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闇の帝国    作者: 大和 武
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第 14 話。 果たして、統合は出来るのか。

「お~い、あれは、若しか。」


「えっ、一体、どうしたんだ。」


「うん、ご城下の方から来られる、お侍様なんだけど。」


「其れが、どうかしたのか。」


「いゃ~、オレの見間違いかなぁ~。」


「一体、何が、なんだ。」


「うん、お侍様の横に雪姫様の様なお方が。」


「えっ、何だって、雪姫様が、一体、何処なんだ。」


「ほら、左の前に。」


「あっ、うん、雪姫様だ、絶対、雪姫様に間違いないよ。」


「えっ。」


「お~い、大変だ、雪姫様が、雪姫様が、帰って来られたぞ~。」


「えっ、何処に。」


 大手門の門番が、大声で叫ぶと、大手門近くに居た家臣達が、一斉に大手門に駆け付け。


「わぁ~、本当だ、雪姫様だ、間違い無いよ、お~い、雪姫様が戻られたぞ~。」


 松川藩の大手門には、次々と家臣が駆け付け、其れは、もう、大騒ぎになって要る。


「ご家老、雪姫様が。」


「一体、何を慌てて要るんだ、雪姫様が、一体、どうしたと言うのだ。」


「はい、雪姫様が、今、大手門に大勢の侍と、ご一緒に帰って来られました。」


「何だと、雪姫様が、戻られたと。」


 松川藩の家老は、雪姫が戻って来たと、大騒ぎをする家臣達とは、別の事を思い出していた。


 松川藩の家中で、雪乃の所在を知って要るのは、殿様と、ご家老だけなのだ、その為に、ご家老


は芝居をする必要が有った。


「分かった、直ぐ、殿にお知らせする。」


「はい、承知しました。」


「雪姫様、お帰りなさいませ。」


「雪姫様、よくぞ、ご無事で宜しゅう御座いました。」


「みんな、有難う、父上は。」


「はい、あれからは、其れは、もう大変なご心痛で。」


「分かりました、では、源三郎様。」


「はい、分かりました、では、皆様、参りましょうか。」


「殿、雪姫様が、お戻りになられました。」


「うん、そうか、無事で何よりじゃ、して、供の者は。」


「申し訳、御座いませぬ。」


「良い、良い、武田、竹之進と松之介も呼んで参れ。」


「はい、では直ぐに。」


 殿様と、ご家老の其れが大芝居とは、近くに居た腰元達は、全く、気付かずに騒いでいる。


 暫くして、源三郎達が、殿様の居る部屋に入った。


「父上、長い間、ご心配をお掛け致しました。」


 雪乃も芝居をしている。


「お~、雪乃、元気で有ったか、して、如何で有ったのじゃ。」


「はい、私は、野洲のお殿様の計らいで、こちらの、源三郎様と結ばれました。」


「うん、そうか、そうか、其れは、何よりじゃ、良かったのぉ~、雪乃。」


「姉上様。」


 竹之進と松之介が、大喜びで入って来た。


「竹之進、松之介、こちらは、私の旦那様となられました、お方で、源三郎様と申されます。


 これから先、二人が、大変、お世話になるお方ですよ。」


「義兄上様が出来たのですね。」


「その通りです、二人共、ご挨拶を。」


「はい、義兄上様、竹之進と申します、以後、何卒宜しくお願い申し上げます。」


 竹之進は、源三郎とは初対面だが、気持ちの良い若君だ。


「私こそ、何も、分かりませぬので、何卒宜しくお願い申し上げます。」


 源三郎は、後に、松川藩の藩主となる、竹之進に深々と頭を下げた。


「義兄上様、私は、松之介と申します、私は、いま、大変嬉しく存じます。


 姉上様には、最高の御殿様だと思います。」


「松之介様、私は、殿様では、御座いませぬので、松之介様には、これから先、何卒宜しくお願い


申し上げます。」


 源三郎は、松之介にも、同様に頭を下げた。


「いいえ、私は、姉上が、旦那様と申されましたが、私には、やはり、殿様で御座います。」


「竹之進、松之介、今後は、源三郎殿が申される話は、我が、松川藩だけで無く、隣の上田、菊池、


そして、源三郎殿の野洲藩の運命を決めるやも知れぬの程大事な話しじゃ、お前達、二人はよ~く


考え行動するのじゃぞ


「はい、父上。」


「源三郎殿、其れで宜しいかな。」


「殿様、有り難きお言葉、源三郎、肝に命じ今後の励みに致す所存で御座います。」


 松川の殿様は、二人の若君に対し、早くも、源三郎が中心で有るかの様に話した。


「殿様、お願いが御座います。」


「何じゃ、申して見よ。」


「はい、雪乃殿と、加世殿、すず殿は、大変、お疲れで御座いますので。」


「お~、其れは済まぬ、雪乃、其れと、加世、すずは暫く振りじゃ、一度、実家に戻り、ご両親に


無事で有ると知らせるのじゃ。」


「お殿様、誠に、有り難き幸せで御座いますが、私達は別に。」


「何を、申しておるのじゃ、二人の親が、どれ程心配されておられたか、二人の為では無い、親の


為じゃ、分かったな、暫くしてから戻れ、余の命令じゃ、誰か、誰か居らぬか、二人を湯殿に。」


 数人の腰元が、加世とすずを湯殿に連れて行った。


「雪乃も、着替えを。」


「はい、父上、では、源三郎様。」


「雪乃殿、ゆるりとして下さいね。」


「はい。」


 雪乃も、部屋を出た。


「源三郎殿、改めて、礼を申す。」


 雪乃が、源三郎の妻となった事を知って要るのは、殿様と、ご家老様だけで有った。


「父上、では、我々、二人も。」


「いいえ、お二人には、大切なお話しが御座いますので。」


「誰か、斉藤を呼べ、その方達は下がって良いぞ。」


 ご家老様以外は部屋を出た。


「父上、何か、特別なお話しが有るのでしょうか。」


「其れを、今から、源三郎殿が話されるのじゃ、二人は、しっかりと聴くのじゃ分かったか。」


 二人の、若君は、少し緊張した様子で。


「お二人の、若君には、大切なお話しですので、よ~く、お聞き願います。


 まず、竹之進様は。」


 源三郎は、竹之進に対し、これからは、松川藩における役割を話した。


 竹之進は、日頃から殿様より話を聴かされては要るのだが、源三郎の話は、殿様からの話し以上


に大変な役目だと感じて要る。


 傍で聴いている、松之介は、何度も、相槌をしているが、松之介は、まだ、源三郎の話を聴いて


おらず、源三郎から聴かされる内容に、松之介だけで無く、他の者達にも大変な衝撃を与える事に


なるので有る。


「義兄上、私の、お役目ですが、領民の、其れも、農民と漁民の生活を守る事が、最優先だと申されるの


ですね。」


「はい、竹之進様には、後程、更に、詳しくご説明を致しますので、其れで、松之介様。」


 松之介は、大変な緊張をしている。


 其れは、竹之進の話しで、あれだけ重要な役目が与えられ、其れが、一体、自分にはどの様な話


になるのか心配になって来たと言う表情をしている。


「松之介様、では、お話しを致します。


 実は、松之介様には、山賀の婿養子になって頂きます。」


「えっ、何故です、義兄上、何故、私が、山賀の婿養子にならなければならないのですか。」


「松之介様は、松川藩のご次男で御座います。


 ご次男と言う事は、松川藩の藩主にはなれないので御座います。」


「はい、其れは、私も、重々、承知致しておりますが、私は、何も、不満は有りません。


 ですが、山賀の婿養子になりますれば、私は、山賀では肩身の狭い思いをせねばなりませぬ。」


「松之介様、其れは、世間での話で、幕府に対する表向きの届け出では婿養子ですが、実を申しま


すと、山賀の殿様には、既に隠居して頂く話になっておりますので。」


「源三郎殿、じゃが、山賀には表向きだが若君が居るのじゃ、其れをどの様に致すのじゃ。」


「はい、その若君にも隠居して頂く話になっております。」


 源三郎は、殿様には、隠居の話はしたが、表向きの若君には、何も伝えず、其れに、側室にもで。


「あの者達が、納得したのか。」


「殿様、私は、山賀の殿様には納得させる必要は無いと存じております。


 殿様が、隠居する事を承諾しないのであれば、山賀の藩に潜入している密偵に知られる事になる


と、その様になれば、殿様と若君には切腹を、山賀のお家は断絶し、家臣の者達には浪人になると


申して置きましたので。」


「何じゃと、源三郎殿は、山賀を脅迫したのか、う~ん、何とも恐ろしい事を。」


「殿様、何も、私が、密偵に密告するなどとは申してはおりませぬ、ただ、私は、密偵に知られる


事になりますと申し上げたので御座いますので。」


 源三郎は、平然としているが、実のところ、何時、密偵に知られる事になるやも知れない状態に


有るのは確かなのだ。


「松之介様、何も、ご心配される事は有りませぬ、此処におられます、吉永様が全て承知致してお


りますので、吉永様に、全て、お任せ頂ければ、其れと、上田藩からは、松永様と伊藤様、菊池藩


からは、加納様と井出様が吉永様に協力して頂ける話になっております。」


 吉永、松永、伊藤、加納、井出の五名が、松之介に頭を下げた。


「義兄上、ですが、山賀には家老が。」


「あの鬼家老は、既に退治しましたので、其れと、既に、この世を去っております。」


「えっ、其れは、誠なので御座いますか。」


「はい、其れは、吉永様が見ておられますので。」


「義兄上、ですが、山賀の中には、今でも、家老の腹心が多く要るのでは御座いませぬか、其れに、


あの藩の良い噂が入らずに悪い噂ばかりなのですが。」


 松之介が、心配するのも無理は無い、山賀と言えば、家臣だけでも、二百人以上、いや、三百人


は居る、其れに比べて、松之介の見方を言えば五人だけで、その五人で、一体、何が出来るのだと


考えれば、誰が、考えても無謀だと思うだろう。


「確かに、五人だけと思われるでしょうが、山賀の家臣達も強硬策には出れないと思います。


 下手をすると、幕府に知れ、其れが原因となり、お家を取り潰され、その日から、家臣の全員が


浪人となるのですよ、誰が、浪人になる事を好むと思われますか、殿様も同じで、隠居に入っても


命は有るのですよ、誰が、考えても腹を切るよも命の有る隠居生活を望むと思うのですが、如何で


しょうか。」


「では、私は、山賀では操り人形なのでしょうか。」


「松之介様、誰が、山賀で、操り人形だと申しましたか、私は、山賀の腐敗体質さえ収まれば、吉


永様もですが、他の皆様方にも元の藩に戻って頂きたいのです。


 私もですが、五名の皆様方は、我が藩の問題よりも山賀を立て直す事に協力して頂けるのです。


 吉永様もですが、皆様方は藩の中でも最も重要なお役目に就かれ、上田の殿様も、菊池の殿様に


も大英断されたのです。


 其れは、松之介様、お分かり願いたいので御座います。」


 源三郎は、改めて、松之介に頭を下げ、松之介は暫く考え、そして。


「義兄上、私の、至らなさで、皆様方には大変不愉快な思いをさせ、誠に、申し訳、御座いませぬ、


この通りで御座います、どうか、お許し下さいませ。」


 松之介は、源三郎達に頭を下げた。


「松之介様、ご理解頂ければ、其れで、宜しいので御座います。」


 松之介と言う若君は、おごりもせず、素直な若君だと吉永は思った、普通ならば、若君だと言う


だけで高慢な態度を取るのだが、此処まで教育したのは、一体、誰なのか、其れは、雪乃も同じで、


私は、姫様だ、何を犯しても許される言う様な言葉も無く、態度も見せない。


「松之介様、山賀にも、必ずや、我々の話を理解して下さるご家臣はおられます。


 松之介様は、まだ、お若い、これからは、何事でも、吉永様に相談して下されば良いと。」


「はい、吉永様、私は、若輩者で分からぬ事も多く、これからは、色々な事を教えて下さいませ。


 そして、時には、お叱りも。」


「若君、我々も、ご同様で御座いまして、我が、源三郎殿は、今日まで、多くの難題を抱えられ、


ですが、苦難の末、解決されておられ、私達も、源三郎殿には助けられております。


 今後は、我々も、源三郎殿の指示で、山賀を以前の様な国に盛り上げたく思っております。」


 吉永は、まだ、核心の話には入れずいた。


「では、義兄上の申される通りに致せば良いのですか。」


「いいえ、其れは、違います、私の、申します話ですが、全てが正しいのでは御座いませぬ。


 私は、方向性だけとお伝えしますが、後は、吉永様達とご相談して頂きまして、最後のご決断を


なさって頂ければ、其れで、十分かと存じますが、私が、今から、申し上げます事は、殿様になら


れましても、私の指示に従って頂きます。」


「えっ。」


 竹之進も、松之介も、大変な驚きで、其れは、殿様だとしても、源三郎の命に従えと言うのだ。


 その時、何故だか、雪乃が戻って来た。


「雪乃殿、如何なされましたか。」


 雪乃は、賢い、源三郎だけならばまだしも、雪乃が知らない、菊池藩と上田藩から、二名づつが、


同行し、松川に来たのだ、他の者達を部屋から出し、話し合う内容とは、一体、何か、知りたいの


だと、其れに、話しの内容によっては、雪乃にも出来る事が有るのではと思ったので有る。


「源三郎様、私にも、何か、お手伝い出来る事が有るのではと思い、私は、どうしても、お聞きし


たいと思ったのですが、駄目でしょうか。」


「えっ、ですが、私は、何も難しい話は致してはおりませんが。」


「はい、其れは、十分、存じております、でも。」


「源三郎殿、申し訳御座らぬ、雪乃には、幼い頃より、どの様な困難に会っても、決して、逃げず


に問題の解決に向かえと申して来ましたので。」


「殿様、其れは世間での話で御座います。」


「義兄上、姉上は、一度、決めると、誰が申しても聞きませぬ、其れに、姉上に聴いて頂くと、私


としましても気持ちが楽になるので御座います。」


「分かりました、では、雪乃殿、私が、我が藩で行なっている工事をご存知ですか。」


「私も、全てでは御座いませぬが、源三郎様が、城下の領民の為にと、御尽力を上げておられるの


は知っており、其れに、今の私は、源三郎様の妻とならせて頂いたのです。


 源三郎様が、お一人で悩まれているのではなく、私も、微力ながらでもお手伝いをさせて頂きた


いで御座います。


 どうか、源三郎様、私にも、お話しを聴かせて頂きたく、何卒お願い申し上げます。」


 雪乃は、源三郎に、必死に訴えた。


「う~ん、ですが、この問題では、雪乃殿まで引き込む訳には。」


「源三郎様が、お一人で悩まれているお姿を、私も、耐えるのが辛いのです。


 私が、お話しをお聞きしましても問題が解決するとは思えませぬが、其れでも、私が、お聞きす


る事で、何かのお役に立てれば幸いで御座います、どうか、私にも、お聞かせ願いたいのです。


 源三郎様、どうか、お話しをお聞かせ下さいませ。」


「う~ん。」


 吉永達も、何と言って良いのか分からないので有る。


「源三郎殿、奥方様も、相当、お悩みされておられたのでは無いでしょうか。


 其れに、この問題は、我々だけの問題では御座らぬと思います。


 奥方様が、お聞きになられ、源三郎殿でも浮かばぬ良い案が出るやも知れませぬ。」


 吉永も、分かっている、立場が反対ならば、果たして、簡単に話が出来るだろうか。


「雪乃殿、では、その前に全てを話します。


 殿様、竹之進様、松之介様も、よ~く、お聞きください。」


 源三郎は、松川の殿様、ご家老、雪乃、そして、竹之進、松之介に対し、今までの経緯を話すと、


殿様も、ご家老も、其れに、竹之進、松之介も、其れは、大変な驚き様で余りにも凄まじい話に唖


然としている。


 其れは、源三郎が、先頭になり進めて要る工事が、大規模で有り、漁民に、農民、家臣達が総出


で行なっている工事だと、だが、雪乃はと言うと顔色一つ変えず、源三郎の話を聴いている。


 そいて、源三郎の話が終わると。


「源三郎様、私の話が、お役に立つのか分かりませんが、松川藩では、昔から陶器物を作っており、


その焼き物の技術を何とか使う事は出来ないでしょうか。」


「焼き物と申されまれましたが、焼き物に使う土ですが、どれ程有るのですか。」


「はい、一度、調べねばなりませんが。」


「焼き物か、う~ん。」


「義兄上、私が、調べて見ます。」


「竹之進様がですか。」


「はい、私と、松之介は、幼い頃より、松川の野山を走り回って遊んでおりましたので。」


「ですが、松川の若君が、直接、調べるとなれば、お供のご家中も。」


「義兄上、私は、今でも、一人で野山に参っており、其れに、焼き物の使う土の事で有れば、私も、多少


は知っておりますので。」


「分かりました、では、一度、お調べ下さい、ですが、余り、危険なところには行かぬ様に。」


 雪乃の話しで、俄然、竹之進の顔色が変わり、生き生きと輝き出し、やはり、松川では、雪乃の


存在は大きいと、源三郎は思ったので有る。


「はい、承知致しました、其れで、姉上、焼き物の土ですが、どれ程の量が必要なのですか。」


「雪乃殿、何故、焼き物を思い付かれたですか。」


 「はい、源三郎様、先程のお話しでは、海岸の洞窟内で落盤防止の為に、木材を使われていると、


ですが、木材は、何れ、腐り、其れが原因で壊れます。


 ですが、陶器物は数十年、いいえ、数百年経っても、腐る事は御座いませぬので、私は、焼き物


を利用出来ないかと考えたので御座います。」


「焼き物に使う土ですが、専用の土ならば、其れが、何処にでも有ると言うものでは無いと思いま


すよ。」


「はい、其れは、私も、存じております、ですが、この数百年間、この国も含めて、私は、この国


付近一帯に有るのではないかと、其れを、竹之進が調べてくれると。」


「分かりました、では、その前の、竹之進様、松川藩の海岸に浜は有るのでしょうか。」


「はい、御座います、其れに、先程のお話しの中で申されておられました、洞窟ですが大小合わせ


ますと、五十か所近く有りますが。」


「ほ~、五十ヵ所ですか、では、その中で、一番、大きな洞窟は分かりますか。」


「はい、勿論で、私と、松之介は良く行った事が有りますので。」


「そうですか、分かりました、殿様、藩の中で、一番にご信頼されておられます、ご家臣は、どな


た様でしょうか。」


「う~ん、其れは、困ったのぉ~、皆、余の為に尽くしておるからのぉ~。」


「父上、斉藤様は、あのお方は、私達に、抜刀術と、他にも多くの事を教えて下さいました。」


「お~、斉藤か、あの者ならば、余も安心じゃ、直ぐ斉藤を呼べ。」


「殿、お任せを。」


「誰か、誰か居らぬか。」


「はい。」


 部屋の外に斉藤が居た。


「お~、斉藤か、入れ。」


「はい。」


「斉藤ならば、源三郎殿の考えも理解出来るぞ。」


「はい、斉藤様と、申されましたが、少しお話しを聞きたいのですが、宜しいでしょうか。」


「はい、どの様な事でも。」


「斉藤様は、抜刀術の達人だとお聞きしましたが、何処で、修練されたで御座いますか。」


 源三郎は、工事とは全く、関係の無い話を始めたと、他の者達は思った。


「はい、私は、吉岡道場で修行を。」


「えっ。」


 吉永が、声を上げた。


「吉永様、如何なされましたか。」


「源三郎殿、拙者も、実は、吉岡道場で修行を。」


「あの~、失礼では、御座いますが、今、吉永様と、申されましたが、若しや、吉岡道場の四天王


と呼ばれました、あの吉永様では。」


「拙者は、四天王と呼ばれる様な者では御座いませぬが、いかにも、吉岡道場の門下生の吉永で御


座いますが、其れが何か。」


「殿、このお方に間違いは、御座いませぬ、吉岡先生は、吉岡道場で、後にも、先にも、吉永以上


の剣客は居らぬと申され、私は、何度聴かされた事か。」


 吉永は、吉岡道場で四天王と呼ばれるのが嫌になり、道場を去ったので有る。


「そうなのですか、私も、少しは修行しておりましたが、殿様、私は、吉永様は山賀に入って頂き、


お役目上、家老になって頂きたいと考えて要るのです。


「えっ、源三郎殿、拙者にその様な大役はとてもでは御座いませぬが。」


「いいえ、吉永様で無ければ、今の、山賀を統制出来ないと、其れに、松之介様が藩主になって頂


いた時に、一番、重要な人物はご家老なのです。


 私も、吉永様ならば、年齢からも、物腰からも最も適任だと考えております。


 その様な理由ですが、斉藤様が、松川藩の、当時、雪姫と、お二人の若君を教育された思うので


すが、殿様、如何で御座いますか。」


 何と言う事だ、源三郎は、吉永を山賀の家老に置く為に、斉藤が吉岡道場で人間としての教養を


学んだ、その話を聴く為になのか、其れならば、吉永も同じだ、ならば、この先も、松之介の教育


と山賀には最適の人物だと確信したので有る。


「吉永様も、吉岡道場で人間形成なされたと私は思っております。


 私は、このお役目を任されるのは、吉永様以外にないと、今、確信致しました。」


「義兄上、私も、是非、吉永様に教えを頂きたく存じます。」


「う~ん、ですが、拙者は、武骨者で。」


「吉永様は、武骨者では御座いませんよ、余りにも、正義感が強いので御座います。


 どうか、吉永様、引き受けて頂きたいので御座います。」


「う~ん、これは、困った。」


「吉永様、私からも、お願い致します。


 松之介は、まだ、半人前で何も分からないのです。


 源三郎様のお考えを、今の松之介に理解せよとは、余りにも無理で、吉永様がご家老になって頂


ければ、私も、野洲で安心し、源三郎様のお傍に居らせて頂く事が出来ます。


 どうか、松之介の、いいえ、山賀の為に、其れが、源三郎様が進めておられます、全ては、領民


の為にと言う事業に繋がるのではないでしょうか。」


「奥方様、拙者の様な者でも、お役に立てるならば。」


「有難う御座います、これからは、松之介様の良き相談役となって、山賀を盛り上げて頂きたいと、


思いますので、何卒宜しくお願い申し上げます。」


 さすがに雪乃だ、吉永と言う人物は武骨者だが、雪乃の巧みな話術により、山賀の家老を引き受けたの


で有る。


 源三郎は、雪乃の存在が、これから先、どの様な事が有っても欠かせないと思うので有る。


 その後、源三郎は、今後に付いて、竹之進と松之介に詳しく話し、源三郎が今、野洲と、上田、


菊池で行なっている工事に入る様にと。


「義兄上、私と、斉藤様が先頭になり進めて参ります。」


「竹之進様は、余り表には出ずに斉藤様にお任せ下さい。


 私は、明日、山賀に参りますので。」


「源三郎殿、山賀には、お一人では駄目ですぞ。」


「ご家老、私と、吉永様、其れに、上田と菊池からも参られておられます皆様方にもご同行して頂


きますので。」


「源三郎様、私も、是非、お供に。」


「雪乃殿、今回は、少し手荒いですので、其れよりも、私の、代わりに、竹之進様、松之介様にお


話しをして頂きたいのです。」


「私はどの様な話しを致せば良いのでしょうか。」


「はい、私と、農民さん、漁民さん、其れに、野洲の城下の者達とどの様な付き合い方をしている


のか、其れを、雪乃殿が、どの様に感じておられるのか、私は、その方が大事だと思い、其れを、


感じたまま、お話し下されば宜しいかと。」


「はい、喜んで話をさせて頂きます。」


「これは、私の方法なので、全てが良い訳では御座いませぬが。」


「源三郎様、私は野洲のお殿様より、少しは伺っておりますので。」


「斉藤殿、源三郎殿ですが、善人に、対しては、其れは、もう大変優しいのですがね、これが、悔


い改めぬ者達や、悪人に対しては、これ程、恐ろしい人物はおられませんよ。」


「吉永達、今、余り申されましても、まぁ~、その内、分かりますからね。」


「阿波野殿と、申されましたが。」


「はい、私は、上田の阿波野と申しますが、私は、どの様な事が有りましても、源三郎様だけは敵


に回したくは有りません。」


 阿波野は、上田で起きた、密偵の処罰の方法を話すと。


「えっ、切腹させるのでは、其れが。」


「この二人が、その時の者達で。」


「はい、私達二人は、あの時ほど、源三郎様が恐ろしいと思った事は御座いませぬ。」


「えっ、ですが、お二人共。」


「はい、ですが、私達よりも、ご城下の密偵達に対してでも、源三郎様の言葉使いは、今の様に、


変わりませぬが、密偵達には、源三郎様は、私は、簡単には殺しませんよと。」


「では、どの様に申されたのですか。」


「其れが、山に連れて行き其処で両足を切断し、森の狼の餌にすると、そして、最後は、鳥や、猪


が片付けてくれますから、と、余りにも簡単に平然と申されますので、余りにも恐ろしくなり、私


も、その場で血の気が引いたのです。」


「えっ、では、直ぐには死ねずに苦しみながらと。」


「斉藤殿、山賀の鬼家老に対しても同じ様に申されましたよ其れも、殿様と、家臣達の前で。」


「ですが、家臣達は何も出来なかったのですか。」


「ええ、私と、吉永様、後、数人で、重役方と殿様にも。」


「えっ、殿様にもですか。」


「ですがね、源三郎様は、平然とされておられましてね。」


「阿波野様、私は、腰を抜かしたのですよ。」


 まぁ~、よくも、平然と、その様な大嘘を、吉永は見抜いて要る。


 源三郎こそが、剣の達人だと、平然としているが、全く、隙が無い、何時も自然体なので、気付


かない者達も要る、だが、別に話す必要も無い、其れは何れ知る事になるだろうと。


「皆様、私の事は、その変で、明日は、早朝に出立しますので宜しくお願いします、まぁ~、其れ


よりも、山賀の者達も、正か、我々が、本当に来るとは思っておらないと思いますが、其れを逆手


の取り、一刻も早く問題の解決を図らなければならないと思いますので。」


「義兄上、本当に大丈夫なんですか。」


「竹之進様、吉永様が、どれ程のお方か、明日、彼らは知ると思いますよ、まぁ~、全て、お任せ


下さい。」


 雪乃は、まだ、不安だと言う様な顔をしているが。


「殿、そろそろ、夕餉の頃かと。」


「もう、その様な時刻なのか。」


「はい、ですが、その前に、源三郎殿も、皆様方も湯殿に入られては如何でしょうか、明日からの


為にも、少しでも疲れを取られてはと。」


「うん、そうじゃ、源三郎殿も、皆も、湯に入られよ。」


「はい、では、お言葉に甘えさせて頂きます。」


 源三郎達は、松川の家臣の案内で湯殿に向かった。


「雪乃、源三郎殿は、何時も大切にしてくれておるのか。」


「勿論で御座います、源三郎様は、私が、見込んだお方なのですからね。


 父上、竹之進、松之介、源三郎様と、私は、式を挙げてはおりませぬが、其れよりも、野洲の農


民さんや漁民さん、其れに、ご城下の人達の全員がお城に来られ、其れは、もう大変な騒ぎだった


のですよ。」


「姉上、大変だとは、一体、何が有ったのですか。」


 雪乃は、思い出し笑いをし。


「其れがね、ご家中の皆様と一緒になり、まぁ~、連日の大宴会で。」


「えっ、野洲のお城に、農民や漁民が入るのですか。」


「竹之進、農民では有りませんよ、源三郎様は、決して、その様にも申されず、農民さん、漁民さ


ん、と、其れは、どなたに対してでも同じですよ。」


「はい、これからは、気を付けます。


 ですが、松川では、その様な事は、決して有りませぬが。」


「野洲の殿様は、相手がどなたで有ろうと、何時でも迎い入れられますよ。」


「姉上、何故に、農民さんが、お城に入れるのですか。」


「松之介、貴男は、源三郎様が申されたお話しを聞いて無かったのですか。」


「えっ、ですが。」


「一体、何を聴いていたのです。


 源三郎様のお考えはですよ、お城の殿様や、ご家老様、其れに、ご家中の方々では無く、全ては、


領民の為にだと何時も申されて要るのです。


 其れはね、仮にですが、松川のお家が取り壊されたとしましょうか、殿様とご家老様は、お腹を、


勿論、貴方方もですよ、家臣は浪人となり、朗々の身となりますが、其れは、仕方が無いのです。


 ですがね、農民さんや漁民さん、其れに、ご城下の人達は、何も知らないのですよ、その人達が、


住まわれている地が幕府の直轄地となれば、今まで以上に苦労を味わう事になるのです。


 其れが、どれ程、過酷な事になるのか、二人に想像が出来ますか、多分、まだ、分からないとは


思いますが、野洲もですが、上田藩も、菊池藩も、上納金を増やせと通告を受けて要るのです。


 父上、松川にも来ているのですか。」


「うん、其れが、先日、我が藩にも届いたのじゃ、松川藩は陶器物で儲けて要ると、幕府は思って


おるのじゃ、雪乃も知っておろう、陶器は、焼いた物全てが良いとは限らぬ。」


「はい、私も、其れは知っておりますが。」


「幕府はのぉ~、窯で焼き上がった器の全てが売れると思っておる、じゃが、実のところ、半分近


くは使い物にはならぬのじゃ、その様な事など、幕府の連中は聴く耳は持たぬから知らぬと。」


「父上、その話は幕府にされたのですか。」


「何度も申しておるわ、以前、巡検氏が来られたので窯元にお連れし、窯元からも話をした、だが、


奴らはのぉ~、名前だけの巡検氏で、本当の目的は、その藩の賄いと、袖のした、要するにじゃ、


賄賂を多く渡せば上納金も安くなると言う訳なのだ。」


「父上、今年は、巡検氏は来られたのですか。」


「いや、そう言えば、昨年も、来てはおらぬ。」


「姉上、山賀は、一体、どの様になって要るのでしょうか。」


 松之介は、早く、山賀の財政状態を知りたいのだろうか。


「松之介、私が、知って要るとでも思うのですか、私も、源三郎様のお傍に居ればこそ、少しづつ


ですが分かり出したのですよ。」


「雪姫様、先程、源三郎殿が、申された話しでは、海岸の洞窟を利用し、穀物類や、他の物を備蓄


されると、其れは、大工事になると、私は、思うのですが、源三郎殿は、農村も漁村も全て回れた


のでしょうか。」


「私も、詳しくは知りませぬが、源三郎様のお仕事をされて要るお部屋では、登城されました、ご


家中の皆様が着物を着換えられ、その部屋と申しますか、その場所では、腰の物は、どなた様も差


してはおられませぬ、その部屋から海岸に向かわれます時も、腰の物は隠され、各村に向かわれて


おりますので、何も、知らない人から見れば、農民さんか漁民さんとしてか見えないので、私は、


多分、そのお姿で農村、漁村を回られて要ると思うのです。」


「えっ、では、怪しい者にはどの様に対処されるのです。」


「私の聴きましたところでは、今まで、数人程でしたが、その様な者達が何処に行かれるのかを見


られ、でも、その者達にも余計な深入りはされてはおられないと。」


「其れで、工事の方は進んでいるのでしょうか。」


「ご家老、源三郎様は、私に、今まで、その様なお話しをされてはおられませんでしたので、私も、


詳しくは存じませぬ。


 昨日も、上田藩の殿様や、ご家中の方々と、長い間お話しをされておられましたが、その内容も


知りませんので、源三郎様は、私には、話されないと言うよりも、私は、源三郎様のお気遣いだと


思っております。」


「雪乃は、源三郎殿のお役に立ちたいと申しておったが。」


「父上、私は、源三郎様が、どれ程、お苦しい立場に立たせれておられるのか想像も出来ませぬが、


源三郎様は、野洲だけでなく、松川、上田、菊池、そして、山賀の国を幕府から守られる為に、其


れは、全身全霊を捧げておられるのです。


 父上も、ご家老、其れに、竹之進、松之介、よ~く、考えて下さいね、私は、今、源三郎様の妻


にさせて頂きましたが、その私が、あの当時、松川の姫だから、源三郎様が、山賀の鬼を退治され


たと思われるでしょうが、源三郎様と言うお方は、その様な目先だけを見てはおられませぬ。」


「う~ん、確かに、雪乃が申した通りじゃ、上田も菊池もじゃが、松川も山賀も、源三郎殿には、


全く言っても良い程に関係の無い国の話しじゃからのぉ~。」


 雪乃は、竹之進と松之介に対し、何故、関係の無い国の内政にまで首を突っ込むのかを理解させ


様としている。


「竹之進、松之介、源三郎様は、何時も、おっしゃっておられます、全ては領民の為にと、其れは、


農民さんが苦労して育てられた作物を私達が頂いて要るのです。


 漁民さんは、海の様子を見られ、時には、危険を犯し漁に出られ、魚を獲って来られるのですよ、


私達は、その様な苦労も知らずに頂いて要るのです。」


「姉上、義兄上は、農民さんとも漁師さんとも仲が良いのですか。」


「其れは、もう、誠に素晴らしいですよ、先程も、話した様に、源三郎様は、その人達に、私を、


妻にしたので、全員と申しても過言では無いと思いますが、皆様方に祝福されたのです。


 貴方方に、その話を聴かせても信じる事など出来ないと思いますよ。」


「それ程のお方なればこそ、他国でも受け入れられるのですねぇ~。」


「其れは、私には分かりませぬが、二人は、国を守ると言うよりも、領民さんをお守りする為には、


どの様に考え、どの様に行動を起こせば良いのか、其れを考えて欲しいのです。」


「雪乃、源三郎殿は、明日、山賀に行かれるが。」


「父上、私は、源三郎様が、どの様な方策を考えておられるのかは知りませぬが、源三郎様の事で


すから、必ずや、良い結果を出されると信じております。」


 その時、源三郎達が戻って来た。


「殿様、有り難く頂戴致しました、有難う御座います。」


「さぁ~、では、皆で夕餉に致そうか。」


 殿様が、手を叩くと、腰元達が、夕餉を運んで来た。


「源三郎殿、何も、御座いませぬが、今宵は、雪乃との祝いじゃ。」


「殿様、源三郎、誠、有り難き幸せで御座います。」


 その時、加世とすずも入って来た。


「加世、すず、長い間、雪乃が面倒掛けて来た、余も、大変嬉しく思っておるぞ。」


「殿様、私達は。」


「良いのじゃ、良いのじゃ、さぁ~、今宵は飲むぞ、源三郎殿も飲んで下されよ。」


「はい、有り難きお言葉です。」


 其れから、源三郎は、松川の殿様と飲み、竹之進、松之介も、何時に無く騒いでいた。


 そして、翌朝、早く、源三郎達は山賀へと向かった。


 雪乃は、源三郎の姿が見えなくなるまで大手門に立ち見送ったので有る。


「源三郎殿、山賀での策ですが何か考えておられるのですか。」


「私は、別に、何も考えてはおりませんが、ただ、家老の息子ですが、出方が少し気ににはなって


要るのですが。」


「ですが、家老の息子と申しましても、表向きは、殿様のお子ですから。」


「はい、其れが問題でしてね、山賀の藩主が、どの様に考えて要るのか、家中の者達の動向も気に


なるのです。」


 源三郎は、今の今まで、鬼家老のお陰で甘い汁を吸っていた家臣達の動向が分からない、数人が、


いや、数十人が、突然、切り掛かる事も考えねばならないと。


「鈴木様、何か、気掛かりな事でも。」


「はい、源三郎様は、何故、腰の物は。」


「あ~、これですか、私は、人を殺めるのを好まないので、何時も、これなんですよ。」


 鈴木が、言う腰の物とは、だが、源三郎は、何時も、木剣を持って要る。


「私は、源三郎様が、持っておられるのは、由緒有る太刀で、だから、使われないのだと思ってお


りました。」


「そうでしたか、私は、別に秘密にしようとは思ってもおりませんよ。」


「う~ん、そう言えば、私は、今まで、源三郎様が、太刀を抜かれた姿を一度も見た事が有りませんでし


たが。」


「私ですか、先程も申しましたが、私は、人を殺める事が好きでは有りませんので。」


 源三郎は、野洲藩の中で、ただ一人、太刀を抜いた事が無い。


「源三郎殿の申される事は拙者も理解出来ます。


 拙者も、出来るならば太刀は抜きたくは無いのです。」


「吉永様、私もです、太刀を抜けば、相手もですが、我が身にも火の粉は掛かりますので。」


「阿波野様も同じでしたか、私と、同じ考え方を持たれる人達が居られますと、私も、一安心で嬉


しいですよ。」


「ですが、何故なのですか、何故、源三郎様は、太刀を持たれないのですか。」


「高野様、太刀を抜けば、阿波野様の申されました様になりますが、木剣ならばと申しますと、語


弊は有りますが、使い方次第で相手の骨を砕くだけで、命が直ぐ無くなると言う事にはならないと


思います。


 ですが、太刀ならば、、例え運が良かったとしても相手の腕は切り落とすでしょうし、刀傷は重


く、致命傷となる事が多く、其れが、軽い傷だと見えましても、完治する事は御座いませぬ。」


「ですが、木剣でも、同じでは、御座いませぬか。」


「う~ん、確かに言えますねぇ~、木剣では切れませんので、まぁ~、打撲の傷ですから、でも、


打ちどころでは骨は砕けますから、足の膝から下ならば、骨は砕け、歩くには不自由になるでしょ


うからねぇ~、長く苦しむ事になると思いますよ。」


「でも、我々の様な者ならば、膝から下を狙って打てるものでは無いですが。」


「上田様、其れは、分かりませんよ。」


 鈴木と上田は、源三郎が、今まで、一度も、太刀を抜かないのは、人間の命を簡単には奪いたく


は無いのだろうと思って要る。


 だが、吉永は、抜刀術の達人で、源三郎は、並みの使い手だとは思っておらず、其れは、阿波野


も、高野も同じで、源三郎と同行している斉藤も分かって要る。


 だが、他の者達は、世間で言うところの剣の使い手では無い。


「源三郎様、木剣を拝見出来ますか。」


「はい、宜しいですよ。」


 源三郎は、気にもせず、斉藤に渡すと。


「おっ、これは。」


「斉藤様、分かられたのですね。」


「はい、この木剣は、相当、使い熟されて、ですが。」


「斉藤殿、私にも。」


「はい、どうぞ。」


 高野が受け取り見ると驚きの表情で。


「源三郎様、この木剣ならば。」


「はい、私の木剣は、普通の木剣では有りませんので。」


「何故、この様な木剣を。」


「はい、私が、修行しておりました道場の先生から頂いたのです。」


 源三郎の木剣は、傷だらけなのだ、だが、阿波野と高野が驚いたのは、木剣には細工が施されて


要る。


「源三郎様が修練された道場とは。」


「はい、高橋道場ですよ。」


「えっ、では、一刀流の。」


「はい、そうですが、其れが、何か。」


 阿波野も高野も高橋道場の噂は聞いて要る。


 道場主の高橋と言われる人物は、一刀流の達人で、この高橋道場では、木剣の修行では無く、人


物の形成が修練の一つだと言われ、多くの時間を人間形成に費やしている。


 高橋道場の入門者は多いが、日常の鍛錬では、木剣での鍛錬では無く、人間形成を重きに置く為、


早くて、数十日か、半年以内に、遅くとも、一年か、二年で道場を去って行く。


 道場主は基本だけを教え、後は、個人の鍛錬に任せ、其れが、門下生には不満なのか、半分以上、い


や、殆どの者達が去る。


 だが、源三郎は、幼き頃から高橋道場に預けられ人間形成を学んだので有る。


 高橋は、源三郎の父とは、旧友で、其れで、高橋に預けた、高橋も、我が子同様に扱い、学問を


教え、一刀流の鍛錬を行ない、源三郎は、若くして高橋道場の四天王と呼ばれたので有る。


 その源三郎が、元服を終えた数年後に父の元に戻って来たので有る。


 吉永は、日頃から、源三郎の姿を見ているが、源三郎は常に自然体で、だが、その自然体で有り


ながら、一分の隙も無いと、吉永は、感じていた。


「源三郎様、高橋道場と聞けば鍛錬は厳しいと。」


「いいえ、その様な事は有りませんよ、高橋先生は、一刀流では無く、何処の道場でも行われてい


ると思いますが、基本だけを教え、後は、本人任せですから。」


「門下生も多いと聞いて要るのですが。」


「ええ、常に、百人以上が道場で鍛錬されておられておりますが。」


「源三郎様も、常に道場で鍛錬されておられたのですか。」


「私ですか、私は、殆ど道場では行なっておりませんよ、何時も先生から学問を教えて頂きました


ので、そうですねぇ~、まぁ~、殆どは、庭で一人修練を行なっておりましたよ。」


「えっ、では他の門下生とは。」


「はい、そうですよ、私は、まだ、子供でしたからねぇ~、道場に入らず庭で先生から教えて頂き


ました基本だけを行なっておりましたので。」


「では、何時も、お一人で。」


「はい、そうですよ、其れよりも庭の方が楽だったのです。


 誰も、居られませんので他の人がどうのとか考える事も無く出来ましたからねぇ~。」


「源三郎様、お昼には少し早いですが、如何でしょうかお昼を取りませんか。」


「もう、その様な時刻になりましたか。」


「はい、私もですが、皆様方が、お話しに夢中でしたので、つい、忘れるところでした。」


「では、皆様、お昼としましょうか。」


「はい、では。」


 源三郎達は、話しに夢中で、お昼さえ忘れるところだ、お昼を取ればもう直ぐ山賀に入る。


「これからは、余り、話しに夢中になりますと山賀を通り過ぎますねぇ~。」


「う~ん、其れは、言えますなぁ~。」


 吉永は、山賀がこれ程にも近くとは思っても見なかった、お昼でも話は続くが、其れも、暫くし


て終わり。


「では、皆様、参りましょうか。」


 源三郎達は、一時程で山賀の城下に入り、その足で、山賀の城へ。


「私は、源三郎と申します、殿様にお目通りを願いたく、参上致しました。」


「はい、少々お待ち下さいませ。」


 大手門の門番は、大急ぎで近くの家臣に伝えると、家臣は慌てて、城内へ消え、暫くして、十数


人の家臣が現れ。


「源三郎様、殿が、お待ちで御座います。」


 家臣は、源三郎達を殿様の居る部屋へと案内した。


 山賀のお城は、野洲の城よりも大きく、殿様の居る部屋までは少し掛かる。


 そして、長い廊下を進み、やがて、殿様の居る部屋に着くと。


「源三郎、覚悟せよ、父の仇。」


 大声で叫び、太刀を持った若い侍が、突進して来た、其れは、鬼家老の一人息子だ。


「源三郎殿。」


「吉永様、皆様、下がって下さい。」


「源三郎、命は貰った、覚悟せよ。」


 鬼家老の息子は、鬼の様な顔付で太刀を上段に構え突進して来る。


 吉永は、この息子は此処で命を落とす事は無い。


 だが、その後、誰もが、本当の恐怖を覚える事になるとは。


 源三郎は、袋から、木剣を出し自然体で構えて要る。


「父上の仇。」


 その一瞬、源三郎の木剣は、息子の両足を打った。


 息子は、一瞬で倒れ。


「誰か、誰か、助けてくれ。」


 大声で叫んでいる。


「うっ、痛い、痛い、誰か。」


 大声で叫ぶが、その口に木剣を突っ込むと。


「お前は、何者だ、私を、一体、誰だと思って要る。」


 その時の、源三郎の表情は鬼と化して要る。


 息子は、源三郎の顔を見るが、その顔は恐怖で引き攣って要る。


 口の中には、木剣の先が突き刺さり何も言えない。


「今、お前は、私を、父の仇と言ったな、では、鬼家老の息子か、では、返り討ち致す。」


 源三郎は、木剣を口から抜くと。


「鈴木様、上田様、この無礼者を後ろ手に縛り猿轡をして下さい。」


 その時、騒ぎを聞き付けた、殿様と重役方が慌てた様子で飛び込んで来たが家臣達は、余りにも


突然の事で慌てて要る。


「源三郎、一体、何事じゃ。」


「源三郎と呼び捨てにするとは、一体、何者だ。」


「何じゃと、余を、誰と思っておるのじゃ、余は、山賀の。」


「何、山賀の、其れで。」


 殿様は振り返り、源三郎の顔付を見て後ろの下がった。


「お主は、一体、誰に向かって、其処へ直れ。」


 殿様は、源三郎が余りにも恐ろしく、その場にヘナヘナと座り込んだ。


 何と言う事だ、吉永達も、源三郎の豹変に声も出なかった。


「その方が、山賀の藩主か。」


「はっ、はい、その通りで御座います。」


「この者は直ぐ処罰する、分かったのか。」


「はっ、はい。」


 山賀の殿様は、ただ、返事するだけで、其れ以上は言えない、勿論、家臣達も同じで、だが、暫


くすると。


「山賀の者達に尋ねる、山賀には浜は有るのか。」


「いいえ、御座いませぬ。」


 源三郎の表情は少しづつ戻り。


「斉藤様、この城より松川の領地を通り、浜までの距離はどれくらいなのでしょうか。」


「はい、此処からで有れば、二里から、三里かと思われますが。」


「其処に、漁村は御座いますか。」


「はい、丁度のところに御座いますが。」


 源三郎は、一体、何を考えて要る。


 鬼家老の息子を処罰する言ったが、何処で、どの様な方法を持って処罰するする言うのだ。


「山賀の者、賄い処に行きこの者が入る樽を持って来なさい。」


 山賀の家臣は、何も言わず数人が賄い処へ向かった。


「源三郎殿、樽を、何に使われるのですか。」


「はい、この者を入れるのです。」


 源三郎は、平然とした表情で言った。


「えっ、源三郎殿、この者とは、山賀の若君ですが。」


「吉永様、其れは、あくまでも表向きで、事実はその側室も殿様のでは無く、鬼家老の側室で、山


賀とは全く関係は御座いませんので。」


 近くには、その側室も気が抜けた様な顔で座って要る。


 源三郎の足元には鬼家老の息子が、まだ、もがいている。


「源三郎様、樽を持って参りましたが、何処に置けば。」


「樽の中にその者を入れるのです、但し、着物は必要無い下着だけで良い。」


「はい。」


 家臣は、家老の息子が着て要る豪華な着物脱がし足を持つと。」


「あっ、足が。」


「足がどうしたのです。」


「はい、両足の膝から下がグラグラで。」


「その通りです、両足の膝から下の骨は砕け歩く事では出来ません。


 其れよりも、早く、入れなさい。」


 数人の家臣は暴れる息子を樽に入れると。


「鈴木様、上田様。」


「はっ、はい。」


 鈴木も上田も、源三郎が、何を考えて要るのか直ぐに分かり驚いて要る。


「今の者達は、この樽を荷車に載せ、松川の浜まで運びなさい。


 鈴木様と上田様は、城下の者達に知られる事の無い様にお願いします。」


「はい。」


 山賀の家臣、数人が樽を持ち荷車の有る所まで運んで行く。


「其れと、鈴木様と上田様、出来るだけ早い内に樽の中に石を入れ、蓋を縄で固く結び、漁師さん


の舟で沖合に行き投棄し、樽が、海中に沈むのを確認されてから松川に戻って下さい。」


 何と言う事だ、源三郎は、息子を入れた樽に石を入れ、漁師の舟で沖合に行き沈むのを確認する


様にと。


「源三郎様、ですが、表向きでも、私の子で御座います。


 何卒お許しの程をお願い申し上げます。」


「何と申された、許せと、私は、この城へは二度目ですが、あの時も申した通り、私に刃向かって


も、山賀の者達では相手にはならぬ、私は、この場では殺しませんが、山に行けば、狼が、海に行


けば、海中に、其れよりも、今から、全員を集められよ、全員だ、女中から、腰元もだ直ぐに。」


 家臣達、十数人が城内に散らばり。


「皆様方、大急ぎで大広間に集まって下さい。」


「其処の側室、そなたは大至急この城から出て行くのです。


 着物は、全て残して、さぁ~、早く行きなさい。」


 家老の側室は青ざめた表情で部屋に向かい、その後、山賀の城を出、二度と戻る事は無かった。


「では、我々も、参りましょうか、鈴木様、上田様、宜しくお願いします。」


「はい、では、松川へ参ります。」


 山賀の数人と、鈴木、上田の二人は、松川の領地に有る浜へと向かった。


 その後、暫くして、山賀の大広間には城中の全員が集まり、誰も、話しする事無く、静かにし、


源三郎達が現れると全員が両手を付き頭を下げた。


「皆様、私は、源三郎と申します。


 今から、皆様方にお話しをしますが、よ~く、聴いて下さいね、では、殿様ですが、この三日間


の間に別宅に移り隠居生活に入って頂きますが、勿論、奥方様も一緒で御座います。」


「源三郎殿、姫は。」


「其れは、今から申しますので、三日目の午後にですが、松川藩のご次男、松之介様を山賀の姫様


の婿養子として迎えて頂きます。」


「えっ、」


 山賀の姫様は小さな声を上げた。


「姫様は、父上から何も聴かされておられないのですか。」


「はい、私は、何も聞いておりませぬ。」


「何ですと、私は、先日申し上げたはずですよ。」


「はい、ですが、あの時は、正か、本当とは思わなかったので。」


「私はねぇ~、やると言えば、どの様な事でもしますからねぇ~、よ~く、覚えて置いて下さいね、


皆様もですよ分かりましたね。」


 家臣達からは返事の声も聞こえない。


「姫君が、受けるのが嫌だと申されるので有れば、ご両親と、一緒に隠居生活に入って頂きます。


 ですが、私は、何も強制はしませんので、でも、別宅での生活は今までの様な生活は出来ません


のでね、其れと、別宅からは、二度と表に出る事はなりませんからね。」


 傍で、源三郎の話を聴いている斉藤も、源三郎の言葉使いとは、全く異なり、内容は恐ろしいと


思って要る。


「ご家中の皆様の中には、私の申しております事に、大変な驚きをされて要ると思います。


 特に、お女中と腰元達は、何もご存知無いと思いますので、今から、詳しく説明させて頂きます


ので、よ~く聴いて下さいね。」


 源三郎は、鬼家老が城下の問屋達に対して行なっていた、数万両にも及ぶ賄賂の要求と、家臣達


も、そのお零れを受けていた事など全てを暴露した。


 腰元や女中達の中には、今まで、この人はと思う家臣が、賄賂を受け取っていたと言う、余りに


も大きな衝撃に涙を浮かべる者さえいた。


 そして、鬼家老の事までも話し、松川の姫君様を側室に寄こせと、山賀の殿様の名を借り、文を


送った事も。


「皆様も、大きな衝撃を受けられたと思います。


 私は、松川藩の者では御座いませぬが有る人物から全てを聴き、今のまま放置すると、我が藩ま


で被害が及ぶと考え、先日、鬼家老を退治しました。」


 鬼家老退治の話は城中の者達全員が知って要る。


「殿様を隠居させる理由ですが。」


 源三郎の話を聴いている、腰元や女中達も、今は、殿様の無能を知った。


 鬼家老が去り、これからは、我が身の天下だと考えて要る事も話す内に女中達も腰元達も納得し


たので有る。


 其れでも、殿様は、まだ、山賀の藩主に未練が有るのか。


「源三郎様、どうしても、隠居せねばならぬのでしょうか。」


「私は、どちらでも宜しいですよ、ですが、城下の密偵が山賀の城中で起きた話を果たして、見逃


すとでも思うのか、其れがどの様な事になるのか、皆様方も分かりますね、十数日以内に、幕府か


ら数千人の軍隊が来ますよ、其れで、山賀は取り壊し、殿様と重役方の全員は、切腹、家中の皆様


方は浪人になりますが、問題はねぇ~、其れよりも遥かに大きいのです。


 幕府の領地となれば今までの様に参りませんので、この山賀では今年も大豊作だと知ればですが


今までの、二倍、いや、三倍以上の税を納めなければなりません。


 其れと、ご家中の皆様方は、ご存知では無いと思いますが、山賀から菊池まで続く高い山ですが


ねぇ~、山越えは不可能ですよ、山には、数十万頭もの狼が群れを作り、今まで数百人の、いや、


数千人間が狼の餌食となり、狼は人間の味を覚えておりますので、其れと、山賀を出ても、松川藩


を始め菊池藩までの領地では、誰も、貴方方に食べ物を与える事は有りませんよ。」


 家臣達は、逃げ隠れも出来ないと言われ女中達も腰元達も涙を流している。


「えっ、正か、三倍以上の税を納めると、では、私の実家は、一体。」


 一人の腰元が涙をみせて。


「貴女の、ご実家は。」


「はい、この山賀では有りませんが。」


「どちらですか、今、この場ではどの様な事でも、私が、お聞きしますのでお話し下さい。」


「はい、実は、松川藩で窯元なのですが、今、申されました、幕府は松川藩までにも影響するので


御座いますか。」


「はい、勿論ですよ、山賀の隣の藩ですからね、松川藩の窯元さん達は、今までの様に松川藩での


手厚い保護を受ける事は出来ないと考えて下さいね。」


「源三郎様は、その密偵をご存知なのですか。」


 家臣達も、少しづつだが深刻に考え始めた。


「いいえ、私自身、山賀の城下に潜んでいる密偵は知りませんが、他の藩では数名は知っておりま


すのでねその者に対し、私の名を伏せ文を届ければ良いだけですからね。」


 この山賀の城下にも密偵は要る、だが、山賀の家臣達は密偵が潜んで要るとは考えもしない。


「あの~、宜しいでしょうか。」


「はい、どうぞ、どの様な事でしょうか。」


「はい、私は、姫様付きの腰元なのですが、先程、申されましたが姫様が、松川藩の若君様とご一


緒になら無ければ、私達は、一体、どの様になるので御座いますか。」


 殿様、同様に姫様が隠居するなれば、自分達、腰元達も、一体、どうなるのだ、不安そうな顔付


をしている。


「はい、其れは、簡単ですよ、貴女はこの城に残って頂きます。」


「では、姫様のお世話はどなたが。」


「其れならば心配は御座いませんよ、別宅には、確か、年配のご夫婦が居られますので、その方達


に任せ、その人達以外の者達の立ち入りは、一切、禁止としますので。」


「えっ、では、まるで牢獄では御座いませぬか。」


「貴女は、牢獄をご存知なのですか、牢獄と言う所は、人、一人が眠る事が出来る広さで、其れも、


ところによっては、陽も入らず、年中、暗闇と暑さ、寒さに耐えなければなりません。


 更に、食事も、ご城下でも食べる事の出来ない最悪と言っても過言では無い食べ物ですよ、別宅


は、其れに比べれば外には出る事は出来ませんがね、食事は質素にはなりますが、農民さん達の食


事よりも良い物を食べる事が出来ると思いますが。」


「源三郎様、松川藩の若君様は、どの様なお方で御座いましょうか。」


 姫様も、別宅での生活には行きたくは無いのだろうか、松之介の事を聞きたいのだ。


「そうですねぇ~、竹之進様も、松之介様も若君だと言われる様な言葉使いもされずに、お着物も、


先程、鬼家老の息子が着ていた様な豪華の着物では無く、ご家中の皆様と、殆ど同じ様な着物を着


られておりますよ。」


「えっ、正か、松川藩の若君様が何故なのでしょうか。」


「其れはねぇ~、こちらの、斉藤様の尽力なのですよ、斉藤様、宜しければお話し下さい。」


「はい、私で、良ければお話しを致します。」


 斉藤が、松川の三人に対して行った教育を話すと。


「斉藤様は、松川藩の若君としてでなく、一人の人間として、ご家中や、領民達をどの様にすれば、


安心した生活を送る事が出来るかを教えられたのです。


 ですが、斉藤様は、抜刀術も教えら、お二人の若君は、若くして、抜刀術の達人ですから。」


 源三郎は、家臣達に対し、松之介は、抜刀術の達人だとさらりと言った。


「まぁ~、姫様、三日、有りますのでねゆっくりと考えて頂いても宜しいですからね、どちらを選


ぶかは、姫様自身が考える事です。


 そして、若君を受け入れられるので有れば着物も少しですが変えて頂きますので。」


 姫様は、頷き考え始めた。


「其れと、今、山賀には家老が居りませんので、こちらの吉永様にお願い致しております。


 吉永様は、抜刀術の達人で、先日、重役方の髷を落とされたお方ですよ、吉岡道場と言えば、ご


家中の皆様なれば知っておられると思いますが、その吉岡道場の四天王と呼ばれております。」


 重役方もだが、家臣達は、大変な驚きで、先日、あっと言う一瞬で、重役方の髷を切り落とした


時の事を思い出している。


「其れと、こちらに居られます、髷の無い四名が、吉永様の指示を受け、皆様にお役目を伝えます


のでね、其れと、勘定方は、大至急、今までの帳簿を出して下さい。


 四名の者が調べますので、山賀は、今後、質素な政を致しますので、そうだ、忘れておりました


が、山賀のお城には闇の者が十数人、私の、指示で潜んでおります。


 皆様も、私の配下の闇の者を見られたと思いますが、彼ら、闇の者達は、一切手加減は致しませ


んのでね、私よりも恐ろしいと思いますよ。」


 源三郎の言う闇の者とは、田中の事なのだろうか、だが、田中は、今、農民の三太と、都周辺を


探って要るはずだ、では、一体、誰なのだ、若しかすると、源三郎の大嘘なのか、仮に、大嘘だと


しても山賀の家臣達は信じて要る。


 闇の者が、何時、どの様にして侵入したのか、家臣達は知らず、だが、殿様の寝所に現れ、先日


は、殿様の後ろの屏風から現れたのを見て要る。


「闇の者は、何時、皆様方の寝所に現れるか、其れは、皆様方の行動行かんでしょうねぇ~。」


 傍では、殿様は、諦めの表情で、奥方様も同じで有る。


「源三郎様、私達は、今後、どの様にすれば宜しいのでしょうか。」


「そうですねぇ~、まぁ~、皆様方が、浪人になるもよし、この山賀で領民の為に一生を捧げられ


るのも良し、何れにしても、三日後までに、全てを考えて下さいね、例え、皆様方が、我らに反抗


し、攻撃される様な事になりました時には全員が死亡する事だけは覚悟して下さい。


 その時、私は、一切の妥協は致しませんのでね、例え其れが、女、子供で有ったとしても、結果


は同じですのですから狼の餌食にでも、まぁ~覚悟だけはして置いて下さいね。」


 源三郎の言葉使いは優しく聞こえるが、反抗するならば全員を殺すと脅迫した。


 家臣達は、恐怖からなのか大半の者達が震えを感じて要る。


 その頃、山賀の城から、鬼家老の息子を乗せた荷車を押している家臣達は身体の震えが収まらら


ずに要る、時々、樽の中から呻き声が聞こえる。


「上田殿、私は、あの様な恐ろしい源三郎様を見たのは初めてで、私は、あのお顔が、今も、目に


浮かぶんですよ。」


「私もですよ、今まで優しいとばかり思っておりましたが、源三郎様は、一刀流の達人だとは聞い


ておりましたが、正かと思いましたのでねぇ~。」


「あの~、宜しいですか。」


 山賀の家臣が初めて見る光景だった。


「何ですか、貴殿は、正か。」


「いいえ、その様な事は決して考えておりませぬ、ですが、今、もうされておりました、源三郎様


と言うお方はお優しいと。」


「そうですよ、特に、農民さんや漁師さん達にはね、其れは、もう、先程の様な鬼では無く、我々


も、源三郎様は、何時も優しいお方だと思っておりましたので。」


「では、何故、山賀に若君様を。」


「源三郎様は、山賀の全てをご存知なのです。」


「山賀の全てをご存知だと申されますと。」


「だから、全てをですよ。」


 山賀の彼らには、鈴木が言った、全てと言う意味が、まだ、理解出来ていない、それどころか、


まだ、何処かで簡単に考えて要る。


 確かに、少人数だ、だが、吉永も、松川の斉藤も、阿波野も高野達も達人で、其れだけの達人に


向かって、百人や、二百人の家臣達が立ち向かったところで、殆どが、その場で息を絶える事に。


「山賀の家中が、源三郎様に立ち向かえば、殆どの者達は、一生、歩く事は出来ないと思いますよ、


まぁ~、其れでも良いと思われるので有れば、私は、何も申しませんがね。」


 山賀の家臣は考え始めた。


「では、我々は、今の殿に隠居して頂き、松川藩の若君様を迎い入れ、源三郎様の申される通りに


致せば山賀に残れるのでしょうか。」


「私は、その方法が一番良いと思いますよ、源三郎様は、野洲でも全ての農民さんと漁師さん、城


下の人達からは、其れは、もう、全幅の信頼を受けておられますからねぇ~、其れに、源三郎様が、


進めて、あっ、これ以上、話は出来ませんが、まぁ~、我々もですが、殿様も含め、野洲の全員と


言っても良い程の人達から信頼を得られておられますからねぇ~、まぁ~、貴殿達も、これから先


の事を余り難しく考えるのでは無く、源三郎様を信頼されれば、私は、大丈夫だと思いますよ。」


「でも、仮にでも、山賀の若君ですよ、その若君を海に沈めると申されるのですか。」


「私は、源三郎様も、初めから今の様な事は考えておられなかった思いますよ、まぁ~、考え方を


変えれば返り討ちに有ったのですから、当然と言えば、当然だと思いますがねぇ~。」


「はい、分かりました。」


 山賀の家臣は、本当に分かったのだろうか、だが、今、此処で、荷車を放置して逃げる事も出来


る、だが、逃げて一体、何処に行くのだ、其れでも、彼らは大きな樽を乗せた荷車を押し数時後に、


松川の浜に着き、漁師の舟に載せ沖へと向かい、樽を海に沈め、鈴木と、上田は、樽が沈んだ事を


確認し、松川の城へと、山賀の家臣は山賀へと帰って行く。


「さぁ~、皆様、他に聴く事が無ければ、我々は。」


「あの~。」


「はい、何か。」


「其れで、殿様が、別宅に行かれると、金子は。」


「あっ、そうでしたねぇ~、忘れておりました、別宅に行けば、金子は必要有りませんので。」


「ですが、お着物も、要るのでは。」


「まぁ~、其れならば、今、有る着物で十分ですよ、其れに、これからは新しい着物も必要有りま


せんからねぇ~。」


 傍の殿様の顔が、もう、駄目だと言う顔付になった。


「貴殿も、考え様によっては、死ぬまでのんびりと出来るのだから、そうだ、着物を多く持って行


く事ですよ、皆さん、もう、無ければ、我々は、一度、引き揚げ三日後に戻って来ますが。」


「源三郎殿、拙者、此処に残り、此処の者達と今後に付いて話し合いをと考えております。」


 吉永は、残り、山賀の再建計画を考えると。


「吉永様、有難う御座います、私も、その様にお願い出来れば非常に助かりますので。」


「では、残らせて頂きます。」


「源三郎様、もう暫くしますと、陽が落ちますので、今宵は、城にお泊りをなされては如何で御座


いましょうか。」


 この人物は、落ち着きの有る人物で、もの言いようも初めて見たが、どっしりと構えて要る。


「ご貴殿は。」


「はい、私は、後藤新平と申します。」


「後藤様と申されるのですか、では、お世話になります。」


「はい、では、皆様方もご一緒に。」


「はい、宜しくお願いします。」


 源三郎は、後藤の表情を見て要るが、後藤は、目も逸らさず源三郎を見て要る。


「源三郎様、賄い処を戻しても宜しいでしょうか。」


「はい、皆様、長い時をご無理を申しましたが、私の、考え方は一つです。


 其れは、全ては、領民の為、其れだけですので、お役目に就かれましても、三日間御座いますの


で、どうか、よ~く考えて下さいませ。」


 源三郎は、大広間に集まった家臣の全員に対し、手を付き頭を下げた。


「皆様、お役に就いて頂いても宜しいですが、賄い処の男は別として、他の者達は残れ、今から、


大切なお話しを伺う。」


 源三郎は、少し驚いた、この後藤と言う人物は大した人物だと感心した。


「まぁ~、皆様、気軽に聴いて下さいね、その前に、後藤様、お城の後ろに有る山ですが、何処ま


で続いているのでしょうか。」


「はい、あの山は、松川藩を通り過ぎ、確か、上田藩までかと。」


 源三郎は、先程、あの山は、菊池まで続いて要ると言ったはずだが、山賀の家臣達は、もう忘れ


たのか、其れとも、聴いて無かったのだろうか。


「へぇ~、そんなに遠くまで続いて要るのですか。」


 この時、源三郎は、飛んでも無い事を考え付いた。


「後藤様、山賀の領民が、どの様な暮らしをされて要るのかご存知でしょうか。」


「はい、私も、以前から、気にはなっておりましたが、特に、農民が苦しいのではと考えておりま


したので。」


「其処の、貴殿は、一番後ろに行きなさい。」


「私ですか。」


「そうだ、貴殿だ、もう、殿様では無い、廊下で待つのです。」


「はい。」


 元殿様と言っても良い、殿様と奥方も廊下まで下がり、改めて座る姿に殿様の威厳も無い。


「貴殿が、今まで、どれ程無能だったか、よ~く聴き考える事だ、其れと、腰の物、今後は必要無


い分かったのか。」


 源三郎は、家臣達の前で、徹底的に元殿様を下げた、其れも、一つの戦術なのだろうか。


「申し訳有りませんでした、話を戻しますので、皆様、農民さんが苦しむと言う事はですねぇ~、


何れは、幕府に知れますよ。」


「えっ、何故で御座いますか、我々は、何も農民を苦しめてはおりませぬが。」


 一人の家臣が思うのも当然で、今までは、鬼家老が米問屋に伝え、米問屋は全てのお米を安く買


い入れていた。


 この山賀では、鬼家老が全ての実権を握り、他の国の米問屋にも賄賂を要求し、受け取る金額に


よって、お米の量を決めており、其れで、米問屋は安く買い入れれば、幾ら、お米を高く売ったと


しても利益が出、米問屋は必然的に各農村から安く買い入れる事になり、農民が苦労して育てた作


物は安く買われ、農民は物が高く買う事も出来ない。


「では、この山に大きな洞窟を掘り、幕府には隠し、農民さんや城下の貧しい人達には無償で渡し


ては如何でしょうか。」


「源三郎様、何故、山に洞窟を掘るので御座いますか。」


「山賀は豊作ですがね、隣の松川藩は、毎年、不作が続いておりましてね、その松川藩にお米を送


るのですよ。」


「お米を送るので有れば荷車に積み込み、直接届ければ良いと考えますが。」


「はい、その方法は普通ですが、十台、二十台、いや、数百台も荷車が続けば、直ぐに知られる事


になりますまのでねぇ~。」


「其れで、先程、申されました洞窟を掘るのですか。」


「はい、その通りでして、最初は、ご家中の皆様に掘り進んで頂きます。


 其れとは、別に、皆様方が農民さん達にお話しをするのです。」


「えっ、我々がですか。」


「そうですよ、皆様方が始めるのです、ですがね、ただ、掘り進むのは誰にでも出来ますよ、です


がねぇ~、洞窟を掘り進めるには多くの問題が有りまして。」


「源三郎様、私は、井川と申します。」


「井川様ですか、で、一体、何を。」


「はい、私は、この藩では、下級武士で、子供の頃、良く村に行き農村の子供達と遊びました。」


「そうですか、若しや、井川様が農村に参られるのでは。」

「はい、私が、農村に参り、農村の人達と話をしたいと思うのですが。」


「うん、其れは、大変、良い事ですねぇ~、農民さんの中には刈り入れが終われば畑の仕事をされ


る人達もおられますが、その人達に納得して頂きますれば、農民さんもお手伝いをされると思いま


すが、井川様、でも大変ですよ。」


「あの~、源三郎様、私も、参加させて頂きたいのですが。」


「貴殿も、井川様の。」


「はい、私は、井川とは、幼い頃より村に行っておりましたので、私は、大田と申します。」


「左様ですか、大田様と井川様ですか、でも、これだけは申し上げますが、幾ら、子供の頃、村に


行き遊んだと申されましても、今までの事を忘れる様な農民さんでは御座いませんよ、井川様も大


田様も、農民さんに対し土下座をする事は出来ますか。」


「えっ、農民に土下座ですか。」


 源三郎の表情が変わった、其れは、源三郎の芝居なのか、本心なのか、井川も大田も山賀の家臣


達には分からない。


「少しお待ちなさい、今、貴殿は農民と申されましたが、貴殿の、いや、この広間に居る皆様方は


農民さん達を馬鹿にされるのですか。」


「いいえ、私は、何もその様なつもりで申し上げたのでは御座いませぬので。」


「では、何故、農民さんと言えないのですか、此処に居られる皆様が食される物は、一体、誰が作


られたと思うのですか。」


 大広間に残った家臣達は静かに聴いている。


「この中で、お米や、他の作物を育てられたお方は、一人でもおられますか、勿論、この私も、作


り育てた事は一度も有りませんよ、ですから、私は、何の躊躇いも無く、相手が農民さん達でも漁


師さん達にでも土下座をする事が出来るのです。


 其れは、何故だか分かりますか、皆様は、武士が、一番、偉いと思われて要るでしょうが、其れ


は大変な間違いで、我々は、ただ、読み書きが出来、生まれた家が侍の家と言うだけで、何も、作


れない、ただ、腰に、大小の刀を差して要るだけなのです。


 皆様の中に、農民さんや漁師さん、其れに、城下で多くの仕事に就かれている人達に対して、何


時でも、本気で土下座が出来なければ、先程申しました洞窟を掘る事は出来ません。」


 源三郎は家臣達を突き放した。


「源三郎様、洞窟を掘ると言う事はそれ程までに大変なのでしょうか。」


 またも、別の家臣が聞いたが、この家臣は何も知らないと言っている様で。


「洞窟と言うのは簡単には掘れないのですよ、有る程度掘ると、これはねぇ~、土の場合ですがね、


落盤事故が発生するのです。」


「えっ、落盤事故ですか。」


「そうですよ、その落盤事故を防ぐ為には、山から大量の原木を切り出し、洞窟内を落盤事故から


防ぐ補強材を作るのですが、山では、木こりさん達が危険を犯し原木を切り倒し、原木を運び出す


のも専門の人達が、そして、原木を加工される大工さん達も必要になるのですが、その人達の中に


は、一部を除き、読み書きの出来ない人達もおられますが、その人達は、自然と言うのが、どの様


なものなのか、全て、知っておられますよ、私は、その様な人達に敬意を表しておりますのから、


平気で土下座が出来るのです。」


「源三郎様、私も、これからは、農民さん達に敬意を表す様に致しますので。」


 太田は、源三郎の話を真剣に聞いていたので有る。


 その頃、鈴木と上田の二人は松川の城に戻って来た。


「さぁ~、殿も、お待ちですので。」


「はい、ですが、源三郎様は、まだ、戻られておられないのですか。」


「はい、多分ですが、陽も落ちましたので、明日には戻られるのではないでしょうか。」


「そうですか。」


 鈴木と上田は、源三郎は帰って要るものだと、少しは期待したので有るが。


「鈴木殿、上田殿、大変でしたが、何故、二人が先に戻られたのですか。」


「殿様、ご家老様、実は、山賀で大変な事が起こったので御座います。」


 その時、雪乃が、慌てて飛び込んで来た。


「鈴木様、源三郎様に、何か有ったのでしょうか。」


 雪乃は、鈴木と上田だけが戻ったので不安を抱き顔色も次第に悪くなって来た。


「上田殿、一体、何が、有ったのか教えて下され、場合によっては、我々が。」


「ご家老様、今から、お話し致しますので。」


 上田は、源三郎が、山賀の鬼家老の息子を処罰した事を話し始めた。


「鬼家老の息子が、突然、源三郎様に、父上の仇だと言って襲ってきたのですが。」


「うん、其れで、一体、どうなったのじゃ。」


 殿様も、ご家老様も、身を乗り出して聴くが、雪乃は、静かに聞いて要る。


「はい、其れが、もう、一瞬の事ですが、源三郎様の木剣が息子の両足を砕き、源三郎様は許さぬ


と申されまして、大きな樽に大量の石と共に入れ海に沈めろと。」


「えっ、源三郎殿がその様な事を。」


「はい、其れで、私と、鈴木が。」


 その後、上田が状況を詳しく話した。


「えっ、では、源三郎殿は、一刀流の達人なのか。」


「はい、でも、あの時の源三郎様は、何時もの優しい、源三郎様では無く、本当の鬼では無いかと


思う程に恐ろしく、私も、鈴木もですが、山賀の家臣達は震え上がっておりました。」


「その様な恐ろしい人物だとは考えもしなかったが。」


「はい、私達も、初めて見ましたので、其れはもう大変な衝撃で御座いました。」


「で、その後は。」


「はい、源三郎様は、三日以内に山賀の殿様は隠居されよと。」


「えっ、三日以内だと。」


「はい、その通りで御座います。」


「鈴木様、其れで、源三郎様にお怪我は。」


「其れは、勿論、御座いません。」


「あ~、良かった、本当に良かった、私は、もう。」


 雪乃に、やっと、安堵の表情が現れた。


 上田と鈴木は、その後も、源三郎の話を続け。


「鈴木殿、その後の事は分からぬのか。」


「はい、私は、源三郎の命で海に向かいましたので。」


「やはりのぉ~、じゃが、源三郎と言う人物は、我が松川藩を含め、五つの国を統一するやも知れ


ぬなぁ~。」


「殿、我々も、源三郎殿のお陰で救われたので御座います。


 殿も、参加を望まれておられるので有れば、私達は、何も申しませんので。」


「う~、じゃがのぉ~。」


 殿様は考えるが、心の中では、既に、決めていたので有る。




         

        


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