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闇の帝国    作者: 大和 武
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第 4 話   攻撃開始。

司令官は、大きな川近くの村民と一緒に農場へ向けて4日後の事だった。


 あの城から食料調達の為に数十人の兵士が村に到着したのだ。


 「隊長、村には誰も居りません。


 それに、作物は何一つ残っておりません。」


 兵士の報告に。


 「なんだと、誰も居らず、作物も無いだと、我々が来る事を知っていたは


ずだ、一体、何処に隠れたんだ、早く見つけだせ。」


 隊長は、大変な怒りようだ。


 「でも、隊長、あの橋は渡ってはいませんが。」


 川の上流、3日の所は川幅も狭く、ただ、一箇所だけに橋が架かっている


のだ。


 「うん、確かに、我々は村民とは会って無い、じゃ~、一体、何処に行っ


たんだ、付近を捜せ、必ず、見つけ出すんだ、あいつらに、我々の恐ろしさ


を教えてやるんだ、くそ~。」


 この兵隊達が来る数日前にロシュエが送った司令官が引き得る部隊が村民


の全員を引き連れて村を去った事など知るよしも無かったのだ。


 兵士達が幾ら探しても付近には誰も居らず。


 「隊長、この付近一帯を捜しましたが、何処にも見当たりません。」


 「本当か、だが、あの川を渡る事は出来るのか。」


 「いいえ、この村の住民が川を渡る事は出来ないと思いますが。」


 「其れにしても、あいつらは、一体、何処に隠れているんだ。」


 隊長は腹の虫が納まらないのだが、やがて。


 「わかった、仕方が無い、一度、全員引き上げるぞ。」


 こうして、あの城から派遣された兵士達は食料も調達できずに、城へと戻


って行った。


 一方、農場では、城からの攻撃に備え、着々と準備が進んでいる。


 「将軍、司令官達は遅いですねぇ~。」


 「いや~、何も心配は無い、多分、村民の説得に時間が掛かっていると思


うんだ。


 オレだって、突然やってきた兵隊の話を信用する事は出来ないからなぁ


~。」


 「私も、同じですね、私達は、この農場に居るのでわかっていますが、で


も、早く帰って欲しいですよ。」


 技師長も司令官を信頼しているのだが、これだけは、相手が有るので簡単


には行かないだろうと思って要る。


 そして、2日が過ぎた昼近くだった。

 

 「お~い、司令官が戻って着たぞ。」


 「わかった、直ぐ将軍に伝えるからなぁ~。」


 「頼んだぞ。」


 兵士がロシュエに伝えに行くと。


 「お~、聞えていたよ、直ぐに行くから門を開けてくれ。」


 「はい、将軍。」


 伝令の兵士は大急ぎで城門の兵士に伝えに行った。


 この農場は広大な敷地だが、それでも、司令官が戻って着たと伝わるのは


早く、丁度、昼食の時間近かった事も幸いしたのか、熱いスープとパンも出


来上がっていたのだ。


 「みんな、スープとパンの追加をお願いね。」


 何時もの女性だった。


 ロシュエは城壁の上に上がり司令官達が帰ってくるのを見た。


 「オイ、オイ、まだ、遠くじゃ~無いか。」


 「はい、将軍、でも、みんなに早く知らせ様と思ったんで。」


 「いいよ、別に気にする事は無いんだからよ~。」


 城門の兵士は、まだ、遠くに見えたのだが、早く知らせたいと思ったので


ある。


 それでも、人間の歩くよりも早く、馬車はどんどんと近づき、ロシュエは


場外で待っている。


 「将軍、只今、戻りました。」


 「司令官、大変、ご苦労様でしたねぇ~、さぁ~、みんなも。」


 その時だった、農場の仲間達が大勢で迎えに着ていた。


 仲間達の大歓声で、兵士達は喜びの声を上げ、手を振っている。

 

 農場ではさながら兵士達の凱旋を祝福している様だった。


 司令官と兵隊の間には、馬車、十数台を挟んでいる。


 その馬車には村民全員が不安そうな顔つきで乗っている。


 最後の兵士が入り、城門は再び閉じられ、ロシュエは司令官の側に行っ


た。


 司令官は馬から降り報告するので有る。


 「閣下、只今、戻りました。」


 「司令官、大変、ご苦労様でした。


 でも、今回の任務は本当に大変だったと思うよ。」


 その頃、馬車からは次々と村民が降りている、農場の女性達は出来立ての


スープとパンを持って来ている。


 「さぁ~、みんな、出来立てのスープとパンだよ、此れからは、何にも心


配する事無いからね、私達が見方だからね。」


 やはり、あの女性だったのだ、だが、村民の表情は硬い。


 「閣下、あの人達も今まで大変な思いをされてたようです。」


 「やはり、そうか、じゃ~、説得には時間が掛かったんだなぁ~。」


 「私は、一刻も早く、村を離れるようにと思っておりましたが。」


 「司令官、オレも、村民の立場に成れば、簡単には納得出来ないよ。」


 ロシュエは、司令官がほっとした顔付きになったのを見たので有る。


 「はい、閣下の言われる通りでした。


 私は、城から何時、軍隊が来るのかわからない状況だったので、内心焦り


ましたよ。」

 

 この司令官でも焦る事が有るのだと、ロシュエは思ったのだが。


 「でもよ~、司令官は本当に立派だよ、全員が納得されて、この農場に着


いたんだから、オレじゃ~、そうは行かないよ。」


 ロシュエは司令官を褒めるのだ。


 「いいえ、私は、まだ経験が足りませんので、此れからも閣下と農場の人


達の為に全力を出して、頑張ります。」


 ロシュエは二ッコリとして。


 「司令官は、本当に硬すぎるんだ、もう少し柔らかくなりゃ~、いいと思


うんだ。」


 「はい、閣下、その様に努力致します。」


 司令官は二ッコリとして、二人は大声だ笑ったので有る。


 その頃、村民達は熱いスープとパンを食べ、やっと、落ち着いたのか、数


人の村民が近づいてきた。


 「司令官、やはり、司令官の言われた通りでした。」


 村民はほっとした様子だった。


 「そうでしょう、それで、この方です、私が言っておりました、将軍です


よ。」


 司令官はロシュエを紹介するのだが、ロシュエは、何時もの様に農作業服


を着ている。


 「えっ、この方が言われていました、将軍様ですか。」


 村民達は、本当に驚いたのだ。


 「オイ、オイ、オレは将軍様じゃ~、無いんだからね。」


 ロシュエは笑いながら言ったのだが。


 「でも、将軍様は一番偉い方だと。」


 「オレか、オレは、別に偉くは無いよ、この農場じゃ~、みんなが平等な


んだ、オレも、みんなと一緒の人間なんだからね。」


 ロシュエは村民の気持ちはわかっている。


 今までは、兵隊が村に来て作物を奪って行く、其れが、兵隊だと思ってい


たからだ。


 「ですが、司令官が言われました。


 我々の農場に来れば、何も心配する事は無い、其れは将軍が居るからだ


と。」


 ロシュエは二コリとして。


 「其れはなぁ~、司令官の思い違いなんだ、オレなんか、何も出来ないんだからよ~。」


 「将軍、何時まで話をするんだよ、この人達も本当に疲れているんだから


ね、早く部屋に戻りなよ。」


 やはり、あの女性だった。


 「お~、済まなかった、オレは、何も考えて無かったよ~。」


 「だから、将軍は駄目なんだよ~。」


 ロシュエは、この女性には頭が上がらないのか。


 「済まないねぇ~、其れと、あんた達の家もあるからよ~、テレシア、案


内を頼むよ。」


 「あいよ、任せな、ハ・ハ・ハ。」


 豪快に笑っている、それにつられ、村民達も少しだが笑ったのだ。


 テレシアは、ロシュエが駐屯地の司令官だった頃から友人とでも言うの


か、ロシュエの事は良く知って要る。


 「其れじゃ~、皆さん、私達が案内するからね、付いておいでよ。」


 テレシアは村民を案内し、その後ろからは兵士達が村民の荷物を持って行


くのだ。


 「貴女に聞きたい事が有るんですが。」


 村民はテレシアに何を聞きたいのか。


 「えっ、私に、一体、何を聞きたいの。」


 「私達はね、大きな川の近くに住んでいたの。」

 

 「うん、其れで。」


 「其れでね、10日位前だったんだけど、あの司令官達が突然来てね。」


 「あ~、その話しね。」


 テレシアは知っていたのだ。


 「では、貴女は知っておられたんですか。」


 テレシアは頷き。


 「そうよ、私は、将軍の話で、知ってたんだけど、其れが、どうかしたの


かい。」


 村の女性は唖然としている、何故、この女性が知って要るのだと。


 「でも、何故、知って要るの。」


 「その話は、多分だけどね、後から将軍から話しが有ると思うわよ~。」


 この女性だけでは無い、あの村から来た住民は、将軍と言われる人物、そ


して、農場と言われている城壁の中、何もかもがわからないのだ。


 「少し聞きたい事が有るんだが。」


 男は本当の事を知りたいのだ。


 「何が、知りたいの、多分、この農場と将軍の事よね。」


 男もだが、テレシアの周りに居る村民も頷き。


 「其れじゃ、この農場の話をするわぇ、私はね、将軍、今は将軍と呼ばれ


ているんだけれど、以前はねぇ~、司令官と呼ばれていたのよ、私達は、此


処より遥か遠くの国に住んでたのよ。」


 「遥かに遠い国ですか。」


 「そうよ、私達が住んでたところは、ある国の駐屯地と呼ばれ、その駐屯


地の司令官が今の将軍なのよ。」


 「其れじゃ~、貴女は、将軍とは、その駐屯地からなんですか。」


 テレシアは、思い出していたのだ。


 あの頃、駐屯地では司令官を中心にみんなが楽しく毎日を過ごしていた。


 「将軍、いいえ、司令官は若いんだけど、私達、農民の事を一番に考えら


れて要るのよ、其れもね、司令官の父親も、その前の父親もなのよ。」


 「じゃ~、なんですか、今の将軍は、代々、同じ駐屯地の司令官をされて


たんですか。」


 実は、テレシアも母親から聞いていたのだ。


 「私もね、母親から聞いたのよ、この駐屯地の司令官は、私達、農民を一


番大切にされる人物だって、私も同じなのよ。」


 「でも、何故、その駐屯地を離れる様になったんですか。」


 「その話ねぇ~、其れを話すと本当に長くなるのよ、だけど、私もなんだ


けどね、あの駐屯地で生活していた全員なんだけどね、みんな、司令官を信


頼してたのよ、それで、有る時、司令官が言ったのよ、オレは新しい土地に


行き、そこでは、全員が楽しく生活が出来る様にしたいんだってね。」


 「其れで、司令官と、一緒に駐屯地を離れたんですか。」


 テレシアは悲しそうな目で。


 「そうよ、でも、其れからが大変だったのよ、駐屯地を離れたのが、確


か、夏の終わりで、この土地に着いたのが冬も終わり、春だったと思うの


よ。」


 テレシアの話を聞いた村民達は大変な驚きだったのだ。


 「えっ、本当なんですか。」


 「勿論、本当の話よ。」


 実は、テレシアの母親もこの地に着く途中で息が絶えたのだ。


 そのテレシアの目には涙が流れていた。


 「でも、全員がこの地に着いたんでしょう。」


 テレシアは首を振り。


 「私達は、村の全員だけど、司令官は他の村にも伝えたのよ、するとね、


兵士と村民の殆どが来たのよ、だけど、この地に辿り着いたのは半分だけな


の。」


 「えっ、本当に、半分の人達だけなんですか。」


 「そうよ、村人も兵士も半分が亡くなったのよ。」


 「そんなにもですか。」


 「本当なのよ。」


 「でも、兵隊さんは、全員残られたんでしょう。」


 テレシアは、またも、首を振り。


 「さっきも、言ったと思うけど、其れが違うのよ、司令官もだけど、私達


には食べ物は出すのよ、でも、特に司令官は、3日も4日も食べられなかっ


たの、其れに兵隊もよ。」


 村民達も涙を流し、聞いて要るのだ。


 「何故、其処までの事をされるんですか、私は、理解が出来ませんよ。」


 「其れが、あの将軍なのよ、みんなも将軍の着ている服を見たでしょう、


あの服はね、私達の使い古しなのよ。」


 村民達は絶句するのだ。


 「オレ達は、将軍と言えば、一番美味しい物を食べ、一番綺麗な服を着て


いると思ってたんですが。」


 「でもね、将軍もだけど、駐屯地から一緒に来た兵隊さんが一番苦労した


と思うのよ。」


 「其れは、何でですか、兵隊さんはいつも馬とか馬車に乗っていると思う


んですが。」


 「其れは、本当は間違いなのよ、駐屯地の兵隊さんは、全員が歩き、農民


が馬や馬車に乗ったのよ、特に、子供や女性は全員よ。」


 「でも、将軍は。」


 「特に司令官は一番危険な先頭を歩いたわよ、農民は兵隊さんに守られた


のよ。」


 「でも、一番大切な食べ物は。」


 「司令官は駐屯地でも言ってたのよ、一番先に、子供と女性だ、其れと年


配者で、次に農村の男性で、最後に兵士だと、そして、本当の最後は司令官


なのよ。」


 「でも、司令官の食べ物は特別なんでしょう。」


 テレシアは首を振り。


 「司令官は、いつも、残し物だけよ、だから、残り物が無いと、司令官は


食べる事が出来ないのよ。」


 「でも、何か、嘘の様に思えるんだけど。」


 テレシアの表情が変わったのだ。


 「私の話は、全て本当なのよ、今でも、将軍は、農場のみんなが食べてい


るかを見られているのよ、みんなが食べないと、将軍は食べる事は無いの


よ。」


 「でも、この農場では、食料は何時も有ると思うんですが。」


 「其れはね、この数年の話しよ、最初の頃は、将軍も兵隊さんも食事の頃


になると仕事を始めてたのよ。」


 「何故、仕事をされるんですか。」


 「其れはね、仕事が優先といえば、聞えはいいのだけど、本当は食べる物


が無かったの。」


 「でも、この農場に着くまでにも良い土地が有ったと思うんですが。」


 「そりゃ~、有ったと思うわ、でもね、司令官は、駐屯地と言うよりも、


その国から手の届かない土地を目指したのよ。」


 「でも、そんなに長い間だったら、食べる物も無くなったと思うんです


が。」


 「そうね、司令官は、一緒に連れてきた馬を涙を流しながらみんなに与え


たのよ。」


 「えっ、じゃ~、馬も食料に。」


 「そうよ、司令官の馬が一番先に私達の為に。」


 テレシアの涙は止まらない。


 「でも、半分近くの人達が亡くなったんでしょう。」


 「この先の話は、少し待って欲しいのよ。」


 「わかりました。」


 テレシアは、あの頃を思い出し、涙が止まらない。


 それから直ぐに、村民達の住む事になる家に着いたのである。


 「此処が、私達の住む家なんですか。」


 村民達は驚きの表情だ。


 その家は以前に住んで家とは格段の違いだ、以前、住んでいた家は、家と


は名ばかりで、其れが、どうだろう、今度、住む家は頑丈に造られ、それに


大きな造りだ。


 「そうよ、何か不満でも有るの。」


 テレシアは二コリとした。


 「之はね、全て将軍の指示なのよ。」


 「えっ、将軍がですか、でも、私達の事をどうして知ったんでしょう


か。」


 「そんな話は、将軍に聞いてよ。」


 村での生活は悲惨だったのだ。


 「我々の村を知って要るのは、確か。」


 「そうよ、あの城の兵士達よ、でもね、全員が兵隊じゃ~、無かったの


よ、中には、私達の様に農民だった野盗も居るのよ、貴方達の村の事を話し


たの、兵隊じゃ、無いの、野盗からなのよ。」


 村民は村の事を話したのが野盗だとわかり、驚き。


 「えっ、野盗なんですか、でも、野盗は、オレ達の村人を脅し、食べ物を


略奪するんですよ、其れなのに。」


 「でも、その野盗達も今じゃ、この農場で仕事をして要るのよ。」


 「そんな話は信用できないよ。」


 村民は否定するのだが。


 「でもね、貴方達の家を造ったのは、その野盗なのよ。」


 「じゃ~、我々の住む家を全部建てたんですか。」


 テレシアは二コッリとして。


 「そうよ、将軍はね、元農民だとわかった時に、あなた方が住む家を建て


る様に言ったのよ。


 あなた達の村では、何軒の家があるのか、将軍は知らないのよ、、知って


要るのは野盗だけなんだから。」


 「其れじゃ~、村の事を知って要る野盗に、我々の家を建てさせたんです


か。」


 「そうよ、彼らも、本当はねぇ、辛い思いをしていたのよ。」


 「そう言われると、オレだって立場が変われば、野盗になっていたと思い


ますね。」


 村民達も次第に理解出来るのだろうと、テレシアは思ったのだ。


 「そうよ、それに、この農場ではね、全てが平等なのよ。」


 「本当なんですか。」


 「その話も、後から将軍が説明すると思うのよ。」


 その頃、ロシュエは司令官に。


 「司令官、戻って直ぐに悪いんだが。」


 「いいえ、閣下、私は大丈夫ですから、で、何をするんでしょうか。」


 「司令官、実は、兵士達の中で、弓の名人を十人くらい選んで欲しいん


だ。」


 司令官は、敵が、まだ攻めては来ないと思っていたので。


 「閣下、弓の名人をですか。」


 「そうだよ。」


 「何か目的でも有ると思うのですが。」


 ロシュエは、何の為に弓の名人が必要なのか。


 「司令官、実はね、今までの戦闘は本当の戦では無かったと思うんだ、そ


れで、オレは弓の名人に場内から矢を放ち、何処まで届くかを知りたいん


だ。」


 司令官は、ロシュエと会うまで多くの戦に行ったので、知ってはいた。


 「閣下、私は、矢が飛ぶ距離は知っておりますので、あの国の軍隊が引く


弓の攻撃を予測する事は出来ますが。」


 だが、ロシュエの考えは別に有った。


 「司令官の思って要る事と、オレの考えて要る事は違うんだ。」


 「閣下、教えて頂きたいのです、一体、何を考えておられるのですか。」


 「オレは、矢の飛ぶ距離を知りたいんじゃ無いんだ、オレは、どの場所に


着たら、矢を放てば、確実に敵を倒す事が出来るのかを知りたいんだ。」


 司令官は、ロシュエの言う意味がわからないのだ。


 「其れで有れば、城壁の近くに来れば、確実に倒す事が出来ますが、で


も、接近戦に成れば、我々の中からも多くの犠牲者が出ると思いますの


で。」


 「そうなんだ、其れでね、弓の名人に矢を放ってもらい、この城壁の上ま


で届くところに目印を付けたいんだ。」


 時々だが、ロシュエの思いつきには司令官は理解が出来ないのである。


 「目印をですか。」


 「そうなんだ、数十本の杭を打ち込んで置く、その杭のあるところから前


に来れば危険だと判断出来ると思うんだ。」


 「閣下の言われる事はわかりますが、でも、私達の矢も敵に届かないと思


うのです。」


 「司令官、そうだ、其処が問題なんだ、オレは、何か方法が無いか考えて


要るんだ。」


 ロシュエは、見方の損害を少なく、敵を殺る方法を考えて要るのだが。


 司令官は、ロシュエの言っている意味がまだわからない。


 「ですが、今の方法では、敵、見方の関係無しに、多くの犠牲者が出るの


は間違い無いと思うのです。」


 司令官もわかっている。


 「司令官、あの武器はどうだろうか。」


 「閣下、私も、容訳わかりましたよ、あの武器ならば、敵の矢が届かない


ところから放つ事が出来ますね。」


 「そうだろうと思うんだ、其れを、知りたかったんだ。」


 「閣下、直ぐに選びますので、其れと、あの武器を使える者もですね。」


 さすがに、司令官だ、其れじゃ~、頼むよ。」


 やはり、司令官は理解するのが早いと、ロシュエは思った。


 「ハイ、閣下、では。」


 司令官は、大急ぎで兵舎に向かった。


 ロシュエは、暫く考えていた、どんな方法が敵の攻撃から逃れられるの


か、ロシュエは、小さな戦は何度か経験は有るが、今度の戦は、今までに経


験をした事が無い程の大規模な戦闘になると思って要る。


 暫くして、司令官は数十人の兵士と数十人の元野盗達を連れてきた。


 「閣下、これだけの人数で宜しいでしょうか。」


 ロシュエは満足した。


 「うん、最高だよ、みんな良く聞いてくれ、何日後かわからないんだが、


この農場に数万人の大軍が攻撃に来ると思うんだ、オレは、どんな事が有っ


ても、この農場を守る、オレは、仲間の為だったら、オレの命はいつでもや


るよ、だがな、今、オレの命は農場だ、みんな、この農場を守るために協力


してくれるか。」


 「お~、勿論だよ、将軍、オレ達は今までは野盗だったが、今では、この


農場を守る為だったら、オレ様の命を将軍に預けるぞ。」


 「オレもだ、将軍。」


 と、次々に元野盗達は大声で叫び、そして、兵士達も。


 「将軍、自分達もです。」


 「そうだ。」


 兵士達も次々と大声を発したのである。


 「お~、そうか、みんな、有難うよ、だがよ~、お前達の命は大切なん


だ、それでだ、今から、説明するが、その前に、新型の武器を作った人物


は、一体、誰なんだ。」


 ロシュエは、新型の武器がこの戦の勝敗を決めると信じて要る。


 「将軍、オレですが、何か、有るんですか。」


 「そうか、君か、で、君の名前は。」


 「オレですか、オレは、ホーガンと言いますが。」


 「よし、決まった、今から、この武器をホーガンと呼ぶが、いいか。」


 「将軍、本当なんですか、オレが作った武器に名前が付くんですか、あり


がたい話です。」


 ホーガンは、正か、自分の名前が新型の武器に付くとは思ってもいなかっ


たので、喜びが溢れてきた。


 「じゃ~、決まりだな、司令官、今からは、新型の武器をホーガンと呼


ぶ、それでだ、今から、このホーガンと今までの弓を打ち比べするぞ。」


 「ハイ、閣下、勿論、この私も、参加をさせて頂きますので。」


 司令官は、初めての武器を使うのが待ち遠しいので有る。


 「司令官も打つのか。」


 「ハイ、勿論です。」


 司令官の顔付きが変わった。


 「では、今から、場外に出て、打ち比べを始めるが、全員、用意はいい


か。」


 「お~。」


 司令官は拳を上げ、先頭になり、全員が続き、城外に出ると。


 「城壁の上に兵士に告げる、其処から矢を放て。」


 「ハイ、将軍。」


 城壁の兵士達、数人が矢を放つと、矢はロシュエの頭を飛び越し、城壁か


ら50ヒロも飛んだ。


 「司令官、此処までか。」


 「その様ですね、では、今度はホーガンで。」


 「うん、そうだな。」


 「次は、ホーガンで放て。」


 司令官は大声で命令した。


 「司令官、了解です、では。」

 

 ホーガン自身が打った、すると、矢は、百ヒロ以上も飛んだ。


 「オイ、司令官、見たかよ。」


 司令官も、初めて見たホーガンの威力に、兵士達や元野盗達も大変な驚き


だった。


 「今までの弓とは大変な違いだな、このホーガンは。」


 「そうですね、このホーガンを大量に作る事が出来れば良いと思います


が。


 その時、ホーがんが来た。


 「将軍、如何でしたか、ホーガンの威力は。」


 「うん、ホーガン、之は大変な武器だが、あの敵国の軍隊は持って要るの


か。」


 「其れは、多分、無いと思います。」


 「何故、断言出来るんだ、君は、その軍隊に居たんだろう。」


 ロシュエは、敵軍も持って要ると思って要るのだ。


 「其れは、そうなんですが、あの軍隊でも、誰にも見せて無いですか


ら。」


 「だがよ、君達が我々に降伏した時には持っていなかったと思うんだ。」


 「あの部隊ですか、あの部隊は全員が野盗でしたので、私が作った物を別


に気にもしておりませんでしたから。」


 「そうか、それなら、いいんだがよ~、あの敵軍がこのホーガンを持って


要ると大変な脅威に成ると思っていたんだ。」


 ロシュエも一安心した。


 「閣下、このホーガンが、何十、いや、何千もあればいいのですが。」


 司令官も、ホーガンが1本だけなのが心配な様子だった。


 「将軍、司令官、このホーガンですが、今、5百本有りますが。」


 「なんだって、5百本も有るのか。」


 ロシュエも司令官も喜んだ。


 「ホーガン、何時の間にそんなに作ったんだ。」


 「将軍、材料はこの森に有りますので、後は作るだけですよ。」


 「何、森に材料が有るのか。」


 ロシュエは、材料が目の前の森に有るとは思ってもいなかった。


 「そうです、あの太い竹と森から切り出した木材の一部を使って作れます


が。」


 ホーガンは簡単に話すのだが。


 「オイ、オイ、ホーガン、そんなに簡単に作れるのかよ。」


 ロシュエも簡単に作れると思って無かったのだが。


 「将軍、作り方を教えますので、みんなで作れば、一気に全員分のホーガ


ンが完成すると思いますよ。」


 側では、司令官が、そんなに簡単に出来るはずが無いと言う様な顔つき


だ。


 「だがよ、矢は特別なんだろう。」


 「将軍、少しだけですから。」


 「何が、少しなんだ。」


 「少し短く、そして、先端部分は少しですが、重く作るんですよ。」


 「よし、わかった、今から、ホーガン作りに入れ、之は、全員でだ、ホー


ガン、此処から、城壁に向かって打ってくれ。」


 「ハイ、将軍、ですが、城門の兵隊さんは危険ですので。」


 「お~、そうだったなぁ~、お~い、城門の兵士、左右に移動せよ、危な


いぞ~。」


 ロシュエは大声で叫ぶと、兵士は手を上げ、左右に移動して、城門の中央


には誰もいなくなった。


 「よし、いいぞ、ホーガン、打ってみろ。」


 言ったので、ホーガンは矢を放つと。


 「お~い、何処まで行ったんだ。」


 「は~い、将軍、城壁から、更に遠くまで飛んで行き、城壁から10ヒロ


まで行きましたよ。」


 其れを見た兵士達は更に驚き。


 「お~、わかったよ、有難うな、ホーガンの矢と普通の弓矢はどう違うん


だ。」


 「作り方は同じですが、今までの矢と違うのは、この部分です。」


 ホーガンは普通の矢と、ホーガン矢をロシュエに見せた。


 「確かに、並べて見るとわかるが。」


 「閣下、先程の話ですが。」


 「ああ、目印を付ける話だったなぁ~。」


 「そうですが、如何致しましょうか。」


 「そうだなぁ~、じゃ~、今までの矢の刺さったところに杭を打ち、目印


としようか、敵がこの杭を越せばホーガンで一斉攻撃に入る、司令官、これ


でどうかな。」


 「ハイ、閣下、その様に致しましょう、其れと、ホーガンを大至急作る事


に。」


 「そうだよ、其れが、一番だよ、司令官、じゃ~、兵士を全員集めてく


れ、ホーガン、君達は森へ行って竹材を用意してくれよ、其れと、工具もだ


からな。」


 「ハイ、閣下、直ぐに行きます。」


 司令官と兵士の全員が大急ぎで場内に戻り、暫くして、多勢が森の中に入


って行く。


ロシュエは、場内に戻る途中考えていた。


 ホーガンの言う通りならば、あの国の軍隊はホーガンと言う、強力な武器


は無い。


 だが、その他の武器に付いては何の情報も無いのだ。


 それに、一体、何人位の軍隊なのか、それも知らない。


 その一方、此方の人員と言えば、1万人の兵隊と元野盗だけなのだ、ロシ


ュエは大軍との戦闘経験は無い、だが、それでも、今回の戦だけは避ける事


が出来ない。


 その様な考え事をして要る間に場内に戻った。


 その時、イレノア達が来たのだ。


 「将軍、私達にも、何か、お手伝い出来る事があれば言って下さい。」


 「イレノア、君達は農場に戻ってくれ、その方が安心だから。」


 「でも、私達の為に、皆さんが命がけの戦に。」


 イレノアはロシュエが心配だった。


 「イレノア、君達の責任じゃ、無いんだ、あの城主の事だから、何れ、こ


の農場も攻撃の的に入る、之は、間違いの無い話だ。」


 「其れじゃ~、私達は。」


 「イレノア、君達に頼みが有るが、聞いてくれるかな。」


 「将軍、私達に出来る事だったら、何でもしますので。」


 ロシュエもイレノアの気持ちはわかっている、だからと言って、彼女達の責任では無い


のだと。


 「イレノア、君達に頼む事は、怪我をした時の包帯の用意と、後は、みん


なの無事を祈って欲しいんだ、それだけでいいからね、其れと、これだけは


絶対に守ってくれよ、この城壁から50ヒロ以上は離れてくれよ、頼むから


な。」


 イレノア達は、何も言わず、ただ、うなずいている。


 その頃、兵士達も元野盗達も大急ぎで竹を切り出していた。


 「みんな、時間との戦いだ、このホーガンと言う武器は大変な威力を持っ


た武器なんだ、ホーガンの指示通りに作って下さいよ。」


 司令官も必死だった。


 ロシュエは農場に向かっていた、イレノア達も同じく戻って行く。


 この農場を最初に造った頃の名残で、城壁の内部には、避難場所が有る。


 その内部には、今でも、少ないが食料を蓄えて有る。


 ロシュエとイレノア達は農場に入った。


 「お~い、テレシアは。」


 「あいよ、此処に居るよ。」


 ロシュエとテレシアは、最初、この地に到着した農民と司令官の立場だっ


たが。


 「テレシア、今日、到着した村民達は。」


 「あ~、あの人達ね、多分、今頃は眠っていると思うよ。」


 「そうか、わかったよ、じゃ~、また、後にするよ。」


 言ったとき、村民が出てきた。


 「お~、みんなさん、本当に大変だったね、此れからは、此処がm皆さん


の農場だよ、何でも、好きな作物を作ってくれよ。」

 

 「あの~、将軍様、聞かせて欲しいんですが。」


 ロシュエは微笑んでいる。


 「何でも聞いてくれよ。」


 「将軍様、何で、私達が住んでいた、あの村の事を知られたんですか。」


 ロシュエはやはりかと思った。


 「そうだよなぁ~、オレだって、知りたいと思う、じゃ~、簡単に話す


が、実はねぇ~野盗の一味を捕まえたんだ、その野盗は、城の正規軍では無


いのだが、君達の村と同じ様な村から食料だけを略奪する専門の部隊なん


だ。」


 「其れじゃ~、その野盗が、私達の村を知っていたんですか。」


 ロシュエは頷き。


 「うん、その通りだよ、その野盗は、オレ達の農場を先に襲ったんだよ、


野盗はこの農場も他の村と同じだと考えたんだろうが、之が、大変な間違い


だったと言う話だ。」


 「それで、司令官が来たと言う話しなんですか。」


 「その通りだ、司令官は、君達を助けに行ったんだよ。」


 「わかりました、でも、我々は、この農場に住んでも宜しいんですか、本


当に。」


 ロシュエは二コットして。


 「勿論だ、その為に君達が住める様にと、この付近に全家族分の家を建て


たんだから。」


 村民達はやっと安心したのか。


 「将軍様、本当に有難う、御座います、これで、我々も安心して農作業に


就く事が出来ます。」


 「お~、そうか、其れは本当に良かったじゃないか、此れからは農場での


仕事に関する話をするからよ~、あんた達は、今までは年中休み無く働いて


いたと思うんだ。」


 「将軍様、其れが、私達、農民の仕事ですから。」


 テレシアも聞いて要る、そして、イレノア達も。


 「実はね、この農場では、3日働き、1日は休む事になっているんだ。」


 村民達は驚く、其れは、農作業が毎日では無いと言うのだ。


 「えっ、今、将軍様は、3日働き、1日は休むを言われましたが、でも、


作物は、毎日、見てやらないと。」


 「うん、わかってるよ、だけど、この農場では、全員が一斉に働く事は無


いんだ、その訳を今から説明するからね、普通の農家では、毎日働く事が必


要なんだが、この農場では全員が役割を分担しているんだ。


 その役割分担の中に、森に入り、冬に必要な薪の調達、それに、この城壁


の補修だね、だけど、城壁の補修は殆ど必要が無いんだ、其れと、森で猪な


のど獲物を取るんだよ。」


 「えっ、森に入って、猪を取るんですか、でも、森には狼もいると思うん


ですが。」


 「そうだよ、狼もいるよ、だけど、猪を全部取る必要は無いんだ。」


 「将軍様、何故、全部取らないんですか。」


 ロシュエはニヤリとして。


 「本当の話をするとね、この森が何処まで続いているのか、我々の仲間も


行った事が無いんだ。


 オレ達の仲間が30日間も進んだが、それでも、この森は続いていたん


だ、それ程にも大きな森なんだ、だから、全部の猪を取る事は不可能だと言


う事なんだなぁ~。」


 またも、村民は驚き、村民達の知って要る森は、川の近くにある森だっ


た。


 「そんなに大きな森なんですか。」


 「そうだ、それにだ、この農場の人達にも、時々だが猪の肉を食べて欲し


いんだ、だが、この農場の牛は食べる為の牛じゃ無いんだ。


 農場には、殆どが肉牛では無かったので、牛や馬は農作業に必要だから。


 「将軍様、話はわかりましたが、其れじゃ~、私達は何を作ればいいんで


すか。」


 「オレは、別に何を作ってもいいと思うんだ。」


 「其れじゃ~、私達があの村で作っていました作物でもいいのですか。」


 「いいよ、それに、此処では、あんた達の作った作物だけどね、穀物も作


っているんだ、


 その穀物も、あんた達が必要な分はいつでも持って行く事も出来るから


ね。」


 「将軍様、其れは、私達の作った作物じゃ無い物でもですか。」


 「そうだよ、此処の農場では、兵隊も農民も全てが平等なんだよ、だか


ら、作って無い


物でも、此処では食べる事が出来るんだ。」


 「じゃ~、我々も、猪の肉や穀物も食べる事が出来るんですか。」


 ロシュエは頷き。


 「うん、その通りだ、だから、何も心配は無いと言ったんだ。」


 「将軍、わかりました、此れからは、私達も、この農場で一生懸命頑張り


ますから。」


 「オイ、オイ、そんなに頑張らなくてもいいんだぜ、此処では、全力を注ぐ


時は敵からの攻撃を受けた時だけだからね。」


 ロシュエはニヤリとした。


 「それで、今の話で、敵からの攻撃を受けた時だが、その時は、男はオレ


達が使う武器の補充を手伝う、そして、女性陣は、兵士達は勿論だが、この


農場全員の食事作りの手伝いをするんだよ。」


 「じゃ~、私達、男は攻撃に参加する事は無いんですか。」


 「当たり前だよ、その為に兵士が居るんだ、兵士は攻撃に行くが、武器の


補充や怪我人を運ぶ、之は、男達の役目なんだ、女性陣は怪我人の手当てと


食事作り、之が、この農場での役目だと言う事だ、わかってもらえたか


ね。」


 村民達全員がうなずいた。


 「じゃ~な、オレは、兵士達の所に行くからよ、後は、みんなで相談して


決めてくれ。」


 ロシュエは手を振り、場内の広場に戻って行ったのだ。


 残った、テレシアとイレノアは話をして要る。


 「ねぇ~、テレシアさん、あの将軍と言われる人物ですが、駐屯地から、


何時も、あの調子なんですか。」


 テレシアは、不思議そうな顔で。


 「そうよ、あの人だけじゃ無いのよ、将軍の父親も、その父親も、まぁ


~、お爺さんの時代からなのよ、私は、お父さんの代から知って要るけれど


も、今の将軍を見ているとね、本当に父親とそっくりなのよ。」


 イレノアは相当な感心を持って要るとテレシアは思った。


 「でも、あれだけの人物ですから、女性には。」


 テレシアはニンマリとして。


 「そうなのよ、あの人の周りには、何時も、村の若い娘達が居たのだけど


ね、本当に、あのロシュエと言う人は、女性の事よりも、私達、農民の事だ


けを考えて要るの、そうだ、イレノア、貴女、一度じゃ無くて、何度も攻撃


すれば、私の思い違いで無かったら、将軍もイレノアの事を。」


 イレノアの顔が赤く成った。


 「ねぇ~、イレノアも将軍の事、嫌いじゃ無いのよねぇ~。」


 イレノアは、少し恥じらいながら頷くのだ。


 「私も、さり気無く、一度、聞いて見るわね。」


 イレノアは、首まで赤くなり、首を振った。


 「テレシアさん、それだけは止めて、お願いだから、私。」


 「其れじゃ~、何も聞かないで置くよ、だけど、将軍もイレノアの事


を。」


 「いいのよ、私は。」


 と、言ったきり、イレノアは部屋に走って行った。


 その頃、森に入った、兵士や元野盗達は、太く頑丈そうな竹を切り出し、


場内に運び入れている。


 運び終わった者から、順番に細工を始めている、そして、木材の加工も始


まった。


 「みんな、聞いて欲しいんだ。」


 このホーガン作りには兵士の全員が参加している。


 だが、竹や木を、今、切り出している者達も居るのだ。


 「今から、ホーガンを作る作業に入るんですが、正確に、しかも、発射は


普通の弓に比べれば、数十倍も多く打ち放つ事が出来るんです、その為、途


中で故障しない事が一番大切なんです。」


 「何故、頑丈に作る必要が有るんですか。」


 兵士は素直に思った。


 「わかりました、其れじゃ~、これを使って連続50本を打ってくれます


か。」


 兵士は笑みを浮かべ。


 「50本連続で打てばいいんですね。」


 「そうですよ、でも、目標が必要ですね、この先、10ヒロの所に大きな


木が有りますその木に、全てを命中させて下さい。」


 「よし、簡単な事だ。」


 兵士は、ホーガンを打ち始めた、最初の数本は命中した、だが、途中でホ


ーガンが故障した。


 「何で、故障したんだ。」


 ホーガンは、兵士からホーガンを取り上げ。


 「この部分を見て下さい、私は、こんな事も有るだろうと、貴方には悪い


事をしました。


 それで、私が、少し手を加え、直ぐに故障する様にしたんです。」


 兵士は見るのだがわからない。


 「この部分です、この引き金部分も、大切な部分なんです、このホーガン


と言う武器は、今までの弓ちは全く違う武器なんです、今まで弓であれば、


こんな複雑な作り方は必要が無いんです。


 簡単に作れますよ、ですが、作る途中に少しでも手抜きをすると、今の様


に使い物にはならないんです。


 皆さん、わかって頂きましたでしょうか。」


 ホーガン作りに参加した兵士の第一陣は何も言う事は無かった。


 「では、皆さん、作り始めて下さい。


 作り方には私達の仲間が作り方を知っておりますので、わからない事や、


加工が難しいと思われましたときに言って下さい。」


 兵士達は、ホーガンの用意した図面を見ながら、黙々と作り始めた。


 「ホーガン、どうだ。」


 「あっ、将軍、今は、順調です、私が、農場の鍛冶屋さんにお願いしまし


た部品ですが、あの鍛治屋さんは見事な腕前ですね。」


 ロシュエは頷き。


 「そうだろうよ、あの鍛冶屋は、オレが駐屯地に居た頃の鍛冶屋で、あの


男の加工は見事なんだ、それに、同じ物を作る事が出来るんだからなぁ


~。」


 「私も、本当に驚きましたよ、私の書いた絵と寸分の狂いもなしに作るん


ですから。」


 ロシュエは、嬉しかった、其れは、同じ駐屯地から来た仲間の鍛冶屋だっ


たからだ。


 「そうだろうよ、オレが居た駐屯地でもだが、この農場の中でも、最高の


技術を持った鍛治職人だからなぁ~。」


 ホーガンも納得している。


 「本当に見事としか言い様が有りません。」


 「其れで、どうなんだ、これと、同じホーガンは出来るのか。」


 「将軍、人間の体格は全員が同じじゃ無いんです。


 皆さんも、自分の体格に合わせたホーガンを作って頂いておりますの


で。」


 「じゃ~、何か、今、作っているホーガンは、本人以外は使えないって言


うのか。」


 「将軍、其れは無いと思いますよ、ただ、体格の大きな人が作れば、その


人より小さな人は使えないとは思いますが、でも、小さな人が作ったホーガ


ンなら、大きな人でも使えますので。」


 「うん、そうか、其れを聞いて少しは安心したよ。」


 「将軍、オレ達が、早くから作っていれば良かったんですが、材料の問題


も有りましたので。」


 ホーガン作りに入っていた別の男が申し訳なさそうな顔をして要る。


 「いや、そんな話は過去の話だよ、其れよりも、此れからの事を考える必


要が有るんだ。」


 「ハイ、わかりました、それで、私達、元野盗は此れから何をすればいい


んでしょうか。」


 「そうだなぁ~、暫くは、このホーガンを作って欲しいんだ。」


 「でも、将軍、今、皆さんが作られると全員が使える様に成りますが。」


 「うん、其れは、わかっているよ、だがな、いざと言うときには農場の人


達にも使える様にしたいんだ。」


 「えっ、農場の人達も使うんですか。」


 「そうだよ、農場の人達は自分自身と家族のために戦う事も必要が有るん


だ、その時のためにもホーガンがいるんだ。」


 「将軍、わかりました、それでは、私達はホーガン作りに。」


 この農場に居る兵士全員がホーガンを完成させるのが、今、一番専決だっ


た。


 ホーガンの完成が早いか、敵の攻撃が早いか、之は時間との戦いとなって


きた。


 その頃、テレシアは農場の女性達に話をしていた。


 「ねぇ~、みんな、聞いて欲しい事があるのよ、後、何日位かわからない


んのだけど、この農場に大軍が攻撃をかけて来ると聞いたのよ、みんなもわ


かっていると思うんだけど、将軍は、司令官と兵士達と共に、この農場を守


る為に戦いに出るの。


 でも、私達は、将軍はね、絶対と言っていいほど、戦争に巻き込まれない


様にすると思うのよ、其処で、みんなに相談が有るの、其れはね、私達にも


出来る事が有ると思うのよ。」


 「テレシア、話はわかったわ、其れじゃ~、何をすればいいの。」


 「私はね、この農場の女性達の半分は食事用のパンを大量に作って欲しい


の。」


 「テレシア、でも、今からそんなに大量に作って如何するのよ。」


 「みんなも、そう思うでしょう、だけど、兵隊さんは、此れから何時まで


続くかわからない戦に行くのよ、森の入口にも多くの兵隊が休みなしで見張


りを続けている。


あの兵隊さんは、普段は食堂でゆっくりと食事は出来ると思うけれど、此れ


からは、違うのよ。」


 「テレシア、わかったわよ、戦が始まるまで、私達が食事を作って運ぶの


ね。」


 「そうなの、私達に出来る事は食事を作り、運ぶ事だと思うの、其れと、


残りの半分の人達は怪我人が出た時のために、沢山の包帯を作って欲しい


の、そして、戦争が始まって怪我人が出た時には、私達女性が怪我人の看病


と世話をするのよ。」


 「じゃ~、私達は、今から、包帯作りを始めればいいのね。」


 「そうなの、だけど、私達が直接、怪我人の所には行けないと思うのよ


~。」


 「何故なの、テレシアさん、この農場の中だったら、別に問題は無いと思


うんだけど。」


 この女性は新しく到着した村の女性だった。


 「将軍は、絶対に近づくなと言うからよ、あのロシュエと言う将軍は、ど


んな事があっても、農民、特に、女性や子供を守る人なの。


 私はね、ロシュエと言う人物を子供の頃から知って要るからわかるのよ、


日頃は、少し優し過ぎると思うのだけど、こんな非常時には、最高に安心が


出来る人なのよ、今度は、将軍の言い付けを守る事が、兵隊さんの犠牲を少


しでも少なくする事にも成るのよ。」


 「其れじゃ~、一体、誰が、怪我人を運んでくるの。」


 「農場の男性達よ、私は間違い無いと思うの。」


 テレシアには自信があった、其れは、駐屯地でも同じだった、兵隊は戦い


には出るが、怪我人は、農家の男性達が兵舎に運び、女性達が看病したから


だ。


 「何故、わかるの、将軍は、戦いの場所には農民は入れないのでしょ


う。」


 「勿論よ、だけどね、男性は必ず行くのよ、私達の駐屯地では、其れが当


然だったのよ、


 確かに、戦は恐ろしいわよ、でもね、農場の私達を守る為に兵隊さんは命


を懸けて行くの、その兵隊さんの世話をするのが、私達は、当然だと思うの


だけど。」


 「わかったわ、テレシア、だけど、怪我をした兵隊さんは、何処に連れて


行けばいいの。」


 「其れは、大きな会議室を利用しようと思うのよ、あの場所なら数十人は


収容出来ると思うのだけど。」


 「わかったわ、其れじゃ~、その分担を、今から決めておくの。」


 「そうなの、其れでね、私達は、この農場では一番に着たんだけれど、私


達は怪我人の看病を担当しようと思うの。」


 「じゃ~、私は、スープやパンを作って、今日から兵士達に運んで行くわ


よ。」


 テレシア達の話し合いは、その後も続いて行く。


スープやパンなどを作り、兵士達に運ぶ女性達は早くも活動を開始した。


 「司令官、あの馬車は、なんなんだ、5台、6台と、いや、10台も有る


ぞ。」


 農場の方から、10台もの馬車を女性達だけで動かしている。


 兵舎に向けて行く馬車も有る、その後には、数台の馬車に乗った女性達が


やってきた。


 「君達は、何か。」


 ロシュエは、城門近くに止まった馬車の女性に聞いた。


 「将軍、実はね、今から兵隊さんに食事を届けに行くのよ。」


 「えっ、本当に、其れは、大変助かるよ、お~い、みんな、手伝ってく


れ、食事が届けられたんだよ。」


 ロシュエも嬉しかった。


 「お~。」


 兵舎からは、早くも数十人の兵士が飛び出してきた。


 「スープは、熱いから気を付けてね。」


 「は~い。」


 若い兵士は嬉しそうな声と笑顔になっている。


 「だけど、此処には多勢の兵士が居るんだよ。」


 「将軍、まだ、有るのよ、之は、最初の馬車だから。」


 「すまないねぇ~、兵士達も、大変、喜んでいるよ、有難う。」


 「将軍、私達に出来る事は、これくらいしか無いのよ。」


 食事を運んできた女性は、何か、他の事も出来るんだと言う様な顔つきだ


った。


 「いや~、これだけの食事で十分だ、だがよ、食事は何時まで続くん


だ。」


 「実は、まだ、其処までは考えていないの、出来るだけ、早く終わりたい


のだけど。」


 その言葉は、早く戦が終わって欲しいと言う意味でもあった。


 「そうだよなぁ~、みんなも大変だからなぁ~、オレからも礼を言う


よ。」


 ロシュエは、この女性に頭を下げたのだ。


 「将軍、頭を上げて下さいよ、兵隊さんは、私達の為に、命懸けの任務に


就いているんだもの。」


 女性の目には、一粒の涙がこぼれた。


 「司令官、農場の女性達から食事が届いたが、農場でも我々、兵隊のため


に、これだけ大量の食事を作り届けると言う事は、大変なんだと言う事


を。」


 「ハイ、閣下、勿論です、私も、大変感謝をしております。


 皆さん、本当に有難う、我々のために。」


 司令官は、其れ以上は言えなかった。


その話の最中でも、次々と食事が届き、兵士達が、兵舎に運び入れるのだ。


 食事が届いたという話は、あっと言う間に全員に伝わり、兵舎の前には、


食事の順番を待つ兵士達の長い行列が出来た。


 兵士達の顔は、何時に無く二コ二コとしている。


 其れは、長い間、食事も十分に食べる事が出来なかったのだろう、食事を


届け、空になった容器を乗せた馬車は農場に戻って行く。


 その馬車に向かって兵士達は手を振り。


 「有難う、おかみさん、オレ達も頑張るからね。」


 笑顔で言う兵士。


 「明日も頼みましたよ。」


 と、言う兵士。


 「司令官、明日からは、食事の順番を決めるぞ。」


 「ハイ、閣下、私も同感です、各隊長にも話をしますので、明日からは混


乱は起きないと思います。」


 「うん、頼みましたよ。」


 「でも、閣下、一体、誰が、食事の用意をさせたんでしょうか。」


 ロシュエはわかっていた。


 「其れはなぁ~、多分だと思うが、テレシアだと思うよ、彼女とは駐屯地


からの知り合いだからね、オレの事を一番良く知って要るんだ。」


 「やはり、そうでしたか、私も、テレシアだと思っておりましたよ。」


 ロシュエと司令官も納得したのだ。


 其れからは、毎日、朝は、早くから食事が届き、その食事は当分続きそう


である。


 その頃、あの城を出た軍隊は総勢5万人にも達していた。


 その先頭は、やはり、イレノアが言った様に各地から集められた領民達


で、総勢4万人以上で有る。


 彼ら、領民には武器と言える物は無く、その殆どが木刀なのだ、城の正規


軍の武器はヤリと弓矢、剣だが、この正規軍も果たして、本物なのか、其れ


は定かでは無い。


 「司令官、その城壁まで、何日位掛かるのじゃ。」


 「ハイ、陛下、戻って着た兵士の話ですと、30日は掛かると、申してお


りました。」


 「何、30日も掛かるのか。」


 「陛下、申し訳御座いません、私どもで攻撃しますので、陛下は、お城に


残って頂きたいと思うので、御座いますが。」


 「其れは、成らぬ、今回は、余が直接指揮を執るぞ、その城壁とやらを完


全に破壊せねば、余の気が収まらぬのじゃ。」


 ロシュエ達は、正か、城主が今回の戦に直接参戦するとは思ってもいなか


った。


 「司令官、そちは、今回、どの様に攻撃するのか。」


 「ハイ、兵士達の話では、突然、城壁の上から攻撃を受け、反撃する間も


無かったと聞いておりますので、私は、戦法として、弓矢の一斉発射で内乱


を起こす事で、後は、城壁を登り、その後は、何時もの様に、歩兵部隊の一


斉攻撃が宜しいかと存じておりますが。」


 「其れじゃ~、その敵方は、何人位の兵が居るのじゃ。」


 「はい、私に入った情報によりますと、正規軍は居らず、全て民兵だ


と。」


 「何、それでは、何か、余の精鋭部隊は民兵に負けたのか。」


 「誠に、申し訳御座いません、余りにも突然の攻撃なので、兵士達よりも


先に馬を殺されましたので、後は。」


 全く反対の話で、確かに攻撃はしたのだが、其れは、馬車で逃げ込んだ、


イレノア達を守る為だった。


 「では、その民兵は、何人居るのじゃ。」


 「ハイ、一万人程だと聞いておりますが、戻った兵士の話ですから、私


は、その半分の5千人くらいだと思っております。」


 「余も、司令官と同じじゃ。」


 「ハイ、今回の作戦は、陛下が直接行かれなくても、私、一人で十分だと


思うのです。」


 「司令官、今まで有れば、余も出向く事は無かった、だがの~、余の、精


鋭部隊を民兵ごときに負けたと成ると、余の、腹の虫が収まらんのじゃ、そ


の者達を、余が、じきじきに成敗するのじゃ、わかったか。」


 「ハイ、陛下、私も、陛下の御威光が益々高まる事を楽しみにしておりま


す。」


 「じゃがなぁ~、全員を殺してはならぬぞ。」


 「ですが、陛下は全員と、申されましたが。」


 「あの時は、その様に申したが、少しは残し、その者達を他の地に向かわ


せるのじゃ。」


 「では、陛下、何時もの様にで御座いますね。」


 「その通りじゃ、他国に入れ、余の恐ろしさを知れば、他国は、余の国を


攻める事も出来ぬのじゃ。」


 「ハイ、陛下の申される通りで御座います。」


 「司令官、民兵と思しき男どもは全員。」


 「ハイ、其れは、存じております。」


 「其れでじゃ、余は、今回だけは許せぬのは首謀者は勿論だが、何故、民


兵ごときに負けたのじゃ、兵士達は、何か、油断をしていたのでは無いの


か。」


 「いいえ、陛下の兵士に限って、その様な事はございません。」


 「そうじゃな、其れで有れば良いのじゃ、今回の敵には油断するで無い


ぞ。」


 「ハイ、其れは、心得ております。


 私も、既に、偵察部隊を送っておりますので、途中で報告が入るかと考え


ております。」


 「そうか、そうか、それで先陣は出発しておるのか。」


 「ハイ、既に、3万人が出発致しております。」


 「其れは、何時もの兵隊達じゃな。」


 「ハイ、その通りで御座います。


 更に、弓隊の1千人を先陣として向かわせておりますので。」


 「何、弓隊を1千とは、では、余が着く頃には、終わっておるということに


なるでは無いか。」


 「ハイ、陛下のお手を汚す事は出来ませんので。」


 「司令官、余にも、楽しみを残す様にな、フ・フ・フ。」


 やはり、この城主は普通の神経を持った城主では無い。


 「ハイ、何時もの通りと考えておりますが。」


 司令官も、ニヤリとしている。


 どうやら、この城の家臣達は人間を殺す事をなんとも思っていないのだ。


 「各隊長には、なんと、命令しておるのじゃ。」


 「ハイ、今回の敵は、陛下の精鋭部隊を殺した民兵で有る、決して油断は


するなと。」


 「それで、良いのじゃ、其れと、今回は、余も参ると伝えるのじゃ、余


が、直接指揮を執る事もじゃ。」


 「ハイ、陛下、先程、各部隊に伝えておきましたので、今回は、何時も以


上に兵士達の士気は高揚すると存じております。」


 「そうか、余が、参る事で、兵士の士気も上がるのか。」


 「ハイ、陛下のお怒りは、兵士達全員に伝わります。


 そして、兵士達は陛下のお怒りを治めるために、何時も以上に働くと存じ


ております。」


 「うん、そうか、余の怒りを兵士達も知っておったのじゃな。」


 「ハイ、其れは、間違い御座いません。


 陛下のご出陣ともなれば、兵士達全員の戦意は高揚し、必ずや、今回の戦


は勝利するものと、私は確信しております。」


 「うん、わかったぞ。」


 「陛下、間も無く、ご出陣の刻限で御座いますので。」


 「よし、わかった、余の兵士達に告げよ。」


 「ハイ、陛下。」


 この後、城主と司令官は広場に向かい。


 「国王陛下の兵士達に告げる、只今より、出陣を開始する。


 全員、国王陛下のために敵を殲滅せよ。」


 司令官の号令で。


 「お~。」


 と、兵士達は雄叫びを上げ、城を後ににするのだ。


 この城からは、30日後には、ロシュエ達の農場に到着の予定だ。


 その頃、この城を出発した偵察隊の数十名はやはり、途中から森に入っ


た。


 森に入れば敵に見つかる事も無く、農場近づく事が出来るのだと。


 この偵察隊は最初の頃は何事も無く進んで行くのだが。


 だが、森に入って一日も過ぎない頃には森の中は見通しも聞かなくなって


きた。


 其れは、この森には大木が多く、更に、路も無かった。


 「隊長、一度、この森を出られては如何でしょうか。」


 「何を言っておる、我々がこの森を進んで要る事は敵も知らないはずだ、


今、平原に出てみろ、其れこそ、敵に見つかり、我々は全滅する、その様な


事態になれば、我々の任務で有る、敵の動向を誰が知らせるのだ、我々の任


務は、敵方の動向を調べ、後方の本隊に報告する事で有る、わかったか。」


 「隊長、申し訳有りません。」


 「良いか、この森を抜けると、敵方の前に出る、決っして油断はするな、


其れと、この森には、狼が多く入るので、全員警戒を怠るな、では、全員進


め。」


 だが、この森の中には、狼よりも恐ろしい、ロシュエが配置した数百名の


兵士が潜んで入るとは知らなかった。


 その偵察隊も森に入って、20日が過ぎた頃だ。


 「隊長、前方に細いですが、道が有りますよ。」


 「お~、確かに道だ、この道は多分、多分だが、あの城壁に向かっている


はずだ、全員、此処からは、敵中だ、油断するな。」


 偵察隊は、静かに進んで行く。


 「隊長、この道ですが、この先で細くなっていますが、其れを、抜ける


と、少し広くなっておりますので。」


 「よし、わかった、その広くなった所で、少しだが休憩する、全員進


め。」


 だが、偵察隊の動きは、既に、知られていたのだ。


 細い道から、少し広くなる手前であった、突然、四方から矢が飛んでき


た。


 「ギャ~。」


 「うっ。」


 と、次々と偵察隊の兵士は馬から落ちて行く。


 「隊長、敵襲です。」


 「わかった、だが、一体、何処からだ。」


 「わかりません。」


 「全員、下馬、応戦せよ。」


 と、言った時には、兵士達の姿は、何処に逃げたのか居なかったのだ。


 「隊長、攻撃は収まったようです。」


 「よし、全員、乗馬、進め。」


 と、言ったのだが、偵察隊の半分が死亡し、数名が負傷している。


 「隊長、我々の半数が死亡しました。」


 「わかっている、残った者達で、任務を遂行する。」


 隊長は、言葉とは反対にこの戦は負けるとこの時に感じていたのだ。


 その後は、何事も無く、進んで行く、だが、途中は大木が倒され道をふさ


いでいる。


 「隊長、之は、敵の罠では。」


 「その様だが、今となっては後戻りは出来ん、進むしか無い、全員、静か


に、進め、其れと、周りの警戒を怠るな。」


 その時だった、後方の兵士から。


 「隊長、敵です。」


 と、言って、兵士は馬上から落ちた、その直後から四方から、またも、矢


が飛んで来る、偵察隊の兵士達は次々と落馬して行く。


 「畜生、ヤラレタ、オイ、誰か、知らせに行け。」


 「ハイ、隊長。」


 と、言った兵士の身体にも数本の矢が命中したのだ。


 そして、最後の一人となった隊長の身体にも数本が命中し、隊長も死亡した。


 馬も数頭が犠牲に成ったのだが、殆どの馬は無事だった為に農場に連れ帰


る事に。


 偵察隊全滅の直ぐに知らされた。


 「司令官、森から数十頭の馬を引き連れて戻ってきます。」


 「閣下、いよいよですね。」


 「お~、その様だな。」


 「将軍、報告します。」


 森から戻った兵士の報告である。


 「うん、どうだった。」


 「ハイ、将軍、数十人の敵偵察部隊と思われますが、全員を死亡を確認し


ました。」


 「そうか、それで、君達は。」


 「ハイ、将軍、我々は怪我人も無く、全員元気です。」


 「そうか、其れは良かった、みんなに伝えてくれ、少しだが、休憩する様


に。」


 「でも、将軍、何時、敵が攻めてくるかわかりませんので。」


 「なぁ~に、心配はするな、偵察隊は、本隊よりも先に行くもんだ、だか


ら、当分は、本隊が来る事は無いよ、司令官、森に配置した兵士だが、一


度、全員、ゆっくりと休養を取らせるんだ。」


 ロシュエは、自信があった、今頃、偵察に来たと言う事は、本隊が到着す


るのは、早くて20日後、遅くなれば、25日から30日位だと考えたの


だ。


 「ハイ、閣下、私も、彼らは、暫く休養が必要だと思っておりますの


で。」


 司令官もロシュエと同じ予想をしていたのだ。


「将軍、司令官、私達は、別に疲れてはおりませんが、何故、全員の休養が


必要なんです。」


 之が、普通の軍隊ならば、兵士は質問どころか、休養を取れと命令が下れ


ば、喜んで休養に入るのだ、だが、ロシュエ達の兵士は違う。


 其れは、自分達が納得した内容で有れば休養も取るだろうが、偵察隊が来


たと言う事は、直ぐに本隊の攻撃が始まると思って要るのだ。


 「みんな、聞いてくれよ、偵察と言う任務は、本隊よりも早く出発してい


るんだ、其れも、少人数でな。」


 「でも、敵方の人数は数十人もおりましたが。」


 「うん、其れは普通の偵察隊じゃ、無いと思うんだ、そうだろう、オレだ


って偵察隊は送ったが何人だった。」


 「あの時は、確か5人だったと思いますが。」


 「その通りだ、じゃ~、聞くが、人数が少ないと動きはどうなる。」


 「将軍、其れは、簡単ですよ、移動も簡単に出来ますよ。」


 「そうだ、じゃ~、人数が多くなれば。」


 「其れは、動きは遅く成りますよ。」


 「その通りだ、今日、来た偵察部隊の人数は多過ぎるんだ、偵察と言う任


務は少人数で調査するんだが、今日の偵察隊は人数が多いので動きが遅い、


だから、誰も、逃げる事が出来なかったと言う事だ。」


 「でも、将軍、偵察に来たと言う事は、近くに本隊がいるのでは無いので


すか。」


 「其れは、誰でも考える事だが、我々の農場から、あの城まで30日は掛


かるんだ。

 

 君達も覚えていると思うが、30日位前に、20人の美人が農場に逃げ込


んだ事を。」


 「諸軍、勿論、我々も覚えていますよ、でも、あの時に、将軍は、数人を


生かせて城に戻る様に言われたと思うんですが。」


 「その通りだ、あの生き残りが必死に戻ったとしてもだ、大軍を編成し、


出発するまで、最低でも、4日から5日は掛かるんだ、だがな、偵察部隊は


直ぐに出発したと考えてもだ、森に入った頃から動きは遅くなった、何故だ


かわかるか。」


 「ハイ、将軍、其れは、何時、敵と遭遇するかわかりませんので、常に警


戒する為です。」


 「その通りだ、偵察部隊が、今日、来たと言う事は、本隊は、早くても2


0日、遅くなれば、25日から、30日後だと言う事だ。」


 側で、司令官も頷くのである。


 「其れじゃ~、直ぐに攻めては来ないと言われるのですね。」


 ロシュエは頷き。


 「其れは、間違いは無い、だから、君達に数日間の休養を命ずる。」


 ロシュエは二コットとしたのである。


 「将軍、本当にいいんだすか。」


 「何を心配して要るんだ、オレの言う事を信用するんだ。」


 「ハイ、将軍、有難う御座います。


 みんな、将軍の命令だ、全員、休養に入るぞ。」


 「君達は、この数日間は神経を使っていたから、何も、気にせず、ゆっく


りとするんだ。」


 「全員、将軍と司令官に敬礼。」


 「よし、では解散しなさい。」


 と、ロシュエと司令官は数百人の部下に答礼したので有る。


 彼らは、神経が相当疲労している様子だった。


 「司令官、彼らの休養だが、数日と言わず、10日位は休養させて欲しい


んだ。」


 ロシュエは、森の兵士達は、敵方よりも、狼や猪の攻撃に疲れていると感


じたのだ。


 「閣下、私は、森の配置を考えたいのですが。」


 ロシュエも頷き。


 「実は、オレも、今日、同じ事を感じたんだ。」


 「森の中では、敵は、狼や猪だと思うのです。」


 ロシュエは、少し考え込むのだ。


 「其れは、言えるかもなぁ~、敵軍を待つ間に、森の中の敵は、何時、襲


ってくるのかわかないからなぁ~。」


 「閣下、森の部隊なんですが、数日で入れ替えるというのは難しいでしょ


うか。」


 司令官も、はっきりとした案が浮かばない。


 「司令官、之は、敵軍よりも、恐ろしい相手だからなぁ~、大変だよ、司


令官、彼らに


森で待って要る間、どうだったか、聞く必要があるなぁ~。」


 「そうですね、閣下の言われる、25日から30日後に攻撃が有るとして


も、まだ、日数が有りますので、この数日間の間でも聞いて見ます。」


 「司令官、頼むよ、オレは、他に、何か良い方法が無いか考えて見るから


なぁ~。」


 「ハイ、閣下、わかりました、それで、閣下、話は変わりますが、敵の偵


察部隊の。」


 ロシュエもわかっていたのだ。


 「オレも、その事を考えていたんだ、戦死した兵士達の事だろう。」


 「ハイ、その通りです、私は、同じ軍人として、戦死した兵士を其のまま


放置する事に少しですが。」


 司令官は、敵兵士を土に戻したいのだろうとロシュエは思ったのだが。


 「司令官の気持ちはオレは十分理解している、だが、今頃は、森に放置さ


れた遺体は獣達の餌になっていると思うんだ。」


 司令官は下を向いている。


 「其れに、馬も同じだと思うんだ、オレも本当は土に埋めてやりたいんだ


が、あの城から来る兵士達にも、戦は悲惨だと思わせる事も必要なんだ。」


 司令官は、何も言わず頷くだけである。


 「其れに、軍服や武器も残っているから、森に入り進むにつれ、恐ろしさ


は増してくるんだ、するとだ、オレ達に攻撃をする前に敵軍の戦意が低下す


ると思って要るんだ。」


 「では、閣下は、敵軍は恐ろしくなり、攻撃はしないだろうと思われて要


るんですか。」


 「うん、其れが一番いいんだが、だけど、攻撃は有ると考えた方がいいな


ぁ~。」


 「私は、必ず、攻撃してくると思っています。


 生き残った兵士は、多分ですが、突然攻撃を受けたと報告すると思います


が、私が反対の立場でも、その様に報告し、自軍に、非は無いと話をします


が。」


 「司令官も、やはり、その様に思うか、オレは、兵隊向きじゃ~無いって


事だなぁ~。」


 「いいえ、私は、閣下のお考えは普通だと思っております。


 ただ、今回の敵は、我々の考えて要るような普通の城主では無いと言う事


です。


 イレノア達の話を聞いても異常な程の狂犬だと思っておりますので、この


際、閣下は、非情に成られても良いと思いますが。」


 司令官も、今までの様な優しさを持った司令官では無いと、ロシュエは感


じたので有る。


 「まぁ~、司令官、後、30日前後も経てばはっきりとわかるよ。」


 「その様ですね。」


 その頃、森から戻って着た兵士を迎えたのがイレノア達であった。


 「みなさん、大変な任務、ご苦労様でした。」


 驚いたのは兵士達だった、正か、20人の美人が出迎えるとは思ってもい


なかったのだ。


 「いいえ、自分達は、責任を果たしているだけです。」


 と、直立し、緊張した顔で言った。


 「皆さん、熱いスープと出来立てのパンです、どうぞ。」


 テーブルの上に置くので。


 「何故、貴女達は、こんな事までされるのですか。」


 兵士達は、今まで無かったのだ、任務を終え、兵舎に戻ると、ただ、ベッ


ドの上で横に成るだけだったのが、今日は、熱いスープと、出来立てのパン


とで食事とは。


 「私達に出来る事はこれくらいしか有りません。


 皆さんの任務に比べれば。」


 イレノア達は当然だと思って要る。


 「皆さんも、疲れておられると思いますので、私達はこれで失礼します。


 食器は、後で、私達が片付けに来ますので、そのままにして置いて下さい


ね。」


 と、言って、二コットして、兵舎を出た。


 「オレ達の任務を彼女達が知っていたんだ、嬉しいよなぁ~。」


 「そうだね、こんな嬉しい事は今までに無かったんだから。」


 兵士達はスープとパンを美味しそうに食べるのだった。


 一方、あの偵察部隊の出発した数日後の先陣を任されたのが、弓隊、千人


と各地から集められた、領民の2万人が出発したので有る。


 数人の指揮官は先陣を任せられ少しだが緊張している、だが、偵察部隊が


全滅した事等全く知らずにいる。


 領民から成る民兵は兵士達とは、はっきりと区別が出来る。


 彼らは、何時の時でも戦になれば、必ずと言って良いほど召集され、今ま


で、運良く村に戻れたのだが、今回は、何時もの戦とは違うのだとわかって


いる。


 だが、この領民の中にイレノア達の父親や兄が居るとは、お互いがこの時


には知る由も無かったのだ。


 その一方、農場では、ロシュエはホーガン作りの現場に戻た。


 「どうだ、上手に作れるか。」


 「あっ、将軍、其れが、思った以上に大変なんです。」


 「うん、オレも大変だと思うが、このホーガンは、君達自身が作ると言う


事は、君達の分身だと思って作るようにな、本当はオレも作りたいんだが、


司令官が作らせてくれないんだ、オレも、作りたいんだよ~。」


 「いや、将軍に、ホーガン作りは似合わないですよ。」


 「オレが作ると可笑しいのか。」


 「そりゃ~、そうでしょう、オレ達には必要ですが、将軍は、後ろで指揮


を取られるのが、一番似合っておりますから。」


 「じゃ~、何か、オレはみんなと一緒に戦には行けないのか、其れじゃ


~、オレは寂しいよ、本当に。」


 兵士達は大笑いするのだ。


 「将軍が戦闘に入ったら、オレ達の活躍の場が無く成りますからねぇ


~。」


 と、兵士はニヤリとした。


 「なんでだよ~、オレだって、みんなと同じ兵士なんだからよ~。」


 「其れでも、将軍は駄目ですよ。」


 「オイ、オイ、そんな寂しい事を言うのか。」


 ロシュエは満更でも無かったのだ、此処の兵士達は、本当の意味で指揮を


必要しない。


 其れは、何故、自分達が農場に居るのかを知って要るからで。


 「其れじゃ~、君達に、オレが必要に成った時に呼んでくれよ。」


 「まぁ~、仕方ないか、その時までには終わっていますがね。」


 と、言ったので、周りの兵士達は大笑いをするのだ。


 「其れじゃ~なぁ、そうだ、作り方を間違えない様に頑張ってくれよ。」


 と、ロシュエは、手を振って、別の場所に行き、其処でも、同じ様な話を


するのだ。


 そして、一回りする頃、司令官が来た。


 「閣下、先程、兵舎に行って着ましたが、兵士達が喜んでおりました。」


 と、司令官も嬉そうだった。


 「何かあったのか。」


 ロシュエは何も知らないのである。


 「えっ、閣下の手配だとばかり思っておりましたが。」


 「オレは、何も知らないぜ。」


 「実は、森から戻った兵士達にイレノア達が熱いスープと、出来立てのパ


ンを届けたそうなんですが、私は、てっきり、閣下が手配されたと思ってお


りましたので。」


 「えっ、イレノア達がか、オレも、今、初めて知ったよ。」


 ロシュエは、初めて知ったのだが、イレノア達は兵士が戻ってくることを


一体、誰に聞いたのだろうか。


 「だが、一体、誰に聞いたんだ、兵士達が戻ってくるのを。」


 「閣下、私は、何も知りませんが。」


 「でもなぁ~、イレノア達は、本当に良く気がつくよ、誰に、聞いたかは


別にしてだ。」


 「私も、同じですね、あの娘さん達は、本当に一生懸命なんですね、其れ


と、イレノア達全員が男もの様な服を着ていたそうなんですよ。」


 「えっ、じゃ~、あの娘達、全員が着替えたのか、だがよ~、そんな服、


何処にあったんだ。」


 「私も、聞いた事は有りませんよ。」


 「あの娘達は、一体、何を始めるんだ。」


 「そうですね、でも、閣下、イレノア達のお陰で、兵士達も大喜びです


よ。」


 司令官は、イレノア達の存在は大きいと思ったのだ。


 「其れは、オレもわかるよ、この農場じゃ~、兵舎も農場も区別はしてい


ないから、兵士達も日頃は農場に行き、農作業を手伝ったり、子供達と遊ん


だり、お互いが自由に往来しているからなぁ~。」


 「そうですねぇ~、私も、以前の城では考えられませんよ、此処では境界


が有りませんから、其れに、農場の女性達も誰か来られていますのでねぇ


~、特に、私達の国から着た領民は驚いておりましたからねぇ~。」


 「誰でも、同じだよ、普通の国では、兵士達がだ、領民と楽しく日々と過


ごすなどは考えられないと思うんだ。


 其れにも増して、農作業に入る事や、子供達と遊ぶなんて考えも付かない


と思うんだ。」


 司令官は頷き。


 「今では、当たり前の風景に成りましたからねぇ~。」


 「オレはよ~、今、将軍と呼ばれているが、本当は、農作業が好きなん


だ、農作業は苦しい、だけどねぇ~、丹精込めた作物が大きく育ち、収穫し


たときの気持ちは最高だね。」


 ロシュエは、軍務も大事な仕事とわかっている。


 「私も、此れからは、時間を作って農作業にも参加したいですよ。」


 司令官も農作業に入る気持ちは有るのだが。


 「司令官は、此れからも、軍務に専念して欲しいんだ。」


 と、ロシュエは、余り、気乗りしていない。


 「でも、時々は参加させて下さいよ。」


 と、司令官は、如何しても農作業をやりたいのだろう。


 「時々だよ。」


 二人は笑いながら話をしていた。


 そして、10日が過ぎたので有る。


 「「司令官、ホーガン作りは何処まで行ったんだ。」


 「ハイ、将軍、此処の兵隊さんは大変素晴らしい人達ですよ、全員が合格


ですから。」


 と、ホーガンは二コリとした。


 「司令官、では、彼らの出番だよ。」


 司令官は、何か、嬉そうな顔になった。


 「ハイ、閣下、お待ちしておりました。」


 「何か、嬉しい事でもあったのか。」


 「いいえ、別に何も有りませんが。」


 と、司令官はニヤリとする。


 「其れじゃ~、司令官、数人を選んでくれないか。」


 ロシュエは、別の作戦を考えていたのだ。


 「閣下、また、別の作戦を考えられたのですか。」


 「いや~、司令官、別の作戦とまでは行かないが、日数から考えて、先発


隊がそろそろ来る頃だと思うんだ。」


「閣下、私にもわかりましたよ、先発隊の陣容と、何時頃来るかを見極める


のですね。」


 「司令官、その通りだ、その為には多勢の部隊を編成する必要は無いん


だ。」


 司令官は頷き。


 「では、早速、人選し、行かせる事にしますので。」


 司令官も、少人数が最適だと思っていたのだ。


 「司令官、よろしく頼むよ、彼らに、武器は必要無いぞ、情報を集めるだ


けだからな。」


 「ハイ、閣下、心得ておりますので。」


 司令官は、3番隊の隊長を呼び簡単に説明したのだ、隊長も直ぐに理解


し、3番隊から数人を選び、ロシュエからの話を伝えたのである。


 兵士数人は直ぐ行動に移った。


 「閣下、数人で偵察の任務に入りました。」


 「お~、そうか、司令官、有難うよ、其れじゃ~、各隊長を呼んで欲しい


んだ、今回は、特別だからなぁ~。」


 「勿論、承知致しておりますので、既に、各隊長には来る様に伝えて有り


ますので、もう直ぐ来るかと思いますが。」


 その時、5人の隊長が着いたのだ。


 「お~、みんな来てくれたか、忙しい時にすまないなぁ~。」


 「いいえ、将軍、私達も、まだか、まだかと待っておりましたので。」


 1番隊の隊長も、他の隊長も待ってましたと言う様な顔つきだ。


 「じゃ~、みんな座ってくれ、今から話をするが、今回の敵は、今までの


野盗達とは、全く別の人種だと考えてくれ、あの城主と家臣達は野盗以下だ


と思って欲しいんだ。」


 今までに無い厳しい口調だと、司令官は感じた。


 「それで、話の前に、各隊長に聞きたいんだが、兵士達にホーガンの訓練


は入って要ると思うんだが。」


 「ハイ、将軍、1番隊から順次訓練に入り、今日は最後の5番隊が訓練に


入る事になっておりますが。」


 1番隊の隊長は胸を張っている。


 「閣下、兵士達の訓練ですが、私も、1番隊の訓練を見たんです。


今までの弓とは、大変な違いで、其れは、勿論、兵士達の腕前も素晴らしい


とは思っておりますが、兵士の放つ全てが命中するんです。」


 司令官は誇らしく思って要る。


 「司令官、その訓練だが、止まっている的なんだろう。」


 司令官も5人の隊長も一瞬の内に顔付きが変わった。


 「閣下、私達の訓練方法に、何か間違いでも有るのでしょうか。」


 司令官は、納得できないのだ。


 「いや~、別に、司令官や隊長の訓練が間違っているとは言って無いん


だ、オレだって、同じ訓練をするからね、だけど、今度の敵は、今までと


は、全く違うと言う事だ、其れは、移動する敵に対して、確実に当てるべき


じゃ~駄目なんだ。」


 「閣下、ですが、動きは止まると思いますが。」


 「司令官、其れじゃ~、駄目なんだ、一回の攻撃で確実に敵を殺さない


と、駄目なんだ。」


 司令官も5人の隊長も、まだ、納得できないのである。


 「お言葉を返す様ですが、兵士は怪我をすれば、戦闘能力は落ちますの


で。」


 「其れはわかっているよ、だがな、敵は普通のやつらじゃ無いんだぞ、其


れにだ、あいつらは、農民、其れは、領民の命なんか、なんとも思わないん


だ、そんなやつらだ、怪我くらいで戦闘能力が落ちるとは思わないんだ。」


 司令官は、何も言わず聞いて要る。


 「其れに、あいつらは、領民を前面に行かせる方法で、やつらと戦った軍


隊は、まず、先頭の領民を目掛け攻撃に入るんだ、その領民が多いと、どう


なると思う、答えは簡単だな、武器の主力は弓だ、その弓に必要な矢を集中


する、その結果、次に攻撃する為の矢が不足する事になるんだ。」


 司令官達はうなずき。


 「閣下、では、前面の領民では無く、兵士達を確実に葬る必要があるので


すね。」


 ロシュエは頷き。


 「その通りだ、オレは、やつらは止まって攻撃するとは思わないんだ。」


 「閣下、では、動きながらホーガン矢を放つ必要があるんですね。」


 「司令官、各隊長、オレは、其れを予想しているんだ、但し、問題がある


んだ、領民の動きが全く予想が出来ないんだ。」


 「では、私達は兵士の訓練方法を考え直す必要が。」


 「うん、オレは、その方法を考えて要るんだが、動く敵に対して確実に仕


留める方法を。」


 今まで、誰も考え付かない方法で訓練するとなれば時間が無いと。


 「閣下、私も理解は出来ましたが、今からでは時間が足りないのでは。」


 「いや、司令官、オレは、全員がその訓練を行う必要は無いと思って要る


んだ。」


 それでは、一体、何人の兵士に訓練を行わせるのだ。


 「将軍、何人を訓練させるんですか。」


 ロシュエはニヤリとした。


 「オレはなぁ~、5人か10人でいいと思って要るんだ。」


 「えっ、5人か10人でいいんですか。」


 司令官は驚くが。


 「司令官、やつらに対して、一度に全員の腕前を見せる必要は無いんだ、


時には、3人、時には、5人と言う風にだ、例えばだ、10人の兵士がホー


ガンを打つ場所を変えると敵からはどう見えると思う。」


 「わかりましたよ、閣下、場所を移動する事で、敵は、この農場の兵士は


弓の達人ばかりだと考えますね。」


 隊長達もやっとわかったのだ。


 「其れでだ、隊長にお願いが有るんだ、隊の中で最高の腕前を持って要る


兵士を二人位選んで欲しいんだ。」


 「将軍、之は、大変難しい人選に成りますね、此処の全員が凄腕の持ち主


ばかりですよ。」


 隊長達は自慢の兵士を選ぶには困難な人選だと思って要る。


 「オレだって、其れは十分知って要るよ、だから、隊長に選んで欲しいん


だ、選考方法は任せるからよ。」


 司令官は、城に居た頃から、弓の訓練で全員の中から各隊に腕の良い兵士


を配置していたのだ、配置された兵士達が更に各隊で訓練を行う、その結


果、司令官とともに、この農場にやって着た全員が凄腕の持ち主になったの


である。


 「その特別訓練だが、オレも、実は、今思い付いたんだ。


 「えっ、閣下、其れでは。」


 司令官はあきれている、其れは、既に、特別な訓練方法を考えて要ると思


ったからだ。


 「司令官、本当にすまない、だがよ、オレは、訓練方法を真剣に考えてい


たんだ、これだけは本当なんだからなぁ~。」


 ロシュエはニヤリとして舌をぺロリと出したのである。


 司令官は、ロシュエの茶目っ気に時々だまされるのだが、別に怒る気持ち


も無かった。


 「では、閣下が、今考えられた方法をお聞きしたいんですが。」


 「オイ、オイ、司令官、余りオレを責めるなよ。」


 と、言ってはいるが、二人とも笑っているのだ、だが、ロシュエは真顔に


なり。


 「オレの考えた方法なんだが、実に簡単なんだ、数人の兵士が木材を持っ


て好きに動くんだ、その木材に命中させるんだが、司令官、駄目かなぁ


~。」


 と、ロシュエは司令官の顔をのぞき込んだのである。


 司令官も各隊長も、頭の中で想像するのだ。


 「閣下、わかりますが、木材を持った兵士は危険だと思いますよ。」


 だが、ロシュエの考えは違ったのだ。


 「そりゃ~、大変危険だよ、だがなぁ~、実際の戦闘では、お互いが命を


掛けてるんだ、打つ兵士も真剣にならないと、訓練の為の訓練に成ってしま


うと思うんだ。」


 確かに、ロシュエの考えは間違ってはいない、だが、その為に、優秀な兵


士が大怪我でもすれば、戦況に関わってくると思って要る。


 「司令官も隊長達も聞いて欲しいんだ、今までは野盗ばかりで、本当の戦


争は今回が初めての兵士が多いと思って要るんだ、だから、この訓練も、お


互いが真剣にならないと、怪我ではなく死を招く訓練に成るかも知れないと


いうことだ、それに、今度、使う武器は今までとは、全く別のホーガンとい


う武器だ、オレはな、この農場の農民と敵に連れて行かれた領民を助けたい


んだ。」


 「閣下、容訳わかりましたよ、閣下の思いは兵士達全員に伝わると信じて


おりますので。」


 「司令官、将軍には、何時も驚かされますが、将軍の言われる方法は、今


まで、誰も、考えた事の無い訓練方法です。


 私は、大賛成ですね、私は、兵士達に説明する事が大切だと思います。」


 2番隊の隊長も賛成したのである。


 「うん、確かに、今、考えて見ると、我々の訓練といえば、止まっている


的に対して矢を放っていたからなぁ~、私も、今、頭の中で想像したんです


が、之は、簡単に命中しないと思って要るんです。」


 「隊長、其処なんだ、今から、この訓練を行っても遅くは無いと思うんだ


が。」


 「閣下、私達が考えつかない以上、閣下の考えられた方法で訓練に入る事


に致します。


 各隊長は、大至急兵士の選考と同時にこの訓練方法の説明を行って下さ


い。」


 司令官の決断で、各隊長は、ロシュエと司令官に敬礼し、部屋を出た。


 「司令官、オレは、何時もの事だが、突然な話をするんで困るだろう。」


 司令官は苦笑いをするのだ。


 「いいえ、閣下、私は、その様な事は思っておりませんが、ただ、何時も


驚かされますので、此の頃は、驚きも半分に成りましたよ。」


 「だけど、司令官も良く我慢をするねぇ~。」


 ロシュエは、司令官の顔を覗きこんだ。


 「私も、不思議に思って要るんですよ。」


 「まぁ~、司令官、当分は付き合う事になりそうだなぁ~。」


 ロシュエは、司令官の存在は大切だと思って要る。


 「閣下、それで、今回の戦に、あの城主は出陣すると思われますか。」


 「うん、オレも本当は其れを知りたいんだ、あの城主だけは許す事は出来


ないんだ。」


 「閣下、私は、必ず来ると思って要るんです。」


 司令官には自信があったのだ。


 「何故、司令官はあいつが来ると思うんだ。」


 「その第一なんですが、生き残った兵士は多分、この農場での出来事を誇


張して報告して要ると思います。


 その第二ですが、偵察部隊は全滅した事は承知して要ると思います。


 私は、この二点で、あの城主の怒りは頂点に達して要ると思います。


 其れが理由ですね。」


 ロシュエは頷き。


 「司令官、良くわかった、オレの考えだが、あの城主の事だ、多分、最後


の本隊と一緒に来ると思うんだ、其れも、最強の部隊の中心でだ。」


 「閣下、私も、同じ様に思っております。


 私も、あの城主の事ですから、絶対にと言っていいと思いますが、戦の中


心には入って来ないと考えますが。」


 「やはり、司令官もそう思うか、オレは、あの城主を、何とかして、戦の


舞台の中心に引きずり出したいんだ。」


 「閣下が、其処までのお考えだとは。」


 司令官は、改めてロシュエの強い意志を知ったのだ。


 「司令官、奴の事だ、本隊は二手に分かれて来ると思うんだ。」


 司令官の読みとは違う。


 「閣下、私は、全軍で、一斉攻撃を仕掛けて来ると思いますが。」


 「うん、其れもありそうだ、まぁ~、何れにしても、奴が来る事に間違い


は無いと思うんだ。」


 「閣下、私は、両方の対策を考える必要が有ると思います。」


 「よし、わかった、司令官は、今、言った作戦を考えてくれ。」


 「ハイ、わかりました。」


 そして、各隊から選ばれた兵士達の特別訓練が始まったので有る。


 その特訓はその日から連日の早朝から行われて、7日が経った、ある日の


早朝だった。


 「お~い、司令官を呼んでくれ、大至急だ。」


 城壁の見張りからの第一報だった。


 「なんだ、何があったんだ。」


 「遠くから軍隊が向かって来てるんだ。」


 下に居た兵士は大急ぎで司令官を呼びに向かった。


 「お~い、今、どの付近に居るんだ。」


 「うん、まだ、遠くに見えるが、大変な人数だ。」


 「よし、わかった、お~い、全員配置に就いてくれ、大軍が向かってくる


ぞ~。」


 兵士の呼びかけに各兵舎から続々と兵士が城壁の上に上がって行く。


 「見張りの兵士に聞くぞ、出来るだけ報告は蜜に行ってくれ、もう直ぐ、


司令官が来られるからなぁ~。」


 「よし、わかったよ。」


 その時、司令官が着た、司令官は直ぐに城壁に上がり、軍隊の動きと人数


を数えていたのだ、やがて、敵の軍隊は、あの目印の杭付近まで着た。


 その時、ロシュエも城壁に上がり指揮所に着いたのだ。


 「閣下、どうやら、あの城の兵隊ですね。」


 「其れじゃ~、それじゃ~、我々の考えた予定通りの日数で、その通りだ


なぁ~。」


 「その様に成りますね。」


 「それで、敵軍の人数だが。」


 「閣下、約1万人と言うところですね、それとは別に弓隊の千人くらいが


先頭におります。」


 「我が軍の配置だが。」


 「ハイ、閣下、今日、特訓を予定して入りましたが、其れも中止し、城壁


の上に5人と、場外に送りました。」


 「城壁の5人の配置、後は、何時もの配置となっております。」


 「司令官、オレが、今、思い付いた事なんだが、その10人の特別兵士の


兵士達の腕前を披露したいと思うんだ。」


 またしても、ロシュエに突飛な思いつきだ。


 「閣下、一体、何を思い、思い付いた付かれたのですか。」


 ロシュエは、ニンマリとして。


 「昨日まで、特別兵の特訓に兵もだ、敵方の居る場所付近の威嚇をしよう


と思ったんだ。」


 司令官は直ぐにわかったのだ。


 「閣下、丁度、あの付近に杭を打ち込んで.有りますから。その杭にホーガ


ン矢を打つのでは。」


 「そうなんだ、あの杭に特別兵の腕前を披露しようと、其れと、百人くら


いでいいんだ同じ方向に向かって打って欲しいんだ。」

 

 「其れじゃ~、特別兵とは別に、一般兵にもですか。」


 「そうだよ敵方は、多分だが思うだろう、矢の落下地点までが相手方の矢


が飛んで来る距離だとね。」


 司令官、もニンマリし。


 「すると、敵方のの弓隊は前進して来ると思いますね、其れが、我が、ホ


ーガン隊が、待っていた好機だと言う事ですね。」


 「オレは、思ってるんだ、オレ達が、敵方でも、同じ様に前進するよ、そ


して、一斉攻撃に入るんだ。」


 「閣下、私も、同じですよ、敵は、此方には正規の軍隊は居ないと思って


るでしょうから、其処が、我が軍の付け目なんですね。」


 「オレは、そう思って要るんだが、果たして、オレの考えた通りになる


か、其れはわからないがね。」


 「閣下、何れにしても、一度やって見ないとわかりませんからね。」


 その時だった。


 「お~い、敵軍が近づいてきたぞ~。」


 「じゃ~、司令官、今の方法で行ってくれるか。」


 「閣下、面白い事に成るか、わかりまえんね。」


 「司令官、何か、楽しみにして要るようだなぁ~。」


 「その様に見えますか、、では、閣下、行ってきますので。」


 「よろしく、頼むよ、其れと、歩兵の様子も知りたいんだ。」


 「わかりました。」


 司令官は、各隊長にロシュエの指示を伝えたのだ。


 最初に、攻撃に入ったのはいいのだが、兵士達は大変な緊張をして要るの


がよくわかる。


 特別兵士の放ったホーガン矢は次々と見事に杭に命中する。


その命中するのを他の兵士達は確認し、大きな歓声を上げている。


 その光景は敵方は全く別の捉え方をしていたのだ。


 「オイ、奴らは、一体、何を喜んでいるんだよ、我々の随分前に有る木に


命中しただけでなのに、バカな奴らだよ、やはり、あの城壁には正規の軍隊


は居ない様だな。」


 ロシュエ達の作戦とも気付かない敵だった。


 「よし、この城壁は簡単に落ちるぞ、弓隊の全員は前進せよ。」


 敵の弓隊は前進を開始した。


 「特別兵に告ぐ、まだ、放つなよ、まだだ、弓隊、止まれ、全員攻撃を開


始せよ。」


 敵の弓隊からは一斉に攻撃が開始されたのである。


 「特別兵に告ぐ、まだ、放つなよ、まだだ。」


 「弓隊、止まれ、全員、攻撃開始。」


 敵の弓隊からは、一斉に攻撃が開始されたのである。


 だが、敵から放たれた矢は城壁を越える事は無く、全ての矢が失速し、急


造した木材の城壁に命中するのだ、敵からの攻撃は止まる事も無く、続く


が、その敵は、少しづつ前へ、前へと進んでくる。


 その時だった。特別兵は、敵の指揮官を狙いを定め。


 その後は、弓隊に照準を合わせ反撃を開始する、ホーガン矢は一斉に放た


れ、指揮官の号令が終わる頃には、反撃は開始された。


 最初に狙い撃ちされたのが馬上の指揮官達だった、城壁からと場外に造ら


れた大木の城壁から放たれたホーガン矢は、一直線に指揮官に向かった。


 その指揮官達は一瞬の出来事とは言え、一体、何が起きたのか理解する暇


も無く次々と


ホーガン矢の犠牲になり、落馬するのだ。


 更に、弓隊にもホーガン矢は命中し、弓隊の兵士達はその場に次々と倒


れ、勝敗は一瞬のうちに決まったのだ。


 生き残った、敵の兵士達、数十にも、ただ、呆然としている。


 「司令官、白い布を有るか、。」


 司令官は、ロシュエが突然、白い布を言ったので」。


 「閣下、白い布を何に使われるのですか。」


 「オレは、外に出ようと思うんだ。」


 司令官は、ロシュエの言った意味がわからない。


 「閣下、何故、外に出られるんですか。」


 ロシュエの思いは別にあった。


 「既に、勝敗は付いているよ、オレは、これ以上、戦死者と出したくは無


いんだ。」


 「閣下のお気持ちはわかりますが、でも、まだ、歩兵の多勢が残っており


ますが。」


 「司令官、あの歩兵を見て、何か、気が付かないか。」


 司令官は、場外の歩兵を見るのだが。


 「閣下、では、あの歩兵を中に入れられるのですか。」


 司令官も、歩兵が正規軍では無い事は知って要るのだが。


 「あの歩兵は領民だと思うんだ、其れに、指揮官も全部殺れて要るんだ、


弓隊も、次の攻撃態勢に入る事が出来ないと判断したんだ、オレは、その歩


兵、いいや、領民を助けたいんだよ。」


 「閣下、わかりました、お~い、誰か、白い布を持って来てくれない


か。」


 この時、城壁内で負傷した兵士達を兵舎に運びだしているのだ。


 「司令官、白い布を持って着ましたが、何に、使われるるんですか。」


 布を持ってきた兵士も訳がわからない。


 「君は、初めてなのか。」


 「ハイ、将軍、こんな大きな戦は初めてで、自分は何も出来ませんでし


た。」


 兵士は、うな垂れている。


 「うん、其れじゃ~、君に今から、重要な任務を与える。」


 「えっ、重要な任務ですか。」


 若い兵士は驚いている。


 「君は、ホーガン隊なのか。」


 「いいえ、自分は、ホーガン矢の補給係です。」


 「お~、其れは、重要な任務だな、よし、このヤリの先に、白い布を結び


つけてくれ。」


 若い兵士は、ロシュエの言う通り、ヤリの先に白い布を結びつけた。


 「其れじゃ~、司令官、行ってくるよ、君も、一緒に来るんだ。」


 「えっ、将軍、何処に行くんですか。」


 若い兵士は驚いている。


 「オレと、一緒に外に出るんだ。」


 「えっ、外に出るんですか。」


 兵士は訳がわからない。


 「何も言わず、馬に乗って来るんだ。」


 「ハイ、将軍、わかりました。」


 ロシュエも馬に乗り、.


城外に出た、暫くすすみ、敵軍の手前で止まり。


「お前達に聞く、お前達の後ろにいる歩兵は、正規軍なのか、それとも、民


兵なのか。」


 すると、弓隊の兵士は。


 「彼らは、民兵と言っても、殆どが農民だ、其れが、如何したと言うん


だ。」


 と、強気に要ってはいるが、顔は脅えている。


 「其れじゃ~、全員が農民だと言うのか。」


 「その通りだ。」


 「オイ、君達、今の話は本当なのか。」


 前の方に居た農民達の顔は脅えきっている、中には身体が振るえている者


も居たのだ。


 「その通りです、オレ達は、お城の近くで作物を育てて要る農民ばかり、


戦い仕方の知りませんので、如何か、殺さないで下さい、お願いします。」


 と、農民達は手を合わせ、目には涙を浮かべているのだ。


 「よし、わかった、オイ、弓隊の兵士達、オレは今から、この農民達を、


連れて行くが、文句は有るか。」


 弓隊の兵士は、何も言わずにいる。


 「但し、農民の全員が、オレ達の農場に入るまでに、一人でも、死んだり


怪我をする様な事があれば、オレ達は、お前達を許さないからな、覚悟をす


る事だ、わかったか。」


 兵士達も、呆然として、何も言わない。


 「お~い、城門を開けろ、今から、全員が入るが、一人でも、死ぬ様な事


があれば、この弓隊に向けて、撃て、ただしだ、絶対に殺すな、オレが後


で、じっくりと殺してやるからよ~、オレ達の恐ろしさを知る事になるから


なぁ~。」


 ロシュエを先頭に農民達は次々と城門と通り、中に入って行く。


 一方、中では、既に、負傷者の治療も始まっている。


 其れと、並行して、農場からは、熱いスープと、出来立てのパンが入って


着た農民達に配られている。


 司令官は、城壁の上で事に成り行きを見ていた。


 敵軍の残った弓隊の兵士達は、何をするのでも無く、ただ、その場に居る


だけで、その兵士達の周りには戦死した兵士の死体が残され、その周辺に


は、早くも獣達が集まり、戦死した兵士の肉体を貪っている。


 司令官は城壁を降り、ロシュエの側に着たのだが、若い兵士達は、まだ、


身体の振るえ


が止まらず。


 「オイ、何時まで震えているんだ、君の任務は終わったんだぞ、ご苦労だ


った、兵舎に戻り、ゆっくりと休め。」


 「ハイ、将軍、では。」


 と、言った若い兵士は、ロシュエと司令官に敬礼し、兵舎に戻って行っ


た。


 「閣下、多勢の農民ですね。」


 その時、農民達の中で大きな歓声が上がった。


 「オイ、一体、何が起きたんだ。」


 「将軍、あの農民達の中に、娘達の父親が居たんです。」


 と、若い兵士が報告に着たのである。


 「本当か、其れは、良かったなぁ~オレも、其処までは予想しなかった


よ。」


 「閣下、私もですよ、やはり、イレノアが言った話に間違いは無かったん


ですねぇ~。」


 「そうだなぁ~、あの娘達も、正か、この農場で、自分達の父親に再会す


るとは、夢にも思わなかっただろうからなぁ~。」


 「そうですね、イレノアといい、今回は、大変大きな収穫だったと言う事


に成ります。」


 「だがな、司令官、問題はだ、城主が引き連れてくる本隊だ、どれ程の規


模なのか、全くと言って良いほどわからないからなぁ~。」


 「閣下、私も、其れが、今、一番の問題だと考えておりますが、先程の戦


闘とは、別の


次元で考える方が良いと思うのですが。」


 「確かに、その通りだ思うんだ、司令官の作戦は。」


 「私は、まだ、作戦までは考えておりません。


 今、戦いが終わったばかりですが、早く、数人で偵察に行かせる事を考え


ております。」


 司令官は、既に数人を選び、偵察に行く準備を進めていたのだ。


 「じゃ~、司令官に任せるよ、其れで、我が方の損害なんだが。」


 ロシュエは、死者の無い事を願って要る。


 「閣下、今回は、作戦が成功しましたので、数十名の負傷者だけで済みま


した。」


 「そうか、戦死者は居なかったのか、良かった、良かったよ、本当に。」


 ロシュエは胸をなで下ろすので有る。


 「将軍、宜しいでしょうか。」


 「オ~、なんだ。」


 「将軍、先程の農民達が、将軍にお礼を言いたいと、来ておりますが、そ


れと、娘さん達の父親ですが、其れが、全員、再会したそうなんです。」


 「何、娘達全員が父親と再会したのか、其れは、本当に良かったなぁ~、


オレは、別に礼なんて要らないが、来ているんだったら、会うよ。

 

 イレノアを始め、女性20人と、今回、再会した父親の全員が入ってきた


のだ。


 「将軍、先程なんですが、私達の仲間が父親と再会に、全員がお礼を申し


たいと言っております。」


 「イレノア、オレ達は、何もお礼なんて要らないよ、」


 「将軍様、本当に有難う御座いました。


 私は、正か、この世で、娘と会えるなんて、本当に夢を見ている様で。」


 他の娘の父親達も頷いている。


 「皆さんも、今まで、大変なご苦労をされたと思いますが、此れからは、


この農場に来られた以上、何も心配は有りませんよ、其れと、暫くはのんび


りと娘さんと過ごして下さいね。」


 娘達もだが、再会を果たした父親達の目には涙が溢れていた。


 「将軍様、本当に、何とお礼を言って良いかわかりません。


 其れで、私達以外、此処に着た仲間の事なんですが、此れから、一体、何


をすれば良いのでしょうか。」


 「うん、そうだな、まぁ~、数日間は身体を休める事に専念し、その先


は、皆さんが以前、されていました、農作業でも行っていただければ宜しい


かと思いますが。」


 だが、ロシュエは、敵軍が何時、どんな形で攻めて来るかを考えて要る、


その為、領民達の今後の事までは考える余裕が無かったので有る。


 「将軍様、私は、以前、村で鍛冶屋を営んでいましたが、この農場では鍛


冶屋に仕事は有るのでしょうか。」


 ロシュエは、はたと考えた。


 「勿論ですよ、この農場は大きいので、鍛冶屋の仕事は多いと思います


よ、其れと、貴方に聞きたいんですが、貴方の様に、鍛冶屋の仕事をされた


人達は、何人位居られるのでしょうか。」


 鍛冶屋の男は少し考え。


 「私の知って要る限り、私を含め、10人は居た様に思うのです。」


 「そうですか、実は、貴方にお願いが有ります。


 至急、その人達を呼んで頂きたいのですが。」


 鍛冶屋は、何か、大きな仕事が有ると思った。


 「ハイ、将軍様、直ぐに呼んできます。」


 と、鍛冶屋の男は部屋と飛び出し、仲間の所に向かったのだ。


 「閣下、私も、閣下のお考えがわかりましたよ。」


 「うん、今、思い付いたんだが、オレは、敵が、4万人か5万人だと予想


しているんだ。


 その敵を倒すには、大量の其れもだ、10万本以上のホーガン矢を、大至


急作る必要が有るんだ。」


 「そうですね、私も、先程から考えておりましたが、如何でしょうか、今


日、到着した人達にもホーガン矢を作る作業に参加していただくと言うの


は。」


 ロシュエは、頷き。


 「うん、其れが、いいかなぁ~、だが、今日は何もする必要は無いが、明


日から全員にホーガン矢を作る作業に入ってもらう事にするか。」


 「将軍様、では、私達も、そのホーガン矢を作る作業をさせていただける


のですね、本当に有り難い事です。」


 その時、先程の鍛冶屋と仲間の十数人が入って着たのだ。


 「将軍様、呼んで着ました。


 私の感じ違いで、15人が居りましたので、全員呼んで着ました。」


 「ほ~、15人も居られたのですか、之は、頼もしい事だ。」


 ロシュエは、予想よりも多く集まり、一安心したのだ。


 其れは、今、農場の鍛冶屋だけでは、10万本のホーガン矢を作る事は、


難しいと考えていたからだ。


 「それで、将軍様、オレ達は、一体、何を作れば良いのですか。」


 「イレノア、すまないが、急な話で悪いんだが。」


 イレノアはわかっていたので。


 「将軍、私達は、これで失礼します、本当にありがとう御座いました。」


 と、イレノア達と娘達の父親達は部屋を出た。


 残った鍛冶屋はまだ何もわかってないのだ。


 「まぁ~、みんな座って下さいよ。」


 鍛冶屋の16人は座り。


 「皆さん、本当は疲れていると思いますが、今から、大切な話しが有りま


すので許して下さい。


 実は、皆さんに、ホーガン矢と作って欲しいんです。」


 鍛冶屋の16人は何も言わず、ただ、頷いている。


 「皆さんも知っておられると思いますが、貴方方や周辺の領民を苦しめ


た、あの城主が5万人の軍隊がこの農場を攻撃すると思うんです。


 でも、皆さんに、戦に参加していただく事は有りません。


 戦争はオレ達の任務なんですが、その軍隊と戦争に成ると思っています。


 それで、我々は色々な物を備える必要が有るんですが、その中でも、ホー


ガン矢が大量に必要なんです。」


 「将軍様、一体、何本の矢を作るんですか。」


 ロシュエは、考えた、彼らに、本当は、10万本が必要だと言って良いの


かと。


 だが、之は、雌雄を決する戦なんだ、本当の事を話す事が。


 「実は、我々は、敵の人数もわからないんだ。」


 「将軍様、実は、オレは、あの軍隊で武器の管理をしておりましたので、


何か役に立つ事であるんじゃ無いかと思うんです。」


 ロシュエは驚いた。


 あの城では、領民に武器の管理をさせていたのか。


 「えっ、本当なのか、正か、領民に武器の管理をさせるのか、オレは理解


が出来ないんだが、でも、其れが本当であれば、大変助かりますよ。」


 「ハイ、でも、本当なんです、オレと後数人ですが、オレ達の仕事は矢じ


りの製造と、ヤリの製造とヤリの修理をしていましたので。」


 「わかりましたよ、だから、貴方方に管理をさせていたのですね。」


 矢じりや、ヤリ、剣の修理も行っていたのだ。


 「ハイ、その通りです、国王や軍の上の人達が使われる剣は、オレ達が作


って、修理もしていましたので。」


 ロシュエにすれば、大変な驚きで、其れは、武器の種類もわかり、更に、


兵士の人数までもわかるのだ。


 「其れじゃ~、なんですか、兵士の人数もわかるんでっすか。」


 「ハイ、将軍様。」


 「では、わかるだけで、宜しいので、教えて頂きたいのですが。」


 「オレは、ヤリ部隊の人数はわかりますので、確か、2万人だと思うんで


すが。」


 「ほ~、ヤリ部隊は2万人なんですか。」

 

 今回の戦に果たしてヤリ部隊は必要に成るのかと、司令官は思ったが。


 「オレと、数人ですが、剣の修理をしておりましたが、2万人は居ると思


います。」


 「剣が、2万人ですか。」


 「オレ達は、矢じりを作っておりましたが、人数までは。」


 「いや~、別に気にされなくても宜しいですよ。」


 「オレは知っていますよ、確か、1万人だと思いますが。」


 其れは、大変重要な情報で、其処までわかっていれば、此方も戦いやすい


と。


 「之は、本当にありがたい情報ですよ、軍勢は、最低でも5万人だと言う


事だけでも、其れと、之は難しい事だと思いますが、指揮官の人数まではわ


からないと思うんですが。」


 「あの軍隊の指揮官は直ぐにわかりますよ。」


 これこそ、吉報だと、ロシュエは思った。


 指揮官の姿が直ぐにわかると言う事は、最初の攻撃は指揮官に向ける事が


出来ると。


 「直ぐに、わかると言われましたが、何か、特徴でも有るんですか。」


 「ハイ、将軍様、あの軍隊では、指揮される兵士は、全員が馬に乗ってお


ります。


 其れに、帽子なんですが、帽子の天辺に長い鳥の羽飾りを着けていますの


で。」


 「そうか、軍勢が多いので、指揮官が何処に居るのかわからす必要があ


る、その為に鳥の羽飾りを着けていると言う事か。」


 「司令官、之こそ、吉報だなぁ~、オレ達は、最初に指揮官を狙いを定め


る事が出来る。」


 「ハイ、閣下、私も、今、同じ事を考えておりました。」


 「馬上だと、直ぐにわかるからなぁ~、それで、何人位居るんですか。」


 「オレ達は其処までの事はわかりませんが、でも、一番、目立つと思いま


すが。」


 ロシュエ達には、大きな収穫だった。


 「本当に、有難うよ、それだけで十分だよ。」


 「じゃ~、将軍様、オレ達は、ホーガン矢を作りに入りますので。」


 「みんな、頼んだよ。」


 「ハイ、将軍様。」


 鍛冶屋の16人は、農場内に鍛冶屋に向かうのだ。


 その頃、元野盗隊も相談をしていた。


 「なぁ~、オレ達、野盗だったが、此処の将軍様は、オレ達の事を何も責


めないでだよ、昔の農作業をさせて下さっているんだ。


 オレには、多分だが、家族はあいつらに全員殺されていると思うんだ。


それで、オレは考えたんだが。」


 「一体、何を考えたんだよ、オレだって、前から考えて要る事が有るん


だ。」


 「なんだ、お前もか。」


 「そうなんだ、お前の言った通り、あの城の軍隊は。役に立たないと思っ


た村人には、兵隊達は、平気な顔で殺しているんだよ。」


 「何、お前も見たのか。」


 「うん、其れも、どいつも顔色も変えないんだ、オレ達を人間だと思って


無いんだよ、其れこそ、虫けらの様の思って要るんだ。」


 「オレは、此処の将軍様には、本当に感謝しているんだ、だけど、あの兵


隊達だけは許す事は出来ないんだ。」


 「オレもだ、将軍様にお願いして、オレも、戦に行かせて下さいと。」


 「そうだなぁ~、オレだって、元々、野盗じゃ~、無いんだ。


 あの兵隊達が村を襲って無かったら、今でも、作物を作って、子供達と仲


良く暮らせていたと思うんだよ、あの兵隊隊だけは許せないんだ。」


 元野盗とは言え、その前は普通の農民だった。


 「オレは、あの兵隊達が、オレ達の大切な家族を目の前で殺したんだよ、


特に、あの指揮官だけは、オレが、必ず殺してやりたいんだ。」


 と、言った彼の目には涙を浮かべていた。


 「オレもだ、あいつらは、オレの両親を目の前で殺しやがったんだ。」


 と、彼の目にも涙が。


 「だから、今でも、あの兵隊の顔だけは忘れる事が出来ないんだ、毎晩夢


にまで出て来るんだ、だから、オレが絶対に殺してやるんだ、その為に死ん


だっていいんだ、オレは。」


 「オイ、みんな、今から、将軍様にお願いに行こうか。」


 「うん、オレも行くよ。」


 「オレもだ。」


 と、次々と声が上がったのだ。


 「其れじゃ~、みんなで行って、将軍様にお願いするか。」


 「でも、全員は行けないと思うんだ、数十人で行ったらどうだろうか。」


 「よし、わかったよ、じゃ~、前の数十人で行こうか。」


 と、数十人の元野盗達がロシュエの所に向かったのだ。


 その頃、ロシュエと司令官は、今後の作戦を考えていた。


 「司令官、敵は何時頃、攻撃に入ると思う。」


 「閣下、あの城主の事ですから、後、20日も過ぎれば、農場近くの草原


に到着すると、私は、考えて要るんですが。」


 「そうか、司令官も同じか、オレも、同じ様に思って要るんだ、それで


だ、敵が来る頃には、偵察隊を出す事を考える必要が有ると思うんだ。」


 「閣下、私も同じですが、あと、15日ほど経ちましたら、数人を出そう


と考えておりますが。」


 「そうだなぁ~、じゃ~、それで行こうか、其れと、オレは、別の方法を


考えたんだ。


 其れはなぁ~、草原の手前に大木を並べるんだ。」


 「閣下、其れは、森の中に誘い込むための作戦だと言われるんですね、」


 「うん、その通りだ、何れ、草原でも戦に成るが、その前に森に引き込


み、少しでも敵を殺る事が出来れば、いいと思って要るんだ。」


 「確かに、兵士を出来るだけ、減らす事も大切ですからね、でも、今度


は、大軍だと思うんですが、その大軍が、森に入って行くでしょうか。」


 「オレも、其れは考えたんだ、だけど、森に入らないとも言えないん


だ。」


 「そうですね、全部が草原に行くとは限りませんからねぇ~。」


 「司令官もそう思うか。「


 「閣下、まだ、時間は有りますので、此処はじっくりと作戦を練っては如


何でしょうか。」


 「うん、そうだなぁ~。」


 その時だった、元野盗の数十人が着た。


 「将軍様、宜しいでしょか。」


 「お~、いいよ、でも、何事だよ、こんな時間に。」


 「実は、将軍様にお願いが有りまして。」


 「いいよ、何でも言ってくれよ。」

 

 「ハイ、では、お話しします、今度の戦に、私達も参加させて頂きたいん


です。」

 

 「何、あんた達をか、戦にかよ~。」


 「ハイ、その通りです。」


 「オイ、オイ、敵は、正規軍だぞ、素人の君達に何が出来ると思うん


だ。」


 ロシュエは、野盗達の申し出に困惑している。


 「将軍様、オレ達は、確かに元野盗です、ですが、その前は普通の農民だ


ったんです。


 我々の静かな生活をあの兵隊達がぶち壊したんですよ、オレは如何して


も、あの兵隊達を殺したいんですよ、将軍様、お願いします。」


 「オイ、お前達、今、言ったあの兵隊を殺してやると簡単に言ったが、敵


は、正規軍なんだぞ~、そうは、簡単には行かないんだ、君達のなかから


も、多くの犠牲者が出る事になるぞ。」


 「将軍様、そんな事はわかっています。


 でも、将軍様だって、生き残れる保障はあるんですか。」


 ロシュエは、言葉が出なかった。


 「将軍様、オレ達の気持ちは変わりませんよ。


 一人でも、多くの敵を殺せば、それでいいんですよ。」


 彼らの気持ちを果たして変える事は出来るのだろうか


 ロシュエは、何も言わず考えていたのだ。


 「将軍様、オレも、野盗でした、でも、将軍様は何も責めず、この農場で


仕事をさせて下さいました。


 将軍様の言われる様に、オレ達は素人です、でも、兵隊さんだけが犠牲に


成ってもいいとは思わないんです。」


 「私も、この農場で働く農民です、その農民でも、何か出来る事があると


考えました。


 其れが、敵から、この農場を守りたいという気持ちなんです。」


 「わかったよ、だがな。」


 ロシュエも、簡単に受け入れる事が出来ない。


 「司令官様、オレ達も、弓を使う事は出来るんですよ、他の農民とは違い


ます。


 如何か、オレ達にも参加をさせて下さい、お願いします。」


 司令官も返事が出来ない、


 「閣下、今、この農場に居る兵士だけでは、敵に勝つ事はできないと考え


ますが。」


 「司令官、其れは、オレもわかっているんだ、だが、彼らは、元野盗だと


言っても、敵は正規軍なんだ、オレ達は、今、その正規軍と初めて本格的な


戦いに挑もうとして要るんだぞ。」


 「閣下、私も、既に、覚悟は出来ております。


 其れは、閣下も同じでは無いでしょうか。


 我々は、今まで、大きな戦を経験はしておりません。


 その為に兵士も不安を持っております。


 ですが、この人達の気持ちも大切では無いでしょうか。」


 「うん、わかっているんだ、だがなぁ~。」


 「将軍様、司令官様、オレは野盗でした。


 でも、野盗のままで、天国には行けません。


 でも、オレは、天国に行った時、天国の家族や村の仲間達に自慢するんで


す。


 お前達、オレはなぁ~、大きな農場の、将軍様や司令官様と農場の人達の


為に其れは、憎い敵と戦ったんだとね。」


 彼の一語でロシュエの心は決まったのだ。


 「よし、みんな、わかったよ、君達の気持ちは、オレが何と言っても変わ


る事が無いと言う事だ。」


 この時、元野盗達から歓声が上がった。


 「将軍様、司令官様、本当に有難う御座います。


 之で、オレ達の気持ちはすっきりとした、なぁ~みんな。」


 この時、司令官はロシュエの顔を見たのだ、閣下は何かを考えて要ると、


其れは、一体。


 「それで、君達の何人が参加するんだ。」


 「将軍様、其れが。」


 「其れが、なんだ、はっきりといえ。」


 「ハイ、では、オレ達は、この作戦に参加する事に強制はしていません


が、半分が希望しています。」


 「何、半分だと、其れじゃ~、5千人もの仲間が参加すると言うのか。」


 「ハイ、将軍様、。」


 彼らの表情は明るかった、普通であれば、死を覚悟している表情のはず


が、何故だ。


 「オイ、オイ、司令官、之は、作戦の変更が必要だよ、大変な事になって


しまったよ。」


 ロシュエも、あきれた表情に成った。


 「閣下、私が、今、考え付いた事なんですが。」


 「司令官、何か、良い方法を考え付いたなぁ~。」


 司令官はニヤリとし。


 「彼らは、弓が使えます、敵にすれば、ホーガンと言う武器は知りませ


ん。


 それで、今回の作戦は両面作戦を思い付いたんです。」


 「何、両面作戦だと。」


 「その通りです、ホーガンの矢は、今までの弓とでは飛び方が違います。


 私は、この飛び方の違う事を利用したいので。」


 「司令官、面白そうだな、聞かせてくれよ。」


 「ハイ、閣下、私が今まで経験した戦では、旧式の弓から放たれた矢は敵


の頭上から落ちてきます。」


 「うん、うん、それで。」


 「敵も、この頭上から飛んでくる矢を防ぐために、盾を頭上に持って行く


と思います。」


 「うん、其れが普通だ、それで。」


 「ところが、頭上に注意が行けば、正面は全く無防備とは思いません


か。」


 「そりゃ~、当たり前だ。」


 「その時、ホーガンの一斉攻撃に入るんです。」


 「うん、そうか、司令官の思い付きだが、敵にすれば、頭上と正面からの


攻撃を同時に防ぐ事は出来ないと言う事だな。」


 「ハイ、その通りです、この方法が果たして成功するのか、私は、わかり


ませんが、我々の兵士達は全員がホーガンを使い、彼ら、元野盗隊には弓を


使い、敵の頭上に放つ、之が、私の考えた両面作戦なんですが。」


 「よし、わかった、君達も、この方法で戦に参加してもらうがいいか。」


 「ハイ、将軍様、司令官様、勿論ですよ、オレ達は満足しています。


 オレ達は敵の頭上に矢を放てばいいんですから、気持ちは楽になりま


す。」


 「よし、みんな、頼むぞ、此れからは、オレが司令官と各隊長を集め、改


めて作戦会議をするから。」


 「ハイ、将軍様、司令官様、其れじゃ~、之で、オレ達は戻りますの


で。」


 元野盗達の代表は笑顔で戻って行った。


 その後、ロシュエと司令官は、各隊長を集め、数回の作戦会議を行ったの


だ。


 その20日が過ぎた頃だった。


 「お~い、偵察隊が戻ってきたぞ。」


 「わかった、将軍に知らせるからなぁ~。」


 「お~い、城門を開けてくれ。」


 「よし、わかった、今、開けるからなぁ~。」


 彼らは、敵の動きを監視していた偵察隊だった。


 ロシュエと、司令官、更に、各隊長も出迎えたのだ。


 「お~、君達、大変な任務だったが、ご苦労さんだったなぁ~。」


 その時、イレノアと数人の女性が、出来立てのスープとパンを持って着


た。


 「将軍、出来立てのスープです、皆さんに。」


 「お~、有難うよ、何時もすまないね、イレノア。」


 イレノアと数人の女性は、微笑み、兵士達にスープを渡すのだった。


 イレノアは、本当に良く気が付く娘だとロシュエは思って要る。


 「みんな、先に座って、スープを飲んでくれ、報告はその後でも十分だか


らな。」


 「ハイ、将軍。」


 と、兵士達はスープを飲んでいる。


 その間、イレノア達は二コ二コとして要る。


 「イレノアさん、有難う。」


 「いいえ、私に、出来る事は、これくらいだけですので。」


 兵士達も満足している表情だ。


 ロシュエ達も座り、兵士達が飲み終わるの待って要る。


 暫くして、全員が飲み終わり、イレノア達が食器を持って出て行くと。


 「将軍、報告します。」


 「うん、別に、慌てる必要は無いぞ。」


 「はい、将軍、敵軍は、此処から、約10日程の平原に集結しておりま


す。」


 「そうか、其処まで着たのか、それで、敵の兵力はわかるのか。」


 「はい、我々は平原の手前に有る、森から見たんですが、先頭には弓部隊


で、5千人程です、次に、ヤリ部隊が1万人程です、最後に歩兵部隊です


が、3万人か4万人はいると思います。」


 「やはり、話に聞いていた通りの兵力だ、それで、城主と思われる人物だ


が。」


 「はい、将軍、その前に、各部隊の間に、各数百台の馬車も有りまし


た。」


 「多分、其れは、兵士達の食料だと思うんだが。」


 「将軍、この馬車は我々の馬車と同じですが、歩兵部隊の最後に、之は、


全く造りの違う馬車が、前後左右、数百人の馬に乗った護衛と思われる兵士


に守られておりました。」


 「その馬車こそ、城主が乗っていると思うんだ、姿はわかったのか。」


 「其処までは、わかりませんでした。


 でも、将軍の思われて要る通りだと、私達も思っております。」


 「司令官、之なら、後、10日前後に来るな。」

 

「ハイ、私も、その様に思います。」


 「所で、オレが、一番聞きたい事が有るんだが。」


 兵士は二コリとして。


 「将軍の聞かれたい事は、私達もわかっております。


 ホーガンですね。」


 「うん、そうだ、それで、敵は持って要るようだったのか。」


 「いいえ、その様な武器は発見出来ませんでした。」


 「何故、わかるんだよ、君達は遠くから見ていたんだろう。」


 またも、兵士は二コリとした。


 「実は、自分達は手分けして、夜、見に行ったんです。」


 「オイ、本当かよ、そんな近くまで行く事ができたのか。」


 「ハイ、将軍、敵は我々の存在を知らなかったんだと思います。


何か、安心している様子でしたので、直近まで行く事が出来たんです。


 テントの外には、我々と同じ弓だけでした。」


 「そうか、之は、最高の情報だよ、有難うよ、じゃ~、君達は敵軍には見


つかって無いんだなぁ~。」


 「はい、勿論です、自分達は、其れを確認したので、大急ぎで戻って着ま


した。」


 「そうか、其れは、大変な任務だったなぁ~、じゃ~、君達はゆっくりと


休めよ。」


 「ハイ、将軍、では、失礼します。」


 と、偵察隊は、ロシュエと司令官に敬礼し、兵舎に戻って行った。


 「司令官、各隊長、今、聞いての通りだ、作戦会議に入ろうか。」


 ロシュエ達は、その後、作戦会議を開き、敵が来るであろう、2日前に最


後の偵察隊を送った。


 敵軍との一大決戦が迫ってくる。


 農場では、農民達は何時もと変わらず、農作業を続けるて要る、司令官達


は武器の最終点検を行い、城壁の上では、今まで以上に人数も増やし監視体


制を続けるので有る。


 そして、刻、一刻と、一大決戦は迫っている。



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