第 3 話 迫る大軍
偵察部隊が農場を出発して暫くはのんびりする事が出来、10日ほどが経
過した頃から本格的な戦の準備に入ったのである。
「閣下、何時頃来るでしょうか。」
司令官も、10日が経過し、少し気になりだしたのだ。
「司令官、まぁ~焦る事は無いぞ、それよりもだ、あの敵軍がどう攻めて
くるか、多分、多分だがよ、今度は大軍で攻撃してくると思うんだ。
それでだ、オレが考えた戦法だが聞いてくれるか。」
司令官は何も知らなかったのだ、ロシュエは早くから考えていたとは。
「閣下は、早くから考えておられたのですか。」
ロシュエは、二コットして頷くのだ。
「そうだよ、オレは、何もする事が無かったんでよ~~、オレはね,暇つぶ
しに考えてただけなんだ。」
暇つぶしに戦法を考えるとは、司令官は、何も考えて無かったので有る。
「閣下、失礼しました。
私は、何も考えておりませんでした、申し訳御座いません。」
と、司令官は深々と頭を下げるのだ。
「いや~、参ったね~、だがよ、オレの考えて要る方法なんて、司令官に
言わせりゃ~、子供の考える戦法だってよ~、ハ・ハ・ハ。」
と、豪快に笑うのだ。
「閣下、是非、お話を聞かせて頂きたいのですが。」
ロシュエは、舌をペロット出し。
「司令官、笑うなよ。」
「閣下、笑うなどと、失礼な事は出来ません。」
司令官は、やはり堅物で有ると、ロシュエは思うのである。
「だけど、オレは、別に難しく考えていないんだ、司令官、オレの戦術な
んだがねぇ~、城壁から森に繋がる通路をだよ~、まぁ~、他の城じゃ~、
こんな変わった方法で城壁を造った城は無いと思うんだ。」
「閣下は、この城壁ではなく、通路を利用されるんですか。」
「さすが、司令官、話が早いね、オレは、この通路の下に地下通路を作ろ
うと考えているんだ。」
「閣下、ですが、今から地下通路を造るとなれば、余りにも、時間が足り
ませんが。」
地下に通路を造ると簡単に言うのだが、今からでは余りにも遅すぎると言
うのだ。
「司令官、やはり無理かなぁ~、オレは、簡単に出来ると思ったんだ。」
「私は、閣下の申される事はわかりますよ、でも、城壁は頑丈ですから、
私は、閣下の地下通路に反対では無いのですが。」
「司令官、わかったよ~、オレの考えが甘かったんだ、すまん。」
「いいえ、閣下の地下通路は将来のためには必要だとは思います。
でも、今は。」
「其れじゃ~、森を利用すると言う事は。」
戦術としては当然なのだが。
「閣下、相手も同じ事を考えておりますよ。」
「司令官よ~、其れじゃ~、どうすりゃ~いいんだ。」
ロシュエは少しいらだってきている。
「閣下、森から切り出した木材を利用すれば如何でしょうか。」
「切り出した、木材をどう使うんだ。」
ロシュエは司令官の考えがわからない、司令官も、実は、何も考えず、た
だ、切り出した木材を利用すると言ったので有る。
「閣下、私が、相手の立場で考えますと。」
ロシュエは頷き。
「司令官が、オレの敵になるんだな。」
「閣下、その通りで御座います。」
「うん、うん。」
「私であれば、大軍を広く配置し、この城壁を取り囲みますねぇ~。」
「オレだって、同じ方法を取るよ。」
「では、閣下であれば、この城壁をどんな方法で攻撃されます。」
ロシュエは少し考え。
「そうだなぁ~、広く配置し、最初は弓の部隊で一斉に城壁の中に向けて
放つかなぁ~。」
司令官も頷くのだ。
「閣下、私も普通ならば、同じ方法をとりますよ。」
「司令官、誰でも考える事は同じなんだなぁ~。」
「閣下、この戦術はどの軍隊でも使いますが。」
「だよ~、さっき、司令官が言った、木材を利用するとは、一体、どんな
方法なんだ。」
「閣下、私は、今度は、この城壁の立場で考えますと、木材で敵軍の侵入
を防ぐんです。」
ロシュエはわかったのだ。
「司令官、オレにもわかったよ。」
司令官は二コットして。
「この城壁の前は、広く遠くまで見渡す事が出来ます。」
「司令官は、反対に広くなった所を狭くするんだ。」
「閣下、その通りで御座います。
広いと、一揆に攻撃は出来ますが、狭くなれば、馬も兵士も少しづつ進む
事に成ります。」
「司令官、よし、その方法で行こうか、みんなで協力すりゃ~よ、直ぐに
出来ると思うが、どうだ。」
ロシュエも司令官の提案を受け入れたので有る。
その時、技師長が入ってきた。
「将軍、お話があるんですが。」
「お~、技師長か、実はオレも、技師長に相談しようと思ってたんだが、
先に技師長の話を聞くよ、それで、何の話だ。」
技師長も対策を考えていたので有る。
「将軍、先日、お話をされました事なんですが。」
「先日の話、オレが何か言ったのか。」
ロシュエは忘れていたのでは無いが。
「将軍は、この農場に軍隊が攻撃を掛けると言われましたが。」
「あ~、その話か、思い出したよ、其れがどうしたんだ。」
「私は、軍隊の規模がわかりませんが、でも、何か対策が必要だと考えて
おりました。」
ロシュエも司令官も直ぐにわかったのである。
「技師長、実はなぁ~、今も、司令官と話をしていたんだ、それで、オレ
も技師長に相談しようと思っていたんだ。」
やはり、将軍は対策を考えていたんだと、技師長は思ったので有る。
「やはり、将軍も考えておられたんですね。」
「当たり前だといいたいんだが、オレはなぁ~、オレは、この農場で一緒
に暮らしている人達の為だったら、オレの命は別に惜しくは無いよ、だけ
ど、オレも、簡単に死ぬ事だけはいやなんだよ~。」
「将軍のお気持ちは、この農場に居る全員が知っております。」
「だからよ~、オレは、みんなの農場を守りたいんだ、ただ、それだけな
んだ。」
側では、司令官も頷いている。
「それで、将軍は、何か対策を考えられたのでしょうか。」
「その前に、技師長の話を聞きたいんだ。」
ロシュエは、技師長の考えを知りたいと思い、司令官も頷いている。
「将軍、この農場を取り囲んでいる城壁は簡単に壊す事は出来ません。」
「勿論だ、この城壁はみんなで造ったんだからなぁ~。」
「将軍、この城壁の外側は広く開けております。」
「うん、それで。」
やはり、技師長も、城壁の外側に何かを作るのでは無いかと。
「私は、森から木材を切り出して、城壁に簡単には近づく事が出来ない物
を作れば良いと考えてたんですが。」
「そうか、実はなぁ~、技師長、司令官も同じ方法を考えていたんだ。」
「司令官もですか。」
「技師長、先程から閣下とお話をしておりましたが、閣下が、申される様
に、技師長の、お話を先に進めて下さい。」
「司令官、有難う御座います。」
「それで、技師長、その話を聞かせて欲しいんだ。」
「ハイ、将軍、私は敵の軍隊がどんな方法で攻めてくるのかわかりません
ので、私は、素人の考えを説明させて頂きます。」
「技師長、こんな時は素人の考えた方法が以外と役に立つんだよ~。」
司令官も頷き。
「技師長、その通りですよ。」
「そうですか、では、説明させて頂きます。
私は、森から切り出した木材を利用したいのです。」
「うん、うん、そうか、それで、木材をどんな方法で利用するんだ。」
「私は、農場で働く仲間と話をしたんですが、みんなも、私と、同じ考え
でした。」
ロシュエも司令官も驚いたので、其れは、技師長は、農場の人達とも話し
をしていたので有る。
「なに、技師長、農場の人達にも話をしたのか、だがな、技師長、戦は、
兵隊の任せろって、農場の人達から犠牲者を出したくは無いんだ。」
「将軍、私も含め、みんなは、将軍の事だから、兵隊に任せろ言うに決ま
っていると、言うんですよ、今も言われました様に。」
「技師長、オレは、其れが当たり前だと思って要るんだ、なぁ~、司令
官よ~。」
司令官も頷き。
「技師長、私も閣下もですが、ここの兵士は全員が、農場の人達にいつも
感謝をしているんですよ。」
「司令官、其れは、農場の人達も同じ事を言ってました。
此処の農場は兵隊さんも農民もみんな同じ仲間だって、その仲間を助ける
事が出来るんだったら、何でもするって。」
「技師長、有難う、その気持ちだけでいいんだ、こんな時のために、オレ
達兵隊がいるんだからなぁ~、どんな事があっても農場の人達に戦の巻き添
えだけは御免だからなぁ~。」
「わかりました、将軍、みんなに将軍の気持ちを伝えておきます。」
これ以上、この話は続かなかったのだ。
「技師長、有難うよ、それでだ、技師長の考えた方法だけど、どんな方法な
んだ。」
ロシュエは、同じ方法だと思ってはいるのだが。
「将軍、この城壁の前に有る、広大な草地に、何箇所も木材で壁を作るんで
す。
簡単に城壁に近づけないようにです。」
やはり、同じ方法だった。
「やはり、技師長も同じ方法を考えていたんだ。」
「将軍、之は、私が考えたんでは無いんですよ、農場の人達が考えたんです
よ。」
ロシュエも司令官も、其れは大変な驚きだったのだ。
正か、農場の仲間も同じ事を考えていたとは。
「オイ、技師長、本当か、農場の仲間が考えたって。」
ロシュエは嬉しかったのだ。
「将軍、本当なんですよ、私は、仲間が考えた方法を絵にしたんです。」
「うん、わかったよ、有難う、で、どんな絵なんだ、早く見せてくれよ。」
技師長は丸めた、一枚の絵を見せたのである。
「オイ、オイ、司令官、之は本当に凄いぞ、技師長、それじゃ~、みんなも
手伝ってくれるのか。」
技師長は頷き。
「勿論です、後は、将軍の命令を待つだけですよ。」
ロシュエは、涙が出そうに成った。
「わかったよ、司令官、この絵と同じ物を作る事に決定するぞ。」
司令官も、本当に嬉しかったのだ、やはり、この農場は兵士も農民も仲間
だったんだと。
「閣下、私も、今回は大賛成です。
早速、各隊長に伝えますので。」
「司令官、頼んだぞ、それじゃ~、明日から、作業開始とするか、だけ
ど、農場は。」
「将軍、何も心配は有りませんよ、農場の事は、農場の人達が考えていま
すから。」
「わかった、有難うよ、司令官、兵士達の参加も。」
「閣下、勿論です、半分は任務が有りますので。」
「わかっているよ、見張りも大事だからなぁ~。」
「閣下、私は、今から隊長を集め、説明に入りますので、失礼します。」
「司令官、宜しくな。」
司令官はロシュエに敬礼し、部屋を出て行ったのだ。
「技師長、農場の人達も協力してくれるのか。」
「勿論ですよ、あの人達は、いつでもいいと言っておりますから。」
「有難う、じゃ~、技師長、明日から始めると伝えてくれないか。」
「わかりました、では、私も、今から、農場に行って伝えてきますので、
みんな喜ぶと思いますよ。」
と、言って、技師長も部屋を出て行ったのである。
ロシュエは、正か、こんな展開になるとは予想もしなかった。
明くる朝、何やら、朝早くから表が騒がしく、ロシュエは驚き飛び起き。
正か、こんなに早くあの敵軍が攻撃してくるとは思わなかったので、急ぎ
支度をし、表に出ると、其れは、敵軍ではなく、多勢の兵士と農場の人達だ
った。
「お~い、何かあったのかよ~。」
「いいえ、将軍、何も有りませんよ、みんなで手分けして道具と工具を準
備していたところですから。」
「余り、脅かすなよ、オレは、てっきり敵軍の攻撃してきたのかと間違っ
たじゃ無いかよ~。」
その時、司令官も来た。
「閣下、一体、何事ですか、こんなに朝早くから。」
司令官も驚いたのだ。
ロシュエは二コットして。
「いや~、オレも参ったよ、みんながね、準備をしていたんだ。」
「それで、こんなに早くからですか。」
イレノアが飲み物を持ってきた。
「イレノアも、早く起こされたのか。」
イレノアは、何時もの事だからと思って要る。
「私は、誰にも起こされてはおりませんが、村でも、あのお城でも、朝は
早く起きておりましたので。」
イレノアは温かい飲み物を出した。
「お~、有難うよ。」
司令官も二コリとしている。
「イレノア、有難うね。」
イレノアは、微笑んでいる。
「司令官、だけど、オレは驚いたよ、昨日の今日だよ、オレはねぇ~、も
っとのんびり出来ると考えていたんだが、正か。」
「閣下、私も、この様な事は初めてですよ。」
「何がだ。」
「私も、城でも、兵士達を見ておりましたが、今は、私の思っておりまし
た兵士達では無いのです。」
「えっ、別の兵士が居るのか。」
「いいえ、そうでは無いのです、同じ兵士でも、私が、城に居た頃は、全て
命令で動いておりましたが、此処では、みんな、自分達の意思で動いている
んですね、私は、命令では無く、今では、伝えるだけなんですよ。」
「司令官、其れじゃ~、オレと同じじゃ無いか、オレなんかよ~、今は、
何もする事が無いんだぜ。」
「いいえ、閣下は、此処に居られるだけで十分ですよ。」
「オイ、オイ、其れじゃ~、オレに死ねと言う事か、そりゃ~、余りにも
寂し過ぎるんじゃないかよ~。」
と、言ってはいるのだが、顔は笑っている。
「私は、閣下が元気なお姿を見せるだけでよろしいのですよ。」
司令官はニヤリとした。
「だって、じゃ~、オレにも、何か仕事をくれよ。」
「では、お願いがあるのですが。」
「お~、オレの仕事か。」
「そうです、閣下、みんなの所に行って励まして下さい。
それで、みんなは元気になりますので。」
側では、イレノアも頷いている。
「わかったよ、みんなの所に行って、励ますんだな。」
ロシュエは、満更でもなさそうな顔をして要る。
その時、農民の代表5人が来た。
「将軍、今から、行ってくるからよ~、オレ達の、かあちゃんの事、よろ
しく頼むぜ。」
「わかったからよ~任せときなって。」
「オイ、オイ、お前のかあちゃん、将軍の所に行ったら、絶対に帰って来
ないぜ。」
「バカ野郎、母ちゃんはなぁ~、このオレ様に惚れてるんだからよ~。」
みんなが大声で笑うのだ。
「将軍、我々も出動します。」
「わかった、お~い、みんな、怪我だけは注意するんだぜ。」
「将軍、有難う御座います、じゃ~なっ。」
「みんなは、オレの大切な仲間なんだから、頼んだぜ。」
「司令官、では、私達も出発します。」
各隊長達もロシュエと司令官に敬礼をし、兵士達の所に戻り、農民の代表
も元に戻って行った。
「じゃ~、将軍、行ってくるよ。」
農民と兵士を合わせて、5千人近い人達が城門をくぐり、森へと向かった
ので有る。
「イレノア、みんなの食事は。」
「ハイ、もう直ぐ、準備に入ると思います。」
イレノアは、やはり、この将軍は、何時もみんなの事を考えて要るんだと
思った。
「イレノア、済まないが、オレと司令官の朝食を。」
「ハイ、将軍、直ぐにお持ちしますので。」
イレノアは、何か楽しそうだ、其れは、今までは命令されていたのだが、
此処では違う、誰も命令で動くのではなく、みんな、自分の意思で動いてい
るからだと思った
「司令官、オレは、今、本当に嬉しいんだよ~。」
ロシュエの顔は喜びに満ち溢れている。
「閣下、私もです、城に居た頃は、何時も、城主や家臣達の顔色を見なが
らの日々で御座いましたので。」
其れは、何処の国でも同じだった様で。
「オレもなぁ~、実はそうなんだ、確かに、オレ達の駐屯地は遠く離れて
いたが、何時、国王が来るか知れない状況なんだ、其れに、国からは密偵が
各駐屯地を偵察し、其れを、国王に報告するんだからよ~。」
「閣下のお国でも、同じだったんですねぇ~。」
「オレはだよ、其れが大嫌いなんだ。
オレ達は、同じ仲間だと思っていたんだ、だから、一刻も早く、この国か
ら逃げたいと思っていたんだが、機会が無かったんだ、其れがだ、ある日、
突然、クーデターの様な事件が起きたんだ、オレは、この機会を逃すとだ、
一生、此処からは逃げる事が出来ないと思い、駐屯地のみんなに相談したん
だ、オレはねぇ~、誰も来ないと思ったんだが、其れがだよ、全員ついて来
てくれたんだ、その時はだ、本当に、嬉かったねぇ~。」
「閣下、私の場合も良く似た話しで御座います。
閣下が、我が国王に会われたときには、国王は死期を感じられておられま
した。
「じゃ~、オレとの話は。」
「私が進めたのです、家臣には内緒で。」
「国王は、全てを司令官に託したんだ。」
「私は、今でも、その様に思っております。
それに、国王から言われておりましたよ、領民の事を考えて欲しいと。」
「其れじゃ~、オレ達が、此処に城壁を造って居た頃から知っていたんだ
なぁ~。」
「閣下、申し訳有りませんが、その通りでで御座います。
閣下、この先に小高い山があるのをご存知でしょうか。」
ロシュエは、その時、思い出した、時々だったが煙が上がっていた事を。
「司令官、思い出したよ、オレ達も、この周辺を調べたんだが、何も無か
ったんで、此処に住む事が出来れば良いと、それで、この場所に、石を積み
上げ出した頃だったと思うぜ、あの頃、時々、だったが、煙が見えたんで、
注意はしていたんだが、其れが、正か、司令官の部隊だとはねぇ~。」
「ですが、私は、毎日、偵察をしてたのでは無いですよ。」
「お~、其れは、オレも知ってるよ。」
司令官も、ロシュエの部下が偵察に行っていたとは知らなかったのだ。
「司令官よ~、オレだって、バカじゃ無いよ、オレの部下も、その小高い
山に偵察に行っていたからなぁ~。」
「では、此処で、時々野営をしていた事もでしょうか。」
ロシュエはニヤリとした。
「正か、間じかに行く事はしないよ、野盗か、軍隊だけかを知りたかった
んだ、其れに、人数の知りたくてなぁ~。」
「それではお互い様と言う事でしたのですね。」
ロシュエも司令官も大声で笑うので有る。
その時、イレノアがやってきた。
「如何したんだ、イレノア、何か。」
「将軍、私達が話し合って決めた事が有るのですが、聞いていただけるで
しょうか。」
ロシュエは二コットして。
「お~、いいよ、オレに出来る事だったら、何でも聞くよ。」
イレノアは、少し赤くなったのだ。
「実は、私達で、将軍と司令官のお世話をしたいと思いましたが、駄目で
しょうか。」
イレノアは、下を向いたのだ。
「おい、おい、将軍は別としてですよ、私は、君達の世話になる様な事は
有りませんよ。」
「司令官、何を慌てているんだ。」
司令官の顔も少し赤くなった様に見えたのだが。
「ほ~、司令官、何か顔が赤くなった様に見えたぞ。」
「いいえ、私は、何も。」
司令官は、何を言いたいんだ。
「イレノア、何故、突然にそんな事を言い出すのんだよ~。」
イレノアの側には、もう一人の美人が居る。
「私もですが、みんなは、あのお城で、国王や側近の家臣達の世話をして
おりましたので。」
「閣下、私も、その様に思います。」
「司令官、何故、わかるんだよ~、司令官の居た城とは違うんだぜ。」
「いいえ、閣下、私は、彼女達の動きを見ればわかりますよ。」
「わかったよ、それで。」
「司令官はいつも軍服姿で凛々しくて宜しいのですが。」
司令官も、今度は本当に赤くなった。
「何を、司令官、赤くなっているんだよ~。」
「でも、将軍は、何時も、農作業の服装でおられます。」
「オレか、オレは、この服装が一番好きなんだ。
それによ~、誰も、オレってわからんだろうから、へ・へ・へ。」
と、ロシュエは何が可笑しいのか。
「将軍は、それでも良いと思われておりますが、司令官の立場も考えて頂
きたいのです。」
「なに、オレがか、オレは、何時も、司令官や兵士達の事を考えて要るん
だぜ。」
「そうでは無いのです。
将軍の、お姿も大事だと、私達は思っております。」
「じゃ~、このオレの服装が問題なのか。」
イレノアと側の女性も頷き。
「閣下、私も、その様に思います。
確かに、この農場では、誰もが将軍を知っております、ですが、時には、
将軍らしいお姿で。」
「其れじゃ~、何か、オレに、司令官の様な軍服を着れと言うのか。」
「将軍、私は、毎日、そのお姿で過ごされるのは、別に反対は致しません
が、例えば、多勢を集めてお話しをされるときには、やはり、そのお姿で
は、兵隊さんもですが、農場の人達も、多分ですが、思われていますよ。」
「じゃ~、そんな時には将軍らしい軍服を着て、話をしろと。」
ロシュエに、実は軍服は無かったのだ、それに、ロシュエが駐屯地を出た
時には兵士の全員が軍服を脱いで、平民の服装でこの地にやってきたのだ。
「イレノア、本当に嬉しいんだが、オレと一緒に来た兵士達全員が駐屯地
を出る時に、軍服を脱いできたんだ、だから、オレには軍服が無いんだ。」
司令官も初めて知ったのだ。
「閣下、誠に申し訳有りません。
私は、何も知らずとはいえ、申し訳御座いませんでした。」
「司令官、何も気にする事は無いぜ、其れに、オレは、別に、軍服が制服
だとは思って無いんだからよ~。」
イレノアは下を向いたままである。
「閣下、私も、今まで気付きませんでしたが、よくよく考えて見ますと、
この農場に来た時にですが、兵隊が一人も居ないと思っておりました。
でも、平服が兵士の軍服だったんですね。」
「そうだよ、だから、今でも軍服は着ていないが、動きは兵隊だろう。」
「その様に言われますと。」
「だから、外から見れば、この城壁の内側に兵隊は居ないと思って要るん
だろうが、実は、全員が立派な兵士なんだ。」
「では、将軍は、此れからも軍服は要らないと言われるのですか。」
イレノア達は、すでに軍服を作り始めていたので有る。
「オレは、そう思って要るんだよ~。」
「でも、其れは、将軍のお考えでしょう。」
「うん、そうだよ、だから、司令官の居た城にも平服で行ったんだ。」
イレノアの表情が変わったのだ。
「それでは、私達は、困るんです。」
「何が、困るんだ、この服で、誰かに迷惑でも掛けたか、オレはなぁ~、
イレノア、別に、国王とか城主になりたくは無いんだ、この農場で、みんな
と一緒に普通の生活が出来れば、それでいいんだよ~。」
「将軍、私も将軍と一緒に此処で暮らせるのが一番だと思っています。」
「そうだろう、イレノアも、オレも、みんなも一緒なんだ。」
「其れじゃ~、聞かせて下さい。
私達が苦しい思いをした、あのお城に行かれるときも、そのお姿で行かれ
るのですか。」
イレノアの表情が恐ろしくなって、ロシュエも戸惑っている。
「イレノア、オレはなぁ~、別に軍服でなかってもいいんだ。」
「将軍は、あの人達の事を何もわかって無いんですか。」
「其れを調べに、今、偵察隊が行っているんだ。」
「でも、あの人達は、平民や農民を人間だとは思っていないんです。
あの人達の中には、人間狩りと称して、平気な顔で領民を襲うんです。」
イレノアの表情にはロシュエに対する、無念さを感じるのである。
「なに、人間狩りだと。」
「そうですよ、でも、全員を殺す事はしません。
何時も、数人だけですが、その数人の為に、領民は恐怖の毎日なんです
よ、其れなのに。」
「イレノア、そんな村は、一体、どれ程あるんだ。」
イレノアは少し考え。
「私の知って要るだけで、30箇所以上は有ると思います。」
「じゃ~、何か、その30箇所の村を毎日襲うのか。」
「いいえ、一年に一度だけですが。」
「其れじゃ~、領民は、何時、襲われるかわからない恐怖と戦っていると
言うか、オレは、絶対に許さん。」
「そうです、だから、言ったでしょう、毎日が恐怖の連続だと。」
「でもよ、其れと、軍服と、どう関係が有るんだ。」
「あの人達は、領民は武器を持っていない事知って要るんです。
だから、弱い人達だけを襲うんです。」
「其れじゃ~、軍隊が行くとどうなんだ。」
イレノアは、はっきりとわからないのだが。
「私は、其処までの事はわかりませんが、確か、何処かの軍隊が来たとき
には、何も手出しはしなかった様に思います。」
「其れは、兵隊には手出しはしないと言う事なのか。」
「私は、わかりませんが、あの時は、多勢の兵隊が来たと思います。」
イレノアは、城の城主もだが、家臣や兵隊達も殺して欲しいのだ。
「其れじゃ~、兵隊だけでは駄目だという話なんだなぁ~。」
「そうなの、その兵隊の中に、立派な軍服を着た兵隊が多く居たの。」
「そうか、イレノアの話しでは、立派な軍服を着ている軍人が、其れも、
多く必要だと、言う事なのか。」
イレノアは頷き。
「そうなんです、兵隊の人数も多勢居ると思うのですけど、将軍や司令官
の軍服も立派の物がいると思って要るんです。」
「其れじゃ~、兵隊だけじゃ~、駄目って事か。」
イレノアは頷き。
「私は、素人だから、詳しい事はわかりませんが、でも、あの時、数人の
兵隊さんが立派な服を着ていた事は確かです。」
ロシュエも少しわかってきたのである。
確かに、軍隊は兵士だけで戦は出来ない、指揮系統が必要だからである。
「では、城からは攻撃しなかったのか。」
「その通りです、私も、はっきりとはわからないんです。
城内で聞いた話ですので。」
「どんな話をしてたんだ。」
イレノアは頷き。
「下手に攻撃すると、あの後、何人の兵隊が来るのかわからないので、軍
隊が戻って行くまではおとなしくしていようと。」
「其れじゃ~、多勢の兵隊が行くといいのか。」
「私は、わからないのでけれど。」
「イレノア、わかったよ、だがよ、オレは、本当に軍服が無いんだよ。」
イレノアは、ロシュエがやっとわかってくれたと思い、二コリとして。
「将軍、実は、今、私達が作っているんです。」
「えっ、オレの軍服をか。」
と、ロシュエは驚いたのである。
「だがよ、軍服を作るには色んな飾り付けがいるんだが、其れにだ。」
「わかっています、私達が、此処に来た時に着ていた服にはたくさんの飾
りつけが付いていましたので、洗濯をして、使える物を利用しておりますの
で、何も。」
ロシュエは、女物では無理だと思って要るのだ。
「だがよ、女物を男物用に利用は出来るのか。」
「遠くから見れば、わからないと思うのですよ。」
ロシュエもわかってきたのである。
「そうか、オレも少しだがわかってきたよ、城の中から見ても立派な軍服
だと思わせるんだな。」
「私は、そう思うんですが、やはりわかりますでしょうか。」
「閣下、イレノアの言われる事に間違いは有りません。
私が、この城壁に来た時ですが、閣下も兵士達も全員が軍服を着用されて
はおりませんでした。
勿論、私は、この城壁を攻撃する事などは考えてはおりませんでしたの
で、不思議には思いませんでしたが、あの時、閣下は、農民のお姿でした。
でも、私は、お話をして、この人物が、この城壁と言いますか、農場の領
主だとわかったのです。」
「では、司令官も立派な軍服が必要だと思うのか。」
「私は、イレノア達が居たお城は知りませんが、高い城壁から見れば、簡
単にはわからないと思うのですが。」
イレノアは二コッリとして。
「将軍、お願いします。
あの城に行かれるのであれば、軍服を着用して頂きたいのです。」
「わかったよ、だけどなぁ~、飾り付けに必要な物だが。」
「閣下、私が、連れてきた兵士から使用出来る物があれば、イレノア、そ
れでもいいですかね。」
「司令官、有難う御座います。
将軍さえ良ければ、後は、私達に任せていただければ、何とかいたします
ので。」
「わかったよ、司令官、悪いが頼むぜ。」
「閣下、兵士の物ですから、十分とは思いませんが。」
「司令官、其れと聞きたいんだがよ~、司令官の服も何か変だとは、どう
だ。」
「えっ、私の物ですか、其れはちょっと。」
司令官は、手を振りイヤだと言うのだが。
「司令官、実は、司令官の軍服も、今、つくり始めているんです。」
「そんなぁ~、私は、今のままで十分なんですが。」
「司令官、今、着ている服を利用するんだなぁ~。」
「閣下、じゃ~、私は、この軍服を脱ぐんですか。」
「そうだよ、イレノア、司令官の服も利用するんだろう。」
「ハイ、お願いします。」
と、言って、イレノアはフ・フ・フと笑うのだ。
「おい、司令官、之は、余の命令なるぞ、早く脱げ、ハ・ハ・
ハ・・・。」
と、ロシュエは大声で笑ったのである。
司令官は、仕方無く軍服を脱ぐのだった。
「お~、それで、良いのだ、フ・フ・フ。」
ロシュエは、何が可笑しいのか、笑っている、だが。
「閣下、何が、可笑しいんですか、私は、一体、何を着れば良いのです
か。」
ロシュエは、笑いが止まらないので有る。
「そんな事、決まっているんだ、平服だなぁ~。」
「私もですか。」
「なんだ、司令官、何か不満でも有るのかよ~。」
司令官は、不満と言うよりも、少し寂しさを感じて要るので有る。
「閣下、私は、軍服以外の服は子供の頃だけでしたので、軍服を着ていな
いと、何か、寂しいのですが。」
「司令官、少しの辛抱だからよ、イレノア達が、新しい軍服を作ってくれ
るんだから、辛抱するんだなぁ~。」
「はい、閣下、わかりました、イレノア、その軍服は何時頃出来上がるの
ですか。」
司令官は、早く着たいのだが。
「司令官、申し訳有りませんが、後、少しで出来上がりますので。」
司令官はほっとしたのである。
イレノアは、と言うと、二コ二コしながら。
「司令官の服を作っているのは、さっきから、何も、しゃべっておりませ
んが、彼女が作っているんです。
彼女はフランチェスカと言います。」
「えっ、本当に、彼女が作ってくれているのか。」
フランチェスカの顔が赤くなっている。
「フランチェスカ、何か、言ったら。」
フランチェスカはうなずき。
「何を、言っていいのかわからないの。」
「何を言ってるのよ、何時も言ってるじゃ無いの、私は、司令官が。」
「おい、おい、司令官も喜びなよ、フランチェスカが、司令官に惚れたん
だとよ~、こりゃ~、大変な事になってきたぜ、オレは、知らないぜ。」
「将軍様、私は、私は。」
「フランチェスカ、いいんだ、この司令官はな、今まで、女を知らないん
だとよ、だから、ほら、司令官の顔も赤くなってるよ、ハ・ハ・ハ・・・」
「閣下、私は。」
「ほら、ほら、司令官は、何を言っているのかわからんぞ。」
「よし、フランチェスカ、司令官の軍服を作った後に。」
「閣下、後に、何か有るのでしょうか。」
「いいや、何も無いぞ、ハ・ハ・ハ・・・。」
と、また、ロシュエは大笑いをしたのだ。
実は、ロシュエは司令官とフランチェスカの一緒にさせる事を考えていた
のだ、だが、その前にする事があった。
「イレノア、フランチェスカ、二人にはすまないが、オレと司令官で、あ
の城の攻撃計画を立てるんでよ~、済まないねぇ~。」
「将軍、わかりました、突然、お邪魔しまして、お許し下さい。」
「何も、オレは、怒ってなんか無いんだよ、ただ、此れからの話はだよ、
なぁ~、イレノアやフランチェスカに聞かせるような話じゃ無いんだ、ただ
それだけの事なんだよ~。」
「はい、では、私達はこれで失礼します。
将軍、司令官、有難う御座いました。」
と、二人は部屋を出たのだ。
「司令官、さっき、イレノアが言った話なんだが、その城の兵士達は領民
を殺す事を楽しんでるように聞えたんだが。」
「はい、閣下、私も、その様に聞えましたよ、イレノアは、相当我慢をし
ていた様に思ったのですが。」
「いや~、オレもそう思うんだ、イレノアや領民の為にも、その城を攻撃
し、城主もだが、軍隊を完全に滅ぼさないとなぁ~。」
「閣下は、始めて言われましたねぇ~。」
「うん、何をだ。」
「城主と軍隊を滅ぼすと。」
ロシュエが、初めて戦争をすると断言したので有る。
「オレだって、同じ人間を殺したいとは思ってはいないよ、だけど、今度だ
けは、許す事が出来ないんだよ~、絶対にだ。」
「閣下、私も同感です。
あの城主と家臣は、同じ人間として許す事はできませんから。」
「よし、だがよ、どんな方法で攻めてくるかだ。」
「私は、攻める事も大事ですが、その前にも攻撃をしてくる事を予想して
防御の方法を考える必要が有ると思うのです。」
「そうだなぁ~、わかったよ、其れじゃ~、今、作っている防御壁をだ二
重にする事に。」
「私も、其れが大事では無いかと思いますね、それに、高さも必要に成る
と思います。」
司令官は高い壁にする事で、馬が飛び越える事は出来ないと考えて要る。
「オレは、3ヒロもあれば十分だと思うんだが。」
「そうですね、前も後ろも3ヒロで良いかと思いますが。」
ヒロとは、長さの事である。
1ヒロは人間の身長で、この農場では、将軍、ロシュエの身長を基準にし
て要る。
ロシュエは、2メートルの大男だがら、3ヒロとは、6メートルの高い壁
になる。
その高い壁を飛び越える事は不可能なのだ、さらに、この高さであれば、
人間も簡単に登り越える事は出来ないで有る。
「じゃ~、司令官、どの場所に造るかだなぁ~。」
この時、既に、森では数十本の大木が切り出されていた。
「将軍、何処に造るんですか。」
一人の兵士がやってきた。
「お~、そうだったなぁ~、今、直ぐに行くから、待っててくれよ。」
ロシュエと司令官は大急ぎで城門の外に向かった。
「司令官、何時も着ている軍服は。」
と、兵士が聞くのだ。
「司令官の軍服か、其れが、今なぁ~、新しい軍服を作っているんだ、そ
れにだよ、このオレにも、軍服を作ってくれるんだってよ~。」
「へ~、将軍に軍服ですか、そういえば、長い間、将軍の軍服姿を見て無
かったなぁ~。」
この兵士は、ロシュエと共に、この地に来た兵士なのだ。
「オレは、嫌だと言ったんだが、イレノアがだ、如何しても必要だから作
るって言うんだよ、其れじゃ~、司令官にも、新しい軍服が必要だとなった
んだ。」
「それで、司令官も農作業用の服を着ているんですか。」
司令官は何も言わなかったので有る。
「おい、おい、話しが違うぞ、その大木の長さは。」
「将軍、5ヒロは有ります。」
「お~、そうか、其れじゃ~、その長さで建てる事にするか。」
「将軍、何処に穴を掘るんですか。」
「オレの考えた方法だが、城壁から10ヒロでどうだろうか、それにだ、
もう一箇所も10ヒロだ。」
「えっ、将軍、壁の前に一箇所じゃ無いんですか。」
「オレも、初めはその積もりだったんだが、どれだけの軍隊が来るかわか
らんだろう、防御壁を二重にすればと思ったんだよ~。」
「わかりました、じゃ、みんな聞いたとおりだ、10ヒロの所に穴を掘っ
てくれよ。」
「其れとだが、木材と木材の間なんだが、人間が通れないくらいの隙間を
開けて欲しいんだが。」
「将軍、なんで、隙間を作るんですか。」
「其れか、其れはなぁ~、人間の心理なんだ、人間が通れるか、通れない
くらいの隙間を造るとな、兵士達はこの隙間を通るとするだろう、だが、簡
単に入れないんだ、その時、オレ達の反撃に遭うんだなぁ~、之が。」
「さすが、将軍だ、考える事がオレ達とは違うよ、お~い、みんな、手分
けして、早く壁を作ろうぜ。」
「司令官、これでいけるぞ、後は、何時頃完成するかだなぁ~。」
「そうですね、完成するのが早いか、完成前に攻撃を受けるか、どちらか
ですね。」
それからは、二重の壁を作る工事が突貫で始まったので有る。
その頃、偵察に行った5人は、どの付近まで行ったのだろうか。
「農場を出てから20日だよ、そろそろだ、城からの偵察も有るから、お
互い気をつけるようになぁ~。」
「そうだな、おい、ちょっと、止まってくれ、あの山の上を見てみろ、誰
か居るぞ。」
「うん、確かに居るぞ、あれは若しかして兵隊じゃ無いのか。」
「うん、そうだ、だが、オレ達は、見つかって無いと思うが、その森に入
ろう。」
「よし、わかった。」
5人は馬を森の中に入れるのだった。
「どうだ、奴らの動きは。」
「何もわからないよ。」
「じゃ~、オレが、近くまで行ってくるから、此処で待っててくれよ。」
「よし、わかったが、無理はするなよ。」
「お~、わかっているよ、じゃ~な。」
と、言って、一人の兵士が森の奥に消えて行ったので有る。
それから、長い時間が経った頃に、兵士が戻ってきた。
「おい、大変だよ。」
「何がだ。」
「其れが、大軍なんだ。」
「何が、大軍なんだ。」
「大軍だって、軍隊に決まっているだろうが。」
「えっ、軍隊だって、それで、何人位なんだ。」
「そんな事がわかるか、2万人か、3万人か、それとも、其れ以上かも知
れ無いんだ。」
「わかった、其れじゃ~、如何するんだ、オレ達は、偵察が目的なんだか
らなぁ~。」
5人の偵察隊は初めての経験だったので、偵察の意味もわからず、はじめ
は慌てていたのだが、やがて、本来の任務を思い出したので有る。
「よし、オレが、もう一度、偵察に行くが、敵には。」
「心配するな、見つかって無いからよ~。」
「よし、じゃ~、行ってくるよ、戻ったら直ぐに農場に帰るぞ。」
「よし、オレ達は帰る準備をしているからなぁ~。」
「じゃ~な。」
と、言って、別の兵士が偵察に行ったので有る。
残った4人は、何時でも帰る事が出来る様に準備を始めたのだ。
偵察に行った兵士は直ぐには戻らず、暫くの間、敵軍の動きと、人数の確
認、更に、武器の種類までも調べていたのだ。
「なぁ~、遅いよなぁ~。」
「本当だ、見つかったのかなぁ~。」
「其れは、無いと思うんだ。」
「じゃ~、なんで遅いんだ。」
「そんな事、オレがわかる訳が無いだろう。」
残った4人は、じりじりとした時間が過ぎて行くのを感じていた。
長い時間が過ぎた頃、ようやく、兵士は戻ってきた。
「遅かったなぁ~。」
「うん、偵察だからな、仕方が無いよ。」
「それで、どうだった。」
「大変な人数だよ。」
「で、一体、何人位だった。」
「うん、どう見ても、4万人は居るなぁ~。」
「よし、わかった、じゃ~、帰るぞ。」
「森の中を進もう、此処で発見されたら、オレ達全員殺されるから、絶対
に見つかるなよ。」
「よし、行くぞ。」
と、5人の偵察隊は急ぎ、農場に帰るのでだ。
その頃、あの城に戻った、生き残りの兵士が報告した事で、城主の怒りは
頂点に達していたのだ。
「お前達、何故、生き残ったのだ。」
「はい、陛下、私達に言ったのです、この農場には、誰も、入れないと、
特に、陛下の部下は、一人もだと。」
「なんだと、余の兵士達は、誰も入れぬとは、一体、何者なのだ。」
「私も、わかりませんが、あの城壁は高く、それに。」
「それに、なんだ、はっきりと申せ。」
「はい、陛下、あの城壁は登る事が出来ません。」
「其れは、どの様な意味じゃ。」
「はい、陛下のお城とは、造り方が違うのです。」
「何を申す、攻め落とせない城は無い。
おい、司令官、城に残った全兵士を向かわせ、直ちに攻撃せよ。
そして、全員を殺せ。」
この城主は農場の人達の全てを殺す事だけを考えていたのだ。
「はい、陛下、仰せの通りに。」
「その城壁の中に有る、全ての物を持ち帰れ、余の、ためで有るぞ。」
「はい、陛下、全ては、陛下の恩為に。」
この城主は、過去に、一度も、戦に負けた事が無かった。
其れが、今回、初めて戦に負けたのだから怒りが収まる事は無いので有る。
「将軍に申し伝える。
どの様な方法を使ってでも良い、その城壁を打ち破り、城は、燃やせ、わ
かったな、後で、余も参るぞ。」
「はい、陛下、わかりました。
では、私は、先に参りますので、陛下の、お早い、お越しをお持ち申して
おります。」
「将軍、任せたぞ。」
そして、この城からは、続々と兵隊が出発するので有る。
勿論、目的地はロシュエ達の農場で有る。
その頃、農場では、切り出された大木によって城壁の前に、大木の城壁が
造られていく。
「司令官、今から森に行くぞ。」
「閣下、森にですか、何か、不審な点でも有るのですか。」
「不審な点かぁ~、実はなぁ~、このオレも考えて要る事が有るんだ。」
司令官は、ロシュエの考えて要る事がわからないのだ。
「まぁ~、行ってから話をするよ。」
司令官は、首を振りながらも。
「はい、閣下、わかりました。」
と、司令官は、同行する5人の兵士と共に森に行くのだ。
その森からは、5ヒロ以上も有る大木が次々と運び出されて行く。
暫く行くと、其処は大木が被い茂り、昼間だと言うのに、太陽の陽さえ届
かない場所だ。
「お~い、誰か、話を聞かせてくれないか。」
「あっ、将軍と司令官だぞ、一体、何の用事だろうか。」
「そんな事、オレが知るかよ、誰か、将軍が呼んでいるぞ。」
この先端部では、数百人が大木を切り出している。
「将軍、何か、あったんですか、こんなところまで。」
「いや~、すまんなぁ~、忙しい時によ、少し話を聞きたいんだが、いい
か。」
先端部で大木を切っているのは、ロシュエと最初に、この地にやってきた
農民達なのだ。
「いいよ、じゃ~、みんな、少し休憩でもするか。」
と、言って、大木を切っていた農民達はロシュエの周りに集まったのだ。
「みんな、済まないねぇ~、こんな忙しい時に。」
「いいや、将軍が来るなんて、オレ達は驚きましたよ、もう、軍隊が来た
んですか。」
ロシュエは笑って。
「済まん、済まん、な~に、そんな事ぐらいで、オレが来るかよ、みんな
に少し話を聞きたいんだ。」
「将軍、一体、何を聞きたいんだ。」
「うん、じゃ~、聞くが、此処は切り出しの先端だろう。」
農民達は頷くのだが、ロシュエが、一体、何を、聞きたいのかわからない
のだ。
「勿論そうだよ、それで、将軍は、一体、何を聞きたいんだ。」
「今、見てきたんだが、大木を運んでいるが、その大木は、どのくらいの
場所を切っているかを見たんだ、するとだよ、どれを見ても、オレの腰くら
いのところを切って有るんだが、何故なんだ。」
「な~んだ、そんな事か、之は、オレ達も考えて切っているんだよ。」
司令官は、首をひねり。
「考えて切っていると言われましたが、私は、もっと下の方を切れば良い
と思いますが。」
「司令官は、何もわかっちゃいないんだね。」
其れは、当然だと、農民の顔は言っている。
「司令官、この森に、オレ達が入ると言う事は、敵軍も入って来ると言う
事ですよ。」
司令官は頷き。
「其れは、わかりますよ、私でも、この森の中を進む方法を考えますから
ねぇ~。」
「其れじゃ~、此処に来るまで簡単に来れましたか。」
司令官は、少し考え。
「簡単では無かった様に思えますが。」
「そうでしょうよ、将軍と司令官、其れに、兵隊さんが5人でしょう、そ
の人数でも、簡単に進む事が出来ないと言う事は、多勢の軍隊となればです
よ、もっと、進むのに時間が掛かるという話ですよ。」
それでも、司令官は、まだわからない。
この農民達は、ロシュエと、逃げる時にも大変な苦労をした。
ロシュエは、この時にわかったのだ。
「さすがだなぁ~、オレは、それが気になっていたんだ。」
「閣下、教えて頂きたいのです、どの様な意味なのか。」
「司令官、この場所から後ろを見てご覧よ、どうなっていると思う。」
其れは、数頭の馬で大木を引いているところで有る。
「私に見えるのは、馬が大木を引いている様に見えるのですか。」
「其れは、誰が見たって同じだよ、その場所じゃ~無いんだ、路になった
所はどの様になっているかと言う事だ。」
司令官が、良く見ると、その路は直線では無かったのだ。
「はい、閣下、道は直線では有りませんが。」
「其れと、その左右もだ、どの様になっている。」
それでも、わからなかったのか。
「じゃ~、オレが、簡単に説明するぜ、この路は、狭く、周りには大木が
茂っているなぁ~。」
司令官と5人の兵士は頷くが。
「だがな、本当に見るところは、その大木じゃ~無いんだ、今、この場所
でも直ぐにわかるよ。」
ロシュエは、少し離れた所に有る、切り株を指で指したのだ。
「司令官、あの切り株を見てみな。」
司令官と5人の兵士は、その切り株を見た。
その切り株には大木が横たわっている。
「将軍、あの大木は横に、其れも、その向こうのも同じ様な切り株が。」
その時、一人の兵士が。
「司令官、切り株は3個有りますが、その間に大木が入っています。」
其れを聞いた、司令官は、はっとしたのだ。
「之は、将軍、若しかして。」
ロシュエは、頷き、同じ様に農民達も頷いたのだ。
「司令官、やっと、わかって頂きましたか。」
「はい、閣下、今、やっと、わかりました。」
その時、農民達は、大笑いをして。
「司令官さんよ、まだ、修行が足りないよ。」
と、また、笑ったのだ。
それには、司令官も怒る事はできず、苦笑いをして要る。
「司令官、この路は、3ヒロくらいの広さだ、すると、軍隊は、この路を
通る時には、細くなるだろう、するとだ、森の中から弓で狙う事も出来る。
それに、軍隊は、命令で動くんだ、命令が、一番、後ろに届く頃には、森
に隠れている、オレ達の兵士は別の場所に移動して要るんだ、だから、敵が
来た頃には、誰もいないって事だ。」
「でも、之は、将軍が命令されたのですか。」
ロシュエは、首を振り。
「オレは、何も言っていないよ、オレ達は、この地に来るまで大変な苦労
をしたんだ、その逃げる途中に、何度も森に入った、その時、軍隊の追って
を避けるために、みんなで使った方法なんだ。」
「すると、彼らは、その時の経験から、今回も、同じ方法を使われたので
すか。」
「そうですよ、司令官、オレ達も、はじめに、将軍から教えて貰ったんで
すねぇ~。」
「司令官、この付近一帯は、同じ方法で、大木を切り出しているはずだ
よ。」
「将軍、その通りですよ、この森じゃ~、オレ達が中心になって、どの大
木を切り出すか、どの大木を横にするかを考えて切っているんですよ。」
「ですが、閣下、この森は普通の大きさでは有りませんので、全てのとこ
ろにこんな物を造ると成れば、大変な作業に成りますが。」
「司令官、森全体にこんな物は作らないんだ、之はなぁ~、わざと、路を
作って有るんだ。」
農民達は頷き。
「そうなんですよ、司令官、この森には、数ヶ所ですがね、入口を作った
んですが、森の中に進めば、路はどんどんと狭く成り、引き返す事も大変な
んですよ、其れに、途中で路は無く成りますからね。」
農民は、どうだと言う自慢した顔なのだ。
「それでは、路は、別の所に行けば有るのですか。」
「そうだよ、その路を探す時に兵隊はバラバラになる。」
「将軍、森の中から、反撃に遭うと言う事ですよねぇ~。」
「その通りだ、大軍だから、少しづつ兵隊を殺ればいいんだ、農場に近づ
く頃には半分以下になると思うんだがなぁ~。」
「では、残りの兵隊は農場に辿り着く事に成りますね。」
「其れは、当然だ、この森の中で、軍隊を、全滅させる事は出来ないと思
うんだ、其れにだよ、我々の仲間にだって、犠牲者が出ると思うんだ、だが
な、オレは、絶対に、あの国の兵隊は農場には入れないよ、オレの命を懸け
てもだよ。」
「じゃ~、将軍、オレ達は、また作業に戻りますんで。」
「お~、済まなかったなぁ~、宜しく頼むぜ。」
農民達は、また、大木の切り出し作業に戻って行くので有る。
「司令官、あの国の城主は、この農場には農民だけだと思って要るはず
だ、其処が付け目なんだよ。」
司令官も頷き。
「私も、同じですね、正か、森の中で反撃に遭うとは、夢にも思わないで
しょうから。」
「オレが、城主でも同じ行動をとるね、だが、城壁の前に有る草地だな、
あの草地が一番大変な場所だなぁ~。」
「閣下、私も、少し前から考えておりましたが、巨木で造った城壁の中か
ら、数本の1本の割合で、穴を開けるのです。」
「司令官も、同じ事を考えていたのか。」
「では、閣下もですか。」
「オレの考え方よりも、司令官が考えた方法を聞かせてくれよ。」
「はい、閣下、私は、閣下が、以前、申されましたので、考えた方法なの
ですが、閣下は、巨木と巨木の間に、隙間を開けろ申されました。」
「うん、その通りだが、隙間は、人間が通り抜けが出来ないくらいの隙間
にするんだ。」
「私も、其れは正解だと思っております。
私は、その間に兵士の姿が隠れるくらいの木材を入れるのです。」
だが、ロシュエの考えた方法とは違ってきたのでだ。
「司令官、じゃ~、兵士の顔だけが見えるくらいの隙間にするのか。」
「はい、閣下の、申される通りで、御座います。」
「だがよ、その隙間を埋める方法だが。」
「閣下、簡単です。」
「へ~、そんなに簡単に出来るのか。」
「はい、兵士の、首までの長さがあれば大丈夫ですよ、その隙間に入れる
木材は、別に固定する必要は有りませんので。」
「そうか、わかったよ、隙間からは敵の兵士は入れないのだから、切った
木材を立てているだけで大丈夫なんだなぁ~。」
「その通りで、私は、別に、木材でなかっても良いと思います。
この辺りの岩を置いても宜しいかと。」
「だがよ、岩じゃ、跳ね返り、兵士に当たる可能性も有るからなぁ~。」
ロシュエと司令官は、森から城門に向かう途中で話をしていたのだが、話
の途中で城門に着いたので有る。
「之は、立派な城壁だな、これじゃ~、敵が、この城壁を越える事は簡単
じゃ~無いな。」
「その様です、ですが、この城壁の周り全部に造るとなれば、時間が足り
ないと思うのですが。」
「司令官、別に、全部に造る必要は無いんだ。」
「えっ、何故ですか、私は、全部にと思っておりましたが。」
「司令官も、言ったじゃ無いか、時間が足りないって。」
「では、どの付近まで造る予定なのですか。」
ロシュエはニヤリとした。
「之は、城門の周りだけで良いと思ってるんだ。」
司令官は、何故なのかわからないので有る。
「なぁ~、司令官が、はじめて、この農場に来たときにだよ、この城壁を
どう思った。」
司令官は、あの時の事を思い出している。
「確か、あの時は。」
司令官は暫く考え。
「閣下、あの時はですねぇ~、この城壁を登る事は出来ないと思ったので
す、あっ。」
と、司令官はやっとわかったのだ。
「閣下、わかりましたよ、この城壁が、何故、登る事が出来ないのか。」
ロシュエはニヤリとしたのだ。
「その通りだ、この城壁は自然石を加工せずに、ただ、乗せているだけだ
からなぁ~。」
ロシュエの考え方というよりも、之は、技師長の考えだった。
自然石には持つところが無い、其れは、加工された石の様に角があれば、
持つところが出来るのだが、自然石は、全体が丸くなっているために無いの
で有る。
「閣下は、今回の様な事態も考えて自然石の状態で造られたのですか。」
「いや、其れが、違うんだ、あの森には獣がいるんだ、オレ達は、その獣
から農場を守る事が最初の目的だったんだ。」
「其れは、狼とか猪の事ですか。」
「そうなんだ、確かに、加工された石を使った城壁は美しく見えるよ、だ
けど、オレ達の仲間に石工はいないんだ、其れじゃ~、どうするかを考えた
んだ、それで、最終的には自然石を積み上げたんだ。」
「では、初めから自然石の状態で使う事は考えて無かったんですね。」
「そうなんだが、其れが、結果的には成功したんだよ。」
技師長が考えた方法とは、自然石を積み上げた後に、隙間には森から土を
集め入れたのだ。
その土に草が生え、例え、猪や狼が登ろうとしても、隙間に生えた草の為
に、足を滑らせ、登る事が出来なかったのだ。
其れが、人間とも成れば、猪や狼の様に爪は無く、何処にも引っかからな
いので有る。
「オレ達の農場では、農民と言う扱いはしないんだよ。」
「閣下、其れは、私も知っております。
農作業をする人達と言う事ですね。」
「そうなんだ、だから、何を作るにしても、みんなが協力するんだ。
みんなは、自分の出来る事をするんだ、絵を描く事もあれば、技師長の様
な専門家もいるんだよ。」
「それでは、城壁は簡単に登る事は出来ないと言われるのですね。」
「司令官、オレ達は、普段から狼や猪を相手にして要るんだぜ、獣が登れ
ない様な壁が、どうして、人間が登れると思うんだ。」
「私も、この農場に来て初めて知りました。
普段、私達が乗っている馬ですが、人間が乗っていなければ、跳躍も素晴
らしいですし、走る速度も全く違いますから、城に居た頃には、知らなかっ
た事が多く、何時も良い勉強になっております。」
「だがな、其れは、オレ達が思って要るだけで、敵の事は全く知らないん
だ、司令官という立場ではなしに、一人の兵士として考えて欲しいんだ。」
「はい、閣下、私も、此れからは、一人の兵士として、有る時は、司令官
として色々と考えて行動する事にします。」
その時、城門に着いた。
「お~、大夫、出来上がったなぁ~。」
「将軍、オレ達が考えた方法なんだけど。」
「お~、いいよ、聞かせてくれ。」
「将軍が言ったように、数十ヶ所の隙間を作ったんだが、その隙間に残っ
た木材で、こんな物を作ったんだが、これでよかったのかなぁ~。」
ロシュエと司令官は隙間を見たのだ。
「お~、やったねぇ~。」
と、ロシュエは喜んだ。
司令官はと言うと、唖然としている、何故だ、何故、この人達に自分が考
えた方法が知れたんだろうか、だが、此処でも、主力は農民だった、兵士達
は運搬を担当している。
「閣下、何故、この人達に私の考えて要る事がわかったのでしょうか。」
ロシュエも農民も二コ二コとしている。
「司令官、其れが、其れが、オレ達、最初の人間の考え方なんだ。
一人は、みんなのため、みんなは一人の為にって話だよ。」
司令官は頷くしか無かったのだ。
ロシュエが言った、一人はみんなの為に、みんなは一人の為に、其れは、
一人一人が考え行動する事なのだ。
「閣下、私は、改めて驚いています。
閣下は、其れが、普通だと思われて要るのですね。」
ロシュエは頷き。
「そうだよ、だから、オレは、此処では、何も命令はしないんだ。
オレが、考える様な事は、此処のみんなが考えて要るんだから。」
「閣下、私は、やはり、まだ、未熟です。
皆さんの足元にも近づけませんから。」
「司令官、そんな事は無いよ、オレは、人には出来る事と、出来ない事が
有ると思うんだ、司令官は、兵士達を上手く操縦し、犠牲者と出さない方法
を考えて欲しいんだ。」
「はい、閣下、私は、今回の任務では、最初が、一番、大事だと思ってお
ります。
私は、隊長達を集め、作戦を立案します。」
だが、司令官も敵方の事は知らないのである。
だが、その数日後だった。
「お~い、馬車がこっちに向かってくるぞ。」
城壁の上で兵士が怒鳴ったのだ。
「其れは、何人なんだ。」
「其れが、5人なんだ。」
「何、5人だって、じゃ~、あの城の偵察に行った仲間かも知れない
ぞ。」
「如何したんだよ~。」
「あっ、将軍、実は、馬車が此方に向かって。」
「わかったよ、どうだ、はっきりとわかったのか。」
ロシュエは兵士に聞いたのだが。
「はい、将軍、多分、多分ですが、私達の仲間だと思いますが、まだ、は
っきりとは確認が出来ておりませんので。」
「よし、わかった、確認出来次第報告せよ。」
「はい、将軍。」
その時、司令官もやってきた。
「将軍、如何でしょうか。」
「うん、まだ、最終確認が出来て無いが、多分、偵察に行った、あの5人
だと思うんだ。」
「何かあったのでしょうか、戻ってくるのが早すぎますので。」
「その通りだ、オレも、其れが、一番心配なんだ。」
それから、暫く経って。
「お~い、やはり、あの偵察隊の5人だ、早く門を開けろ。」
城門が開き、5人が乗った馬車、3台が走り込んできたので有る。
「お~い、将軍は。」
「何があったんだ。」
「早く、将軍に知らせる事があるんだ。」
「わかった、直ぐに呼んでくるからな。」
5人は、馬車から降り、近くの長椅子に座ったのだ。
「お~、将軍と司令官が走ってきたぞ。」
ロシュエと司令官は走ってきた。
「おい、大丈夫か、一体、何が有ったんだ。」
「将軍、実は、うっ。」
「お~い、誰か、水を持って来てくれ。」
その時、イレノア達が飲み水を持ってきた。
この時、ロシュエは感じていた、このイレノアは良く気がつく娘だと。
「おい、水だよ、ゆっくりと飲むんだ。」
イレノアは、5人に飲み水を渡し、ロシュエの側に立つのだった。
「将軍、実は、私達は、大軍を発見しました。」
ロシュエと司令官の周りには、5人の隊長と多くの兵士が集まった。
「何、大軍だと、其れは、どの辺りだ。」
「私達が、この農場を出て20日も行ったところに、あの城の城下らしき
町並みが見えたですが、その手前に小高い山があったんです。
その麓に多勢の兵隊達が集結しておりました。」
「うん、それで、人数だが、大体でいいんだよ。」
「私と彼とが確認しましたが、3万人は居ると思います。」
司令官と隊長達は驚くのである。
「3万の軍隊か、大変な数だなぁ~、それで、君達は、軍隊に見つかった
のか。」
「いいえ、将軍、其れは大丈夫です。」
隊長達は、今まで、3万人の軍隊と戦の経験は無かった。
「閣下、私は、今まで、その様な大軍と戦った事が無いのですが。」
「おい、おい、司令官も、バカ正直だなぁ~、そんな話を、みんなの前で
しゃべってもいいのかよ~。」
と、ロシュエは笑っているのだ。
だが、司令官はロシュエや、今の仲間に本当の事を言ったので有る。
「閣下、私は、別にm戦が恐ろしいのでは有りませんが、今まで、多くて
も数百人程度でした。
その事は、隊長達も、兵士達も知っておりますので。」
「よし、わかったよ、司令官、その前に、彼らから、詳しく話を聞く必要
があるんだ。」
「はい、閣下、申し訳有りません。」
「うん、其れでだ、その軍隊は、此方に向かっているのか。」
「いいえ、将軍、私達が見た限りでは、まだ、出発はしていませんでした
が、其れよりも。」
「何、まだ、何かあるのか。」
「はい、私の見たところでは、まだ、続々と集結しております。」
「そうか、では、最終的には、4万から5万人近くになるなぁ~、司令官
も良く聞いて置いてくれよ、後の作戦は、司令官と隊長達で考えて欲しいん
だよ。」
「将軍、まだ、報告する事が。」
「おい、おい、余り、驚かすなよ、まだ、何かあるのか。」
「はい、将軍、私達が見た3万人の中に、之は、何処から見ても兵士では
無いと思われる人達が居るんですが。」
その時、イレノアの顔付きが変わった。
「将軍、宜しいでしょうか。」
「イレノアか、いいよ、聞かせてくれ。」
「はい、将軍、私達が、此処に着いた時にお話しをさせて頂いた事を思い
出して頂きたいのですが。」
「イレノア、済まないよ、オレは、頭が悪いんで、覚えて無いんだよ。」
「はい、将軍、今、言われましたよね、何処から見ても、兵士に見えない
人達が居るって。」
兵士は頷き。
「将軍、あの人達は、兵士じゃ無いと思うんですよ。」
「将軍、多分だと思いますが、あの城主は、平気で、何も、出来ない領民
を兵士として、軍隊に入れるんです。」
「そんな事をしたって、戦では、何の役にも立たないぜ。」
「将軍、その兵士と思われる人達なんですが、先頭に方にいるんです。」
「何、先頭にか、何で、先頭に立たせるんだ、オレには、理解が出来ないよ。」
ロシュエは驚いている。
「閣下、今の話が本当だとすれば、話は簡単ですよ。」
司令官は、別の方法を考えていたのだ。
「何が、簡単なんだよ、先頭は本物の兵隊じゃ無いんだぞ、誰が見たって
一番先に殺れるんだからよ。」
「閣下、其処なのです、私でも、先頭の集団から攻撃しますから。」
「そうだろうよ、それでだ、先頭の集団の武器ってどんな物を持って要る
んだ。」
「将軍、其れが、武器のような物は持ってないんです。」
「なんだって、武器は持って無いって、本当か、武器を持たない、軍隊な
んて、オレは、聞いた事が無いぜ。」
「私が、見たところでは、長い木を持ってはおりましたが。」
「木の棒で戦えというのか。」
「私は見ただけですので。」
ロシュエはあきれている、木の棒で、戦に行くのは無謀だと思って要る。
「将軍、私達も、その話は聞いた事があるんです。
周辺の村から集めた領民を先頭に立たせると、敵は。」
「閣下、イレノアは知って要ると思います。
駆り出された領民は、全員村に戻ってこなかったと。」
「当たり前だろうよ、敵は、先頭が兵隊だろうが、領民だろうが関係なく
殺していくからなぁ~、じゃ~、何か、本隊は無傷で戦闘に入るのか。」
イレノアは頷いたが、其れ以上の話はできなかったのだ。
「閣下、その人達が、最初の犠牲者になるんですよ、其れが、あの城主の
戦法だと、私は思います。」
「だがよ、武器を持たない兵士じゃ、直ぐに殺れるぞ、一体、何を考え
て、そんな戦法を使うんだ。」
ロシュエに、理解が出来る戦法では無かったので有る。
「閣下、私は、冷静になって考えて見たのですが、城主の目的はに、他に
有ると思うのです。」
ロシュエは頷き。
「なるほど、司令官、オレも、少しわかってきたような気がするんだ。
この城主は、先頭の領民を人間とは思って無いのだ、それで、領民を先頭
に立たせる事で、敵方は、先頭に立つ者に集中して攻撃、之は、矢を大量に
放つ事になるんだ、先頭の領民は全員殺せば、それだけ、矢を使うと言う事
は、敵方の矢が減るということで有る。」
「私も、その様に思います。」
「其れじゃ~、先頭の領民は見殺しにするのだなぁ~。」
「私も、先頭の兵士に狙いを定めますから。」
ロシュエは、少し納得したのだ。
「そうだな、オレだって先頭から殺るよ、其れが普通だからなぁ~。」
「それで、その先頭集団ははっきりと区別出来るのか。」
「はい、将軍、簡単にわかります。」
「じゃ~、その後は。」
「先頭は平服です、その後ろは、軍服を着た軍隊ですので、簡単に見分け
がつきます。」
ロシュエは、戦法を考えついたのである。
「よし、わかった、それで、君達が見たところで、何日位で、農場に着く
と思うか。」
「私は、後、10日もすれば先頭は着くと思いますが。」
「よし、わかった、ご苦労だったな、ゆっくりと休めよ。」
「閣下、では、至急に戦略を考えたいのですが。」
「司令官と隊長は、オレの部屋に来てくれ。」
「閣下、わかりました。」
「将軍、言い忘れましたが、私達が、軍隊を発見した場所は、この森の外
れでした。」
「本当か、其れじゃ~、この森は馬で20日も、行くところまで続くのか
ぁ~。」
「私達も、最初から森の中を行きましたので間違いは有りません。」
ロシュエは、作戦を変更するのである。
「司令官、この森で戦になるぞ、これで、作戦会議は必要がなくなった
ぞ。」
司令官も隊長達も意味が理解できないのだ。
「閣下、私は、意味がわかりませんが。」
「司令官、簡単に言うが、今から全員で森で作っている、なんとかいう
か、柵だな、あの柵を作るんだよ~。」
「閣下、今からでは。」
「司令官、何を言っているんだ、この農場を守る為に作るんだよ、初めは
広く、次第に狭くしていくんだ。
敵方の最初は領民だよ、領民は助けるんだ、だから、領民には何もする
な、後の兵隊だけを殺るんだ、其れも、一度に、殺る必要は無いんだ。
オレ達は、この森の中を自由自在に動く事が出来る様に少人数を配置する
んだ、其れと、身軽な装備でな。」
「閣下、わかりましたよ、少人数で、敵の数十人を倒して、直ぐに逃げる
んですねぇ~。」
「そうだ、敵は、多勢だから動きは鈍い、其処が付け目なんだ、だがな、
先頭の人達は多分領民だから殺るなよ。」
司令官も隊長達もやっと理解できたのである
「では、今から、10日の内に柵を完成させましょう。」
「各隊長はすぐに戻り、兵士達に伝えてくれ、司令官とオレで農場の人達
に話すからよ~。」
ロシュエと司令官は農場へ、隊長達は兵舎に向かった。
そして、遅くても10日後には大軍が攻撃してくる事を話し、防御柵が必
要だと説明を理解するまで少しの時間が要ったのだが、農場から男達が全員
と兵士達は見張りを除く全員が森に入り、防御柵に必要な大木を切り出し、
防御柵を作るのだ、彼らは必死で棚を作った。
其れは早朝から、太陽が沈むまでである。
だが、誰も、不満を言う者などいなかったので有る。
攻撃を受けて、死を待つよりも、其れは、楽だったのだ、そして、全員で
作った柵は予定よりも早く完成したので有る。
この間、農場の女性達も同じだった、男達全員の食事を作り、そして、全
員に配る。
其れは、農場に居る全員が一致団結する。
ロシュエや司令官も先頭に立ち、指揮をするのではなく、自らも切り出し
から柵作りに入っていくので有る。
農場の人達は数日間の休日を取った、兵士達も2日間の休みを取り、今度
は最強の武器となるホーガンを持って森の中へと消えて行った。
偵察隊はそれよりも早く、柵の完成を待たずに森に入り、敵軍の動きを監
視に入った。
その数日後。
「お=い、敵軍が来たぞ、将軍に知らせてくれ。」
「よし、わかった、将軍に伝えるからなぁ~。」
その伝令は直ぐに戻り、ロシュエに報告した。
「司令官、戦闘準備だ。」
「はい、閣下、わかりました。」
ロシュエは、兵舎に陣取っていた。
「全軍、直ちに、戦闘準備だ、大急ぎで森に入れ。」
司令官は久し振りの戦闘なので武者震いをしている。
司令官の命令で百台近い馬車が森の中へと入って行く。
この農場始まって以来の戦争で、其れは、ロシュエも司令官も経験の無い
戦争に成るのは間違いは無い。
伝令の兵士も大変な緊張で。
「おい、どうだ、敵は。」
「将軍、敵は、森の中へと入ってきました、其れと、やはり、先頭は武器
を持たない領民だと思われます。」
「よし、其のまま、監視を続けろ。」
「はお、将軍。」
その頃、敵軍の先頭は森の中に入って行く。
大軍では有るが、森の中には、ロシュエの指示通り、辺り一面には数千人
が本隊を待って要る。
先頭の領民達は、何事も無く通り過ぎて行くだが、本隊が通り始めた、そ
の時だ。
「よし、今だ、打て。」
大声では無いが、それでも次々と伝わって行く。
それと同時に、次々と森の中から弓から放たれた矢が兵隊達を襲う。
森の中に潜む兵士達は、矢を放つと直ぐに森の奥深く消えていく、敵軍の
追っては何も出来ず、元に戻る時、また、森の中から一斉攻撃を受ける、そ
の様な攻撃を受けて要る内に敵方の兵士達は脅え出す。
その様な攻撃は数日間も続き、2万人の軍隊は、今では半分以下の人数に
なったので有る。
それでも、半分になった兵隊達も反撃に出る。
その反撃で森の中に潜む兵士達の中からも戦死する兵士や負傷する兵士も
出てきた。。
だが、果たして、敵軍の兵士達は何人が生き残り、城壁に辿り着けるのだ
ろうか。
数日間戦闘は続き、それでも生き残った兵隊は城壁を目前にした。
その時、敵方の指揮官と思われる人物が号令を発したので有る。
「全員、突撃だ、進め。」
半分になったとはいえ、やはり其処は軍隊だ、武器も揃って要る、其れ
は、ロシュエ達が初めて見る武器も有ったのだが、ロシュエ達の備えは十分
で有る。
最初は攻撃に対しても持ち応えてはいる。
だが、敵は軍隊だ戦い方を知り尽くしている。
数日後には、最初に造った木造の壁が突破され、その数日後には、手前の
壁も突破された。
だが問題はロシュエ達が造った城壁だ、この城壁の造りは、敵軍も初め
てと見え城壁を登ろうとするが全く登る事が出来ない。
この敵は城壁の攻め方を考えて要るようだ、城壁の上からは、農場で掘り
起こされた大小の岩が次々と城外の敵に向かって投げつけられて行く。
その城内からは森へと通じる通路からも次々と矢が放たれている。
この通路も、内外は木材で外側は大小の岩石を積み上げて造られてい
るのだ。
その数日後、新たな敵軍が到着した。
今度の敵軍はは正規軍だと見られ、敵軍は普通の兵器を持ってきたのでは
ない。
「司令官、あれは軍隊だよ、其れも正規軍の様だな。」
「では、閣下、この敵軍は確かに正規軍の様です。
すると、前に居る敵は、一体。」
偵察隊が見た敵軍は本隊では無かったのである。
一体、何者なのか、ロシュエも司令官も知らなかったのである。
「司令官、前の敵だが、何か変わっていると思わないか。」
司令官は前面の敵を見ている。
「司令官、あの兵士達の動きだが、何処かで見たような戦い方だと思うん
だが。」
司令官は思い出した。
「閣下、之は、野盗では無いでしょうか。」
「司令官も、そう思うか、オレもだよ。」
「閣下、野盗が、何故、軍服を着ているんでしょうか。
その時、指揮官と思われる兵士が。
「全員、攻撃を中止せよ、一度、退却する。」
と、命令を出し、残った兵士は正規軍と思われる本隊へと向かった。
が、まだ、正面には、数千人の兵隊か野盗と思われる兵士が残っている。
その彼らは、身体の振るえが止まらないようで、城壁の側で座り込んでい
るのだ。
「司令官、此処に居てくれよ、オレは外に出て見るからな。」
司令官は驚き。
「閣下、其れは、駄目ですよ、まだ、何もわかっておりませんので。」
と、言うのだが、ロシュエは、司令官の言葉を無視して外に出ると。
「おい、お前達は本当の兵隊なのか。」
野盗達は脅えている。
「いいえ、オレ達は農民なんです。」
やはり農民だったのだ。
「やはりか、では、何故、敵の兵隊と一緒に着たんだ。」
「其れが。」
「わかった、話は、後で聞く、みんな中に入れ。」
領民と思われる兵士達、実は、あの城主が治めている農地の農民だ。
「本当にいいんですか。」
「いいんだから、早く入れよ。」
農民達は、次々と中に入って行く。
だが、敵は何もせず、野営に入ると思われるのだ。
「司令官、敵はどうやら野営するらしいぞ。」
「閣下、そのようですね、我々も、少し休憩する様にしては如何でしょう
か。」
「そうだなぁ~、司令官、見張りだけは頼むぞ、オレは、少し用事を思い
出したんでよ~。」
「閣下、わかりました、では、お気をつけて。」
司令官もわかっている。
ロシュエは、何を思ったのか、外に出た、すると、城門の外で弓と矢を集
めだした。
司令官も知らなかったのだが、敵も見方の関係なく、ロシュエは、両手に
抱えて戻って着た。
「将軍、なんですか、その弓と矢は。」
兵士達も知らなかった。
「お~、これか、何でも無いよ、オレは使える武器を探してたんだ。」
「じゃ~、オレ達も手伝いますよ。」
と、数人の兵士も加わり暗くなった城外で武器の調達を行って要る、その
内に、兵士の数も増え、数十人となり、其れは、夜遅くまで続いた。
ロシュエと兵士達は疲れから眠っている。
「閣下、閣下、起きて下さい。」
「お~、司令官、なんだ、敵が動き出したのか。」
「いいえ、違うんですよ、敵の姿が見えないんです。」
「何、本当か。」
敵は、一体、何処に行ったんだ。
「本当なんです、今、確認の為に偵察隊を出しました。」
「よし、わかった、其れじゃ~、順番に休みを取れ、其れと、食事もだ、
おっと、忘れてたが、我が方の損害だが。」
「閣下、残念ですが、兵士10名の戦死を確認しました。
其れと、怪我人ですが20人ほどです。」
司令官も、初めて戦死者を出し、気持ちが落ち込んでいる様で有る。
「そうか、大変、残念な事をしたなぁ~、戦士した兵士は丁重に埋葬して
欲しいんだ。」
「はい、閣下、私も、初めて戦死者を出しましたが、気持ちを切り替えて
おきます。
戦死者の埋葬地なんですが。」
「其れは、農場の共同墓地に埋葬してくれ。」
ロシュエは、農民も兵士も同じ扱いだと思っていたのだ。
「はい、了解しました。」
「其れと、さっきの農民達は、今、どうしている。」
「其れが、その中にですが、閣下、あの娘達の父親が数人居るんです。」
「何、今、なんて言った、あの娘達の父親がいただと、本当なのか。」
「はい、閣下、間違いは有りません。」
「わかった、今から、その農民達の所に行くから、司令官も、一緒に来て
くれ。」
「はい、閣下。」
と、二人は娘達の居る住居に向かった。
兵舎から、娘達の住居まで、少しだが離れている、二人は大急ぎで娘達の
居る住居に行った。
「お~い、イレノアは居るか。」
すると、イレノアと一人の男が出てきた。
「将軍、本当に、有難う御座います。」
ロシュエは少し驚いたが。
「イレノア、どうしたんだよ、彼はいったい。」
「ハイ、将軍、私の父です。」
イレノアの頬には、嬉し涙が落ちるので有る。
「将軍様、本当に有難う御座います、お陰で私は助かり、二度と会えない
と思っておりました、娘のイレノアと再会できました。」
と、言って、イレノアの父親だと名乗る男は涙を流すので有る。
すると、数人の娘達も表に出てきた、その側には父親らしき男達が手を合
わせ涙を流しながら、何かを言っているのだ。
「イレノア、あの男達は。」
「将軍、彼女達の父親なんです。」
「じゃ~、あの男達は君達の村から連れ出された人達なのか。」
「いいえ、私の父だけです、後は、他の村からです。」
「よし、わかったよ、それで、他の人達は。」
「将軍が居れましたところにいます。」
「其れじゃ~、悪いが、イレノア、君達も一緒に着てくれ、話を聞きたい
んだ。」
「将軍、何を聞きたいのですか。」
イレノアは、何を心配して要るのだろうか。
「イレノア、何も心配するなよ、みんなの話を聞きたいだけなんだ、其れ
と、みんなが住んでいた村の場所もだよ。」
ロシュエは何が原因なのかわからないのだが、一人いらいらとしている。
「司令官、行くぞ。」
ロシュエの表情は何時に無く怖いとイレノアは思った。
ロシュエは本当に怒って要るのだろうか、だが。
「みんな、聞いて下さいね、皆さん、本当は、農場で働いておられたんで
すか。」
「将軍様、その通りで、御座います。
全員が、村では畑で野菜や果物を作っている農民なんです。」
ロシュエは頷き。
「わかった、オレは、その城主もだがよ~、兵隊を許す事が出来ないん
だ、それで、みんなに聞きたいんだ、皆さんと一緒に来た連中の事ですが、
皆さんが、知って要るだけで良いので教えて欲しいんだが。」
「将軍様、あの連中は、お城の兵隊じゃ、無いんです。」
やはりロシュエの思ったとおりだ。
「やはり、そうでしたか、実はね、我々も、少し変だと思ってはいたんで
すよ、軍隊にしては、指揮系統がはっきりとして無かったんで。」
「将軍様の言われる通りです。
数人の上層部の兵隊は本物の兵隊なんです。
ですが、殆どが野盗だと聞いておりました。」
「其れじゃ~、あの城では、どの国を攻撃する時でも、今回と同じ方法を
取るのですか。」
「私は、その様に聞いています。
それに、今日、来た仲間は、今日が初めてなんですよ、それに、他の仲間
が攻撃を受けなかったのは、今回が初めてだと言ってました。」
「では、いつも、一番先に攻撃を受けると思っていたのでは。」
「勿論ですよ、オレ達の前の人達は最初に攻撃を受けたんで、全員が殺さ
れました。」
この男は別の村から来たのだ。
「其れは、何時頃からだったんですか。」
「はっきりと覚えて無いんです。
何時も恐ろしいかったので、でも、将軍様のお陰で、私達は、助かりまし
た。」
「其れは、良かったですね、其れと、之は関係が無いと思いますが、何
故、急に兵隊が引き上げたのか、わかっておられるだけでいいのですが。」
「はい、将軍様。」
別の農夫だったが、この農夫はフランチェスカの父親だった。」
「宜しいですよ、何でも言って下さいね。」
「はい、将軍様、私は、みんなと初めて会ったのが、10日位前だったん
です。」
「えっ、じゃ~、皆さんは、最初から一緒では無かったんですか。」
農夫達はお互いの顔を見て頷いているのを、ロシュエは驚いたのだ。
「そうなんです、私と、隣の彼とは別の軍にいましたが、10日位前に、
今の軍に入れられたんです。」
この農民達はバラバラだったと言う事に成るのだと。
「其れは、大変な苦労をされたんですね。」
「いいえ、将軍様、私と彼は別の軍では食料の調達が専門の軍でした。」
「食料調達専門の軍隊があるんですか。」
すると、イレノアの父親も。
「将軍様、オレ達の軍もそうですが。」
あの国は、軍隊と言う名の略奪専門の兵隊を持って要るんだと、ロシュエ
は思ったので有る。
「じゃ~、此処に居られる、皆さんは、食料調達専門の軍隊に居られたん
ですか。」
「はい、将軍様。」
と、別の農夫が手を上げたのだ。
「お聞きしますので、お話し下さい。」
「将軍様、オレは遠くの隊に居ました。
其処は、お城を、攻撃する専門の軍なんです。」
「其れじゃ~、なんですか食料を調達する兵隊は野盗に入れて、農村を襲
うのですか。」
「はい、将軍様の言われる通りです。
オレ達の後にいたのが、お城に雇われた野盗なんです。」
「じゃ~、後から来たのが正規軍なんですか。」
「その通りで、将軍様、でも、あの兵隊は本当に恐ろしい人達です。
私は、あんな恐ろしい兵隊は見た事も無いです。」
ロシュエの気持ちは更に強くなったのである。
「こりゃ~、大変なヤツを相手にしたなぁ~、司令官さんよ~。」
ロシュエはニヤリとするのだ。
「はい、閣下、でも、敵にも必ず弱点は有ります。
私は、その弱点を探し、其処を攻撃すれば、我々にも勝ち目は有ると思い
ますが。」
「じゃ~よ、司令官の言う弱点とはなんだと思う。」
「私が、先程から聞いておりましたが、あの兵隊というよりも、あの軍
隊、それも、正規軍なんですが、食料が弱点だと考えました。」
「将軍様、オレは見たんです。」
「何を、見られたんですか。」
「オレは、食料の調達でしたから、略奪した食料を城に持って帰るんです
が、あの城には、食料の蓄えが無いんです。」
之は、驚いた、確かに、あれだけの軍勢だから大量の食料が必要に成る。
「何ですって、食料の蓄えが無いのですか、それでわかりましたよ、食料
調達専門の軍が必要なのが。」
「閣下、これで、敵の弱点がはっきりとわかりましたね。」
「その様だなぁ~、しかし、待てよ、じゃ~、あの正規軍は何処に行った
んだよ~。」
「将軍様、オレ達も、何度か有りましたが、将軍様の、お城は簡単に落と
せないとわかったんじゃ無いんですか。」
ロシュエは頷き。
「我々の農場は敵が考えて要る程、甘くは無いよなぁ~、司令官。」
「はい、閣下、その通りで御座います。」
「其れじゃ~、聞きますが、食料が無い事はわかりましたが、じゃ~、次
にどの辺りの農村を襲うと思いますか。」
「はい、将軍様、この農場と言いますか、このお城から10日位行ったと
ころに大きな川が流れているのをご存知でしょうか。」
「あ~、あの大きな川ですか、知っていますが。」
「将軍様、その川の近くに小さな農村が有るんですが。」
「其れは、知らなかったなぁ~。」
「その農村を、次ぎに襲って食料を奪うと聞いたんですが。」
「其れじゃ~、その農村が危ないなぁ~。」
「閣下、その農村の人達を。」
司令官も、ロシュエの考えて要る事はわかったのである。
「司令官、その農村を襲って食料を奪い、体制を立て直して、次に、我々
の農場を攻撃すると、オレは、思うんだがねぇ~。」
ロシュエは、何か良い方法は無いか考えるのだ。
「将軍様、あの大きな川を渡らないと、でも、無理ですよ、あの川は深い
んです。」
「其れじゃ~、敵はどうして、その農村に行くんだ。」
「将軍様、あの軍隊は、20日間ほど、行ったところに狭くなっていると
ころが有るんですよ、その狭いところなんですが、橋が架かっていますの
で、その橋を行くと思います。」
「何故、其れを知って要るんですか。」
「オレも、一度行きましたので。」
「其れじゃ~、その橋以外の場所からは、川を渡る事は出来ないと言われ
るんですか。」
「将軍様、オレは、其れ以上の事は知らないんです。」
「いや、すまないね、別に、貴方を責める訳じゃ~無いんですよ。」
「将軍様、オレは将軍様の気持ちはわかっていますので。」
ロシュエは、何としてもその農村を救いたいのだと。
「司令官、何か良い方法を考え、その農村を助けると言う事は。」
「閣下、私も、十分承知しておりますので。」
「司令官、兵士を集めて。」
「閣下、其れ以上は無用です、私が、必ず、農村の人達を助け戻ってきま
すので。」
司令官は、この時、何も方法を考えていなかった。
其れは、川に着いてから考える事にしたのだ。
「司令官、済まないが、宜しく頼むよ。」
「はい、閣下、では。」
と、司令官は、急ぎ兵舎に向かうので有る。
「一番大隊は集合せよ。」
司令官は、兵舎に到着後直ぐに号令をかけたのだ。
この一番隊は、特に、優秀な兵士が多く、隊長も、最高の軍人だと司令官
は思って要る。
「隊長、直ぐに出発の用意だ、今度は大きな川を渡りますから。」
「はい、司令官、それで、行き先は。」
「此処から、10日位のところに農村があるそうだ、その農村の人達を助
けるのだ。」
「司令官、持参する食料は。」
「先の事はわからないが、隊長に任せる、其れと装備の中にロープを出来
るだけ多く用意する事も忘れるなよ。」
「では、馬車も必要になりますね。」
「隊長、其れと、斧も多い方がいいぞ。」
「司令官、了解しました。
其れと、兵士の人数ですが。」
「そうだな、若い者がいいが、弓の上手な者と斧も上手に扱える者を中心
に百人くらいで良いと思うが。」
「司令官、その場所はご存知なんですか。」
「実は、私も、知らないんだ。」
「では、少しでも知って要る者が宜しいですね。」
「その通りだ、他の隊からでも良い、とにかく、一刻も早く行く事が大事
なんだ。」
「わかりました、司令官、確か、一度ですが、3番隊が偵察に行ったよう
に思うのですが。」
「よし、3番隊の隊長と相談してくれ、出発は装備と兵士が集まった時点
で行くからな。」
「はい、司令官、承知しました、では。」
と、1番隊の隊長は直ぐに部下に命じ、出発の用意とするのだ。
一番隊の隊長は、3番隊の隊長と相談し、数人の兵士が選ばれた。
司令官は、自室に戻り、出発の用意をするので有る
その準備は早かった。
「司令官、兵士と装備は完了しました。」
「そうか、では、集合させてくれ、私は、閣下の所に行ってるから。」
と、司令官は、急ぎロシュエの元に行くのだ。
「閣下、今から、出発します。」
「司令官、済まないが、宜しく頼むぞ、オレも、其処まで行くよ。」
と、二人は兵士達の所に行くのだ。
「君達には、大変、無理な任務を頼み、済まないと思って要る。
司令官は、全てを知って要るが、簡単に説明する。」
ロシュエは、兵士達に、今回の任務がどれ程大事で有るか説明し、その話
を聞いた兵士達は、全員が納得した。
「閣下、では、出発しますので。」
「司令官、何も情報は無いが、よろしく頼む、じゃなぁ~、気を付けてな
ぁ~。」
司令官と兵士達はロシュエに敬礼し城門を出るのだ。
「お~い、みんな、必ず戻って来るんだぞ~。」
城壁の見張りは手を振った。
ロシュエは、司令官達が出たのを確認して、農民達の元に戻ったのだ。
「皆さん、お待たせしました。」
「将軍様、皆さんは、本当に大丈夫でしょうか。」
「いゃ~、何も心配は要らないよ、司令官の事だから、何とかするよ。」
「でも、やはり心配に成りますよ。」
彼らも、司令官達が心配なのだ。
「司令官は、特に、優秀な兵士を集め、装備も特別に用意したと聞いてい
ます。
其れよりも、あの城での話を聞きたいのですが。」
「将軍様、さっき、思い出した事があるんですが。」
「わかりました、では、お話しして下さい。」
「はい、将軍様、実はですね、あのお城には、外から入る事が出来るんで
すよ。」
ロシュエは驚いた。
「えっ、本当ですか、でも、其れは、城主も知って要るんでしょう。」
「将軍様、多分ですが、知らないと思います。」
之は、本当の驚きだ、城の抜け穴を城主が知らないとは。
「何故ですか、そんな入り口を城の者が知らないとは。」
「この入口なんですが、オレが、偶然に見つけたんですよ。」
だが、ロシュエは簡単に信じる事が出来ないのだ。
「何故、城の者達が知らないんですか。」
「将軍様、オレも、詳しい話を聞いたんじゃないんですが、城の兵士じゃ
ないんですので。」
「其れじゃ~、一体、誰からなんですか。」
「今日、殺っつけた野盗からなんです。」
「えっ、野盗からですか、でも、野盗が、何で知って要るんですか。」
「オレが、丁度、食料を地下にある倉庫に運んでいる時でした。
二人の野盗が話をしてたんです。」
「なんて、言ってたんですか。」
「其れがですね、この城には、何箇所か、誰も知らない出入り口が有るら
しいと。」
ロシュエは、何としても秘密の出入り口を知りたいのだ。
「それで、貴方は、どうされたんですか。」
「二人の野盗は食料を置いて戻っていきましたので、オレは、何処に、有
るのか探したんですが。」
「でも、何時、誰が、来るかも知れないんでしょう。」
危険な捜索だと、ロシュエは思ったのだ。
「其れは、わかっていましたが、オレは、何度も、食料を運んで行ってま
したんで、直ぐに戻らなくても、誰も疑ったりはしませんでした。
それに、その場所には、お城の兵士達も、来る事は無かったんです。」
「でも、何故、兵士が来ないんですか。」
「兵士達は、出撃の無い時は、城外で戦闘訓練をして要るんです。
それで、殆ど、城の中には入って来ないんです。」
「わかりました、でも、その出入り口を探すのは大変だったと思います
が。」
「将軍様、其れがですね、オレが、食料の入った袋を落としたんです。」
「ほ~、其れは、良く有る事ですからね。」
ロシュエは二コットした、。
其れは、彼が、相当緊張していると思ったのだ。
「その袋がですね、何で、その場所に当たったかはわかりませんが、倉庫
に入った、直ぐのところに有る大きな石に当たったんです。」
「じゃ~、その石が開いたんですか。」
「はい、将軍様、その通りです。
でも、その時は、何もせずに戻ったんです。」
何時も、見ている大きな石が扉になっているとは。
「ですが、略奪した食料は大量に無いんでしょう。」
「そうです、何時もであれば、でも、その時は大量に有りましたので、明
くる日も、次の日も倉庫に運ぶ様に言われたんです。」
「それで、明くる日も倉庫に入れたんですか。」
ロシュエは、頭の中ではイライラとしている。
だが、彼らを責める事は出来ない。
「そうなんです、オレは、朝一番に運べと言われましたので、夜明けを待
って、一回目の食料を運んで行ったんですよ、で、その時、昨日、動いた岩
を知っていましたので、手で押したんです、すると、簡単に開いたんで
す。」
「でも、食料を、運ぶには貴方一人なんですか。」
「いいえ、でも、後から運ぶ人は遅くなると知っていましたので。」
彼は、危険を承知で秘密の出入り口を探したのである。
「で、貴方は、その穴に入って行ったんですか。」
「入りましたが、倉庫の中は暗いので、何時も、松明だけは持っていきま
したので。」
「うん、うん、それで。」
早く教えてくれよ、ロシュエは思って要る。
「オレは、松明を持ってその中を歩いて行きました。
暫く行くと、明るいところに入ったんです、その明るいところは、城の外に
有る井戸だったんです。」
ロシュエは驚いた、正か、城外の井戸に通じているとは。
「じゃ~、その井戸からも入れるんですか。」
「入れると思いますが、井戸の中の途中に、倉庫に通じる穴が開いていま
すので。」
「ですが、その井戸は、今も使っているんでしょう。」
「其れが、使って無いんですよ、井戸の底には水も無かったんです。」
この井戸は、初めから空井戸だったと、城内から脱出する為に作られたの
だが、でも、誰も知らないのだ、と、ロシュエは思うのだ。
「じゃ~、空井戸ですね。」
「将軍様、オレは、詳しい事は知りませんが、井戸の近くには林が有りま
すよ。」
「有難う、其れじゃ~、貴方には申し訳ないですが、何れ、その城に行く
事もあると思いますが、その時には、案内をお願いしたいのですが、宜しい
でしょうか。」
「はい、将軍様、オレに出来る事が有るんだったら、何でもしますか
ら。」
ロシュエは、これで、作戦は立てやすいと思った。
其れは、あの城には食料の蓄えが無い。
そして、城内に通じる隠された出入り口が有る。
だが、問題は出入り口に近づく方法だ、井戸に入る事が出来れば、簡単に
場内に入る事が出来る。
その前に、彼ら言った農場から助け出す事が先決だ、その農場の人達を助
け出すために、司令官達も、先程、出発したばかりなのだ、司令官が戻るま
でには作戦を纏める必要が有る。
「将軍様、オレ達にも、何か、お手伝い出来る事があれば言って下さい
よ。」
農場を出発した、司令官達は予定よりも早く8日目の昼頃、目的地に近い
大きな川に到着した。
「よし、今日は、此処で野営するが、明日の朝一番に川を渡るので、今か
ら、筏を作る作業に入る。
班を編成し、作業を開始せよ。」
兵士達は手分けし、適当な木を探し、切り倒し、筏作りに入るのだ。
「この川は、広いなぁ~、流れはどうだ。」
一人の兵士が木の切れ端を飛ばした、司令官も木片の流れを見ている。
「司令官、流れは、それ程速いとは思いませんが、川幅が広いので、簡単
には渡れないと思います。」
司令官も暫く見ているのだ。
「何か、方法が有るはずだ。」
その間も、筏作りは進められている。
「司令官、この川を筏で渡るんですか。」
「うん、だけど、とても、無理だなぁ~、何か、別の方法を考えなけれ
ば。」
この川は、百ヒロは有る、だが、川の流れはそれ程速くは無い、その時。
「司令官。」
と、若い兵士が前に来たのだ。
「何か、方法が見つかったのか。」
「いいえ、司令官、自分は泳ぎに自信が有るんです。」
「今、何と言った、君は、この川を泳いで渡るつもりなのか。」
「はい、その通りです。」
と、若い兵士は二コ二コとしている。
「だが、川幅は、百ヒロは有るぞ。」
それでも、若い兵士は、二コリとして。
「自分は、泳ぎに自信が有ります。
子供の頃、近くの川をいつも泳いで渡っていましたので。」
若い兵士の住んでいた村には、この川よりも大きな川が流れていた。
「司令官、自分が住んでいました、村にはこの川よりも大きな川が流れて
いました。
其処では、何時も、向こう岸まで泳いで渡っていましたので。」
「だがなぁ~、君に、若しもの事が有れば。」
司令官は、直ぐに答えを出す事が出来ないと。
「司令官、自分は、この川を渡ったところに有る。
村の人達を助けたいんです、何とか、お願いします。」
若い兵士は、司令官に頭を下げたのだ。
すると、他の兵士が。
「司令官、彼に、行かせて下さい。
私は、泳げませんが、彼なら、絶対に出来ると思います。」
その兵士も頭を下げたのだ。
「そうか、君達の気持ちも同じなのか。」
「はい、司令官、自分達の任務は村の人達を救う事だと思いますので、是
非とも、お願いします。」
「よし、わかった、では、頼むぞ、其れとだ、君の身体にロープを巻く
ぞ。」
「はい、司令官、私の身体には、出来るだけ細いロープでお願いします
よ。」
若い兵士は軍服を脱ぎ、よし、行くぞと気合が入った。
「じゃ~、誰かロープを持って来てくれよ。
其れとだ、ロープの端は数人で持つ様に、彼に、何か、あった時には直ぐ
にロープを引っ張るんだ。」
兵士は、下着一枚になり、腰にはロープが巻かれ、兵士は、川に入って行
った。
「気をつけるんだぞ、決っして無理はするな、わかったか。」
「はい、司令官、では。」
やはり、この方法しか無かったのか、他に方法は無かったのか、と、考え
る司令官だが兵士は果たして対岸に泳ぎ着けるのだろうか、司令官は考える
ので有る。
岸では、早くも声を掛かり。
「お~い、頑張れよ。」
「そうだ、その調子だ、後、少しだからな、頑張れよ。」
司令官も思わず。
「お~い、頑張れよ。」
と、言ってしまったのだ、兵士は、必死で泳ぐ、だが、次第に、早い、川
の流れで下流に流されて行くので有る。
それでも、必死に泳ぐ兵士は、既に川の中ほどまで行ったのだろうか、
時々、兵士の姿が見え隠れする、司令官も落ち着かない。
そして、ロープを持つ兵士達も確実に伸びて行くのがわかっている。
一瞬、兵士の姿が見えなくなった。
「お~い、大丈夫か。」
司令官は思わず言ったが、司令官の声は対岸まで届く事は無かった。
どれ程の時間が経過したのだろうか、その時。
「司令官、見て下さい、向こう岸を、彼が、やりましたよ、あいつ、裸で
手を振って。」
其れは、間違いなく、兵士の姿だった、大きく手を振っている。
「そうだ、あいつだよ、やった、やったぞ。」
司令官は思わず、目に、涙を浮かべていたのだ、その付近に居た他の兵士
達も大喜び、中には、飛び上がり、抱きついて、喜びを表して居る兵士もい
るのだ。
「よし、全員、用意は済んだか。」
対岸の兵士は、相当疲れているはずだ、だが、ロープを引っ張っている、
やがて、ロープは太くなっていく、太いロープは、対岸の大木に結ばれ、司
令官の号令でロープはピーンと張った。
「では、最初に、数名が行ってくれよ、お~、そうだ、彼の、軍服を忘れ
ずにな。」
兵士達も元気な声で。
「はい、司令官。」
と、対岸に向けて行くのだが、対岸に向かう兵士は半数だ。
「君達は、此処に残り、馬車と馬の世話を頼む、其れと、多分、今は、来
ないと思うが警戒だけは怠るな。
私達と村人を見た時には、野営の準備に入れ。」
「はい、司令官、野営の場所は。」
「其れは、君達に任せる。」
「では、司令官、気を付けて行って下さい。」
「じゃ~、頼むぞ。」
と、言って、最後に、司令官と数名の兵士が渡ったのだ。
対岸に着いた司令官は。
「大変だったなぁ~、ご苦労さん、君と、後数名は此処に残ってくれ。」
「司令官、何故です、自分も行かせて下さい、お願いします。」
「いや、君の任務は、このロープを見張る事だよ、それに、君、一人じゃ
無いんだ、数名は残るからね、君は、大役を果たしたんだ、少しは休みを取
りなさい。」
司令官は、兵士の肩をポンとたたき、労を労ったのである。
「はい、司令官、了解しました。」
と、言ったのだが、下を、向いたままだ。
「全員、準備は出来たのか。」
「はい、司令官、何時でも出発出来ます。」
「では、出発する、君達、見張りを頼むぞ、じゃ~な。」
と、司令官は、残る、彼らに手を振って村に向かうので有る。
その村は、初めて行くのだが、果たして、村人は信じてくれるのだろう
か、と、司令官は考えるのだ、どれ程の時間が掛かったのだろうか。
「司令官、遠くに村が見えてきました。」
「その様だ、みんな、わかっていると思うが、言葉使いと行動には注意す
るんだぞ。」
「はい、司令官。」
馬と馬車は対岸に置いてきたのだ、簡単な筏では、馬も馬車も載せて渡る
事は出来なかった。
司令官を先頭に、整列した、兵士達は村の入口に差し掛かったところで。
「全体止まれ、全員、そのままで、待機せよ。」
司令官の号令は村中に響く。
やはり、村民は、隠れている。
司令官と数名の兵士が村の中心部まで行き。
「皆さん、出て来て下さい。
私達は、決して怪しい者では有りませんので。」
だが、誰も出てこない。
「私は、川の向こうに有る、大きな農場からやってきました。
姿は兵士ですが、全員、兵隊では有りませんので、如何か、信用して、話
を聞いて下さい、お願いします。」
司令官は優しく語り掛けるのだ、暫くして、この村の長らしき人物が出て
きた。
「あんた達は、あの兵隊じゃ~、無いのかね。」
長らしき人物だろう、彼らを、信用はしていないのである。
この村でも過去に何度も襲われ、収穫した作物を奪われている。
「私達は、皆さんが、思われて要る兵隊では有りませんので、信用して、
話だけでも聞いて欲しいのです。」
「そんな事を言っても、また、奪って行くんだろう。」
「私達は、その様な事は決していたしません。
その為にも、私の話を聞いて頂きたいのです。」
やがて、一人、また、一人と村民が現れた。
「だったら、あの人達も兵隊だろう。」
この人達を信用させるのは時間が掛かると、司令官は思うのだ。
「いいえ、違います。」
「おい、だけど、この兵隊が着ている服は、あの兵隊達と違うぞ。」
他の村人が言うと。
「そうだな、オレも、違う様な気がするんだ。」
と、村民達が言うと。
「皆さん、私達は、あの川を渡って来たんですよ。」
「何、あの大きな川をか、どうして、渡ったんだ、やはり、嘘をついてい
るぞ。」
司令官は必死に説明する、だが。
「私達の馬と馬車は川の向こうに待たせているんです。」
「何、馬車をか、何で、馬車が要るんだ。」
「まぁ~、話を聞いて下さい。」
「どんな話だ、オレ達の作った作物が要るんだろう。」
司令官は、なおも話をする。
「実は、10日ほど前になるんですがね、我々の農場も、皆さんの村を襲
った同じ軍隊の襲撃に会ったんです。
ですが、私達の将軍は、見事に敵の軍隊を撃退したんですよ。」
「あんた、其れは本当なのか。」
「本当の話です、その軍隊には野盗も居りましたが、その野盗から聞いた
話で、皆さんの村が危ないと思い、大急ぎで此処に来たんです。」
「じゃ~、あんた達の城は大丈夫なのか。」
司令官の熱意なのか、村民は少しづつだが、話を聞く様になって来た。
「我々の住んで居るところは、城じゃ~無いんですよ。」
「お城じゃ~、無いって、お城でなきゃ~、どうして軍隊をやっつけ事が
出来るんだよ。」
村民の思って要る事も理解は出来る。
お城だから軍隊からの攻撃を防ぐ事が出来るのだと。
「我々の住んで居るところは大きな農場なんです。」
「何、農場だと、其れじゃ~、何か、農場に兵隊が居るのか。」
村民にすれば、農場に軍隊は必要は無いと思うのも当然であった。
「私達は、日頃、農場で働いているんですよ、ただ、野盗や、敵から攻撃
から農場を守る為には兵士が必要なんですよ。」
司令官も、以前に比べ、粘り強くなった。
「じゃ~、さっき、あんたが言った、軍隊は、何時頃、この村を襲うん
だ。」
「そうですね、後、2日から3日の内だと思っています。」
「オイ、去年も、来たやつらだよ、毎年、今頃になると、来ては、
作物を奪っていきやがる、奴らの事だよ。」
要約、村民もわかりだしたのか。
「だがよ、まだ、信用は出来ないぞ、あんた達は、別の軍隊だ、別の軍隊
が先に来て、作物を奪って行くんだろう。」
そう思うのも当然だ、一体、誰が、突然現れた軍隊の話を信用すると思う
のだろうか。
「貴方方の思われて要る事は、私も、わかります。
では、今年も、作物を奪われ、来年も、また、明くる年も、毎年、皆さん
が大切に育てた作物を奪われても良いと思われるのですか。」
その時、一人の若い兵士が前に来たのだ。
「皆さん、私達の司令官の言われた話は本当なんです。
確かに、私の姿は兵隊の服装です。
ですが、私も、農場に戻れば、一人の農民なんです。
私達は皆さんを助けに来たんです、信用して下さい、お願いします。」
「だけどよ、何で、」オレ達を助けるんだよ。」
「我々の将軍は、皆さんの様な農民が一番大切だと、其れは、何時も、話
しをされているんですよ。」
兵士も必死に話をする、だが、簡単には理解される事な無い。
「じゃ~、将軍と、呼ばれているんだから、兵隊なんだろうよ。」
「確かに、その通りですよ、でも、日頃の姿ですが、今、我々が、着てい
る軍服じゃ~無いんですよ。」
「そんな話は、嘘だよ、何時も、偉そうに威張っているんだ。」
兵士は、必死に話をするが、村民にすれば、この軍服姿が信用が出来ない
のだと。
其れは、軍隊が、毎年村を襲い、作物を奪って行くのが軍隊だと思って要るからだ。
「でもね、我々の将軍は、何時も、皆さんと、同じ服装で居られるんです
よ。」
「其れは、本当なのか。」
「本当ですよ、此処に居られる司令官もですが、私達は皆さんを本当に助
けたいんです。
如何か、信用して下さい。」
「わかったよ、でも、信用するとしてだ、あんた達の農場まで、何日掛か
るんだ。」
少しだが信用された様で。
「あの川を渡ってからは10日はかかりますね。」
「何、そんなに遠いのか。」
「確かに、少し遠いですが、皆さんも、我々の農場に来られたらわかりま
すよ。」
「じゃ~、その農場は大きいのか。」
「そりゃ~、大きいですよ。」
「何人位、居るんだ。」
此処まで来ると、後は簡単だと司令官は思った。
兵士は、人数までは知らないのである。
「司令官、今、何人位居るんでしょうか。」
司令官は二コットして。
「今は、何人なのか、私も知らないんですが、2万人か3万人は居られま
すよ。」
「えっ、3万人も居るのか、じゃ~、作る作物も大変な量だなぁ~。」
「其れは、心配は無いですよ、農場では、みんなが手分けして作業を行っ
ていますので。」
村民の気持ちも少し変わってきた。
「でもよ、此処に有る作物はどうするんだ、オレ達が、死で作ったんだか
ら。」
「皆さんが、必要な物だけを持って行く事になると思いますよ。」
「でも、途中で食べ物がなくなったら如何するんだ。」
「皆さんが、何時、川を渡られてもいい様に向こう岸では野営の準備をし
ていますので。」
「じゃ~、何か、オレ達の食べる物まで有るのか。」
「そうですよ、後は、皆さんの決断次第ですから。」
「おい、如何する、今年も、あいつらが来るんだぞ。」
村民達は相談を始めた。
「そうだよ、此れからも、あいつらに、オレ達が作った物を奪われるんだよ~。」
「だがよ~、此処に来た軍隊を、本当に信用していいのか。」
「オレも、同じだよ、本当に信用出来るんだろうか。」
司令官は、ただ、待って要るだけなのだ。
「だけど、オレ達の作物が要るんだったら、話なんかするか、あいつらは
突然来て、何も、言わずに奪って行くんだから。」
「そうだなぁ~、今、此処に居る連中は本当に、オレ達を助けに来たと信
用するか、それとも、嘘をついて、オレ達の作物を奪うか、どちらかだ。」
「でもよ、オレは、あの人達を信用する事にするよ。」
「そうだなぁ~、やつらの様な顔付きじゃ~無いし。」
「うん、オレも、同じ様に思ったよ、あの司令官と言う人だけど、あの人
が話をして要るときでも、他の兵隊は何もせずにじっと、立っているだけだ
からなぁ~、オレは信用をしてもいいと思うんだ。」
「其れじゃ~、みんな、どうするんだ、あいつらの思い通りにさせるのも
いやだし。」
「じゃ~、みんな、あの司令官の話を信用してもいいんだなぁ~。」
殆どの、村民は新たな土地に向かう事を決心したので有る。
「だが、オレは、まだ信用できないんだ、話は、わかったが、一度、その
農場に行ってだ、話しが嘘だたらオレは、また、この村に戻って来るよ。」
「わかった、其れじゃ~、みんな、行って見るか。」
「うん、そうだなぁ~、行くか、あいつらが来る前に。」
村民の話し合いが終わり。
「オレ達は、あんた達の話を全部信用したんじゃ無いよ、だけど、あいつ
らは毎年、この村を襲い、作物を奪って行きやがるんだ、今年は豊作じゃ~
無かったんだが、あんた達の言う農場とやらを見てから本当に決めるが、そ
れでもいいのか。」
司令官は、ほっとした。
「皆さん、有難う、あの敵の軍隊も、2日から3日もすれば到着すると思
いますので、急いで準備して頂きたいのです。」
「だがよ、オレ達は馬車も無いんだよ。」
司令官は二コットして。
「その為に兵隊を連れてきたんですよ、荷物は、兵隊が持ちますので。」
司令官は合図をした、すると兵士達は一斉に横一線になり。
「皆さん、自分達を信じて下さい。
そして、私達の農場に行きましょう。」
と、兵士の隊長は二コットしたのだ、それでも、村民の動きは遅い。
だが、司令官も兵士達も、其れ以上は何も言わず、ただ、じっと我慢し、
待って要る。
遂に、村民は動きだしたのだ。
「良く、決心してくれましたね。」
司令官は二コ二コとしている。
「うん、だがよ、オレ達が育てた作物は持って行けないのか。」
農民達は、先日までに収穫した穀物を袋に詰めていたので時間が掛かった
のだと。
少ない荷物とはいえ、農民が持つには重過ぎるのだ、兵士達は手分けし
て、農民の荷物を持ち、子供達は兵士と手をつなぎ歩きだした。
幼い子供も兵士達が持ってきた道具のお陰で兵士の背中に乗っている。
生まれたばかりの子供は母親が、そして、司令官と兵士達、それに村民の
全員が川へと向かったのである。
やがて大きな川に到着した。
「お~い、待ってたぞ~。」
彼は、この川を泳ぎ渡った兵士だ。
「皆さん、此処からは、筏で、向こう岸に行きますが、我々の兵士が一緒
に行きますので、何も心配は有りませんよ。」
司令官は、大きな筏を見て驚いたのだ。
「何時の間に作ったんだね。」
「はい、司令官が行かれて直ぐにです。
其れと、対岸では野営の準備も出来ております。」
司令官の居る場所からは対岸の状態はわからないのだ、だが、少し離れた
所からは煙が上がっていた。
この川を、農民と兵士の全員が渡りきる頃には、太陽は西の方にある山に
沈む。
対岸の兵士達も、司令官がこれほど早く戻ってくるとは思っていなかった
ので、急いで野営の準備に入ったのだ。
「では、皆さん、慌てずに乗り込んで下さいね。」
司令官も兵士も、家族が座るのを確認し、合図をした。
「いいぞ、ロープを引け。」
すると、筏は、静かに動きだしたのだ。
兵士達も初めてなので。
「お~い、ゆっくりと引いてくれよ。」、と。
筏は対岸に向かって行く、やがて最初の家族が対岸に到着すると対岸で
は。
「静かに下りて下さいね、大丈夫ですから。」
此処でも、兵士達は優しく。
「どうぞ、あちらに、熱いスープを作って有りますので。」
あの司令官が話した事は、果たして本当なのか、農民達はまだ信用してい
ない。
「司令官が、何を話しされたかは知りませんが、我々の農場が有るのは、
此処から10日程行ったところなんですよ、その農場では半分以上の、い
や、殆どが農作業をして要るんですよ。」
兵士は優しく話すのだ。
「お~い、引っ張れよ。」
空になった筏は、再び対岸に向かって行く。
それから、数十回も往復をしただろうか、最後に残った司令官と数人の兵
士が乗り込み、やがて、筏はゆっくりとみんなの待つ対岸へと向かう。
「君、そのロープを切りなさい。」
「えっ、でも、まだ向こう岸に着いておりませんが。」
「いいんですよ、向こう岸で引っ張れば、流される事は無いからね、それ
に着いてから切ると、この場所が知られていまうんですよ。」
「はい、司令官。」
と、言って、兵士はロープを切ったのである。
「お~い、みんなでロープを引いてくれよ。」
兵士達は、必死でロープを引き、司令官達も着いた。
「みんな、ご苦労だった、それで野営は何処で。」
「はい、司令官、この場所では、向こう岸から見えますので、あの場所に
変えました。」
司令官は兵士の言ったところを見たのだ、其処は、百ヒロほど離れた林の
中で、外からは勿論、対岸に来た敵軍からも見えないの。
「そうか、有難うよ、それで村の人達は。
「はい、全員が食事も終わり、テントの中で静かに休まれています。」
「よし、わかった、今夜の見張りは。」
「司令官、手分けして配置に就いていますので、少し休んで下さい。」
「有難う、じゃ~、済まないが、休ませてもらうよ。」
司令官はテントに入り、横になったが直ぐには眠りに入る事が出来なかっ
たのだ。
あの敵軍が、明日か明後日には、村に到着するだろと考えていた。
時間は過ぎ、空が明けるころまで考えていた。
「司令官、朝です。」
「えっ、もうそんな時間なのか。」
「じゃ~、司令官は。」
「うん、だが、誰にも言わない様に。」
「はい、わかりました、朝食が出来ていますので。」
「わかった、村の人達は。」
「皆さん、何か、安心されたのか、今、起きられたのは数家族で、まだ、
殆どの人達は眠っておられますが。」
「そうか、有難う。」
と、司令官は村民の起きる前に食事を取ったのだ。
司令官が食事を終え、服装を整えた頃だった、殆どの家族が食事に付いて
いた、大人も子供も静かにして要る。
その食事も終わり、女性達が後片付けを手伝っている。
男達は早くも出発の準備に入って要るのだ。
「司令官、昨夜は、何も有りませんでした。」
「そうか、ご苦労だった、其れじゃ~、みんなで出発の準備に入ってく
れ、あの敵軍に見つかるとまずいからなぁ~。」
「はい、では、全員に伝えますので。」
やがて、出発に準備に入ったが、兵士達の動きは早い。
其れは、あの農場に帰る事に成ったからだ、そして、今日からは、村の人
達全員が馬車に乗り、子供は喜んでいる。
「さぁ~、行くぞ、出発。」
と、司令官の号令は、全員に聞えるほど大声だった。
「司令官、やっと、農場に戻れますね。」
「そうだなぁ~、みんなもご苦労だった、後、少しだから、ガンバってく
れよ。」
「は~い、司令官。」
司令官も、兵士達も懐かしい農場に戻れるのが本当に嬉しいのだ。
馬車に乗った村民達はまだ、不安そうな顔つきだったのだが、それから、
10日後に、懐かしの農場に到着するのである。