表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇の帝国    作者: 大和 武
33/288

 第 6 話。 工事の再開は。

 源三郎達が、海岸に着くと、漁師達は、久し振りに浜で網の繕いをしている。


「あっ、源三郎様、其れに。」


「元太さん、先日は、片口鰯を有難う、みんなも大喜びでしたよ。」


「いいえ、あんな物で喜ばれると、オラは恥ずかしいですよ、だって。」


「実はね、殿が、一番、喜ばれましてね、余は、この様に旨い魚は初めてじゃって。」


「えっ、お殿様にですか。」


 元太は、一夜干しの片口鰯を正か、殿様が、食べるとは思ってもしなかった、其れよりも、他の漁師達


は驚きよりも、唖然としている。


「元太さん、其れが本当なのですよ、其れにねぇ~、何時も、殿様の食べ物は、何時も冷えておりますの


で、まぁ~、本当の美味しさは分から無かったのだと思うのですよ。」


「へぇ~、オラ達は、殿様って、何時も、美味しい物ばかり食べてると思っていましたので。」


「其れがね、片口鰯を見るのも初めてで、少し、火を通し、熱いうちに食べる、その様な事も知られてお


られませんのでねぇ~。」


「へぇ~、じゃ~、オラ達が、思ってる以上に、殿様って、可哀想な人なんですねぇ~、オラ達の食べる


物が美味しいって事なんですから。」


「元太さんもですがね、我々は、普通温かい物って、温かい内に食べるでしょうが、殿様は、毒見が終わ


らなければ、何も、食べる事が出来ないのですよ。」


「えっ、じゃ~、あの片口鰯も、誰かが毒見をして、其れから食べたのですか。」


「いゃ~、其れがね、殿は、賄い処で、火にあぶらせ、直ぐ食べたそうですから、まぁ~、これからは、


何かが変わる事は間違いは無いと思いますよ。」


「源三郎様、また、持って行きましょうか。」


「元太さん、あの時は、其れで良かったのですが、あの魚だって、漁師の皆さんが、苦労して獲られた魚


ですよ、一度は頂きましたが、次からは、正当な報酬を頂ける様に、私からも、お願いをしたいと思うの


です。」


「いいえ、そんなの別にいいですよ。」

 

 元太は、別に報酬が要るから持って行ったのではない、だが、源三郎の考えは違った。


 今は、城下の魚屋が持って来る、だが、魚屋も利益を上げなければならない、では、一体、源三郎は、


何を考えて要る


「元太さん、お魚も漁師さんが獲って来られ、其れを、網元が買い、魚屋に売り、最終的には、城下の人


達や、我々の城に届けられるのだと思いますが。」


「はい、その通りですよ、でも、オラ達は、網元さんが買ってくれないと、ご飯も、食べる事も出来ない


んですよ。」


「では、元太さん達が獲られた魚の全部では無く、お城に売るだけでも、漁師さんから買い受けると言う


のは、如何でしょうか。」


「でも、そんな事をすれば、オラ達は、網元さんに、他の魚は買って貰えなくなりますので。」


「其れは、心配ないと思いますよ、だって、網元さんも、漁師さんが、魚を売らなければ、一体、どうし


て、城下の魚屋に売るのです。


 私はねぇ~、漁師さんの暮らしが少しでも、楽になれば、其れで、良いのですから、お城に収めて頂く


魚は、どれくらいか、私は、知りませんがね、まぁ~、一度、話しだけはしますからね、其れに、殿も、


反対はされないと思いますのでね。」


 元太も、他の漁師達も、少しは暮らしが楽になれるので有れば、其れが、一番、良いと分かって要る。


「じゃ~、オラは、源三郎様にお任せしますので。」


「其れで、良いと思いますよ、私はねぇ~、多分ですよ、これから先、お城で食べられる魚も変わって


くると思いますよ。」


 源三郎は、今までの様な、高級な魚では無く、城下の者達が食べている様な魚が、賄い処でも増えるだ


ろうと思うので有る。


「源三郎様、其れで、今日は、一体、何の用事で来られたんですか。」


「あ~、そうでしたね、実はねぇ~、元太さん、これが、何か分かりますか。」


 源三郎は、荷車に被せて有る物を取った。


「源三郎様、これは、一体、何ですか。」


「元太さん、これがね、潜水具と言いましてね、これを被り、水の中に入ると息が出来ると言う品物なの


ですよ。」


「えっ、これを被ると、海の中でも息が出来るんですか、でも、本当なんですか。」


 元太も、他の漁師達も、全く信用していない、其れも、当然で、幾ら、漁師でも、こんな樽を被るだけ


で、其れに、一体、どんな方法で、息が出来るんだと思っている。


「これは、何処にでも有る樽では無いのですよ、これを被り、このふいごを踏むとね、空気が出て、息が


出来ると言う訳ですよ。」


「え~、オラ、そんなの信じられないですよ、源三郎様は、被って試されたんですか。」


「実はねぇ~、私も、まだ、被った事が有りませんのでね。」


「なぁ~んだ、源三郎様も、被って無かったんですか。」


「ええ、まぁ~、その通りでしてね、今日、皆さんに試して頂きたいと思って、持って来たのですが、元


太さんは、如何でしょうか。」


「う~ん。」


 元太が、渋るのも無理は無い、今まで、見た事も無い潜水具を被って、海の中に入れと、突然言われた


のだから。


「では、私が、最初に試して見ますよ。」


「源三郎様、私が、最初に試しますので。」


 鈴木だ、源三郎は、三名を連れて来た訳は、これで、分かった。


 元太もだが、漁師達が、被る事は嫌がるだろう、だが、源三郎自身が被るとなれば、漁師達は止めるに


違い無い、ではと、考えた時、この三名を連れて行けば、必ず、一人が名乗りを上げるだろうと思ったの


で有る。


 鈴木は、着物を脱ぐと、持って来た帯を股の内側に通し、潜水具の紐と括った。


「では、小舟に乗って、少し沖に出して下さい。」


 行き成り、洞窟の中で試す事はせず、浜で試みる事になった。


 小舟には、田中と、上田も乗り、少しだけ沖に出ると。


「この辺りで止めて下さいね、鈴木様、ゆっくりと海の中に入って下さい。」


「はい、分かりました。」


 鈴木の声は、樽を被っている為に、こもってはいるが、鈴木は、二人の手を借りながら、海の中


に入る。


 腰に付けて岩の重みで、ゆっくりと沈んで行く、田中は、足元のふいごを踏み始めた。


 暫くすると、鈴木の身体は、海中に入り、田中は、ふいごを踏み続けると、樽の横からは、空気の泡は


出るが、源三郎が見ている限り、鈴木は、別に苦しそうな動きも見せずに要る。


「う~ん、これは、大成功ですよ。」


「えっ、でも。」


「いゃ~、大丈夫ですよ、上から見ても、鈴木様は苦しそうな動きは見られませんのでね、では、引き上


げましょうか。」


 腰に付けた紐を引くと、鈴木の頭部が海面に上がり、鈴木は、小舟の縁をつかみ上がって来た。


 被っている潜水具を取ると、鈴木はニコッとして。


「源三郎様、この潜水具は、大変、素晴らしいですよ、私は、海の中が、これ程、美しいとは知りません


でした。」


 興奮した様子で、其れに、鈴木の、首から上は全く、海水に濡れてはいなかった。


「おい、どうだったんだ。」


「うん、これは、最高だぞ、其れに、海の中は、音が全くないんだ、其れにだ、其れにだよ、海の中で泳


いでいる魚も見たよ。」


「息は、苦しく無かったのか。」


「田中、お主も、これを被って海に潜って見ろ、其れは、もう最高だぞ。」


「では、成功と、言う事ですか。」


「はい、勿論で、御座いますよ、源三郎様、私は、今も、興奮が収まりませんので。」


「そうですか、では、浜に戻りましょうか。」


「源三郎様、その前に、オラにも。」


 元太は、鈴木の話を聴いて、どうしても、海の中に入りたいと思ったのだろう。


「元太さん、では、海の中に。」


「はい、オラも、鈴木様の話を聴いて、これは、どうしても海の中に入りたいと、思ったんで。」


「分かりましたよ、では、もう、一度、試して、元太さんの話で決めましょうか。」


 そして、元太が潜った、最初なので、余り、多くの時を掛ける潜る訳にも行かず、途中で引き上げられ


ると、元太は、鈴木以上に興奮が収まらない。


「源三郎様、オラは、漁師だけど、海の中って、あんなに綺麗だとは思いませんでしたよ。」


「元太さん、先程は、嫌だと言っておられましたのに、今度は、海の中が綺麗ですか。」


「其れは、もう、綺麗のなんのって。」


「ですがね、其れは、明るいからですよ、洞窟の海中は、暗いですから、其れを忘れると恐ろしい


事になりますからねぇ~。」


「源三郎様、あんまり、脅かさないで下さいよ。」


「私は、別に、脅してはおりませんよ、でも、その事もよ~く、考えなければなりませんが、一応、この


潜水具は良いと言う事ですねぇ~。」


「はい、其れは、間違いは無いです。」


 元太は、興奮が、まだ、収まらない様子で有る。


「源三郎様、海が暗いと言う事になれば、余り、深くは潜れませんねぇ~。」


「ええ、その通りですよ、それならば、手探りで、岩を取り除く事になりますが。」


「今は、その方法が、最善だと思いますよ、でも、私はねぇ~、岸壁を出来る限り、真下に掘り下げたい


のですよ。」


「何故、ですか、別に、今のままでも、私は、良いと思うのですが。」


「其れはねぇ~、この小舟だから、問題が無いのですよ、では、聴きますが、この小舟にどれだけの物が


積めると思いますか。」


「う~ん。」


 田中達は、考え込んだ、源三郎の言う船とは、今の、二倍、いや、三倍以上は積める必要が有る。


 其れで、無ければ、何度も往復しなければならないのだ。


「私は、今の入り口も、もう少し広げ様と考えて要るのです。」


「源三郎様、オラは反対だ。」


「元太さん、何故ですか、今の隙間ならば、米俵が、三俵か、四俵も積めれば良いと思うのですがねぇ


~。」


「源三郎様、何で、入り口を広げるんですか、其れに、オラ達は、今で十分で、有れ以上広げると見つか


りますよ。」


「元太さん、其れはね、心配は無いですよ、だって、この洞窟は、我々だけが知って要るのですよ、私


はねぇ~、何も、知らない者が、入り口の真近かまで来る事は無いと思うのですよ、其れに、あの少し、


沖に有る大きな岩が、普通ならば、あの付近から見ますと、あの岩だって、洞窟から、一町以上も有りま


すよ、私は、無理に大きくするのではなく、あの岩付近まで行って、其処から見えた所までを大きくする


ので有れば、まず、見つかる事は無いと思うのですがねぇ~。」


「源三郎様、私も、少し分かってきました。


 今の隙間を通れる舟は小舟で、その小舟では荷物を少し多く積み、通り抜けるには、狭いと。」


「はい、その通りでしてね、元太さん、この沖を大きな船は通りますか。」


「はい、そうですねぇ~、一日に数隻ですが。」


「その船は、どの付近を通りますか。」


「はい、もっと、もっと、遠くですよ、其れが。」


「元太さん、あの岩に、一度、行って考えては如何でしょうか、私の、思い違いで無ければ、私が、考え


た以上の大きな入り口が出来ると思うのですがねぇ~。」


 源三郎は、不思議な事に自信が有った。


 この浜から見ると、岩に当たる波が見えない、では、近くに行けば、一体、どの様になるのだ。


「源三郎様、今からでも、あの岩に向かいましょう。」


「元太さん、どなたかに、小舟で、隙間の所まで。」


「はい、分かりました、誰か、済まないけれど、源三郎様のお願いだ、小舟で、隙間の所に行って欲しい


んだ。」


「オラが行くよ。」


「じゃ~、オラもだ。」


「隙間の所に着きましたら、その場で立ち上がって下さいね。」


 二人のが乗った小舟は隙間の所に向かう事に。


「分かりましたよ、じゃ~、行きます。」


 小舟は、洞窟の入り口に向かい、源三郎達を乗せた小舟は、元太が漕ぎ、沖の岩に向かった。


「田中さん達は、入り口に着いた漁師さんをよ~く、見てて下さいね。」


「はい。」


 とは言ったが、源三郎が、一体、何を始めるのか分からなかった。


「あれ~、漁師さんの姿が半分になって行きますよ。」


 この当時、日本人の中で、地球は丸いと言う事を知る者は殆どいなかった。


「いゃ~、私もね、何故なのか分からないのですがね、今、見た事が本当ならばですが、あの漁師さんの


腰付近までは削っても大丈夫なのではないかと考えております。」


「う~ん、確かに、源三郎様の申される通りで、腰付近までが、海の中に消えたと申しましょうか、沈ん


だと、申して良いのか分かりませんが、此処から見ても、全く、分かりませんねぇ~。」


「其れに、今、私が、考えて要る秘策を持ち入れれば、まだ、大きな入り口が作れると言う事なんですが


ね、まぁ~、その話は、今は、無かった事にしましてね、如何ですか、元太さん。」


「はい、源三郎様の言われた事が、今、やっと分かりましたよ、すると、洞窟の中は、今よりも、明るく


なるのですね。」


「まぁ~、その様になればよろしいのですがねぇ~。」


 源三郎の考えた秘策とは、一体、どの様な事なのか、この時は、誰も、分からなかった。


「そうだ、源三郎様、忘れていましたが、農村から大勢来られ、今、岸壁作りに入って貰ってるんで。」


「其れは、早かったですねぇ~。」


「ええ、オラは、あの人達は工事が初めてなので、岸壁作りをお願いしたんですが、其れで、良かったん


ですか。」


「ええ、其れで、十分ですよ、元太さん、其れと、あの工事は、今は、止めて頂いておりますねぇ~。」


「はい、落盤事故が起きてからでは遅いと思いましたので。」


「其れは、良かったですよ、実は、昨日、山から、三十本もの原木を城に運び、明日からでも、洞窟内の


補強材を作り始めると思いますので、私から、連絡を入れますので、其れから、工事の再開と言う事で、


他の皆さんにも伝えて下さい。」


「そうですか、其れは良かったですよ、オラ達も、じゃ~、工事の再開までは、漁をやってますので、知


らせて下さいね。」


「では、今の話は、後日にと言う事で、元太さん、このまま、洞窟に入って頂けますか。」


「はい、分かりました。」


 源三郎達を乗せた小舟は、洞窟内に入り、 何時もの様に、一番奥で、小舟を降りると、其処には、二


十人程の農民が、慣れない手付きながらも、岩を砕いている。


「皆さん、大変、ご苦労様です。」


「あっ、源三郎様、何か有ったんですか。」


 農民達は、少し驚いてはいたが、源三郎が、何を目的に来たのかは知らない。


「いゃ~、丁度、他の用事も有りましてね、来たのですが、皆さんが、来られて要ると聞きましたのでね


入って来たのですが、如何ですか。」


「源三郎様、オラ達は、何時も、お天とう様に下で、働いているもので、慣れるのが大変で。」


「其れは、申し訳有りません。」


「いゃ~、其れよりも、オラ達、まだ、何も出来ないのに、漁師さん達には、大変なお世話になって。」


「元太さん、有難う。」


「いゃ~、オラ達だって、助けて貰ってるんだ、有れくらいの事は、其れよりも、今日、帰る時に持って


帰って貰う物が有るんで。」


 元太達は、昨日の朝、獲れた片口鰯を一夜干しと、他にも色々な魚を用意している。


「あんまり、オラ達の事に気を使わんで下さいよ。」


「まぁ~、いいじゃないですか。」


 この様なやり取りを聴いていた、田中達は、目を細め、其れは、源三郎が、目指している事なのかも知


れないので有る。


「では、私達は、これで、お城に戻りますが、何か、困った事は有りませんか、どの様な事でも、宜しい


ですから言って下さいね。」


「あの~、源三郎様、オラ達の村では、そろそろ、稲刈りが始まりますので。」


「あっ、そうでしたね、これは、失礼しました。


 まぁ~、別に、急ぐ事も有りませんので、稲刈りが終わられ、暫くはのんびりとされてから、また、参


加して頂ければ、其れで、十分ですのでね。」


「はい、本当に有り難い事で。」


「そうか、オラ達には、農民さんの仕事は分からないからなぁ~。」


「いゃ~、其れは、オラ達だって、一緒なんで、漁師さんの仕事が分からんのと一緒ですよ。」


「まぁ~、何れにしても、皆さん、急ぐ必要も有りませんのでね、のんびりとして下さいね、で、他に、


何か、有るでしょうか。」


「源三郎様、オラは、あんまり、詳しい事は、分からないんですが、この洞窟を広げては駄目なんでしょ


うか。」


「う~ん。」


 其れは、源三郎も、考えていたのだが。


「まぁ~、其れは、この洞窟が、お城まで通ってから考えましょう、今から、余り広げると、大変ですか


らねぇ~。」


「はい、分かりました。」


「他に、無ければ。」


 暫くの沈黙が続くが。


「では、私達は、城に戻りますので、皆さん。よろしく、お願いします。」


 源三郎と、三人は、洞窟内で工事で行なっている、農民達に頭を下げ、小舟に乗り込み、城へと帰って


行く。


そして、明くる日、源三郎は、賄い処に居た。


「吉田様、お忙しいところ、誠に、申し訳、御座いませぬ。」


「これは、これは、源三郎殿、一体、如何されたのですか、この様な所に。」


「はい、少し、ご相談が御座いまして。」


「源三郎殿からの相談とは、何か、恐ろしい話では有るまいなぁ~。」


「吉田様、私は、その様な。」


「いや、いや、冗談、冗談ですよ、で、一体、どの様な事でしょうか。」


「はい、実は、昨日。」


 源三郎は、昨日、漁師の元太との会話を話した。


「吉田様、お城で、食べられる魚ですが。」


 吉田は、驚いた、其れは、殿様が、言った内容と同じでは無いかと。


「源三郎殿、そのお話しですが、先日、殿が申されたので、私は、驚いて要るのですよ。」


「えっ、其れは、何時の、お話しですか、私は、この数日、殿に、お会いしておりませぬので。」


「あの日ですよ、皆様で、原木を取りに行かれた日の事です。」


「えっ、其れは、私も、初耳で、御座います。」


「いゃ~、実はね、あの日、殿は、この賄い処で、お食事を取られましてね。」


「殿が、賄い処で、お食事をですか。」


「ええ、まぁ~、その時に、源三郎殿からだと、申され、片口鰯を持っておられ、その片口鰯を軽く焼い


て食べられ、その美味しさに、大変、驚かれたのですがね、其れよりも、殿は、焼き立ての魚を食される


のが初めてで、その時、これから、余は、此処で食すると申され、実を、申しますと、我々としては、大


変、困って要るのですよ。」


 源三郎は、正か、その様な話しが有ったとは知らなかった。


「その時ですよ、殿が、申されたのは、何も、わざわざ、城下の魚屋から買う必要は無いと申され、私と


しましても、殿の、ご命令なれば、仕方が無いと思っておるので、御座いますよ。」


「その様な話だったのですか、私は、あの前に日、夜遅く、漁師が少ないですがと言って持ってきました


ので、殿に、お勧めしたのが悪かったのですね、吉田様、申し訳、御座いませぬ、私は、何も、考えずに


おりました。」


「いゃ~、何も、源三郎殿が、悪いのでは御座らぬ、全て、運が悪かったので、其れに、殿の、お食事


は、全て、お毒見をして、お出しするのが、習わしで、殿の御膳は、何時も冷めて要るのは、私も、知っ


ております。


 でも、私も、正か、殿が、この様な処で、お食事をを頂くなどとは、考えておりませんので。」


「では、殿は、大変な怒り様では無かったのですか。」


「私も、覚悟は、致しておりましたが、殿は、余にも、少しは、豪華な食事より、温かい膳が所望したい


と、申され、実は、今朝も、此処で、御膳をお造りすると、その様な物では無い、皆と同じ物が欲しいの


じゃ、と申され、女中達も、困っておりましてね。」


「では、殿の御膳は。」


「源三郎殿がよろしければ、如何で、御座いますか、残り物とは言え。」


「私が、その様な食事を頂けるはずが、御座いませぬ。」


「う~ん、困ったなぁ~。」


「吉田様が、頂かれては、如何でしょうか。」


「源三郎殿、その様な恐ろしい事を申されるな。」


 吉田は、苦笑いをし、賄い処の女中達も、声は出さないが、目が笑っている。


「其れで、先程のお話しで、御座いますが。」


「私も、殿の、ご命令ですが、城下の魚屋の値段が分かりませぬので。」


「えっ、では、支払いは。」


「その時には、私の手からは離れており、勘定型より支払いされ、私は、知らないのですよ。」


「分かりました、私の方で、調べる事に、致します。


 では、魚屋の言い値で支払ったとしても、分からないのですね。」


「申し訳、御座いませぬが。」


 これは、勘定方だけの問題では無い、城下の魚屋が良い、悪いは別にして、魚屋の言い値で支払うと


は、一度、調査する必要が有る、同じ支払うので有れば、漁師に支払えば、漁師は喜ぶだろうと考えた、


だが、この話、最初の頃、家老が言っていた事を、殿様も、源三郎も、すっかり忘れていたので有る。


「源三郎殿、ですが、この話、私も、忘れておりましたが、以前、ご家老様からも申されましたが、今で


も、魚屋から買い求めているのです。」


「そうでしたねぇ~、私も、今、思い出しましたよ、ですが、その買い入れ価格はどの様になって要るの


でしょうか。」


「私も、詳しく分かりませぬが。」


「何れにしましても、一度、城下の魚屋の売値を調べる必要が有りそうですねぇ~。」


「其れは、お任せ致します。」


「分かりました、では、私は、大変、お忙しいところ、失礼致しました。」


 源三郎は、賄い処を出ると、作業用の大部屋に戻った。


 田中、鈴木、上田の三名が、農民達の名簿を作っている。


「やぁ~、ご苦労様です。」


「源三郎様。」


「名簿は、出来ましたでしょうか。」


「はい、殆ど完成しました。」


「其れは、良かったですねぇ~。」


「源三郎様、大工さん達の作業現場は、見られましたでしょうか。」


「いいえ、まだですが。」


「では、一度、見て頂きたいのです。」


「では、参りましょうか。」


 源三郎は、吉永が、原木を並べ換えた事を知らなかった。


「此処ですか、でも、原木が。」


「吉永様が、大工さんの指示で、同じ方向に並べ替えられたのです。」


「やはり、そうでしたか、吉永様も、大工さん達の意見を取り入れられたのですね。」


「はい、其れも、同じ様な太さの原木と、少し細い目の原木とは、同じ所では無く、別の所に並べられま


したので。」


「では、大工さん達も、仕事がしやすくなったのでは。」


「鈴木様、原木の皮が、取り除かれておりますが。」


「はい、其れも、大工さん達の指示だそうです。


 吉永様が、何か出来る事は無いかと申され、其れではと、皮むきされたと聞きました。」


「では、加工は、明日からと言う事になったのですね。」


「はい、その様です。」


「で、皆さんは。」


「今日は、お帰りになられ、明日の早朝、また、山に行かれるとの事でしたので。」


「分かりました、では、貴方方と、明日、この名簿を持って、各農村に向かいますので。」


「はい、承知、致しました。」


 源三郎も、今日は、早く帰る事にした。


 そして、明くる日の、まだ、辺りは、暗い時刻に家臣達が続々と集ま始めた。


 今度は、賄い処も、前日から、準備に入り、七つには全ての準備が終わった頃、家臣達が来た。


「さぁ~、皆様、朝餉の準備も終わっておりますので、食事が終わられますれば、私達が片付けますの


で、其れと、昼餉の準備も終わり、荷車に全て乗せて有りますので。」


「吉田殿、誠に、済まぬ。」


「いいえ、皆様の事を考えれば、我々のお役目は、大した事は、御座いませぬ。」


 家臣達は、食事を終えると、着替えも済ませ、七つ半には大手門を出立した。


 源三郎達は、明け六つに出立するものだと思い、明け六つの少し前に来ると、既に、全員が出立した後


だった。


「う~ん、これは、私の、大失態だ、皆様にお願いした、私が、遅れては何もならぬ。」


 源三郎は、後悔したが、全てが後の祭りで有る。


「源三郎。」


「殿、何故、この様な早い時刻に。」


「源三郎、余は、何も出来ぬが、せめて、皆が、出立する時にだけでもと思ったのじゃ、あの者達は、七


つ半には出立したぞ。」


「えっ、その様な早い時刻に。」


「まぁ~、良いではないか、お主も、今日は、別の所に参るのではないのか。」


「はい、一応、各農村の名簿が完成し、今日は、その名簿を農村に届ける事になっております。」


「そうか、で、お主達、朝餉は。」


「はい、ですが。」


「良いのじゃ、余も、まだじゃ、今から、賄い処に参るぞ。」


「えっ、はい。」


 源三郎と、田中達、三名は、殿様の後ろから賄い処に向かうので有る。


「のぉ~、源三郎、工事は、大丈夫なのか。」


 殿様も、工事の進み具合を知りたいのか。


「はい、昨日、洞窟に行きましたところ、農民さんが、二十人程、洞窟内で、岸壁作りの作業に入られて


おりました。」


「ほ~、農民達も動き出したと申すのか。」


「はい、この岸壁が完成致しますれば、大量の物質を運び入れる事も出来ますので。」


「では、工事も、一気に進むのか。」


「いいえ、その様には参りませぬ。」


「何故じゃ、何故に、工事が進まぬのじゃ。」


「はい、やはり、人手不足となりますので、私も、別の方法を考えておりまして。」


「何じゃ、別の方法とは。」


「はい、今から、農村に行くのですが、其れが、終わり次第、城下に入り、中川屋、伊勢屋、大川屋の三


名に相談する事を考えております。」


「中川屋達に、何の相談なのじゃ。」


「はい、今朝も、吉永様が先頭になられ、原木の受け取りに参られておられますが、その仕事を、城下の


者達に、お願いが出来ればと考えております。」


 源三郎は、新たな策を考えた、原木の受け取りを、城下の者達に換えると言うのだ、では、家臣達に


は、一体、何を。


「源三郎は、原木の受け取りを、家臣達では無く、城下の者達にさせると申すのか、じゃが、家臣達は、


如何するのじゃ。」


「はい、皆様には、大変、申し訳、無く思っておりますが、海岸の洞窟と、空井戸の掘削工事を本格的に


入って頂ければ、漁民も、農民も助かるのでは無いかと考えております。」


「そうか、農村の仕事も、漁村の仕事も、家臣達では出来ぬと。」


 殿様も、侍には、漁師や、農民の仕事は出来ないと、其れならば、一層の事、源三郎が、言う様に、空


井戸と、洞窟の掘削工事の方が、彼らも、納得するだろうと。


「はい、やはり、あの人達の仕事は簡単そうに見えましても、そう、簡単に出来るものでは、御座いませ


ぬので、其れならばと、考えたので、御座います。」


「う~ん、確かに、源三郎の申す事も分かる。」


「殿、其れに、農村では、取り入れも始まる頃で、御座いますので。」


「そうだったのぉ~、もう取り入れが、始まるのか、其れで先程、申した、城下の者達には、原木の運び


だけなのか。」


「はい、私は、城下の者達には、洞窟の存在は、まだ、知られたくは無いのです。」


「うん、余も、其れは、よ~く分かるぞ、城下の者達の中にも、幕府の密偵が要るやも知れぬと申すのだ


な。」


「はい、其れで、先程、申しました、中川屋達に相談し、原木を運ぶ人達を調査して欲しいと依頼するつ


もりなのです。」


「じゃがのぉ~、城下の者達に支払う様な金子は、一体、どの様に致すのじゃ。」


「はい、其れは、彼らに支払をさせますので、今まで、相当、悪どい商いで、蓄財しておりますので、支


払いには応じると、存じます。」


「だが、簡単に、応じると思うのか。」


「殿、其れは、私に、お任せ下さい。」


 殿様は、源三郎の事だ、中川屋達には、相当強気な言葉で、望むだろうと、話しの途中で賄い処に着


き、殿様と、源三郎達が食事に入った。


「のぉ~、源三郎、この工事、どの様な事態が起き様とも、必ずや、成し遂げて欲しいのじゃ。」


「殿、私の、一命に換えましても。」


 源三郎は、殿様も、本気で、洞窟の拡張と、空井戸までを貫通させ、幕府とは戦もせずに、領民だけで


も、助けたいと願って要るのだと、暫くして、殿様との朝餉も終わり。


「殿、では、私達は、急ぎますので。」


「そうだったのぉ~、済まぬが頼むぞ。」


「はい、では。」


 源三郎と、田中達の三名は急ぎ、東門から農村へと向かった。


「源三郎様、殿様は、本気の様で、御座いますねぇ~。」


「殿は、今までの、殿では無い、全ては、領民の為にと、願っておられます。」


 田中達、下級武士にとっては、殿様と、話す様な事は、今までは、全く無かった、だが、源三郎が進め


ている工事で三名が配下となり、殿様から直接話し掛けられる事も多くなった。


「其れで、先程の話しですが、貴方方も聞いて頂きたいのです。


 この話が、正式に決定すれば、名簿を作成して頂く事になりますので。」


「はい、承知、致しました。」


「其れで、その話が、終われば、三名で、城下の魚屋に寄り、魚の売価を調べて下さい。」


 三名は、魚の売価を調べ、一体、何に使うのか分からなかった。


「源三郎様、魚の売価を調べて、一体、どうされるのですか。」


「田中様、漁師達に支払う金子の目安にしたいのです。」


「はい、分かりました。」


「源三郎様、あの時の話しですね。」


「はい、その通りで、漁師は、魚の売価は知りませんので、これからは、定期的に城下で調査をお願いし


たいのです。」


「はい、承知、致しました。」


 その後、源三郎と、三名は、各農村を回り、名主に説明し、終わると、その足で、城下に入り、中川屋


と、伊勢屋を伴い、大川屋に入り、大川屋は、旅籠なので、部屋に入ると、直ぐ話を始めた。


「皆さん、大変、お忙しいところ、申し訳、有りません。


 実は、皆さんに、お願いが有りまして。」


 源三郎が、頼みに来ると言うのは、余程重要な話だと、三人は直ぐに分かり、その後、源三郎は、詳し


く説明し、終わると。


「源三郎様、お話しは、よ~く、分かりました、其れで、人数ですが。」


「はい、原木は、1千本以上有り、一回に運ぶ事が出来るのが、三十本程で、でも、其れは、間伐材でし


て、正確には、一体、何本が必要なのかも分かりませぬが、一回の往復で、百名は必要なのです。」


「百人ですか、其れで、原木運びですが、毎日なのですか。」


「いいえ、別に、毎日と言う訳では有りませんが。」


「中川屋さん、伊勢屋さん、源三郎様のお頼みでは、お断りも出来ません。


 其れに、我々を、頼って頂いたのは、大変、光栄なお話しですからねぇ~。」


「私も、同じで、お侍様が、その様なお役目には、少し無理と思いますので、我々が、何とかしなければ


なりませんよ。」


「伊勢屋さん、大急ぎで、探す事にしましょう、源三郎様、我々は、源三郎様を、命の恩人だと思ってお


りますので、源三郎様を、お助け出来るので有れば。」


「有難う、御座います、皆さんには、感謝致します。


 其れで、原木を運ぶ理由なのですが。」


「其れは、我々に、お任せ下さい、誰に聴かれても、納得出来る理由を付けますので。」


「其れは、助かります、ただ、原木を、お城に運び込みするだけですので、大変、難しいとは思います


が。」


「源三郎様、我々に、お任せ下さい、決して、源三郎様には、ご迷惑をお掛けする様な事は致しませんの


で。」


 源三郎は、改めて、中川屋達に頭を下げ、田中達も、同じ様下げると。


「源三郎様、その様な、頭をお上げ下さい。」


「いゃ~、本当に有り難い事です。」


「源三郎様、其れと、その人達には、我々が、金子を支払いますので、そちらの方の、ご心配は、御座い


ませんので。」


 中川屋達は、藩の財政が厳しい事は知って要る。


「本当に、申し訳、御座いませぬ。


 私は、何と、お礼をを申し上げてよいか、分かりませぬ。」


 中川屋達にすれば、源三郎は、命の恩人で有り、彼らが、密偵で有る事は、城下の者達は知らない。


「源三郎様、私達は、出来る限り、早く集めたいと思いますが、我々も、城下の人達だけに絞りますの


で、早急に名簿をお作りし、お届けに上がります。」


「分かりました、では、私は、まだ、行くところが有りますので。」


「源三郎様、この頃、げんたが、元気が無いのですが、出来ますれば、少しの。」


「はい、実は、今から、げんたさんの所に行く予定でしてね。」


「其れは、其れは、げんたも、喜びますよ。」


「では、申し訳、有りませんが。」


「はい、承知、致しました。」


 源三郎は、中川屋達に、礼をし、大川屋を出、一町先のげんたの店に向かうので有る。


「今から、げんたさんに、会いに行きますが、先日、潜水具を使われた時の感想を言って上げて欲しいの


です。」


「はい、承知しました、でも、あの潜水具ですが、其れは、もう大した物ですよ、私は、今でも、海の中


の様子を覚えておりますから。」


「そうだと、思いますよ、げんたさんの力作ですからねぇ~。」


「源三郎様、私は、あの様な潜水具が有れば、違った使い方も出来る様な気がするのですが。」


「違った、使い方ですか、例えば、どの様な使い方でしょうか。」


「私は、まだ、はっきりとは分からないのですが、ただ、その様に思っただけなのです。」


 これが、後々、大変な物が出来るとは、この時の、源三郎も、彼らも、考えもしなかった。


 話の途中で、げんたの店先に着き。


「げんたさんは、居られますか。」


「まぁ~、源三郎様、げんた、げんた、大変だよ、源三郎様が、お越しになられたよ。」


「えっ、あんちゃんが。」


 げんたは、飛んで来た。


「あんちゃん。」


「げんた、元気そうですねぇ~。」


「あれから、あんちゃんからは、何も言ってこないから、オレ~。」


 げんたは、相当、寂しかったのだろう。


「其れは、済まなかったですねぇ~、実はね。」


「まぁ~、源三郎様、どうぞ、入って下さい。」


「其れは、有難う。」


 源三郎が座ると。


「さぁ~、皆さんも、どうぞ。」


「はい、有難う、御座います、では、失礼します。」


 三人も座り。


「げんた、あの潜水具ですがね、本当に素晴らしいですよ、昨日だったのですか、海に行きましてね、試


しましてね。」


「うん。」


 げんたも、早く聞きたいのだろう、身体が自然と前に。


「あんちゃんが、使ったのか。」


「まぁ~、其れがね、この人達でしてね。」


「うん、其れで、どうだったんだ。」


「げんた殿、あの潜水具は、本当に素晴らしいですよ、私は、海の中で、魚が泳いでいる姿を初めて見ま


したよ、其れに、息も普通に出来ましたよ。」


「うん、そうかなぁ、あんちゃん、オレは、まだ、何かが足りないんだ、でも、今、其れが、分からない


んだ。」


「何か、足りない物でも有るのですか。」


「あんちゃんって本当に頭がいいのか、悪いのか、オレは、其れが分からないから、苦労してるんだぜ、


本当に分かってるのかなぁ~。」


 やっと、何時ものげんたに戻ったと。


「そうでしたねぇ~、私に、分かるはずがないですからねぇ~。」


 源三郎は、わざと、苦笑いをした。


「まぁ~、オレの頭の中を見ない限り、あんちゃんは、オレには勝て無いって事なのか。」


 げんたも、何故か、嬉しそうで、やはり久し振りに、源三郎と話が出来たのが良かったのだろう。


「では、げんた、頼みが有るんですがねぇ~。」


「えっ、またか、あんちゃんの頼みって、オレは、怖いよ、だって、あんちゃんは簡単に言うだけで、考


えるのは、オレなんだぜ、オレは、本当に困るんだ。」


 だが、げんたは、ニコッとして、何故か、源三郎の頼みを待っていたようだ。


「げんた、怒るなよ、すまんなぁ~、だけど、げんたに、作れない物は無いんだろう。」


「其れは、前の話しで、だって、あんちゃんは、何を、作れって言うのか、分からないんだからなぁ~、


本当に。」


「いゃ~、今度は、そんなに難しい事は無いんだ。」


「ふ~んだ、何時も、あんちゃんは、そんな旨い事言って、誤魔化すんだからなぁ~、でも、まぁ~、仕


方無いか、で、あんちゃん、今度は、一体、何を作らせるつもりなんだ。」


「其れなんですがね、同じ潜水具を、後、二個か、三個作って欲しいんだ。」


「え~、三個も、だけど、硝子が要るんだぜ。」


「硝子か、う~ん。」


 源三郎は、少し考え。


「分かったよ、あんちゃんが、手配するからね。」


「でも、直ぐには、作れないんだぜ。」


「其れは、分かってますよ、其れで、後、何が要るんですか。」


「う~ん、そうだなぁ~、油紙が要るんだ。」


「分かりましたよ、硝子と、油紙ですね。」


「うん、まぁ~、オレは、何でも作るけれど、今度はなぁ~、あんちゃんが、驚いて、腰を抜かす様な物


を作るからなぁ~。」


「えっ、私が腰を抜かす様な物をですか。」


「まぁ~、其れは、秘密なんだ。」


「げんた殿、私は、先程、源三郎様にも話しをしていたのですがね、あの潜水具ですが、何か、別の物が


出来ないかと考えて要るのですが。」


「何だ、その別の物って、一体、どんな物なんだ。」


「私にも、其れが、分からないのですが、ただ、ふと、その様に思っただけで、一体、どの様な物かと聞


かれましても。」


「う~ん、こりゃ~、あんちゃんの注文よりも難しいよ、だって、本人が分からないんだけから。」


 だが、げんたは、嬉しそうで有る。


「う~ん。」


 げんたは、突然、腕組みをし、考え始めた。


「う~ん。」


「げんた、今から、そんなに考え込むと身体に悪いよ。」


「えっ、何。」


「源三郎様、げんたが、あんな格好になると、何も、聞こえないですよ。」


「う~ん。」


「げんた。」


 全く、返事が無い、げんたが、腕組みをし、考え出すと、何も聞こえないのだ、それ程、げんたは集中


して考え始めるので有る。


「お母さん、では、私は、一度、城に戻りますので。」


 源三郎達は、城に戻って行った。


 そして、三日後の夕刻近く、中川屋、伊勢屋、大川屋の三人が、源三郎を訪れた。


「さぁ~、皆さん、どうぞ、この度は、皆さんに無理なお願いを致しまして、誠に、申し訳、御座いませ


ん。」


「いいえ、その様な事は御座いませせん。


 源三郎様、私達に出来る事ならば、どの様な事でも、致しますので、その様に気にされる必要は、御座


いませんので。」


「いゃ~、其れでも、私は。」


「源三郎様、早速で、御座いますが、百人以上が集まりましたので、その、ご報告にと。」


「えっ、本当ですか、其れは、大助かりですよ、其れで、その人達は。」


「はい、城下で、仕事を探しておりました者達で、一応、名前と、何処に住んでいるのかだけは、確かめ


ましたので。」


「そうですか、分かりました、其れで、何時から来て頂けるのでしょうか。」


「はい、彼らには、一応、明日の明け六つには、お城の大手門前に集まる様にとは、伝えております。」


「そうですか、まぁ~、原木を運ぶだけですので、さほど、難しくは無いと思いますが。」


「はい、我々も、その様に伝えております。」


「源三郎様、これが、その名簿で、御座います。」


 源三郎は、名簿の中を、確かめ様とはせず。


「源三郎様、中の名前を確認されたされなくても宜しいのでしょうか。」


「はい、私は、貴方方を信頼致しておりますので、別に、見る必要は有りませんよ。」


「源三郎様、それ程、我々を、信頼して頂いて要るのですか。」


「勿論ですよ、だって、そうでしょう、信用出来ない人に、大切な仕事を、お願いする事などは出来ませ


んからねぇ~。」


 源三郎は、笑っているが、中川屋達は、恐縮し、何も、言えない。


「源三郎様、では、我々は、これで、失礼を。」


「原木置き場を見て行かれますか。」


「はい、是非とも、拝見させて頂きます。」


 源三郎は、中川屋達を、原木置き場と、大工の作業現場を見せた。


「これだけ、太い原木を運ぶとなれば、相当な日数が掛かると思いますので。」


「う~ん、これは、大変ですねぇ~、其れで、あの人達は。」


「大工さん達ですよ、簡単な加工を、お願いしておりますので。」


「あの人達なら、我々も、知っておりますよ。」


「そうですか。」


 源三郎は、先程から、芝居をしている様にも見えるが、一体、何処までが、本当で、何処からが芝居な


のかも、田中達には、分からないので有る。


「では、我々は、これで、失礼しますので。」


 中川屋達は、帰って行った。


「伊勢屋さん、源三郎様にあの様に言われますと、我々も、下手な人達を。」


「大川屋さん、これは、今日中にも、全員に伝えて置く必要が有りますねぇ~。」


「ええ、私も、思いましたよ、これで、送った者達が、下手な小細工でもしようものなら、我々の、命は


有りませんよ。」


「我々どころか、その者達も、正かとは思いますが、その様な事にでもなれば。」


 中川屋達は、何としてでも、物騒ぎだけは起こさない様にと願うばかりで、三人が城下に戻ると、名簿


の写しを頼りに、一人ひとりと話して行く、だが、その中で、二人の者が言った名簿に載って有る所に行


くと、その様な人物は居らず、家も無かった、三人は大慌てで、城に向かい、源三郎に、話し、全て任せ


て帰った。

 

そして、明くる日の早朝、七つ半には全員が揃い、源三郎は、名前を読み上げ、顔を確認した。


 その二人は、最後に読み上げ、源三郎は、何も知らぬ顔で、吉永も来ている。


「吉永様、あの柱の所に居る、二人ですが、家も無く、付近の人達も見た事も無いそうです。」


「源三郎殿、拙者が見て置きますので、多分、今、城内を見回しておりますので、幕府の密偵に、間違い


は無いと思います。」


「他の者達は、全員、家も有ったと聞いておりますので。」


「分かりました、時によっては。」


「お任せしますので。」


 明け六つ、全員が出発した、その二人は、山に登るまでも、お互い近くのおり、何やら話をし、だが、


他の者達は、誰とでも話し合っている。


 家臣達の時とは違い、城下の者達は、金目当てなので、動きも早く、昼食も直ぐ済ませ、夕刻前、昼の


七つには、城に着き、早速、原木を降ろし始めた、だが、あの二人だけは、辺りをきょろきょろと見、何


やら話し合って要る。


 吉永は、さりげなく近付き。


「お主達は、いずこから、来られたのか。」


「はい。」


 返事は、したが、答える事が出来ず、懐に手を入れ、短刀を出したが、その時、二人は、あっと言う間


に切り捨てられた。


「えっ、一体、何が有ったんだ。」


「あっ、この二人、ご城下の者じゃ無いぞ。」


 やはり、密偵だ。


「あの~、お侍様、一体、何が有ったんですか。」


「いゃ~、何も、心配する事は無いですよ、其れよりも、皆さん、今、此処で見た事は、誰にも言わない


様にね、この二人は、幕府の密偵ですから。」


「えっ、やっぱりねぇ~、朝から、オレ達とは、何も、話す事が無かったんですよ。」


 幕府の密偵は、この二人だけなのか、其れは、今、直ぐには分からないが、其処へ、源三郎が来た。


「吉永様、やはりでしたか。」


「はい、原木を運ぶ仕事に、短刀は必要は有りませんので。」


 吉永の機転で、事は、一応、終わり。


「あの~、じゃ~、オレ達も、バッサリとやられるんですか。」


「皆さんは、何も、心配される事は有りませんよ、其れで、お願いですが、明日も、原木を運ぶのです


が、宜しいでしょうか。」


「はい、オレは、やりますよ、だって、仕事が有るんですから。」


「お侍様、オレもですよ、其れに、おまんまもね。」


 この者達は、何らかの理由で仕事に就けない、其れならばと、源三郎は、次の策も考えた。


 その最中でも、二人の死体は、まだ、運ばれずに有る。


 その時。


「あっ、お前達は。」


「あっ、親方。」


 何と、大工達の元仲間が、原木運びに加わっていたので、親方は驚き。


「何で、お前が、此処にいるんだ。」


「親方、オレ達、あれから、まともに、食べる事も出来なかったんだけど、伊勢屋さんから、厳しいが仕


事が有るって聞いて、其れで。」


「源三郎様、この中に、二十人程、元大工が要るんです。」


「えっ、其れは、本当ですか。」


「はい、でも、この野郎達は。」


「親方、済まなかったです、許して下さい。」


「親方さんでしたか、大変、失礼しました。」


「源三郎様、わしは、そんな事は、どうでもいいんですよ、ただ、この野郎達が。」


「親方、少し、詳しく話しを聴かせて下さい。」


「はい、源三郎様、この野郎達の、腕はいいんですが、其れが、稼いだ金子を持って、直ぐ、酒を飲みに


行くんですよ、いゃ~、わしは、酒を飲む事が悪いとは思って無いんですが、ただ、この野郎達は、飲ん


だ、明くる日は、仕事場に来ないんです。」


「う~ん、貴方方、其れは、本当なのですか。」


「はい、オレ達は、酒が大好きで、少し飲むと、直ぐ、羽目を外して、目が覚めると、殆どが昼頃になっ


てるんです。」


「其れで、親方が、今後、二度と来るなって。」


「親方、其れは、一度くらいなのですか。」


「いゃ~、飛んでも無いですよ、わしが、日当を渡すと、殆ど、明くる日は、来ませんでね、わしも、


何度も庇ったんですがね。」


「では、今日、渡される日当も、お酒に化けるのですか。」


 二十人程の、元大工達は、何も言えず、下を向いたままで有る。


「源三郎様、この野郎達の腕は、このわしが、一番、良く知ってるんですが、まぁ~、無類の酒好きなん


で、多分、明日は来ないと思ってるんですが。」


 源三郎は、考えて要る、二十人の腕のいい大工が要れば、加工は進むかも知れないと。


「いゃ~、親方、今日は、絶対に飲みには行かないですよ。」


「そんな話、一体、何処の誰が信用するか、この言葉で、今まで、何度、このわしを騙したんだえ~。」


「本当だ、今日、飲んで、明日、来れなかったら、もう、何処にも仕事が無いんだ。」


「そんな事、わしは、知らないよ、全部、お前達が悪いんだから。」


「親方、相談ですが、親方が、今、言われたましたが、この人達の腕は良いと。」


「はい、其れは、わしが保証しますので、えっ、源三郎様、正か、この野郎達を、其れは、駄目ですよ、


絶対に駄目ですって、だって、野郎達は。」


「まぁ~、まぁ~、親方、其れで、貴方方に聞きますが、私の頼みを聴いて頂けますか。」


「はい、もう、仕事なら、何でも。」


「其れでは、明日から、この原木の加工作業に来て頂けますか。」


「えっ、お侍様、オレ達に、この仕事をさせて頂けるんですか。」


「はい、その通りですよ。」


「源三郎様、この野郎達は、平気で、約束を破りますよ。」


「では、貴方方に聞きますが、私との約束は守れますか。」


「はい、もう、絶対に守りますので。」


「但し、私との約束を破れば、どの様になるか、ご存知でしょうか。」


「打ち首ですか。」


「いいえ、私は、人を殺す事は、好きでは有りませんのでね。」


 元大工達は、地面の死体を見ているので、内心ほっとしている。


「ですが、私は、約束を破った人達は、許しませんからね、其れだけは、覚悟して下さいよ。」


 源三郎の大芝居が始まった、源三郎は、幕府の密偵の死体を見ながら、にやりとして。


「えっ、絶対に許さないって、でも、人は殺さないって。」


「はい、ですが、私はね、とても、残酷な人間ですからね、今、此処に有る様に、簡単に死ぬ様な事はし


ませませんからね。」


 元大工達もだが、今日、原木運びに来た者達の顔色が変わってきた。


「源三郎様、簡単に死ねないって、一体。」


「はい、簡単な事でしてね、有る場所に連れて行き、その場で、両手、両足を切断するだけででしてね、


まぁ~。」


 またも、にやりとし、男達の顔色が、次第に悪くなって来た。


「えっ、じゃ~、歩く事も出来ないって事は。」


「はい、後は、その森の主に任せますよ。」


「森の主って、正か、狼では。」


「まぁ~、ねぇ~、狼も、時には人間の肉も欲しいでしょうからねぇ~。」


 何と、恐ろしい事を平然として、源三郎は話し、男達の中には、身体が震える者も居り。


「私もねぇ~、お酒は頂きますが、明くる日の仕事を考えれば、深酒はしませんよ、そう言えば、忘れて


おりましたよ、私も、随分と長い事、お酒を頂いておりませんでしたねぇ~。」


「あの~、お侍様。」


「はい、何ですか、そうでした、私の目からは逃げる事は、不可能な事だと思って下さいね、私との約束


を破った人は、草の根分けてでも探し出し、狼の餌食に出しますのでね。」


 二十人程の大工達は、源三郎の事を知らないので、恐れ、身体が震えている。


「如何ですか、お酒の誘惑に負けて、狼の餌食になるのが良いか、その誘惑に勝って、此処で長い事、仕


事をするのが良いのか、貴方方で決めて下さい。


 この話は、他の人達も同様ですよ、明日の朝、お酒の匂いがする人は覚悟する事です。」


 源三郎は、薄笑いをする、これが、源三郎の大芝居だとは、誰も気付かない。


 だが、源三郎は、次に何をするのかと、吉永は、考えるが、其れが、全く、分からない。


「其れと、この死体ですが、荷車に乗せ、海岸に行き、岩場の上に放置して欲しいのですが。」


「其れを、オレ達がですか。」


「はい、そうですよ、岩場の上に置いて置きますとね、まぁ~、その話は止めておきましょうね、其れよ


りも、何時までも、此処に置いて置きますと、何も知らない人達が、何と言うか分かりませんのでね、早


く、お願いしますよ。」


「オレ達が運びますので。」


 原木運びの男達数人が荷車に乗せ。


「あ~、其れと、皆さんが、これから先も働きたいので有れば、当分の間、そうですねぇ~、二年から、


三年は働く事が出来ますので、其れに、食事も付けますのでね。」


「お侍様、オレは、続けて働かせて貰いたいんですが。」


「分かりましたよ、まぁ~、今日は、ゆっくりと考えて、明日の朝、此処に来られた人達は、働く事が出


来ます、但し、お酒の匂いがする人達は、駄目になりますからねぇ~、では、皆さん、お願いします。」


「今、源三郎殿が、申された話しは本当ですから、後は、皆さんで判断して下さい。


 其れと、その死体ですが、東門を出て、海に向かって下さい、海が見えると、大きな岩場が有りますの


で、少し高いですが、其処まで、運び、死体を置くだけですので。」


 吉永も知って要る、あの場所は、鳥も来る、他の生き物も。


「あの~。」


「何ですか。」


「はい、後で、みんなと相談してもいいですか。」


「はい、其れは、勿論、よろしいですよ。」


「有難う、御座います。」


「では、皆さん、よろしく、お願いします。」


 源三郎は、誰にも、家に帰れとは言わず、作業部屋に入った。


「源三郎殿。」


「吉永様、何か。」


「少し、お聞きしたいのですが。」


 吉永の話は、家臣達の事だと思った。


「先程、申されました、仕事の話ですが。」


「はい、其れは、簡単な話しでしてね、今日から、原木運びを代わりましたが、ご家中の皆様には、暫く


の間と申しますか、原木運びが終わるまで、洞窟内での仕事に就いて頂きたいのです。」


「では、今、洞窟内で、掘削工事に入っている漁師達は。」


「はい、今、農村の人達が、岸壁作りに入られて要るのですが、農村では、そろそろ、稲刈りの時期に入


りますので、農村の人達と交代し、原木運びが終われば、彼らを、洞窟内の掘削工事に入らせようと考え


て要るのです。」


「よ~く、分かりました、では、拙者が、他の家臣に伝えても宜しいでしょうか。」


「はい、その様にして頂ければ、私も、大変、助かりますので、ご家中の皆様の洞窟内での仕事は、それ


程、長くは無いと思っております。」

 

吉永は、源三郎と言う人物は、次々と考え、早く、洞窟から、この城までを貫通させたいのだと。


「源三郎殿は、先程の者達には、数年間は働く事が出来ると、申されましたが。」


「はい、洞窟から、城までは、早くて、二年から三年は掛かると思って要るのです。」


「そうでしたか、私は、他に、まだ、何か有ると思いましたので。」


「では、宜しく、お願いします。」


 吉永は、部屋を出、考えた、次に、何を考えて要るのか知りたかったのだと、だが、源三郎は、今は、


誰にも話すつもりは無い。


「あの~、源三郎様、宜しいでしょうか。」


「あ~、親方ですか、何か、ご用事でしょうか。」


「はい、今、あの野郎達が、話し合いをしていますが、源三郎様は、本当に、奴らを、使われるのでしょ


うか。」


「はい、私は、そのつもりですよ。」


「ですが、奴らは、酒好きで。」


「親方、私ねぇ~、あの人達、全員が約束を守ると思いますよ。」


「でも、源三郎様は、約束を破ったら。」


「まぁ~、見てて下さいよ、あの人達は、仕事が大好きなのです。


 私もね、別に、お酒は駄目だとは思っておりませんのでね、私に、任せて、親方は、あの人達を上手に


使って下さい。」


「はい、有り難い、お話しで、わしは、何と、お礼を言って良いのか分かりません。」


 その時、二十人程の元大工達が。


「あの~、お侍様。」


「まぁ~、皆さん、入って下さいよ。」


大工達は、何かを恐れている、だが、仕事が出来、食事も付くとなれば、これ程、有り難い話しは無い。


「さぁ~、皆さん、顔を上げて、お話し聴きましょうか。」


「はい、オレ達は、今まで、何度も、親方との約束を破り、其れが、原因で二度と来るなって言われ、こ


の何十日間、まともな物も食べる事が出来なかったんです。」


「其れで、今回、原木運びに来られたのですか。」


「はい、その通りで。」


「源三郎様、この野郎達は、今まで、わしもですが、仲間にも、何度も迷惑を掛けたんです。」


「親方、本当に、済まなかったです、でも、今度は、本気なんです。


 今日、あのおむすびを食べて、初めて気付いたんです、仕事を真面目にすれば、おまんまが食べれるっ


て、其れに、あんなにおむすびが美味しいとは、今まで、気付かなったんです。」


「分かりましたが、其れで、皆さんは、これから先、どの様にされるのですか。」


「はい、明日からは、いや、今日から、心を入れ替え、真面目に働きます。」


「仮にですよ、明日は、休みにして下さいと、私が、言いましたら、今日の夜は、お酒を飲まれるのでし


ょうか。」


「お侍様、親方、オレ達は、さっきから話をしてたんですが、お酒は大好きですが、其れよりも、おまん


まの方が大事だって分かったんです。


 其れで、今から、家に帰って、大工道具を持って来たいんですが。」


「大工道具を持って来られて、一体、何をされるのですか。」


 源三郎は、簡単に考えた、この大工達は、大工道具を持って来て、明日からの為に、道具の手入れをす


るのだろうと。


「はい、道具の手入れを、此処でさせて頂きたいんですが、駄目でしょうか。」


 彼らも、やっと本気になったのだろう、だが。


「お前達は、一体、何を考えて要るんだ、此処は、お城なんだぞ。」


「まぁ~、まぁ~、親方、其れで、皆さんは、道具の手入れだと言われましたが、大手門も、他の門も夜


になると、全て閉まるのですよ。」


「はい、其れも、分かってますので、オレ達は、道具の手入れが終われば、家に帰りますので。」


「其れで、その手入れですが、どれ程、掛かるのですか。」


 源三郎は、この場所で、道具の手入れをさせても良いと思った。


「はい、でも、暫く使っていませんので。」


「分かりました、では、此処で、手入れを行なって下さい、但しですよ、この部屋を出る事は出来ません


よ、お城と言うのは、夜中でも、誰かが見回りますので、その時、少しでも怪しい者が居れば、その場


で、切り殺されますからね、分かりましたね。」


「はい、親方、信じて下さい、今度は本気なんで。」


「源三郎様、わしが、全ての責任を持ちますので、何とか、お願いします。」


 親方は、土下座し、頼み込んだ。


「分かりました、皆さん、親方の顔を潰しては駄目ですよ、では、今から道具を取りに帰って頂いても宜


しいですよ、門番には、出る時に話をして下さいね。」


「はい、お侍様、本当に、有難う御座います、親方、有難う御座います、じゃ~、オレ達、大急ぎで、帰


ってきますので。」


「はい、では、宜しく、頼みましたよ。」


 源三郎は、にこりとし、二十人程の大工達は、大手門を出る時、門番に説明し、喜びは爆発させ、走っ


て帰って行った。


「源三郎殿、よろしいでしょうか。」


「吉永様。」


「明日から人数が減りますが、先程から、彼らの話を聴いておりますと、仕事が有り、食事も頂けるので


有れば、何年でも働きたいと、其れに、今は、金子の事などは考えておりませんねぇ~。」


「そうですねぇ~、其れでは、明日から本格的に工事が再開出来るとは思いますかねぇ~。」


「其れですが、先程、皆に伝えましたところ、全員の了解を得ましたので。」


「吉永様、有難う御座います、私も、大助かりです。」


「源三郎殿、拙者に出来る事ならば、何なりと、申し付けて下さい。


 全てを、源三郎殿が、なされるのは、大変で御座いますので。」


「はい、宜しく、お願いします、私は、明日、朝、行くところが、御座いますので、後の事は、宜しく、


お願い、申し上げます。」


 源三郎は、一体、何処に行くのだろうか。


「分かりましたが、洞窟の方は。」


「はい、漁師の元太さんの指示で、その時、多分、農民さんが来られて要ると思いますが、取り入れが終


われば、暫くはのんびりとする様に伝えて下さい。」


「分かりました、では、拙者は、明日、洞窟に向かえば宜しいのですね。」


「はい、元太さんには、吉永様から、お話し下されば、分かると思いますので、ご無理をお願い申します


が。」


 吉永は、海岸の洞窟は初めてなので、少し、不安も有るが、源三郎が、明日の予定次第では、今後の動


きも変わって来る。


「あの~、お侍様。」


 原木を運んだ男達、十数人が来た。


「はい、何か、ご用事でも。」


「はい、さっき、お侍様が言われた仕事の話なんですが。」


「はい、では、お聞きしましょうか、まぁ~、座って下さい。」


「はい。」


 男達が座ると。


「お侍様、オレ達は、ご城下で、日銭だけが頼りだったんですが、今日は、今までの倍以上頂き、有り難


い事なんです。」


「そうですか、其れは、良かったですねぇ~、其れで。」


「はい、オレ達は、ご城下では、大酒飲みで、喧嘩はする、博打はするで、本当の事を言いますと、みん


なの嫌われ者なんですが、其れでも、仕事をさせて貰えるんですか。」


「私は、先程、言ったと思いますが、私との約束を破れば、私は、鬼以上に恐ろしいですよ。」


「はい、其れは、さっきも聞きましたが、オレ達が、本気で働けば、おまんまは頂けるんで。」


「はい、其れは、私が、約束しますよ、ただねぇ~、金子がねぇ~。」


「お侍様、オレ達は、金子が欲しいから、聴いたんじゃないんですよ、金子よりも、仕事をさせて頂き、


食べ物が有れば、其れで、何の文句も無いんですよ。」


「ですが、働かれた以上は、多少の金子は必要だと、私は、思うのですがねぇ~。」


「そりゃ~、有る事に越した事は無いんですが、金子を頂いて、ご城下に行けば、全部、使いますので、


其れだったら、初めから無い方がいいんですよ。」


「そうですか、其れで、他には。」


「いえ、其れだけですよ、オレ達、みんなで話し合って、これからは、真面目に仕事をするって決めたん


です。」


「其れは、私としても、大変、嬉しいお話しですねぇ~、では、原木運びが終われば、直ぐ、次の仕事


が、皆さんを待っておりますが、宜しいでしょうか。」


「えっ、本当ですか。」


「はい、ただ、この現場は、まぁ~、その時に、お話しを致しますがね、仕事が大変、厳しいので、皆さ


んの身体が心配になりますのでねぇ~。」


「お侍様、そんなの関係無いですよ、なぁ~、みんな。」


 一緒に来た、仲間達も頷いて要る。


「食事と、そうですねぇ~、住まいを先に作りましょうかねぇ~。」


「えっ、オレ達が、住める所って、じゃ~、今は。」


「はい、何も無いですよ、大工さんにお願いしますので。」


「わぁ~、こりゃ~、有り難いですよ、本当の事を言いますとね、オレ達が、住んでる長屋なんですが、


家賃が溜まってるんで、早く出て行けって言われてるんです。」


 この男達は、仕事を望んで要る、其れと、食事が有ればいいのだと、だが、本心なのだろうか、この男


達が洞窟の掘削工事に入る事が出来れば、農民や、漁民、其れに、家臣が工事に入る必要も無くなり、源


三郎は、何としても彼らに仕事を与えたいと思うので有る。


「じゃ~、皆さんは、長屋に住んでおられるが、家賃を払って無いのですか。」


「はい、でも、払いたいんですが、仕事も無かったので、其れに、今の長屋を出されたら、オレ達


は眠る所も無いんです。」


 男達は、何としても仕事が欲しいと、必死で、其れが、源三郎にとっては、好都合で有る。


 更に、全員が、独り身だとなれば、海辺に長屋を建てれば済むので有る。


「では、早く、原木運びを終え、少しの金子でも渡せば、気持ち良く長屋を出る事が出来るますかねぇ


~。」


「はい、大家さんも、少しでも入れば、文句は無いと思いますので。」


「では、明日からの原木運びは任せて宜しいのですね。」


「はい、オレ達は、必死で働きますので。」


「では、明日からも、皆さん、宜しく、お願いします。」


「はい、有難う、御座います。」


 源三郎は、思い掛けなかった、全員が、独り身ならば、長い期間働く事が出来る。


 この時、源三郎の頭の中では、新たな計画が芽生え始めたので有る。


「吉永様、私が、考えておりました以上、前に進みますよ。」


 だが、吉永は、どの様な意味なのかも全く、分からないので有る。


「ですが、正か、全員が独り身とは。」


「ええ、其れで、私も、他の事まで考える事が出来ましたよ。」


 そして、明くる日の明け、四つ半には、原木の受け取りに、九十人程が出発した。


 今日からは、源三郎を始め、家臣達も一緒には行かず、彼らだけが向かい、その直後には、東門から、


百人の家臣達が、海岸の洞窟を目指し出立した。


「源三郎。」


 振り返ると、殿様が居た。


「殿、お早いですが、何か、御座いましたでしょうか。」


「いや、何も、だが、今日の動きを見ておると、良い方向に向かった様じゃのぉ~。」


「はい、昨日は、思い掛けなかった事が御座いましたが、其れが、結果的に良い方向へと。」


「うん、その様じゃが、あの原木を運んでおる者達じゃが、原木運びが終われば、次の策も考えておると


見たが。」


「はい、彼らを、少し脅かしておりますので、原木運びが終わりますと、洞窟の掘削工事に移したいと考


えておりますが。」


「やはり、そうなのか、で、源三郎は。」


「はい、今から、伊勢屋と、中川屋に向かうところで御座います。」


「まぁ~、お前の事じゃ、心配はしておらぬが、余り、急ぐでないぞ。」


「はい、心得ております、では、私は。」


「うん、頼むぞ。」


 源三郎は、城下の中川屋、伊勢屋に、一体、何用が有るのだ、早朝と言う事も有り、城下はまだ


静かで、だが、源三郎は、急いだ、最初は、中川屋だが、まだ、表の木戸は閉まっている。


 源三郎は、木戸を、二~三回叩くと、丁稚が顔を出し。


「朝、早くに、誠に、申し訳、御座らぬ、源三郎と申しますが、ご主人は。」


「はい。」


 丁稚は、大慌てで。


「旦那様、大変で御座います、表に、源三郎様と言われる、お侍様が。」


「えっ、何ですか、こんな早い時刻に。」


 店主は、大急ぎで、木戸から出て来た。


「源三郎様、一体、如何されましたのでしょうか、さぁ~、お入り下さい。」


 店主も、正か、源三郎が、この様な早朝に来るとは思って無かったので有る。


「番頭さんを、大至急呼んで下さい。」


「はい。」


 丁稚は、大急ぎで、番頭を呼びに行った。


「源三郎様、何か、御座いましたのですか、私も、正か、この様な早朝にと思いましたので。」


「誠に、申し訳無いです、実は。」


 源三郎は、伊勢屋達が手配した男達の話しをした。


「その様な事が有ったのですか、私も、伊勢屋さんも、大川屋さんも、あれから、少し心配になり、


これから、一体、どうしたものかと相談をしておりましたので。」


「いゃ~、あの人達は、まぁ~、と言っては何ですが、今日からは、心を入れ替え、一生懸命仕事をする


と約束して頂きましてね、私としましても、大変、助かっているのです。」


「其れを、聴きまして、私も、一安心で、御座います。


 其れで、今日は、一体、何を。」


「うん、其れが、大変、申し上げにくいのですが、彼らに食事を出すと言ってしまいましてね。」


「源三郎様、分かりましたよ、其れで、大急ぎで、来られたのですか。」


「はい、誠に、申し訳有りません。」


「其れで、今、何人が。」


「はい、今日からは、急に変更になり、洞窟の掘削工事には、百名の家臣が。」


「えっ、百人の、お侍様がですか。」


「はい、原木運びが終わるまでなのですが。」


「では、原木運びは。」


「はい、二人は、もう、おりませんが、残りは、全員、おられますので。」


「えっ、二人は、もういないって事は。」


「はい、その日の内に。」


 源三郎は、手真似をすると。


「本当ですか。」


「はい、皆様の前でね。」


 店主は、正か、幕府の密偵が潜んで要るとは考えもしなかったのか、驚いて要る。


「旦那様。」


「番頭さん、入って下さい。」


 番頭も、正か、早朝に、源三郎が、来るとは思わなかったのか、驚いている。


「番頭さん、あの二人は、やはり。」


 番頭も頷いたが。


「あの二人は、もう、この世の中にはおりませんので。」


「えっ。」


 番頭は、其れ以上、声が出なかった。


「番頭さん、お城に、う~ん、五俵と、漁師さん所にも五俵を、大至急届けて下さい。」


「はい。」


 番頭は、何も聴かず、返事だけし。


「源三郎様、では、これからは、定期的に届けさせて頂きます。」


「中川屋さん、本当に申し無い、殿も、全てご存知なので。」


「源三郎様、もう、そろそろ、稲刈りの時期ですので、少し遠くに行き、大量に買い付けをと思っており


まして。」


「其れは、有り難い事です。」


「では、伊勢屋さん、にも行かれるのですか。」


「はい、何分にも、城中には乾物類が有りませんので。」


「左様で、御座いますか、ですが、源三郎様も大変だとは思いますが、お身体だけはお気を付けて下さい


ませ。」


「有難う、御座います、では、私は。」


「はい、承知、致しました、番頭さん、頼みましたよ。」


「はい、直ぐに。」


 源三郎は、中川屋を出ると、その足で、伊勢屋に向かい。


「伊勢屋さん、源三郎です。」


「は~い、直ぐに。」


 此処でも、丁稚は、お慌てで、店主を呼びに行った。


「源三郎様、この様な早い時刻に、さぁ~、お上がり下さいませ。」


 店主は、番頭を呼び。


「伊勢屋さん、この様な早朝に、申し訳有りません。」


「一体、如何されたのでしょうか。」


「ええ、実は。」


 源三郎は、中川屋と同じ話をすると。


「え~、では、あの二人は。」


「はい、その通りで、其れで、直ぐに。」


 此処でも、手真似をすると。


「正か、お城の中で、其れも、みんなの前で、御座いますか。」


「はい、少しは、皆さんも驚かれた思いますがねぇ~。」


「いゃ~、少し処では無いと、其れよりも、何か、有ったのですか。」


「はい、其れで。」


 源三郎は、中川屋に話した同じ内容を話すと。


「源三郎様、分かりました、ご用意出来る物を直ぐ、お届けしますので。」


「いゃ~、誠に、申し訳有りません。」


「其れよりも、私は、打ち首を覚悟致しております、全て、私の責任ですので。」


「其れは、もう済みましたのでね、心配は有りませんよ。」


「左様で、御座いますか、では、番頭に、直ぐ、お届けさせますので、後、何か必要な物、そうでした、


食器は、私から、大川屋さんに伝えておきますので。」


「別に、古い物でも宜しいので、お願いします。」


「はい、直ぐに、其れと、私達は、早急に出向き、乾物と、魚介類の干物を仕入れに行きますので。」


「申し訳、有りませんが、宜しくお願いします。」


「いいえ、私は、二度も、命を助けて頂いたのですから、お安い、ご用で、御座いますよ。」


「伊勢屋さんから、その様に言って頂ければ、私も、少しは、楽になりますよ。」


 源三郎は、話が終わると城に戻って行った。


 一方で、高い山に、原木を受け取りを行った者達は。


「いゃ~、あの時は、本当に恐ろしかったよ、だって、行き成りだからなぁ~。」


「そうだよ、オレは、日頃、怖いもの無いって、言ってたが、あれは、本当に恐ろしかったぜ。」


「うん、だけど、あのお侍様は、何て、名前だったかなぁ~。」


「あの、お若い、お侍様は、源三郎様って言って、ご家老様の。」


「えっ、じゃ~、オレ達の素性は。」


「あ~、全部、知っておられるそうだよ。」


「だけど、源三郎様って、お若いのに。」


「まぁ~、其処が、オレ達と違うところなんだなぁ~。」


「なぁ~んだ、お前、知って要るのか。」


「オレが、知る訳が無いだろうよ、伊勢屋の旦那さんが言ってたんだ、あのお方を敵に回すと、恐ろしい


事になるって。」


「其れが、あの時の、バッサリなのか。」


「うん、そうだよ、だけど、源三郎様が、言ってられたよ、オレ達が、本気で仕事をするなら、まだ、当


分の間は、仕事が有るって。」


「そうだよ、だって、オレなんか、此処に来るまでに殆ど、食べ物がなんか。」


 彼らは、やはり、吉永が切り捨てた、二人の密偵の事を思い出していたのか、其れとも、仕事が有り、


食事も出ると言う話に載って来たのか、其れは、別として、原木運びが終わると、次も仕事が有る事に間


違いは無いのだと。


 その頃、海岸に向かった百名の家臣達はと言うと。


「なぁ~、一体、何が有ったのだ、急に海岸に行けとは。」


「なぁ~んだ、お主、聴いて無かったのか。」


「いゃ~、丁度、他の用事が有って、戻って来ると、明日からは海へ行けとだけなのだ。」


「そうか、実はなぁ~、昨日、吉永殿が来られ、原木運びは、城下の者達にさせるので、家臣は、洞窟へ


行き、掘削工事に入ってくれと。」


「えっ、我々が、洞窟に入るのか。」


「うん、そうなんだ、農民がそろそろ、稲刈りの時期に入るので、来られないって。」


「では、稲刈りが終われば、また、農民は戻って来るのか。」


「いゃ~、其れは、知らないが、まぁ~、何れにしても長い間では無いって話だ。」


 家臣達も、少し戸惑いも有るが、其れも、原木運びが終わるまでの短い期間で、其れでも、不満が有り


そうだ。


 源三郎が、城に戻った頃には、大工達も全員が揃い、早くも加工作業に入っている。


「親方。」


「源三郎様、おはようございます、こんな朝、早くから、一体。」


「親方、私は、またも、ご無理を、お願いせねばなりません。」


「何でも、やりますよ、言って下さい。」


「実はですねぇ~、今、原木運びの人達を。」


 源三郎は、親方に、九十人分の家を建てて欲しいと言うので有る。


「宜しいですが、その家って、長屋でも、宜しいんですか。」


「勿論です、眠る事が出来れば良いのですから。」


「はい、分かりました、其れで、源三郎様、その前にですが、漁師さん達の家を建て替えた方がいいと思


うんですが。」


「宜しいですが、何故なのでしょうか。」


「源三郎様、漁師さんの家ですが、わしらは、難しい事は分かりましたが、聞くところに寄りますと、洞


窟内でも、松明や、かがり火に薪木必要だって、其れじゃ~、漁師さんの家を取り壊し、其れを、薪木に


して、松明や、かがり火に使えばいいんじゃないですか。」


「ですが、その為に余計な仕事が。」


「源三郎様、任せて下さい、この野郎達に建てさせますので、お前達、分かったか。」


「はい、親方、じゃ~、今から。」


「当たり前だよ、お前達の腕の見せ所だからなぁ~、しっかりとやるんだぞ。」


「はい、分かりました。」


「親方、其れに、皆さん、誠に、申し訳無い。」


 源三郎は、素直に嬉しかった。


「源三郎様、でも、何故、急に家が必要だと。」


「其れなんですがね、仮にですよ、毎日、掘削工事の仕事に入るとなれば、往復二里も歩くのです。


 其れに、行く時よりも、仕事が終わり、家に帰って直ぐに眠られても、やはりねぇ~、毎日ともなれ


ば、身体への負担は、相当厳しいと思いましたので。」


「そりゃ~、大変だと思いますよ、どんな仕事か知りませんが、そりゃ~、帰るよりも楽ですから


ねぇ~。」


「親方、本当に申し訳ない、私も、早く分かって要ればよかったんですが。」


「そりゃ~、源三郎様、無理ですよ、だって、全部をされるなんて。」


 源三郎の作戦だったが、これが成功すれば、洞窟の仕事は、九十人に任せる事が出来ると。


 だが、この時、他の漁村でも同じ様な話しが出て来るとは、源三郎も気付かなったので有る。





          

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ