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闇の帝国    作者: 大和 武
25/288

 第 25 話。 ロジェンタ帝国の拡張。

農場に戻った、ロシュエは、早速、技師長を呼んだ、其れは、城の南、数日のと


ころに、新しい農場と、馬や、牛を放牧する牧場を造ると言う計画なので有る。


 「陛下、よろしいでしょうか。」


 「お~、技師長、済まんなぁ~。」


 「いいえ、私は、別に。」


 「なぁ~、技師長も聞いたと思うんだが、城の南、数日のところに、新しい農


場を造る事になったんだが。」


 「はい、で、規模は。」


 「うん、其れがだよ~、大規模なんだ、今、ロレンツ司令官が、農民さんの家


族を迎えに言うか、救出と言うのか、まぁ~、往復で、二百日以上は掛かる任務


に就いてるんだ。」


 「はい、其れは、この農場では、全員が知っております。」


 「ロレンツは、敵軍を全滅と言ってもよい程の大勝利だったんだが、其れが、


歩兵の全員が農民なんだ。」


 「やはりでしたか、余りにも勝利が早いと思っておりましたので。」


 今回の戦では、当初、早くて、5日、遅くなれば、10日以上、戦闘が続くと


覚悟していたのが、余りにも早く勝利したので、ロシュエも、本当は信じる事が


出来なかった。


 「技師長、其れでだよ、農民が、5万人前後に増えると思うんだ。」


 「そうですか。」


 「えっ、そうですかって、技師長は、驚かないのか。」


 「はい、其れで、その人達のための農場を建設すると言われるのですね。」


 この時には、既に、技師長の頭の中では、図面が作られ始めていた。


 「うん、そうなんだ、だが、その前に、木造の城壁が必要なんだ。」


 「狼、対策と言われるのですね。」


 「うん、其れとだ、あの軍隊には数千頭の牛がいるって話なんだ。」


 「えっ、数千頭の牛ですか。」


 さすがの、技師長も、数千頭の牛だけは、予想外なのだ。


 「そうなんだ、でだよ、牛と、馬の放牧場も必要かなって思ったんだ。」


 「陛下、では、大変な工事になりますねぇ~。」

 

やっとの事で、技師長も分かりだしたのだろうか。


 「まぁ~、オレもよ~、正か、数千頭の牛がいるとは、正直な話、全くの予想


外だったんだ、其れと、あの付近の殆んどが、丘陵地帯なんだ、だから、今回


は、岩石も少ないと思ってるんだが。」


 「陛下、私も、この2~3日中に現地に入り、調査をと思うのですが。」


 「済まんが、頼むよ、現地では、将軍が、陣頭指揮を取ってるんだ。」


 「其れで、将軍が、戻られておられないのですか。」


 「そうなんだ、其れと、オーレンの部隊が、最初の城壁が完成するまで警戒に


当たると思うんだ。」


 「其れは、有り難いですねぇ~、オーレン隊長なら、この農場の城壁造りか


ら、ご存知ですからねぇ~。」


 「オレも、今回は安心してるんだ、其れでも、当面は、大変な作業が続くと思


うんだ。」


 「では、私は、城壁と、農民さん達の家ですねぇ~。」


 「技師長、済まんが、まぁ~、よろしく頼むよ。」


 「はい、分かりました、私も、準備が終わり次第現地に向かいますので。」


 「有難うよ。」


 「はい、では。」


 技師長は、考えながら、執務室を出た。


 「う~ん、其れにしても、今回は、大変な工事になりそうだなぁ~。」


 技師長は、つぶやきながらも、何故か、ほっとしている。


 最初の話だと、今回の戦争は長引くと聞いていたのだが、其れが、歩兵の全員


が農民と分かり、思った以上に短期間で終わったので有る。


 其の頃、将軍は、水を得た魚の様にと言うのか、久し振りの陣頭指揮で興奮が


収まらないので有る。


 「オーレン隊長、如何でしたか、付近の状況は。」


 「はい、私が、思っていた以上に、岩石が少なく、農場造りにも比較的楽だと


思いましたが。」


 「そうですねぇ~、其れで、今後の事ですが、数日もすれば、大工部隊と木こ


りさん達が来ると思いますので。」


 「では、森の大木を。」


 「はい、でも、私は、あの林は残したいと思っています。


 あの林の中は、小川が有りますので、農民さん達の飲料水と、農業用、其れ


と、放牧用の水が必要になりますので。」


 「はい、私も、大賛成ですよ、其れで、隊長、申し訳有りませんが、農民さん


から、数人か、数十人を呼んで頂き、農場の広さが何処まで必要かを聞きたいと


思いますので。」


 「将軍、至急、手配しますので。」


 「隊長、これから、暫くは大変ですが、よろしく、お願いします。」


 「将軍、私も、最初の頃を知っておりますので、あの当時の事を考えれば、今


回は、ず~っと楽ですよ。」


 「其の様に言って頂ければ、私としましても、大変助かりますよ。」


 「では、私は、農民さん達のところへ行きますので。」


 「隊長、よろしく、お願いしますね。」


 オーレンは、馬を走らせ、農民達のところへと向かった。


 其の頃、農民達はと言うと。


 「なぁ~、オラ達、本当に此処でいいのかなぁ~、村に戻っても。」


 「お前、何、言ってるんだ、あの司令官様が、オラ達の仲間、其れと、大勢の


兵隊さんが、オラ達の村に行って、かあちゃんや、子供達を連れて帰って来るん


だ、オラは残る。」


 「うん、オラも分かってるんだ、だけど、此処には、狼の大群がいるって。」


 「そんな、狼の大群なんて、何処にでもいるんだ、其れよりも、この土地で、


新しい農場を造って生きる方が、オラは大事だと思ってるんだ。」


 「其れは、オラも同じだ、あの故郷に帰ったって作物なんて出来ないんだか


ら、オラも、此処に残って必死で頑張る事にするよ。」


 農夫達、数十人は、此処に残る者も居れば、故郷に戻りたいと思う者、それぞ


れが考え、話し合いをする者も居れば、早くも、動き出した者達も要る。


 「死んだ兵隊の武器って、全部集めたのかなぁ~。」


 「何で、武器が。」


 「うん、オラは、あの武器が残っているんだたったら、森に行って木を切り出


そうと思ってるんだ。」


 「そんなの無理だ、あんな物で、あの大木を切るなんて。」


 「うん、其れは、オラも分かってるんだ、だけど、オラは、此処に畑を作りた


いんだ、其れも、みんなで。」


 「うん、オラも、同じだ、でも、何時まで待てばいいんだろうかなぁ~。」


 「そうだなぁ~、オラ、将軍様に聞いて見るよ。」


 「うん、そうだなぁ~、じゃ~、オラも行くよ。」


 「オラもだ。」


 別の農夫達は、将軍に聞きたいと思うのも当然なのだ。


 「みなさ~ん、何人か、お話を聞きたいので集まって下さい。」


 「何だろうかなぁ~。」


 「まぁ~、行って見ようか、オラも聞きたい事が有るんだ。」


 「うん、そうだなぁ~、じゃ~、行くか。」


 数人のつもりが、10人、20人と集まり、百人以上になった。


 「皆さん、この2~3日の内に、我々の帝国から、木こりさんと、大工部隊が


大勢此処に来ます。


 木こりさん達と、大工部隊の仕事ですが、まず、皆さんの目の前に有る、森か


ら、大木を切り倒し、この付近一帯に柵を作ります。


 その柵は、狼の大群から、皆さんを守るための柵ですが、其れで、皆さんに、


お聞きしたい事が有ります。


 皆さんは、此処に、新しく農場を造り、此処で、新しい生活を始めたいとは思


いませんか。」


 すると、一番前に居た農夫が。


 「隊長様、オラ達が、此処に農場を造ってもいいんですか。」


 「はい、勿論ですよ、皆さんが、希望されるならば、農場と放牧場を造りたい


と思いますが、如何ですか。」


 「隊長様、オラは、此処に残り、農場を造りたいです。」


 「そうですねぇ~、其れじゃ~、私が、皆さん全員のお話を聞いてもよろしい


のですが、これだけ大勢になると、私、一人では直ぐに終わりませんので、皆さ


んの中から、数十人を選んで、その人が、他の皆さんから希望を聞いて頂き、其


れを、私か、将軍に伝えて欲しいのですが、よろしいでしょうか。」


 百人以上の農夫達は、頷き。


 「隊長様、オラは、大賛成だ。」


 「では、他の人達もよろしければ、手を上げて下さい。」


 すると、全員が手を上げ。


 「皆さん、有難う、では、皆さんで、手分けして、他の人達にも話をして下さ


いね、其れで、決まれば、私か、将軍に伝えて下さい。


 其れとですが、仮に、農場を造ると成れば、何処までの土地が必要なのかも、


聞いて頂きたいのですが。」


 「じゃ~、隊長様、オラ達は、みんなに聞いてきますので。」


 「そうですか、では、よろしく、お願いしますね。」


 「はい、分かりました。」


 農夫達は、大急ぎで、みんなの下へと走って行き、その二日後。


 「あの~、将軍様は。」


 「居られますよ、将軍、農民さんが来られました。」


 「はい、分かりました。」


 将軍と、オーレンが、テントを出ると、百人ほどの農民が着ている。


 「皆さんでしたか、まぁ~、草の上ですが、座って下さい。」


 農夫達も、将軍も草の上に座り。


 「其れで、決まりましたか。」


 「はい、オラ達が、みんなの代表と言う事に決まりましたんで。」


 「そうですか、其れは良かったですねぇ~、其れで、皆さんのご希望があれ


ば、聴かせて頂きますので。」


 「はい、将軍様、オラ達は、此処で、農場を造り、家族と一緒に暮らしたい


と、仲間が言うんですが、本当にいいんですか。」


 「勿論ですよ、多分、今日か、明日には木こりさん達と、大工部隊が到着しま


すので。」


 農夫達は、まだ、不安が残っている様子で、其れも、これも、あの軍隊と言う


のか、奴らのために、大変な苦労をしてきたのだろう。


 「其れで、我々としましては、皆さんの農場を、何処までの大きさを希望され


ているのか、其れを知りたいと思いますので。」


 「はい、オラ達は、此処から、4ツ目の丘を越えたところから先が草原なんで


すが、其処までと。」


 「へぇ~、そんな遠くまでをですか。」


 「はい、此処の丘じゃ~、作物を作るのが、少し不便なんです。」


 確かに、農夫達の言う事も分かるが、4ツ目の丘の向こうが大草原だと、その


大草原に農場を造りたいと言うので、其れならば、この丘陵地帯は、一体。


 「では、お聞きしますが、此処から続く丘は不要だと言われるのですか。」


 「将軍様、オラ達は、農民なんです、畑を作るんですが、こんなに大きな丘じ


ゃ~、水を運ぶだけでも大変なんですよ。」


 やはり、水が一番の問題となる。


 「確かに、其の様ですが、今、言われました、大草原には川は有るのです


かねぇ~。」


 「はい、大草原ですが、全部が草原では無いんですよ、林も有りまして、その


林の中からは水が湧いているんですよ。」


 「えっ、水が湧いているのですか、これは驚きですねぇ~。」


 将軍も、オーレンも、この丘陵地帯は知っているが、その先に有ると言う大草


原までは知らなかった。


 「はい、其れに、池も有りまして、その池の底からも、水が湧いて、小さいで


すが、川も有りますので。」


 「そうでしたか、皆さんは、其処で農場を造りたいと言われるのですね。」


 「はい、将軍様、隊長様には申し訳ないのですが、オラ達は、その場所で。」


 「はい、分かりましたよ、ですが、牛や、馬の放牧場も必要になりますよ。」


 将軍も、オーレン隊長も、この丘陵地帯を放牧場に出来ればと考えていた。


 「はい、其れで、オラ達は、この丘で、馬と、牛を育てる事が一番だと思って


るんです。」


 農民達の考えも同じだと。


 「そうですか、いゃ~、実は、私も、この丘陵地帯が放牧場として出来るのな


らば、一番良いと思っておりましね、皆さんも同じだと言われましたので、私


も、安心しましたよ、其れで、私から、皆さんにお願いが有るのですが。」


 「将軍様、オラ達は、何でもしますので。」


 「其れは、良かったですねぇ~、皆さんのご希望される農場ですが、そのため


には、この丘陵地帯に柵を作りたいのです。」


 「将軍様、其れは、牛や、馬の為にですか。」


 「はい、勿論、牛や、馬の為にもですがね、皆さんを守るためにも、この付近


を先に柵で囲いを作るのが急がれるのです。」


 「あの~、よろしいですか。」


 別の農夫が聞きたいのだろう。


 「はい、よろしいですよ。」


 「将軍様、その柵は、狼から、オラ達を守る為にですか。」


 「はい、其の通りですよ、我々も、この大きな森に住む、狼の大群には、最初


から悩まされていました。


 私達の皇帝陛下は、まず、農民さんを狼から守る為に柵を作る事が最優先だと


申されておられますので。」


 「じゃ~、オラ達も、一緒に柵を作るんですか。」


 「はい、詳しい事は、大工部隊が到着してからの話になると思いますので。」


 その時。


 「将軍、大工部隊と、木こりさん達が、間も無く到着されます。」


 「はい、分かりました、でも、随分と早い到着ですねぇ~。」


 「将軍、皇帝陛下が急がれたのではと思います。」


 ロシュエは、木こりと、大工部隊の全員を向かわせたので有る。


 その後、木こり達と、大工部隊が、次々と到着し、早くも、馬車から大量の道


具を降ろし始めている。


 「将軍、隊長、遅くなりました。」


 「これは、これは、どうやら、全員の様ですが。」


 「はい、陛下からは全員出動せよと。」


 「やはり、そうでしたか、少し休まれますか。」


 「我々は、別によろしいですが、将軍、この森の大木を切り出し、狼の侵入防


止の柵が必要だと、陛下の指示なんですが。」


 「はい、其の通りで、牛や、馬も相当数おりますので、人間用と、牛、馬と分


けて柵を作りたいのですが。」


 「はい、分かりました、其れで、一応、この付近には人間用の柵でよろしいで


しょうか。」


 「はい、其れで、よろしいですが、あの林は残したいのですよ、川が流れてお


りますのでね。」


 「はい、では、大木を切り出しますが、少し準備に時間が必要ですので。」


 「分かりました、其れと、農民さんにも手伝いをお願いしておりますので。」


 「将軍、其れは大助かりです。」


 「今、此処に居られるのが、一応、代表となっていますので、よろしければ、


農民さんに説明をお願いします。」


 「はい、将軍、後は、我々に任せて下さい。」


 「では、よろしくお願いします。」


 大工部隊と、木こり達は、農民の代表と話し合いに入り、やがて、農民の代表


は分かったのか、仲間の元へと向かって行く。


 其の頃には、木こり達は、早くも森に向かい、切り出す大木に目印を入れ、斧


が入りだした。


 「将軍、早いですねぇ~、さすがに、木こりさん達は手馴れたもので。」


 「隊長、我々は、事故の無い様に注意する様に伝えて下さい。


 其れと、森の中から、狼が来るかも分かりませんので。」


 「はい、では、全員に伝えます。」


 「お~い、倒れるぞ~。」


 早くも、数本が倒れて行く。


 「お~い、馬を。」


 大工部隊も手際が良い、切り倒された大木は馬で引き出され、大工部隊も切り


出しを始め、農民達も手分けし、枝を別のところへと運んで行く。


 この日だけでも、数十本の大木が切り出され、大工達も加工作業に入って行


き、夕方近くまでに最初の作業が終わり。


 「将軍、この辺りに、狼はいるのでしょうか。」


 「今は、其れが、分からないのですよ、この数日、狼が静かなので、少し気に


なってはいるのですがね。」


 「そうですか、でも、用心だけは必要ですねぇ~。」


 「其れは、当然ですねぇ~、まだ、敵軍の死体が、相当残っているのでしょう


かねぇ~。」


 「では、早く作り上げる様にします。」


 「でも、余り、無理をしても。」


 「隊長、其れで、少し相談が有るのですが。」


 「はい、どの様な事でしょうか。」


 「はい、で、今度の柵ですが、出来るだけ早く作りたいので、最初は、簡単に


作って行きますので。」


 「えっ、簡単にですか、でも。」


 「はい、私も、分かっておりますので、狼が侵入出来ない様に作りますが、農


民さんも初めてなので。」


 「分かりましたよ、我々も手伝いに入ればよろしいのですね。」


 「隊長、申し訳有りません。


 最初の柵が出来れば、農民さん達も安心されると思いますので。」


 「分かりましたよ、その後は、牛や、馬の柵作りですね。」


 「はい、農民さん達も要領が分かれば、早くなると思いますが、でも、何故か


分かりませんがねぇ~、あの人達に、危険が迫っているんだと感じられていませ


んので。」


 「まぁ~、其れは、仕方の無い事だと思いますよ、数日前までは、歩兵部隊の


人達で、この数年間は、戦の日々だと聞いておりますので。」


 「あ~、其れで分かりましたよ、突然、開放されたので、今は、何も考える余


裕も無いのでしょうねぇ~。」


 「私も、其の様に思いますよ、では、明日からと言う事で、第1、第2。」


 「隊長、申し訳ないですが、第1、第2は、中心的な中隊ですので、第3、第


4中隊で、お願いしたいのですが。」


 「はい、分かりました。」


 各大隊の、第1、第2中隊は、大隊の中でも、精鋭を揃えている。


 「将軍、隊長、有難う、御座います。」


 「これで、明日からの作業は進むと思いますが、第1期工事が終われば、中隊


を戻しても心配は無いと思います。」


 「はい、其れで、十分です。」


 「では、明日からと言う事で、私は、これから、第3、第4中隊に説明に行き


ますので。」


 「隊長、申し訳有りません。」


 オーレン隊長は、第3、第4中隊に説明し、明日からの作業に入る指示を出


し。


 その後、第1期工事は思った以上に進み、10日間ほどで一応完成し、中には


テントを張り、食事を作るところまでも出来、農民達は、狼が侵入出来ないとわ


かり、その日の夜からは、今までと違い、少しだが安心して眠る事が出来た。


 其れにもまして、農民達は、第1期工事で要領が分かったのだろ、第2期、其


れは、牛や、馬を放牧するための柵造りに、だが、放牧場の規模は大きく、簡単


な造りでは、直ぐに造り直す事にもなり、其れは、余計な時間と、手間が要るの


で、最初から、頑丈な造りとい成った。


 其れでも、農民達は必死で働いた、朝は、早くから、夕刻近くまで、動き回


り、そのお陰なのか、予定よりも早く放牧場は完成し、牛と馬を合わせて、1万


頭以上が、これも、やはり、狼からの襲撃が無いと、牛や、馬も感じたのだろう


か、馬は、喜びの余り走り回り、牛は、のんびりと草を食んでいる。


 「隊長、これで、少し安心出来ますねぇ~。」


 「はい、私も、少し安心しましたよ、みんなも、大変、疲れていると思います


ので、第1期工事の補強は、2~3日後から始めたいと思うのですが。」


 「私は、其れで、十分だと思いますよ、人間もですが、馬も相当疲れていると


思いますので、此処らで、馬にも、休みを取らせる必要が有ると思いますよ。」


 「はい、承知しました、農民さん達にも知らせて置きますので。」


 「隊長、よろしく頼みます。」


 技師長も、早く行く予定だったが、今回は、放牧場も有り、放牧場で働く人達


の家の図面と管理棟の図面を書いている。


 今までと違ったのは、正か、牛と、馬で1万頭以上も要るとは知らず、其れ


に、大工部隊も、何も急ぐ事も無いだろうと思っていた。


 其の頃、ロレンツ司令官を先頭に、農民達の家族を迎えに向かった一行は、草


原を進むので思いの他早く。


 「司令官、草原が続きますねぇ~。」


 「隊長は、何を心配しているのですか。」


 「私は、別に何も心配はしておりませんが、農民達が言った方向に間違いは無


いのでしょうか。」


 「まぁ~、其れは無いと思いますよ、其れよりも、左側の森ですが、私は、あ


の森のまだ先に大きな川が流れているので有れば、問題は無いのですが、特偵隊


が向かっておりますが、其れにしても、戻って来るのが遅いので、其れが、心配


なんですよ。」


 ロレンツ司令官は、森の向こうに大きな川が流れていると考えている。

 

一方で、偵察に向かった特偵隊は、大きな川が見付からず、森の中をさ迷い。


 その森は、ホーガンが行った小国が有った、大きく深い森で、その川は、ロジ


ェンタ帝国の城の裏側付近で大きく曲がり、森からは少し離れ、特偵隊は、小国


の城を遠く離れたところを進んでいた。


 「小隊長、大きな川が見付かりませんねぇ~。」


 「そうですねぇ~、私も、方向を間違ったのではと考えているのです。」


 小隊長が、心配するのも無理は無かった。


 特偵隊は、まだ、小国の手前だと思っていたのだが、実は、小国を遥かに過ぎ


ており、大きな川は、小国の北側で、又も、大きく曲がり、特偵隊が、川を発見


するまで、森の中を、まだ、2日も掛かり、そして、要約、川の流れている様な


音が聞こえてきた。


 その場所は、ウエス達が渡ったところで、川幅が少し狭くなっている。


 「小隊長、やっと、大きな川に着きましたねぇ~。」


 「はい、其の様で、川幅が少し狭くなっていますが、やはり、流れは速いです


ねぇ~。」


 「其れで、この先ですが。」


 「我々は、川に沿って進みます。」


 「はい、分かりました。」


 特偵隊は、大きな川に沿って進み、その後、2日、3日と経ち、5日の昼頃に


なり。


 「小隊長、何か分かりませんが、森の中が、少し明るくなった様な気がするん


ですが。」


 「そうですねぇ~、私も、先程から様子が変わって着た様に思うんですが


ね。」


 そして、夕方近く、要約、森から抜ける事が出来た。


 「小隊長、やっと、抜けました。」


 「そうですねぇ~、農民さんの話では、この川をまだ進む事になります。」


 特偵隊は、司令官達よりも先に進んでいた。


 「でも、我々は、司令官よりも先でしょうか、後でしょうか。」


 「う~ん、其れは、私にも分かりませんが、もう少し進む事にしましょう、高


い山があれば、其処の麓で休みに入りますので。」


 小隊長の言う、高い山とは、一体、どの山の事を言うのだろうか、森を抜けた


ところからは、遠くに高い山が見えている。


 「小隊長、あの丘に登れば、司令官達が見えるかも知れませんよ。」


 「分かりました、では、貴方が行って付近を見て下さい。」


 「はい、了解です。」


 隊員は、馬で、丘の上へと登った、すると、丘の頂上からは周囲が見渡せ、北


の方角には、山の頂に白い雪を被っている、周囲よりも一際高い山が見えた。


 だが、その高い山は、まだ、遥か先の様に見え、丘を下ると、やはり、大きな


川が見え、その川を見て行くと、高い山へと続いている。


 隊員は、後方を見ると、其処は、何処までも続く平原で、その遥か先を見ても


司令官達の姿は見えず、隊員は、仕方無く小隊に戻り、小隊長に報告した。


 「分かりました、では、丘の方に行き、川の畔で、今日は野営します。」


 其れでも、丘を越え、川の畔に着いた頃には周囲は薄暗くなり始め、高い山を


見ると、頂上付近は、まだ明るく、太陽の陽を受け、光輝いている。


 「あの山から流れているのでしょうか、川の水は。」


 「私も、其の様に思いますねぇ~、川の水は冷たいですから。」


 「明日は、丘の上に上がり、司令官が着かれるのを待つ事にしますので。」


 「小隊長、この先を調べる必要は無いのですか。」


 「少し待って下さいね、其れよりも、今夜は寒くなりそうですから、注意をし


て下さい。」


 山からの冷気で、夜になると気温が下がり、小隊は、持参した毛布を着て、焚


き火に火は絶やす事は出来ない、それ程にも冷えている。


 あの日から、一体、何日が過ぎ、何処まで来たのだろうか、彼らの村は果たし


て何処に有るのだろうか、小隊長は考え、其れでも、寒い夜も無事に過ぎ、朝の


陽を浴びると、暖かさを感じる。


 「私は、川に沿って暫く先に行って見ますので、皆さんは、丘の上で火を起こ


して下さい。」


 「はい、でも、小隊長、気を付けて下さい。」


 小隊長は、馬に乗り、川沿いを高い山に方へと進み、他の隊員は、丘に登り、


火を起こした。


 やはり、司令官達は、まだで、その日の夕方近く、小隊長は戻って着た。


 「お~い、小隊長が戻って来られたぞ~。」


 「やぁ~、皆さん、ご苦労様ですねぇ~、其れで、何か、変わった事は有りま


せんでしたか。」


 「はい、見ての通りですが、小隊長の方は。」


 「ええ、やはり、あの敵軍は、あの高い山を越えて来たと思われますねぇ~、


大変な数の轍と、騎馬や、歩兵が通ったと思われる跡が残っておりましたか


らねぇ~。」


 「では、農民さんの言われたとおりだったんですね。」


 「ええ、其の様ですよ、今日は、時間的にも余裕が無かったので、その先に行


く事が出来ませんでしたので、明日は、少し遠くまで行こうと思っています。」


 「小隊長、ですが、司令官達が到着されるかも知れませんよ。」


 「其れも承知していますが、我々は、小隊ですが、司令官達は、二個大隊で、


其れに、農民さんも一緒なので、此処に到着されても、1日や、2日の休みは


必要だと思いますので。」


 「では、小隊長は、1日か、2日を使って、その先を調べられるのですね。」


 「はい、その通りですよ、二個大隊が進むと成れば、安全も確保しなければな


りませんので。」


 「では、私か、誰かを同行させて下さい。」


 「そうですねぇ~、貴方は、此処に残り、司令官が到着されたならば、訳を話


して下さい。」


 「はい、承知しました。」


 小隊長は、一番若い兵士を同行させ、明日の早朝、出発する事に決めた。


 小隊長が、今日行ったのは高い山の麓までで、敵軍の足跡は、麓を大きく曲が


り、やがて、少し低い山と、高い山の間を抜けて来たのだろう、多くの足跡が見


付かった。


 そして、明くる日の早朝、小隊長は、若い兵士を連れ出発した。


 残った兵士達は、枯れ木を集め、司令官達が気付く様にと、まだ、若葉の残っ


ている木も燃やした。


 丘の頂上で、木を燃やせば、遥か遠くからでも見付ける事が出来るほどに視界


も開けている。


 ロレンツ司令官達は、丘を何度も越え、要約、平原に出た。


 其処からは、遥かに遠く、高い山が連なっているのが見える。


 「司令官様、オラ達は、あの高い山を越えて来たんです。」


 「えっ、あの山をですか、でも、山頂には白い雪が残っている様に見えるので


すがねぇ^。」


 「はい、此処からは、まだ、遠くに有りますので。」


 「何日くらい掛かるのですか。」


 「う~ん、はっきりとは覚えてないんですが、山を越えると、今度は、丘が有


り、その丘までは、確か、1日か、2日は掛かった様にも思ったんですが。」


 「そうですか、でも、その丘はまだ見えないですねぇ~。」


 「はい、でも、司令官様、本当に申し訳ないです、オラ達の為に。」


 「いいえ、いいんですよ、前に言いましたが、我々の皇帝陛下は、農民さん


が、一番大切だと、常日頃から言われております。


 我々も、陛下の言われる事が正しいと思っていますのでね、何も気にせずに


ね、よろしいですか。」


 その時、先を見に行った、第2小隊が戻って着た。


 「司令官、あの高い山の手前からですが、白い煙の様な物が上がっておりまし


たので、多分。」


 「白い煙ですか、其れは、多分、第1小隊、いや、特偵隊だと思いますが、ま


だ、先ですか。」


 「はい、其処は、この平原の遥かに先ですから、此処からは見えないです。」


 「分かりました、では、その煙を目標に向かって進みますので。」


 「はい、了解しました。」


 第2小隊が、発見した煙は、第1小隊のものなのか、其れとも、この付近に住


む人達なのか、司令官達は、一路、煙が登っている方向へと進むので有る。


 丘を出発した小隊長と、若い兵士は、昼頃、高い山と、低い山の間を進み。


 「小隊長、此処を通ったのですねぇ~、大量の轍と、馬の歪め跡です。」


 「此処を通ったのは間違いは無いですよ、さぁ~、これから登りに成りますか


らね。」


 「はい、でも、随分と細いところですねぇ~。」


 兵士が言う様に、その道は、馬車1台分が通る事の出来る細い道が続き、周り


は、山に囲まれている為なのか、昼間だと言うのに、薄暗い、小隊長と、兵士


は、周りに注意しながら進む、これが、峠道で、二人で進むにも苦労するほど


で、長い長い登りの峠の頂上に着いたのは夕刻近くで、周りは、既に、暗くなり


始めている。


 「君は、枯れ木を集めて下さい、今夜は、此処で野営をします。」


 「はい。」


 兵士は、枯れ木を集めに。


 「小隊長、この辺りは、大変寒いですねぇ~。」


 「これは、大変ですねぇ~、毛布を着ても寒いので気を付けて下さいね。」


 「はい。」


 小隊長も、兵士も寒さのためか、十分な睡眠が取れなかったのだろう、まだ、


夜明け前の薄暗い時に起きた。


 「此処は、寒いですから、早く下る様にしましょうか。」


 小隊長と、兵士は松明を手に峠を下り始め、暫く進むと、辺りの山に太陽の陽


が当たり、明るくなってきた。


 「これは、う~ん、大変、高ところですねぇ~、此処の帰りは大変、苦労しま


すよ。」


 「はい、あっ、小隊長、下が見えてきました。」


 二人が見た風景は、峠の下は、森で、果たして何処まで続いているのか、其れ


にもまして、山を越えると、一段と寒さが増してくる。


 「何処かに、水が流れている音がしますが。」


 小隊長も、兵士も飲み水が欲しい、其れよりも、馬は、相当疲れている、早


く、何処か適当なところで、馬に水を飲ませなければ成らないが、其の様な状態


が暫く続き。


 「此処に、水が涌き出ていますよ。」


 岩の間からは、雪解け水なのか流れ落ちている。


 「馬が先ですから、少し、穴を掘りましょうか。」


 二人で、小さな穴を掘ると、冷たい湧き水が溜まり、馬は、美味しそうに水を


飲み、二頭の馬は満足したのか、次は兵士を先に飲ませると。


 「小隊長、この水ですが、大変、美味しいですよ。」


 「そうですか、では。」


 小隊長も水を飲むと。


 「う~ん、本当ですねぇ~、此処の水は、帰りの時は必要になると思いますの


で、大きく穴を掘りましょう。」


 やはり、小隊長は、帰りの水を確保する必要が有ると、其れが、後々、良い結


果となるとは、二個大隊と、農民、其れに、馬の数を考えると、相当大きな穴が


必要だと、小隊長と、兵士は、5ヒロ以上もの広さの池とも言える穴を堀、少し


休みを取り。


 「では、先を急ぎましょうか。」


 下りは、登りよりも、道幅は広く、其れでも、下の森までは、相当な距離で。


 「あの森で、野営が出来る場所を探してから、戻る事にしましょうか。」


 「はい、了解しました。」


 下りは早かったが、其れでも、昼を過ぎ、野営地は直ぐに見付かり、其の場所


は、敵軍が野営したと思われるところで、辺り一帯が、深い森で、此処で有れ


ば、最後の野営が出来、早朝に出発すれば、その日の内に、峠は越える事が出来


るだろうと、小隊長は思ったので有る。


 「この付近が良いですねぇ~、川も流れておりますので。」


 「はい、自分も賛成です。」


 兵士が遠くを見ると、其れは、高い山の連続で、頂上には白い雪が見える。


 「では、少し休みを取りましょうか、馬も休みが必要ですから。」


 付近から、干草を集め、馬に与えると、二人は後方を見た、越えて来た峠は、


高い山に有り、この峠を帰る時には、一体、何人になるのだ、小隊長は、ロシュ


エ達と、雪の中を越えて来た峠を思い出していた。


 だが、一刻も早く、この峠を越え無ければならないと、小隊長は、少し焦りを


感じた。


 「さぁ~、戻る事にしましょうか。」


 「はい。」


 その後、二人は、峠を登り、夕刻には峠の頂上に着き、最後の野営をした。


 その頃、ロレンツ司令官達は、丘陵地帯を過ぎた付近を進んでいる。


 「司令官、煙がはっきりと見えます。」


 「あの煙ですね、では、先に行って確認をして下さい。」


 「はい、では、第2小隊、出発。」


 第2小隊は、煙の上がっている方へと向かい、其れが、第1小隊であれば、休


みが取れると。


 「お~い、あれは。」


 「うん、第2小隊だ。」


 「じゃ~、司令官達も近くまで来ておられるんだ。」


 「お~い。」


 「やぁ~、久し振りですねぇ~、で、司令官は。」


 「うん、今、あの丘を登っておられるから、あれ~、小隊長は。」


 「うん、あの高い山から向こう側に行かれていると思うんですが、もう、2日


以上も経ってるんです。」


 「まぁ~、小隊長の事だから、先を見に行かれていると思いますねぇ~。」


 「はい、自分も、其の様に思ってるんですが。」


 「分かったよ、じゃ~、私が、司令官のところに行くから、みんなは、枯れ木


を集めてくれないか。」


 「はい、じゃ~、みんなで行くとするか。」


 第1、第2小隊の隊員は、枯れ木を集めに行き。


 「司令官。」


 「ご苦労でした、やはり、第1小隊でしたか。」


 「はい、その通りで、今日は、あの場所で野営を。」


 「分かりました、其れで、小隊長は。」


 「はい、小隊長は、高い山と、低い山の間を抜けて行かれたそうですが、ま


だ、戻られておりませんでした。」


 ロレンツの思ったとおりで、小隊長の事だ、我々が、到着するまでに、山越え


の道を探しに行ったのだ。


 「では、あの煙の上がっているところで、今日は、野営に入ります。」


 「司令官、では、我々は、先に行きますので。」


 「では、よろしく頼みますね。」


 「はい、では、第1中隊は続け。」


 第1中隊が、先に向かった。


 「あの~、司令官様。」


 「はい、何でしょうか。」


 「はい、オラも、あの高い山は覚えています、其れと、低い山も、確か、あの


間を抜けた様に思ったんですが。」


 「其の様ですねぇ~、今、特偵隊の隊長が行かれていると思いますよ、今は、


あの煙が上がっているところで野営に入りますので、皆さん、後、少しの辛抱で


すからね。」


 第1、第2大隊は、丘を越え、その後、野営地となるところに着いた。


 「第3中隊は。」


 ロレンツが指示を出す前に、第3中隊は、馬車と、荷車から、馬を放し、下の


林の中を流れる川へと連れて行く。


 他の隊員達も、鞍を外し、身軽になった馬を川へと連れて行く。


 先に着いていた、第2小隊と、第1小隊は、大量の枯れ木を集め、早くも火を


点けている。


 暫くして、第1中隊が、十数頭の大鹿を仕留めて戻って着た。


 「小隊長は、何か、言われておられましたか。」


 「はい、小隊長は、あの敵軍が通ったと思われる、轍の跡や、馬の歪めの跡が


大量に見付かったと。」


 「やはり、そうでしたか、農民さんの言われたのが正しかったと言う事になり


ますねぇ~。」


 「はい、其れで、小隊長は、その後を付けて行けば、山を越えられる事が出来


ると言われておりました。」


 ロレンツは、この先、一体、どれだけの時間が掛かるのか、この時には、ま


だ、分からなかった。


 小隊長が、野営地の戻って着たのは、明くる日の夕刻近くで。


 「司令官、小隊長が戻って来られます。」


 「分かりました、飲み物は有りますか。」


 「はい、今、熱いスープを作っておりますので。」


 「司令官。」


 「隊長、ご苦労様でした。」


 「司令官。」


 「まぁ~、その前に、スープでも。」


 「はい、有り難いです、高い山の麓は大変寒いですから。」


 小隊長と、兵士は、熱いスープを飲むと、少し落ち着いた。


 「司令官、この山は大変です。」


 その後、小隊長は、峠を登り、山の反対側には、大きな森が有り、其処で、野


営出来る場所も有る事を話し。


 「隊長、では、出発の時刻ですが。」


 「はい、これだけの大勢ですので、高い山と、低い山の間に、丁度、野営が出


来るところも有ります、午後の出発すれば、夕刻には到着出来ると思います。」


 「そうですか、では、出発は、明日の午後と言う事で如何でしょうか。」

 

 「はい、私は、その方が、後々を事も考えますと。」

 

「では、隊長は、出発から、峠ですから、山の反対側に着くまでの、指揮をお願


いします。」


 「はい、了解しました。」


 「小隊長以上は集合。」


 ロレンツ司令官は、明日の午後出発と、山の反対側の野営地に到着するまで


は、特偵隊隊長に指揮の下で行動する事を伝え、全員に伝える様にと話した。


 「あの~、司令官様、よろしいでしょうか。」


 「はい、よろしいですよ。」


 「はい、で、オラ達の村は、あの高い山を越え、まだ、先の山も越えたところ


に有ります。」


 「そうですか、では、その山と言うのは、高いのですか。」


 「はい、高い山が連なっていまして、でも、1ヶ所ですが、低い山が有ります


ので。」


 「じゃ~、その低い山を登るのですか。」


 「司令官様、低いったって、前の山くらいは有りますので、でも、オラ達は、


抜ける場所を知っています。」


 「そうですか、では、明後日には、此処の山を越える事が出来ると思いますの


で、森で野営した、明くる日からは皆さんが教えて下さいね。」


 「はい、で、司令官様、オラの住んでるところに、お城が有るんです。」


 「その城と言うのは、あの敵軍が居た城でしょうか。」


 「はい、其れで、城の周辺は、高い山ばかりなので、オラ達の村は、高い山の


麓に有ります。」


 「では、皆さんの村に着き次第、皆さんのご家族や、他の人達にも説明し、早


く、我々の農場へ戻れる様にしましょうか。」


 「はい、有難う、御座います。」


 ロレンツ司令官は、後、10日も行けば、農民達の村に着くだろうと考えた。


 「司令官、其れと、峠越えですが、馬車を引く馬に相当な負担が掛かると思い


ますので、出来れば、我々、全員が降りて、峠を越えたいと思います。」


 「其れは、大変ですねぇ~。」


 「はい、私は、峠の途中で、十数頭の馬の骨を見つけまして、此処で、馬が倒


れては帰りは、今以上に大変だと思いました。」


 「では、行きも、帰りも、峠だけは、馬に乗らないと言うのですね。」


 「はい、まだ、村に着いておりませんので、どれだけの人数と、どの様な人達


が居るのかも分かって居りませんので、出来る事ならば、馬車には余計な物は積


まないとしたいと思うのです。」


 「分かりました、では、村に到着した時、農民さんに話をしますので。」


 「はい、よろしく、お願いします。」


 そして、次の日の午後、高い山の麓に向かって出発した。


 小隊長が思ったとおりで、これだけの人数となれば、峠越えも簡単では無いと


山の麓で野営し、明くる日の早朝に出発するので有る。


 ロレンツが、考えた以上に登りは急で、馬には大変な負担となり、兵士達も馬


を降り、馬車を押して行く。


 そして、最後の馬車が、峠の頂上を過ぎたのは昼頃だったが、今度は、下り


で、一気に下る事になった。


 先頭の、第1小隊が、峠を下り終わったが、最後尾は、まだ、下っている最中


で、だが、第1小隊と、第1、第2中隊は、早くも野営地に着き、今夜の野営の


準備に入っている。


 「隊長、大変でしたが、此処までは無事に着きましたね、其れで、野営まで


は、まだ、時間が有りますので、農民さんの言われた山ですね。」


 「はい、私も、今から見に行きたいと思っておりましたので。」


 「あの~、オラ達も、一緒に行ってもよろしいでしょうか。」


 「はい、其れは、我々も大助かりですので、是非、お願いします。」


 「はい、では。」


 数人の農夫は、馬に乗り、第1小隊と一緒に、次の峠に向かい、農民達の表情


も、何かしら、希望が湧いて来たのだろうか、明るくなってきた様にも思えた。


 野営地の近くには、大小、数ヶ所の池が有り、馬は鞍を外し水の飲んでいる。


 小隊長と、数人の農夫が向かったのは、村に通じる峠だと言うので、農民も、


少し元気が出て来たのか、仕切りに辺りをキョロ、キョロと見ている。


 「何かを探しているのですか。」


 「はい、峠に通じる道に入る目印が有るんですが、う~ん。」


 「其れは、どの様な目印ですか。」


 付近を見ると、草が背丈ほどに伸びている。


 「はい、大きな岩が二つ有りまして、その先に大きな木が2本有るんですが、


岩が見付かれば、岩の先に大木を見る事が出来るんです。」


 大きな岩を探すよりも、大木を探す方が早いのだが。


 「あっ、有りましたよ。」


 農民が言った、大きな岩は背の高い草で隠れ、そして、大きな木は、山の方角


を見ると、確かにあったが、大木では無く、少し大きいだけで、確かに、他の木


に比べると大きい。


 「この岩ですね。」


 小隊長は、剣で、草を撥ねると、岩が出て来た。


 「分かりました、では、明日は、此処から、あの木の方向に進みましょう。」


 「はい。」


 小隊長と、数人の農夫は戻って着た。


 明くる日の早朝、ロレンツ司令官は、農民達の村へと進むが、農民達の表情


は、昨日までとは変わり沈んでいる。


 「如何されましたか、気分でも悪いのですか。」


 「いいえ、そうじゃ無いんです、村に行くのは嬉しいんですが。」


 ロレンツは、おやっと思った、あの戦で、数十人の農民が戦死した言う名で死


亡した。


 彼らは、その死亡した家族に対し、どの様な話をするのだろうか、多分、その


事が頭の中をよぎるのだろうと、其れを、誰も責める事は出来ないのだが。


 「皆さんのお気持ちは、私も、理解しております。


 戦死された仲間の家族に対し、どの様な話をすれば分かっていただけるだろう


か、其れを考えておられるのでしょう。」


 「はい、司令官様、オラは、どんな話しをすればいいのか、分からないんで


す。」


 「分かりました、では、私が、説明しますから、何も、心配される事は有りま


せんよ、其れよりも、早く村に行く様にしましょうか。」


 「はい、司令官様。」


 其れでも、農民達の表情は硬く、だが、一歩、また、一歩と、村に近付いてい


る事に間違いは無く、其れも、後、数日で家族と再会出来るので有る。


 一方で、新しい農場造りは、早くも、最後の柵が完成するところまで来た。


 其の様になれば、家を建てる材料も出来、大工部隊の殆んどが材料作りに入っ


ている。


 農民達の希望した農場は、放牧場の遥かに南で、其れでも、農民達は、元気を


出し作業に入っている。


 「将軍、放牧場を管理する人の家は、明日から建てる事になりました。」


 「そうですか、其れにしても随分と早いですねぇ~。」


 「はい、農民さんの中には、放牧場の仕事に就きたいと言われる人もおられま


したので。」


 「其れは、大変、良い事ですよ、放牧場にも大勢の人が必要になるでしょうか


らねぇ~。」

 

 「はい、其れと、農業用水ですが、林を出たところから、別に、水の水路を掘


り、其処には、今、数千人が水路を作る作業に入っております。」


 「では、いよいよですねぇ~、これが、早く完成すれば、大変は大きさになり


ますねぇ~。」


 「はい、私も、驚いています。


 城から、一体、何日掛かるのでしょうか、一番、端の農場までは。」


 「う~ん、私も、其処までは想像しておりませんでしたので。」


 放牧場は、大変は大きさで、3番農場とは比べ物にはならないだろうと、将軍


は思った。

 

 其れから、また、数日が経った。


 「司令官様、あの丘の向こうに、オラの村が有ります。」


 「そうですか、其れで、その村からは、貴方一人ですか。」


 「いいえ、後、二人が一緒に行きましたので。」


 暫くすると、村が見えてきた。


 「ねえちゃ~ん、大勢の兵隊が向かって来るよ。」


 「えっ、何だって、また、来たの。」


 「うん、だけど、何か、変だよ。」


 「あっ、本当だ、でも、何か変だねぇ~、ゆっくりと歩いているよ。」


 「うん、僕、みんなに知らせるよ。」


 「頼むわよ。」


 弟は。

 

 「大勢の兵隊が来たよ~。」


 何度も、大声を出しながら、村中を走り回った。

 

 「えっ、また、あの悪い兵隊が来たのか。」


 この村には、殆んどと言ってもよい程、大人の男は居らず、兵士達が、村の中


を見ても、今にも崩れ落ちそうな家ばかりで、ロレンツ達が、村の中央に着く


と、女性達の目は、馬車に乗った百人以上の農夫達を顔を見ている。


 「あいつら、また、来たんだ。」


 「あっ、おじさん。」


 「お~、サマンサ、元気だったか。」


 「うん、元気よ、だけど、何で、おじさんだけが。」


 「うん。」


 農夫は、何も言えなかった、実は、サマンサの父親は戦死したのだ。


 「この人は。」


 「はい、私の、隣に住む、サマンサと言うんですが。」


 「どうかされましたか。」


 「はい、実は、サマンサの父親は死んだんです。」


 「そうですか、分かりました、私が、話をしますのでね。」


 「はい、では、お願いします。」


 農夫の顔は沈んでいる。


 「貴女は、サマンサと言われるのですね。」


 「そうよ、私は、サマンサって言うの、其れが、如何かしたの。」


 「実は、貴女のお父さんは、戦争で戦死されました。」


 「えっ、今、父ちゃんが戦死しったって聞こえたんだけど。」


 「はい、本当なんです、我々の軍隊を戦争になりまして、その時、お父さんが


戦死されました。」


 「嘘よ、そんなの絶対に嘘に決まってるわ、そうでしょう、おじさん。」


 農夫は、何も言えず、涙を流している。


 「本当です、私が、その時の司令官で、私が、命令を出しました。」


 サマンサの目からは大粒の涙が溢れ。


 「わぁ~。」


 と、大声で泣き出し、暫くは、司令官も黙っていた、だが、少しすると。


 「でも、何で、おじさんが一緒に居るのよ。」


 「うん、その話なんだけど、この司令官様が、オラ達を助けてくれたんだ。」


 「おじさん、何故なのよ、この兵隊さんは、父ちゃんと殺したのよ、その兵隊


が、おじさんを助けたなんて、私は、絶対に信じられないわよ、だって。」


 その後、ロレンツは、サマンサに優しく、詳しく話をするので有る。


 彼女の言う話も最もで、父親を殺した兵隊が、他の農民を助けたとは、到底信


じる事は出来ない。


 「其れでね、貴女達を助けるために、此処まで来たんですよ。」


 「何で、助けに来たの、父ちゃんを殺して置いて。」


 またも、ロレンツは、話を続けると、他の農民達も、ロレンツ司令官の話は本


当だと言うのだが。


 「おじさん達は、きっと、騙されているのよ、絶対に騙されているんだわ。」


 「いいや、サマンサ、本当なんですよ、私の話が嘘だと思われるのであれば、


私の剣を渡して置きますので、我々の農場に着いてから、私を、殺して下さって


も、よろしいですからね。」


 ロレンツは、腰の剣をサマンサに渡すと。


 「司令官、何も、其処までされる必要は無いと思いますが。」


 「隊長、いいのです、確かに、私が、命令を下したのですから、其れは、間違


いは有りませんから、彼女の言われる事も、私は、理解出来ますからね。」


 「なぁ~、サマンサ、司令官様言われるとおりなんだ、オラ達は、この国の陛


下に騙されてたんだ、食べ物は、オラ達が行ってから村に持って行くからって言


ってたんだ。」


 「おじさん、そんなの全部、大嘘だったわよ、この村に人達は、何も食べる物


が無かったのよ。」


 「うん、オラ達も、一緒だったんだ、軍隊は、軍隊でも、オラ達は、毎日、殆


んど何も入ってないスープと、小さなパンだけだったんだ、だけど、司令官様


は、オラ達を助け、食べ物もたっぷりと貰えたんだ。」


 「司令官、食事の準備が出来ました。」


 「分かりました、村の皆さん、さぁ~、食事にして下さいよ、お代わりも自由


ですかね。」


 子供達が、一斉の飛んで来た。


 「さぁ~、みんな、並んでね、パンは無いけれど、お肉はたっぷりと有るから


ね。」


 第1大隊の兵士達は、ニコニコ顔で、子供達に、そして、女性達にも、出来立


てのスープを与えると。


 「ねぇ~、兵隊さん、お肉がいっぱい有るけれど。」


 「あ~、全部、食べてもいいよ。」


 「そんなの無理だよ、お腹が破裂するよ。」


 子供達は、初めてなのか、不思議そうな顔付きで食べている。


 「なぁ~、サマンサ、今は、司令官様を信じて食べるんだ。」


 「うん。」


 サマンサの声は小さく、最後に食べ始めた。


 「あの~、兵隊さん、私の主人は。」


 兵士達は、彼女達の主人が、誰なのか知らない。


 「あ~、あんたの旦那は、怪我をしているけど元気だよ。」


 「えっ、本当なの。」


 「うん、本当だ、オラ達は、この村から、順番に村に行って、みんなを助け


て、司令官様の居られる農場へ行く事になっているんだ。」


 「食事中ですが、皆さん、少しだけ聞いて頂きたいのです。


 私達は、この国に有る、全ての村を回り、領民の全員を、我々の農場に来て欲


しいと願っています。


 私達は、軍隊ですが、決して、皆さんに危害を加えるつもりは有りませんの


で、食事が終わられましたら、皆さんは、馬車に乗って頂、全ての村を回り終え


れば、農場へと向かいますので。」


 「その話本当なの、私はねぇ~、この国の軍隊には怨みが有るんだ。」


 「はい、勿論、承知しておりますが、この国の軍隊は全滅しました。」


 「え~、そんなの大嘘だ、あんなに大勢の兵隊が居るんだよ。」


 「みんな、聞いてくれ、オラは、この目で見たんだ、本当に全員、死んだ


よ、本当なんだから。」


 「あんた、本当なのか、だって、この人達だって、兵隊だよ。」


 「うん、其れは、オラも分かる、でもなぁ~、兵隊は、兵隊でも、この司令官


様達は、この国の軍隊の兵隊の様に、偉そうにな顔をして命令なんかしないん


だ、此処に一緒に来た人達も知ってるよ、なぁ~、みんなそうだろう~。」


 一緒に来た、他の農民達も頷き。


 「奥さん、本当なんだ、司令官様も、此処の将軍様も、そうだ、皇帝陛下なん


か、オラ達と、一緒の服を着てるんだから。」


 「あんた、目が悪くなったんだ、皇帝が、農民と同じ服なんか着るもんか。」


 「いゃ~、其れが本当なんだ、其れに、皇帝陛下は、オラ達、農民が一番大事


だって言われたんだ、本当なんだから、オラ達を信じてくれよ。」


 「そんなの、絶対に大嘘だよ、だって。」


 女性が言うのも無理な無い、ロシュエは、何時、何処に行くのも、農民の服で


行く、初めて見る者には、其れが、皇帝だとは信じる事が出来ない。


 「まぁ~、皆さん、其れは、我々の農場に着けば分かりますのでね、其れより


も、準備をお願いします。


 其れで、皆さんの持ち物は、何も、必要有りませんよ、道具は、農場に全て有


りますのでね、皆さんが、持って行かれるのは、着る物だけですから。」


 「え~、だって、家財道具が。」


 「其れも、必要有りませんよ、そうだ、食器だけは必要になりますのでね。」


 女性達は、食事を終え、自宅に戻り、着る物と食器を持って集まりだした。


 「司令官、この村に10台ですが、馬車が有りました。」


 「そうですか、では、その馬車も、馬を。」


 兵士達は、馬を馬車に繋ぐと。


 「皆さん、この馬車に乗って下さいね。」


 女性達は、馬車に乗り出した。


 「第1大隊は、先に、第2大隊は、後方から。」


 農村の女性達は、御者も出来るので、兵士達は大助かりだ。


 「準備が終われば、出発しますからね。」


 この様にして、最初の村を出発し、次の村へと向かい、其れからの村でも、同


じ様な説明が続き、其れでも、村に残っていた、女性達は納得したのか、子供も


含め、村に残る者はおらず、次々と、大隊は、村民で溢れ出し。


 そして、最後は、城に向かった。


 「司令官様、お城には何も無いと思うんですが。」


 「まぁ~、任せて下さいね、これからは、寒さが増して行きますので、城に残


った着る物を貰いたいのです。」


 大隊が、城に到着すると。


 「第1大隊は、馬を休ませて下さい。」


 兵士達は、馬車から馬を放し、水と食料を与え。


 「第2大隊は、城内に入り、全ての衣類を持ち出して下さい。」


 そして、暫くすると、兵士達は、大量の衣類を運び出している。


 「司令官、城の裏側に、馬車が、50台と、馬が、百頭おりました、其れとで


すが、地下の倉庫に、大量の食料が残されていました。」


 「其れは、大変、助かりますねぇ~、全て、持ち出し、馬車に積み込んで下さ


いね。」


 馬も、休みを取ると元気を取り戻したのだろうか、だが、これからが大変だ。


 「司令官、今から、出発すれば。」


 「いいえ、今日は、この城で眠る事にします。


 明日は、早朝に出発しますので、女性の方々は、大変、申し訳有りませんが、


今夜の食事の準備をお願いしますね、第1大隊は、城郭に登り警戒を、第2大隊


は、積み込んだ衣類を整理し、馬車に積み込んで下さい。」


 第1大隊は、城郭に向かい、第2大隊は、集めた衣類を数台の馬車に積み込


み、女性達は、食事の準備に掛かっている。


 「ねぇ~、あんた、私は、まだ、信じられないんだけど、だって、あの兵隊さ


ん達は。」


 「うん、オラ達も、初めは殺されると思ってたんだ、だけど、オラ達が、農民


だと聞いて、攻撃が終わったんだ、だけど、その前、何も言われなかったんで、


数十人が死んだんだ。」


 「じゃ~、あんた達が、農民だと知らなかったら、全員が殺されたって事。」


 「うん、そうなんだ、だって、将軍様は、正規軍は、全員、生かして置くなっ


て言われて。」


 「じゃ~、全員が殺されたの。」


 「うん、だけど、もっと恐ろしかったのは、怪我をして、まだ、生きてた兵隊


だよ、だって、狼の大群が。」


 「え~、じゃ~、兵隊は、狼の。」


 「うん、そうだ、だけど、オラ達は別のところに行ったんで、狼は来なかった


んだ。」


 この様な会話が農民達の中でなされて要る。


 「食事が出来たよ。」


 「有難う、では、子供さんから食べさせて下さい、皆さんもどうぞ。」


 「あの~、兵隊さんは。」


 「我々は、残り物で十分ですからね、何も、心配せずに食べて下さいね。」


 「だけど、其れじゃ~。」


 「よろしいですからね。」


 ロレンツは、ニコニコとして話すので。


 「ねぇ~、あの兵隊さん達が食べるだけ残るかしら。」


 「そうねぇ~、じゃ~、私も、手伝うわ。」


 「じゃ~、他の人にも言ってくるわね。」


 女性達、十数人が兵士達の食事を作り始めた。


 「兵隊さんは、何時もなんだ、オラ達も、初めの頃、何も、知らなかったん


だ、オラ達の後から、兵隊さんは、残った物を食べるんだ。」


 「ねぇ~、あんた、そんな事は、もっと早く言ってよ、だけど、同じ兵隊さん


でも、こんなに違うのかねぇ~。」


 この様な会話が、あちら、此方で交わされている。


 「なぁ~、サマンサ、少しは、分かったと思うんだ、父ちゃんを殺したのは、


この兵隊さん達じゃ無いんだ、この国の奴らなんだ。」


 「う~ん。」


 サマンサの返事が少し変わり、その夜は、静かに更けて行き、明くる朝。


 「では、皆さん、これから、我々の農場に向かいますが、途中で、峠を登りま


すので、皆さんには、大変、申し訳無いのですが、歩ける人は、馬車を降りて、


歩いて頂きたいのです。


 その峠を越えると、もう、大丈夫ですからね、では、出発します。」


 ロレンツ司令官は、1万人近い農民を連れ、一路、農場へと向かった。


 一方、ロシュエは、考え事をして要る。


 新しい農場が完成すると、兵を駐屯させる必要が有る、だが、多くを行かせる


訳にも行かず、だが、新しい農場は、此処の、2番、3番農場を合わせても、ま


だ、大きいのだ、さぁ~、一体、どうすれば。


 「陛下。」


 「えっ、一体、どうしたんだよ~、突然に。」


 其れは、将軍だった。


 「はい、陛下に相談が御座いまして、戻って着たのです。」


 将軍も、ロシュエと同じ事を考えている。


 「相談って、一体、何事なんだよ~。」


 「陛下、新しい農場で御座いますが、2番、3番、4番を合わせたほどの大き


さになりそうなのです。」


 ロシュエは、やはり、将軍も、兵を駐屯させるつもりなんだと。


 「へぇ~、そんなに大きいのか。」


 「はい、放牧場が、思った以上の広さになりそうなので。」


 「そうか、放牧場が、そんなに広くなるのか。」


 「はい、其れで、この新しい農場には駐屯地が必要だと考えております。」


 「そうか、オレも、以前から考えてたんだ、将軍も、同じ事を考えてたか。」


 「陛下もでしたか。」


 「うん、だがよ~、一体、どの大隊かと考えるんだが、どの大隊も、オレ達に


は必要な大隊ばかりなんだ。」


 「はい、私も、其れは、十分、承知致しておりますが、今度の農民は、今まで


の中で、一番、多くなると思われますので、農民が、希望した農場は、放牧場よ


りも大きく、其れに、何時も、陛下が、申されておられます、兵士は、農民を守


る為に。」


 「うん、オレも、其れは、よ~く、分かってるんだ、じゃ~よ~、将軍は、ど


の大隊を駐屯させるつもりなんだ。」


 「はい、私としましては、ロレンツ司令官に。」


 やはり、ロシュエの考えと同じで、ロレンツならば、最初から関わってきてお


り、農民達も、少しは安心するだろうと、考えていた、すると、大隊は。


 「其れじゃ~、オレと同じ事を考えてたんだなぁ~、じゃ~、やはり、大隊


は、1番と、2番か。」


 「はい、その理由としまして、農民の中に戦死者がおられます。


 その家族達を安心させる事が、一番の目的で御座います。


 其れに、兵士達が、一生懸命になり、自分達を守ってくれると分かれば、少し


でも、兵士達に対する不信感も和らぐのでは考えております。」


 「よ~し、分かったよ~、じゃ~、ロレンツが戻ってきたら、その話をする、


あいつの事だ、オレ達の考えている以上に考えて思うからなぁ~。」


 「はい、私も、ロレンツ司令官は、相当考えておられると思いますので、ロレ


ンツ司令官を任命する事で、1番、2番大隊の兵士達も納得するのではないでし


ょうか。」


 「じゃ~、この農場から、城までの配置も変更する事になるぜ。」


 「はい、其れで、今回、1番と、2番大隊が、駐屯地に派遣が決定すれば、陛


下の居られます、この農場には、リッキー隊長に任せ、あの中隊を専門に就か


せ、1番農場から、3番農場までを、3番大隊に、4番、5番農場には、4番大


隊に、5番大隊は、城と放牧場までの地域を担当と言う事で。」


 ロシュエに、反対する理由は無く、将軍も、今回の配置変更には相当悩んでい


たのだろう。


 「よ~し、将軍、其れでいいよ、決定するぜ。」


 「はい、陛下、有難う、御座います。」


 今度の戦は、最初、考えていた事とは、全く、違った結果に、其れと言うの


も、敵の兵士は、全員、この世から去って貰うつもりだった、其れが、歩兵は、


全員農民だと知り、歩兵の数十人は、最初の戦闘で戦死し、だが、彼らの話を聞


くと、農民の殆んどと言ってもよい程、強制的に兵士に仕立て上げられ、故郷に


は、妻や子供達が残っていると聞き、その家族を救い出し、新しい農場を造り、


家族との生活をさせる事になった。


 「なぁ~、将軍、ロレンツ達は、何時頃、戻って来るんだろうか。」


 「はい、私も、この頃、其れだけが気になっておりまして、其れに、これから


は、寒くなりますので、一刻も早く戻ればよいと思うので御座います。」


 「うん、オレも、早く戻れる事だけを考えてるんだ、まぁ~、ロレンツの事だ


から、何も心配は無いんだが、其れでも、何処で、何が、起きるか予想も出来な


いからなぁ~。」


 「はい、農民達の話では、片道が百日だと、ですが、仮に、到着しましても、


現地の状況次第では、何日、掛かるかも分かりませんから。」


 「だがよ~、今となっては戻って来るのを待つ事だけしか、オレ達には出来な


いんだ。」


 「はい、其の様になります。」


 「其れで、話は変るが、現地の状況は。」


 「はい、殆んどが、完成し、残るは、駐屯地の兵舎だけで、御座います。」


 「えっ、もう、そんなところまで出来ているのか。」


 ロシュエが、驚くのも無理は無かった、だが、木こりさん、大工部隊、特に、


農夫達は大変な喜びで、其れと言うのも、以前、彼らの故郷で住んでいたのは、


家と言うよりも、簡素な作りの小屋の様な家で、ところが、この農場に建てられ


て行く家は、本格的は造りで、彼らが、必死で建てるのも無理は無かった。


 彼らは、もう直ぐ会える家族のために、疲れも何のその、毎日が、喜びに溢


れ、其れが、毎日、数軒づつが建って行く、早く会いたい、ただ、それだけの願


いで有る。


 ロレンツ達が、城を出発して、十数日後、要約、山の麓に着いた。


 「よ~し、今夜は、あの場所で野営し、明日の早朝、峠に入る。


 女性は、食事の準備を、第1大隊は、警戒に、第2大隊の、第1中隊、第2中


隊は枯れ木を集め、他の中隊は、夜間、かがり火を点けるので、周辺の木を伐採


させ、馬は、水辺の近いところで休ませる様に。」


 「あの~、司令官様、オラ達も手伝いますので。」


 「そうですか、では、枯れ木を集めて下さいね。」

 

 農夫達は、林の中に入り、枯れ木を集め出した。


 「お~い、この林の中に、キノコがたくさん有るぞ~。」


 付近に居た、女性達も一斉に林に入り、キノコを集め出した。


 「司令官、今夜の食事は楽しみですねぇ~。」


 「其の様ですねぇ~、ですが、私が、食べる程残るでしょうか。」


 「いゃ~、多分、子供達が。」


 「まぁ~、其れでも、よろしいですよ、私は、別にね。」


 「其れよりも、明日中に、全員が、峠を越える事が出来る様に、兵士は、途中


から馬を降り、馬車を押す様に指示をお願いします。」


 ロレンツは、馬車が、数百台になったのが、少し気になっている。


 「はい、司令官、今日中に伝えておきます。」


 その夜は、何時に無く、冷え込み警戒に当たる、兵士達も寒さを堪えていた。


 そして、明くる日の早朝、夜が明ける前に出発した。


 「さぁ~、皆さん、あの峠を越えれば、少しは暖かくなりますからね、其れ


と、今日は、大変苦しいと思いますが、辛抱して下さいね、では、出発しま


すよ。」


 「ねぇ~、かあちゃん、あの峠って言ってけど、何処にも見えないよ。」


 「うん、そうだねぇ~、だけど、司令官様が、峠を越えて来たんだから、かあ


ちゃんは、何も、心配してないよ。」


 「うん、分かったよ~、でも、本当に有るのかなぁ~。」


 子供から見ても、大人が見ても、峠と言うものが全く見えない、其れは、峠の


登りが何度も曲がり、その先に峠が見えて来るはずだ。


 先頭は、第1小隊で、だが、最後尾からは、第1小隊が、どの辺りなのかさえ


見えないほどに、山道は、曲がって続くので有る。


 そして、峠に入る少し手前で、第1小隊、隊長が手を挙げ、続く、兵士達は、


次々と馬を降り、馬車の横に並び、馬車を押し始めた。


 ロレンツは、其れでも、女性達に、馬車から降りる指示は出していない。


 「あの~、私は、馬車から降りますので。」


 「まだ、大丈夫ですよ。」


 兵士は、ニコットするが。


 「やはり、降ろして下さい。」


 「本当によろしいんですか、これからが、本当の登りに入りますので、苦しい


ですよ。」


 一人の女性が馬車を降りると、其れを見ていた、他の女性達も、次々と降り、


その分だけ馬車は軽くなり、馬車を押す兵士達も助かった言う表情をしている。


 だが、小さな子供は降ろす訳にも行かず、馬車は、子供だけを乗せ、峠を登り


始めた。


 其れから何時間経ったのか、先頭の馬車が峠の頂上に着き、それからは、次々


と着き、後は、下りで、女性達も、馬車に乗った。


 「司令官、自分達は、野営地に行きます。」


 第1小隊は、偵察を兼ね、今夜の野営地、其れは、高い山の麓で。


 「第1、第2中隊は、先行し、野営地の準備に。」


 第1、第2中隊も、第1小隊に後に続き。


 「かあちゃん、オラ達のところよりも、此方の方が暖かいと思うんだ。」


 「あら、本当だ、じゃ~、この先の農場って所は、もっと、暖かいんだね。」


 「うん、そうだよ。」


 「良かったなぁ~、これで、私も、作物を育てる事が出来るんだね。」


 農民達も、喜び出し、やはり、暖かいところが良いに決まっている。


 これから先は、草原が多いので、馬も良く分かっているのか、喜んでいる様に


も見える。


 「皆さん、大変、お疲れだと思いますが、最大の難関だった、峠も無事越す事


が出来ました。


 皆さんも、お気付きだとは思いますが、高い山の向こうより、此方の方が暖か


いですよ、其れに、これからは、草原を進みますので、風景も良いと思います。


 明日からは、少し楽になりますが、我々の農場までは、まだ遠く、まだまだ、


苦しいですが、どうか、明日からも、頑張って下さいね、第2大隊は、周辺の警


戒に、第1大隊、第1、第2中隊は。」


 「司令官、任せて下さい。」


 「では、頼みましたよ。」


 各中隊長も分かっている、今日より、明日からのために必要な物を。


 「ねぇ~、おじさん、さっき、司令官は、何も言って無かったのに、何故な


の、任せて下さいって。」


 「サマンサ、あの人達は、それ程、素晴らしいって事なんだ、オラも、初めは


分からなかったんだ、だけど、オラ達のために、今から、森に入って大鹿を。」


 「えっ、でも、今日は。」


 「オラも、そう思って聞いたんだ、司令官様は、今日は、今日、明日からの食


べ物と取りに行くんだ、サマンサ、最初の日、司令官様と、隊長様は、何も食べ


てないんだ。」


 「えっ、でも。」


 「うん、オラ達は知ってたが、村の人達は、何も知らないから、全部、食べた


んだ、だけど、司令官様も、隊長様も、何も言わず、子供達の顔を見て、ニコニ


コされてるんだ、この人達は、全員が、オラ達、村の人間を大事にして下さるん


だ、あいつらとは大違いなんだ。」


 サマンサの心の中にも、少しづつ、変化が起き出した。


 「サマンサ、戦争で、父ちゃんと殺したのは、司令官様じゃ無い、あいつらな


んだ、本当なんだ。」


 「う~ん。」


 サマンサは、其れだけだった、多くの女性達の中にも、主人や、親、兄弟が死


んだ人達も居る。


 農夫達と、司令官や、隊長、其れに、兵士達の話を次第に聞く様になってきた


のも確かで、其れは、生き残った農夫達は、司令官達が殺したんでは無い、奴ら


に殺されたと、何度も言っている。


 今夜は、何故か、暖かい、やはり、高い山を越えたのが良かったんだと、女性


達は思っている。


 その明くる日の早朝に出発した司令官達一行は、足取りも軽くなったのか、馬


車を引く馬も元気な様子だ。


 「司令官、今日は、天気も良いので進みますねぇ~。」


 「其の様ですねぇ~、今日は。」


 「司令官、特偵隊ですが、今から、先を見に行きますので。」


 「はい、分かりました、隊長、今日は、少し先まで行きたいので。」


 「分かりました、適当なところを探して置きます。」


 「よろしく、頼みますね。」


 小隊長も、分かっていた、其れは、予定よりも遅れていたからで、特偵隊は、


丘を駆け上がると、直ぐに姿を消し、高い山を越えるまでに、20日以上も遅れ


ている。


 幾ら、暖かいと言っても、草原の色は変り、枯れ草となっている、それ程にも


遅れている。


 「第1、第2中隊、中隊長を呼んで下さい。」


 「はい。」


 二人は、直ぐに来た。


 「司令官。」


 「今日は、少し、足を伸ばします、今、特偵隊が、野営地を探しに行きました


ので、今から、出発し、特偵隊が見つけた野営地で、準備に入って下さい。」


 「はい、了解しました。」


 「司令官。」


 「隊長、申し訳ないですが、今日は、足を伸ばしますので。」


 「はい、承知しました、では、第3、第4中隊で、牧草を集めに。」


 「申し訳ないですが、我々以上に馬は大変ですので。」


 「では、野営地の近くで。」


 「そすですねぇ~、私もですが、皆さんも早く、農場に戻りたいでしょうから


ねぇ~。」


 「司令官も大変ですねぇ~。」


 「いいえ、これが、私に与えられた任務ですから。」


 「では。」


 第1大隊のシェノバー隊長は、残りの兵士を連れ、牧草を集めに行く。


 人間は、疲れると不満を漏らすが、馬は、何も言わない、だが、今、一番疲れ


ているのは、人間では無く馬で有る。


 今日の野営は、人間の為と言うよりも、馬の為に必要だと、司令官は考えた。


 先行した、第1小隊は、見付けた野営地に追い付いた、第1、第2中隊に任


せ、尚も、先に向かって行く。


 あの戦が終わり、司令官達は、領民を救い出すため出発し、やがて、二百日以


上が過ぎ、やがて、この地方にも寒い季節がやって来る。


 司令官は、一刻も早く着きたいと、心の中は焦っている。


 高い山を越え、10日、20日、30日と過ぎ、やがて、40日が過ぎ様とし


た頃で有る。


 「司令官、もう直ぐですねぇ~。」


 「やっと、此処まで着ましたか、後、もう少しですねぇ~。」


 「司令官、では。」


 第1小隊は、農場を目指し、馬を飛ばした、小隊ならば、今日の夕刻には城に


着くのだ。


 「隊長、お願いします。」


 後、二日もあれば、城に着く、要約、此処まで辿り着いた。


 「小隊長、本当に良かったですねぇ~。」


 「そうですねぇ~、城に着けば。」


 「はい、勿論です。」


 隊員達の表情も自然と和らいで来る。


 「隊長、隊長、第1小隊が。」


 「えっ、何だ、第1小隊が。」


 「はい、飛ばしてきま~す。」


 「城門を開け。」


 小隊が、到着する前に城門は開き、リッキー隊長は、早くも、待っている。


 「隊長、戻って来られました。」


 小隊は、城門に飛び込んだ。


 「やぁ~、大変でしたねぇ~、ご苦労さんでした。」


 「リッキー隊長、報告します、明日、いや、明後日の昼頃、ロレンツ司令官一


行が、大勢の領民を連れて戻って来られます。」


 「そうですか、其れは、本当に良かったですねぇ~、私も、一安心しました。


 陛下と、将軍に伝令、明後日の昼頃、ロレンツ司令官一行が、大勢の領民を連


れて戻って来られますと。」


 「はい、隊長、了解です。」


 二人の伝令は、農場のロシュエと、新しい農場建設現場の将軍の下へと馬を飛


ばして行く。


 「伝令で~す、開けて下さ~い。」


 城壁内の通路の兵士達は喜びに溢れた顔で叫んでいる。


 「あれは、若しや、司令官が戻られると言う、伝令だ。」


 「お~い、司令官が戻って来られるぞ~。」


 「本当か、そりゃ~良かった、みんなに伝えるんだ。」


 伝令は、飛んで行く。


 「お~い、司令官が戻られるぞ。」


 通路内は、大騒ぎになって要る。


 将軍の下へも、伝令は飛んで行く、数時間後。


 「将軍、伝令です。」


 「分かりました。」


 「将軍、伝令です、ロレンツ司令官は、明後日の昼頃、城に到着されると、先


程、第1小隊から連絡を受けました。」


 「そうですか、良かったですねぇ~、隊長、申し訳有りませんが、手分けし


て、農民さんに。」


 「はい、将軍、直ちに。」


 隊長は、数十人の兵士に、ロレンツ司令官が、農民の家族を連れ、明後日の昼


頃、城に到着する事を知らせる様にと、告げ、兵士達は、農民達に告げに向か


い、暫くすると、あちら、此方で大きな歓声が上がり、数百、数千の農民達が、


将軍の下へと集まってきた。


 「将軍様、今、兵隊さんから聞きましたが、本当なんですね。」


 「ええ、勿論本当ですよ。」


 「お~い、みんな、オラ達のかあちゃんが来るぞ~。」


 すると、またも、大歓声が上がり、歓声は、暫く続き、将軍や、兵士達も喜び


に溢れて要る。


 「あの~、将軍様、オラ達、みんなで、お城に行きたいんですが。」


 「はい、勿論、よろしいですよ、皆さんの家族が来られるのですからね、皆さ


んで、出迎えに行って上げて下さいね。」


 「お~い、みんな、将軍様が行ってもいいって言って下さったよ。」


 またも、大歓声が沸き起こった、これは、行かせなければならないだろう、何


年振りかで、家族と再会する農民の気持ちは、抑える事は出来ない。


 「陛下に、伝令で~す。」


 兵士は、大声で叫び、顔は喜びに溢れている。


 「何、伝令だって、じゃ~、ロレンツの野郎が戻って来るのか。」


 ロシュエも、伝令と聞いただけで分かった。


 「陛下。」


 「お~、ご苦労さん、で、ロレンツは。」


 「はい、先程、第1小隊が戻って来られ、明後日の昼頃、ロレンツ司令官は、


領民を連れ、戻って来られます。」


 「そうか、そうか、良かった、うん、良かった、じゃ~、オレも行くぞ。」


 「はい、司令官も、お喜びになられると思います。」


 「明後日の昼頃だな。」


 「はい、私は、その様に聞きました。」


 「其れで、君は。」


 「はい、直ぐに戻ります。」


 「まぁ~、その前にだ、イレノア頼むぞ。」


 「は~い、直ぐに。」


 「君は休めよ、なっ、当番さん。」


 「はい。」


 「今の話を聞いたと思うが。」


 「はい、では、大食堂に。」


 「おい、おい、オレの先を言うなよ。」


 ロシュエは、笑っている。

 

 「じゃ~、頼むぜ。」


 「はい、直ぐに。」


 当番兵も嬉しさを隠しきれない表情で、大食堂に走って行く。


 「お待たせしましたね。」


 イレノアも、喜んでいる。

 

 「陛下、良かったですねぇ~、私も、心を痛めておりましたので。」


 「イレノア、オレは、何と言っていいのか分からないんだ、ロレンツの野郎、


大仕事をやりやがって、あの野郎は、本当に頼りになるよ。」


 「はい、私も、本当に嬉しいです、陛下、其れで。」


 「うん、分かってるよ、後は、オレに任せろって。」


 「はい、承知しました。」


 イレノアは、ロレンツ司令官達を、数日、いや、数十日は、休ませて欲しいと


考え、ロシュエも、其れは分かっている。

 

 「テレシアさん、司令官達が無事に戻って来られます。」


 「えっ、そりゃ~、本当かい。」


 「勿論、本当ですよ。」


 大食堂でも、女性達が大歓声を上げた。


 「本当に良かったわねぇ~、私達は、本当に心配だったんだから。」


 「はい、私もです、ですが、司令官は、本当に凄い人ですよ、だって、司令官


達は、初めて行かれる土地でしたからねぇ~。」


 「そうだねぇ~、で、司令官達は、此処に戻って来るんだろうねぇ~。」


 「其れは、私も、分かりませんが。」


 当番兵も、それだけは分からないと。


 「分かったわ、でも、有難う。」


 当番兵は、テレシアに伝えると、戻って行く。


 「第1、第2中隊は、昼食の準備に入って下さい。」


 リッキー隊長も、朝から大忙しで、兵士達も、昼食の準備に入っている。」


 「隊長は。」


 「あっ、陛下、隊長は、今、昼食の準備に入っておられます。」


 「そうか、みんな、有難うよ。」


 リッキー隊長は、一体、何人分を準備してよいのか分からず。


 「なぁ~、小隊長、一体、何人いるんですか。」


 「はい、1万人以上は居られますよ。」

 

 「えっ、そんなに大勢ですか、じゃ~、足りませんねぇ~。」


 その時、3番農場から、大量の肉が届いた。


 「これは、大助かりですよ。」


 「リッキー隊長。」


 「陛下。」


 「こりゃ~、大変だなぁ~。」


 「いいえ、私は、嬉しいんですよ。」


 「うん、そりゃ~、オレも、一緒だぜ。」


 「隊長に、ロレンツ司令官が、もう直ぐ到着されま~す。」


 「よ~し、全員、城外で、司令官をお迎えする。」


 城の兵士達全員が、城の外で待機すると。


 「隊長、将軍と、わぁ~、物凄い人数の農民さんが、馬車に乗って来られまし


たよ。」


 「なぁ~、リッキー隊長、さすがに、将軍だなぁ~。」


 「はい、私も、其の様に思います、私は、昨日、来られると思っておりました


ので。」


 「陛下。」


 「お~、将軍、有難うよ、みんなも喜んでいるだろうよ。」


 「はい、伝令を受け、農民に伝えたところ、出迎えに行きたいと言われました


ので。」


 「そうか、じゃ~、後は、到着するのを。」


 「あっ、司令官達で~す。」


 「お~、そうか、あの野郎、やっと、戻って着たか。」


 先頭は、ロレンツ司令官、馬車、数百台を護衛する、大隊が、前後に就いて進


んで来る。


 「第5番大隊、ロレンツ司令官に対し、敬礼。」


 リッキー隊長の号令で、ロシュエも、将軍も、他の兵士達全員が敬礼し、司令


官は、答礼し、その後、続々と、農民を乗せた馬車が到着して行く。


 新しい農場から来た、農民達は、大歓声を上げ、数百台の馬車が停まると、馬


車からは、一斉に、農民が降り、農夫達の元へと飛び出して行く。


 「遠征隊は、整列。」


 兵士達の動きは早く。


 「皇帝陛下に報告します。


 領民全員と、遠征隊の全員、無事に、只今、戻りました。」


 ロレンツは、ロシュエと、将軍に敬礼をした。


 「ロレンツ司令官、大変、ご苦労でした。


 全員が、無事に戻り、う~ん、オレは、本当に嬉しいぜ。」


 「はい、有難う、御座います。


 少し、失礼します。」


 ロレンツは、一体、何を始めるのだ、ロシュエも、将軍も分からず、ただ、見


ている。


 「サマンサ、これが、我々の農場です。


 今、到着しました、其れで、最初、貴女にお話をしましたが、私の説明が嘘で


あれば、この剣で、この私を殺して頂いてもよろしいですよ。」


 ロレンツは、軍服を脱ぎ、サマンサに剣を渡した、すると、隊長、中隊長、小


隊長の全員が、女性達に剣を渡し、軍服を脱ぐので有る。


 其れを、見ていた数人の農民が、サマンサに近付き。


 「あんた、確か、サマンサだったなぁ~、オラだよ、隣の。」


 「えっ、おじさんは。」


 「サマンサ、一体、どうしたんだ。」


 うん、その後、遠征に参加した農夫が話をすると。


 「サマンサ、司令官様は、オラ達農民を助けて下さったんだ、お前の父ちゃん


を殺したのは、あの悪い兵隊達で、将軍様や、司令官様は、何も。」


 この後、農夫は、戦の事、そして、農場の事を話した。


 「なぁ~、かあちゃん達、あんた達の気持ちは分かるよ、だけど、此処の兵隊


さんが、悪い兵隊をやっつけて下さったんだ、其れに。」


 又も、話を続け、ロシュエも、将軍も、何も言わず、ただ、農夫の話を聞いて


いる。


 「なぁ~、かあちゃん達、此処の兵隊さんは、オラ達の命の恩人なんだ、信じ


てくれ。」


 「本当だよ、其れに、家も、出来てんだ、みんなの家も有るんだ、オラ達は、


此処の兵隊に感謝してるんだ、なぁ~、サマンサ、オラの言う事を信じてく


れよ。」


 サマンサの目から涙が溢れ、何も言えず、剣を、司令官に渡した。


 「みんな、聞いてくれ、オレが、全部、命令したんだよ~、オレが、全ての責


任を取る、だから、兵士達は許して欲しいんだ、さぁ~、オレを殺せ、オレは、


あんた達の事は、恨みもしないからよ~。」


 ロシュエは、其れ以上言わず、目を閉じた、すると、他の女性達も隊長達に剣


を渡し、涙だけを流した。


 「みんな、済まん、だが、これだけは分かって欲しいんだ、オレは、あんた


達、農民が一番大事だと思ってるんだ、これが、オレの気持ちだからよ~。」


 「お~い、みんな、分かってくれたんだなぁ~、将軍様、、司令官様、オラ達


を助けて下さって、本当に有難う。」


 「よ~し、話は終わりだ、みんな、食事だ、全部、食べるんだぜ。」


 ロシュエは、其れ以上言わず、司令官達も、軍服を着た。


 「父ちゃん、オラ達は、此処で住むのか。」


 「うん、そうだ、家も立派なんだ。」


 「ふ~ん、本当かい。」


 「前の家とは違うんだ、オラ達よりもなぁ~、兵隊さんが、お前達の為だっ


て、必死で建ててくれたんだよ。」


 「だけど、あんた、家なんか、何処にも見えないよ。」


 「オラ達の家は、馬車に乗って行くんだ。」


 「えっ、そんな遠くに有るのか。」


 「そうだ、かあちゃんの為にって、兵隊さんが、台所を作ってくれたんだ。」


 「へぇ~、じゃ~、早く見たいわねぇ~。」


 農夫婦達の会話で。


 「リッキー隊長、伝令だ、明日の昼頃に農民さんを連れて行くと、テレシア


と、お風呂部隊に。」


 「はい、了解しました。」


 リッキー隊長には、其れで十分で、テレシアも、全部言う必要は無い、其れ


で、伝わるので有る。


 「お~い、みんな聞いて欲しいんだ、明日の朝、此処を出発し、我々の農場に


行く、昼頃、着くからなぁ~。」


 「あの~、司令官様、オラ達が農場に行って、何をするんですか。」


 「まぁ~、行けば分かりますよ、今夜は、この城で眠れますからね。」


 「だけど、司令官様、お城は陛下様の。」


 「いいえ、陛下は、農場に居られますから。」


 「えっ、農場で、でも、オラ達が。」


 「だからね、何も心配しなくてもいいんですよ、明日のお昼を楽しみにして下


さいね。」


 「はい、分かりました。」


 ロレンツは、ロシュエと、将軍の元へ行き。


 「陛下、ところで、今度の農場ですが、一体、どれ程の大きさなんですか。」


 「ロレンツ、そんな事、オレが、知る訳が無いぜ、全部、将軍が、やってるん


だからよ~。」


 「司令官、今度の農場は、1番、2番、3番を併せたほどの大きさで、更に、


城までも続ける予定になっておりましてね、其れは、もう。」


 「えっ、では、今までの農場を併せると。」


 「はい、陛下の居られる、本体から新しい農場の端までは歩いては大変です


よ、移動は全て馬か、馬車になりますのでね。」


 「まぁ~、まぁ~、ロレンツ、これから事は、明日以降の話にするんだ、其れ


よりも、明日からは暫くはのんびりとする事だ。」


 「ですが、私の任務は。」


 「いいんだよ~、ロレンツ、オレの命令だ、休め。」


 「嫌ですよ。」


 「休めと言ったら、絶対に休め、お前が休みを取らないと、他の兵士も、休め


ないんだぜ、分かったのか、この大馬鹿野郎が。」

 

 ロレンツは、しぶしぶ、納得した。


 「隊長、私達は、今から、森に入ります。」


 「オレも、行きたいんだが、駄目だろうなぁ~。」


 リッキー隊長は、何も言わず。


 「陛下は、駄目ですよだって、だって、ホーガン矢を。」


 「何を言ってるんだ、オレだって、討てるんだぜ。」


 「陛下、討つだけじゃ、駄目ですよ、一発で、仕留めなければ。」


 「う~ん、其れは、少し自信が無いなぁ~。」

 

 「でしょう、だから、駄目なんですよ。」


 ロシュエも笑っているが、何も、無理して行きたいとは思って無い。


 ロシュエは、この様な会話をする様な兵士達だと、農民に知らせるための芝居


で有る。


 「分かったよ~、じゃ~、オレも、ホーガンの訓練をするからよ~。」


 「は~い、楽しみに待ってま~す。」


 兵士達も分かっている。


 「ねぇ~、兵隊さん、陛下様って、何時も、あの様な調子なんですか。」


 「うん、そうだよ、だけど、何時も、農民さんの事を心配されてるんだ、私達


は、あの陛下に怒られた事が無いし、命令された事も無いんだ。」


 「へぇ~、あいつらとは、全く、違うんで、驚いているんですよ。」


 「これがね、ロジェンタ帝国なんですよ、今度からは、陛下が、直接、皆さん


のところに行かれますよ。」


 「えっ、其れは、何時なんですか。」


 「う~ん、其れは、分かりませんよ、だって、今までの農場を併せると、ロジ


ェンタ帝国は、倍以上、大きくなったんでね、直ぐには行かれないと思いますが


ねぇ~。」


 其れは、正しく、ロジェンタ帝国が、これ以上、大きくなる事は無いのか、其


れは、ロシュエを含め、誰にも分からないので有る。




         




 





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