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闇の帝国    作者: 大和 武
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 第 41 話。其れも、運命だと言うのか。

話は少し戻り。


「阿波野、領民達との話は如何で有ったのじゃ。」


「殿、やはり、あの人達に入って頂いたのが良かったのだと思います。」


「そうか、其れで今後の事だが。」


「はい、私もご家中の方々と明日にでも浜に参る所存で御座います。」


 阿波野も上田藩の海岸にも洞窟が有ると聞いてはいたが、其れまでは調べる必要も無かった。


 源三郎の野洲では海岸の洞窟で潜水船を完成させ、次なる戦略にも着手しようとしており、上田でも洞

窟の調査を行い、潜水船の建造よりも食料の備蓄倉庫を目的にと考えて要る。


「殿、我々は食料の備蓄を目的としての洞窟を探したいと思うのですが。」


「う~ん、其れは難しいのぉ~、わしも食料は一番大事だとは考えておる。だが、全て海岸の洞窟だけで

良いのか、少し疑問に思うのじゃ。」


「殿、では山に作るので御座いますか。」


「上田の洞窟も調べねばならないと思うのだ、阿波野としては海岸の洞窟が良いのか、其れとも、山に洞

窟を掘り、余は何れの方法が良いか考えねばならぬと思っておるのじゃ。」


「殿は山にも洞窟を作られるお考えなので御座いますか、ですが其れは大変危険を伴うのでは御座いませ

ぬでしょうか。


 私が一番危惧するのは掘り進める事で起きる落盤事故で御座います。


 山賀で起きた落盤事故では運が良かったと考えております。」


「誠、そうじゃのぉ~、確かにあの時は犠牲者も無く、だがのぉ~海岸では年中波に晒されて要るのでは

有るまいか。」


「はい、誠にその通りで御座いますが、海岸の洞窟は岩石だけが残り、山の様に土は御座いませぬ。


 確かに殿が申されておられます山での掘削工事は海岸に比べますと楽な様にも見えますが、海岸の洞窟

は波が作った物なので内部を調べ無ければなりませぬが、私は浜の漁師から話を聴いたところでは、上田

の浜には数十カ所も大小の洞窟が有るのだと。」


「阿波野、数十カ所の洞窟が有ると、そんなにも多く有るのか。」


「はい、ですが洞窟の内部を知って要る者は殆どおりませぬので。」


「阿波野、何故に知らないのだ。」


「はい、これは何れの国にも有る洞窟と同じですが、大昔からの伝説で大蛇が住んで要るとか、恐ろしい

魔物が要るとか、その話は山賀の洞窟でも同じで御座いましたので。」


「うん、その話はわしも聞いた、だとすればじゃ海岸の洞窟には何も無いとでも申すのか。」


「はい、私も大蛇も魔物も住んではいないと、其れに殿も聞いておられると思いますが、高い山の向こう

側の農村での話を。」


「うん、其れは余も聞いた、農村の名主が幕府の眼から逃れる為に大昔の伝説を利用し、洞窟の中に大量

の米俵を隠していたと。」


「私はその話しを聴きました時に思ったので御座います。


 我が上田の海岸の洞窟に関する伝説は若しかしてですが、時の漁師さん達や農民さん達が役人や盗賊達

から略奪を防ぐ為に作った話では無いかと。」


「そうか、やはり、だがなぁ~問題は掘削工事の人手だが、阿波野は考えて要るのか。」


「はい、其れは勿論で御座います。


 一応、城下で募る予定で御座いますが、私はその前に城下の人達には幕府軍と官軍が大規模な戦を行

なって要ると説明が必要だと考えて要るので御座いますが、今までに何度か話を致しておりますので、領

民達の納得するのは早いと思いますので後は待つだけで御座います。」


「よ~し、分かった、後は阿波野に任せる、其れで明日は家臣も多く参るのか。」


「私も一体何人で参れば良いのか分かりませぬが、今回は初めてで御座いますので、一応十名前後と考え

まして、ご家中での人選は終わっております。」


「そうか、其れで漁師達の方は。」


「はい、昨日、網元さんとは話しが終わりまして、腕の良い漁師達の方が参加してくれると確約も頂いて

おりますので。」


「阿波野、だが無理はさせるなよ、若しもの時は戻る勇気も必要なのだから。」


「殿、私も勿論心得ておりますので、この調べを何度か行いますれば、掘削工事の入る事も可能かと考え

ております。」


「よし、阿波野、無理をせずに良い報告を待っておるぞ。」


「はい、承知致しました。」


 そして、明くる日の早朝、阿波野と十数名の家臣は浜へと向かった。


「皆様方、今日の調査は洞窟内を主に調べるのですが、先日もお話しをしたと思いますが、まずは漁師さ

ん達のお話しを聴き、その後漁師さん達の案内で向かいますが、書き物はどなたが。」


「はい、私と加藤殿と二人で行います。」


「そうですか、其れと他の方々は漁師さん達の話しをよ~く注意して聞いて頂きたいのです。


 我々は浜の事もですが、洞窟に入るのは全員が初めてだと思いますので、質問をされる時には相手が漁

師だと言う事を考えず、我々は教えて頂くのだと言う気持ちになって頂きたいのです。」


「阿波野様、洞窟に入るのは全員だと思うのですが、何人かづつに分かれ別々の洞窟に入るので御座いま

すか。」


「私は漁師さん達の話次第だと考えており、数か所を同時に行うのか、其れとも一か所づつを詳しく調べ

る事になるのか分からないのです。」


「阿波野様、松明は二十本程で良かったのでしょうか。」


「はい、今回は其れで十分だと思いますよ。」


 上田のお城から浜までは一里半ほどで、半里も行くと峠に入って行く。


 阿波野はこの峠にも隧道を掘る事を考えていた。


 お城から林が続き、上手く隧道を掘れば、お城の裏側に出ると。


「加藤様、帰りの時にお城の裏側に通じる林と、この峠付近の見取り図を書いて置いて頂きたいので御座います。」


「阿波野様、何かの目的に利用されるのでしょうか。」


「はい、峠の下に隧道を掘り、お城の裏側に出る様に出来ればと考えて要るのです。」


「其れは、やはり浜に幕府軍か官軍が攻めて来た時の為にで御座いますか。」


「はい、我々の連合国は高い山に囲まれておりますので、幕府軍や官軍と言えども簡単には越える事は出

来ませんが、軍艦ならば浜に上陸する事も可能で、官軍兵が上陸でもすれば、我が上田は数日で陥落し、

我々上田の侍は皆殺しにされ、残るは領民達だけとなりますので。」


「阿波野様、その様な事態にでもなれば略奪と暴行が繰り返されますぞ。」


「はい、誠にその通りで、総司令が一番危惧されておられるのが、今、申されました略奪と暴行で一番弱

い立場の女性達は犯され、民家は焼き討ちにされます。


 我々は上田の武士ですが、我々の人数では幕府軍や官軍との戦に入っても、良くて数日で全員が殺され

ますので、其れはどなた様が考えられてもお分かりになると思うので御座いますよ。」


「では、今回、洞窟の調査を行なうと言うのは、我が上田だけの問題では無いのですね。」


「正しくその通りでして、上田もですが菊池から松川までの浜に上陸されたしても領民達が生き残れる方

策を考えなければなりませんが、領民達を守るのが一番大事だと言う事で最初の調査が浜に有る洞窟になるのです。」


 阿波野達が話をしている間に浜に着き、早速、網元の家に入った。


「網元さん。」


「これは、これは阿波野様、お待ち申しておりました、どうぞ汚い所で御座いますが。」


「はい、誠に有難う御座います。」


阿波野と家臣が網元の家に入ると、既に十数人の漁師が待ったいて。


「阿波野様、この浜でも腕のいい漁師達で、其れとこれが私の息子で名を幸一と申します。」


「幸一で御座います、お侍様、オレ達に出来る事が有れば何でも言って下さい。


「はい、有難う御座います。


 では早速ですが、この浜の付近と言いますか、海岸に大きな洞窟が有ると聞いておりますが、その洞窟

の話を伺いたいと思うのですが如何でしょうか。」


「はい、じゃ~お話しをしますので。」


 網元の息子、幸一は上田の海岸に有る大きな洞窟の話をした。


 海岸には大小数十カ所も洞窟が有るが、その内でも大きな洞窟は十カ所ほどで、浜の漁師はその内の一

か所を除き、何れの洞窟も中は大きく奥行も有ると言うので有る。


 だが、この浜でも大昔からの言い伝えで洞窟の中には魔物が住み、下手に奥まで行くと食い殺されると

言うので有る。


 やはり大昔からの伝説を多くの漁師が、其れも特に老齢の漁師は今でも魔物が住んで要ると信じて要る。


「幸一さん、その魔物と言われます生き物ですが、どなたか見られたのでしょうか。」


「お侍様、オレは信じて無いんですが、オレの爺様や村の古老達は今でも大きな魔物が住んで要ると、そ

の魔物が夜になると洞窟から出て魚を食べると言うんですが。」


「ですが、どなたもその魔物を見た事が無いと言われるのですね。」


「はい、そうなんですが、魔物は時々朝洞窟を出て海の中で魚を食べて要ると、其の時に浜の漁師が網を

入れると、舟事海の中に引きずり込まれ漁師も食い殺されると聞いたんです。」


 やはりか、この浜でも同じ様な伝説が、だが、何故その様な伝説が生まれたのだろうか、その洞窟に昔の人達は何かを隠していたのだろうか。


「幸一さん、其れが事実だとすれば死体が無いのが、う~ん。」


 阿波野は独り言を言ったのだが。


「阿波野様、オレの爺様の話では、大昔数人の漁師が魔物の餌食になり、死体も無かったと聞いたんです

が、オレは今でも信じて無いんです。」


「幸一さん、その洞窟ですが、大きいのでしょうか。」


 幸一もだが網元の表情が変わった。


「阿波野様、その洞窟には、わしの知ってるだけですが誰も入った事が無いと聴きましたが。」


「どなたも入られていないのですか。」


「はい、その通りで、洞窟の入り口は狭く、言い伝えですが中は大きく、其れに一体何処まで有るのかも

分からないと聞いています。」


「へぇ~、そんな大きな洞窟が有るのですか、では他の洞窟には入る事は出来るのですか。」


「はい、この浜の漁師達には昔から続く習わしが有りましてね、浜の漁師になるには洞窟の奥まで行く事

が、まぁ~漁師達の肝試しをするんです。」


「では、先程の大きな洞窟に入りましょうかねぇ~、如何ですか、幸一さん。」


「えっ、阿波野様、そんなぁ~、本気で入られるんですか、オレは。」


「はい、私は今回洞窟を調べるのが目的ですからね。」


「う~ん、でもなぁ~。」


 幸一もだが、網元も本心は行かせたくは無いのかも知れない。


「網元さん、若しも宜しければですが、我々を入り口までで宜しいのでね、舟で送って頂けませんでしょうかねぇ~。」


 網元もやはり洞窟の伝説を信じて要るのだろうか、息子の幸一も返事が出来ない。


「お侍様、オレが行きますよ。」


「えっ、お前が行くのか。」


「網元さん、オレも本当は洞窟に行くのは恐ろしいですよ、だけど、オレはお侍様が話しして下さったんです。


 幕府軍や官軍の軍艦がオレ達の浜に上陸すると、上田のお侍様もオレ達を守る為に戦うと思うんだ、だ

けど人数も、其れに武器も無いから簡単に滅ぼされ、残るのはオレ漁師や城下の人達だけだって、其れと

幕府軍や官軍の兵士達は一体何をするのか分からないって、だったらオレはねぇ~ちゃんもだけど、女の

人達はそいつらに犯されて殺されるんだ、だったら、オレはねぇ~ちゃんもだけど、他の人達も助かるん

だったら、オレは魔物に殺されてもその洞窟に行ってもいいと思ったんだ。」


「よ~し、オレも行くよ、だって、まだ嫁さんと一緒になって半年なんですよ、其れに嫁さんのお腹には

オレの子供が要るんだぜ。」


「よ~し、オレも決めたよ、阿波野様、オレも行きますよ、其れとオレは中に入りますからね。」


「幸一さんも皆さんも有難う、でも入り口までで宜しいですよ、後は泳いで行きますので。」


「えっ、そんなの無理ですよ、中は真っ暗ですから無茶苦茶ですよ。」


「幸一さん、我々は松明も持って来ておりますのでね大丈夫ですよ。」


 阿波野は幸一達漁師に頭を下げると。


「お侍様が、オレ達漁師に頭を下げたら、オレは困りますよ。」


「ですが、私は皆さんにご無理をお願いしておりますでね、頭を下げるのは当然だと思っております。」


「えっ、でもねぇ~。」


「まぁ~幸一さん、何も心配される様な事は有りませんよ、若しも私達に何かが有ったとしても、全ての

責任は私に有りますのでね、其れに今回の調査に関しては殿もご存知なのでね。」


 阿波野は漁師達にニッコリとした。


「う~ん。」


「幸一、阿波野様が頭を下げられたんだ、其れにお前達はこの浜でも最高の漁師なんだ、其れは分かって

るんだったら、お受けするんだ、分かったのか幸一。」


「網元さん、オレ達は上田の漁師だ、オレ達にも漁師としての意地が有りますからねぇ~、なぁ~幸一、

阿波野様の顔を潰せないと思うんだ。」


「よ~し、決まった、じゃ~みんなで行くとするか。」


「網元さん、オレ達に任せて下さいよ、まぁ~本当は少しだけど。」


「なんだ、その少しと言うのは、正か今になって怖じ気づいたのか。」


「いゃ~、其れよりもオレは何か分かりませんがね、あの洞窟に住んでるって言う魔物を見たくなったん

ですよ。」


 若い漁師は身震いをしている。


「よ~し、みんなかがり火用の道具を舟先に着け、かがり火を点けて行くぞ。」


「お~。」


 幸一が先頭になり、漁師達は五艘の小舟にかがり火の道具を積み込み洞窟に向かう準備に入った。


「網元さん、申し訳有りませんねぇ~、ご無理をお願いいたしまして。」


「いゃ~阿波野様、わしは浜の若い奴らには参りましたよ、でも本当はわしが一番に行きたいんですがね、駄目で御座いますよね。」


 網元も何だか嬉しそうな顔付きで、幸一達の準備する様子を見守って要る。


 浜では他の漁師達が不安そうな顔付きで見ており、だが幸一達は嬉しそうな顔で薪木を舟に積み込み全

ての準備が終わった。


「阿波野様、準備が終わりましたんで。」


「分かりました、では五艘有りますので、我々は二人づつ乗り込みましょうか。」


 阿波野は、幸一の舟に乗り込み、他の家臣も分かれて乗り込んだ。


「では、幸一さん参りましょうか。」


 浜の若い漁師達が小舟を操り、浜を離れ暫く進むと大きな岩が見えて。


「阿波野様、岩の裏側に洞窟の入り口が有りますが、入り口は狭いので身体をかかがめ下さい。」


 幸一の言う通りで、岩の裏側に入り口が見え、その入り口は潮が引いており身体を屈めると丁度の隙間

なのか入る事が出来、小舟は次々と洞窟に入りかがり火の明るさなのか全体が見える。


「ほ~、思った以上に中は広いですねぇ~。」


「わぁ~阿波野様、オレは中がこんなにも大きいとは知らなかったんですよ。」


「ですが、この洞窟は何かが変ですねぇ~。」


阿波野はかがり火に照らされた洞窟を見て何かが変だと思って要る。


「幸一さん、少し右側に寄って頂けますか。」


 幸一はゆっくりと右側に寄せて行く。


「阿波野様、何か有ったんですか。」


「幸一さん、その右側に有る岸壁と言いますか、その付近を見て何か変だとは思いませんか。」


 幸一は周りを見ても分からない。


「阿波野様、何も有りませんですよ。」


「幸一さん、ですがねぇ~波が岩をこの様に平らに削ると思いますか。」


「えっ、平にって、あっ、本当だ、確かにこの岩は変ですよ。」


「幸一さん、上に上がりますので寄せて下さい。」


 幸一はゆっくりと平らになって要る岩に近付き、阿波野が上陸し、すると。


「幸一さん、確かにこの洞窟には魔物が住んでおりましたよ、其れも二本足のね。」


「えっ、じゃ~人間なんですか。」


「その様ですねぇ~、其れも相当昔の様ですねぇ~。」


 幸一も上がり。


「わぁ~何でこんな所に。」


「ええ、其れが証拠ですよ。」


 阿波野と幸一が見た物とは、一体なんだ。


「ねぇ~、阿波野様、何でこんな所に有るんですか、其れに。」


「う~ん、これは相当昔の物ですねぇ~。」


「でも、何で分かるんですか。」


「まぁ~其れはねぇ~この刀の形ですよ、我々が持っております今の刀とは形が全く違いますから。」


「だったら、この骨は。」


「そうですねぇ~、多分ですよ多分落ち武者では無いでしょうか。」


「阿波野様、落ち武者って、一体何ですか。」


「其れはねぇ~、大昔ですが。」


 阿波野は幸一に詳しく説明すると。


「それだったらこの人達は逃げて来たんですか。」


「ええ、私はその様に思いますよ、其れもかなりの大勢でね。」


「でも何で大勢なんですか、此処には一人しかいないですよ。」


「でもねぇ~幸一さん、これだけの岸壁を削るには一人や二人では到底無理ですよ、其れこそ数十年以上

は掛かりますからねぇ~。」


 阿波野と幸一が話して要ると残りの舟も岸壁に着き、全員が上がって来た。


「皆さんこの洞窟にはねぇ~、二本足の魔物が数人、いや数十人が住んでおりましたよ。」


「えっ、本当ですか。」


 他の者達は松明を持ち。


「ですが、何でこの洞窟には魔物が住んで要ると伝えられたんですか。」


「其れはねぇ~、多分ですが、多分、此処に住んでいた落ち武者が小舟で入って来た漁師達を殺したので

しょうねぇ~。」


「でも、死体は見つからなかったと聞いてますよ。」


「其れならば簡単ですよ、漁師達から奪った小舟に乗せ、着物を脱がせ沖で重りを着けて沈めたのだと考

えられますよ、其れで無ければ話しの辻褄が合わないですからねぇ~。」


「阿波野様、こちらに小舟が有りますよ。」


「やはり有りましたか、では全員で付近を調べて下さい。


 今日は初日ですが、念入りにお願いしますね。」


 阿波野を含めた家臣達も漁師達も全員で内部の調査を開始した、すると。


「阿波野様、此処には余り有りませんねぇ~、其れに何故だか分かりませんが狭いですから。」


 阿波野は入り口近くが狭く、何も無いと言うのが不自然だと思った、しかし。


「お~い、こっちに来てくれよ。」


 大きな声がする方向に向かうと、人間が一人くらい通れるほどの細く削られた道が数軒の長さも有り、其処を抜けると、大量の刀や槍、弓などが放置されて要る所が有った。


 その場所は百畳は有るだろうかと言う広さで。


「う~ん、其れにしても、一体何人分の人骨が有るのでしょうか。」


 其れは大勢の武士と思われる人の骨が有る。


「阿波野様、何でこんなに大勢の人の骨が有るのでしょうか。」


「う~ん、其れは私にも分かりませぬが、其れにしてもやはり何か変ですよ、皆が同じ姿ですから。」


「阿波野様、今思い出しましたが、大昔この地方を何日間も続いた嵐が有り、浜の人達も大勢が死んだと

言い伝えが有るんですが。」


「そうですか、ではその大嵐の為にと言いますか、外にも出れず、この中で餓死したのかも知れないない

ですねぇ~。」


「阿波野様、この場所はどの様に見ましても落ち武者達の居住していたと所だと考えても宜しいかと思い

ますが、其れと此処には釜戸と言いますか、他にも鍋が数個有りますので。」


「では全員で調べる事にしましょうか、出来るだけ詳しくお願いします。」


 その後、阿波野達は隅々まで調べる事になるのだが、百畳近くも有る大きな広場とでも言うのか、生活

空間とでも言えば良いのか、その場所を調べるには日数が掛かり、その後も調べを続けて行く事になった、


 そして。


「皆さん、今日で一応の調べは終わります、本当に有難う御座いました。」


「阿波野様、我々の人数も増やして調べては如何でしょうか、此処で終わりますと何か有った時には困る

のでは御座いませぬか。」


「そうですねぇ~、分かりました、では数日間の休みを取り、人数も増やして調査を再開しましょうか、

私は殿に報告を致しますので。」


「よ~し、次はもっと奥に行きましょう。」


「うん、拙者も参りますよ、お主はどうするのだ。」


「勿論ですよ、私も参りますので。」


「幸一さん、其れに皆さん本当に有難う。」


「阿波野様、オレ達も来ますよ、其れに村の人達も行くって言ってますので。」


「其れは有り難いお話しで、何とお礼を申し上げて良いか分かりません。」


「いゃ~、オレ達も伝説を信じていましたが、これでよ~く分かりましたよ、だって、こんな所に、その

落ち武者って言うんですか住んでたなんて知らなかったんですからねぇ~。」


「幸一さん、また数日後には寄せて頂きますので、宜しくお願い致します。。」


「はい、阿波野様、オレ達に任せて下さい。」


 阿波野は網元にも礼を言って城へと戻って行く。


「阿波野様、今回は大変な収穫だったのですねぇ~。」


「ええ、私も本当は驚いておりましてね、次回の調べでも、何か新たな物が見つかるのではないかと思っ

ておりますよ、其れと、今回の調べに関しては書き物として残して置きたいと思いますので、其れに総司令にもお見せする必要が有りますので、数部の清書をお願いします。」


「はい、承知致しました。」


 帰りは今回行った家臣達も見付けた物を想像しながら話をしている。


「それにしても、あれだけの人骨が有るとは拙者は考えもしなかったなぁ~。」


「うん、そうなんだ、何故だろうか、浜か其れとも他の所に来なかったのだろうか、拙者ならばあの様な

洞窟の中では死にたくは無いがなぁ~。」


「だがなぁ~、我々は、その当時、どの様な戦が行なわれていたのかも全く知らないのですよ、其れに阿

波野様も申されておられますが、あの刀を見れば今我々が持って要る刀とは全く違いますから。」


「ですが余りにも舟が少ないとは思いませぬか、あれだけの人数にては少な過ぎますよ。」


「うん、そうだなぁ~、拙者はもっと多くの落ち武者が居たと思いますよ、その者達だけが何らかの理由

で外に出たのでは無いかと思いますがねぇ~。」


「まぁ~其れにしても余りにも謎が多過ぎると思いますよ。」


「うん、其れは確かに言えますねぇ~。」


 この様な会話がされて要ると上田のお城に着いた。


 阿波野は殿様に報告する為、一人で殿様の部屋に向かい。


「殿、只今、戻りました。」


「お~、阿波野かご苦労であった。」


「はい、誠に有難う御座います。


 私は今回の調べで大変重要な発見を致しましたので、その報告をさせて頂きます。」


「うん、左様か、其れで重要な発見と一体どの様な物なのだ。」


「はい、実は網元の協力で幸一さんと申されます息子さんとそのお仲間の漁師達と伝説の有る大きな洞窟

に入ったので御座います。」


「阿波野、その伝説とはどの様な話しなのだ。」


 阿波野は、その後、殿様に洞窟にまつわる伝説を話すと。


「やはりなぁ~、その様な伝説はわしも聞いておるぞ。」


「何故、殿がご存知なのでしょうか。」


「うん、其れはわしも父上から聴いたのだ、大昔、高い山の向こう側で大きな戦が有り、その時、大勢の

落ち武者が山を越えて来たと、一部の落ち武者はこの地に残り、其れに数十人の落ち武者は海を渡ったと

聞いておる。」


「海を渡ったと、ではその落ち武者は一体何処に行ったのでしょうか。」


「其れはわしにも分からぬが、だが考え方を変えれば海を渡らず、その洞窟に入ったと考えられるのでは

ないのか。」


 一部の落ち武者がこの地に残ったと言う事は、若しかすれば上田の家中の中には落ち武者を先祖に持つ

者も要るのではないか、だが今はその様な事を調べる必要も無く、あえて家臣達に聴く必要も無い。


 仮に海を渡ったと言うが、果たして本当に海を渡って行ったのだろうか、海を渡ったとするならば洞窟

の人骨は一体誰だと言うのだ。


「殿、私は今更人骨に付いて調べる必要も無いと存じております。」


「阿波野、わしもじゃ、今更その者達を調べたところで一体何になると言うのだ。」


「殿、私も同じで御座いまして、其れで、数日後には今一度調べに参りたく考えておりまして、その時に

は人数も増やし、更に奥まで調べに入りたく考えております。」


「よし分かった、だが次は大変だぞ、多くの人骨が発見されたとなれば奥には一体何が有るのかも分から

ぬから、皆には無理をさせる事の無い様にするのだ、良いな。」


「はい、殿、私も十分に注意致します。」


 そして、数日後と言うのが、松川の若殿、竹之進と若い家臣が洞窟の中を調べる日と重なった。


「なぁ~殿様、本当に行くのか。」


「技師長、私は領民の為には何としても洞窟の中を調べ、何人の人達が生き残れるのか、其れを知りたい

のです。」


「う~ん、だけどオレは心配なんだ、だって浜の人がこの洞窟には魔物が住んでるって言ってるんだから

なぁ~。」


「技師長、私はねぇ~迷信だと思っておりますから。」


「若殿様、良い物が御座いました。」


「親方、良い物って、何でしょうか。」


「若殿様、この樽で御座います。」


「そうか、樽は水が漏れない様に作られていましたねぇ~、これならばもう大丈夫ですよ、其れに樽なら

ば色々な物を入れる事も出来ますのでねぇ~。」


 親方も樽ならば物も入り、樽を持てば泳ぐ事も出来ると考えたので有る。


 若殿、竹之進はお城に有る樽に松明や蠟燭、其れに着物を詰め荷車に積み込み。


「父上、では行って参ります。」


「竹之進、わしは大丈夫だと思うが、何かの時に役立つと思うので小刀を持って行くのだ。」


 大殿様も心配は無いとは言ったが、げんたは魔物が本当に住んで要ると信じて要る。


 若殿、竹之進と若い家臣達は荷車を引き浜へと向かった。


 松川の浜では若い漁師達が数艘の小舟を用意し何時でも行く準備は整い、家臣の到着を待って要る。


 松川のお城を出た竹之進と若い家臣一行はやがて浜に着いた。


 浜の漁師達は驚いた、正か若殿が魔物が住んで要る洞窟行くとは考えもしなかったので有る。


「若殿様、正かとは思いますが、魔物が住んで要る洞窟に行かれるのでは有りませんか。」


「網元さん、私はねぇ~何も心配はしておりませんよ、大昔からの伝説を信じてはおりませんよ。」


 竹之進はニヤリとし、同行した家臣達も頷いて要る。


「では皆さん、お願いします。」


 浜には、若殿が洞窟に入ると知った家臣達も駆け付け心配そうな顔で見送った。


「なぁ~親方、本当に大丈夫なのか。」


「げんた、大殿様が心配するなって言われてるんだ、其れにあの若殿はわしらが止めても行くよ。


 まぁ~半時か一時半もすれば全員が戻って来るんだから、此処で待てばいいんだ。


 其れにだげんた、山賀の若様もだけど、お二人は進んで領民の為だと言って先頭になられてるんだ、別にわしらが行って下さいとはお願いして無いんだから後の事は考えるなよ。」


「うん、分かったよ、だけど心配だなぁ~。」


 竹之進と若い家臣を乗せた小舟は目的の洞窟へと向かった。


 その洞窟は潮が引くと少しの隙間で出き、その隙間から入れるので有る。


 竹之進が持つ樽の蓋には数本づつの太くて長い蠟燭が着けられ周りは風除けされ、洞窟に入る直前に火

を点ける事になって要る。


「さぁ~皆さん、用意は宜しいですか。」


 其れに今日は不思議な事に無風で各自の蠟燭に火が点けら。


 若殿竹之進が先頭で海へ静かに入った。


「さぁ~皆さん、参りましょうかねぇ~。」


 竹之進が洞窟に入って行くと、家臣達も次々と入って行き、漁師達は全員が洞窟に入った事を確認し浜

へと戻った。


「お~、これは何と大きな洞窟でしょうか。」


「若殿、上に上がる事が出来ますが。」


「では、順番に上がりますよ。」


 竹之進が上がり、樽も上げ岩の上に置き、家臣達も順番に上がって行く。


「皆さん、ゆっくりと上がって下さいね。」


 竹之進は樽の蓋を開け中から草履と着物を取り出し着た。


 家臣達も同じで、別の樽からは松明を取り出し火を点けると途端に付近が明るくなった。


「思った以上に大きな洞窟ですねぇ~。」


「若殿、全員が準備を終わりました。」


「分かりました、ではゆっくりと進みましょうか。」


 洞窟は思った以上に高さも有り、歩くにも十分な広さが有る。


「若殿、この洞窟は一体何処まで続いて要るのでしょうか。」


「まぁ~私も分かりませんが、其れにしても不思議な洞窟だとは思いませんか。」


「はい、拙者も先程から思っておりましたが、洞窟は普通は波が削ったので、岩の肌がごつごつとしてい

るのですが、其れにしても何故でしょうか、この洞窟は歩くのも例え暗くなったとしましても普通に歩け

る様な気がするのですが。」


「若殿、この洞窟ですが、私は若しや人間が手を加えたのではないかと思われるのですが。」


「其れは考えられますねぇ~。」


 竹之進が入った洞窟は、上田の阿波野が入った同じ洞窟で、洞窟内の岩が人間の手で削られたのではな

いかと思われ、其れと言うのも歩きやすいと言うので有る。


 竹之進は半時も歩いただろうか、其れでもまだ歩く事が出来ると。


「う~ん、どうしましょうかねぇ~、このまま進みましょうか。」


「若殿、私も先に進むのが宜しいかと思います。」


「若殿、私も同感で御座います。


 今は何も有りませんが、この岩は人間が削ったと考えれば、この先には何か有ると思うので御座いま

す。」


「分かりました、ではこの間々進ますので松明を交換して下さい。」


「なぁ~親方、あれからもう一時、いや一時半は過ぎてると思うんだけど、一体どうなったんだ。」


「其れはわしも分かってるんだが、漁師さん、洞窟内の海の中に一時以上も入って大丈夫なんですか。」


「いゃ~、其れはオレ達にも分からないですよ、其れにオレ達も中に入った事も無いので、中がどうなっ

てるかも知らないんです。」


「あっ、大殿様が来られましたよ。」


 松川の大殿様が斉藤と共に浜にやって来た。


「皆の者、如何致したのじゃ。」


「あっ、大殿様。」


「げんた、何を心配そうな顔をしている。」


「大殿様、だってもう一時以上も入ったままで、オレはもう心配で、心配で。」


「何も心配するな、竹之進も一緒に行った家臣達の全員が泳ぎには自信を持っておる、まぁ~何か有れば

誰か一人が戻って来る、誰も戻らぬと言う事は皆が無事だと言う事なのだ。」


 その頃、同じ様に上田の浜を出発した阿波野達も洞窟内をゆっくりと進んで要る。


「阿波野様、この付近ですが、今のところは何も御座いませが。」


「ですがねぇ~、この付近も同じ様に岩が削られておりますので、何れは先程と同じ大きさの広い所に出

るやも知れませんからねぇ~、まぁ~ゆっくりと調べる事にしましょうか。」


「ですが、この洞窟は何処まで続いて要るのでしょうか。」


「まぁ~まぁ~余り深刻に考えずに、何れは何処かで行き止まりになると思いますのでね、其れまではこ

の間々進む事にしましょうか。」


 上田の阿波野も松川の竹之進もお互いが同じ洞窟内を進んで要るとは知らずにいる。


「あの鐘は昼九つの鐘だろう、其れにしても一体何時になれば若殿は戻って来るんだ。」


「げんた、何もするで無いぞ。」


「だって、オレが余計な事を言ったばかりに若殿が。」


「げんた、松川の武士は自らの行動には自らが責任を取ると決まっておる、げんたは松川の領民の為を思って申したのじゃ、其れを竹之進が確かめる為に参ったのじゃ、だから何が起きたとしてもその責任は竹之進に有る。


 其れが松川を治める者の責任と言う事なのだ。」


「なぁ~げんた、大殿様もあの様に言われてるんだ、其れに若殿だって領民の為にと言われて行かれたんだ、仮にだ、源三郎様でも同じ様に行かれたと、わしは思うんだ。」


「うん、だけどあれからもう半日が経ってるんだぜ、だからオレは余計に心配なんだ。」


「げんた、其れはみんなも分かってるんだ、だけど今此処では何も出来ないんだ、まぁ~その内に何か連

絡が有ると思うんだ、げんたも其れまでは辛抱するんだ。」


「うん、分かったよ。」


 大殿様もげんたの気持ちは分かって要る。


 仮に他の者が行ったとしても結果は同じで有ると。


「阿波野様、前の方から何やら灯りらしきものが見えるのですが、正か。」


「そうですねぇ~、その様に言われれば確かに灯りが見える様な気もしますが。」


 阿波野が見た灯りは、竹之進達が持つ松明の灯りで有る。


「若殿、あれは灯りでは御座いませぬか。」


「う~ん、その様ですねぇ~、皆さんも用心して下さいね。」


 竹之進は、正かこの洞窟に今も人が住んで要るとは思っておらずに、お互いが松明の灯りを確認する為

に今までとは歩く速さも変わり、更にゆっくりと前だけを注意しながら進んで行く。


 灯りが次第に近付くが、其れも注意しながら進む為にお互いが合流するまで半時以上も掛かった。


「阿波野様、灯りの中に侍では無いかと思える着物姿が見える様にも思えるのですが。」


「若殿、どうやら、向こう側には侍が要るのでは御座いませぬか。」


「お~い、貴殿達は何れのご家中なので御座いましょうか。」


「我々は松川の若殿様と家臣の者だが、そちらは。」


「えっ、松川の若殿様ですか、私は上田の阿波野で御座います。」


「えっ、何ですと、上田の阿波野様ですと。」


「若殿様、一体如何なされたので御座いますか、この様な洞窟に。」


「いゃ~其れよりも、阿波野様こそ如何なされたのですか。」


 竹之進も阿波野も、そして、お互いの家臣達も其れは大変な驚き様で、お互いの浜に有る洞窟が繋がっ


ていたとは、正か、正かの大発見で有る。


「若殿様、何故この洞窟に入られたので御座いますか。」


「其れがねぇ~、技師長が、あっ大変だ。」


「若殿、如何なされました。」


「其れがねぇ~、私は半時もすれば戻りますと言いましたので。」


「若殿様、其れは大変で御座います。


 では、この間々上田に参られまして、馬で知らされては如何でしょうか。」


「阿波野様、有難う御座います、では誰か上田に参り事情をお話しして。」


「若殿様、私の方からも一人行かせますので、其れで宜しいでしょうか。」


「はい、承知致しました。


 では、宜しくお願い致します。」


 さぁ~大変な事になった、竹之進は浜でげんたが待って要ると思うのだ、其れは当然で、正かこの様な

展開になるとは一体誰が予想したで有ろうか、さしもの竹之進も大慌てで有る。


 松川と上田の家臣が一人づつが上田のお城へと大急ぎで戻って行く。


「若殿様、さぁ~ゆっくりと歩きましょう、この先も同じ様に細いですが上田の入り口まで続いており、

その手前には人骨が数十人分も有るのも発見致しておりますので。」


「えっ、では松川と上田に伝わる魔物が住んで要る洞窟と言う伝説は。」


「はい、あれは。」


 その後、竹之進と阿波野は話を続けながら上田の入り口へと向かうので有る。


「う~ん、其れにしても遅すぎるではないのか。」


 さすがに松川の大殿様も少し心配になり出した。


「やっぱりだ、オレが悪いんだ、オレが若殿様に余計な事を言ったから、若殿様は洞窟の魔物の餌食に

なったんだ、オレって本当に大バカだ。」


 げんたは涙を流しながら自分を責めた。


「の~げんた、その様な事は無い、これも運命だと言う事なのだ。」


「大殿様、そんな運命なんてあっていいのか、オレは絶対に運命なんて信じないぜ、ちくしょう。」


 げんたは泣きながらも運命には逆らう事は出来ないと感じている。


「なぁ~げんた、まだ何も分かって無いんだ、だからもう少し待って見ようや。」


 親方もげんたが独りで背負っていると感じている。


「なぁ~げんた、若殿様は強いお人だ、だから絶対に生きているからなっ。」


「銀次さん、だけど余りにも遅過ぎるって、大殿様も半時で戻って来るって言ってたんだぜ、其れなのに、オレはもう。」


「げんた、何もお前が悪いんじゃないんだ、其れに今も大殿様が言われたんだ、これも運命なんだから

なっ。」


「銀次さん、嫌だよ、オレは絶対に運命なんて信じ無いからな。」


 今のげんたは限界に来て要ると、其れは今まで我慢していたものが一気に溢れ出たので有る。


「オレ、行ってくるよ。」


「何処に行くのだ。」


「大殿様、そんなの決まってるよ、洞窟にだ。」


「げんた、馬鹿な事をするで無い、げんた、お主に若しも事が有れば、この連合国は一体どの様な事にな

ると思っておるのじゃ、竹之進は松川の若殿に間違いは無い、だがのぉ~、げんたは連合国の宝物なの

じゃぞ、げんたに若しもの事が有れば、これから先一体誰が技師長と言う大役を熟せると思うのだ、わし

はのぉ~、例え竹之進が死んだとしてもじゃ、げんたと言う技師長を洞窟に行かせる訳に行かぬ。」


「だって、若殿様の命が危ないかも知れないんだぜ。」


「連合国の技師長と松川の竹之進と一体どちらが大事なのだ、わしものぉ~げんた技師長の気持ちは嬉し

い、だがどの様な理由と付けてでも洞窟に行く事だけは絶対に許さぬ、縄で括り付けてでも行かせぬぞ」


「オレ、大殿様っ、わぁ~。」


 げんたは限界を越し、一気に大声を出し泣き出した。


「いいのだ、げんた、誰も何も言わぬぞ思い切り泣くのじゃ、わしが許す。」


 大殿様はげんたを抱きしめながら涙を流して要る。


 其れと言うのも、大殿様もげんたの気持ちを知って要るからで有る。


「皆の者よ~く聞くのじゃ、先程からの話を聴いて要ると思う。


 竹之進と家臣が洞窟に入り、今だ誰も戻って来ぬ、だが若しもじゃ、竹之進達に不測の事態が起きたと

しても今の話しは一切他言無用とする、若しもじゃ他言する事が有ればじゃ、このわしが成敗する、其れ

だけは断言して置くので皆もよ~く考えるのじゃぞ、分かったのか。」


 大殿様はげんたを庇った。


 其れは、げんたに責任を被せると言うのは余りにも理不尽だと考えたので有る。


 其れから暫くの沈黙が続き、浜の漁師達も親方達大工も銀次達、其れに大殿様や家臣達は何も話さず静

かにと言って良いのか、其れでも洞窟の方を見て要る。


 若殿竹之進が洞窟に入ってから半日、いや、後、二時もすれば陽は陰り出すと言う頃。


「大殿様、どなたか分かりませぬが馬を飛ばしてこちらの方に向かって来ます。」


「うっ、何が有ったのじゃ、若しや。」


「お~い、みんな。」


 馬上の侍が大声を上げて要る。


「大殿様、あれは、若しや。」


「えっ、一体、如何したと言うのだ。」


 二頭の馬には松川と上田の家臣が乗っていた。」


「大殿様。」


「一体どうしたと申すのじゃ、お主は。」


「はい、大殿様に申し上げます。


 若殿様と一緒に洞窟物語入った全員がご無事で、先程上田の浜に着かれました。」


 松川の家臣は息を切らせては要るが。


「一体如何したと申すのじゃ、わしには意味は全く分からぬ、詳しく説明を致せ。」


「はい、大殿様、実は。」


 松川の家臣の家臣は、若殿、竹之進と家臣数人が洞窟に入ってからの事を話すと。


「何じゃと、今何と申した、あの洞窟は上田の浜に通じて要ると申すのか。」


「えっ、本当なのか、じゃ~若殿様は生きているのか。」


 げんたもだが、上田の浜にいた大殿様も親方達も全く信じれないと言う表情で有る。


「大殿様、技師長、全て誠で御座います。


 我々も全く信じる事が出来ないので御座いますが、上田藩の阿波野様と申されますお方と洞窟内で、其

れも突然で御座いましたが、間違いは御座いませぬ。」


「大殿様、親方、オレはもう。」


 げんたの眼から今度は嬉し涙が溢れ要る。


「良かったなぁ~、げんた。」


「うん、親方、みんな生きてるって、オレは嬉しいよ、其れにオレは運命なんて信じ無いぜ。」


「お~いみんな、若殿様は無事だって、今知らせが有ったぞ。」


「え~、本当か其れは良かったなぁ~、うん良かった、本当に良かったよ。」


「じゃ~洞窟に住んで要る魔物って、一体何なんだ。」


「皆さん聞いて下さいね、あの洞窟には魔物は住んではおりませんので。」


「お侍様、だったら一体何が住んでいたんですか。」


「そうじゃ、わしも伝説は知っておるぞ、洞窟には魔物が住んで要るのだと。」


「はい、其れが洞窟内には数十人もの人間の骨が有りまして。」


「お侍様、やっぱりあの洞窟には魔物が住んでるんだ、其れで人間を食べていたんだ、だから人間の骨が

有るんだ、そうでしょう。」


 やはり、漁師達は伝説を信じて要る。


「いゃ~其れが全然違うんですよ、あの洞窟に住んでいたのはね昔の侍で、若殿は落ち武者と申されてお

られ、昔の戦に負けた武士達が敵に捕まらない様にと色々な所に逃げたんですが、その内の数十人か数百

人か分かりませんがあの洞窟に逃げ込んだと言う話しでして、人間の骨の他にも、昔の刀や槍、其れに弓

なども有りましたので間違いは有りません。」


「よ~し、皆の者、先程、わしが申した話は無かった事に致す。


 其れよりもだ、あの洞窟には魔物は住んではいなかったと話しても良いぞ。」


「大殿様、だったらこの浜に有る他の洞窟にも魔物は住んでいないって言う事なんですか。」


「うん、正しくその通りじゃ、だがのぉ~洞窟の魔物よりも恐ろしい者達がおるのじゃ。」


「大殿様、洞窟の魔物よりも恐ろしいって、其れは山の狼ですか。」


「皆の者、よ~く聞くのだ、その恐ろしい者達とはなぁ~、あの高い山の向こう側では幕府軍と官軍が大

きな戦を行なって要る。


 確かに今は何もないが、我々連合国には高い山の向こう側からは越えては来ないと、だが今幕府軍も官

軍も軍艦を作っており、その軍艦がこの浜に多くの兵隊を上陸させると、この浜もだが、我々は皆が思う

よりも実に簡単に負け、残るのは浜の人達を含め、力の弱い領民だけになる。」


「大殿様、何で松川藩が簡単に負けるんですか、お城のお侍様は。」


「うん、其れがじゃ、官軍には連発銃と言う異国の新式の鉄砲を持っており、我々が持つ火縄銃ではとて

も勝つ事は出来ぬ。


 竹之進と家臣が何故洞窟に入ったかと申すとじゃ、浜の人達や農村の人達も含めて領民だけでも助かっ

て欲しいと、其れは此処におるげんた、いや、連合国の宝とも言うべき技師長が、う~ん、何と説明して

良いのか分からぬが、技師長が考えた物で領民を助ける事が出来ると言う事なのじゃ。」


 大殿様は今を逃す事は無いと、高い山の向こう側では幕府軍と官軍が大規模な戦を行なって要ると話し、松川もだが連合国の領民の為に何をすれば良いのかを話すので有る。


 だが其れよりも、浜の人達は何故げんたと言う子供が技師長と呼ばれるのかが分からない。


「あの~大殿様、今、げんたって言われましたが、誰が見てもまだ子供ですよ、その子供が何で技師長っ

て呼ばれるんですか。」


「よ~し、では今から説明を致すからよ~く聞くのじゃぞ。」


 大殿様は、この後、浜の人達に何故げんたが技師長と呼ばれて要るのかを詳しく説明したが。


「えっ、大殿様、そんな馬鹿な船が海の中に潜るって、オレ達は今まで聞いた事が無いですよ。」


 浜の人達が理解するのは不可能で、其れは当たり前の事だ、漁師達は舟は海の上を進む物だと、其れが

当然で、少しの知識を持って要る侍達でも最初は全く理解出来ずにおり、其れを理解させる様に話さなければならないので有る。


「よし、分かった、斉藤、説明を致せ。」


「はい、承知致しました。


 では私から話をさせて頂きますが、今、大殿様が申されましたが、全て本当の話でして、私も、若殿も

この目でしっかりは見ておりますので間違いは有りませんよ。」


 斉藤はこの後も詳しく優しく説明すると。


「じゃ~若殿様はオレ達の為にって、あの恐ろしい洞窟に入られたんですか。」


「はい、正しくその通りですよ、技師長はね何かの考えが有り、洞窟を調べて欲しいと若殿様に申され

たのでしてね、若殿も皆さんを助ける事が出来るので有れば、ご自身の命は惜しくはないと申されたので

すよ。」


「お侍様、じゃ~さっきの官軍って、そんなに恐ろしいんですか。」


「はい、その通りでしてね、この浜にはおられませんが、農村には高い山の向こう側から、我々の連合国

に大勢の農民さんが避難されておりますよ、その農民さん達は幕府軍と官軍が大きな戦を行なって要るの

を知っておられましてね、特に官軍兵は相手が少しでも反抗すれば容赦無く皆殺しにすると、其れにですが、私達侍が死ねば残るは皆さんだけですのでね、官軍の兵士達は女性達は犯し、子供でも平気で殺すと言うのです。


 我々連合国では、野洲の源三郎様と申されます総司令官を中心に皆さんだけでも生き残れる様にと色々

な事を考えては要るのですが、その中でも技師長が考え造られた潜水船が必要だと考えて要るのです。」


「じゃ~技師長はオレ達の為に、う~ん、何って言っていいのか分からないんだ。」


「皆の者、今日は一応これで終わりと致す、後日改めて竹之進と家臣が説明に参る、其の時にはどの様な

事でも良いから聴くのじゃ。」


 もう辺りは薄暗くなり。


「皆さん、本日は誠に申し訳御座いませんでした。


 先程も聞かれた通りで、若殿はご無事で御座いましので、若殿には日を改めて来られると思いますので、其の時にでも、では大殿様。」


「うん、分かった、皆の者、宜しく頼むぞ、わしは一度城に戻るのでなぁ~。」


 大殿様と家臣達、其れにげんたや親方達も松川のお城へと戻って行く。


「若殿様、今日は上田にお泊り下さいませ、我が殿もお喜びされると思いますので。」


「阿波野様、有難う御座います、ではお世話にならせて頂きます。」


「誰か大至急城に戻り、松川の若殿様が来られましたと、殿にもご報告をお願い致します。」


「阿波野様、では拙者が急ぎ参りますので。」


「そうですか、では宜しくお願いします。」


 家臣は大急ぎで上田のお城へと向かった。


「阿波野様、其れにしても私は大変驚きました。


 正か松川の浜から洞窟に入り、其れが上田藩の浜に通じて要るとは思いもしておりませんでした。」」


「若殿、私もで御座います。


 洞窟に入り、進むうち、前から灯りが見えました時には、落武者の亡霊かと一瞬思い、我々全員が身構

えた程で御座いました。」


「其れは私達も同様で、松川の漁師達は松川の洞窟には魔物が住んで要ると大昔からの伝説が有ると、

まぁ~その話を聴いておりましたが、正かその魔物が阿波野様達とは思いも致しませんでしたよ。」


「若殿、私は魔物なので御座いますよ。」


 若殿、竹之進と阿波野が大笑いするが、同じ様には笑えない者達も要る。


 やはり漁師達は何かに怯えているのだろうか。


「若殿、其れよりも一番驚いておりますのは漁師達で、漁師達は今でも伝説を信じて要ると思います。」


「阿波野様、まぁ~何はともあれ良かったと思います。


 其れで話しは変わるのですが中の人骨ですが。」


「若殿、後日我々は法要を行ない、落武者達の霊を弔い、我々に危害が及ばぬ様に出来ればと考えており

ます。」


「そうですねぇ~、其れだけでも落武者達も成仏出来、安心して家族や仲間の居られる天国へ行けると思いますねぇ~。」


「若殿、私は上田と松川が洞窟で繋がって要るのは大変幸運だと考えておるので御座いますが、如何で御

座いましょうか。」


「はい、勿論、私もその様に思います。


 技師長は洞窟は領民達の避難場所と考えて要る様ですが、ですが其れは以前の話しでして、私は洞窟の

新たな活用方法をも考えられると思うのですがねぇ~。」


 松川と上田の家臣もお互いが話しをしているが、やはり出会うまでが大変な恐怖で有ったと、その様な

話を続けるうちに上田のお城に着いた。


「さぁ~、若殿、皆様方もご一緒にどうぞ。」


 竹之進と家臣は阿波野の案内で上田の殿様が待つ部屋へと入った。


「お~、これは若殿、お久し振りで御座いますなぁ~、其れよりもこの度は大変で御座いましたが、其れ

よりも皆様方がご無事で何よりで御座います。」


「上田様、大変なご迷惑をお掛け致し、誠に申し訳御座いませぬ。」


 竹之進と家臣は改めて、上田の殿様に頭を下げた。


「竹之進殿、其れよりも皆様方は海に入られたのでは御座いませぬか。」


「はい、松川の洞窟には舟では参られませんので一度全員で海に入り、途中からは上に上がりました。」


「そうですか、では先に湯殿へ、お着物も用意致しますので、阿波野、竹之進殿と家臣達を湯殿へご案内

して下さい。」


「はい、承知致しました。


 若殿、こちらで御座います。」


「上田様、誠に申し訳御座いませぬ、ではお先に頂戴致します。」


 竹之進と家臣達は阿波野の案内で湯殿に向かった。


「誰かおらぬか、松川の若殿と家臣達の皆様方のお食事の用意を、其れとお酒もなっ。」


 上田の腰元達の動きが何故だか早い、其れは突然の如く、松川の若殿が上田のお城に、いや、其れより

も、竹之進は若く、そして、美男子で、其れと言うのも上田の家臣が以前から話しており、腰元達の間では竹之進と言う松川の若殿の噂話で持ち切りで、其れが突然の如く現れ、さぁ~、一体誰が若殿、竹之進

にお酒を進める役を得る事が出来るのか、早くも、腰元達の間で話され、数人の腰元は湯殿の外で控えて

要る。


「若殿、此処の湯殿は大きいのですが。」


「阿波野様、私だけ一人ではもったいないので全員で入らせて頂きます。」


「えっ、若殿、ですが。」


「私は別に気にはしておりませんよ、其れよりも全員で入れば上田の皆様方にもご迷惑をお掛けする事に

はなりませんのでね。」


 何と竹之進は家臣と共の入ると、今までは考えられない。


 一国の殿様と家臣が同じ湯殿に入るとは、さすがの阿波野も少し驚いた。


 だが其れよりも、腰元達は一体どの人物が若殿、竹之進なのかが分からない。


 其れもそのはずで、竹之進達が着ている着物は普通の侍が着る着物で全員が同じ着物なのだ。


「阿波野様、どなた様がお殿様なので御座いますか。」


「そうか、貴女方は松川の若殿様を見た事が無かったのですねぇ~。」


「はい、私達はお殿様に失礼が有ってはと思いましたので。」


「そうですか、ですが松川の若殿はその様に心配されるお方では有りませんよ、私とお話しをされておら

れたお方が松川の若殿様で、他の方々はご家中ですから。」


「えっ、ですが、私はお殿様の言葉使いをされるお方だと思っておりましたので。」


「松川の御兄弟は何時もあの様に誰とでも同じ言葉使いですから、若殿を知らないお人は、まぁ~必ず一

度は間違われると思いますよ。」


「阿波野様、そう言えば、この頃、我が殿様も言葉使いが変わった様にと私は思うのですが。」


「其れはねぇ~、我が連合国の総司令の影響だと思いますよ、総司令と言われるお方は、相手が農民さん

や漁師さん達に対しても侍の言葉は使われませんのでね。」 


「其れでなので御座いますか、阿波野様も。」


「はい、私もで、其れに野洲の殿様はね、今では殿様が着られる様な着物では無く、我々と同じ様な着物を召されておられますよ。」


「えっ、其れは誠で御座いますか。」


 腰元達は何とも言えない表情をしているが、其の時、湯殿の扉が開き。


「あっ。」


 腰元達が声を上げた、其れは竹之進の指示で、松川の家臣が殿様の新しい着物姿で現れたので有る。


「お殿様、えっ、何故にお着物が。」


「あ~、私はね普段から殿様の着物は着てはおりませんのでね。」


 傍では殿様の着物を着せられた家臣はどうしてよいのかも分から無いと言う顔をしている。


「お殿様、御着替え。」


「いいえ、私は別に宜しいですよ、まぁ~其れよりもね、誰でも一度は着て見たいと思う殿様の着物です

が、私はねぇ~この着物が大の苦手でしてね、まぁ~其れならばと家臣にも一度は体験させて見ようと、

この着物がどれ程にも窮屈か分かると思ったのですよ。」


「若殿、もうお許しを願います。」


 殿様の着物を着せられた家臣も苦笑いをし、腰元達はクスクスと笑い、竹之進と阿波野は大笑いだ。


「お殿様は何時でもこの様な事をなされるので御座いますか。」


「はい、私は特に同年代の人達とは何時も遊んでおりますので、はい、はい、分かりましたよ、阿波野様、申し訳御座いませぬが私達と同じ着物をお願い出来ないでしょうか。」


「私が直ぐに持って参りますので。」


 腰元は笑いを堪え着物を取りに向かった。


「貴方は着替えを済ませてから来て下さいね。」


「はい、承知致しました、ふ~、やっと脱ぐ事が出来ます。


 若殿、私は二度とこの様なお着物は着たくは御座いませぬ。」


 家臣はそう言って部屋に入り、大急ぎで殿様の着物を脱ぐので有る。


 阿波野は竹之進と言う若殿は実に行動派の殿様だと、其れは浜から戻る途中の話しの中身で分かったの

で有る。


「殿、若殿が湯殿から上がられました。」


「お~そうか、阿波野も同席するのですよ。」


 其の時、腰元達が夕餉を運んで来た。


「さぁ~竹之進殿、一献。」


「はい、有難う御座います、そうだよ~く考えて見ると、私達は今日は朝を頂いただけでしたねぇ~、皆

さん、申し訳有りませんでした。」


 竹之進は家臣に頭を下げた。


「そうでしたか、其れは大変でしたねぇ~、さぁ~さぁ~皆様方にもお注して下さいね。」


 上田の腰元達は何時もとは違うニコニコ顔で家臣達にお酒を進めるので有る。


「皆様方、本日は大変ご苦労様でした。」


 皆が盃を上げ飲み干した。


「さぁ~さぁ~飲んで下さいよ、今宵は此処でゆるりとされ、明日、戻られても宜しいかと、私から先程、松川の大殿様には早馬を出しましたのでね、何も心配される事は御座いませんので。」


「上田様、誠に申し訳御座いませぬ。


 では皆様方、上田様のご厚意ですのでね、今日は飲んで食べて下さいよ。」


「上田のお殿様、誠に有難う御座います。」


 松川の家臣達は上田の殿様に頭を下げた。


「お注ぎ致します。」


 傍では腰元達が家臣達の盃にお酒を注ぎ、家臣達もゆっくりと飲んで要る。


「其れで阿波野、何故竹之進殿と分かったのですか。」


「殿、其れが私達も最初は落武者達の亡霊だと思ったので御座います。」


「何、松川の竹之進殿を落武者達の亡霊だと、何と失礼な。」


 竹之進は笑いながら。


「上田様、私は何も気に致しておりません。


 実は私達もあの灯りは落武者達の亡霊が来たのだと思ったので御座います。」


「何と言う事だ、阿波野は竹之進殿を落武者達の亡霊だと思い、竹之進殿も阿波野達を亡霊だと思われた

のですか、う~ん、これは大変愉快ですなぁ~、誠愉快な話しですよ。」


 と、上田の殿様は腹を抱えて大笑い。


「上田様、ですが、あの時はどちらも同じ様に思ったのも当然で御座いますよ、其れと言うのも、私は松

川の浜であの洞窟には魔物が住んで要ると聴かされ、阿波野様も上田の浜で同じ様な伝説を聴かされてお

りましたので、まぁ~お互いが同じ様に思うのは仕方が無い事では御座いませぬでしょうか。」


「これは失礼致しました。


 確かに竹之進殿が申されます様に、仮に私が参りましても同じでしょうなぁ~。」


「はい、ですが今は結果的には、私と阿波野様が出会ったのですが、其れでもお互いの浜の人達からすれ

ば洞窟には魔物が住んで要ると言う伝説はあの洞窟には近付けない様にする為に落武者が考えたのではな

いでしょうか。」


「う~ん、そうですねぇ~、やはりその様に考えねばなりません。


 ですが、技師長は他に何かを考えて要るのでは有りませんか。」


「私はあの洞窟に食料を備蓄するだけの目的では無いと考えたのですが。」


「では、他に何かに使う目的でも有るのでしょうか。」


「はい、これはあくまでも私の推測なのですが、あの洞窟に潜水船の基地とでも申しましょうか、今は野

洲の洞窟だけが潜水船の係留地だと思うのですが、他の洞窟にも係留出来る場所を作る事を考えて要る様

な気がするのです。」


「竹之進殿、では、今後は上田か松川か其れは分かりませぬが、何れにしましても潜水船をあの洞窟に隠

すとでも考えられるのですね。」


「はい、私は松川を出る時に技師長から詳しく調べてくれと言われましたので、その可能性は有ると思っ

ております。」


「あの~松川のお殿様、大変失礼な事をお聞きしたいのですが、宜しいでしょうか。」


「はい、私に分かる事ならばどの様な事でもお聞きしますので。」


 其れは上田の若い家臣で、竹之進は快く受けたので有る。


「申し訳御座いませぬ、其れで、松川の洞窟で御座いますが、入り口はどの様になって要るで要るので御

座いますか。」


「其れがねぇ~、引き潮の時にですが、僅か五寸ほどの隙間が出来るだけでしてね、まぁ~見方によって

は一日中海中に有ると言っても良いと思って下さい。」


「では上田のと申しますか、こちらは側と申しますか、引き潮では五尺となっており、満ち潮の時でも三

尺は開いておりますので、何か、う~ん、どの様にお聞きすれば良いのか分かりませずに誠に申し訳御座

いませぬ。」


「まぁ~まぁ~、その様な事は気にされる事は有りませんよ、其れよりも、仮にですが技師長が何らかの

工事を計画されて要るとなれば、上田側の入り口を利用する事も考えられますからねぇ~、私達は其の事

も考えて置かなければならないと思うのですが。」


「若殿様、内部の調査ですが、上田で行ないたいと思うのですが、如何で御座いましょうか。」


「阿波野様、私もその様にして頂けるならば大変助かりますので。」


「殿、其れで浜に作業小屋と申しましょうか、書き物を整理する小屋と人員の休み処を建てたいのですが、如何で御座いましょうか。」


「阿波野、任せる、だがなぁ~其の前に漁師さん達とはよ~く話し合いを致すのだぞ。」


「はい、其れは勿論で御座います。」


「阿波野様、我々に何かお手伝い出来る事が有れば何なりと申し付け下さい。」


「若殿、今は何も御座いませぬので、何か有れば其の時にお願いするやも知れませぬが、其の時には何卒宜しくお願い致します。」


「はい、承知致しました。


 其れでお願いが有りまして、私の家臣数名をこちらでの作業を見学とでも申しましょうか、実際の作業

を見せて頂きたいのですが如何でしょうか。」


「若殿、其れならば私は喜んでお受け致します。」


「竹之進殿、これからの事ですが、如何でしょうか、上田との共同と言う事で。」


「はい、勿論、私も大賛成で御座います。


 あの洞窟をどの様な方法で使用致すにしましても、上田様とならば、竹之進、喜んでお受けさせて頂き

ますので、私の方こそ宜しくお願い申し上げます。」


 この後も暫く話し合いと言うのか雑談とでも言うのか続き、明日の朝、竹之進達は松川へと戻る事に

なったので有る。


 そして、明くる日早朝、上田の大手門に竹之進と家臣達が揃い。


「上田様、誠に有難う御座いました。


 私達は一度松川に戻り、皆と話し合いを致しますので。」


「竹之進殿、余り無理をされる必要も御座いませぬので、阿波野も今日から始めると申しておりますの

で。」


「はい、阿波野様も何卒宜しくお願い致します。」


 竹之進と家臣達は上田の殿様や阿波野、家臣達に見送られ松川へと戻どって行く。


「大殿様、若殿様達は何時頃帰って来るんだろうかなぁ~。」


「げんた、いや技師長、皆が無事に戻って来るのは昼頃だと思うが、其れまではのんびりとするじゃ。」


 其れでもげんたはそわそわと落ち着かない様子で、朝の早くから大手門に何度も見に行くので有る。


「大殿様、オレは若殿様からどんな話が聴けるのか、其れが一番の楽しみなんだ。」


「まぁ~、多分だが技師長が驚く様な話だと思うぞ。」


「うん、だけど、何で浜の洞窟に魔物が住んで要るって伝説が出来たんだろうかなぁ~。」


「う~ん、其れは今となっては分からぬが、仮にだその落武者達が住んでいたとすればだ、敵方に捕まる

事を恐れたので有れば分からぬ話では無いが、まぁ~今となっては調べる方法も無いのだからのぉ~。」


「大殿様、オレだって、それくらいの事はわかるけど、まぁ~大昔の事だからなぁ~、今頃そんな事を考

えたって仕方がないからなぁ~。」


「その通りじゃ、其れよりも、技師長としてはあの洞窟を何に使うつもりなのだ。」


「うん、其れが今は野洲の洞窟で造っている潜水船の隠す場所を考えてたんだ、だって野洲の洞窟は狭い

から次に造る潜水船を隠す所が無いんだ。」


 やはりそうだったのか、げんたは潜水船を隠すつもりで、其れが上田か松川の洞窟に、だが其れよりも一番大きな洞窟が松川から上田の浜へと繋がって要るとは、竹之進も阿波野のそれぞれが洞窟に入らなけ

れば今でも分からなかったので有る。


 其れが、今回思わぬ事で発見され、その洞窟が松川か上田へと繋がっており、上田の入り口から入る事

が出来れば一体何隻の潜水船を隠す事が出来るので有ろうか、さぁ~いよいよ、げんたの頭は回転を始め

るので有る。


 そして、昼近くになり。


「あっ、あれは若しや、いや若殿様だ、若殿がお帰りになられましたぞ、誰か大殿様にお知らせを。」


 松川の大手門の門番は大慌てで、若殿、竹之進と家臣達が帰って着たと城内に振れ回り。


「大殿様にお伝え願います。


 只今、若殿様が無事に戻って来られました。」


「大殿様、只今、若殿様が無事に戻って来られました。」


 部屋で待つ大殿様にも伝わり。


「そうか、其れは何よりじゃ。」


「えっ、本当にか、あ~本当に良かった、オレは。」


 又もげんたの眼に涙が溢れた来た。


「げんた、もう何も心配は要らぬぞ。」


「うん、あ~これでオレも安心だ。」


「お~い、みんな、若殿様のお帰りだぞ。」


 家臣達は大急ぎで大手門に向かった。


「若殿、良くぞ、ご無事で何よりで御座いました。」


「皆様方には大変ご迷惑をお掛けし、誠に申し訳御座いませぬ、どうかお許しの程を。」


「若殿、其れよりも、大殿様がお待ちで御座いますので、お早くに。」


 竹之進と家臣達は大殿様とげんたの居る部屋に向かい、暫くして。


「父上、竹之進、只今、戻りました。」


「竹之進、皆も良くぞ無事で戻った、良かったのぉ~。」


「技師長、大変ご迷惑をお掛けを致しました。」


「いや、殿様、オレが全部悪いんだ、だってオレが余計な事を言ったから、みんなに迷惑を掛けて、みん

な、ごめんなさい。」


 げんたは、大殿様に、若殿にも家臣達にも頭を下げた。


「いいえ技師長、そんな事は有りませんよ、私は技師長から言われなければ、今でもあの洞窟には入って

はおりませんのでね。」


「竹之進、其れよりも昼餉はまだで有ろう。」


「はい、父上、まだで御座います。」


「そうか、誰か竹之進と家臣達の、其れと技師長の昼餉を。」


 腰元達も若殿と家臣達の顔を見て安心したのかほっとした様子で有る。


「殿様、オレは正かだよ、正か上田の浜まで行けるとは考えて無かったんだ。」


「技師長、其れは私達もですよ、ですがあの洞窟には数十名の落武者と思われる人骨が有りましたよ。」


「竹之進、其れは間違い無く落武者なのか、正かとは思うが幕府の。」


「父上、間違いは御座いませぬ。


 人骨の有る付近には古い太刀が数十振りと、これも古い形の武具が、今の形とは違いますので、其れに

上田の阿波野様も間違い無く落武者だと申されておられましたので。」


 大殿様は幕府の者達が何かの理由であの洞窟に入り、其れが突然出る事も出来ずにだと思っていたのだ

ろう、だが古い形の太刀などと武具も古いとなれば、やはり落武者なのだろうと一安心したので有る。


「父上、私達は松川の洞窟から入り半町も泳いだと思いますが、人の手によって削られたと思われます細

い道が有り、其処から上に上がったのです。」


「では、その場所からは海の中では無かったのか。」


「はい、その通りで、人間が一人通れるくらいに削り取られおりました。」


「だが、一体誰が何の為に削ったのだ。」


「父上、其れは我々にも分かりませぬが、足場も悪くは有りませぬので灯りさえ有れば危険では御座いま

せぬ。」


「殿様、その洞窟だけど広いのかなぁ~。」


 やはりだげんた、いや技師長は何かを考えて要ると、竹之進は思ったので有る。


「そうですねぇ~、中は思いの外広く、其れに海と申しましょうか、海水の部分ですが幅も有り、深さで

すが時々測りましたが、六尺か七尺は十分に有ると思います。」


「う~ん、七尺かだったら十分に使えるなぁ~。」


 げんたの独り言に竹之進はその意味を知りたくなったので有る。


「技師長、あの洞窟を何かに使われるのでは有りませんか。」


「うん、其れと、田の洞窟の入り口なんだけど。」


「はい、其れは思った以上に広いですし、深さも五尺以上は有りましたので。」


「殿様、だけどまだ十分に調べる事が出来なかったんですね。」


「はい、その通りでして、阿波野様が調べられ、その調べが終わり次第工事に入られると申されておられ

ましたが。」


「工事って、一体何処の工事に入るんだ。」


「其れは、細い道を広げるのだと申されておられましたが。」


「殿様、オレ、明日上田に行くよ。」


 やはりだ竹之進が考えて要る通りで、げんたは潜水船の係留地にするつもりだと。


「技師長、あの洞窟の使い道ですが、どの様に考えておられるのですか。」


「うん、オレよりも親方達が野洲に帰ったら参号船を造り始めると思うんだ、だけど野洲の洞窟は狭いか

ら弐号船を他に隠せないと駄目なんだ、其れでねオレは何処かに隠せる場所は無いかと考えてたんだ、其

れで殿様に松川の洞窟を調べて欲しかったんだ。」


「技師長、ですが野洲の洞窟は広いですので、参号船でも十分だと思いますが。」


「うん、殿様、其れはね、今までの大きさの船だったら問題は無いんだ、だけど、松川、上田、野洲、菊

池の領民全員を乗せるとなれば、弐号船では全然足りないんだ、其れでオレは参号船からはもっと大きな

船を造りたいんだ。」


 正かとは思ったが、菊池から松川までの領民達を乗せる為には大きな潜水船が、其れも一隻や二隻では足りないと、では一体どれ程大きさなのか、其れによっては松川から上田に連なる洞窟内を広げる必要が

有ると竹之進は考えた。


 其れにしてもげんた、いや技師長が考えて要る潜水船の大きさとは一体、れ程の大きさなのだろうか。


「技師長が考えておられる潜水船の大きさですが、一体どれ程の規模になるでしょうか。」


「う~ん、そうだなぁ~、今の倍は欲しいんだ。」


「何じゃと、げんた、いや技師長、今の倍と申したが、その様に巨大な潜水船が野洲の洞窟で造れると申

すのか。」


「大殿様、野洲の大工さん達は物凄く腕がいいんだ、オレは山賀に行った時には親方に話をして有るんだ、親方は造れると言ったんだ、だけどその前に弐号船を移動させないと造れ無いって言うんだ、だから松川の洞窟を見ればって思ったんだ。」


「では、参号船を造る為には弐号船をこの浜に有る洞窟内に持って来ると言うのか。」


「う~ん、其れが問題なんだ、まだはっきりとは分からないんだ、だけど上田の浜と繋がって要ると言う

事はね、上田からも入れる事も出来るし、松川の洞窟からも入れる事が出来るんだ。」


「と、言う事はだ、出入り口が松川と上田の両方に有ると申すのか。」


「大殿様、だって洞窟の中では方向転換は出来ないんだぜ、其れに洞窟の中の幅と言うか水が有る所が広

いと二隻を同時に係留する事も出来るんだ。」


「何じゃと、技師長、その様な事が可能なのか。」


「だから、オレは若殿に頼んだんだ、中は広いのか、入り口の深さはって、だってオレは潜水船を潜らせ

たままで中に入れば幕府軍だって官軍からでも見付からないって考えたんだ。」


 何と、げんたは洞窟に入る方法は潜水船を潜った状態で中に入れる事が可能ならば領民達を浜で乗せ、

直ぐに潜り洞窟の中に入れば、幕府軍にも官軍にも発見される事も無く済むと言うので有る。


「殿様、仮に松川で工事を始めるんだったら今の入り口は狭いんだけど、本当に大丈夫なのか。」


「う~ん、簡単では有りませんが、其れが何か。」


「殿様、オレはさっきの話でね半町の所から上がったって聞いたんだけど、其処から広げると削った石は

何処に捨てるんだ。」


「えっ、何と申されましたか、石を捨てる場所とは、えっ、技師長、正か。」


「殿様、その正かなんだ、だって岸壁が必要なんだぜ、オレは削り取った石を小舟で運んで浜の何処かに

潜水船に乗れる岸壁を作りたいんだ。」


 げんたの発想は恐ろしい、上田での話で工事は上田側だけの予定で、だが、げんたは松川の浜に潜水船

が接岸出来る岸壁が必要だと考えて要る。


「技師長、ですが上田の阿波野様は上田側で工事を進めると申されておられますが。」


「殿様、其れは昨日の話なんだ、オレは別にいいんだ、だけど松川と山賀の領民を松川の浜から乗せる事

になると思うんだ、勿論、上田の浜にも岸壁は必要なんだ、だけど松川の浜は松川と山賀の人達が乗るん

だ、だって上田まで行くと言うのは簡単だけど、じゃ~上田の浜に軍艦が来れば松川と山賀の人達は一体

どうなるんだ、そんな事、子供だって分かると思うんだ、だから松川の浜にも岸壁が必要なんだ。」


 大殿様も若殿、竹之進もげんたは別の次元で考えを進めて要ると思うので有る。


「技師長、よ~く、分かりました。


 早速、松川側も調べ、洞窟内を掘削し、浜には岸壁を作る様に致します。」


「うん、其れで若殿が全ての指示を出してくれれば其れでいいと思うんだ、オレから斉藤さんには詳しく

話すからね。」


「あの~、宜しいでしょうか。」


「ああ、いいよ、何か聴きたい事でも有るんですか。」


 先程、戻って来た若い家臣だ。


「その岸壁ですが、若しも軍艦が来れば岸壁を使うと思うのですが。」


「いゃ~其れは多分無理だよ、だって、幾ら潜水船が大きいって言ったて、軍艦は潜水船の数倍は有ると

思うんだ、だからまず無理なんだ、其れに余り浜に近付くと船の底が海底に当たるから多分だけど、少し

沖で停まると思うんだ。」


「えっ、軍艦って、そんなにも大きいのですか。」


 殆ど言っても過言では無い程、家臣達は軍艦を知らない。


「軍艦はねぇ~、大砲を沢山積み、其れに使う砲弾も沢山乗せるんだぜ、其れに人間の兵隊も沢山、まぁ~はっきり言って驚くくらいの兵隊を乗せるんだ、浜に有る小舟の数十倍、いや百倍以上の大きな船なん

だ、そんな大きな船が浜に乗り上げたら、今度は簡単には動か無いんだ。」


「技師長、先程申されました潜水船の大きさですが、一体何人の人が乗れるのですか。」


「う~ん、今はその人数は分からないんだ、だって動かす人も多く要るしなぁ~、其れよりも大きな船な

れば多くの人を乗せる事が出来るんだ、だけど其れよりも、どんな事が有っても松川と上田の両方に岸壁

が必要なんだ。」


「技師長、では我々も明日から洞窟付近を調べる事にしたいと思いますので、出来るだけ多くの家臣が参

加して頂ける様に話しを致します。」


「竹之進、これは重要な問題じゃ、今かでも大太鼓を打ち鳴らせ、家臣全員を集めるのじゃ。」


「はい、父上、承知致しました。」


「若殿、私が参りますので。」


「では、頼みましたよ。」


 この家臣も竹之進と共に洞窟に入っており、状況は分かって要る。


 其れから暫くして大太鼓が鳴り響いたので有る。


「ドン、ドン、ドドド~ン。」


 と、数回も鳴り響き、城内の家臣も自宅に居る家臣達も一体何事が起きたのかも分からず、大急ぎ

で大広間に集まって来る。


 若殿は松川の浜に有る洞窟が上田の浜まで通じて要る事から話し、今後の事に付いても詳しく説明する

ので有る。


「竹之進、其れと技師長からも詳しく聞くのだぞ。」


「はい、私も今後の事に付きましても詳しく聴きたい事が有りますので。」


「若殿、オレも早く野洲に帰りたいんだ、だから今からでも何をして貰うのかは詳しく話したいんだ。」


「では私と数人が同席し、技師長の指示を書き写して参りたいと思いますので。」


 げんたは、その後、別の部屋に移り、竹之進と数名の家臣達に細かく指示を出して行く。


 その数日後、げんた達は野洲へと戻って行くので有る。



         




          


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