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闇の帝国    作者: 大和 武
5/288

 第  5  話  大決戦の開始。

 偵察隊の報告で10日後には、遅くとも大軍の攻撃が開始されると予想し


たロシュエは、その2日前に数人の偵察達を草原の小高いところに送った。


 その小高いところとは、城壁からは見えるのだが、敵からは発見が困難な


ところだ。


 偵察隊は手前の森に馬を隠し、腹ばいの状態で監視して要る。


 勿論、城壁の上では、何時、合図が有るかわからないので、数人づつが神経を尖らせて


いる。


 農場でも、一部の農地以外を除き、男性も女性も、全員が仕事を分担され


た作業に入って要る。


 男性は、全員城壁の内部で待機し、女性陣も大忙しで、朝は早くからスー


プを作り、パンを焼き、その食事は、兵舎から始まり農場まで配られるの


だ。


 兵舎では、順番に食事を取り、あの元野盗達も弓の調整を終わり待機して


いる。


 そして、1日、2日と、時は進み、9日後の事だった、小高いところに行


った偵察隊が旗を振っている。


 「オ~イ、旗を振っているぞ、将軍に伝えてくれよ。」


 下に居る兵士も。


 「良し、わかった、直ぐに伝えるからなぁ~、また、何か動きがあれば頼


むぞ。」


 連絡を受けた兵士は大急ぎで、ロシュエの居る場所に向かった。


 「将軍、旗が振られました。」


 「良し、わかった、直ぐに行くので伝えてくれ、おっと、その前にだ、司


令官、オレに若しもの事があったら、後の事はよろしく頼んだぜ。」


 司令官は驚きもせずに。


 「閣下、私も同じですから」


 「じゃ~、行くとするか、各隊長に集合を掛けろ。」


 「ハイ、将軍。」


 と、伝令の兵士は、各隊長に伝えるため、大急ぎで戻って行く。


 ロシュエと司令官は、急ぎ城壁に向かう。


 そして、またも、旗が振られたのだ。


 「オ~イ、今度は黄色の旗だ。」


 「わかった。」


 その時、ロシュエと司令官が上がって着た。


 「将軍、黄色の旗です。」


 「良し、わかった、司令官、頼むぞ。」


 「ハイ、閣下、各隊長に告げる、配置を開始せよ、配置を開始せよ。」


 「1番隊方、3番隊は城壁の上へ、4番隊と5番隊は場外の城壁へ。」


 其れは、敵からの攻撃開始まで、数時間前の事で有る。


 「オ~イ、偵察隊が戻って着たぞ、門を開けてくれ。」


 「わかった、城門を開け、早くだ。」


 下では、兵士達は偵察隊が戻って着たので、いち早く門を開けて行く。


 数名の偵察隊が馬を走らせ戻って着た。


 「将軍、報告します。」


 「ご苦労だった、早速聞かせてくれ。」


 「ハイ、やはり、敵の先頭は弓隊です、その後にヤリ隊で、最後は歩兵で


した。」


 「良し、わかった、少しだが、休みを取れ。」


 「しかし、もう直ぐ敵が来ますが。」


 「いいんだ、君達は、オレ達よりも早く戦闘に入っていたんだ、此れから


が本当の勝負だ、少しくらいの休みを取っても問題は無いんだ、わかった


か。」


 「ハイ、では、少しだけ休みを取ります。」


 「うん、其れでいいんだからね。」


 「では、失礼します。」


 と、言って偵察隊は兵舎に戻って行く。


 「司令官、予想通りだったなぁ~。」


 「閣下、此れからが本当の戦に成りますねぇ~。


 私は、何かわかりませんが、急に武者震いがしました。」


 「そうか、オレもだよ~。」


 その時だった、元野盗の数人が着た。


 「将軍様、司令官様、本当にありがとうございます。


 之で、オレ達も思い残す事は有りませんので、此れからは本当の戦に望め


ます。」


 この元野盗達は死ぬ気になっていると、ロシュエは思ったのだ。


 「オイ、オイ、何も死に急ぐ事は無いんだ、君達の役目は大事なんだぞ、


そう、簡単に死なれたら、オレ達の負けになるんだからなぁ~、君達は死ぬ


事よりもだ、敵を倒す事に神経を集中してくれよ。」


 「ハイ、将軍様、オレ達が間違っていました。


 オレ達は、農場のみんなのために敵を倒しますので。」


 「うん、其れでいいんだ、作戦は知って要るんだな。」


 「ハイ、オレ達は、敵の頭上に矢を放つんですね。」


 「そうだ、君達が頭上に矢を放つ事で、敵にスキが出来るんだ、そのスキ


を付いてだよ、ホーガン矢が飛ぶ、みんな各隊長の指揮に合わせるんだ


ぞ。」


 「ハイ、将軍様、では、オレ達も配置に付きますので。」


 「うん、よろしく頼みましたよ。」


 元野盗達の5千人は掛け足で配置の場所に向かった。


 「閣下、敵が現れましたよ、確かに、大軍ですねぇ~。」


 以外と司令官は淡々としている。


 城壁の内側も外側も、兵士達は敵からは見えないところに潜んでいる。


 その頃、森では、早くも戦いが開始された。


 森の中に入った敵の歩兵部隊は、各所で次々と倒され残りの数千人がやっ


との思いで森から逃げ出すのを城壁からも確認が出来る。


 「将軍、森では敵は相当数の兵隊が倒されているようです。」


 「うん、わかった、之で、敵も森に入る事は止めるだろう。」


 「何人位でしょうか。」


 「其れは、わからんが、百や2百じゃ無いと思うが、奴らも相当慌ててい


る様子だ。」


 「ハイ、そのようですねぇ~、さぁ~、いよいよですよ。」


 「オイ、オイ、司令官、何時もと違うじゃ無いか。」


 司令官はニヤリとして。


 「閣下、その様に見えますか、私は何時もと同じなんですが。」


 司令官は、きりっとした顔付きになっている。


 「オ~イ、野盗の皆さん、私の合図が有るまで、頭を出さないで下さい


よ、各隊の兵士もだ。」


 司令官は、じっと待って要る。


 敵軍が目印の杭まで後少しだ。


 城壁の兵士は司令官の合図を待つ顔が司令官に集中している、後、少し


だ、司令官は自ら言い聞かせている。


 その時だった、敵の弓隊が横一線になり、目印の杭越えたのだ、だがまだ


早い、次のヤリ隊も横一線に成り、杭を越えた、その時だった。


 「良し、野盗隊、頭上に向け、一斉に放て。」


 司令官の合図で城壁の上から野盗隊5千人の弓から、矢が一斉に放たれた


のだ、敵方も予想していた様子で、弓隊もヤリ隊も一斉に盾を頭上に掲げ


た。


 その時である。


 「1番隊から3番隊までは一斉攻撃に入れ。」


 1番隊から3番隊のホーガン隊が放ったホーガン矢は一直線に飛んで行


く、敵軍は頭上から飛んで来る矢に気を取られ、正面から向かってくるホー


ガン矢は敵軍の弓隊を襲って行くのだ。


 ホーガン矢は普通の矢では無い、一回り太く、短い、そのホーガン矢は弓


隊の兵士に次々と命中し、前面の兵士達は1本の矢を放つ事も無く、次々と


倒れて行く。


 其れは、最初に野盗隊が放った矢が頭上から襲ってくる為だった、だが、


敵も反撃を開始する、2番手、3番手の弓隊から放たれた矢は次々と城壁を


襲ってくる。


 敵の放った矢は城壁に当たるのだ、だが、中には城壁を飛び越えてくる矢


も多く、それは次々と城壁の中を襲ってくる。


 「野盗隊も前面の弓隊を狙え。」


 司令官の命令も変わった。


 野盗隊も必死で前面の兵士に矢を放つが、殆どが命中せずにいた、その時


だった、敵のヤリ隊も走り出し、城壁の近くまで着た。


 「野盗隊は、ホーガン隊と交代せよ、ホーガン隊は前面のヤリ隊に向けて


放て、野盗隊は後方の歩兵隊に向けて放て。」


 司令官は、一体、何を考えて要るのだと、ロシュエは思ったが、司令官の


命令が幸をそうしたのだ。


 敵は、此方は民兵だと思って要る。


 野盗隊の放った矢は、弓隊でも、ヤリ隊でも無く、後方の歩兵に向かって


行った。


 一方、野盗隊と変わったホーガン隊の放ったホーガン矢は前面の弓隊に向


かって集中し、敵の弓隊は次々と倒れて行く。


 こうして、最初の戦闘で敵軍の弓隊の半分以上が倒れた。


 ホーガン隊が放つホーガン矢は残る弓隊も襲うが、中には弓隊の兵士の間


と通り抜け、ヤリ隊の兵士に命中し、ヤリ隊の兵士達も次々と倒れていく。


 一方、敵から放たれた矢も、城壁の兵士に命中し、次々と倒れて行く、兵


士達は城壁の上でうめき声を上げ、戦闘は敵軍の圧倒的な兵士の数で襲って


くる。


 次第に敵軍は城壁へと近づいてくるが、交代したホーガン隊が放つホーガ


ン矢の威力は圧倒的な数を誇る敵軍を倒している。


敵はホーガンを知らないのが幸いしたのか、戦闘が始まって数時間で敵の弓


隊は全滅し、ヤリ隊も半滅状態になっている、だが、ヤリ隊の兵士は倒れた


弓隊の兵士から弓を奪い、城壁に向け矢を放っている、それは、ヤリ隊の指


揮官の命令だ。


「1番隊は、敵の指揮官を狙え。」


 1番隊から放たれたホーガン矢は、馬上の指揮官に命中し出し、指揮官達


は馬上から次々と落下して行く。


 何時の時代でも、指揮官達が戦いを作って行くのだ。


 その指揮官が次々とホーガン矢の餌食になり馬上から落下、其れは、指揮


を執る者がいなくなり、其れが原因となり、部隊は混乱し、敵軍に対して


は、何も出来ない状態となっていくのである。


 「良し、まず、前面の弓隊を全滅させる、2番隊、3番隊は前面の弓隊に


ホーガン矢を放て。」


 この一斉攻撃で、敵の弓隊は全滅したのだが、まだ、ヤリ隊と歩兵部隊が


いる。


 「司令官、何故、余の軍が負けておるのじゃ。」


 「陛下、誠に申し訳御座いません、敵は新型の武器を持って要るようで


す。」


 「なんじゃと、敵が新型の武器を持って要るだと、何故じゃ、民兵如きに


新型の武器を持っておるのじゃ、司令官、どんな事があろうと、あの城壁を


攻略するのじゃ、わかったのか。」


 「ハイ、陛下。」


 敵は、この時、初めて気が付いたのか、自分達が使っている弓では無い、


新型の武器で攻撃されていると。


 一方、城壁では。


 「敵の弓隊は全滅した、我が軍の兵士も負傷している、大急ぎで収容せ


よ。」


 司令官は負傷者の収容を命じ、城壁の中に居た農場の男達は一斉に飛び出


し、其れと、同じく農場の広場で待機していた馬車も次々と到着し、兵士達


を収容して行く。


 収容された兵士達はテレシア達が待つ大会議室に運ばれ手当てを受けるの


だ。


 負傷した兵士は5百人を超え、大会議室も戦場と貸している。


 「早く、此処に乗せて、いいわよ、もう大丈夫だからね、何も心配は要ら


ないのよ。」


 と、テレシアは優しく言っている。


 「今から、矢を抜くけれど、何も心配は無いのよ、私に任せなさいね。」


 「うん。」


 と、兵士の返事は弱いが、女性達は気丈で。


 「ほらね、大丈夫でしょう、後は、私達が優しく看病して上げるから


ね。」


 と、この女性は、兵士の頬にキスをするのだが、兵士の傷は重い、果たし


て助かるのか、彼女達も必死だ。


 次々と運ばれる負傷者、うめき声を上げる兵士、何も言わずひたすら口の


中で話をして居る兵士、うつろな表情の兵士、だが、この兵士達は若い。


 「ごめんなさいね、私が、早く見て上げればよかったのだけど。」


 一人の女性が、涙を流し、戦死した兵士に謝っている、この兵士もまだ若


い。


 若い兵士達が農場を守る為に、命懸けの戦いを行って要る。


 農場の男達の服は、負傷した兵士の血で赤く染まっている、其れは、馬車


も会議室の中でも同じ光景だった。


 一方、司令官は、敵の弓隊が全滅した事で作戦を変えた。


 「城外の兵に告ぐ、敵の弓隊は全滅した、今から、戦法を変える、全員中


に入れ。」


 司令官の言う戦法変更とは、一体、何を変えるのだ。


 その時、敵のヤリ隊が前進してきた。


 「司令官、敵のヤリ隊が着ます、早く命令を。」


 兵士は少し慌てている。


 「何も慌てる必要な無い、敵はヤリ隊と歩兵だけだ。」


 司令官は、一体、何を考えて要るのだ。


 戦闘が開始されて半日が過ぎているが、まだ、敵軍の大半は残っている。


 「ホーガン隊に告げる、今のうちに、ホーガン矢の補充をする様に。」


 司令官の指示で、倉庫からは、次々とホーガン矢と野盗隊が使う矢が運び


出されていく。


 「司令官、敵が目前に来ました。」


 「良し、城壁の左翼は敵の左側を、中央は同じく中央を、右翼は右側を狙


え、今度は敵の弓隊はいない、何も急ぐ事は無い、確実にしとめる事であ


る、敵の頭ではなく、胸を狙え、其れもゆっくりとな。」


 司令官の命令は、一体、何を意味するのか、城壁の上からは、ホーガン矢


が次々と放たれ、敵を次々と倒して行く。


 敵からは、1本の矢も飛んで来る事は無い、やがて、太陽が西の空に傾き


かけはじめた。


 ホーガン矢と野盗隊の放つ矢が敵の歩兵まで倒していくのだ。


 その頃、森の中からも、ホーガン矢が飛んで来る。


森に近い敵は、一体、何処から飛んで来るのかわからない、ホーガン矢に


次々と倒れていく。


 其れでも、ホーガン矢をすり抜けた兵士は城壁を登ろうとするが、自然石


を巧みに使った城壁は角の無い、丸くなっている、其れは、手も掛けるとこ


ろもなく、登る事も出来ず、またも、上から放たれるホーガン矢の餌食にな


って行くのだ。


 其れでも、敵の兵士は登ろうとする。


 それから、数時間が過ぎ、やがて、太陽は西の山に沈む頃になるが、今


だ、戦闘は続いている


 その頃、敵のヤリ隊もほぼ全滅し、残るは、歩兵だけと成った。


 「司令官、何をもたついているのじゃ、余が参るぞ、付いて参れ。」


 遂に城主が出て行く、この城主の姿を司令官ははっきりと確認したのだ。


 「閣下、要約、敵の城主が出て参りました。」


 「お~、そうか、オレも、見たいよ、何処に居るんだ、その狂犬の城主


は。」


 ロシュエは、直ぐにわからず。


 「閣下、あそこに居ます、あの男です。」


 「なんじゃ、あのきらきらした服は、本当に笑ってしまうよ。」


「閣下、笑わないで下さい、私も、辛抱をして要るのですから。」


 と、言っているが、司令官は笑っている。


 「そうだ、司令官、一度、脅かしでホーガン矢を放っては。」


 司令官は笑いを止め。


 「閣下、その様な必要は有りません。


 後、少し前に来れば放ちますので。」


 ロシュエは頷き。


 「そうか、其れじゃ~、誰が、放つんだ。」


 「私は、ホーガンに、その役目を任せ様と思うんですが。」


 「うん、なるほどなぁ~、彼なら、一発で仕留めるだろうから。」


 「私も、その様に思っておりますので。」


 「それじゃ~、ホーガンを呼んでいいぞ。」


 「閣下、承知しました、誰か、ホーガンを呼んでくれ。」


 「ハイ、今、直ぐに。」


 兵士は急いでホーガンを探しに行く。


 「オ~イ、ホーガン、ホーガンは居るか。」


 「此処に居ますが、何か。」


 兵士はホーガンの側に行き。


 「将軍が呼んでいるぞ、城壁の中央に、司令官と一緒だから。」


 「わかりました、直ぐに行きます。」


 ホーガンは、首を振っている、一体、何の用事なのか。


 「将軍、ホーガンですが、何か、ご用事でしょうか。」


 「お~、ホーガン、いやね、君の作った、このホーガンだが、もの凄い威


力だったよ、お陰で、敵は全滅に近いんだ、本当に有難うよ。」


 ロシュエは、、まず、ホーガンに礼を言った、だが、ホーガンは違ってい


た。


 「将軍、私に、何か用事でもあったのでは。」


 「お~、そうだ、実はだ、あれを見てくれ。」


 ロシュエは、此方に向かって歩いている、敵の城主を指差した。


 「あっ、あれは確か、敵の城主じゃ、無いんでしょうか。」


 「やはり、そうか、其れでだ、君の作ったホーガンで、あの狂犬の城主を


倒して欲しいんだ。」


 ホーガンは大変な驚きだ。


 「えっ、何故なんですか、何故、この私が、あの城主を倒すんですか、私


は、野盗隊ですよ、此処の兵隊さんで有れば、確実に倒す事が出来ると思う


んですが。」


 ホーガンの気持ちはわかっている、だが、ロシュエも司令官も別の考えだ


った。


 「ホーガン、よ~く聞いてくれよ、確かに、此処の兵士では簡単に倒す事


が出来ると思うよ、だがな、オレ達は兵隊なんだ、オレ達はなぁ~、あの城


主に対して、何の恨みも無いんだ、だがよ、ホーガン、君達、元野盗や、今


まで、此処に着た領民は、あの城主のために、殺しても、許せない程の恨み


が有ると思って要るんだ、ホーガン、君が、その領民達の代表と成って、あ


の城主を倒して欲しいんだよ、わかってくれるな。」


 ホーガンは、本当は自分で作ったホーガン矢を、憎いあの城主の胸に打ち


込みたいと思って要るのだが。


 「でも、其れは、みんなの。」


 「ホーガン、この農場に居る人達は、誰も反対はしないと思うんだ、それ


に、女性や子供に打たせるのか、オレはよ~、幾ら憎いとは思っても、子供


に殺させる事だけは出来ないんだ。」


 「ホーガン、閣下の言われる事は、みんなも同じですよ、私も、別に恨み


は有りませんのでね、此処の兵士全員同じですよ、貴方の作ったホーガン


で、この戦を終わりにしたいと思って要るんですよ。」


 司令官もロシュエと同じだった。


 「司令官、敵の城主が杭を越えました。」


 「うん、わかった、有難う、ホーガン、農場の人達全員の気持ちだと思っ


て、如何です、貴方が倒さないで、一体、誰が倒すんですか。」


 ホーガンは、何も言わず、考えて要る様子で。


 「ホーガン、オレ達の変わりに、あいつを倒してくれよ。」


 「そうだよ、ホーガン、頼むよ、之は、みんなの為なんだ。」


 ホーガンの気持ちは。


 「将軍、司令官、其れに、みんな、本当にオレでいいのか。」


 城壁の上に居た、野盗隊が一声に。


 「お前に任せたよ、ホーガン。」


 「良し、わかった、将軍、オレが、一発で決めて見せますので。」


 「よし、わかったよ。」


 ホーガンは前に進み、ホーガンに矢を入れ、近づく城主に狙いを合わせ


た、だが、直ぐに引き金を引く事は無かった。


 其れは、今までの事を思い出している様子で。


 城主は歩みを止める事も無く、一歩、一歩、また、一歩と進み、やがて、


顔の表情がはっきりと判るところまで着た。


 その時であった、ホーガンから矢が放たれ、その矢は、城主の胸に命中し


たのだ。


 城主は、突然、襲って着たホーガン矢に胸を討たれ、その場に倒れた。


 其れを見た敵の兵士は、一瞬だが呆然としている。


 敵の司令官と言えば、城主が倒された事で、全てが終わったと判断したの


か、城主や仲間の兵士を見捨て馬を走らせ逃げた。


 其れを見ていた兵士達も、馬や馬車を捨て、一目散に逃げて行くのだ。


 「司令官、この農場は、みんなのお陰で守る事が出来た、本当に有難


う。」


 と、ロシュエの勝利宣言と言える言葉で、城壁の兵士達は大声で歓声を上げている。

 

 「閣下、おめでとう御座います。」


 「いや、司令官、何もめでたくは無い、我々の仲間も多く犠牲者が出たん


だ、オレは、本当に喜ぶ気持ちには成れ無いんだ。」


 ロシュエも、本当は喜びを表したいのだが。


 「閣下、実は、私も、同感ですが、農場の人達からは、誰一人として、犠


牲者が出なかった事がせめてもの救いです。」


 司令官もロシュエの気持ちはわかっている。


 「ホーガン、見事だったよ、お前は。」


 と、元野盗達の仲間は涙が止まらない。


 「いや、オレは、一瞬だが、ためらったんだ。」


 「何故なんだ、あいつらは、オレ達の家族や村の人達を虫けらの様に殺し


ていったんだ、あんな、城主なんかは地獄に行けばいいんだ。」


 「でもなぁ~、オレは、この戦で何人に向かって矢を放ったか覚えて無い


んだ、でも、最後の一人が、あの城主だろう、オレは、本当に一瞬、目を見


た様な気がするんだ。」


 「うん、お前の気持ちはわかるよ、でもな、お前の放った矢で、この農場


の人達が救われたんだからなぁ~。」


 ホーガンは、自らが作ったホーガンで、この戦を終わりにさせる事で、本


当に喜んでいいのか考えて要る様子なのだ。


 その頃には、辺りも薄暗くなり、農場のあちらからも此方からも明かりが


灯り、城壁の上も松明の明かりをつけている。


 その後、農場でも大きな歓声が上がり、戦が終わった事をみんなが喜んで


いる。


 「イレノア、本当に良かったね、此れからは戦の無い世の中になって欲し


いよ。」


 テレシアも、素直には喜びを表せなかった。


 其れは、この戦で、農場を守った若い兵士が数十人も犠牲になった為なの


か。


 「テレシアさん、私は、農場を守るために戦死された兵隊さんに心から有


難うと、いいたいの、其れが、せめても兵隊さんに対する、私からのお礼な


の。」


 「そうだね、イレノア達は、あの城主には、本当に苦しめられたんだか


ら、あんたの素直な気持ちは、彼らも天国に行ってもわかってくれるよ。」


 「有難う、兵隊さん、此れからは、天国で私達を見守って下さいね。」


 と、イレノアは手を合わせる。


「さぁ~、イレノア、私達にはまだ、仕事が残っているんだ、手伝って


ね。」


 「ハイ、判りました。」


 と、二人は、負傷している兵士達の元に戻って行く。


 「閣下、今後の事ですが。」


 「うん、オレは、まだ、先の事を考える余裕が無いんだ、今は、負傷者が


一刻も早く、元の姿になり、何時もの元気な顔を見たいんだ、其れと、戦死


者の弔いも必要だから。」


 「ハイ、閣下、わかりました、それで、敵の遺体はどの様に致しましょ


う。」


 「うん、其れを、今、考えて要るんだ、敵だったとはいえ、彼らも立派に


戦って戦死したんだ、オレは、戦死者として、どこか適当な場所に葬ってや


りたいんだ。」


 ロシュエの優しい心使いは、司令官も知っていた。


 「私も、其れは必要だと思っています。


 あのままだと、腐敗もしますが、獣の餌になり、余りにもかわいそうです


から。」


 司令官も死体の放置はしたくは無いのだ。


 「今日は、みんなも疲れている、明日、兵士を集め、埋葬しようか。」


 「そうですね、負傷した兵士を除けば出来ますね、ですが、農場の人達


は。」


 司令官、農場の人達は、別だ、あの人達に兵士の死体を見せる事は一切駄


目だ。」


 ロシュエの口調は荒くなったが、司令官の気持ちもわかっていた。


 「閣下、申し訳御座いません。」


 「いや、いいんだ、司令官の事だから、正かとは思って要るんだ。」


 「ハイ、有難う御座います。」


 「司令官、兵士達を労ってくれよ、其れと、野盗隊にもだ。」


 「ハイ、勿論で御座います、私は、特に、ホーガンの事が気に成るのです


が。」


 「うん、オレも、其れが、一番気になっているんだ、オレが、ホーガンに


話をしてみるからよ~。」


 「閣下、よろしくお願いします。」


 「うん、まぁ~、何とか成るだろうからなぁ~。」


 ロシュエと司令官は話しをしながら、負傷兵が収容されている大会議室に


向かう。


 その頃、大会議室では。


 「みんな、疲れていると思うけれどもう少し辛抱してね。」


 テレシアは、女性達に声を掛けている。


 「ね、貴方の傷は、私が治してあげるからね、少し痛いけれど辛抱するの


よ。」


 女性の優しい言葉に。


 「有難う、御座います、自分達は勝ったんでしょうか。」


 女性は微笑み。


 「そうよ、貴方達の頑張りで、農場は救われたのよ、有難うね。」


 「其れじゃ~、敵は。」


 兵士は涙を浮かべている。


 「私達は、其処までは知らないのよ、だけど、勝ったという話なのよ、だ


からね、貴方も早く元気になってね、お願いだから。」


 女性は、兵士に優しく語り、微笑みを浮かべている。


 別の女性は。


 「貴方、之くらいの傷で、何を弱気になってるのよ。」


 「はい、でも。」


 この兵士は、もう駄目だと思って要るのだ。


 「何を、言ってるのよ、貴方はね、之くらいの傷で死ぬような人じゃない


と、私はね、思って要るのよ、早く元気になって、私達と一緒に食事をしよ


うね。」


 「ハイ、有難う御座います。


 自分も頑張って、早く、良くなりたいですから。」


 「そうよ、その調子よ。」


 この女性は、励まし、時にはなだめている。


 その時、ロシュエと司令官が入口に着いた。


 「テレシア、彼らの傷はどうだ。」


 テレシアは二ッコリとして。


 「大丈夫よ、私達が付いているから、之くらいの傷で弱音を吐くような人


達じゃ無いって事なのよ。」


 「うん、其れは、判っているが、それで、戦死者は。」


 テレシアの表情は変わり。


 「34名が、戦死されたの、みんな、若い兵隊さんだったの。」


 司令官の表情も少し落ち込んでいる。


 「そうか、大変、残念な事だ、オレも、本当に辛いよ。」


 「将軍、その人達は、私達の農場を守ってくれたの、だからね。」


 テレシアの気持ちはわかっている。


 「テレシア、勿論だ、彼らは仲間なんだよ、オレは、彼らの事を忘れたく


は無いんだ、出来る事なら、この農場の共同墓地に埋葬したいんだ。」


 「私は、大賛成よ、みんなもわかってくれるわよ。」


 テレシアは賛成している。


 「其れじゃ、オレは、他の兵士達も少し見てくるよ。」


 「お願いね、あの人達も、大変な思いをしたんだから。」


 「うん、有難う、テレシア。」


 と、言って、ロシュエと司令官は大会議室の中に入った。


 「あっ、将軍。」


 と、言った、兵士が起き上がろうとすると。


 「いいんだよ、寝てなさいよ、君達は、良く頑張ってくれた、今は、早く


傷を治して、おかみさん達と食事する事を命ず。」


 「ハイ、将軍、有難う御座います、其れで、我々は勝ったんでしょう


か。」


 ロシュエは二コットして。


 「勿論だ、君達が勝ったんだ。」


 兵士達は、大きな声を上げ喜ぶ者、涙を流している者も居る。


 ロシュエと司令官は、大会議室に収容されている兵士達、一人一人に声を


かけて励まし、全員を見回って。

 

「其れじゃ~、な、みんな、早く元気になってくれよ。」


 と、ロシュエと司令官は大会議室を後にするのだ。


 「閣下、有難う御座いました、みんなも喜んでおります。」


 「いや、オレは、当然の事をしただけなんだ。」


 「でも、本当にありがたいです、それで、閣下、先程、話されました、敵


軍の戦死者の事なんですが。」


 「うん、オレは、簡単に考えたんだが、今、考え直して見ると、3万人か


4万人近くは居るんじゃ~なぁ~。」


 「ハイ、私も先程から考えておりましたが、如何でしょうか、その場所で


火葬にすると言うのは、之だけの戦死者です、穴を掘るだけでも、相当な時


間が掛かりますので。」


 「うん、そうだぁ~、火葬か、それであれば、戦死者を動かす必要も無い


なぁ~。」


 「火葬に使う木材は森から切り出す事も出来ますので。」


 「うん、オレも、火葬に賛成だ、明日からでも始めるか。」


 「私も、早い方が良いと思いますね、獣の餌にだけはしたくは有りません


ので。」


 この森には、どれ程の獣がいるのかわからず、更に、草原にも多くいると


思う二人の意見は一致したのだ。


 「良し、決めたぞ、司令官、兵士達に悪いが、明日の朝でも説明をしてく


れ、其れと、我々の戦死者の葬式の日取りも早く決めたいんだ。」


 「そうですが、今日の明日と言うのは、兵士達の気持ちを考えますと。」


 二人は、早く火葬にしたいと思ってはいるのだが。


 「そうなんだ、余りにも早く葬式を行うのも、何か、戦死者に対し、失礼


だと思うんだ。」


 ロシュエは、34名の戦死者だけでなく、負傷者たちの事も考えていた。


 「司令官、各隊長の意見も聞いてくれないか、彼らの直属の部下だったん


だかなぁ~。」


 「そうですね、隊長達も自分達の部下が戦死したのですから、今は、何も


考えが出てこないと思うんです。」


 「うん、其れは、オレもわかっているよ、其れに、34名の仲間達に対


し、別れをしたいと思う兵士も多勢居るだろうからなぁ~。」


 「そうですねぇ~、では、私から、各隊長に話をします、全員が、一度に


来る事は出来ませんので。」


 「そうだなぁ~、中には親友だった仲間も居るだろうし、2~3日の猶予


は必要だ。」


 「私も、その様に思います。」


 「其れじゃ~、司令官から各隊長に伝えてくれ、34名の戦死者に対し、


明日から順次、お別れに行ってくれと、全員が終わり次第、敵軍の戦死者の


火葬をするからと。」


 「ハイ、判りました。」


 「オレは、野盗隊と農場のみんなに話をするからよ~。」


 と、言って、司令官は兵舎に戻り、ロシュエは、野盗隊の所に行くつもり


だったのだが、気が付くと宿舎に戻っていた。


 ロシュエは、何故か、自分でもわからなかったのだ、椅子に座り、此れか


ら先の事を考えるのだが、何時の間にか眠ってしまった。


 暫くすると、何かの物音で目が覚め、すると、其処にはイレノアが居た。


 イレノアは、ロシュエの為に食事を作っていた。


 「イレノアか、何をして要るんだ。」


 イレノアは驚き。


 「あっ、将軍、起こしてしまって、申し訳有りません。」


 「いや、別にいいんだが。」


 その時、ロシュエの腹の虫が鳴いた、今、気付いたのだ、そうだ、オレ


は、朝から、何も食べて無かったんだと。


 「イレノア、何か、いい匂いがするんだが。」


 「ハイ、将軍のお食事をと思いまして、何も出来ませんが、宜しかった


ら。」


 「いや~、ありがたいよ、実は、今、気付いたんだ、オレは、朝から何も


食べて無かったんだ。」


 「私も、そうだと思いましたので、簡単な物しか出来ませんが、お許し下


さい。」


 イレノアは、申し訳なさそうな顔をして要るが。


 「いや、いいんだ、オレは何も出来なかったんだ、其れに、多くの犠牲者


の事を考えると、食事が出来るだけでも、ありがたいと思って要るんだ。」


 「いいえ、将軍のお陰で、私達は救われたんです。」


 「そう言われると、オレも、少しは気持ちが楽になったよ、イレノア、食


事はオレだけなのか。」


 「いいえ、農場のおかみさん達が、兵隊さんの宿舎に運ばれております


の。」


 やはり、之は、テレシアの指示だと思う、ロシュエだった。


 「イレノア、良かったら、少し話をしたいんだ、座ってくれないか。」


 「ハイ、将軍。」


 イレノアは、何も考えて無いのか、素直に聞いた。


 「イレノア、君は、この農場で、以前の様に農作業に入りたいのか。」


 イレノアは、農作業よりも、本当はロシュエの側に居たいと思って要るの


だが、今は、その話は出来ないと思って要る。


 「私は、今、何も考えてはいないんです、父とも再会出来ましたので、農


作業も出来ればしたいと思って要るんですが、でも。」


 ロシュエは、イレノアを側に置きたいのだ。


 「そうか、君は、父親と再会したんだなぁ~、だけど、イレノアに側に居


て欲しいんだ。」


 イレノアは、思いもしなかった言葉に一瞬驚いたので有る。


 「えっ、私をですか、でも、私は何も出来ないんですが。」


 「イレノア、そんな事はいいんだ、君は、此れから、オレの側に居てくれ


るだけでいいんだから。」


 「でも、突然のお話しで、私は。」


 「イレノア、オレの事が嫌いなのか、はっきりと言ってくれよ。」


 イレノアの顔は赤くなり。


 「いいえ、私は、将軍が大好きなんです。」


 「うん、其れでいいんだ、オレの事が嫌いだったら、食事なんか作らない


と思って要るんだ、だから。」


 「ハイ、その通りです、私は、初めてお会いした時からなんです。」


 「良し、之で、決まりだ、此れからは、此処で一緒に生活するんだ。」


 ロシュエは思いきったのだ、この先、何が起きるか判らない、今を逃す事


は出来ないと。


 「えっ、でも、他の人達から、なんて思われるか心配です。」


 イレノアは、何かを言いたいのだが、ロシュエは強行突破するのだ。


 「他人が、何と言おうが、オレには関係は無い。


 明日、オレからみんなに発表するから、何も心配するな。」


 イレノアは驚いた、其れは、ロシュエから突然のプロポーズと言うより


も、強行な言い方だが、心の中では、この喜びを、みんなに言いたい、私


は、将軍からプロポーズされたのよって、だが、今は、何と答えて良いのか


わからない。


 「イレノア、何も言うな、此れからは、オレが付いているから、其れに、


今、君を捕まえて無いと、誰に、取られるかわからんからなぁ~。」


 と、言って、ロシュエは笑った。


 「ハイ、将軍、私は、此れから先の事、全て、お任せしますので、何卒、


よろしくお願いします。」


 イレノアは、決心した、其れは、今までは、胸の中で思っていた事が現実


に成った瞬間だった。


 「イレノア、オレはなぁ~、例え、誰かが反対してもいいんだ、君さえ良


ければ、新しい土地に行ってもいいんだ。」


 ロシュエは、イレノアと連れて、他の地に向かっても良いと考えていた。


 其れは、イレノアと二人の生活をしたいと言う強い気持ちだった。


 その様な時に、野盗隊の数人と農場の代表者達数人が着たのだ。


 「将軍、今、宜しいでしょうか。」


 「うん、いいよ、何か、あったんですか。」


 野盗隊も農場の人達も深刻な顔付きだった。


 「あの~、実は。」


 野盗隊の中に、ホーガンも居たのだ。


 「ホーガン、何があったんだ。」


 「ハイ、将軍、実は、先程、みんなと相談したんですが、今日の戦闘で戦


死された兵隊さん達の事なんですが。」


 ロシュエは、直ぐにわかった。


 「うん、判っているよ、みんなは、戦死した兵士達の葬式をして欲しいと


思って要るんだろう。」


 ホーガンをはじめ、全員が驚くのだ。


 「えっ、将軍、何でわかるんですか。」


 「そりゃ~、オレだって、此処の住民だ、実はなぁ~、さっき、司令官と


も話をしてたんだ、オレや、司令官は生き残ったが、残念な事に、34名の


兵士が犠牲になった。


 之は、事実なんだ、其れでね、この2~3日中に彼らの葬式を行いたいと


思ってたんだ、その相談をするつもりで、君達のところに行くつもりが、す


まん、オレは、宿舎に戻って眠ってしまったんだ、大変、申し訳ない。」


 と、ロシュエはみんなに頭を下げた。


 「将軍、頭を上げて下さい。


 やはり、将軍は考えられておられたんですね、我々も、将軍の事だから、


何かを考えておられると思っていたんです、此方こそ、申し訳有りませんで


した。」


 農場の代表達が頭を下げたのだ。


 「済まんなぁ~、みんなに余計な心配をかけて、其れじゃ~、今から、葬


式の話をするとしようか。」


 ロシュエは、良い機会だと思った。


 「将軍、其れとは、話は違うのですが。」


 ホーガンは、別の心配をしていたのだ。


 「ホーガン、多分、多分だよ、農場の外にある、戦死者の事だと思うんだ


が。」


 ホーガンはうなずき。


 「その通りです、私の作ったホーガンで、多くの戦死者を出しました。


 その戦死者も早く、土の中に埋めてやりたいと思ったんです。」


 「ホーガン、その戦死者の事も司令官と相談して、火葬する事にしたんだ


が。」


 「判りました、其れで、オレ達野盗隊のみんなと話の中で、城主だけは別


に火葬しようって考えたんですが。」


 ロシュエも同じ考えだった。


 確かに、この城主は多くの領民を殺した、其れは事実で有る。


 だからといって、兵士達と同じところで火葬する事に疑問を感じていた。


 過去は、過去として死んだ者に対しても同じ扱いは出来ないと思っていた


のだ。


 「ホーガン、君達の気持ちはオレにもわかるよ、確かに、生きていた頃は


多くの領民を苦しめた、之は、事実だ、だからと言ってだ、兵士達と同じ扱


いにオレは、出来ないんだ。」


 ホーガンは嬉しかったのだ。


 其れは、自らの手で城主を死なせたと言う事実、其れを、早く忘れるため


にもと、考えていたのだ。


 「将軍、其れで、オレ達、野盗隊が敵の戦死者の火葬をしたいと、みんな


が言っているんですが。」


 ロシュエには、思い掛けない話だった。


 「野盗隊が敵の戦死者の火葬をしてくれるのか。」


 「ハイ、オレ達も、今まで、多くの人達を苦しめたんです。


 其れで、敵方の戦死者を火葬する事で、今までの事を早く忘れる事が出来


るんじゃ無いかと考えたんですが。」


 ロシュエも野盗隊が早く過去を払拭したいのだと思って。


「そうか、オレも、司令官と話をしていたんだが、何時までも、戦死者の遺


体を放置する事は出来ないと考えていたんだ。


 明日の朝、我々の戦死者の葬式の件と、敵方の戦死者の処遇をみんなに相


談する積もりだったんだ。」


 「では、将軍も、オレ達、野盗隊で戦死者を火葬してもいいのでしょう


か。」


 「それじゃ~、君達にお願いするよ。」


 「ハイ、オレは、みんなに報告します。」


 「其れと、我々の戦死者の葬式なんだが。」


 「将軍、オレ達は農場のみんなと相談したんですが、将軍、兵隊さんは、


我々の農場を守る為に戦死されたんです。


 其れで、兵隊さんには、大変、申し訳ないんですが、我々の墓地に埋葬し


て頂きたいんですが、宜しいでしょうか。」


 ロシュエは、嬉しかった、本当で有れば、戦死者といえども、兵士だ、兵


士達の遺体は別の場所に埋葬するのが本当なのだが。


 「嬉しい話だねぇ~、オレ達、兵士は、別の所に埋葬するのが本当なんだ


が。」


 「将軍、我々、農民は、戦死された兵隊さんの事を忘れてはならないと思


って要るんですよ、その為にも是非ともお願いしたいんです。」


 「実はね、司令官とも話をしてたんだが、農場の人達さえ良ければ、戦死


者を共同墓地に埋葬して頂け無いかと、言っていたんだ。」


「将軍、私達からのお願いなんです、我々のために戦って戦死されたんで


す。


 我々の為に戦って戦死されたんですよ、之は、私達の願いですので、承知


していただけると、本当にありがたいのですが。」


 「いや~、本当にありがたい話だ、オレからもよろしく頼むよ。」


 「其れじゃ~、将軍、宜しいんですね。」


 ロシュエは、心から喜びを表している。


 「勿論ですよ、オレからもお願いしますよ。」


 「では、決まりですね、では、葬式の予定日なんですが、我々、農場の代


表と、ホーガンさん達と相談したんですが、3日後では如何でしょうか。」


 ロシュエも、ありがたい話だと思って要る。


 普通で有れば、戦死者の葬儀は兵士達だけが参加して行うのだ、だが、今


回の葬儀は農場の人達と野盗隊も参加すると言うのだ。


 「その日程も決まったのか。」


 「ハイ、その頃であれば、我々もですが、負傷された兵隊さんも少しは落


ち着かれていると思ったんです。」


 農場の人達は兵士達が受けた傷の回復状態も考えていたのだ。


 「うん、そうだなぁ~、負傷程度によっては葬儀に出席出来る兵士も居る


と思うんだ。」


 「将軍、何時も言われておりましたね、この農場ではみんなは仲間だと、


我々も同じなんですよ、我々の仲間が戦死したんです。


 その仲間の為に、葬儀をするんですから、全員が参加するのが当然だと思


って要るんです。」


 側に居たイレノアも、今は、当然だと思って要る。


 「それじゃ~、オレの出番は無いって事か。」


 と、ロシュエは、正直な話、少し寂しかったのだ。


 「いいえ、将軍は、この農場では一番大事な人物です。


 そんな大事な人物に出番が無いとは、私達は思っておりませんよ、将軍に


は、当日、お話しをして頂きたいんです。」


 「オレが、何の話をするんだ。」


 「私達、農場のみんなは、戦死された兵隊さんの事を忘れない様に、と、


思っています。将軍からも、その話をして頂きたいんです。」


 ロシュエは、ニンマリとして。


 「よし、判ったよ、オレが、何時もの調子で話をすればいいんだな。」


 「ハイ、その通りです。」


 ロシュエの出番は決まった。


 「其れと、将軍、兵隊さん達のご遺体は、34台の馬車で共同墓地に向か


うようにと思って要るんですが、私達の願いは、将軍が、先頭で歩かれ、そ


の馬車の周りを数十人の兵隊さんが囲み馬車を連ねます。


 馬車の後にも数十人の兵隊さん、最後に司令官の順番と考えたんです


が。」


 ロシュエは、何も反対する気持ちは無かった。


 農場の人達は、前後を兵士に守られた、34台の馬車を共同墓地に送り届


けようと考えたのである。


 「其処までの事まで考えられたんじゃ~、オレが反対する理由が無いよ、


よし、わかったよ、今回の葬儀はみんなで行うんだから、全て、貴方方の考


えた方法で行ってくれ。


 オレは、司令官に、前後を守る兵士を選ぶ様に話をするからね。」


 「其れじゃ~、私達が進めても宜しいんですか。」


 「うん、全部任せたよ、後は、オレが、当日、何かを話すか考えればいい


んだなぁ~。」


 「ハイ、将軍、その通りです。」


 「じゃ~、頼んだよ。」


 「では、私達は、之で失礼しますので。」


 農場の代表者と野盗隊の代表者達が部屋を出た。


 「イレノア、農場の人達は、本当に優しい気持ちの持ち主だなぁ~。」


 ロシュエは、胸に熱いものが来るのを感じた。


 「私も、将軍と同じ気持ちですが、でも、特に子供達が可哀想なんで


す。」


 ロシュエは判っていた。


 「其れは、オレも判って要るよ、戦死者も含めてだが、兵士達は、何時も


子供達と遊んだり、農場では、農作業を手伝ったりとしていたからなぁ


~。」


 「そうなんです、子供達も理解が出来ないんですよ、何時も遊んでくれる


兵隊さんが、何故、眠っているのと、母親に聞くんですが、其れも、特に、


幼い子供達なんです。」


 「うん、そうだろうなぁ~、10歳を過ぎると少しは判ると思うんだろう


が、5歳前後の子供じゃ~なぁ~。」


 「農場では、どの親達も、子供の遊び相手が出来なかったんで、年齢の幼


い子供達は、少し上の13歳くらいの子供が面倒を見てたんです。


 でも、農場の奥では、場外近くの音や、声は、全く聞えませんので、余計


に判らないんです。」


 「そうか、オレ達は、子供達の事まで、神経を使って無かったと言う事だ


なぁ~。」


 ロシュエは、二度と戦はしないと、この時、心に誓ったので有る。


 「将軍、私達は、将軍や司令官の心使いは知って要るつもりです。


 でも、農場の子供達は、将軍や司令官よりも、兵隊さんの方が一番大切な


んですよ。」


 「幼い子供達の事を此れからの課題にするよ。」


 「私も、先程、農場の人達が言っておられたとおりだと思います。


 将軍は、何時も農場の人達を大切に考えておられる事を。」


 「だけど、其れは、大人を対象と考えただけで、子供達の事までは、頭が


回らなかったと、言う事だなぁ~。」


 「でも、何時かは、子供達も大きくなればわかってくれると思います。


 その為にも、私を含めてですが、全員が戦死された兵隊さんの事を忘れて


はならないと思うんです。」


 ロシュエは、イレノアの言葉が嬉しかった。


 「イレノア、有難うよ、オレ達は軍人だから、何時も、戦死を覚悟はして


要るんだよ、誰かが犠牲になる事で、他の人達が助かるのだ、其れで、いい


と思って要るんだ。」


 「でも、其れは、兵隊さんだからで、私達は、誰も犠牲に成って欲しくは


無いんです。」


 やはり、イレノアは、他の女性とは違うと、ロシュエは思ったので有る。


 「そりゃ~、オレだって同じだ、司令官だって、部下が犠牲になってもい


いとは思って無いよ。」


 だから、戦争は嫌いなんだと思って要るロシュエだった。


 其れは、兵士達も同じである。


 「将軍、私は、この先の人生でも、今回の戦で亡くなられた人達の事を忘


れる事は無いと、思っています。」


 イレノアは、今まで苦労した事よりも、今回の戦が一番、心の中に残って


いるのだ。


 「オレもだ、オレはねぇ~、この先もだが、二度と戦はしたくは無いん


だ。」


 「将軍の気持ちを農場の人達全員が理解されております。


 でも、今回の戦争だけは、避けて通る事の出来なかった戦争だと。」


 イレノアも判ってはいる。


 「イレノア、君達にオレからお願いが有るんだが。」


 「えっ、私達にですか。」


 イレノアは、一瞬、驚いた、ロシュエは、一体、何を頼むだろうと。

  

 「オレはねぇ~、今回の戦もだが、この農場の決まり事なんだが、今までは言葉だけで


伝えていたんだ、其れは、其れで、いいと思うんだ、オレは、今までの出来


事を書き物として残して置きたいんだ、その為には、君達の協力が必要なん


だが、イレノアは文字は書けると思うんだが。」


 イレノアは頷き。


 「私達は、農民ですから農家に居た頃は読み書きは出来なかったのです。


 でも、お城に行った時から読み書きを教えて頂きました。」


 「そうか、じゃ~、全員が読み書きが出来るんだな。」


 「ハイ、全員が読み書きは出来ます。」


 イレノア達は全員が読み書きが出来る事で、この先に思いがけない仕事を


する事に。


 「オレは、この農場をこの先、数百年は続いて欲しいと願っているんだ、


だけどなぁ~、言葉だけじゃ、後世の人達は、その言葉だけじゃ~な、オレ


達が、最初から農場を造った連中の話に信憑性が無いと、言われる可能性が


有ると思うんだ、それにだ、数百年も経てばだよ、誰も知らないと思うん


だ、オレは、其れをだ、書き物として残し、後世の人達に伝える事が出来れ


ばと思うんだが。」

 

 「それでは、将軍は、今までの事を全部書き残したいと。」


 「そうなんだ、オレが、駐屯地に居た頃の話は、テレシアに聞けば判る


よ、彼女は駐屯地からの生き字引見たいの人物だからね。」


 だが、イレノアは、あの城での出来事は残したくは無いのだ。


 「将軍、私達が、あのお城で起きた事も書き残すんですか。」


 「イレノアの気持ちは、オレだってわかるよ、だけどなぁ~、オレ達だけ


で、この農場が造られたとは思ってもいないんだ、イレノアや野盗隊もだ


が、何故、大きな戦になったのかを、後世の人達に伝える必要が有るんだ。


 イレノア達の気持ちを考えると残したくは無いと思うが、今は辛いが、書


き残して欲しいんだ。」


 「私達が受けた悲しい出来事を書き残せば、後世の人達は同じ様な事はし


ないと思われるんですか。」


 ロシュエは、イレノアに無理を言っていると思って要る。


 「オレは、信じたいんだ。」


 「判りました、でも、私、一人で書き残す作業をするんですか。」


 イレノアは、やはり賢い女性だ、だが、その様な大役が一人で出来るのだ


ろうか。


 「オレも、イレノア、一人で出来るとは思わないよ、君達全員で手分けし


て行なって欲しいんだ。」


 ロシュエは、書き残す作業をイレノア達全員の協力が必要だと。


 「私達、全員で行うんですか。」


 「そうだ、君達全員で書き残すんだ。」


 「それでは、将軍や司令官のお世話する時間が減る様な事に成れば。」


 「いいんだ、オレや、司令官の世話なんて必要無いんだから。」


 イレノアの表情が変わった。


 「将軍は、私達の世話は必要無いと、では、私は将軍の。」


 「イレノア、誤解はするなよ、オレだって、イレノアが側に居て欲しいん


だ、だけどなぁ~、イレノア、オレは、今の事よりも、将来の事を考えて要


るんだ。」


 「将来の事をですか。」


 「そうだ、オレとイレノアの間に出来る子供には。」


 この時、イレノアの顔が一瞬にて赤く染まったのだ、だが、ロシュエは気


付いていないのか話を続ける。


 「今は話をする事が出来るが、その子供だよ、オレ達にとっちゃ孫だな、


そのまた、子供に果たして、本当の話は伝わって行くのか、オレは、本当の


事をオレ達の子供に残したい、ただ、それだけなんだ。」


 ロシュエの気持ちは良くわかるが、だが、書き残すと言っているが、どれ


だけの時間が掛かるのか、イレノアも想像出来なかった。


 「将軍、わかりましたが、書き残す作業は何時まで続くんですか。」


 「君達の時間が許される限りだ。」


 其れは、途方も無い事なのだ、それ程、大事な事なのか、イレノアは判ら


ない。


 「私は、それ程、大事な事では無いと思うんですが。」


 「誰でも、同じ事を思うよ、だが、この農場が続く限り、語り伝えられて


いく、其れは、いいと思うんだ、だけど、百年後に伝えられた話が、果たし


て、本当の話なのか、いや、多分だがね、全く別の話に成っている事だって


有りうるんだ。


 イレノアは、間違った話を君は天国で聞いた時、どんな気持ちになる、オ


レもだが、そんな話じゃ~無いって、本当の話はって言いたいが、果たし


て、天国のオレ達の事を一体、誰が聞いてくれるんだ。」


 其れは、当然だった、人間も何時かは死を迎える、その後に伝わる話は、


全く別の話に変わっているのだ。


 ロシュエは、自分達の生きた証を残して置きたいのだ。


 「将軍、わかりました、でも、何時から始めるのですか。」


 「何時からでもいいんだ、オレ達の事は後でもいいんだよ、イレノア達の


事から始めてもいいんだからね、其れは、君達に任せるからね。」


 「その前に、私はみんなに話をします、みんなの協力が必要なんですか


ら。」


 「うん、其れでいいよ、君達の思い通りでいいんだからね。」


 イレノアの頭は少し混乱している、だが、大好きなロシュエの頼みでは、


断る事も出来ないのだと。


 「だけど、今、直ぐに始める必要は無いよ、兵士達の葬儀が終わり、少し


時間の余裕が出来てからでいいからね。」


 「ハイ、其れは、私も承知していますので。」


 ロシュエ自身も、少し休みたいと思って要る。


 「イレノア、今日は、疲れているだろうから、早く休みなさい。」


 「ハイ、判りました、では、私は帰りますので。」


 「イレノア、何処に帰るんだ、君の家は今日から此処なんだから。」


 イレノアは、何時もの様に帰るところだったが、ロシュエは、今日から一


緒に過ごすと決めていたのだ。


 「明日の朝、戻ってもいいんだから。」


 「ハイ、判りました。」


 と、イレノアは、小さな声で言ったが、内心は嬉しかった、此れからは、


この家がイレノアの住むところになったのだ。


 「イレノア、今日は本当に疲れているだろうから、別の部屋で休むといい


からね。」


 「ハイ、判りました、では、私は。」


 イレノアは、頭をぺこりと下げ、隣の部屋に入ったのである。


 ロシュエも、本当は早く休みたいのだが、明日からの事を考えていた。


 明日は早くから野盗隊が敵軍戦死者の火葬を始めるだろうが、どんな方法


で行うのか考えて要る途中で眠ってしまった。


 明くる朝早くから馬車の音が聞こえる、一体、何が起きたのだと思い起


き、表に出ると、其れは、野盗隊が数十台の馬車を連ねて城門を出て行くと


ころだ。


 「オ~イ、一体、何の騒ぎだよ、こんな朝早くから。」


 「あっ、将軍、起こして申し訳有りません。


 オレ達は、城外の戦死者を火葬するために行くんです。」


 「そうか、ありがたい事だ、大変な作業だが、気を付けてなぁ~。」


 「ハイ、判りました、では。」


 と、言って、野盗隊は、次々と城外に向かって行く。


 だが、馬車の音を聞いて起きたのはロシュエだけでは無かった。


 城門の近くには司令官の宿舎や兵士達の兵舎も有る。何事が起きたのか、


司令官や兵士達も起きてきた。


 司令官もロシュエと同じ質問をしたが、答えは同じだったので、司令官や


兵士達は宿舎に戻った。


 先頭に出た、野盗隊は早くも森から木を切り出し火葬の準備に入って要


る。


 その頃、イレノアも起きてロシュエの食事の用意を始めている。


 「イレノア、お早う、ゆっくりと休めたかね。」


 イレノアは、嬉しそうな顔付きで。


 「ハイ、私は、何故かわかりませんが、我が家に居る様な気持ちで、ゆっ


くりと休ませて頂きました。」


 イレノアの表情にも出ていた、今までとは違う何か楽しそうだ。


 「そうか、其れは良かったよ、実はね、オレも、久し振りにゆっくりと眠


れたんだ。


 何か理由はわからないんだが。」


 ロシュエは顔を洗い、何時もの椅子に座った。


 「将軍、今日は、何も用意していませんので、スープとパンだけで許して


下さい。」


 ロシュエはありがたい気持ちだった。


 「何も、君が謝る事は無いんだ、オレが、強引に言ったんだから、君にも


心配させてしまって。」


 ロシュエの強引な口調と態度は、イレノアは嬉しかった。


 「私は、私は、将軍に全てをお任せします。」


 と、言って顔も赤くなっている

 

 ロシュエは、食事も終わり、イレノアは後片付けも終わり、一度、戻って


いく、其れは、今日からはロシュエの宿舎に住む為の用意するためなのだ。


 暫くの時間が過ぎ、イレノアが戻って着た、両手に荷物を持つが、顔は何


時もと違って要る。


 イレノアは、荷物を整理して要る、その物音を聞き、ロシュエも嬉しそう


な顔に成って要るのだ。


 片付けも終わり、イレノアはロシュエの側に着た。


 「将軍、改めて、今日からお世話に成りますので、よろしくお願いいたし


ます。」


 と、イレノアは頭を下げた。


 「うん、オレも、此れからよろしく頼むよ、イレノア、オレは、こんな人


間なんだから、それだけは判って欲しいんだ。」


 イレノアは改めて思った、このロシュエと言う人物に表も裏も無い人なん


だと。


 「いいえ、私こそ、将軍は、私の過去の事は気にならないんですか。」


 「そんな事を言ったら、オレは、どうなるんだよ、オレの過去なんか、誰


にも言えないんだからね。」


 と、笑った。


 それから暫くの時間が経った頃、技師長が、農場の代表十数人と野盗隊の


数人を連れて着た。


 「将軍、宜しいでしょうか。」


 「技師長、なんだよ、そんな深刻な顔付きで。」


 「実は、将軍に相談が有るんですが。」


 と、技師長は、本当に深刻な顔付きだ。


 「実は、農場の事なんですが。」


 「農場が、如何かしたのか。」


 ロシュエは、何が有ったのか知りたいのだ。


 「将軍、今、この農場に、一体、何人が生活しているか、ご存知でしょう


か。」


 ロシュエは、話の意味がわからないので。


 「何人と言われてもなぁ~、オレは、人数の事まで知らないんだ。」


 「今、4万人か、5万人は居るんですが。」


 ロシュエは、一瞬驚いたのである。


 「えっ、そんな、人数になっていたのか。」


 「其れで、相談と言うのは、農場を拡張したいんですが。」


 「それ程、狭くなっているのか。」


 ロシュエは腕組みをして考えて要る。


 「ハイ、今の状態では、全員の食料を確保する事が難しくなってきますの


で。」


 ロシュエは、まだ、農場を拡張する必要は無いと思っていたのだが、技師


長の言う通りだと、早く、農場を拡張する必要があると判断した。


 「技師長、オレは、まだ、農場の拡張は必要が無いと思っていたんだ、だ


が、今の話が本当ならば、早く広げる必要があるなぁ~。」


 「其れで、私と農場の代表と野盗隊の代表とも相談したんですが。」


 その時、司令官と5人の隊長が着た。


 「閣下、之は、失礼しました。


 何か、重要な、お話しでしたら、私達は後にでも、宜しいのですが。」


 「いや、司令官達にも関係する話なんだ。」


 「ハイ、閣下、では、失礼して座らせて頂きます。」


 と、司令官と隊長達も座ったのだ。


 「技師長、話を続けてくれ。」


 「ハイ、判りました、先程も申し上げましたが、このままでは、農場で作


る穀物などの作物だけでは、全員が食べていく事が出来なく成ります。


 其れで、私達が考えた方法なんですが、農場を出た、左側の草原を開墾し


たいんです。」


 司令官達は驚いたのだが、ロシュエは驚きもしなかった。


 ロシュエは頷き、暫く考えるのだ。


 「将軍、オレ達は、この農場が大好きなんです、出来る事なら、オレ達


は、一生、この農場で過ごす事が出来たら嬉しいんです。」


 「将軍が、この地に来られ、之まで、大変な苦労をされた事は知っており


ます。


 この農場を造られたのも、将軍だと言う事も、私達は、将軍と一緒に此処


で、一生送る事が出来れば最高だと思って要るんです。


 将軍、みんなのために、この農場を大きくして行きたいのです。」


 ロシュエは、以前から考えて要る事があった。


 「みんな、有難うよ、実は、オレも、今の農場の規模では狭いと思ってい


たんだ。


 だけど、今まで、その機会が無かったんだ。」


 「其れは、あの敵国の事なんですね。」


 「技師長、その通りだ、今は、その敵軍もいなくなった、と、言う事は、


此れからは、農場を広げる事が出来ると言う事に。」


 「其れじゃ~、農場の拡張は。」


 「勿論、大賛成だ。」


 技師長をはじめ、農場から着た全員が大喜びだ。


 司令官は、何かを考えていたのだ。


 「閣下、実は、私も、考えが有りまして。」


 ロシュエは、正か、司令官が考えて要るとは思って無かったので。

 

「司令官も、何か、考えていたのか。」


 「ハイ、閣下、私の考えを聞いて頂きたいのですが。」


 「いいよ、聞かせてくれるか。」


 「閣下、私は、この農場と、私達が居りました、城を統合したいと思って


要るんです。」


 「えっ、今、司令官、何と言ったんだ、この農場と司令官の居た城を統合


すると、だけど、そんな事は簡単じゃ、無いぞ。」


 と、ロシュエは、司令官の発言に驚くのだが、司令官も今まで考えていた


のだろう。


 「閣下、私は、自分達が居りました城には、今は誰も居りません。


 其れで、閣下には、あの城の、城主になって頂きたいと、私は、以前から


考えておりました。」


 ロシュエは、正か、司令官がそんな事を考えて要るとは思わなかった。


 「オイ、オイ、司令官、オレは、城の城主ってガラか、オレは、この地を


離れる気持ちなんか無いんだぜ。」


 ロシュエは、この農場で一生を終える積もりなのだ。


 「将軍、私の考えなんですが、宜しいでしょうか。」


 「実は、私の考えも司令官の考えておられる話に近いんですが。」


 司令官は、技師長の話に驚くのだ。


 「オレが、驚くほどの話か。」


 技師長は頷き。


 「将軍、先程も申し上げましたが、今の農場では狭いと。」


ロシュエは頷き。


 「其れは、さっき聞いたが、其れと、司令官の話に何か関係でも有るの


か。」


 「農場を造る前に、城壁を造るんですが、私の構想では、司令官の居られ


ました、お城まで城壁で結ぶんです。」


 ロシュエもだが、司令官達の驚きは大変だった。


 「技師長、この農場から城まで城壁を造るというか、そんな事は簡単に出


来ないぜ。」


 「其れは、私も、十分承知しております。


 ですが、同じ造るのであれば、農場から、お城まで続けなければ意味が無


いんです。」


 技師長の言った、意味が無いとは。


 「技師長、だが、それには大量の岩石が必要になるんだぜ、その岩石は何


処に有るんだ。」


 技師長は、既に調査済みで。


 「岩石の事ですが、農場からお城の手前までは十分と言いますか、大量に


有るんですよ。」


 ロシュエは、知らなかったのだ、それ程大量の岩石が農場近くに有ると


は。


 「将軍、私は、城壁から左側にも有る事を知っております。」


 「城壁の左側と言うと草原にか。」


 「ハイ、その通りです、私達は草原には行く必要も無かったのですが、私


は、あえて調べに行ったんです、すると。」


 ロシュエは、以前の事を思い出したのだ。


 「司令官、以前、大きな川に行ったのを覚えているか。」


 「ハイ、閣下のご命令で、対岸の村民を助けに行った事が有りますが。」


 「その時にだが岩石は有ったか。」


 「ハイ、大量に有った様に思いますが、その時は、岩石ばかりで、私達は


行く時も、特に帰りの時は、岩石を避けて戻って着た事を覚えております。


 こんな事に成るんでしたら、初めから調べておきましたのに。」


 「それじゃ~、司令官も、大量に岩石が有ると知って要るのか。」


 「閣下、私は、技師長が調査を終えているので有れば、問題は無いと思い


ますが、それとは別に、道具が必要だと思いますが。」


 技師長はニヤリとしたのだ。


 「司令官、実は、私達の農場では、以前から農場で使用する道具類を作っ


ております。」


 そんな時間は無かったはずだと思う司令官だが。


 「でも、道具を作る時間はあったんですか。」


 「司令官、私達は農民ですよ、農民に休む時間は有りません。


 ですが、将軍が3日働き、1日は休めと言われましたよ、その通りですよ


ねぇ~。」


 ロシュエは頷き。


 「うん、その通りだ、休みの使い方は自由だと、判ったぞ、君達は、その


休みを利用したんだ、そうだろう。」


 技師長も農民達も、ニッコリとして頷き。


 「将軍、その通りです、報告する事を忘れておりました、申し訳有りませ


ん。」


 「いいんだ、技師長、オレは、あの敵軍の攻撃に対する反撃方法ばかり考


えていたんだ、農場の将来を考える時間が無かったと言えば、嘘になる


が。」


 「いいえ、私達はそんな事は思っておりません。


 将軍や司令官が、この農場を守って下さっている事は、農場の誰もが知っ


ております。


 将軍、私達にも、この農場を大きく成る様にお手伝いをさせて頂きたいん


です。」


 ロシュエは、感激している。


 「其処まで考えていたのか、みんなは。」


 「将軍は言われましたよ、この農場に居る全員が仲間だと、オレ達の野盗


隊も仲間だと、だから、オレ達も仲間のために出来る事なら何でもする


と。」


 「よし、判った、それじゃ~、技師長、話を進めてくれるか。」


 「ハイ、将軍、左側に有る草原の岩石を集め、城壁を造るんです、造り方


は、この農場の城壁と同じ方法で良いと思いますが、但し、出入り口が必要


なんです。


 城壁の前は路に成ります、その路に歩いて1日位のところに出入り口を造


ります。」


 「人間の歩く早さでか。」


 「ハイ、その通りです、私は、馬の速さを基にすると、出入り口は遠くに


成りますので、誰もが、馬と言いますか、馬車に乗って行くとは限りません


ので、人間であれば歩く早さを考え、少しですが、手前に造る事にしたんで


す。」


 ロシュエは納得したようで。


 「そうか、判ったよ、其れで、城壁の大きさは。」


 「其れも、全て、今の農場を基にしたんです。


 私は、人間よりも狼や猪の方が恐ろしいんです。」


 ロシュエは頷き。


 「オレもだよ、時々、森に入るが、あの狼の目を見ると、早く逃げたいと


思うんだ。」


 「その森の大木も利用しますので。」


 「当然だと思うよ、其れで、出入り口の扉は頑丈に作るのか。」


 「ハイ、その通りです、私達は城壁造りと並行して、新しい農場に住む家


も造っていきたいと考えております。」


 「えっ、家も造っていくのか。」


 一体、何軒の家を建てるのか知らないが。


 「それに、まだ有るんですよ。」


 「農場も造り、家も建て、一体、後、何を作るんだ。」


 技師長の構想は大きくなっていくのだ。


 「牛と馬の放牧場を作りたいんです。」


 「えっ、放牧場まで作るのか、だけどよ、狼や猪を防ぐ方法は。」


 技師長は自信が有った。


 「其れなんですが、放牧場を岩石で囲いを作る必要は無いと思っておりま


す。


 森から切り出した木材を利用するんです。」


 ロシュエは技師長の説明に感心するのだ。


 「木材を利用するのか。」


 此処は、技師長の腕の見せ所なのだ。


 「ハイ、人間と違って、狼や猪は火を使う事は有りませんので、木材は丸


太のままで使う必要は無いと思いますので、薄板をつくり、狼が飛び越えら


れない高さと、猪が穴を掘る事も出来ない様に、一番したには程よい岩を埋


め、その上には丸太を使います。


 私は、其れで十分だと思っておりますが。」


 ロシュエも、司令官達も驚きの連続で。


 「技師長、全てを任せるよ、後は、作業に入る人間だなぁ~。」


 「将軍、オレ達、野盗隊が入る事になっています。」


 「えっ、其処まで話しが纏まっていたのか。」


 「ハイ、将軍は、何時も大変忙しい人ですから、落ち着いて時にお話をし


ようと思っておりました。」


 「だけど、その作業は何時から始めるんだ。」


 ロシュエは、戦死した兵士達の葬儀が終わってからだと考えたのだ。


 「私達も、戦死されました、兵隊さんの葬式が終わるまで入るつもりは有


りませんので。」


 「そうか、有難うよ、オレも、葬式だけは終わりたいと思っていたん


だ。」


 ロシュエも、一安心したのだ。


 「将軍、其れで、オレ達農民は今度造る城壁なんですが、名前を付けたい


んですが。」


 「えっ、城壁に名前を付けるのか、オレは、別に名前なんてどうでもいい


と思っているんだが。」


 ロシュエは、突然、城壁に名前を付けると言われ本当は嬉しかったのだ。


 「ですが、オレ達は農民でも、今は立派な農場に居るんです。


 その農場が司令官の居られたお城と一緒になるんです。


 誰が、考えても大きなお城に成るんですよ。」


 ロシュエは嬉しくてたまらないのだ。


 「うん、其れはわかるよ、だけど、みんなは決めているんだろう。」


 農夫はニッコリとして。


 「ハイ、実は、農場の子供達が決めたんですよ。」


 ロシュエは、正か子供が名前を考えたとは思っていなかったので。


 「何、子供達が名前を考えたのか。」


 子供達の考えで有れば仕方が無いと思ったのだ。


 「じゃ~、なんて、名前を考えたんだ。」


 農夫は二コリとして。


 「其れが、ロジェンタ城と付けたんで、子供に意味を聞いたんですが、子


供達は意味なんか無いよって言うんですよ。」


 「ロジェンタ城か、うん、オレは気にいったぞ、司令官達はどうだ、ロジ


ェンタ城は。」


 ロシュエは大満足だと思った。


 「閣下、私も、大賛成ですね、よい名前だと思います。」


 隊長達も頷き賛成したのである。


 「よし、之で決まりだ、ロジェンタ城に。」


 農民達は喜んだ。


 「将軍、有難う御座います。


 私は、子供達の喜ぶ顔が見えますよ。」


 「そうだなぁ~、オレは、子供達が一番喜ぶんだったら、何も言う事は無


いよ。」


 「それじゃ~、将軍、戦死者の葬儀が終わり、2~3日後から、城壁と家


の建築と放牧場の建設作業に入ります。」


 「オイ、オイ、何も、一度に始める必要は無いと思うんだが。」


 技師長達も嬉しかったのだ。


 「判っておりますが、私も、早く完成させたいんです、それに。」


 「それに、なんだ。」


 「私よりも、将軍は、この農場に残られるんですか、それとも、お城に移


られるんでしょうか。」


 ロシュエの心は決まっていたのである。


 「オレか、オレは、この農場からは何処にも行かないよ、そんな、話は、


当たり前の話じゃないか、今頃、何を言っているんだ。」


 ロシュエの口調は何時に無く強行だった。


 「将軍のお気持ちは、変わらないと思っておりました。


 では、司令官に、お城に移っていただくのは。」


 「オレは、別に反対はしないよ、後は本人の問題だからなぁ~。」


 と、ロシュエは言ったのだが、司令官は考えて要る。


 「閣下、私の気持ちなんですが、はっきりと申し上げて、今は、決める事


が出来ないんです。」


 ロシュエも判っていたのだ、司令官は、元はあの城で司令官だった。


 其れが、今では、農場の生活に不満は無い、それでも、城に戻る必要が有


るのかと。


 「うん、オレは、其れでいいと思って要るんだよ。」


 「司令官、私達も、今、お決めに成る必要は無いと思っておりますの


で。」


 「そうですか、それでは、お言葉に甘えて、結論は後日と言う事に。」


 司令官は、答えを濁したのだ。


 「良し、之で、決まりだ、後は、戦死者の葬式を無事に終わらせる事


だ。」


 「ハイ、閣下、私もその様に思います。」


 そして、3日後、戦死者の葬式当日になった。


 イレノアは、ロシュエの為に、特別に作っていた軍服が当日の朝に出来上


がったのだ。


 「将軍、何とか、この日に間に合いました。」


 イレノアは、疲れた顔つきだったが、それでも、気持ちは嬉かった。


 「うん、何がだ、イレノア。」


 「将軍の軍服です。」


 「何、本当かよ、じゃ~、君は、この数日でつくり上げたのか。」


 イレノアは二コットして。


 「ハイ、でも、将軍に満足していただけるのか判りませんが、今日だけ


は、農作業の服装で兵隊さんの葬式に出席されると、天国の兵隊さんの笑い


者になると思いましたので。」


 ロシュエは、どう表現していいのか判らず、突然、イレノアを抱きしめ


た。


 「イレノア、オレは、何と、お礼を言って良いか判らないんだ、本当に有


難う。」


 と、イレノアにキスをした。


 イレノアは、突然のキスに驚くが、内心はこれほど嬉しいと思う事は無か


ったのだ。


 「将軍、私、息が出来ません。」


 と、言ったが、本当は離れたくは無かったのだ。


 「でも、出席者の皆さんに笑われるかも知れませんが。」


 「いいや、オレはね、この農場の人達は、イレノアが作ってくれた軍服を


見て、笑う様な人達はいないと思って要るんだ。」


 其れは、間違いは無かった。


 「でも、後、数日あれば、と、今になって思うんです。」


 イレノアは、自身の気持ちが、許せなかったのだろうと、ロシュエは思っ


たが。


 「イレノア、いいんだ、君は、この日に合わせて作ってくれたんだ、其れ


こそ、反対にみんなは拍手してくれるよ、特に、天国の兵士達はね。」


 「本当にそうだといいんですが。」


 「イレノア、いいんだ、このオレが納得しているんだからね、其れより


も、早く着たいんだよ、出来立ての軍服を。」


 「ハイ、判りました。」


 と、イレノアは、テーブルの上に置いて有る軍服をロシュエに着せた。


 其れとは別に、スラックスも特別製なのだ。


 「イレノア、本当に素晴らしい軍服だ、之なら、誰もが驚くぞ。」


 ロシュエは、またも、イレノアを抱きしめ、キスをするのだ。


 イレノアは勿論だが、この農場に居る人達は、将軍、ロシュエは軍服を持


っていないと言うよりも無いと知って要る。


 其れが、イレノアが作った軍服は、誰が見ても立派な出来上がりなのだ。


 ロシュエは、新品に近い軍服で正装した頃、司令官も何時もの軍服では無


い新しい軍服を着用し。


 「閣下、そろそろ、お時間ですが。」


 司令官も、何時もの軍服では無く、新しい軍服を着て何か、嬉しそうな表


情である。


 「おっ、何と、素晴らしい軍服なんだ。」


 「ハイ、閣下も、大変素晴らしい軍服姿で、何時もの閣下では無い様に思


われますが。」


 司令官も、大満足の表情で。


 「司令官の軍服は、一体、誰が作ったんだよ。」


 司令官は、少し照れている様子だ。


 「ハイ、実は、フランチェスカが作ってくれました。


 其れも、つい先程まで掛かったと聞きましたので。」


 「実は、オレもなんだよ、イレノアが作ってくれたんだが、彼女もフラン


チェスカも眠る時間も潰して、オレと司令官の為に、新しい軍服を作ってく


れたんだ。」


 「私も、フランチェスカに、何とお礼を言って良いかわからずにいまし


た。」


 「何、司令官は、まだ、フランチェスカに礼を言って無かったのか。」


 「ハイ、その通りです。」


 「何が、その通りですだ、このバカが、今すぐ戻り、フランチェスカを抱


きしめてキスをするんだ、早く行け。」


 ロシュエは、笑いながら言ったのだが、司令官は真剣に受け取り、宿舎に


戻って行ったのである。


 「将軍、私もですが、フランチェスカも、司令官のお気持ちはわかってい


るんです。


 其れなのに、何も、今、行く必要は無いと思うんですが。」


 イレノアの顔付きが変わり、少し怒っているのだ。


 「司令官にはね、あれくらいの事を言わないと駄目なんだ、だけど、イレ


ノア、彼には、今で無いと駄目になってしまうんだよ。」


 「其れは、何か意味でもあるんですか。」


 ロシュエはニヤリとした。


 「フランチェスカは、司令官を好きだと思って要るはずだ。」


 「えっ、そんな事までわかるんですか。」


 イレノアは信じて無かったのだが。


 「そうだよ、オレには判るんだ。


 イレノアは、こんなオレを好きだと言ってくれた。


 勿論、オレはなぁ~、イレノアが大好きなんだよ、フランチェスカも、嫌


いな司令官の軍服は作らないと思って要るんだ、それもだ、この数日間は二


人ともまともに眠って無いのは、イレノアの顔を見れば判るんだ。」


 イレノアもフランチェスカが司令官の事を。


 「私も、知っております。」


 フランチェスカはイレノアに全てを話していたのだ。


 「イレノア、其れでいいんだよ、司令官と言う男はな、少しくらい、今の


ように言わないと気持ちを伝える事が出来ないと思って要るんだ、其れは、


オレとは全く違うんだ。」


 「将軍、わかりました。」


 と、言った時、司令官が戻って着たのである。


 「将軍の言われた通りに行ってきました。」


 「うん、其れで、どうだったんだ。」


 ロシュエはニヤニヤとしている。


 「何をでしょうか。」


 「オイ、司令官、本当にわかっているのか、フランチェスカの気持ち


を。」


 「ハイ、存じております。


 私も、フランチェスカが大好きなんですから、その事も伝えました。」


 「うん、其れで。」


 「ハイ、彼女も、私の事を大好きだと言ってくれました。」


 ロシュエはイライラしている。


 本当にこの司令官と言う男は堅物なんだから、と。


 「オレは、そんな話を聞いて要るんじゃ~、無いんだ。


 彼女を抱きしめたのかと聞いて要るんだ。」


 「ハイ、勿論です。」


 「キスもか。」


 「ハイ、その通りです。」


 「良し、之で決まった。


 此れからは、フランチェスカと一緒に暮らすんだ。」


 「えっ、此れから、一緒に生活をするんですか。」


 まぁ~、何と言う事を平気で言うロシュエだと、イレノアは思ったが、自


分の時も同じだった、だけど、フランチェスカにも其れくらいの強引でなけ


れば話は何時までも進まないと思って要るのだ。


 「其れで、いいんだ、みんなも喜んでくれると思うからよ。」


 「ハイ、その様に致します。」


 と、司令官は二コ二コしている。


 「よし、そろそろ時間だと思うんだ、イレノアも当然参列してくれるんだ


ろう。」


 イレノアは疲れてはいるが、この葬式だけは参列する事は大切だと思って


要る。


 「ハイ、勿論です。


 私達の命の恩人ですから。」


 「そうか、其れじゃ~、行くとするか。」


 ロシュエと司令官は新しい軍服に身を包み、葬儀会場に向かった。


 「将軍、何と言う素晴らしい軍服ですが、以前から持っておられたんです


か。」


 式場に向かう途中で兵士達は同じ様な質問をするのだ。


 「いや~、ついさっき出来上がったばかりなんだ、どうだ、似合うだろ


う。」


 と、ロシュエは二コ二コしながら自慢するのだ。


 「えっ、本当に、でも、本当に素晴らしいですよ、やはり、将軍には新品


の軍服が良く似合いますよ。」


 「そうか、そんなに素晴らしいか、この軍服は。」


 側では、司令官も嬉しいのだ。


 「勿論です、私もわかりましたよ、今日の葬式の為に新品の軍服で出席し


て下さると、あいつらも、天国で大喜びしますよ。」


 イレノアは、戦死者にも恥ずかしく無い立派な軍服を作ってくれた、と、


ロシュエは感謝の気持ちがまたも湧いてきた。


 「そうだろう、オレも、何時かは、天国ってところに行くんだからなぁ


~。」


 「えっ、将軍も天国に行かれるんですか。」


 と、兵士はニヤリとするのだ。


 「オイ、オイ、当たり前だろう、オレはなぁ~、天国に行き、今日の仲間


達と楽しく過ごすんだよ~。」


 と、ロシュエもニヤリとするのである。


 「其れじゃ~、将軍と自分達は天国に行き、地獄には。」


 「バカだなぁ~、そんな事、始めから判りきった話だ、あの敵軍の奴らだ


よ~。」


 兵士もロシュエも、葬式だと言うのに楽しそうである。


 「そうでしたね、私がバカでした。


 私達も何れは天国に行くんですからね、将軍、天国で楽しく過ごしたいで


すね。」


 「何、オレが、お前達とか。」


 と、言ったロシュエは笑っている。


 「オレは、いやだね、オレはね、このイレノアと一緒で無いと駄目なんだ


からよ、


 お前達もわかってるんだろう、だから、天国では遠慮して欲しいんだ


よ。」


 と、ロシュエは、ウインクしたのだ。


 「いいえ、私達は、将軍の側からは離れませんからね。」


と、言って兵士も笑っている。


 話の途中で葬儀会場に到着した。


 既に、その場所には農場の人達の殆どが集まり、ロシュエ達を待ってい


た。


 式が始まり、技師長が最初に挨拶をした。


 「皆さん、只今より、先日の戦で、尊い命を我々農場の人達の為に捧げら


れました、34名の戦死者の葬儀を行います。


 まず、最初に、将軍からお話しを頂きます。


 将軍、よろしくお願いします。」


 と、技師長はロシュエと交代するのである。


 ロシュエは、一歩前に進み、その時、司令官の号令が掛かったのである。


「全員、その場で起立。」


ロシュエは34名の戦死者に敬礼をするので有る。


勿論、司令官と兵士全員が34名の戦死者に向かって敬礼をする。


「皆さん、有難う、全員座って下さい。


 兵士諸君も着席して下さい。


 全員が座るのを待ってロシュエは話を始めた。


 「農場の皆さん、今日は、本当に嬉しいです。


 先日の戦で、兵士、34名が戦死しました。


 私は、戦死した兵士に申し訳ないのですが、兵士以外に亡くなられた農場


の人達が含まれて無かった、彼ら、誇り高き、34名の勇者達は今頃天国で


さぞかし満足していると思います。


 でも、皆さん、勘違いをしないで下さいね、私は、34名の勇者を褒めて


いるのでは無いのです。


 彼らも、本当は無念だと思っています。


 私も、彼らと同じ気持ちなんです、自分達が捧げた命で農場からは一人も


亡くなられた人達がいなかった、之だけでも、彼らの心は休まると思ってい


ます。


 今頃、天国に居る34名の勇者は誇りを持って、この葬儀を見ていると、


私は、思って要るのです。


 その彼ら34名の戦死者に対し、農場の皆さんから葬式を行いたいとの申


し出に、私は、何とお礼を言って良いか判りません。


 私は、彼ら34名を含む兵士達がこの農場の人達に愛されている事に兵隊


としての誇りと責任の重大さに、改めて気が付きました。


 私達は兵士です、この農場の兵士達は皆さん命を守る為に自らの命を捧げ


る。


 之は、当たり前の話です、でも、兵士の前に、私達も一人の人間です、こ


の農場の皆さんは兵士ではなく、34名の仲間の為に葬儀を行ってくださ


り、私を含め、兵士を代表してお礼を申し上げます。」


 と、ロシュエは農場の人達に頭を下げたのである。


 「私達、兵士は戦を好んでいるので無いのです、でも、今回の戦だけは避


けて通る事が出来なかった、其れは、皆さんが一番良く知っておられます。


 戦死した若い34名の兵士達は、日頃、皆さんの農場に行き、農作業のお


手伝いや、子供達と遊んでいる姿を、私は、大変嬉しく思っておりました。


 皆さんの子供の中には、余りにも幼いために、まだ、兵士達の戦死を受け


入れる事が出来ない子供を居られます。


 実は、この私も、今でも、彼らが笑いながら戻ってくる様な気がして要る


んです。


 私は、今、ここで、二度と戦だけはしたくないと思っております。


 ですが、理不尽な城主のために苦しめられている領民を助けなかればなら


無い時には、私は、その城主と戦になるときもあるでしょう、ですが、この


農場で生活をされている皆さんの為ならば、私の命を捧げても守り抜きま


す。


 何か、訳のわからない話に成りましたが、許して下さい。


 最後に、私は、農場の皆さんにお礼を言いたい、其れは、戦死した34名


の兵士達を共同墓地に埋葬していただける事に感謝をします。」


 ロシュエは、改めて、農場の人達に向かって礼をするのである。


 「次に、司令官からもお言葉を頂きます。


 司令官、よろしくお願いします。」


 と、技師長は司令官を紹介したのである。


 司令官も一歩前に進み、改めて、34名の勇者に敬礼をし、そして、向き


を変え。


 「農場の皆さん、今日、34名の戦死者の為に、皆さんから葬式をして頂


き、彼ら、34名の勇者たちは、今頃、天国でさぞかし喜んでいると思いま


す。


 私も何れ、彼らの居る天国に行きますが、その時に、私は、34名は戦死


した君達のお陰で、この農場が守られたんだと、君達、34名は誇り高き戦


士だと、私は、今でも、彼ら、34名以外の兵士達に誇りを持っておりま


す。


 私達、兵士の存在は何れ、忘れ去られると思いますが、彼ら、誇り高き3


4名の戦士だけは、忘れて欲しくは無いのです。


 本日は、本当に有難う御座いました。


 私は、天国の勇者に成り代わり、お礼を申し上げます。」


 と、司令官も農場の人達に向かって、一礼をしたのである。


 「最後に成りますが、この農場では誰でも知って要る人物が居られます。


 私の独断ですが、農場のみんなを代表して、言葉を頂きたいと思いま


す。」


 出席した農場の人達は、あの人物だと直ぐにわかったのである。


 「テレシアさん、よろしくお願いします。」


 テレシアは突然の指名で驚いた表情をして要る。


 「テレシアです、突然の指名に、私は何も考えておりませんが、何を話し


て良いか判りませんが、私は、少なくとも、34名全員を知っております。


 彼らは、何時も陽気で、私達農場の人達に明るさを持って来てくれまし


た。


 彼らは、私の弟です、私はその様に今でも思っています。


 彼らは、休日を利用して、農作業を手伝い、農場の子供達とは、何時もに


ぎやかに遊んでくれていたのを思い出します。


先程、将軍が言われた様に、幼い子供達は、なぜ、お兄ちゃんは眠っている


の、早く、起きて、僕達と遊ぼうよ、と、言っていました。


 私は、その時に何も言えなかったんです、それ程、彼ら、34名の若者は


農場の人達と仲が良かったと言う事なんです。


 司令官は言われました、何れ、私の事は忘れ去られてしまうだろう、です


が、私も将軍もですが、彼ら、34名の戦死した若者達の事だけは、決して


忘れてはならないと思っています。


 彼らは、私達の農場を守るために戦死されたんです。


 勿論、他の兵隊さん全員です、更に、今、戦で負傷した兵隊さんも居られ


ます。


 私も、将軍が言われた様に二度と戦だけはして欲しくは無いのです、で


も、この農場を守る為ならば、私は、兵隊さんだけでなく、私も命をかけて


戦います。


 話はそれましたが、如何か皆さん、34名の戦死された若者達の事を何時


までも忘れ無い様にして欲しいんです、私も彼らを忘れる事は出来ないと思


います。」


 テレシアが一礼して席に戻ろうとした時だった。


 「テレシア、我々を代表して有難う。


 我々も、何時までも彼ら34名の若者を忘れる事は無い、我々は此処に誓


う。


 テレシア、其れと、今日、34名の戦死者の葬儀のために、将軍と司令官


に新品の軍服を作ってくれた事に、我々は感謝する。


 将軍は、何時も農作業の服装で居られた、だが、将軍の軍服姿を見た、3


4名の戦死者はさぞかし天国で喜んでいると思うよ、有難うな。」


 テレシアは葬式の事で、ロシュエと司令官が新品の軍服を来ている事にも


気が付かなかったのである。

 

 「えっ、将軍と司令官が新品の軍服を着ているって。」


 テレシアは、ロシュエを見た、確かに、新品と思える軍服をロシュエと司


令官が居たのである。


 「私は、何も知らないわよ、司令官は別としてよ、将軍は軍服なんか持っ


ていないのよ。」


 側で、ロシュエはニヤリとしたのだ。


 「其れじゃ~、一体、誰が将軍の軍服を作ったんだよ、この葬式にあわせ


て。」


 兵隊達がざわめき出したのである。


 「本当よ、本当に、私は作って無いのよ、それどころか、私はね、負傷者


の手当てで、軍服を作るなんて時間も無かったんだから。」


 と、テレシアは、何気なくイレノアの顔を見たのである。


 イレノアは、テレシアの視線を感じたのか、下を向いたのである。


 テレシアは全て判ったのであった。


 「将軍、一体、何処の誰に作って貰ったのよ、みんなの前ではっきりと答


えなさいよ。」


 と、テレシアは二コ二コとしながら、イレノアを見たのだ、そのイレノア


は恥ずかしさの余り、顔が赤くなっているのだ。


 「テレシア、判ったよ、実を言うと、イレノアが、この日の為に作ってく


れたんだ。」


 出席者は、余り驚きもしなかったのだが、兵士達は何時も以上に驚いたの


だ。


 「将軍、じゃ~、イレノアさんは、34名の葬儀のために作られたんです


か。」


 ロシュエはニヤリとして。


 「そうなんだ、みんなも知っての通り、オレには、軍服が無いんだ、イレ


ノアはオレが、軍服も無しで出席すると戦死した兵士達が余りにも可哀想だ


と言ったんだ、オレも、軍服も着ないで葬式に出る事が本当に良いのか考え


ていたんだ。」


 ロシュエは、何時、イレノアの事を話そうかと迷っていたのだ。


 「それじゃ~、前から作っていたんですか。」


 「いや、其れがなぁ~、実を言うと、軍服はついさっきできたばかりなん


だ。


 イレノアに言われたんだ、軍服の無い将軍が出席したら、天国に行った兵


隊さんに申し訳が無いって、だから、この軍服はオレのためじゃ~無いん


だ、34名の英雄の為なんだよ、兵士達は天国で自慢するだろう、自分達の


将軍は、自分達の葬式の為に新品の軍服を着て出席してくれたんだと、オレ


は、別に恥をかいてもいいんだ、だが、オレ達の為に天国に行ってだ、過去


の人達に自慢が出来ますと、ね。」


 イレノアは、そんな事を言った覚えは無かったのだが。


 「イレノア、有難う、我々、兵士からもお礼を言わせて貰います。


 其れじゃ~、司令官の新品の軍服は誰が作ったんですか。」


 司令官は何も言わずに居るのだ、だが。


 「司令官の軍服を作ったのはね、此処に居るフランチェスカさんだよ。」


 ロシュエは嬉しそうな顔付きだ。


 司令官は頷き、フランチェスカは下を向いたままである。


 その顔は赤く染まっていた。


 「みんな、聞いてくれ、司令官の軍服は、この葬式に着て出席出来る様な


服じゃ~無いって事は知っていたはずだ、フランチェスカもイレノアも、オ


レ達の事よりもだ、34名の英雄を失望させない為に作ってくれたんだ。」


 「将軍、司令官、オレ達、農場のみんなは、34名の英雄の為に、葬式を


考えたんです。

 

 みんなで想像はしておりました。


 将軍に軍服を着てもらって出席して欲しいんだ、と。」


 「みんな、有難う、みんなの気持ちは、34名の英雄たちは今頃天国で喜


んでいるよ、本当に有難うってね。」


 「そうだ、将軍、34名の戦死者を共同墓地に埋葬した後で、将軍とイレ


ノアさん、司令官とフランチェスカさんの結婚式を挙げようと思うんです


が。」


 ロシュエは突然の話に。


 「バカ野郎が、お前達は34名の戦死した仲間の葬式と結婚式を同じ扱い


にするのか、其れはなぁ~、英雄に対する冒涜なんだぞ。」


 「将軍、ですが、余計にやりたいんですよ、そんな事くらいで自分達の仲


間は天国で怒るわけが有りませんよ、いや、あいつらの事ですから、今頃は


天国で大喜びをしていると思いますよ、自分で有れば、心から大喜びしま


す。


 将軍、でも本当は、みんなが生きている間にして欲しかったんです。」


 「そうだよ、将軍、オレ達、農場のみんなも同じ気持ちなんだ、オレだっ


て、この先、どうなるか判らないんだ、それに、兵隊さんも、本当に天国で


喜んでくれると思いますよ。」


 「みんな、聞いておくれよ、私はね、駐屯地の頃から、そう、司令官の時


代からね知って要るんだよ、だからね、私達の為にも、今日の日を逃すと


ね、将軍と司令官の結婚式は見れないかも知れないんだ、だから、何があっ


てもよ今日結婚式を挙げる、誰か、反対する者は居るかね、反対する奴に


は、この私が制裁をしてやるからね、出ておいで。」


 「テレシアさん、自分は反対ですよ。」


 と、若い兵士が言ったのである。


 「何で、あんたが反対するんだよ。」


 兵士は、笑みを浮かべながら。


 「だって、そうでしょう、イレノアさんは、自分達のマドンナですよ、そ


の自分達のマドンナを奪った将軍が憎いんだ。」


 と、言って、大笑いをするのである。


 「そうか、じゃ~、みんな諦めなよ、あんたと将軍じゃ~、男気といい、


男前といい、あんたに勝ち目はないよ。」


 と、テレシアの言葉に式場の全員が腹を抱えて大笑いをするのである。


 「将軍、司令官、お二人共、あきらめて、34名を墓地に埋葬した後に、


結婚式を挙げるんだね。」


 と、テレシアは、イレノアとフランチェスカに向かって、ウインクしたの


である。


 「二人とも、どうなんだ、はっきりと答えなよ。」


 と、言った、テレシアの顔は微笑んでいるのだ。


 「判ったよ、みんな、本当に有難うよ、オレは、みんなに感謝するよ、司


令官も諦めてだ、埋葬が終わったあとで結婚式を挙げますかかね。」


 ロシュエは、ニヤニヤとしている。


 「オイ、司令官、何とか言ったらどうなんだ。」


 と、今度は司令官を睨みつけるテレシアだった。


 「お~い、司令官、もう、諦めて、自分達のマドンナと結婚して下さい


よ、お願いだから、将軍や司令官だったら、自分達も諦める事が出来ますの


で。」


 またも、大笑いが起きたのである。


 「よし、判った、みんな、本当に有難う。


 だが、その前に、今から、34名の英雄の葬式を行い、埋葬しますので、


各隊の代表は前え。」


 各隊の代表は前に進む頃には会場は静かに成ったのである。


 「では、今から、34名の英雄に対し、黙祷を始める、全員、黙祷はじ


め。」


 会場の全員が黙祷を始めた、暫くが経ち。


 「黙祷を終わる、只今より、34名の葬式を行う。


 最初に将軍からお話しを頂く。


 将軍、お願いします。」


 と、司令官はロシュエに、34名の勇者に送る言葉を求めたのである。


 ロシュエは静かになった会場の祭壇に向けて、一礼をした。


 「みんな、今日は本当に有難う。


 彼ら、34名の勇者は、今頃、天国で喜んでいると思う。


 オレは、今更、彼らの話をするつもりは無い、其れは、みんなが知って要


る事だからである。


 だけど、之だけは、覚えていて欲しいんだ、彼ら34名はこの農場を守る


為に壮烈な戦死をした。


 オレは、其れだけを覚えていてくれれば言いと思う、何れ、オレ達も彼ら


の要る天国に行く、その時、彼らと、あの時、農場のために戦った事が話し


に成ると思うんだよ、先に天国に行った彼らは誇らしく言うと思うんだ、自


分達のために農場の人達が葬式を行ってくれたんだ、と、オレはね、葬式も


大事だが、さっきも言ったが、彼ら34名を子供から孫、そして、その話を


次の代まで語り続けて欲しい、ただ、それだけなんだ、オレの話は之で終わ


る。」


 「次に。」


 と、言ったところで。


 「司令官、将軍も言った、彼ら34名の勇者は我々農場の全員が何時まで


も語り続ける、だから、之で、葬式は終わろうよ。」


 と、会場の農民が言ったのである。


 「そうだね、今、此処で、何を言っても、彼らは戻ってこないと思うの


よ、其れよりもね、早く、共同墓地に埋葬して上げる方が彼らもゆっくりと


出来ると思うのよ。」


 と、テレシアが言ったのだ。


 「判りました、将軍、如何いたしましょう。」


 「司令官、オレも、そう思うんだ、34名の冥福を祈ったんだ、彼らも早


く、のんびりとしたいだろう思うからね。」


 「では、只今より、34名の英雄を埋葬に向かうので、皆さん御立ち下さ


い。


 先頭は将軍にお願いします。


 その後に、34名の戦死者を乗せた馬車が続き、馬車の周りには仲間の兵


士が守り、最後に私と兵士達と農場の人達も続いて下さい。


 では、将軍、出発して下さい。」


 司令官の合図でロシュエは共同墓地に向かったのである。


 その後からは34名を載せた馬車が続き、その葬列は墓地へと静かに向か


うので有る。


 葬列は数百ヒロ以上と成り、最後の人が共同墓地に到着した頃には、太陽


は頭上に着ていたのである。


 司令官は、戦死者全員の名前を読み上げ、最後に。


 「34名の英雄達よ、何れ、我々も君達の居る天国に行く、其れまでは、


辛抱して、君達だけで過ごして下さい。


 それでは、最後のお別れに成りました。」


 兵士達の遺体は仲間の兵士がゆっくりと土の中に入れ、その後、ロシュエ


をはじめ、全員が少しづつ土を被せて行くのである。


 彼らの墓標には、我々の農場を自らの命と引き換えに守った、英雄達に捧


げる。


 貴方達は私達の誇りだ、そして、私達は貴方方、34名の英雄の事は子孫


に語り告がれ、永久に忘れる事は無い。


 と、書かれているのだ。


 その葬式と同じ頃、大会議室に収容されていた負傷者達も心の中で祈りを


ささげていたのである。


 やがて、葬儀も終わり、全員が農場の広場に戻ってきたのである。


 「さあ~、みんな、お葬式も無事に終わったよ、今から、将軍と司令官の


結婚式を始めるわよ、いいね。」


 と、テレシアは、今が一番楽しい時だと言わんばかりの声で言った。


 だが、その場には、イレノアとフランチェスカの姿は無かったのだ、其れ


は、彼女たちの為に、農場の女性達が手伝い、結婚式の衣装と化粧をして要


るからだ。


 「ね~、本当に良かったわね、私達が、この土地に着た頃には、正か、こ


んな日が来るなんて思わなかったのよ。」


 「えっ、本当なんですか、今まで、この農場で結婚式を挙げられた人達は


いないんですか。」


 イレノアが思うのも無理は無かった。


 この土地に着た人達に結婚式を挙げるなどと言う余裕は無かったのだ、其


れは、何時、何処から敵軍が襲ってくるのか知れず、毎日が其れこそ何時死


ぬかも知れないと言う日々だったのである。


 一方、会場では。


 「ね~、将軍、どんな風にイレノアを口説いたのよ。」


 テレシアは、イレノアたちが着飾ってくるまでの時間だった。


 「オレは、何も口説いてはいないんだ。」


 「何よ、そんなに照れて。」


 ロシュエは、少し照れているのだろうか。


 「いや、本当なんだよ、自然に成ったんだから。」


 「何が、自然に成ったんだよって、あんたさぁ~、私の目を節穴だと思っ


て要るんだろう。」


 ロシュエも、日頃、他の者達には強いが、テレシアだけには頭が上がらな


かった。


 「テレシア、本当なんだから。」


 テレシアも判っている。


 ロシュエは嘘をつけるような男では無いと。


 「判ったわよ、実はね、私が、以前、イレノアに聞いた事が有るのよ。」


 「一体、何を聞いたんだ、正か、オレの事か、じゃ~。」


 テレノアは、二コリとして。


 「実は、そうなのよ、イレノアはね、あんたの事が、大好きで、夜も眠れ


ない時もあるんだって。」


 「へぇ~、そんな事があったんだ、オレは、何も知らなかったよ。」


 だが、ロシュエはイレノアから聞いていたので、さほど、驚く事も無かっ


たのである。


 「将軍はいいとして、司令官、貴方は、フランチェスカをどんな風に口説


いたんだね。」


 「私も、別に口説いてはおりません。


 ハイ、自然に成っただけの話ですから。」


 「何を、言ってるのよ、あんたは、将軍とは違うんだよ、一体、この私


を、何処の誰だと思ってるのよ。」


 と、言うテレシアは笑っているのだ。


 司令官は二コリとして。


 「閣下、やはり、テレシアさんは、恐ろしい女性ですね、でも、本当に口


説いてはおりませんよ、ただ。」


 「テレシア、司令官は、本当に嘘は付いて無いよ、実はな、今日の朝だっ


たんだ。」


 司令官は何も言わず、ロシュエに話を聞いて要るのだ。


 「えっ、今日の朝なの、其れじゃ~、司令官の方が将軍よりもよっぽど手


が早いんだ。」


 ロシュエは驚いた。


 「オイ、司令官、あの短い時間で、フランチェスカを口説き落としたのか


よ。」


 と、ロシュエは司令官を睨んだのだ。


 「閣下、其れは、誤解です、私は、閣下の申された通りに行っただけの事


ですから。」


 と、司令官は弁解するのだが。


「オイ、本当か、嘘は付くなよ。」


 「本当なんです、フランチェスカに聞いて頂いてもよろしいですから。」


 ロシュエは、こんな時に嘘を付く様な司令官では無いと知って要るのだ。


 「其れじゃ~、何よ、フランチェスカもあんたの事を忘れる事が出来ない


と言ったの。」


 司令官は頷き。


 「本当にその通りなんですから。」


 と、言っている司令官に額からは冷や汗が出ているのである。


 「判ったは、私は、あんた達の言葉を信じるわよ、だけど、これだけは約


束してよ、あの子達が泣く様なまねだけはしないでね、お願いだから。」


 テレシアはあの娘達が大好きだった、それだけに娘達が泣く様な事だけは


して欲しくは無いのである。


 ロシュエも司令官も、一瞬だがしんみりとして。


 「わかったよ、それだけは約束するからよ。」


 と、ロシュエは約束したのだ。


 「ハイ、判りました、私も約束いたします。」


 と、司令官もテレシアに約束をしたのである。


 その頃、イレノアとフランチェスカの二人は美しく着飾り、広場に向かっ


ていた。


 ピュ~、ピュ~、と、広場に居た男達は口笛を鳴らし、二人の新婦を迎え


るのだ。


 二人は、式場に到着しロシュエと司令官の互いに向き合い。


 「では、今から、将軍とイレノア、司令官とフランチェスカの結婚式を行


います。


 では、その前に、誰か反対する者は。」


 「オ~イ、テレシア、誰も反対はしないからよ、早く始めろよ。」


 「アイよ。」


 と、テレシアの返事に会場は大笑いになるのだ。


 「其れじゃ~、みんな、静かにしてね、将軍に聞くよ、このイレノアを一


生の妻とするか、返事は。」


 「勿論、イエスに決まってんだろうよ。」


 「こら、将軍、誰に言ってるのよ、私じゃ~、無いんだ、イレノアにだ


よ、みんなにもだ、もう一度聞くよ、将軍、一生、イレノアを大事にする


か。」


 「ハイ、イエスです。」


 「よし、判った、次、司令官、フランチェスカを一生、大切にするか、返


事は。」


 「ハイ、勿論、イエスです。」


 「みんな、聞いたか、将軍はイレノアを、司令官はフランチェスカを一生


大切にしますと、言ったよ、此処に居る全員が証人だからね、其れじゃ~、


みんなに聞くよ、将軍とイレノア、司令官とフランチェスカの結婚を認めま


すか。」


 この時、式場に居る全員が二組の結婚を認めると歓声が上がったのである


 「イレノア、フランチェスカも良かったね、二人とも、大事にしてもらい


なさいね。」


 二人に優しく言ったテレシアの目には涙が溢れていたのである。


 「オ~イ、テレシア、今から、将軍と司令官は花嫁を連れて家に向かわせろ


よ、オレ達は全員でお祝いをやろうぜ。」


 「何、言ってのよ、今から仕事なのよ。」


 「いいじゃ~、無いかよ、この農場に着て、今まで、何も楽しい事が無か


ったんだよ、今日、一日くらい、仕事を休んだところで、誰も文句は言わな


いからよ。」


 「そうだね、私も、今日は、仕事は休みに決めた、其れじゃ~、みんなで


倉庫に隠してある物を持って来てよ。」


 会場のみんなも今日だけは日頃の事は忘れたいのだろうと思うテレシアだ


った。


 「オイ、オイ、テレシア、一体、何を隠してあるんだよ。」


 「何をだって、あんた達には関係ないの、早く、お家に入ってよ。」


 「オイ、其れは無いだろう、オレだって、楽しみにして要るんだから参加


させてね。」


 と、ロシュエは二コ二コしながらテレシアの顔を見るのだが。


 「何を言ってんよ、あんた達は此れから一番大事な儀式が有るんだから


ね。」


 「其れは無いよ、オレ達の為のお祝いなんだから、主役が居ないとな


っ。」


 「オイ、将軍、あんたは何を考えて要るの、彼女達には人生で一番大切な


日なのよ、少しは、二人の事も考えなさいよ。」


 テレシアは何時になく厳しい表情になっている


 イレノアとフランチェスカは何も言わずテレシアの話を聞いて要る。


 「オ~イ、テレシア、全部持ってくるのか。」


 「当たり前でしょう、今日はね、全員が参加するけれど、将軍と司令官は


抜きにして。」


 「テレシア、一体、何を隠しているんだ。」


 テレシアは二コ二コしながら。


 「実はね、お酒なのよ。」


 「えっ、本当にお酒をか。」


 ロシュエも司令官も、今まで以上の驚きだった。


 「一体、何時の間に。」


 テレシアは涼しそうな顔で。


 「あんたの知らない事も有るのよ、この農場ではね。」


 「其れじゃ~、余計にオレ達にも飲ませてくれよ。」


 「あんた達は駄目よ、早く消えなよ。」


 と、言ったテレシアは二コ二コとして要るのだ。


 「閣下、仕方有りません、今の私達では、テレシア達に勝つ事は出来ない


と思います。」


 「オイ、オイ、何を言っているんだ、司令官、之は、オレ達の祝いなんだ


ぞ、その主役のオレ達が居ないお祝いなんぞは、オレは認める事は出来な


い。」


 と、言ってはいるのだが、ロシュエは笑っている。


 「テレシアさん、私達は、以前の生活では、あの城の兵隊が何時襲ってく


るのか、判らず、その為に、どの家でも、声を潜めていました。


 でも、この農場に着いた、その日から、農場の人達も兵隊さんも、本当に


大声で楽しく、話をされていたのを思い出しました。」


 イレノアは、思い出していたのだ、あの城主達が恐ろしく、毎日、大声も


出せない時を過ごしていた事を。


 「私も、フランチェスカ、それに、他の村から来られた人達も同じだった


と思います。


 この農場の人達が羨ましかったんです。」


 「そうだったね、あんた達が着た頃は、声も小さく、何を言っているのか


判らなかったからね。」


 テレシアも思い出したのである。


 「その通りなんです、私もですが、みなさんが大声で楽しくお話しをされ


ている、私も、フランチェスカも、皆さんが、大声で楽しく話をされている


お姿を見るだけで、私もフランチェスカも、今は、本当に満足しているんで


す。」


 「イレノア、あんた達は本当に苦労したんだね、将軍も司令官も、本当に


この子達を泣かせる様な事だけは無いだよ。」


 「だから、テレシアさん、お願いです、将軍と司令官も一緒に。」


 テレシアは、彼女達の言葉が嬉しかったのである。


 「イレノア、判ったよ、私はね、あんたに負けたよ、ねぇ~、みんな、イ


レノアの頼みじゃ~仕方無いよ、将軍と司令官も入れてあげてもいいわ


ね。」


 「オ~、いいよ、イレノアからじゃ~なぁ~。」


 「イレノア、オレは、イレノアを選んだ事に間違って無かったと、今、本


当に確信をしたよ、オレは、絶対に裏切る様な事はしない、この場でみんな


に宣言するよ。」


 「閣下、私も宣言します。


 私は、一生、フランチェスカだけを愛し、大切にする事を。」


 この時、農場の広場で。


 「オ~、之で、決まったぞ。」


 「そうだ、イレノア、フランチェスカ、君達には、我々、農場の全員が見


方だからな。」


 「将軍、良かったね。」


 と、テレシアは二コリとして。


 「さぁ~、みんな、イレノアとフランチェスカのお祝いだから、飲んでも


いいわよ。」


 「オイ、オイ、オレと司令官はどうなんだよ。」


 「あんた達か、あんた達はね、まぁ~付けたしだね~。」


 農場広場では、みんなが大笑いし、4人を祝福して、宴会が始まったので


ある。


 ロシュエの側に居るイレノアも、司令官の側に居るフランチェスカも、た


だ、ニコニコして要るだけだが、二人は、この幸せがいつまでも続く様にと


願うばかりであった。



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