下は、何時も様に、下手
な事を考えずに正面から話を進められては如何でしょうか。」
「うん、オレも、今、其れを考えてたんだ、本物さんには悪いが、少し待
っててもらうとするか。」
「はい、私も、其れが良いと思いますね、本物さんだってわかると思いま
すよ。」
二人は、昼食を取る事を忘れていた。
暫く歩くと、其処は開墾の現場に着いた。
その現場では昨日同様、偽者は扱き使われている。
身体中には擦り傷が数十箇所もあり、疲労というよりも過労状態なのだ
が、大きな岩が出ると呼ばれ、その岩を運ぶのだが、岩は捨てるのでは無
い、城壁造りに使うのだ。
城壁造りにも入らなければならないが、兵士達は今にも倒れそうな状態な
のだ。
だが、今日は、農場から別の代表が来て、その代表達は城壁造りに入る事
を考えている。
「お~、ご苦労さん、どうだ、大夫進んで要るのか。」
「あっ、将軍。
はい、そうですね、明日くらいから、城壁造りに入りたいと思っているん
です。」
「そうだなぁ~、じゃ~、作業員の分担も決める必要があるなぁ~。」
「はい、今日の作業が終わり次第、この中の隊長さんか、リーダーかわか
りませんが、お話しをしようと思ってるんですが。」
「よし、判ったよ、その時、オレも入るが。」
「はい、将軍に入っていただければ、我々も大変助かりますので。」
「それじゃ~、明日からは、大きな道具も必要になるんだ、其れに、馬車
も。」
「そうですね、この城壁が出来ないと、次には進めませんので。」
「うん、判った、じゃ~、よろしく頼むぜ、オレは、別の人に話しがある
んで。」
と、ロシュエは立ち上がり、本物さんのリーダーの所に行く。
「どうだね、調子は。」
「あっ、之は、将軍様で、何か用事でも。」
「うん、少し話が有るんだ、あの場所で話そうか。」
「はい、判りました。
みんな、少し悪いですが、将軍様と話をしますので、後をよろしく頼みま
す。」
と、本物のリーダーはロシュエの後を着いて行く。
「まぁ~、座ってくれよ。」
ロシュエも司令官も座り。
「実はなぁ~、少し問題が起きたんだ。」
「えっ、将軍様、自分達は何処かに行かされるって話しじゃ~。」
「うん、其れは無いんだ、問題ってのはよあんた達が来る前から決まって
た事があるんだよ、其れはなぁ~。」
「はい、自分達も十分わかっています。
川向こうの人達の事ですね。」
「うん、まぁ~、それも有るんだが、まだ、もっと前から決まってた話な
んだよ~、その話なんだが、今、オレ達が居る農場の子供達だけで運営する
大きなお風呂場を造るって話なんだ。」
「へぇ~、大きなお風呂場をですか。」
「そうなんだ、其れを造るって約束なんだよ~、其れがなっ、突然、あん
た達が来たんで予定が狂ったって話なんだよ。」
「将軍様、オレ達の事でしたら、何も心配ないですよ、本当を言いますと
ね、オレ達の仲間全員がやっと助かって言ってるんですよ、今は、家が無く
たって平気なんです。」
「済まないなぁ~、オレの早合点でよ~、だがよ~、この農場の半分は、
あんた達の物なんだ、それだけは間違い無いんだからよ~。」
「でも、将軍様、あの川向こうの人達に悪いですよ、後から来たオレ達が
半分なんて。」
「えっ、半分じゃ~不足なのかよ。」
「いいえ、そうでは無いんですよ、川向こうの人達の方が人数も多いんで
すよ、オレ達は、何も不満じゃ無いんですよ、それどころか、あの半分の大
きな農場を、オレ達だけで耕すなんて出来ないですよ。」
「じゃ~、あんた達はよ~、どうしたいんだよ。」
「将軍様、半分の半分じゃ駄目でしょうか。」
「えっ、そりゃ~無理だよ、本当の事を言うとなっ、此処から、お城まで
全部を農地にする事になってるんだ、其れに、農地には牧場も作り、放牧す
る事になってるんだ。
確かに、あんた達だけの農場じゃ広いよ、だがよ、其処で作った作物は、
あんた達だけの物じゃ~、無いんだ、オレはなぁ~、この農場からお城まで
を農場にするってのはよ、此処に住む全員の食料だと思ってるんだ。
だがよ、農場全体が同じ作物を作るんじゃ無いんだよ、例えばだよ、今、
開墾を始めた農地の半分は小麦を作り、その小麦は全部に配給するんだ、あ
る農場では、イモ類を作る、で、別の農場では野菜を作ったっていいんだ、
オレは、この農場はあんた達の物だってのはよ、共同生活してるって思って
欲しいんだ、そしてだよ、この農場の中央じゃ~、数千頭の牛が放牧されて
いる、そうすればだよ、幾ら、大きな農場だって思ってもだ、多くの仲間に
食べてもらうには小さいくらいなんだ。」
彼は、頷き。
「えっ、将軍様は、全員の生活を考えておられたんですね、わかりまし
た、オレも、後で、みんなに話をします。」
ロシュエは、今まで、そんな話はしなかった。
彼らにすれば、今まで、耕していた作地の数千倍の農地なのだ、今まで
は、自分達だけが食べられるだけの作物を作っていた、だが、此れからは、
全員の食料を作る事になるのだと、考えて見れば、大変な農作業になるのは
間違いは無い。
「だがよ~、何も、あんた達、人間だけじゃ無いんだよ、牛だってよ~、
馬だってよ~、此処には何千頭もいるんだ、その牛や、馬にも手伝ってもら
うんだから。」
「はい、判りましたが、余りにも大きな話なんで、今は想像も出来ないん
ですが。」
「うん、其れは、何れ判ると思うんだよ、其れでだ、さっきの話なんだ
が、一番先に川向こうの人達の家がいるんだ、次にだよ、子供達との約束で
お風呂場を造り、あんた達の家は、その後になるんだ、申し訳ないなぁ~、
オレがヘマしたんだよ。」
「将軍様、オレ達に不満は有りませんよ、今はね、安心して農作業が出来
る、これだけでも十分なんですから。」
確かに、彼の言う通りなのだ、其れまでの彼らは、あの城の兵隊達が恐怖
の存在で、だが、其れが、今は安心して、夜も安心してゆっくりと眠る事が
出来る、其れは、川向こうの農民達も同じ気持ちだ、だが、人間と言う動物
は、常に上を目指している。
其れは、何も、彼らだけでは無い。
「じゃ~、判ってくれたんだな。」
「はい、将軍様、みんなもわかってくれますから。」
その後、今日も無事に作業が終わり、農民達は農場に戻って行く。
だが、ロシュエは、偽者達の野営地に向かって行く、側には司令官と農場
の代表達も一緒なのだ。
野営地では、既に夕食を積み込んだ馬車が到着し、偽者達が食事をはじめ
ていた。
「やぁ~、食事中に済まんなぁ~、少し聞きたいんだが、君達の責任者っ
て言うか、隊長という人物は。」
ロシュエの眼光は鋭く動いている。
「はい、私ですが。」
「そうか、食事の後で、少し話が有るんだよ。」
「はい、でも、先にお聞きします。」
「いいのか、オレは別に後でもいいんだがよ~。」
「いいえ、私は、今の方が宜しいかと思います。」
「じゃ~、判ったよ、まぁ~座って話そうか。」
と、ロシュエ達も座り。
「この部隊の隊長なんだろう、あんたは。」
「はい、そのとおりです。」
この隊長も相当緊張している様子で。
ロシュエが、何を話すのか、付近に居る兵士達も緊張した顔付きなのだ。
「実はなぁ~、此れから、岩石を積み上げて城壁を造るんだがよ~。」
「えっ、では、自分達が運んだ岩石でですか。」
「そうなんだ、君達の後ろの城壁は、オレ達が造ったんだ。」
「えっ。」
って、近くに居た兵士達の声だ。
「将軍は、こんな大きな城壁をですか。」
「オレが造ったんじゃ~無いんだよ、オレ達の仲間なんだよ、其れでだ、
此れからは、あんた達にその城壁を造ってもらいたいんだよ。」
「将軍、じゃ~、私達に城壁造りに入れと言われるのですか。」
「之は、命令じゃ無いんだよ。」
「はい、勿論、判っております。
でも、何故、この様に高い城壁が必要なんでしょうか。」
やはりか、奴らは、まだ、狼の、いや、此処の狼の恐ろしさを知らないん
だ、と、ロシュエは思った。
「何故かって、其れはなぁ~、此処の狼対策なんだよ。」
「私も、狼は知っておりますが、数頭くらいでしょう。」
この隊長が居た城では狼の恐ろしさもだが、狼が少ないのか。
「いや~、其れが、此処じゃ~違うんだよ、数百頭の大群が数十も有るん
だ。」
「えっ、其れは本当なんですか、でも、昨日も見ていませんが。」
やはり、知らなかった。
「いや~、奴らは、とっくに気付いているんだよ、あんた達の事をね。」
近くに居た兵士達がざわめき出した。
「オレ達の仲間が日中、あんた達を狼から守るために、それに、夜だっ
て、城壁の上からだけど警戒に当たってるんだよ。」
「それでは、私達は、何時、襲われるか知れないと言う事ですね。」
「うん、そのとおりだよ、今は、心配ないんだよ、だがな、個人行動をと
って、この場所から離れると、途端に奴らは集団で襲ってくるんだぜ、特
に、此処の狼達は賢いんだから。」
「それじゃ~、狼の攻撃を防ぐ為に高い城壁なのですか。」
話を聞いて要る兵士達は恐怖に震えだしている。
「そうだ、普通は岩石を削るが、それじゃ~、狼の爪が入り、登ってこれ
るんだ、だがよ、此処じゃ~、全部自然の状態なんだよ、全部が自然だから
積み上げも大変だ、だがよ、それでも、やらなければならないんだよ。」
「将軍、其れが、私達の身を守るって話になるのですね。」
「当たり前だ、何も、城壁が完成したからって、あんた達は外に居ろなん
て、オレは言って無いんだ。
農民達を守る、之が、一番大切なんだよ、オレ達はなぁ~、農民を守る兵
隊なんだよ、農民が作物を作ってくれるから、オレ達も食べる事が出来るん
だ、あんた達の食事だって、全部、中の農民が作ってるんだよ~、その農民
を守る為にオレ達、兵隊はな何時死んでもいいと思って要るんだ。
オレ達の共同墓地には狼の犠牲に成った多くの仲間達が眠っているんだ
よ。」
其れは、ロシュエの作り話である。
この地に着くまで多くの仲間が狼の犠牲になった、だが、少なくとも、こ
の地に着てからは、一人も狼の犠牲にはなっていないのだ。
だが、その話を聞いて要る兵士達の表情は脅えているのだ、昨夜も、狼の
遠吠えのために、殆どの兵士が寝不足の状態になっている事は事実で有る。
「将軍、わかりました。
私達も全力で城壁造りに入ります。」
「そうか、済まないねぇ~、其れじゃ~、早速、明日からなんだがよ、大
きな岩石を持ち上げる事は不可能だ、オレ達は、色々な道具を作ったんで、
明日の朝持ち出して、積み上げ方はオレ達の仲間がよ~く知ってるんだ、彼
らに説明を受けてから積み上げ
作業に入ってくれるか。」
「はい、将軍、承知いたしました。」
「隊長さんよ、済まないねぇ~、食事中によ~、じゃ~、明日から、よろ
しく頼む。」
と、ロシュエ達は農場に戻って行く。
「さすが、将軍だ、話が上手だ。」
「いや~、な~に、本当の話をしただけなんだよ。」
「閣下、ですが、此処に来られてから狼の犠牲には。」
「あれか、あれは、全くの嘘だ、だがよ、そんな嘘の話でも、今の奴らは
信じるてるんだ、夜、狼の遠吠えを聞くとな。」
「私は、今でも恐ろしいですよ。」
「司令官、狼なんて奴らは本当に恐ろしいよ、オレはね、まだ、若い頃な
んだが、狼の顔を見た事が有るんだ、あのとき見た目付きは本当に恐ろしか
ったよ、今でも、時々だが夢の中に出てくるんだ。」
司令官や代表達は頷いている。
「閣下、ですが、この城壁造りは大変な作業ですよ。」
「そんな事、オレだってわかっているんだ、だがよ、今は、奴らにやって
もらうしか、今は、出来ないんだ、なぁ~、司令官、オレだって、城壁が大
事だって事は十分承知して要るんだ。
司令官が言う様に、此れからの城壁造りは、本当に大変だと思って要るん
だよ。
此処から城まで造るんだからよ~、そりゃ~、簡単じゃ無いよ。」
「将軍、ですが、この城壁が完成しますと、農場の内側では狼に脅える事
も無く、安心して農作業が出来ますねぇ~。」
「うん、オレもその様に思って要るんだ、オレ達が着た時よりも楽になる
と思うんだ。
オレ達の時には、何をどうしていいのかわからなかったんだからなぁ
~。」
「私が、参加出来なかったのが非常に残念です。」
「いや~、司令官、こんな城壁なんか無い方が、本当は一番いいんだよ、
司令官も見て判るだろう、この土地は岩石が多いんだ、最初は別の場所に積
み上げてたんだが、あの技師長が色々な物を考案し、其れを作り、使ったん
だ、やはり、人間の力は凄いと思ったよ。」
「閣下、技師長は相当な人物ですね、これだけのものを造られたんです
か、私達は出来上がってから着たんですから、何も苦労はして無いんです
よ。」
だが、司令官は宿舎に戻ってから大変な騒ぎに巻き込まれて行くのを、ま
だ、予想もしなかった。
「司令官、オレ達もそろそろ戻るとするか。」
「閣下、失礼ですが、お昼の食事を忘れておられましたね。」
「あっ、そうか、オレもなっ、何か、腹が減っているんで気になってたん
だ、そうか、じゃ~、司令官も食べて無いと言う事だ、済まんなぁ~、オレ
と付き合うと、ろくな事が無いぞ~。」
と、ロシュエは笑い。
「閣下、その様な事はございません。
実は、私も、今、気付いたところでして、はい。」
「そうか、じゃ~なっ、明日からもよろしく頼みますよ。」
と、ロシュエは司令官と別れ、宿舎に戻るのだ。
司令官も愛する妻の待って要る宿舎に戻るのだが、その宿舎には数人の農
民の代表が司令官が帰ってくるのを待っていた。
一体、何が起きたと言うのろうか、司令官も彼らの話を聞くまでは知る事
も無かったので有る。