第 22 話。 ロジェンタ帝国の基盤造り。
ロジェンタ帝国の誕生から数年間で、皇帝で有る、ロシュエに、男子が、二名
と、女の子、一人が誕生し、将軍にも、女の子が、二人と、男の子が、一人生ま
れ、帝国内の農場でも多くの子供達が誕生して行く。
風呂場のジェスも、あの母娘と、一緒になり、二人の子供が誕生したので有る。
ロシュエは、皇帝となった今でも、生活は、以前と変わらず、一日一回は、大食
堂に出向き、テレシア達と楽しいひと時を過ごしている。
一方で、7千人の元敵の兵士達はと言うと、彼らも、毎日、忙しいが、楽しく働
いている。
ロシュエは、久し振りに、3番農場へと向かうが、今では、農場の外に出る必要
も無く、広い通路を通って行ける。
その3番農場の到着したのは、お昼の少し前。
「隊長は、居るか。」
「あっ、陛下、隊長は、放牧場の見回りをされておられますが、もう、戻られる
頃だと思います。」
「そうか、有難うよ、で、今、放牧場の馬は、何頭いるんだ。」
「はい、先日、調べたところ、7千5百頭ほどが確認出来ました。」
「えっ、何だって、其れは、凄い頭数だが、猪は。」
「はい、猪は、今、1万頭以上は確認出来ておりますが、でも、もう、其れ以上
は、分かりません。」
「えっ、じゃ~、一万頭以上はいるのか、こりゃ~、大変だなぁ~。」
「はい、其れに、大鹿も、5千頭以上に増えましたので。」
「其れじゃ~、みんなも大変だろうなぁ~。」
「いいえ、私は、毎日がとても楽しいですよ。」
「だってよ~、全部、この放牧場にいるんだろう。」
「はい、ですが、馬も、猪も、其れに、大鹿も、この広い放牧場に満足している
様に思えますので。」
「陛下、隊長が戻って来られました。」
「忙しいのに有難うよ。」
「いいえ、私は、別に、で、陛下、何か、ご用事でしょうか。」
「いいや、別に何も無いんだが、今も、聞いたんだが、放牧場も大変、忙しいら
しいなぁ~。」
「はい、其れは、もう、大変ですが、みんなは楽しそうに仕事をしてますよ。」
「だがよ~、兵士達に不満は無いのかよ~。」
「私も、兵士達に聞いたんですが、今は、戦も有りませんので、気持ちが楽に
なったと。」
やはり、兵士達も同じなのか、兵士だと言っても、決して戦が好きでは無い。
この3番農場でも、他の農場でも同じだった、兵士と言えども、生身の人間だ、
戦が無いと言う事は、兵士、自らの命が延びると言う事で、今は、戦の無い平和な
時を満喫している。
「隊長、じゃ~、猪は、定期的に各農場に渡しているのか。」
「はい、猪は多産ですので、其れよりも、陛下、少し、相談が有るのですが。」
「えっ、オレにかよ~。」
「はい、実は、馬なんですが、先日、調査をしましたところ。」
「お~、さっきも聞いたんだが、7千5百頭も要るんだって。」
「はい、私は、馬が、余りにも増え過ぎている様に思えるんですが。」
「隊長は、馬を減らしたいんだろう、だがよ~、これは、オレが勝手に決める訳
にも行かないんだ、将軍と、司令官、其れに、各農場の代表に集まって貰い、説明
してからになると思うんだぜ。」
「確かに、其れで、私も、考えたんです、何しろ、この数年間で、2千頭以上も
増えましたので。」
「じゃ~、オレからも、将軍に伝えて置くからよ~、隊長も、何か良い方法が無
いか考えて欲しいんだ。」
「はい、分かりました。」
「済まんなぁ~、オレも、本当は簡単に答えを出したいんだがなぁ~、まぁ~、
そうも行かないって事なんだ。」
「いいえ、私も、少し安心しました、私の、考えは纏まっておりますので。」
「じゃ~、済まんが、頼むぜ、オレは、これから、城に行くからよ~。」
「はい。」
ロシュエも、大体の予想は出来ているが、全ては、将軍達に任せる方が良いと
思った。
其れにしても、良くも、悪くも、あの駐屯地を逃げる様にして国を離れ、多くの
犠牲者を出し、この地に辿り着き、僅か、十数年で、この様な、大帝国にまで築き
上がるとは、あの当時には、予想もしなかった。
そして、これから先、50年、百年、いや、1千年は繁栄を続けて欲しいと願
う、ロシュエなのだ。
「お~い、隊長は、居るのかよ~。」
「あっ、皇帝陛下だ。」
「おい、おい、オレは、昔の間々だぜ、其れよりも、隊長は。」
「はい、先程まで、農民さんと、お話をされておられたのですが。」
「いや、いいんだ、オレが勝手に来たんだから、で、農場には大きな問題は起き
ていないのか。」
「はい、今は、何事も順調で、私達も、農民さんの手伝いをしておりますし、其
れに、今は、よく、農民さん達とも話をしますので。」
「そうか、そりゃ~、良かったなぁ~、で、水車は故障もせずに動いているの
かよ~。」
「はい、あっ、思い出しました、隊長は、先程、農民さん達と、水車を見に行か
れました。」
「ふ~ん、そうか、分かったよ、じゃ~、何か、あったらよ~、隊長に相談する
んだぜ。」
「はい、有難う、御座います。」
「じゃ~、オレは、城に向かうからなぁ~。」
「はい、隊長が戻られましたら、皇帝陛下が。」
「いいんだって、オレの事なんかよりも、みんなで隊長を助けてくれよ、じゃ~
なっ。」
4番農場を過ぎ、ロシュエは、のんびりと、馬に揺られている。
「あっ、皇帝陛下だ、何か、有ったんですか。」
「いや~、別に、何も無いよ、オレが勝手に来てるだけなんだからよ~。」
「余り、驚かせないで下さいよ~。」
「お~、其れは、済まんなぁ~。」
兵士も、ロシュエも笑っている、暫くは、この様な会話が続き。
「お~、みんな、ご苦労さん。」
「えっ、皇帝陛下、何か有ったんですか。」
「いいや、何も無いよ、で、隊長は。」
「はい、先程、綿花畑に行かれ、あっ、戻って来られました。」
「そうか、有難うよ、忙しいのに邪魔をして済まんなぁ~。」
「いいんですよ、陛下だったら。」
「皇帝陛下、何か、ご用事でも。」
「お~、隊長、大変、忙しそうだなぁ~。」
「はい、今も、綿花畑に行って参りまして。」
「だけど、まぁ~、のんびりと行こうぜ。」
「はい、其れよりも、休憩所に。」
「へぇ~、そんなところが有るんだ。」
「はい、大工さんにお願いをしまして。」
「大工さん達も忙しそうだなぁ~。」
「はい、この休憩所も、作られるのに30日待ちでしたから。」
「えっ、じゃ~、他にも有るのか。」
「はい、各農場から多くの要望が有るそうで。」
「じゃ~、各農場も順番待ちなのか。」
「はい、でも、誰も不満を言う者もおりませんから、其れより、今日は、一体、
何の用事で。」
「うん、其れよりも、あの城主達は。」
「はい、あの人達も、今は、元城主と家臣の関係では無く、今は、和やかな雰囲
気の様に、私は、見えているのですが。」
「そうか、オレはよ~、城主だった人物が、突然、こんな生活に入ったんで、元
家臣達と問題を起こして無いか、其れが、心配だったんだ。」
「其れは、今のところは無い様に思われますが。」
「そうか、其れならよ~、いいんだが、で、隊長、オレが来た本当の理由なんだ
が。」
「はい、私も、何か、お考えがあって来られたと思っておりましたので。」
「うん、これは、まだ、将軍の許しを得て無いんだが、あの元城主にだ、この城
と、5番農場の統括責任者になって貰いたいと考えてるんだが。」
「陛下、其れならば、私も、随分と助かります。
あの人にも、何か特別な役職名が付く事で、不満も少しは解消されると思いま
すが。」
ロシュエの、心配は、当たっていた、城主が、突然、民間人になれるとは考えて
無かった。
其処で、考えたのが、役職名が付く事で、少しでも不満の解消になるだろうと。
「隊長も、賛成してくれるんだ。」
「はい、私は、大賛成ですよ、今は、穀物類の管理をお願いしておりますが、5
番農場では、綿花の栽培が、今は、主流になっておりますので、何れの機会になれ
ば、その綿の管理もと考えておりましたので。」
「そうか、で、その綿花畑なんだがよ~、あの時は、機織り機を持ち込んだって
聞いたんだが。」
「はい、実は、この機械を何とかして増やしたいと考えているんです。」
「じゃ~、機械が増えるとだよ、この城の中で、布を作る事が出来るんだ。」
「はい、その管理を全て、お願い出来ないかと考えておりまして、将軍にも相談
をしたいと思っておりました。」
「やはりなぁ~、でだよ、その機械ってのは、大工さん達には頼んでいるの
か。」
「はい、今は、数台の製作に入っていると思います。」
「そうか、そうか、じゃ~、機械が完成すると、城で布を作り、各農場で働く人
達に新しい服を着て貰えるんだなぁ~、そうか、そうか、うん、うん、其れは、良
かった、良かった。」
「ですが、陛下、その前に、陛下と、奥様の服を新しい物にしていただきたいの
です。」
「いや、オレよりも、農民さん達が先だよ、オレは、仕事も無いが、農民さん達
は、毎日、朝、早くから夕方まで働いているんだからよ~、オレも、いや、イレノ
アも、きっと、分かってくれるよ。」
「ですが、ロジェンタ帝国の皇帝陛下が、何時までも。」
「隊長の気持ちは本当に嬉しいよ、だがよ~、まぁ~、もう少し待ってくれ、
だってよ~、まだまだ、これからも、多くの問題が発生すると思うんだ、その時に
だよ、オレや、イレノアが、何も出来ないってのが嫌なんだ、オレの姿は、何時ま
でも、この地に着いた頃の気持ちを忘れ無い様にと、オレ自身が持ち続けるためな
んだからよ~。」
「はい。」
5番大隊のリッキー隊長も、一度は、納得したのだが。
「隊長、其れよりも、さっきの話しなんだが、数日の内に、隊長から召集して欲
しいんだ、オレのところにでもいいからよ~、伝令を出して欲しいんだ、後の内容
は、隊長に任せるからよ~。」
「はい、承知、致しました、で、今からは。」
「う~ん、城に行くのはなぁ~。」
「此処まで来られたのですから、一度、入られては如何でしょうか。」
「よ~し、分かったよ~、だが、さっきの話しは、城の連中には内緒だぜ。」
「はい、勿論、承知致しておりますので、では、参りましょうか。」
「じゃ~、行くか。」
ロシュエと、リッキー隊長は、5番農場から、城内へと入って行く。
「皇帝陛下、突然で、何か、問題でも有りましたか。」
元警備隊長も、今では、すっかり、中隊長としての風格も備わり、言葉使いも変
わってきた。
「やぁ~、ご苦労さん、オレが、勝手に着たんだからよ~、其れに、オレは、こ
の城は全く知らないんだ。」
「えっ、では、初めてなのですか。」
「いいや、何度か来てるんだが、中に入ってゆっくりと見る機会が無かったん
だ。」
「では、私が、ご案内しましょうか。」
「いや、いいんだ、別に大した用事でもないから、で、中隊長、その後は。」
「はい、私も、あの戦で、多くの仲間を失って、一時は、何も、する事が出来ま
せんでした。」
「うん、うん、オレも、そうだったんだ、この地に着く頃には、仲間の半分を無
くしたんだ。」
「陛下も、大変な、ご苦労をされたんですねぇ~。」
「いいや、オレなんか、何も出来ないんだ、だがよ~、中隊長、これから先、何
時、何が起きるか、誰も、予想が出来ないんだ、オレ達、兵士は、農民さんを守る
事が最も、重要な任務だからよ~、それだけは、忘れないで欲しいんだ。」
「はい、承知、致しました、私も、良い経験をさせていただきましたので、その
経験をした事だけは、生涯忘れず任務に励みます。」
中隊長は、その後、何時もの任務に戻って行く。
「なぁ~、隊長、彼も、多くの仲間を失って、多くの事を学んだと思うんだよ、
これからも、彼らの事をよろしく頼んだぜ。」
「はい、私は、中隊長の任務に付いては、何も、指示は出しておりません。
全て、中隊長の思い通りにさせておりますので。」
「うん、まぁ~、良いか、悪いかは別にしてだ、何れ、この城を任せるんだろう
から。」
「はい、私も、後、数年見てから決めたいと考えておりますので。」
「有難うよ。」
その時。
「皇帝陛下、お久し振りで、御座います。」
「お~、これは、お忙しそうですなぁ~。」
「はい、お陰様で、私は、この様に大切な仕事を与えていただき、感謝しており
ます。」
「いいえ、私は、無理な、お願いだとは思ったのですが、我々の仲間には、この
様な仕事が出来る者がおりませんので、正直なところ、随分と迷ったのですが、や
はり、お城での生活をされておられました皆様にお願いする事になり、私は、大
変、申し訳無く思っております。」
「皇帝陛下、私は、大変、嬉しいのです。
其れと、言うのも、私達の命を助けていただき、更に、お仕事までも与えて下
さったのですから。」
「いいえ、その様な事は、其れで、お伺いしたいのですが、何か、不満などは有
りませんでしょうか、本来ならば、城での生活をと考えたのですが、これだけ大き
きなった農場では、多くの物を保管する場所が有りませんので、当初は、大きな倉
庫を建てる予定でしたが、木造で作れば、野性の生き物がおり、農場の人達が苦労
して育てられた、特に、穀物類に被害が及ぶと言われ、其れならば、石造りの城で
保管すれば、大丈夫だと言う事に結論が達した次第です。」
「陛下、私達に、何も不満が有ろうはずも、御座いません。
其れに、私もですが、元の家臣達も、今では、生き甲斐の様なものを感じており
ます。」
ロシュエは、元城主に対しては、丁寧な言葉で話すので有る。
其れは、相手の立場に立っての話で有り、そうする事で、少しでも不満を解消出
来ると考えたので有る。
「其れは、大変、良かったですねぇ~、私も、全てを見る事が出来ませんので、
何か、有りましたら、5番大隊のリッキー隊長に言って下さい。」
「はい、わざわざ、有難う、御座います。
リッキー隊長も、私達に随分と気を使っていただき、私達は、有り難く、思って
おります。」
「そうですか、では、私は、別のところに行きますので、今後とも、よろしく、
お願いします。」
「はい、有難う、御座います。
陛下こそ、余り、ご無理をなされない様にお願いします。
私達よりも、農民の皆さんが心配されますので。」
やはり、元城主だ、相手を気使っていると言う言葉使いで有る。
「では、私は、これで。」
「陛下、また、近い内に、お越し下さい、お待ち申し上げておりますので。」
「有難う、では。」
余り、長い時間、話していると、お互いが、何処かで、ボロを出し、其れが、気
まずい思いになると、ロシュエは、考え、其れで、次に行くところが有ると。
数日の内に、この城で、将軍と、司令官をはじめ、隊長達も参加し、その時、
リッキー隊長が提案し、 その時には、時間は掛かるが、多くの事を決める事にな
るだろうとロシュエの考えで、其れから、数日後の昼過ぎに。
「皇帝陛下に、5番大隊のリッキー隊長から、伝言が有りま~す。」
ロシュエ達の居る、農場には久し振りの伝令で有る。
「当番さん、入って貰って下さい。」
「はい。」
「失礼します、私は、5番大隊のリッキー隊長より、皇帝陛下に、お伝えする様
にと、命令を受けました。」
「そうですか、大変、ご苦労様です。
其れで、リッキー隊長から、どの様な伝言ですか。」
「はい、本日より、3日後のお昼過ぎに、皇帝陛下、将軍、司令官と、隊長達に
も、城まで、お越し下さいとの事です。」
「分かりました、其れで、内容に付いては、何も無かったんですか。」
「はい、隊長は、皆様が集まられてから説明しますと、言われておられました。
其れと、申し訳有りません、お一人、忘れておりました。
テレシアさんにも、是非、来ていただきたいと言われておられました。」
「分かりました、大変、ご苦労でした。
昼食は、まだでしょうから、大食堂に行って下さいよ、何でしたら、君から、テ
レシアさんに伝えていただいても、よろしいですからね。」
リッキー隊長の事だ、テレシアも呼ぶだろうと思った、テレシアと、言う女性
は、本人は思ってもいないだろうが、この農場では、大変、重要な人物なのだ。
「当番さんは。」
「はい、陛下。」
「今、伝令が有ってだよ、将軍、司令官と、隊長達は、3日後の昼過ぎに城へ来
て欲しいと、リッキー隊長からの伝言なんだ、君には悪いが、何人かで手分けし
て、みんなに伝えて欲しいんだ。」
「はい、承知、致しました。」
当番兵は、数人に、リッキー隊長からの伝言を伝えるため、手分けして連絡に行
くので有る。
だが、その前に、テレシアは、何と返事しただろうか、其れが、気になり、ロ
シュエは、大食堂に向かった。
一方、大食堂で伝令から聞いた、テレシアは。
「えっ、何で、私が、行く必要が有るのよ。」
「ですが、私は、何も聞いてはおりませんので。」
「ねぇ~、あんた、私を、騙しているんじゃないの。」
「いいえ、その様な事は決して有りませんよ、今、陛下にも、お伝えしましたの
で。」
「じゃ~、私に、何か、新しい仕事でもさせるつもりなのかねぇ~、あっ、そう
だ、あんた、お昼の食事は、まだなんだろう。」
「はい、陛下から、大食堂に行く様にと。」
「分かったはよ、誰か、この兵隊さんに食事を出して上げて、私、用事が出来た
のでね、直ぐに戻ってくるから。」
テレシアは、ロシュエへのところへと大食堂を出たところで。
「お~、テレシア、一体、どうしたんだよ~、え~。」
「今、将軍じゃ無かった、陛下のところに行って話しを聞きたいと思ったの
よ。」
「そうか、じゃ~、中に入って、話をするか。」
ロシュエと、テレシアは、大食堂に入り。
「まぁ~、座ってから話を。」
「ねぇ~、今、伝令の兵隊さんに言われたんだけど、3日後の昼過ぎに、城に来
いって言われたんだけど、一体、私に、何の用事が有るのか聞いたのよ。」
「いゃ~、オレも、さっき、伝令で聞いただけで、どんな話なのか、何も、知ら
ないんだ、だがよ~、リッキー隊長が、テレシアを呼ぶって事はだよ、テレシアに
とっては、大変、重要な話かも知れないぜ。」
「だけど、他の人達は、将軍や、司令官達なんだから、私は、関係無いと思うの
よ。」
「なぁ~、だがよ~、将軍や、司令官達よりも、テレシアの方が大事なんだっ
て、リッキー隊長は、思ったんじゃないかなぁ~、だからよ~、3日後の早朝、オ
レと、一緒に、馬で行こうか。」
「う~ん、まぁ~、仕方無いはねぇ~、だって、あんたが知らないんだから、将
軍や、司令官達は、何も知らないと思うのよ、分かったわよ~、じゃ~、3日後の
早朝に。」
「なぁ~、テレシア、済まんなぁ~、オレが、知っていればいいんだがよ~。」
「な~に、別に、大した事じゃ無いわよねぇ~。」
その時、将軍と、司令官も、食堂に入って着た。
「陛下、やはり、此処でしたか。」
「うん、そうだよ、で、食事に来たんだろう。」
「いいえ、其れよりも、先程、リッキー隊長からの伝言を聞きましたが、陛下
は、ご存知かと思ったものですから。」
「ねぇ~、だと思ったのよ、、みんなも同じ事を考えてるのよ。」
「えっ、じゃ~、テレシアさんも、呼ばれたのですか。」
「そうなのよ、司令官、で、陛下が知ってるだろうと思って聞いたんだけど、で
も、何も知らないって。」
「では、リッキー隊長は、何か、特別な事でも考えられたのでしょうかねぇ
~。」
「オレも、そう思うんだ、だって、突然、城に集まれって言うんだからよ~。」
「では、陛下、テレシアさん、将軍と、私で、1台の馬車で行く事にしては如何
でしょうか。」
「じゃ~、司令官、馬車の手配を。」
「はい、承知しました、で、残りの、1番から3番大隊の隊長にも、1台の馬車
で向かう様に伝えて置きます。」
「よ~し、其れで決まりだ、まぁ~、テレシア、何かと言うよりも、テレシア
も、城を見学するいい機会じゃないか。」
「うん、そうねぇ~、まぁ~、その様に考える事にするわ、だって、私は、お城
が何処に有るのかも知らないんだものねぇ~。」
そして、3日後の早朝、4人を乗せた馬車は城へと向かい、残りの隊長達も、別
の馬車に乗り、城へと向かった。
2台の馬車は、昼少し前に城に到着した。
「陛下、大変、ご苦労様です、テレシアさんも、忙しい時に、大変、申し訳有り
ませんねぇ~。」
「へぇ~、これが、将軍の居たお城なのねぇ~。」
「そうですよ、今はねぇ~、各農場で収穫された作物を保管するための巨大な倉
庫になりましたがねぇ~。」
「私は、本物のお城って、初めてなのよ、これ、全部、石を削って造ったの、
じゃ~、大工さん達も、大変だったんでしょうねぇ~。」
「まぁ~、テレシア、そんなに感心ばかりしていると、会議が出来なくなる
んだぜ。」
「あら、そうだったわねぇ~、じゃ~、行きましょうか。」
「では、私が、案内しますので、2階に会議室が有りますので。」
リッキー隊長は、ロシュエ達を、2階の会議室に案内するが、テレシアは、会議
室に向かう途中でも、しきりに感心している。
その2階に上がると、以前は、国王が使用していた大広間が、今は、会議室と変
わり、会議室に入ると、其処には、元城主と、十数人の男性が待っていた。
「皇帝陛下、お久し振りで、御座います。」
「あ~、貴方方もですか。」
「はい、昨日、リッキー隊長から、重要な会議が有るので、出席して欲しいと言
われましたので。」
「そうでしたか。」
ロシュエは、この時に分かった、リッキー隊長が言っていた内容とは、この人物
の処遇も考えての事で有ると。
「では、皆さん、お座り下さい、陛下は、此方の席に、お願いします。」
其れは、正しく、上座で有る。
皇帝は、やはり、上座で無ければ、他の者達、特に、将軍や、司令官は、納得し
ないだろうと考えたので有る。
「将軍と、司令官は、そちらの席にお願いします。」
そして、全員が席に着くと。
「陛下も、将軍も、そして、皆さんも大変、お忙しいところ、急なお呼び立て
で、誠に、申し訳有りません。
私が、この数年間、考えておりました内容は、今後のロジェンタ帝国の行く末を
案じての事で有りまして。」
将軍も、司令官も、他の隊長達も、リッキー隊長が、何を言い出すのか理解出来
ない。
「其れで、私は、有る事を考えたのです。
其れは、今、この方々にお願いし、行なっていただいております、物を管理する
と言う仕事で、その中心となっておられますのが、マッキーシーさんです。」
ロシュエは、知っていたのか、別に、驚きもしないのだが、テレシアは、大変な
驚き様で。
「ねぇ~、マッキーシーさんて、あのお城の。」
「はい、そのとおりですよ、ですが、我々の農場に来られてからは、自分は民間
人になられるんだと言われたのですが、まぁ~、その話は、後にしまして、先程、
私が、言いました、物を管理すると言うのは、誰にでも出来ると言う様な簡単な仕
事では有りません。
其れで、私の提案ですが、1番農場から、この5番農場まで、今では、多くの人
達が忙しく働いておられますが、これからは、各農場に管理される人が必要なので
す。」
「じゃ~、よ~、此処に居る、隊長達に、その管理を任せるのか。」
「はい、では、1番農場には、新しく隊長に任命されました、シェノーバー隊長
に、2番農場は、オーレン隊長に、3番農場は、フランド隊長、4番農場は、フォ
ルト隊長、5番農場は、私、リッキーとさせていただきたいのです。」
「リッキー隊長、では、本体の農場は。」
「陛下、其れに、将軍、私は、この人物が最適だと思いまして、その人物こそ
が、テレシアさんです。」
「えっ、何で、私が、その管理をしなければならないのよ。」
「はい、テレシアさんなれば、誰からも異論は出ないと判断致しましたので。」
「だって、私は、女よ、女の私が、そんな大役をこなせるはずがないでしょう。」
「テレシアさん、女性だから、お願いしているのですよ、本体農場を任せられる適任者がおりませんので。」
「じゃ~、ロレンツ司令官は。」
「はい、司令官には、特別管理官になっていただき、全体を見ていただきたいの
です。」
「じゃ~、このお城は。」
「はい、其れも、独断ですが、マッキーシーさんにお願いする予定です。」
「う~ん、でもねぇ~。」
テレシアは、突然の話で、戸惑っている。
「テレシア、まぁ~、リッキー隊長の話を全部聞いてからだよ、オレなんかよ
~、何も、する事が無いんだぜ。」
ロシュエは、笑っては居るが、本当は、何か寂しいので有る。
「分かったはよ~、じゃ~、聞くのは聞くけど。」
「よろしいでしょうか、私が、何故、この様な話をするかを、今から説明させて
いただきますので。」
この後、リッキーは説明し、一応の話が終わった。
「リッキー隊長の説明はよ~く分かりましたが、管理される物ですが、先程の説
明では、小麦が中心だと、ですが、肉などは、どの様になるのでしょうか。」
フランド隊長は、賛成はするが、その中でも、馬は最初の予定とは違い、7千5
百頭にもなっている。
「フランド隊長は、今、3番農場で、馬などのお世話をお願いしておりました
ね、私は、申し訳し無いと思っておりまして、肉の管理は、全く、考えておりませ
んでした。」
「リッキー隊長、よろしいでしょうか。」
「はい、将軍。」
「この城の地下室ですがね、その地下室よりも、まだ、下に大きな部屋が有るの
を、ご存知ですか。」
「将軍、今は、何も使っておりませんので、あっ、そうでした、あの地下室は特
別な造りでした。」
将軍が言った、地下室とは、以前から肉などの保管を目的に作られたのだが、殆
んど使われる事も無く、今は、どの様になっているのか、リッキーも知らなかっ
た。
「はい、あの地下室は、特別な造りだと聞いております。」
「将軍、その地下室ってのは、一体、どんな大きさなんだ。」
「はい、その地下室は、肉を保管するための倉庫で、其れは、小麦を保管する倉
庫よりも大きいですが、殆んど使われる事も無かったのです。」
「じゃ~、その地下室に肉を保管する事を考えればいいんだ。」
「陛下、もう、長い事使っておりませんので、其れと、扉の修理も必要かと思い
ます。」
「じゃ~、大工さんに見て貰ってだよ、新しく作ればいいと思うんだが、其れに
よ~、小麦だって、地下室で保管するんだろうから。」
「はい、この城には、大きな地下室が数ヶ所有りますので。」
「リッキー隊長、私も、その地下室で有れば、大量の肉を保管する事が出来ると
思います。」
「では、一度、大工さんに見て貰う様にします。
其れで、先程の話に戻りますが、地下室に保管する小麦や肉の管理をマッキー
シーさん達にお願いしたいのですが、数年前まではですね、本体のテレシアさんが
管理されておられましたが、今は、あの当時とは大きく変わり、今後は、小麦など
は自由に持ち出す事を禁止したいと、私は、思うのです。」
「えっ、じゃ~、小麦が無くなったら、一体、どうするのよ、私は、困るわよ、
だって、食べ物が。」
「テレシアさん、良い事を言っていただきましたねぇ~、今、テレシアさんが言
われた様に、小麦が無くなれば、パンも作る事も出来ません。」
この後、リッキーは、管理の方法を詳しく説明したので有る。
「実は、今、此処に大きな袋を置いて有るのですが、この袋は小麦を入れる袋で
今、この城で、これと同じ袋を作っていただいておりますが、各農場には、袋に
入れた小麦を配分します。」
「じゃ~、袋に入れた小麦が無くなったら、一体、どうすればいいのよ。」
「はい、其れも、今から説明しますので。」
リッキーは、説明をするのだが、誰もが簡単に理解出来るものではない。
元々が兵士だからなのか、其れが、突然、物を管理すると言う仕事になったのだ
から、当然と言えば当然かも知れないが、リッキーの説明は詳しく続く。
「なぁ~、リッキー隊長、この管理するってのは大変な仕事だぜ、其れを、隊
長、一人に任せるってのは、少し無理が有ると思うんだがなぁ~。」
「陛下、実は、そのとおりでして、其れで、補佐役として、中隊長達と、小隊長
達にお願いしたいのです。
管理官と言う仕事の殆んどは最後で、先程も言いましたが、書面にサインをする
だけの仕事なのです。
仕事の中心は、中隊長達と、小隊隊長に行なっていただく事になると思うので
す。」
「では、中隊長達が集約した書面に管理官となった隊長がサインすれば、この城
に来て、その分量が貰えると言う事になるのですか。」
「はい、そのとおりで、テレシアさんにお聞きしたいのですが、大人が、10人
分だと、どれくらいの小麦が必要か分かりますよねぇ~。」
「そんなの無理だよ、だって、女性はね、どれだけの分量が要って、そんなの考
えないよ、大体、これくらい有ればって、そんなの考えなんかしないよ。」
「テレシアさんの言われるとおりだと思いますよ。」
「其れに、あの頃はねぇ~、将軍からも言われてたのよ、何時、何が起きるかも
知れないから、パンとスープだけは作って置いてくれってね。」
ロシュエも、頷いている。
あの頃とは、まだ、農場全体も完成しておらず、更に、敵が、何時、攻撃してく
るかも予想出来なかったので有る。
だが、今は違う、この数年間と言うものは安定した時期に入っている。
「今、テレシアさんが言われた様に、あの頃は、毎日が大変だった、其れは、間
違いは有りません。
ですが、この数年間は、何事も無く、帝国は、安定しており、私は、帝国を末永
く安定させたいと思い、先程も言いましたが、各農場に管理官を設けたいと、で、
テレシアさんは、女性の立場で考えて頂きたいのです。
この管理と言うのは、簡単な様ですが、毎日の記録が、数年間、いや、数十年間
続き、書面が残る様な記録が出来れば、ロジェンタ帝国の繁栄が確立されると、私
は、確信しております。」
「リッキー隊長、オレは、今までの事よりも、これから先の事が大切だと思って
るんだ、隊長の考えは、これから先の事を考えての事だと思うんだ、みんな、如何
だろうか、リッキー隊長の提案を受け、みんなで相談してはどうだろうかと、思う
んだが。」
「皇帝陛下、私も、以前、同じ様な仕組みを考えたのですが、多くの反対が有
り、成功出来なかったのです。」
「マッキーシーさん、其れは、何か、特別の訳でも、あるんじゃないのか、まぁ
~、そんな事は、今更、考えたって仕方が無いんだ、マッキーシーさんが、失敗し
た訳をみんなで検討してだ、少しでも前に進もうじゃないか。」
「陛下、有難う、御座います。」
「いいんだって、過去は、過去なんだ、何時までも失敗した事を悔やんだところ
で、以前に戻る事なんか出来ないんだぜ、其れよりもだ、オレは、出来る限り多く
の人達の意見を聞き、纏めて欲しいんだ。
最初は、大変、苦労すると思うんだよ、だが、苦労して出来たものを、また、改
善して行く事の方が大切だと思うんだが。」
「皇帝陛下、誠に有難う、御座います。
私達は、これからも、何時、何処から、新たな敵が来るか、それだけは、誰にも
分かりませんが、其れよりも、私が、何故、管理が必要かと考えたのは、毎年、作
物が確実に豊作になるとは考えられないのです。
数年に、いや、十年に一度の不作が有った時のために、食料の備蓄があれば、
我々の、ロジェンタ帝国の全員が生き残れると考えました。」
「リッキー隊長、私は、大賛成ですねぇ~、陛下が、築かれました、ロジェンタ
帝国は、今後、1千年以上、繁栄を続けて行くためには、リッキー隊長の提案は、
全ての人達には無くては、ならない提案だと思います。」
「将軍、有難う、御座います。
其れで、今も、私が、考えている最中なんですが、私が言った、各農場からの代
表と言うのは、選ばれた代表だけで無く、全員が、代表になっていただくのです。
其れは、1年毎か、数年毎かは分かりませんが、誰もが、必ず、代表になり、農
場の人達から意見を聞き、其れを、代表会議で発表していただくと言う方式なんで
すが。」
「其れじゃ~、何か、みんなの意見を、その代表者会議で発表するのが代表の仕
事なのか。」
「はい、今、この帝国に居られる人達は、苦難の連続で、今、やっと、安心した
生活に入れています。
其れは、誰もが望んでいた生活なんですが、陛下も、将軍も、私達も、何れは天
国の仲間の元へと行く事になるのです。
其れでも、この帝国は、続いて行くために、後世の人達にも分かる様な仕組みを
作り上げたいと思うのです。」
「よ~し、分かった、じゃ~、よ~、リッキー隊長、オレは、何も口出ししない
からよ~、みんなで相談してだ決めて欲しいんだ。」
「陛下、私も、同じで御座います。
これは、陛下もですが、私も、口出ししない様に致します。」
「えっ、だがよ~。」
「陛下、リッキー隊長に、任せては如何でしょうか。」
「よ~し、其れに決めた、オレは、みんなが決めた事に従うからよ~。」
「リッキー隊長、私も、提案したいのですが、よろしいでしょうか。」
「はい、司令官。」
「私はねぇ~、農場から何人の代表を出すのか、分かりませんがね、半分は女性
を入れて欲しいと思うのですがねぇ~、如何なものでしょうか。」
「やはり、司令官よねぇ~、私も、同じだよ、だって、農場の半分近くは、女性
の仕事が占めてるんだもの。」
「司令官、私も、大賛成ですよ、テレシアさんの意見が無ければ、私達、男性で
は全く知らない事が多いと思いますよ。」
テレシアは、女性の立場から、今までとは、違った意見が出ると期待している。
どの家庭でも、女性は、朝早くから、夜は遅くまで働いているのは、女性だと自
負が有った。
「私はね、単に女性の立場だけで言ってるんじゃ無いのよ、どの家庭でもね、女
性は、朝は、早くから、夜は遅くまで働いていると思うのよ、其れはね、男性の知
らないところでなのよ、確かに、力仕事は男性の仕事なんだけど、その他の仕事は
と言うと、殆んどが、女性が中心だと思っているのよ。」
「テレシア、其れは、オレも分かるよ、オレだって、イレノアの助けが必要なん
だ、リッキー隊長の提案も大事だよ、でも、今の司令官の提案はもっと大事だと思
うんだよ。」
「陛下、将軍、私からも、お願いが御座います。」
「何でも言ってくれよ、オレ達は、みんなが協力して、この農場が発展する事を
願ってるんだから。」
「はい、では、農場の代表もですが、如何でしょうか、木こりさん達や、大工さ
ん達からも意見を聞かれては。」
「うん、オレは、賛成だ、あの人達が家を建て、城壁を造り、其れは、表には出
ない仕事ばかりだからなぁ~。」
「はい、皆さんのご意見、大変、有難う御座います。
其れと、最後にですが、我々のロジェンタ帝国の存在を何れかの時期が来れば、
遥か遠くの国も知る事になるでしょう、どの様な敵が攻めて来るかも分かりません
ので、食料の蓄えだけは、明日と言わず、今からでも考えなければなりませんの
で、皆さんに、城の倉庫を見ていただきたいと思いますが、如何でしょうか。」
将軍は、頷き、ロシュエは、まだ、一度として、この城の内部を詳しく見た事が
無かった。
「オレは、初めてなんだが、みんなも知っていると、何かと便利だと思うん
だ。」
「では、私が、ご案内すますので。」
リッキー隊長が、先頭になり案内する。
まず、最初に入った部屋では女性達が大きな袋を作る作業場で、ハーナも、二
キータも、一緒になり袋を作って要る。
「この袋ですが、各農場に配る小麦を入れる専用の袋です。」
「リッキー隊長、この袋って。」
「司令官、5番農場で綿花が出来る畑が有り、その綿花を機織り機で布を作り、
今は、袋を優先的に作っているのです。」
「で、一体、どれだけ作るのですか。」
「はい、今は、何枚、必要なのか分かりませんが、この袋、一枚で何日分の小麦
が入るのか、其れを、今、調べているのです。」
「じゃ~、さっき、言ってた記録ってのは、其れを調べる事なのか。」
「はい、この袋、ひとつで何日間、持つか分かれば、定期的に取りに来ると言い
ますか、配ると言いますか、其れは検討の余地として残りますが。」
リッキー自身も、余り、詳しく説明する必要も無いと思っているのだが、ついつ
い、熱が入っている。
「この機織り機なんだが、今、何台有るんだ。」
「え~っと、確か、2台だと思います。」
「なぁ~、オレは、何も知らないから教えて欲しいんだが、この機械が多く有れ
ば、もっと布を作りれば、着る物も作れるのか。」
「はい、其れは、多い方が良いと思いますが、でも。」
「でもって、この機械を作るのが難しいのか。」
「はい、簡単には。」
「なぁ~、マッキーシーさん、今、我々の仲間は、数万人居ると思うんだ、この
仲間の中にも、手先の器用な人達も要ると思うんだよ、それで、その人達にだよ、
この機織り機の機械を作って貰うってのは可能なのか。」
「はい、私は、可能だと思います。
この機織り機以外にも多くの機械を作る事が出来れば、今、人間の力だけで行
なっている作業が大幅に改善されると思いますが、特に、この機織り機は、細心の
注意を必要する様に思われますので。」
「うん、其れは分かってるんだ、だがよ~、出来るか、出来ないかは別にしてだ
よ、数万人の知恵で考えれば、出来る様になると思うんだがなぁ~。」
「陛下は、何時も、何か、事有るごとに、突飛な、お考えをされますが、今回
は、私も、大賛成ですねぇ~、陛下が、何時も、申されておられます、農民のため
にと、私は、兵士達の中にも、陛下と、同じ様に突飛な考えを持つ者も居ると思い
ます。
其れと同じで、今、申されました、英知も、手先の器用な人物もですが、兵士達
にも広げては如何でしょうか。」
「さすがに、将軍だ、言い事を言いますねぇ~、だったら、全員の中から探して
はどうだろうか、だってよ~、農場の鍛冶屋さんは、見事な物を作るんだぜ、オレ
は、男女の関係無く探して欲しいと思うんだ。」
「陛下、私も、大賛成で、御座いますよ、やはり、皇帝陛下の頭の中を見たくな
りましたねぇ~、私は。」
「おい、おい、オレはよ~、単純な人間なんだからよ~。」
「将軍、私も、賛成ですねぇ~、兵士は、今まで、戦の事ばかり考えておりまし
たが、これからは、みんなのためにと言う事ですねぇ~。」
ロレンツは、お風呂部隊の子供達が言った言葉を思い出していた。
「ロレンツ、お前も、あの子供達の言葉を思い出したのか。」
「はい、一人は、みんなのために、みんなは、将軍のためにですか。」
「ねぇ~、話は変わるんだけど、あの女性達なんだけど。」
テレシアは、気付いていたのか、それとも、知らなかったのか。
「あの女性達は、元のお城の者達でして、今は、この袋を作る仕事をさせていた
だいております。」
「だがよ~、みんな、不満は有るだろうよ~。」
「陛下、どの様な仕事に就いても不満を言う者は、必ず居ります。
ですが、陛下、仕事をさせていただけると言う事は、今、自分達は生きていると
言う証だと、私は、思っておりますので。」
「いゃ~、本当にありがたいねぇ~、皆さんもよろしく頼みますね、皆さんのお
陰で、農民さんも、新しい服が着れると思うだけで、オレは、皆さんに感謝します
よ、有難う。」
袋作りや、機織りをしている女性達は驚いた。
巨大な帝国の皇帝と言われる人物が、機織りや、袋を作っている女性達に感謝す
るとは思いもしなかったのだ。
「では、この城で、一番、重要なところへ、参りますので。」
リッキー隊長は、地下倉庫へと案内するのだが、その倉庫は、地下2階に有る、
巨大な倉庫だ。
「わぁ~、なんて大きなところなの、ねぇ~、一体、この倉庫の大きさって、何
処まで有るのよ。」
テレシアが、驚くのも無理は無かった。
其れは、この城の地下は、敷地の半部が巨大な地下となっている、これほど、巨
大な地下も初めて見る、ロシュエなのだ。
「いゃ~、本当に大きいなぁ~、将軍、何で、こんなに大きな地下を作ったん
だ、其れにだよ、さっきの入り口だって。」
「はい、この地下室は、領民の避難場所として、初代の城主が考えられたと聞い
ておりますが。」
「へぇ~、其れにしてもだよ、あの入り口は、簡単に見つかるとは思えないんだ
がなぁ~。」
「陛下、あの入り口は、大工さんに頼み、改造する事になっております。」
「そうだろうなぁ~、だがよ~、あの大きな袋を、この地下から上げるために
は、何か工夫が必要だと思うんだがなぁ~。」
「はい、其れも含めて、大工さんにお願いをしようと思っているのですが。」
「まぁ~、なぁ~、大工さんと、鍛冶屋さんに任せりゃ、最高の物考えてくれる
と思うぜ。」
「はい、陛下、私も、良い仕事をさせて頂き、今は、生き甲斐を感じておりま
す。」
「そりゃ~、良かったよ~、でだよ、この食料倉庫なんだが、人手は足りている
のか。」
「はい、其れは、これからの課題だと考えております。」
「まぁ~、みんなで、よ~く、話し合って決めてくれよ、其れに、この城は、こ
れから巨大な倉庫に生まれ変わるんだから、だがよ~、外敵の侵入だけは常に注意
して欲しいんだ。」
「陛下、その外敵ですが、私は、狼犬部隊が偵察任務専門となれば、この城か
ら、偵察任務に行ける事が可能となり、最善の策だと考えているのですが。」
「う~ん、だけど、其れは、オレが簡単に決める事じゃ無いと思うんだ、オレは
よ~、第1大隊の第1小隊、彼らも、重要な偵察部隊の人員だと思うんだ、でだ
よ、オレとしてはだ、将軍と、司令官、其れに、第1大隊の隊長も含めて検討して
欲しいんだが、将軍、如何だろうか。」
「陛下、何事も、全員参加と申されるのですね。」
「うん、そうなんだ、だがよ~、オレは、強制は駄目だぜ、中には、嫌だと思っ
ている人達も居ると思うんだ。」
「私は、是非、全員が参加し、この帝国のため、其れが、最終的には、我が身の
ためとなるのですから。」
今や、マッキーシーも、城主の顔では無く、今は、より良い生活を目指すために
と考えるので有る。
「将軍、さっきから思ってたんだがよ~、この地下室って冷たいんだなぁ~。」
「はい、其れに、まだ下にも地下室が御座いますよ。」
「陛下、その下の地下室に、肉を保管出来れば、長い期間保存が出来ますの
で。」
「まぁ~、だけど、その地下室を見る必要も無いなぁ~。」
「はい、今は、この大きな地下室に昨年収穫しました、小麦を保管しております
ので。」
「じゃ~、みんな、よろしく頼むぜ。」
「陛下、少しお待ち下さい。」
「えっ、どうしたんだよ~。」
フランド隊長は、肉の保管場所を見たいのか。
「陛下、実はですねぇ~、大変、お話しするには難しい問題が有りまして。」
「放牧場に問題でも有るのか。」
「はい、私は、大きな問題だと考えております。」
「何だよ~、その問題ってのは。」
「はい、まず、馬なんですが、今、7千5百頭にも増えているのですが。」
「7千5百か、あの時は、確か、5千だったと思うんだが。」
「はい、私は、兵士ですので、馬は、大切だと、今でも思っております。
でも、今、その内の3千頭が妊娠しておりまして。」
「えっ、3千頭が妊娠してるって、じゃ~、1万頭を越えるのか。」
「はい、其れに、猪は、少なくても、一度に、5頭から、6頭の子供を産みます
ので、更に、鹿も、数百頭が妊娠しております。」
「えっ、じゃ~、よ~、全部が産まれたら大変な事になるんだなぁ~。」
「はい、馬や、鹿は、牧草が必要になりますが、今、放牧場内の草が少し不足し
始めてきておりまして。」
「じゃ~、隊長は、馬を。」
「はい、私としては、本当に心苦しいんですが。」
「う~ん、将軍、何か、良い方法は無いだろうか。」
「う~ん、この問題は、本当に苦しい決断を迫られるのですねぇ~。」
「将軍、何も、考える必要は有りませんよ、今、我々が乗っている馬も、何時か
は死ぬ事になるんです。
だったら、早い時期に殺し、我々と言うよりも、農場の人達に食べていただく方
が良いと思いますが。」
司令官は、思い切った話をするのだ、放牧場の馬は、敵軍の馬だったが、自軍の
馬も年齢を重ね、動きが遅いと言うのか、鈍いと言えばよいのか、其れは別とし
て、若い馬と交代する時期に来ていると、ロレンツは、以前から考えていた。
「司令官、其れは、馬を間引きすると言われるのですか。」
「私は、その方法も仕方が無いと思いますよ。」
「う~ん、将軍が、答えを出す事になるぜ。」
「陛下も、司令官も決断されたと思いますよ、我々の馬も、何れは、交代の時期
が訪れるのですから、私は、他の選択肢は無い様に思うのですよ、其れに、馬の皮
は丈夫ですから、何かと役に立つのでは有りませんか。」
「よ~し、フランド隊長、農場の馬だけで無く、我々の馬も、その中に入れ、選
別してくれるか。」
「はい、本当は、私も、この様な事はしたくは無いのですが。」
「分かってるって、みんなも同じ気持ちなんだよ、だけど、隊長は、仕事として
割り切って欲しいんだ。」
「テレシア、今の話は、誰にも言う事は許さんぞ。」
「分かってるわよ、私も、反対出来ないよ、だって、猪や、大鹿だって、同じな
んだもの、でも、考え方を変えればよ、みんなが、其れで、生き残れるんだから、
でもね、私からお願いが有るのよ。」
「へぇ~、一体、何を頼みたいんだ。」
「私はね、猪や、鹿だったら、解体は出来るんだけど、馬はね、あの目を見ると
ねぇ~、少し、う~ん。」
「分かったよ、隊長、農場で解体して、肉を各農場に配って欲しいんだが。」
「はい、其れは、私も、最初から考えておりましたので。」
「済まんなぁ~、オレも、あの目を見ると、出来ないんだ。」
「へぇ~、皇帝になったら、急に弱気になったんだねぇ~、将軍の時の方が、
もっと強気だったのにねぇ~。」
テレシアも、分かっている、今、ロシュエは、大きな負担を背負っていると。
「テレシア、オレなんかよ~、何時も弱い立場なんだぜ。」
「陛下、私も、今になって、改めて分かりましたよ、私は、出来るならば、一人
の兵士に戻れないかと、考える時も有りますので。」
「将軍、其れは、私も、同じですよ、だって、私は、今でも思っておりますよ、
ロレンツは、司令官の器じゃ無いとね。」
「将軍も、司令官も、元には戻れ無いんだ、まぁ~、二人とも、死ぬまで苦しむ
んだなぁ~。」
ロシュエは、大笑いするのだ、其れは、自分自身も同じだと分かっている。
「じゃ~、諦めろって言われるんですか。」
「ロレンツ、まぁ~、仕方が無いんだ、それが、運命って事なんだからよ~。」
「先程からのお話しを聞いておりますと、普通では考えられませんねぇ~。」
「えっ、何がだ、オレ達は、これが普通だと思ってるんだぜ。」
「他の国では、兵士達は、早く昇進したいと願っているのですよ、ですが、この
帝国の将軍も、司令官も、其れに、他の兵隊さんも、早く昇進したいと言わないの
ですから、将軍を辞めて、兵士に戻りたいなどとは、他の軍隊では考えられない話
ですから。」
「陛下、まぁ~、我々は、変人の集団と言う事になりますかねぇ~。」
「変人の集団か、そりゃ~、いいや、ロジェンタ帝国は、変人の集団だから、誰
も攻撃はするなよ~ってか。」
ロシュエも、将軍も、他の全員が大笑いするが。
「ねぇ~、私は、変人じゃ無いからね、兵隊さん達だけが変人なんだか、私は、
あんた達の仲間じゃ無いよ。」
と、言いながらも、テレシアも大笑いしている。
「如何でしょうか。」
「リッキー隊長、お前さんが、一番の変人かもよ。」
「はい、其れは、私も、認めておりますよ、だって、今の様な話をですよ、軍の
隊長が考える事なんでしょうか、私も、陛下の毒牙にやられたんですよ。」
「なぁ~、マッキーシーさんよ~、こんな変人の集まりばかりなんだが、まぁ
~、あんたも、既に変人になってるんだからよ~、これからもよろしく頼むは。」
「はい、本当にありがたい話しです。
私も、今は、もう完全に変人ですねぇ~、でも、何か分かりませんが、、今は、
本当に毎日の生活が充実しております。」
あの時、当時の司令官や、リッキー隊長、其れに、ホーガン隊長が、大きな危険
を冒してまでも来た。
そして、城の者達も、領民の全てが、ロジェンタ帝国の一員として迎えられ、今
までに無い充実感を味わう毎日なのだ。
そして、明くる日からは、各農場で説明会が何度も行なわれ、多くの意見が、農
民からも、兵士達からも、其れは、木こりや、大工達からも出された。
代表として選ばれた人達は、何度も、何度も議論を重ね、勿論、中には簡単に決
まった話も有る。
だが、殆んどが簡単に決まらずに、各農場では、数十回、いや、数百回も議論を
重ねる農場も有った。
だが、誰からも反対では無く、前向きな意見が多く寄せられ、其れだけ、みんな
が真剣に取り組んでいると。
其れでも、時間の経過と共に、議論も終わる様になり、数年後には、全ての農場
では団結し、農作業をはじめ、多くの仕事を行なえる様になった。
その後、数年間は、大豊作が続き、ロシュエも、今は、のんびりと過ごす時間が
出来た。
そして、5年の月日が経つ、有る日の昼頃、何時もの様に偵察に向かった狼犬部
隊が、馬を飛ばして来る。
「お~い、狼犬部隊の偵察隊が、馬を飛ばして戻って来るぞ~、開門だ、隊長に
も知らせてくれ~。」
「よし、分かった、城門を開けろ、狼犬部隊だ、何か有った様子だ。」
城正面の大きな門が開かれ、狼犬部隊が飛び込んで来た。
「隊長は。」
リッキー隊長は、5番農場から、大急ぎで、城に戻って着た。
「ホーガン隊長、一体、如何されたんですか。」
「リッキー隊長、大変ですよ、城の南へ10日ほどのところに大軍勢です。」
「えっ、軍隊って、で、何人くらいですか。」
「はい、今、第1小隊が確認に入っておりますが、物凄い人数ですよ、3万か
ら、5万は居ると思われます。」
「分かりました、伝令だ、陛下と。」
「はい、今、ホーガン隊長の言われました事を大至急伝えます。」
伝令の兵士は、馬を飛ばし、農場本体のロシュエの執務室へと向かった。
「ホーガン隊長、では、まだ、詳しい事は分からないのですね。」
「はい、後は、第1小隊に任せましたので。」
其れが、今、最善の方法なのだ、第1小隊とは、ロレンツの大隊から、狼犬部隊
に編入された、小隊で有る。
第1小隊の偵察方法は、独自に考え付いた方法なので、最後は、第1小隊が詳し
く調べ、その報告は、将軍や、司令官に直接出来るので有る。
「で、その軍勢ですが、リッキー隊長、武器なんですがね、我々が、初めて見る
巨大な物なんですよ。」
「ホーガン隊長、巨大な物って、一体、どれくらいの大きさなんですか。」
「え~っと、そうですねぇ~、あの位置から想像すると。」
ホーガンも、初めて見る巨大な武器とは、一体、どの様な武器なのか、ホーガン
は、気持ちを落ち着かせながら。
「そうですねぇ~、人間の大きさから考えますと、この城壁の高さは有りそうで
すがねぇ~。」
「えっ、何ですって、城壁の高さが有るって、そんな巨大な武器が有るんです
か。」
「はい、私は、あれは、巨大な武器だと思いますよ。」
「ですが、そんな巨大な武器で、一体、何を飛ばすのですか。」
「其れまでは、分かりませんが、でも、あれは、間違い無く武器だと思いますが。」
ホーガンも、実は、確信が持てない。
リッキーも、その様な巨大な武器が、果たして存在するのか、存在するとなれ
ば、一体、何を飛ばすのか、其れを、早く知りたいのだが、今、其れを確認するた
めに、第1小隊が、敵前まで迫り、確認しているはずなのだ。
「ホーガン隊長、少し休まれてから、将軍と、司令官に知らせていただきたいの
ですが。」
「勿論です、ですが、私も、冷静になって考えますと、仮に、巨大な武器だとし
てもですが、どの様な方法で移動させるのでしょうかねぇ~。」
「う~ん、確かに言われるとおりですねぇ~、1番農場で大木を運ぶために作ら
れた、巨大な荷車を運ぶだけでも、2百人の兵士が必要だった事を思い出します
よ。」
「いゃ~、私も、あの荷車は知っておりますが、其れの10倍、いや、20倍く
らいは有ると思いますが。」
「え~、じゃ~、千人以上の兵士が引くんですか、でも、其れを引くだけで、千
人もの兵士が必要だとしてもですよ、この帝国に来るまでは平坦なところだけでは
無いですよ。」
ホーガンは、少し自信が無くなってきたのだろうか。
「う~ん、ですが、仮にですよ、武器で無いとすれば、一体、何に使うための物
なんでしょうかねぇ~。」
「私は、ホーガン隊長の直感を信じますよ、で、その物体なのですが、1台だけ
なんですか。」
「いゃ~、其れが、10台ほども有りますのでね、その10台が全て、巨大な武
器だとすれば、この帝国の防衛計画を考え直す必要が有る様に思うのですが。」
「ホーガン隊長、我々にだって、今は、協力な武器が有るんですよ。」
「はい、其れは、私も知っておりますが。」
リッキー隊長が言った強力な武器とは、一体、どの様な武器なのか、それでも、
ホーガンは、今でも、強力な武器で、農場の鍛冶屋が、新たに作った武器、其れ
は、今までのホーガンをより大きく、槍を飛ばせるので有る。
更に、兵士達が持つ、ホーガンも強力になり、今までの倍も、ホーガン矢を飛ば
せ、其れは、人間が引く弓の10倍以上も遠くまで、ホーガン矢が飛び、敵軍の武
器が、今までの弓が主力で有れば、帝国の入り口に有る城の近くまで来る事は、殆
んど不可能なので有る。
だが、ホーガン達が見た巨大な武器が、どの様な物を、何処までの距離を飛び、
どれだけの破壊力が有るのかも、今は、定かでは無い。
「リッキー隊長、私は、今から本体へ向かいますので。」
「其れでは、よろしく、お願いしますね。」
リッキーが言った、新たな武器は、城に10基、そして、農場本体までの途中に
有る、城壁には、5百基が配備され、兵士達のホーガン矢も、今では百万本も作ら
れ、其れは、1番大隊から、5番大隊と、城の警備隊の全員に配られている。
少し前、ロシュエの執務室に鍛冶屋が来ていた。
「陛下。」
「お~、鍛冶屋さんが、一体、どうしたんだよ~。」
「いえ、別に大した用事じゃないんですが、実は、オレが、数年前から作ってた
物が、昨日、要約、完成したんで、持ってきたんですが。」
「へぇ~、で、一体、何を作ったんだ。」
「はい、これなんですがね。」
鍛冶屋が出した物とは、二振りの短刀で有る。
「わぁ~、こんな立派な短刀をオレと、イレノアのために作ってくれたのか。」
「はい、で、受け取って頂きたいのですが、如何でしょうか。」
「おい、おい、本当にいいのかよ~、こんなに立派な短刀を。」
「ええ、勿論ですよ、手にとって見て下さいよ、これはね、オレの自慢の作なん
で。」
「オレは、こんなに嬉しい事が有るかよ~、オレと、イレノアにって、お~い、
イレノア。」
「は~い、直ぐに。」
イレノアも、直ぐに来た。
「はい、何か、ご用事でしょうか。」
「うん、実はなぁ~、鍛冶屋さんがよ~、オレと、イレノアにって、こんな見事
な短刀を作ってくれたんだ。」
「えっ、私に、短刀をですか。」
「はい、奥様、オレが、数年前から作ってたんですが。」
「有難う、御座います、でも、私が武器を持つなんて。」
「奥様、この短刀は、武器とは思わないで頂きたいんです。
この短刀は、奥様の守り刀で、飾り刀と思って頂きたいのです。」
「守り刀って、これは、私のお守りだと言われるのでしょうか。」
「はい、美しい奥様に、武器は似合わないですが、お守りだったらと思ったんで
す。」
「イレノア、鍛冶屋さんが、オレ達のお守りを作ってくれたんだよ。」
「はい、でも本当によろしいのでしょうか、私に。」
「はい、勿論で御座います。
「はい、では、有り難く、頂きますね、私、実は、今まで、本当にと言えば怒ら
れるかも知れませんが、私だけの物って無かったんですよ、ですから、この短刀
は、私の宝物として、大切にさせて頂きます。」
イレノアは、宝物として、大切に保管したいので有る。
「奥様、オレの方こそ、本当に嬉しいですよ、だって、オレが、作った物を宝物
だなんて思われるだけでも嬉しいんですよ。」
「本当なんですよ、其れも、陛下とお揃いの物が出来ただけでも嬉しいんで
す。」
「奥様に、そんなに思っていただけるだけでも、オレは、作って良かったと思い
ます。」
「鍛冶屋さん、オレだって同じなんだよ、今まで、オレだけの物って無かったん
だ、其れが、鍛冶屋さんが作ってくれた、この短刀は、イレノアが言った様に、オ
レの宝物にするぜ、本当に有難うよ。」
ロシュエは、鍛冶屋に頭を下げた、それ程までに嬉かった、二人なのだ。
「陛下、奥様、其処まで言われると、作ったオレの方が感謝します、有難う、御
座います。
じゃ~、オレは、現場に戻りますので。」
鍛冶屋は、何か、宝物を得た様に嬉しそうな顔で戻って行った。
「イレノア、有難うよ。」
「いいえ、私は、本当に嬉しいんです。
今まで、個人として、初めて頂きましたので、大切にして行きます。」
イレノアも、大切な物として、両手で持ち、寝室へと行った。
その少し後。
「中隊長、伝令で~す。」
「よし、分かった。」
この頃になると、城や、5番農場からの伝令は、馬を飛ばすのだが、その前に、
城の見張り所から、旗で知らされているので、伝令だと直ぐ分かる様になってい
る。
「伝令、将軍と、司令官にで~す。」
「よし、そのまま行け、将軍と、司令官は、宿舎に居られるから。」
「はい。」
伝令は、馬に乗り、将軍の宿舎へと飛ばすので有る。
「将軍、伝令です。」
「はい、入って下さい。」
「はい、将軍、報告します、先程、ホーガン隊長より報告が有りました。
城より、10日くらいのところに軍勢を発見との事です。」
「えっ、軍勢って、本当ですか。」
「はい、ホーガン隊長は、軍勢は、3万から、5万人くらいだと言われました。
其れから、今は、第1小隊が詳細を調べるために、敵前近くまで向かっていると
の事です。」
「そうですか、分かりました、ご苦労様でしたね、少し休んでから戻って下さい
ね。」
「はい、将軍、有難う、御座います。」
伝令兵は、将軍の宿舎から、大食堂に向かい、少しの休みを取るので有る。
「当番さん、私の馬を用意して下さい。」
「はい、将軍、準備は終わっております。」
「そうですか、君は、司令官に、陛下の執務室に来る様に伝えて下さい。」
「はい、直ぐに。」
当番兵は、大急ぎで、司令官の宿舎に向かったが、ロレンツは、早くも向かって
いた。
「陛下、よろしいでしょうか。」
「お~、いいよ。」
「はい、では。」
「将軍と、司令官が来たと言う事は、何か、有ったんだなぁ~。」
「はい、今、伝令が有りまして、城から、10日くらいのところに、3万から、
5万の軍勢が発見されました。」
「何だと、3万から、5万の軍勢が、で、その軍勢ってのは、城に向かっている
のか。」
「まだ、其処までは、確認出来ておりませんが、伝令の報告では、狼犬部隊か
ら、第1小隊が離れ、敵前まで行き、現在偵察に入っているとの事です。」
「分かった、其れでだ、狼犬部隊が、敵と思われる軍勢を発見したと言う事はだ
よ、奴らも偵察を出し、このロジェンタ帝国も発見されていると考えて間違いは無
いと思うんだ。」
「はい、私も、その様に思っております。
其れで、我々としましては、第1小隊の報告を待ってから考えても遅くは無いと
考えております。」
「うん、オレもだよ、今更、焦ったってどうにもならないんだからよ~。」
「私は、各大隊に、武器の一斉点検の指示を出します。」
「うん、其れが、大事だなぁ~、もう、何年も使ってないんだから。」
「陛下、食料の確保も考えまして、城から報告する様に手配しましたので。」
「いゃ~、さすがに、将軍と、司令官、オレは、任せるから、だがよ~、その軍
勢って、一体、何処から来たのかも、調べる必要が有るなぁ~。」
「はい、今後の事も有りますので、私は、後日、狼犬部隊に長期間の偵察に向か
う様に出来ればと考えておりますので。」
其れは、ロシュエも、司令官も必要になると考えていた。
ウエスの兄との戦が終わって、早、5年が過ぎ、今では、戦が有った事も忘れ掛
けている。
だが、今回、新たな軍勢を発見したと言う事は、まだまだ、知らない国が有ると
言う事で有る。
「将軍、司令官、3万から、5万人と言う軍隊の規模から考えると、相手は、大
国だと思うんだ。
今まで、我々は外の調査もしなかったが、将軍の言う様に、この一件が落ち着け
ば、狼犬部隊を偵察に向かわせると言うには、大事な事かも知れないなぁ~。」
「はい、我々は、今まで、その様な国が有る事さえ考える必要も有りませんでし
たので、今回が、良い機会だと思います。」
その頃、敵軍と思われる軍勢の近くまで接近した、第1小隊はと言うと。
「小隊長、あの巨大な物は、一体、何に使うのでしょうか。」
「う~ん、私も、初めて見たので、何とも言えないのですが、一番上に有る物も
何でしょうかねぇ~。」
「えっ、何処ですか。」
「あの丘の上に何か、有るんでしょうか。」
「あれは、多分、見張り所じゃ~無いでしょうか。」
「ですがねぇ~、見張り所ならば、同じ様な物を10台も必要は無いと思います
がねぇ~。」
「う~ん、確かに、そのとおりですよねぇ~、小隊長、下の方に何か見えます
が。」
「えっ、何処ですか。」
「あの、長い棒の様な物の先に、あれは、何かを入れる器の様にも見えるんです
が。」
「そうですねぇ~、其れにですよ、一番上と、一番下の部分には何も有りませ
んから。」
「じゃ~、あの入れ物の様な物に何かを入れて飛ばすんでは無いでしょうか。」
「う~ん、そうかも知れませんよねぇ~、車輪の後ろに、これも、何に使うのか
分かりませんが、棒の様な物が見えますねぇ~。」
「ねぇ~、小隊長、でも、一体、あの巨大な物を、どんな方法で動かせるんで
しょうかねぇ~。」
「私は、多分ですが、馬に引かせると思うのですがねぇ~。」
「そうですよねぇ~、あんな巨大な物を人間が引くとなれば、一体、何人くらい
が必要になるんでしょうか。」
「そうですねぇ~、5百人ですかねぇ~、それとも、千人は必要かも知れません
よ。」
「じゃ~、仮に、千人が必要だったら、それだけで、1万人ですか。」
「まぁ~、その様に見れば、この軍勢の人数が分かると思いますよ、まぁ~、武
器としては、槍と弓ですねぇ~、問題は、この巨大な物が武器なのか、其れが、分
かりませんが、これ以上近くに行くのは危険ですから、野営用のテントの数だけを
調べて下さいね。」
「はい、了解しました。」
兵士数人で、テントの数を調べ、小隊長と、数人は、馬の数を調べるので有る。
そして、狼犬部隊が、城に到着した、5日後の朝で有る。
「隊長に、知らせてくれ、第1小隊が戻って来ましたと。」
「了解。」
第1小隊は、馬を飛ばすでもなく、小走りで、城に戻って着た。
その数日前の昼頃、ホーガンは、農場本体に着き、ロシュエ達に説明をしてい
た。
「ホーガン、大変だったなぁ~。」
「いいえ、其れよりも、陛下、敵と思われる軍勢ですが、私は、巨大な武器と思
われる様な物を見ました。」
「えっ、巨大な武器って、一体、どんな物なんだ。」
「はい、でも、私の説明では詳しくは出来ませんので、今、第1小隊が、敵と思
われる軍勢の目前まで行き、詳しく調べていると思いますから。」
「よ~し、分かった、で、話は変わるんだが、さっきも、将軍と、司令官にも頼
んだんだがよ~、今回の件がどんな方向に向かうか分からないんだが、狼犬部隊
は、長期間の偵察に向かって欲しいんだが。」
「えっ、狼犬部隊としてですか。」
「うん、そうなんだ、だって、オレ達は、遠くに、どんな国があって、その国の
軍隊の様子も全く知らないんだぜ、今回は、運良く、早く発見出来たんで、対応も
考える時間も有ると思うんだが、其れがだよ、森の直前まで、全く気付かなかった
とすればだよ、この帝国の存亡に関わる事態になったと思うんだ、だから、その前
に、この周辺では無く、遠くの国を調べに行って欲しいんだ。」
「ホーガン隊長、私も、今回の事を教訓として考えれば、この先、ロジェンタ帝
国を、数百年、いや、千年帝国になるためには、今ままでで、最も重要な任務だと
考えております。」
「陛下、将軍、私達に、その様に重要な任務を与えて頂き、私は、最高の名誉を
感じております。」
ホーガンは、感激した、ロジェンタ帝国を、千年帝国にするのだと言う、将軍の
言葉と、皇帝からは、狼犬部隊にしか出来ない任務だと言われたので有る。
「ホーガン、だがよ~、この任務を簡単に考えられては困るんだ。
城が有れば、当然、村も有るだろうから、領民に対しては、決して恐怖感を与え
る様な言葉使いも、態度も考えて欲しいんだよ、其れに多分だよ、狼犬部隊の姿を
見ればだ、誰が見ても野盗だと思うだろうからよ~、堂々としてだよ、我々は、こ
の地から、数十日も行ったところに有る、ロジェンタ帝国の軍隊で、決して、皆さ
んを襲うために来たのでは無いと、はっきりと説明するんだぜ。」
「はい、其れはもう勿論です。」
「其れによ~、仮にだよ、その軍隊と遭遇した時でも、狼犬部隊からは、絶対
に、ホーガン矢を、あっ、そうだ、ホーガンは持って行くな。」
「陛下、何故ですか、我々も、武器は必要かと思いますが。」
「うん、其れは分かってるがよ~、万が一って事も考えるんだよ。」
「う~ん、ですがねぇ~。」
「ホーガン隊長、陛下は、若しもの時を考えておられるのですよ、だって、突
然、数千人規模の軍隊が襲って来るとも考えられますよ。」
「ホーガンよ~、オレは、何も狼犬部隊がどうのって言ってるんじゃ無いんだ、
例えばだぜ、ホーガンが領民に話を聞いたとするだろう、でだよ、領民の中には、
城の兵士に連絡する者だって居ると思うんだ。」
「其れは、当然だと思いますよ、私だって、兵士に伝えますよ、何処かの知らな
い男達が来て、お城の事を聞いておりましたって。」
「ホーガン、其処なんだ、オレが、さっき言った様に、領民には恐怖感を与える
様な言葉使いも、態度もするなって、其れと、武器なんだが、ホーガンを持ってい
ると、領民達は、初めて見る武器に驚き、其れが、余計な話になるんだ、だがよ
~、誰もが持っている弓だと、これは、狩猟用に使う弓だって言えば、其れが武器
だと分かっていても、大きな騒ぎにはならないと、オレは、思うんだがよ~。」
「その様に言われましたら。」
「オレだってよ~、ホーガン達の事だ、何も心配はしてないんだ、だがよ~、相
手が、領民であれば、余計な詮索をさせたくは無いんだ。」
ホーガン達の気持ちも良く分かる、だが、現実の問題として、今、発見された大
軍が、一体、何処の国から来たのか、其れに、何の目的で来たのか、その軍隊が好
戦的な態度で来たとなれば、自分達も、其れに、対処する方法を考えねばならな
い、其れを、ロシュエは、ホーガンに伝えたいのだ。
「だから、さっきも言っただろうよ~、狼犬部隊に頼むしか無いんだって。」
「はい、よ~く、分かりました、私は、考え方を変えなければならないのです
ね。」
「まぁ~、有る意味じゃ、其れも必要になるかも知れないんだ、だがよ~、狼犬
部隊は、好戦的に調べるんじゃないんだ、あくまでも、友好的な態度で望んで欲し
いんだ、其れでも、駄目な時には、一刻も早く逃げろ。」
「えっ、逃げるんですか。」
「そうだ、命が大切なんだ、だから、どんな事が有っても逃げろ、逃げるが勝
ちって話なんだ。」
ホーガンは、逃げる事に対し、少しだが、不満を感じているのだが、ロシュエの
言う様に、命が大切だ、命さえ有れば、何とかなるんだと、ホーガンは自身に言い
聞かせるので有る。
一方で。
「小隊長、余り、この場に居ると、何時、発見されるか分かりませんよ。」
「そうですねぇ~、これ以上、調べる事は無理だと思う、今から戻る、みんな静
かに、あの森まで行きますので。」
「はい、分かりました。」
小隊は、それ以上の無理はせず、一度、戻る事にし、その後、3日、4日と日数
が経ち、5日を過ぎ様とする夕刻。
「中隊長、あれは、第1小隊ですよ、開門して下さ~い。」
城の大きな門が開き、第1小隊が戻って着た。
「小隊長、ご苦労さんです。」
「リッキー隊長、馬を代え、直ぐに。」
「小隊長、それ程、急ぐ内容でしょうか。」
リッキーは、第1小隊が、馬を飛ばして無かったのを知っている。
「そうですねぇ~、じゃ~、明日、早朝に出発しますので。」
「其れで、良いと思いますよ、今夜は、ゆっくりとして下さいね、誰か、第1小
隊の馬を。」
「はい。」
数人の兵士が、第1小隊の馬を連れて行く。
「隊長。」
「まぁ~、此処ではなんですから、部屋に入ってからにしましょうか。」
リッキー隊長は、小隊の全員を隊長室に連れて行く。
「まぁ~、皆さん座って下さいね、本当にご苦労様です。」
「隊長、実はですねぇ~、あの軍隊は、巨大な武器の様な物を持っております
よ。」
「はい、私も、ホーガン隊長から聞きましたが、一体、どの様な物なんです
か。」
「う~ん、其れが、簡単に説明しますと。」
その後、小隊長は、リッキー隊長に説明をするのだが。
「でも、其れが、何に使う物なのか分からないと言う事ですね。」
「はい、ですが、私の考えでは、あの巨大な物は武器としか考えられないので
す。」
「其れは、私も、同じですねぇ~、巨大な武器が10台も有ると言う事から、其
れを動かす人間か、馬も必要だろうと思いますので、仮に、人間が動かすとなれ
ば、百人や、2百人ではとても無理だと思います。」
「では、その巨大な武器を動かす人間は別として、小隊長の意見として、兵士の
人数は。」
「はい、其れが、正確にはわからなかったんですが、私達が見た様子からは、3
万人以上は居ると思うのですが」。
「では、やはり、林の中に潜んでいると。」
「はい、私は、その様に思いますね、馬の姿も見られないと言う事から、大半は
林の中に潜んでいると考えても間違いは無いと思います。」
「では、直ぐに行かれるのですか。」
「はい、明日、陛下に報告し、その後、直ぐ出発の予定にしているのですが。」
「小隊長、でも、軍勢が移動していなければ。」
「はい、私も、其れは分かっておりますが、何れにしても、早く出発する方向で
考えております。」
「まぁ~、其れは、陛下や、将軍が判断されるとは思いますが。」
リッキーも、ロシュエの考え方は知っている。
「小隊長も、皆さんも、お疲れでしょうから、食事が終わられましたら、兵舎で
ゆっくりとして下さい。」
「隊長、有難う、御座います、では、お言葉に甘えさせて頂きます。」
その後、小隊は食事も終わり、兵舎で、久し振りにのんびりとした時間を過ごし
た。
そして、明くる日の早朝、小隊は、ロシュエに報告するために出発し、昼過ぎに
は到着する。
「中隊長、第1小隊が戻って来ま~す。」
農場本体の門が開き、第1小隊が、十数日振りに戻って着た。
ロシュエの執務室には、早朝から、将軍と、司令官、其れに、ホーガン隊長も集
まり、話し合いの最中だ。
「陛下、第1小隊が戻って来られました。」
「うん、分かった、直ぐに入ってくれ、イレノア、済まんが。」
「は~い、準備は終わっております。」
その時、第1小隊が入って着た。
「お~、みんな、ご苦労さんだったなぁ~、まぁ~、座ってくれよ。」
「失礼します。」
小隊の全員が座ると、イレノアが、パンとスープを運んできた。
「何も、無いんだが、お昼なんでよ~、食べてくれよ。」
「はい、有難う、御座います。」
「まぁ~、食べながらでも、聞いて欲しいんだ、今回、新たな軍隊が発見され
た。
其れは、別に問題じゃ無いんだ、オレは、この際、狼犬部隊に長期間の偵察任務
に就いてくれと頼んだ次第なんだ。
其れと言うのも、オレ達はと言うよりも、オレは、この農場の他は、何も分かっ
て無かったと言う事の方が問題だと思っているんだ。」
その後も、ロシュエは、これから先の事も考え話を続け、その話を聞いている、
将軍も、司令官も、其れに、ホーガンも、時々では有るが頷き、話は終わった。
「小隊長、長い間、オレの余計は話で済まなかったなぁ~、じゃ~、話を聞こう
か。」
「はい、陛下。」
その後、小隊長は、敵軍と思われる軍勢の話をしたが、ホーガンからも、事前に
聞いていたので、さして、驚く事も無かったのだが。
「問題は、巨大な武器と思われる物だなぁ~、で、小隊長の見解は。」
「はい、私が、何故、武器だと言いますと、物を運ぶ様な構造では無いと言う事
です。
物を運ぶための物ならば、荷台が有りますが、あれには無いと言う事です。
更に、上部、下部は別として、中間部にですが、棒の先に器の様な物が付いてい
る、この器にですが、例えば、岩石を乗せ飛ばす様なものでは無いかと判断したの
ですが。」
「オレは、小隊長の見解に間違いは無いと思ったんだがよ~、将軍はどうだ。」
「はい、私も、その様に思いますねぇ~、ですが、小隊長が言われる岩石を乗
せ、飛ばすとすれば、一体、どれ程飛ぶのでしょうかねぇ~。」
「将軍、普通の弓で、50ヒロも飛べば十分ですから、私は、百ヒロくらいは飛
ぶだろうと思いますが。」
「司令官、私は、まだ、あの物体が、一体、何なのかも確認出来ておりませんの
で。」
「小隊長、陛下も、将軍もですが、ホーガン隊長からも、一応の説明を受け、全
員が、岩を飛ばす武器だが、まだ、確認は出来ていないと、小隊長の意見ですが、
我々は、間違いは無いと確信しているんですよ。」
「ですが。」
小隊長は、まだ、不安そうな顔付きになっているが。
「オレ達は、小隊長の気持ちは分かってるんだ、自分の目で確かめたいと、だが
よ~、小隊長が言った様に、物を運ぶ様なものでは無い事だけは確かだ、オレは、
その巨大な武器で、岩を飛ばすとすれば、どれ程、遠くに飛ぶのかだけが問題なん
だ、なぁ~、小隊長、何も心配は無いってよ~、オレ達にはよ~、強化されたホー
ガンって言う強力な武器が有るんだぜ。」
「そのとおりですよ、小隊長達は、使い慣れた旧式を使ってますがね、其れで
も、弓の倍以上は飛ぶんですよ、新型は、其れよりも、強力で、優に3倍は飛ぶん
ですから。」
「はい、了解しました、其れでなんですが。」
「おい、小隊長、正か、今から直ぐに行くつもりじゃないだろうなぁ~。」
「えっ、私は、まだ何も。」
「お前さんの事だ、オレ達に報告が終わり次第、直ぐに行くだろうと思ってるん
だ、だがよ~、其れは、許す事は出来ないんだよ~、2日や、3日はゆっくりとす
るんだ。」
「ですが、あれから直ぐに移動を開始していれば。」
「まぁ~、まぁ~、小隊長、よ~く、考えてくれよ、小隊長は、巨大な武器を動
かすのによ~、何人の兵士が必要だと言ったんだ、仮にだよ、百人の兵で動かすと
してだ、人間の歩くよりは遅いんだぜ、発見した時が、10日位の距離と言うの
は、人間の歩く距離で、そんな巨大な物がだ、人間と同じ速さで動くなんて、誰が
考えたって無理な話なんだ、仮に、小隊長の言う様にだよ、直ぐに移動を開始した
と考えてもだ、早くて半分も進めばいいと、オレは思うんだがなぁ~。」
「小隊長、私も、同じ意見ですよ、我々は、何も焦る必要は無いと思いますから
ね。」
「はい、分かりました、では、2~3日してから出発したいと思いますが。」
「うん、其れでいいんだ。」
「陛下、多分、その軍勢も、我々のロジェンタ帝国の存在は確認していると思い
ますが、城壁は、外側から見ても、何も見えませんが、城の警備兵は知られている
と考えても間違いは無いでしょう。」
「うん、オレも同じだ、相手は、我々の軍が、どれ程の規模なのか、全く知らな
いと思うんだ。」
「将軍、我々は、前の森と、城の横の森に付いては、よ~く、知っておりますの
で。」
「おい、ロレンツ、正か。」
「陛下、正かでは有りませんよ、ですが、奴らは、両方の森は全く知りませんの
で、私は、別の作戦を考えているんですよ。」
「別の作戦って、一体、何を考えてるんだよ~。」
ロレンツ司令官の考えた作戦とは、一体、どの様な作戦なのか。
「其れよりもですねぇ~、私は、狼犬部隊に陽動作戦に入って欲しいと思うんで
すが。」
「えっ、陽動作戦って、司令官、一体、何をするんですか。」
ホーガンは、突然の作戦に驚くのだが。
「ホーガン、そんな作戦が本当に有ると思ってるのかよ~、ロレンツの冗談だ
よ、なぁ~、司令官。」
ロシュエは、ロレンツにニヤリとし。
「やはり、分かりましたか、陽動作戦は、嘘ですよ、申し訳有りませんねぇ
~。」
「あ~、良かったですよ、だって、突然、陽動作戦って言われたもので。」
だが、ロレンツが考えていたのは確かで、其れは、敵が、目前に迫っていたと考
えればの話だが。
「陛下、ですが、先程の話は本当なんですよ。」
「じゃ~、森に入るつもりなのか。」
「はい、ウエスの兄の時、我々は、受け身だったんですよ、ですが、今度の相手
は、新型の武器を持っておりますので。」
「う~ん、だがよ~。」
「将軍も聞いて頂きたいのです。
新型の武器の威力が、どれ程なのか、我々は、全く知りません。
其れならば、我々が先制攻撃をし、新型の武器が城壁に近付けない様にする必要
が有ります。
そのためには、我々からの先制攻撃が、一番効果的だと考えますが。」
「陛下、司令官の言われるとおりだと、私も、思います。
新型の武器が巨大で有ると言う事は、我々の想像以上の破壊力が有ると思って間
違いは有りません。」
「そうだなぁ~、オレは、多分だが、新型の武器を前面に出して来ると思うん
だ、だったらよ~、司令官の言うとおり、先制攻撃で、新型の武器を止める事が出
来れば、歩兵や、騎馬隊は問題じゃ無いって事に。」
「はい、そのためには、城から、ホーガン矢の届くところまでが勝負を決めると
思いますよ、其れ以上前進させては駄目だと考えれば、森に入り、兵が来るところ
で阻止すれば、我々は勝つ事が出来ると考えたんです。」
「じゃ~、森の端に行くって事なのか。」
「はい、奴らも、狼の恐ろしさは十分知っていると思いますので、森には入らな
いでしょう、ですが、我々は、この森の中を知っておりますので、其れを利用すれ
ば、如何かと思いますが。」
「ロレンツ司令官は、第1大隊と、第2大隊に、その任務に就かせるのでしょう
か。」
「はい、今のところは、その様に考えておりますが、何れにしても、第1小隊の
最終報告を聞いてからの判断だと考えておりますので。」
「将軍、司令官の考えている方法も検討して欲しいんだ、で、司令官の言う様
に、第1小隊の報告待ちと言う事で、如何だろうか。」
「陛下、私も、同じで御座います。
ただ、この軍勢が、我々の方に向かっているのか、其れが、まだ、はっきりと致
しませんので、司令官の言われる様に、第1小隊から報告待ちで、よろしいかと存
じます。」
「小隊長、今、聞いてのとおりだ、だがよ~、無理はするなよ、将軍の言われた
様に、軍勢が、どの方向に行くのか、其れによっては、作戦を考えるからよ~。」
「はい、承知、致しました、では、自分達は、今日から、3日間の休みを取り、
4日目の早朝に出発しますので、其れでよろしいでしょうか。」
「お~、其れで十分だ、今は、身体を休めてくれよ。」
「はい、では、自分達は失礼します。」
第1小隊は、全員に敬礼し、ひとまず、大食堂に向かうので有る。
「まぁ~、将軍も、司令官も、のんびりとしようぜ、今の状態じゃ、何もする必
要が無いからよ~。」
「はい、ですが、一応、各大隊にはホーガン矢が、何本有るのかだけを確認して
おきます。」
「そうか、今度は、司令官の作戦で行くとしてもだ、ホーガン矢が大量に必要な
んだ、オレは、そんな事は、全く考えて無かったぜ。」
「司令官は、何本くらいが必要だと考えておられるのでしょうか。」
「はい、一応、全部で、50万本は必要かと考えております。
相手と言いますか、敵と呼んで良いのか分かりませんが、3万から、5万は居る
と考えると、其れくらいの矢は必要かと。」
「司令官にお任せしますので、其れと、各大隊の隊長には説明だけはお願いしま
す。」
「はい、承知しました、では、私は、今から向かいますので。」
ロレンツ司令官は、第1大隊から、第5大隊の隊長達に説明するために部屋を後
にした。
そして、4日目の早朝、第1小隊は、敵軍と思われる、軍勢の偵察任務に就くた
め、本体を出発した。
果たして、軍勢は、ロジェンタ帝国を攻撃をするのだろうか、其れとも、だが、
今は、第1小隊からの最終報告だけを待つ、ロシュエ達で有る。