第 21 話。 ロジェンタ帝国の誕生。
49名の戦死者が火葬にされ、共同墓地に埋葬された、数日後、ロシュエは、
司令官と、4番農場へと向かうので有る。
「閣下、4番農場には敵軍の兵士がおりますが。」
「そうだよ、で、オレは、奴らをウエス達の代わりにと考えたんだ。」
「やはりでしたか、私は、ウエス達がいなくなり、大池造りに支障が出るので
は無いかと考えておりましので。」
「いゃ~、実は、オレも同じだったんだ、だがよ~、農場の人達には無理だと
思っていたんだが、だが、これで、これからは、1番から、5番農場に大池と、
数ヶ所の小さな池も造れると思うんだ。」
「はい、で、一体、何人居るのでしょうか。」
「いゃ~、其れが、オレも知らないんだ、4番大隊のフォルト隊長には、人数
の確認を頼んでいるんだが。」
「そうですか、閣下、食料なのですが。」
「食料か、まぁ~、後で、考えて見るよ。」
そして、昼近く、ロシュエと、司令官は、4番農場に着いた。
「よ~、みんな、ありがとうよ、で、あれから片付けは。」
「はい、全て終わり、朝から、人数の確認を行なっております。」
「フォルト隊長も、みんなも疲れていると思うんだが、頼みが有るんだ。」
「将軍、奴らを如何にかと言うより、1番農場の大池造りにですか。」
「お~、何で直ぐに分かるんだよ~、オレは、何も言って無いんだぜ。」
「将軍、ウエス達もおりませんので、私でも直ぐに分かりましたよ、で、何
時、移動させれば。」
「うん、其れは、オレが、今から、奴らに説明するからよ~、明日の早朝にで
も出発して欲しいんだ。」
「はい、承知しました、食料も馬の肉が、まだ、大量に有りますので。」
「そうか、だがよ~、少ないと思うんだが。」
「はい、でも、1番農場には、大鹿も猪も、まだまだ、いますので。」
「そうか、済まないなぁ~。」
「これで、これからは、大池造りの方も大丈夫だと思いますねぇ~。」
「まぁ~、其れは、説明が終わってからの話しだ。」
その時、数人の兵士が戻って着た。
「隊長、報告します、全員で、7千人ほどになります。」
「えっ、7千人かよ~、そりゃ~、また、大勢だなぁ~、よし、分かった、有
難うよ、じゃ~、司令官、隊長も、一緒に来てくれ。」
「はい。」
司令官と、フォルト隊長、後は、数十人の兵士も同行し、4番農場の中に入っ
た。
先日までは、敵の兵士達だったが、今は、何故か、解放された様な顔付きで、
其れに少し疲れた様子だ。
「よ~し、全員、そのままで聞く様に、今から、大事な話をするが、食料も、
眠るところもあるが、説明の後、明日の早朝に出発する、では説明する。」
ロシュエは、1番農場から、5番農場に大池と、数ヶ所の小さな池を造る事を
説明したので有る。
兵士達は、戦争では無く、生活のために必要な池を造ると言う話しに全員が納
得した。
「君達の仕事は、池造りだけでは無い、5ヶ所の農場には、大小数え切れない
ほどの岩石が有る。
大小の岩石は、城壁造りの使用するので、半分の人員は、岩石の掘り出し作業
に就いて貰う、どちらの作業も大変だが、君達が生き残りたいと思うのであれ
ば、池造りと城壁造りの作業に入ってくれよ、逃げたい者は逃げても良いが、農
場を一歩でも出ると、其処には、狼の大群がいる、君達も聞こえていると思う
が、狼の餌食となった正規軍の兵士の様に、この周辺の土地は大変恐ろしいとこ
ろだと、それだけは言っておく。」
「あの~、将軍様、では、我々は、殺される事は無いのですか。」
「オレは、殺さないが、城壁の外には、君達を待っている狼がいる、君達は、
どちらでも、好きな方を選べ。」
「将軍様、私は、大池造りに入ります。」
「自分も行きます。」
「オレもだ。」
彼らも、生き残れる方を選んで行く。
「では、明日の早朝出発するが、その前に、君達には、もう鎧は必要無い、明
日の出発までには脱ぐ様にな、じゃ~、フォルト隊長、後は、よろしく頼む
ぜ。」
ロシュエと、司令官は、4番農場から、城へと向かうので有る。
「司令官、城に詳しいのは、3人の隊長の内、一体、誰なんだ。」
「えっ。」
ロシュエは、一体、何を考えている、突然に、其れも、城に詳しい隊長はと。
「閣下、何を、突然に。」
「う~ん、実はよ~、ホーガンが言った城主達の事なんだがよ~、あの人達
は、今まで、城の生活をしてたんだ、其れを、突然、農民と同じ生活に入れって
言ったって無理な話だと思うんだ。」
「はぁ~、ですが、あの城は。」
「其れは、オレも、十分分かっているんだ、まぁ~、この話しは何れの日にな
ればする事になるので、司令官も、頭の中に入れて置いて欲しいんだ。」
何と、司令官が、居た城にあの小国の城主を住まわせる、これは、簡単に認め
る事は出来ないと、司令官は思った。
その頃、4番農場では、フォルト隊長が、話をしていた。
「先程、将軍が、言われた様に、貴方方には、1番から、5番農場の大池と、
小さな池を数ヶ所造っていただくのですが、隣の3番農場には、5千頭以上の馬
がおります。
人間もですが、馬は、毎日、大量の水が必要ですが、今は、大きな川まで行
き、水を飲んでいると思います。
私は、1番農場より、この3番農場に池が必要だと考えておりますので、明日
は、1番農場に全ての道具と荷車を取りに行きます。」
「あの~、ですが、先程、将軍様は、1番農場の大池造りと言われました
が。」
「私が、説明すれば、将軍は、分かっていただけます。
将軍と、言う人物は、全てを自分の考えだけでは行なわない人ですから。」
「隊長、道具と、荷車だけであれば、全員は、必要有りませんが。」
「そうですねぇ~、では、残りの人達には。」
「隊長、馬の牧草も必要ですから、2番と、4番農場に有る、中間扉を開け、
馬を半分に分けては如何でしょうか。」
「その方法が有りましたか、では、残りの半数の人は、適当に分けて、2番
と、4番農場に送り込んで下さい。」
「ですが、将軍様からは、怒られませんか。」
「大丈夫ですよ、将軍は、まず、怒りませんよ、ですが、将軍と言う人は、本
気で怒らせると、我々でも、恐ろしいと思う様な将軍ですからねぇ~。」
「では、私達も、大丈夫だと言うのですか。」
「はい、勿論、大丈夫ですよ、其れと、話しは変わりますが、以前、これは、
貴方方が居られた国での話しですが、その国の軍隊で、隊長、若しくは、中隊長
をされていた人はおられませんか。」
彼らは、一瞬、驚いた、私は、元隊長ですと名乗りを上げれば、責任を取れ
と、その場で打ち首にでもなると思ったのだろうか、今まで、ざわついていたの
が、急に静かになった。
「私はねぇ~、何も、責任を追及するのでは有りませんよ、では、その前に、
お話をしましょうか、今、私は、第4番大隊の隊長ですが、我々の考え方は、隊
長の前に、一人の兵士だと言う事なんですよ。」
「えっ、隊長の前に、一人の兵士ですか、其れは、一体、何のためにです
か。」
「私もね、入隊した時は、新人の兵士ですからね、数年間と言うものは厳しい
訓練の毎日で、其れは、先輩や、上官達のお陰なんですよ、やがて、5年、10
年と経験を積み、小隊長、中隊長と、普通は昇進して行きます。
其れは、私も、この農場に来る前までは当たり前だと思っておりました。」
元敵軍の兵士達も、当然だろうと頷いている。
「ですがね、この農場の将軍の考え方は違いますよ、この農場では、何事に置
いても、農場の人達が、一番先だと言う事なんです。」
「隊長、じゃ~、将軍様や司令官様は。」
「一番、最後ですよ、将軍は、常日頃から、我々に対して言われています。
農場の人達が必死で育ててくれた作物は、我々が簡単に作れる物では無い。
あの人達が、育てられたお陰で、我々は、食べる事が出来るんだと、そして、
我々の任務は、我々、自身のためでは無く、農民さんを守る、其れは、この森に
住む、狼の大群で有り、他の軍勢や、野盗達からで有ると、この意味は、今、話
しても、直ぐには分からないと思いますよ。」
「では、農民は、一体、誰のために作物を育てているんですか。」
「う~ん、よい、質問ですねぇ~、農民さんは、みんなのためにですよ。」
「えっ、みんなのためにって。」
「そうですよ、この農場には多くの専門的な仕事をされている人達が大勢おら
れます。
その人達にためにですよ、木こりさん達も、みんなのために仕事をされている
のですから、話しは、少し変わりますが、先程も言いましたが、私は、今、隊長
ですがね、第1番大隊のお話しをしましょうか、第1番大隊の隊長は、ロレンツ
と言われる人物ですが、小隊長は、小隊の代表、中隊長は、中隊の代表、そし
て、隊長と言うのは、大隊の代表と言う考え方なんですよ。」
「えっ、では、隊長は、命令を出されないのですか。」
「はい、そのとおりですよ、将軍の話を隊長が聞く、この聞くと言うのは簡単
では無いのですよ、隊長自身が理解出来なければ、各中隊長に説明は出来ませ
んからね、隊長と言うのは、大隊の代表だと、ロレンツ隊長は、言われるのです
よ。」
「大隊の代表って、それじゃ~、一体、誰が命令を出されるんですか、やは
り、将軍様でしょうか。」
「いいえ、将軍も、殆んど命令は出されませんよ、その代わり、将軍が言われ
るのです、よろしく、頼むってね。」
「将軍様が、部下に頼むんですか。」
「はい、そのとおりですよ、将軍は、オレは、何も出来ないからよって、だか
ら、みんなにお願いするんだと。」
一体、何と、言う話しだ、今の今まで、将軍や、隊長と言う人物は命令を出す
だけの者だと思っていた。
其れが、この農場の軍隊は、全く考え方が違う、隊長も、中隊長も、単なる、
隊の代表であって、命令は出すものでは無いと言うので有る。
「隊長も、同じ考え方なんですか。」
「はい、私も、今は、その様に思っておりますよ、第1大隊では、全員が、小
隊長で、中隊長で、そして、隊長だと、だから、全員が、自分は隊の代表なのだ
と考えています。
私も、大変、意味の有る言葉だと思いますねぇ~。」
「でも、そんな話し、今まで聞いた事が無いですよ、だって、隊長が、命令を
出し、部下は、隊長の命令どおりに動くのが軍隊だと思いますが。」
「ですがね、この農場では、其れが普通なんですよ、先程も、我々の仲間が言
いましたが、彼は、中隊長でも、小隊長でも有りませんよ、皆さんで言うところ
の兵士なんです。
この農場では、誰でも意見を言う事に否定はされませんが、意見は、前向きな
考え方が多いですよ、其れに、私もですが、将軍でも知らない事の方が多いので
す。
自分は、兵士だ、兵士の意見なんて、隊長や、将軍は、絶対にと言っても良い
ほど聞いてくれないと、皆さんは思われるでしょうが、この農場では別ですよ、
兵士が考えた事、農民さんが考えた事が、みんなのためになるのであれば、将軍
も、司令官も簡単に許してくれますよ、でもね、今、急に分かっていただけると
は思いませんがね、何れ、将軍と、話しをされる時が来れば、私の、話しが本当
だと分かりますよ。」
「隊長、お話中、申し訳有りませんが、先程の人数ですが。」
「はい、やはり、多いですか。」
「はい、あの現場には荷車が百台有りますので、馬と、人員ですが、2百人も
あれば十分だと思いますが。」
「分かりました、確か、荷車1台に、馬が2頭だと思いましたが。」
「はい、ですが、馬が、2百頭に、後は、何かがあれば困りますので、馬車が
10台もあれば行けると思います。」
「そうですか、では、人員は、私から見て、左側の2百人とします。」
「で、隊長、今から出発すれば、夕方には、第1野営地に着くと思いますの
で。」
「では、其れで行きますか、では、今、私が言った人達は、馬、2百頭に乗っ
て下さいね、直ぐに出発します。」
簡単に決まって、2百人は、馬に鞍を付けるので有る。
「では、第1中隊が行って下さいね、其れと、第1、第2小隊は、先行して野
営の準備をお願いします。」
「では、第1中隊にお願いして、残りの人達は、城壁前の大木を片付けますの
で。」
「えっ、あの大木をですか。」
「そうですよ、大木も利用しますので、第2、第3中隊は、段取りよく進めて
下さい。
私は、将軍に説明し、その後、技師長にも相談しますので、後は、よろしく、
お願いします。」
フォルト隊長は、その足で、ロシュエが向かった、城へと急ぐので有る。
その頃、ロシュエ達は、5番農場付近を進んでいた。
「将軍、若しや、あれは、フォルト隊長では、何かあったのでしょうか。」
「うん、そうかも知れんなぁ~。」
フォルト隊長は、追い付き。
「将軍、お話が有るのですが、よろしいでしょうか。」
「うん、いいよ。」
「はい、実は、大池造りなんですが、今、3番農場には5千頭もの馬がおりま
す。」
「知ってるよ、其れで。」
「馬は、一日に大量の水が必要なんですが、昨日も遠い川まで行き群れを成し
て飲んでおりました。
私は、1番農場の大池も急ぐのですが、3番農場は放牧場となりますので、先
に、3番農場に、小さな池を数十ヶ所造りたいと思ったのですが。」
「そうか、人間と違い、馬は、そんなに大量の水が必要なのか。」
「はい、其れは驚くほど大量に要りますので。」
「其れじゃ~、4番農場の池も急ぐんだな。」
「はい、其れで、私の独断で、申し訳有りませんが、今、2百人と、第1中隊
が、1番農場で使用していました道具類や、荷車を取りに向かわせました。」
「そうか、そりゃ~、大変だ、だがよ~、オレが悪いんだ、だってよ~、馬が
5千頭も、3番農場に入れるなんて、予想もしなかったからなぁ~。」
「将軍、ですが、あの時、5千頭の馬は誰も予想しておりませんので、将軍
が、悪いとか言う問題では無いと思いますが。」
「フォルト隊長に言われて、オレも、少しは楽になるよ、じゃ~、道具や、荷
車が到着次第、作業に掛かるのか。」
「はい、でも、その前に、技師長にも相談したい事が有りまして。」
「フォルト隊長、オレは、第1小隊の彼と相談した方がいいと思うんだが。」
「あ~、あの兵士ですね、彼なら、馬に詳しいですから。」
「オレは、技師長よりも話しが早いと思うんだ。」
「はい、では、私から、ロレンツ隊長に相談しますが。」
「其れで、いいよ、現場の考え方が一番大切なんだからよ~。」
「はい、有難う、御座います、で、これも独断ですが、今、3番農場の馬を、
2番と、4番の柵を開放し、馬を分散させに掛かっております。」
「全部、任せるよ、隊長の思い通りにやってくれ、其れとだが、7千人の、元
敵軍なんだが、奴らからも意見を聞いて欲しいんだ。」
「はい、勿論です、先程も話をしましたが、彼らは、我々の方式が理解出来な
い様ですねぇ~。」
「そりゃ~、仕方が無いよ、だってよ~、先日までは敵軍として、お互いが
戦をしてたんだぜ、オレだって、終わって数日後に、そんな話しをされたって、
誰が、信用すると思う、まぁ~、のんびりと行こうぜ、隊長も大変だがよ~、よ
ろしく、頼むぜ。」
「はい、承知しました、では、私は、今から、ロレンツ隊長のところに行きま
すので。」
「済まんなぁ~、ロレンツにもよろしく、言ってくれよ。」
「はい、では。」
フォルトは、その足で、農場へと向かった。
「閣下、私も、正か、5千頭もの馬を確保出来るとは思いもしておりませんで
したよ。」
「うん、そうなんだ、だから、フォルトも慌てているんだろうなぁ~。」
「ですが、考え方を変えれば、私は、良かったと思っております。
5千頭もの馬が岩石運びに役立つのですから。」
「司令官、オレも、そう考えたんだ、だってよ~、まだ、殆んど、城壁に岩石
の積み上げは終わっていないんだからなぁ~。」
「その様に考えれば人間よりも助かりますねぇ~。」
「うん、其れに、7千人だろう、オレは、今度は、見張りを就ける必要も無い
と思っているんだ。」
其れは、大事な事で、今までは、ウエス達を監視するために、多くの兵士を必
要としたので有る。
「閣下、彼らの事ですが。」
「オレは、奴らに全ての池を造らせ様と考えているんだ。」
「では、完成後は。」
「完成してもだ、他にも仕事は有ると思うんだ、だってよ~、オレや、司令官
は、軍人なんだぜ、軍隊や、戦の事は知っていても、農場の仕事は全く知らない
んだ、だから、本当は、これからが大変だと思っているんだ。」
「閣下、私もですね、今までは、みんなの協力で、此処まで来ましたからねぇ
~、閣下の申されるとおりだと思いますよ。」
「まぁ~、当分と言ってもいいと思うんだが、我々の農場を攻撃する様な敵も
来ないと考えてだよ、オレはのんびりとしたいんだよ。」
ロシュエの、のんびりとしたいとは、一体、どの様な意味なのか、正か、引退
を考えているのでは無いだろうかと、司令官は、考えるので有る。
「お~、そうだった、リッキー隊長は、何処かに行ったのか。」
「いい、先程、城に行かれましたが。」
「そうか、じゃ~、司令官、城へ行こうか。」
「はい。」
二人は、城に向かうのだが、一体、リッキー隊長に、どの様な話をするのだろ
うか、城と、5番農場とは内側から行く事が出来る様になっている。
「お~い、リッキー隊長は。」
「はい、下の士官室で、中隊長とおられます。」
やはり、リッキー隊長は、中隊長と話し合っているのか、あの中隊から、49
名の戦死者を出した原因を話しているのだろうか、それとも、別の話なのか、ロ
シュエも、確かめたいと思っている。
「やぁ~、リッキー隊長、ご苦労様でしたね。」
「いいえ、私の、力不足でした。」
リッキー隊長の力不足と言った意味は、ロシュエも、司令官も直ぐ分かった。
「いゃ~、済んでしまった事だ、で、何の話を。」
「はい、今後の事に付いてです。」
「で、中隊長、君は、どんな任務に就きたいと考えているんだ。」
「将軍、今の私に考える余裕は無いのです。」
「なぁ~、中隊長、戦死、其れはなぁ~、戦が有れば、必ず、戦死者は出るん
だ、オレ達だって、ウエスの軍隊との戦で、20名もの戦死者を出したんだ、君
が責任を感じている事は分かるが、何を考えてもだ、戦死者は戻っては来ないん
だ、オレはよ~、戦死した兵士のお陰で、農場は助かったと思うんだ、戦死者の
ためにも、君が先頭になって、新しい任務に就く事の方が大切だと思うんだ
がなぁ~。」
「はい、私も、頭の中では理解してはいるのですが。」
「うん、分かるよ、だがよ~、何時まで考えても同じなんだぜ。」
「はい。」
「リッキー隊長は、どの様に考えているんだ。」
「はい、私は、今までどおり、この城の警備隊長としての任務が適任だと思い
ます。」
「よ~し、じゃ~、中隊長は、今までどおりで、この城で、警備を専門とす
る、でだよ、リッキー隊長、済まんがよ~、この城と、5番農場を頼みたいん
だ、君なら、警備隊の連中とは最初からの付き合いだし、其れに、この城の事は
よ~く、知っているからなんだ。」
「はい、将軍、承知しました。」
「其れでだ、この城の警備なんだが、各中隊にも参加させて欲しいんだ、運用
方法は隊長に任せるからよ~。」
「はい、では、私からも、お願いが有るのですが。」
「いいよ。」
「はい、城の裏側の森の大木を。」
「全部任せたよ。」
「リッキー隊長、何か、考えでも有るのですか。」
「司令官、森から大木を切り出し、5番農場にも、家を建てたいと考えたので
すが。」
「やはりねぇ~、其れに、森の大木切り倒すだけでも見通しがよくなりますか
らねぇ~。」
「はい、そのとおりで、今は、大木の柵で、狼の侵入を防いでおりますが、こ
の先、何が、起きるか分かりませんので、早期警戒と言う意味も兼ねておりま
す。」
「こりゃ~、参ったねぇ~、これじゃ~、オレの出る幕が無くなったよ、じゃ
~、よろしく、頼むぜ、オレは、のんびりと戻るからよ~。」
「はい、承知しました。」
ロシュエと、司令官は、戻って行く。
「閣下は、既に、全ての農場に配置する、大隊を決めておられるのですね。」
「まぁ~、一応はなぁ~、で、さっきの、フォルトには、3番農場を、フラン
ドには、4番農場にと思っているんだ。」
「では、2番農場は、オーレン隊長と言う事ですね。」
「やはり、分かったか。」
「閣下、私でも、分かりますよ、で、最後のロレンツ隊長には、1番農場と、
本体農場だと思いますが。」
「うん、そのとおりだ、だがよ~、リッキーだけが、今、決定したんだが、残
りの4人には、まだ、話も出来て無いんだよ~。」
「ですが、閣下、私も、大賛成ですよ。」
「そうか、司令官も賛成してくれるのか、あ~、良かったよ~、オレは、さっ
きも話しも出来てないんだぜ、本当は、別に急ぐ必要も無いんだが、1番農場の
大池造りよりも、3番農場の池造りが先になるって事になって、急に思い付いた
んだ。」
「其れは、良かったと思いますねぇ~、其れで、大食堂や、大浴場も造られる
のですか。」
「いゃ~、これが、問題なんだよ、各農場に入る人達の考えも聞く必要が有る
と思うんだ。」
「ですが、閣下、各農場には、各大隊が配置されるのです。
私は、今までどおり、大食堂と、大浴場を造る方が良いと思いますが。」
司令官は、久し振りに、ロシュエの考え方と反対の考えを示したので有る。
ロシュエは、農民の意見を重要に考えてはいるが、各農場には、大隊も駐屯す
るので、大食堂が出来れば、その場で意見交換も出来ると考え、又、大浴場で
は、今の農場と同じで、子供達にも仕事を与え、兵士との親睦も図れると考えた
ので有る。
「司令官、オレも本当は必要だと考えているんだ、だがよ~、一番の問題は水
なんだ。」
「閣下、私も承知しております、私の提案ですが、農場の人達が生活するは、
飲料水と、農業用の水が必要で、農場の数ヶ所に井戸を掘れば、井戸水が生活用
水として確保出来ます。
ですが、農業用の水も大量に必要なので、其れには、川の水を利用する他に方
法は無いと、私は、思っております。」
「う~ん、じゃ~、技術的な問題か。」
「私は、大工さん達に相談すれば良いと思うのです。
あの人達ならば、簡単に言えば、大工さんに怒られますが、解決方法は考えて
いただけると、私は確信しておりますが。」
司令官は、今までとは違うのだが、ロシュエは、司令官の言うのが正しいのか
と判断を迫られるので有る。
「じゃ~、よ~、技師長と大工さんに相談して、大工さんが出来ると言えば、
司令官の言うとおり、大食堂と、大浴場を造るか、だがよ~、大工さんが出来な
いと言ったら、一体、どうするんだ。」
「閣下、何か、方法は有ると、私は、思いますよ、特に、農業用水が無けれ
ば、作物は育ちませんから。」
「よ~し、分かったよ~、明日にでも、技師長と、大工さんに来て貰い話をす
るか。」
「はい、是非、建設の方向で考えて頂きたいと思います。」
司令官の気持ちは、ロシュエも分かっている、やはり、此処は、専門家の意見
を聞く事が一番早い解決の道で有ると、ロシュエは、考え、その後、二人は、農
場へと戻って行く。
そして、明くる日の朝。
「閣下。」
「お~、司令官、早いねぇ~。」
「私は、昨日の事が頭から外れずにおりましたので。」
「よ~し、分かったよ~、当番さんよ~、悪いが、技師長と、そうだなぁ~、
特に、あの専門の大工さんを数人呼んでくれないか。」
「はい、では、直ぐに。」
当番兵も元気だ、戦が終わり、今は、農場の人達ものんびりとした時間を過ご
している、其れから、暫くして。
「将軍、お呼びでしょうか。」
「技師長、忙しいのに済まんなぁ~。」
「将軍、ご用事でしょうか。」
彼らは、城で、細工物を作っていた大工達なのだ。
「お~、済まんなぁ~、まぁ~、座ってくれよ。」
その時、フォルト隊長も来た。
「お~、フォルトか、丁度、いい時に来たよ。」
「はい、実は、私も、技師長と、大工さんに相談が有りまして。」
「分かった、でだよ、実はよ~、今、フォルト隊長の相談ってのと、オレが聞
きたい事と関係が有ると思ってるんだが、そうだな、フォルト。」
「えっ、将軍、正か。」
フォルト隊長は、ロシュエは、知らないと思っていた。
「其れで、相談と言うのは、1番から、5番農場にだよ、大食堂と、大浴場を
造れないかと言う事なんだ。」
「将軍、其れは、他の意味も含めてでしょうか。」
「他の意味って、技師長、何か、他にも問題が有るのか。」
「将軍、別に問題と言うほどでは無いのですが、今、1番農場では、大池造り
をされているのですが、其れは、農業用水だけで、生活用水が必要なのです。」
「生活用水かぁ~。」
「はい、今の農場の裏側には小川が流れておりますので、まぁ~、簡単に水は
確保出来ますが、でも、1番から、5番農場には大きな川から水を得なければ、
他に方法は有りませんので。」
「じゃ~、農場用と、飲料用の水を確保するためには、大規模な工事になると
言うのかよ~。」
「はい、私も、何れの日が来れば、将軍に、お話しをするつもりで、図面を書
いておりまして、其れで、これが、私の考えた水車と、その水を流す通路なんで
すが。」
技師長は、数枚の図面を出した。
「お~、こりゃ~、凄いなぁ~、技師長、この水車だが、直径が、10ヒロと
書いて有るが、そんなにも大きな水車が必要になるのか。」
「将軍、川から、農場全体に水を送るとなれば、水を高い位置から流さなけれ
ばなりません。」
「え~、だけど、こりゃ~、大変だぜ、其れにしても、こんなに大きな水車を
大工さん達が作るのかよ~。」
大工達も図面を見ているが。
「将軍、別に問題は有りませんよ、大きいと意外に造り易いんですよ、其れよ
りも、技師長さん、この水を流す水路なんですが、水車から、何処までになるん
ですか。」
「まぁ~、一応、城門近くまでと考えているのですが。」
「将軍、水車よりも、この水路の方が難しいですよ。」
「大工さん、オレは、何も分からないんで教えて欲しいんだが、水路って、そ
んなに作るのが大変なのか。」
「将軍、大変って言葉よりも難しいですよ、水車に入った水は、上から、下へ
と流れますので、継ぎ目もですが、最初から、最後まで流れる事の方が大事なん
です。」
「じゃ~、川から、この近くまで水が来れる様に造るって、なぁ~、司令官、
こりゃ~、城壁を造るよりも大変だって事なんだ、大工さん、じゃ~、木材も大
量に必要になるんだ。」
「将軍、ひとつの考え方としてですが、太くて大きな竹があればいいんですが
ねぇ~。」
「大工さん、太くて大きな竹ってよ~、風呂場の裏側は殆んどが竹なんだ
がなぁ~。」
「えっ、本当ですか、私は、知りませんでしたよ、一度、見て見ますが、竹が
あれば、中の節を抜けば、後は、繋ぐだけですので簡単ですから。」
「そうか、じゃ~、水路は出来るんだ。」
「でも、将軍、まだ大きな問題が有りますよ。」
「えっ、まだ、何か有るのか。」
「はい、水車から、繋ぎ目もですが、水車から、此処まで、数千ヶ所に水路の
土台が必要になります。
この土台作りが、一番、大変だと、私は、思いますねがぇ~。」
技師長は、水車から、城門近くまでに数千ヶ所の土台造り、この土台造りが失
敗すると、水は最後のところまで流れて来ないと分かっている。
「なぁ~、技師長、その土台って、数千ヶ所も必要になるのか。」
「はい、これは、竹で作っても、木材で作っても同じなんですよ。」
「う~ん、こりゃ~、大工さん達も大変だなぁ~。」
「将軍、私達は、別に大変だとは思ってませんよ、其れよりも、この水路を作
る方が、まぁ~、余程、大変ですよ、だって、水車から、少しづつですが、下げ
て行くんですから、其れに、造り上げても、水が、最後まで流れるまでは本当に
完成したとは言えませんので。」
「じゃ~、聞くんだが、大食堂や、大浴場を造るってのは。」
「其れは、簡単ですよ、其れよりも、この農場は大きいですから、1番農場に
は、最低でも、2本の水路が必要になりますよ。」
「あの~、よろしいでしょうか。」
フォルトも、最初は、池を造るだけなので簡単だと思っていたのだが。
「実は、3番農場には、今、馬が5千頭いるのですが、馬は、一日に大量の飲
み水が必要なんです。」
「フォルト隊長、馬の飲み水の確保ですね。」
「はい、私は、池を造るだけなので、簡単に出来ると考えていたのですが、先
程からのお話しを聞いておりますと、私の、考え方が間違っておりましたのです
が、3番農場に数十ヶ所の池が必要なんです。」
フォルトは、先行して、3番農場に水を引きたいのだと。
「隊長、私も、馬の重要性は認識しておりますので、先に造らなければと思っ
ています。」
技師長も理解はしている。
「技師長、有難う、御座います、数日もすれば、3番農場の池造りに入る予定
なのですが、池は深くは堀ませんので、直ぐに出来ると、其れと平行して、岩石
の掘り出し作業に入りますので。」
「大工さん、悪いんだがよ~、先に、3番農場の水車と、水路造りに入って欲
しいんだがなぁ~。」
「将軍、私達も、これは、大変だと思っておりますので、総力を上げて、水車
と、水路造りに入らせて頂きます。」
「何時も、無理ばかりで済まんなぁ~。」
「いいえ、将軍、私達に出来る事があれば何でもしますので、任せて下さ
い。」
食堂と、風呂場の裏には、数十万本もの竹林が自生している。
竹と言うのは成長が早く、直ぐにでも取り掛かる事が出来る、だが、巨大な水
車が完成するには日数が掛かる。
其れよりも問題は、水車から、水が何処まで流れて行くのか、其れは、水路が
完成し、水を流すまでは分からないのだと。
「将軍、水車を作るには鍛冶屋さんにも協力をお願いしたいのですが。」
「えっ、鍛冶屋にもかよ~。」
「はい、私達だけでは出来ない事が有りますので。」
「そうか、まぁ~、其れは、あんた達に任せるよ、だって、あんた達が出来ま
せんって言ったら、其れこそ大変な事になるんだからなぁ~。」
「将軍、この水車と、水路造りは城壁造りよりも難しいと思います。」
「オレはよ~、何も分からないし、出来ないんだ、だけど、何とかして、農場
を完成させて、農民さんに、作物を作って貰う事が出来れば、みんなが助かると
思うんだ。」
「将軍のお気持ちは、私達全員が分かっております。
全ての農場が、一日でも早く完成させるためにも、私達の仕事は、大変重要だ
と知っております。」
大工さん達の協力が無ければ、池を造ったところで、水を蓄える事も出来な
いのだと、それ程、今回の水車と、水路造りが、今後、農場で作る作物の出来栄
えを左右するので有る。
「大工さん、実はですねぇ~、大きな川の付近では、今の様に寒い時期になり
ますと、強風が吹きますので、大きな水車を支える支柱は頑丈な造りが要求され
るのですが。」
「はい、勿論、強風が吹いても倒れない様に造らなければならないと思います
が、技師長、水車が大きいと言う事は、水車もですが、水車を支える支柱も重く
なりますので、川に直接設置する事は出来ません。
其れで、少し内側と言いますか、10ヒロほどのところに水路を開き、その場
所に水車を設置出来ればと。」
「さすがですねぇ~、じゃ~、設置の事も考えておられたんですか。」
「技師長、私達は、ただ、作れば良いとは思っておりません、色んな事を考え
て、使う人達の事も考えないと、どんなに良い物を作っても駄目なんですよ。」
「大工さんに聞きたい事が有るのですが、よろしいでしょうか。」
「はい。」
「私は、3番農場には簡単に水が引けると考えていましたが、1番から、5番
農場の中でも、3番農場は、別の農場なんですが、どの様に考えておられるので
しょうか。」
「隊長さんの、ご希望は、どの様な事でしょうか。」
「はい、私は、大きな川から、農場の中央ですね、其処に、1本の水路を作れ
ばと考えているのですが。」
「1本の水路ですか、でも、どの農場も広く、1本では、馬が飲み水を自由に
飲む事は出来ないと思います。
私は、最低でも、2本は必要だと思いますが。」
「大工さんよ~、オレも分かって無いんだが、何故、2本も必要なんだ。」
「はい、でも、その前に、3番農場ですが、どの農場を考えてもですよ、大変
な広さなんです。
今、隊長さんが言われた様に、1本の水路で有れば、馬もですが、この中で働
く人達は飲み水の場所に行くまで、大変な時間が掛かると思いますが。」
さっきも、大工が言った様に、造るのは簡単だが、其れを、今度は、人間が使
う、人間が使うとなれば、使う人達の事も考えなければならないのだと。
「じゃ~、3番農場には2本の水路を造るのか。」
「将軍、私達も、この農場に入られる農民さんの事も考えなければなりません
ので、どの農場にも、最低、2本は必要だと思いますが。」
「なぁ~、技師長、オレは、もっと、簡単に考えてたんだ、だって、水路が1
本有れば、農業用と、生活に使用する水は確保出来ると、だがよ~、大工さん達
は、オレが考えて以上に農民さん達の事を考えてくれてるんだぜ。」
「では、3番農場だけが特別では無いのですね。」
「はい、隊長さんの、ご希望されるよりも、1本多くなりますので、中央を境
に、2本の水路を造る様に考えておりますが、池を造られる場所は、水路の近く
にと思っております。」
「では、大工さん達が造られた付近に池を造れば良いと言う事に。」
「はい、其れならば、馬も、不自由無く、水を飲む事が出来ると思います。」
「分かりました、では、私は、3番農場の岩石の掘り出し作業を先に開始しま
すので、将軍、失礼します。」
「おい、おい、そんなに急いだって、何も、変わらんぜ、其れよりもだ、今
は、時間を掛けてでも、大工さん達の話を聞く事に方が大事だと思うんだ。」
「はい、承知しました。」
フォルトは、早く行き、作業を開始したいと、だが、僅かな時間で、一体、何
が出来るのだと言うのが、ロシュエの考え方なのだ。
「隊長さん、其れと、お願いが有りまして、其れは、大きな川付近で、岩石の
掘り出しをされると思いますが、川に水路を造る時と、支柱を立てる時には大小
の岩石が必要なんです。」
「では、他のところにも必要になるのですか。」
「はい、大木を地面に置くと、大木の重みで沈んで行くんです。
其れを防ぐには、大小の岩を地面に埋め、基礎に使うのです。」
「へぇ~、そんな事も必要なのかよ~、オレは、大木を立てるだけだと思って
たんだ。」
「将軍、本来ならば家を建てる時にも必要なんですよ。」
「技師長、じゃ~、この農場に有る、大食堂や、大浴場にも基礎になる岩は有
るのか。」
「将軍、勿論、入れて有りますよ、ただ、家と水車では重さが全く違いますの
で、大工さんの言われる基礎になる岩石は大量に必要だと思いますねぇ~。」
「じゃ~よ~、大工さん達の指示を待って城壁に使う岩石と、支柱に使う岩石
を分ける必要が有るんだ。」
「将軍、私は、どれだけの岩石が必要になるのか、全く、見当が付かないので
すが、大小の岩石を掘り出して置き、大工さん達の指示待ちと言うのは如何でし
ょうか、その様にすれば、城壁に使用する岩石だけを運ぶ事も出来ますし、城壁
造りも出来ると思いますが。」
「大工さん、今、隊長の言った方法は。」
「はい、将軍、私達も助かりますよ、後で、確認するよりも、先に、確認する
方が良いと思います。」
「じゃ~よ~、隊長も、早く進めたいだろう、其れに、どうせ、奴らにさせる
んだろうからなぁ~。」
「はい、将軍の考えておられるとおりで、まず、大きな川付近から、岩石の掘
り出しに入りたいと思います。」
「大工さん、其れで、いいのかよ~。」
「はい、隊長さんにお任せします。
私達は、技師長さんの図面を元に、水車と、水路に使う竹の加工に入りたいと
思いますので。」
「技師長、其れで、今度の家なんだが。」
「はい、一応は考えておりますが、農場が大きいので、1ヶ所に纏めると、農
作業に支障が出ないとも限りませんので、数ヶ所に分散し、考え方としまして
は、長屋風の家が良いのではないでしょうか。」
「えっ、長屋風って、一体、どんな家なんだ。」
ロシュエも、初めて聞く、技師長の言う、長屋風とは、一体、どの様な建て方
なのだろうか。
「私が、考えた長屋なんですが、大食堂と、大浴場を中心とした建物なんです
が。」
「技師長、では、大食堂と、大浴場は、何ヶ所も有るのですか。」
司令官は予想もしなかった。
「まぁ~、ひとつの案ですが、ひとつの農場が大きいので、最低でも、2ヶ所
は必要だと考えております。」
司令官は、大食堂と、大浴場が建設されると分かり、其れ以上は、何も、言う
事もなかった。
「技師長、オレは、これからの仕事は、大工さん達に任せようと思っているん
だが。」
「はい、私も、その方が、色々と相談する時も助かりますので。」
技師長も、今後の事を考えると、相談する相手が少ない方が楽になるのだ、そ
の時、農場の代表、5人と、大工のおやっさんが来た。
「将軍。」
「お~、おやっさんに、代表の5人も来てくれたのか。」
「将軍、農場の事で。」
「いや~、済まんなぁ~、オレも、後から相談に行くつもりだったんだ。」
おやっさんも、代表の5人も、別の話で来たので有る。
「で、何か。」
「はい、私達も、先日来、これから、本格的に造り始める農場の事で、みんな
と相談してたんです。」
「そりゃ~、これからが大変だから、みんなも話を聞きたいんだろう。」
「はい、其れで、作る作物を分ける事になったんです。」
「へぇ~、そりゃ~、言い事だが、で、一体、何を決めたんだ。」
「はい、1番農場は、小麦が、この小麦が一番必要になりますので。」
小麦が、主食と考え、最初に作るのは小麦だと決定したと。
「じゃ~、1番農場は、小麦だけを作るのか。」
「はい、其れで、おやっさんに相談したんですが、小麦を貯蔵するための倉庫
が必要なんです。」
「将軍、私も、大きな貯蔵庫が、数戸必要だと思っているんですが。」
「なぁ~、技師長、1番農場の全てで小麦を作るとなればだよ、一体、その貯
蔵庫ってのは、何戸くらい必要になるんだ。」
「其れに付いては、私も、分かりませんが、小麦は穀物ですから、外敵から
は、小麦を作っている農村が一番攻撃を受ける可能性が高いんですよ。」
「えっ、まだ、敵が来るのかよ~。」
「将軍、外敵と言っても、人間じゃ無いんですよ、鼠なんです。」
「えっ、オレは、人間だとばかり思ってたんだ。」
農民が、言う外敵とは、主に鼠で、普段は殆んど見る事は無いが、人間が生活
を始めると、必ずと言っても良いほど、鼠が来ると。
「じゃ~、鼠が、一番の外敵なのか。」
「はい、私達、農民が苦労して育てた作物を、特に穀物は一番の標的で、その
他、猪もおりますが、この貯蔵庫は低い場所に作ると、外敵には最高の食べ物と
なりますので。」
「じゃ~、その貯蔵庫っての、仮に、大食堂の上に造るとかは駄目なのか。」
「将軍、其れは、絶対に駄目ですよ、だって、奴らは、簡単に登って行きます
から。」
「え~、そんなに何処にでも行くのか。」
「はい、其れで、おやっさんに相談すると、今日、将軍と、話をされると聞き
ましたので来たんです。」
「よ~し、分かったよ~、だがなぁ~、その前にだ、農場で一番大事な仕事が
有るんだ。」
農民達も知っている、農作物を育てるには大量の水が必要なのだと。
「はい、勿論、水が必要ですから、今、1番農場で大池を造る工事に入ってい
る事も。」
「うん、其れなんだが、みんなも知ってるだろう、数日前に、ウエスの兄って
奴の敵軍と戦をした事を。」
農民の代表、5人も、大工のおやっさんも頷き。
「将軍、あの戦で、50人近い兵隊さんが戦死されましたから、オレ達、大工
も悲しいんですよ。」
「で、その時にだよ、敵軍の馬、5千頭を確保したんだ。」
「えっ、馬を5千頭をですか、で、一体、今、何処に。」
「うん、今は、2番から、4番農場に放牧してるんだ、其れでだ、本来ならよ
~、1番農場の大池造りにと、岩石の掘り出しを始める予定だったんだが、フォ
ルト隊長からの提案で、急に、3番農場に大きな川から水を引くための工事を始
める事になったんだ。」
農民達も分かっている、馬は、大量の水を飲む事も。
「将軍、馬は、大切な働き手になりますからねぇ~。」
「うん、そうなんだ、馬が、5千頭もいればだよ、1番から、5番までの農場
でも大助かりになると思うんだ。」
「では、水を引く作業に入るのが先決ですねぇ~。」
「そうなんだ、で、大工さん達が、水車と、水路を造る事になったんだ。」
「将軍、ですが、人手は。」
「其れも十分なんだよ~、敵の捕虜なんだが、7千人居るんだが、奴らは、正
規軍じゃ無いんだ、ウエス達の代わりにこれから、大池や、岩石の掘り出し作業
に就く事になったんだ。」
その後、ロシュエと、大工さん達が詳しく説明し、3番農場の水車と、水路が
完成すると、改めて、1番農場から大池造りに入る事が分かった。
「将軍、分かりました、私達も、ほっとしましたよ、ウエス達の代わりが出来
ましたので、ところで、将軍、先日、司令官が、連れて来られました人達なんで
すが。」
「あ~、知ってるよ、何か、不満でも言ってきたのか。」
「いいえ、そうじゃないんですよ、多分、司令官も、ご存知無いと思うんです
が、あの人達が、司令官に言わずに持ち込んだ機械が有りましてね。」
「えっ、機械って、一体、どんな物なんだ。」
司令官も、知らなかった、今更、何も言う必要は無いと、静かに聴いている。
「はい、其れがね、機織り機なんですよ。」
「えっ、機織り機って、布を作る機械の事か。」
「はい、この農場では、布が、大変不足しておりまして、その機織り機があれ
ば、これからは、布が不足する事も無いと思うんです。」
「そりゃ~、いいんだが、機織り機があったってよ~、問題は、糸が無いと思
うんだが。」
ロシュエも、知らなかった、彼らは、綿花の木、数本も持ち込んで、今、農場
の片隅に植えている。
「将軍、其れがね、一番、大事な綿花の苗木を数本持ってきて、今、農場の片
隅に植えて有りまして、これから、綿が収穫出来ますので、我々、農民もです
が、将軍にも、新しい服を着ていただく事も出来る様になりますよ。」
「だがよ~、その綿花の苗木だが、一体、何処で栽培するんだ。」
「私達が考えたのは、5番農場にと。」
「やはり、5番農場になったのか、だがよ~、まだ、全体像も決まってないん
だぜ。」
「はい、其れは、勿論、知っておりますが、一応、お話しだけでもと思いまし
たので。」
「まぁ~、其れも、仕方が無いと思うんだ、今は、大工さん達に水車と、水路
を造って貰う方が先決なんだ。」
「はい、分かりました。」
「でだよ、これからは、技師長と、大工さん達が中心になって、水車と、水路
の設置を最優先にしてだ、3番農場が終われば、1番農場に取り掛かって欲しい
んだ。」
「将軍、じゃ~、オレ達、大工部隊も水車造りに入るんですね。」
「うん、其れが、一番いいと思うんだ、おやっさん達も大変だがよ~、農業用
と、生活用の水が確保出来ないとだ、幾ら、農場の岩石を掘り出しても前には進
まないからよ~、みんなも協力して欲しいんだ。」
「将軍、私は、7千人を動員して、岩石の掘り出し作業に入り、その後は、大
工さんの指示を受ければよいのですね。」
「フォルト隊長、君の大隊は、3番農場の専属として放牧までを管理を。」
「はい、了解しました。」
「じゃ~、みんなも頼むぜ。」
簡単な打ち合わせが終わり、フォルト隊長は、3番農場へ、大工さん達は、何
時もの作業現場へと、農場の代表も戻って行く。
「なぁ~、司令官、オレは、とんでも無い間違いを犯すところだったよ。」
「えっ、ですが、閣下が、心配される様な事は無かったと思いますが。」
「いや~、其れが有るんだよ、だってよ~、司令官が、連れて来た村民は、僅
かな人数なんだぜ、オレは、その人達の事も考える必要が有ったのによ~、さっ
き、代表さんに言われるまで、オレの頭の中に入って無かったんだよ~。」
「閣下、でも、其れは仕方が御座いませんよ、あの時は、戦の事で、誰もが、
この戦に勝つ事だけを考えておりましたので。」
ロシュエは、戦も終わり、これから先は、農場を早く完成させたいと考える。
その後、大工さん達は、全員で、巨大な水車を作るための加工品作りの専念
し、第4番大隊は、3番農場の水車を作るための加工品作りの専念し、第4番大
隊は、3番農場の岩石の掘り出し作業に、そして、他の大隊も、ロシュエの指示
を受け、毎日、岩石の掘り出し作業に入った。
そして、30日ほどが経った頃。
「将軍は、居られるでしょうか。」
「はい、今、執務室に。」
当番兵も、この頃は、のんびりとしている。
「将軍、大工さん達ですが。」
「お~、いいぞ、入って貰ってくれよ。」
「大工さん、中で、お待ちですので、どうぞ。」
「はい、有難う、御座います。」
「将軍。」
「お~、大工さん達か、で、加工が終わったと。」
「はい、一応、水車の本体と、支柱が出来上がりましたので。」
「そうか、有難うよ、だがよ~、予定よりも早いじゃないか。」
「いいえ、とんでも有りませんよ、私は、これでも遅いと思っておりますの
で、ですが、思った以上に巨大で。」
「ほ~、じゃ~、見せて貰おうか。」
「はい、ですが、組み立ては現地で行ないますので。」
「其れじゃ~、明日にでも行けるのか。」
「現地に行っても、組み立ての前に、支柱の基礎部分の作業に入りますの
で、まだ、暫くは掛かります。」
「そうか、まだ、基礎を作って無かったからなぁ~。」
ロシュエは、早く見たいと思うのだが、大工さんの言う基礎を正確に作らなけ
れば水車の重みで、支柱が傾く可能性があり、しかも、強風にも耐えなければな
らないので有る。
「で、何日で基礎は完成するんだ。」
「私達も、現地に行ってからでないと判断する事は出来ませんので。」
「そうだなぁ~、基礎工事が終わる頃、連絡が欲しいんだが。」
「はい、其れは、勿論、お知らせ致しますので、組み上げの時には、将軍と、
司令官は勿論ですが、技師長さんにも見ていただきたいと思っておりますの
で。」
「うん、オレは、待ってるぜ。」
ロシュエは、その他に、隊長達にも見せたいのだ、隊長達が見る事で、今後、
他の農場にも、水車と、水路を設置する時にも役立つだろうと考えたので有る。
そして、7日後の早朝に、荷車が数十台と、支柱になる大木を積んだ荷車数十
台が、大きな川の水車設置現場へと出発し、ロシュエ達も数日後には出発する
事になるのだ。
「司令官、いよいよだぜ、当番さんよ~、隊長達を呼んでくれ。」
「はい。」
当番兵は、隊長達を呼びに行った。
「司令官、これは、オレの勘だが、オレ達も、明日の早朝に出発する事になる
ぜ。」
「はい、私も、その様に思っております。」
「だがよ~、一体、どんな巨大な水車が出来るんだろうなぁ~。」
「さぁ~、私も、全く、見当が付きませんが、支柱の大木から考えても、支柱
の2倍は有りそうですねぇ~。」
その時、3番農場から伝令が来た。
「将軍、大工さんからの伝言で、明後日の朝から、支柱と水車の組み立て作業
に入りますので、是非、お越し下さいとの事です。」
「よ~し、分かった、有難うよ、司令官、予定通りだったなぁ~、明後日の朝
から始めると言う事は、今から出発すれば、十分に間に合と言う事だなぁ~。」
「はい、私も、参りますので。」
「じゃ~、隊長達が着けば出発するか。」
「はい、承知、致しました。」
ロシュエも、司令官も、これで、最初の難関は通ったと、それからは、水路
と、池造りに入る事が出来れば、本格的な農場の開墾作業に入れる、後、数年も
経てば、全ての農場で実るで有ろう多くの作物が、そして、其れは、次へと通じ
る、最初の一歩で有ると思うので有る。
その頃、3番農場の大きな川付近の現場では、早くも、作業が開始された。
支柱となる大木を立てるための準備段階で、人手は十分に足りている。
支柱の巨木だが、その支柱を引き上げるために必要な道具も全て準備が出来。
「よ~し、引いて下さい。」
大工さんの合図で、一段目の2本を立て、固定すると、今度は、一段目を利用
して、二段目の柱、2本を立てる、その様にして、最後の巨木が立てられ、明日
の朝から、支柱立てと、水車本体を組み立てが始まるので有る。
そして、今日は、支柱と、水車の組み立てを行なう日で、ロシュエ達が、組み
立て現場に到着すると。
「ありゃ~、一体、何だよ~、あんなに大きいのか、う~ん、参ったなぁ~、
こりゃ~。」
「将軍、あれは、まだ、支柱では有りませんよ。」
「え~、じゃ~、一体、何なんだ、あれは。」
ロシュエが、驚くのも無理は無かった、ロシュエ達が見た物は、支柱を立てる
ための櫓なのだ。
「将軍、あれは、櫓といいまして、下に置いて有る、支柱を引き上げるための
ものなんですよ。」
「え~、じゃ~、支柱ってのは、あの櫓の下に有る大木なのか、じゃ~、水車
って言う本体は。」
「はい、本体は、全て加工されていますので、支柱を2ヶ所立て、水車の中心
となる、太い棒を入れ、それから、水車の本体を組んで行くのです。」
「オレは、知らなかったよ~、だって、こんな大きな水車って知らなかったん
だからよ~。」
「将軍、今日は、支柱を立て、中心棒を入れるだけで終わると思います。
明日からは、本体の工事に入りますので。」
「だったらよ~、本体工事は、長く掛かるんだろうなぁ~。」
「其れは、私も、分かりませんので、これだけ巨大な水車ともなれば、10
日、いや、20日は十分掛かると思いますが、でもこれだけはねぇ~。」
「じゃ~、何だなぁ~、水車の加工品を作るだけで、30日、基礎を作るの
に、10日、そして、本体工事が、終わるまで、20日か、じゃ~、1基の巨大
な水車が完成するまでに、最低でも60日は掛かる事になるのか、司令官、こ
りゃ~、本当に大変な工事になるぞ~。」
「閣下、其れにしましても、見事な水車ですねぇ~、私は、この様な水車を見
るのも初めてで、驚きましたよ。」
「いや~、全く、見事なもんだぜ、大工さん達も相当苦労したと思うぜ。」
「私は、改めて、あの人たちの仕事に敬意を表しますよ。」
その後、大工さん達は、数日を掛けて、巨大な水車を完成させたので有る。
3番農場には、2基の巨大水車が設置され、あの7千人の敵軍だった兵士達
も、次第に仕事にも慣れ、3番農場の岩石の掘り出し作業も順調に進み、其れ
と、平行して、1番農場から、5番農場へ、各2基づつの巨大水車が設置完了す
るまでに、2回目の冬が終わった。
各農場には、農民達が、生活するための民家も次第に建ち、大食堂、大浴場
と、其れは、新しく入植する農民達と、各大隊の兵士達、其れに、7千人もの、
元敵兵が総力を挙げて、取り組み、4回目の冬が終わる頃、殆んどの農場が完成
するまでになったので有る。
その頃になると、あの元城主が、新たな動きを始めるので有る。
全ての農場へ、移住する数十日前の事、最初の農場の広場には、兵士や、農場
の人達の殆んどが集まり。
「皆さん、長い間、本当にご苦労様でした。
1番農場から、5番農場の殆んどが完成し、数日前から、少しづつですが、各
農場へ移住が開始されました。
オレは、余り、話が上手じゃないので簡単に言うが、オレは、この農場が完成
した時には、引退すると決めていたんだ。」
「え~、そんなぁ~、何で将軍が引退する必要が有るんですか。」
「何故、引退するんですか、オレは、大反対だ。」
広場からは、大きな溜め息とも、思える声が出た。
「オレの後任にはよ~、司令官に勤めて貰い、司令官から、将軍へと昇格し
て、これからの全てを任せる事に決めたんだ。」
「閣下、少しお待ち下さい、私は、何も伺っておりませんよ、広場の皆さん、
将軍が、今、突然、申されましたが、皆さんは、将軍が引退されてもよろしいの
ですか、私は、承諾出来ません。」
「そうだ、そうだよ、だって、今まで、将軍が先頭になって、この農場を完成
させたんだぜ、其れを、農場が完成したから、オレは、辞めるって言われても、
オレは、嫌だよ、絶対に認めないからね。」
「そうだよ、オレは、将軍を信じて此処まで来たんだ、司令官だって、困って
るんだ、これからが、本当の楽しみになるんだ、其れを、突然に辞めるって、将
軍は、其れでもいいけど、オレ達は困るんだ。」
次々と、ロシュエが、将軍を辞める事に対して、殆んどの農民が反対した。
その時。
「皆さん、私の提案なんですが、今、此処で、大勢の人達が、意見を述べられ
ても、収拾が付かないと思いますので、如何でしょうが、各農場から、代表の人
達を、5人くらい選んでいただき、その代表が、各農場の人達の意見を集め、数
日後、改めて、大食堂で論議すると言うのは。」
さすがに、元城主だ、城主の提案に対し。
「よ~し、分かったよ~、じゃ~、オレ達、農民が団結して、将軍を辞めさせ
ない様にするんだ、如何だろうか、明日からでも、代表を選び、その代表に、オ
レ達、農民の思いを言って、将軍に直訴しては如何だろうか。」
「よ~し、其れで、決まりだ、みんな協力して下さいよ。」
「じゃ~、早く決めようぜ。」
農民達は、解散すると言うよりも、各農場毎に集まり出した。
「おい、おい、オレの立場は、一体、どうなるんだよ~、え~、司令官。」
ロシュエは、苦笑いをしている。
「其れは、閣下の責任で、御座いますよ、突然、あの様な発言をされたのです
から。」
この時、司令官は、有る作戦を思い付いた。
「閣下は、今の発言を取り消される事だと思いますが、私は、急用を思い出し
ましたので、失礼します。」
司令官は、一体、何を始めるのだろうか、司令官は、兵士達の元へと向かい、
司令官は、第1番大隊のロレンツ隊長と話をするためだったのか、だが、ロレン
ツの動きは、其れよりも早く、隊長と、中隊長、小隊長の全員を集め、兵舎で話
を始めた。
「みんな、聞いて下さい、先程、将軍が、突然辞意を表明されました。
私は、突然の事で、何も考える事が出来ないのですが、私は、将軍が、辞意を
撤回される事を要求したいと考えており、皆さんの意見を聞きたいのです。」
「ロレンツ隊長、私も、同感です、何故、今になって、其れも急に、将軍をお
辞めになられるのか、真意が分からないのです。」
フランドの発言は、他の者達も一緒だ。
「私も、ロレンツ隊長や、フランド隊長の意見に賛成です。
今日の今日まで、私達、軍もですが、我々以上に、農民さんや、大工さん達を
含め、殆んどの人達は、将軍の下で、一致団結して来られたと、私は、思ってお
ります。
将軍は、辞められて、司令官が、将軍になっていただきたいと言われました
が、私は、司令官であれば、十分に、我々を導いて下さると思っております。
ですが、何故、突然に発表されたのでしょうか、私は、隊長達に怒られるかも
知れませんが、あえて、言わせて頂きます。
私達にも、心の準備が必要だと思います。
ましてや、農民さん達は、私、以上に不安と言うよりも、仮にですが、将軍を
辞められて、これから先、一体、何をされるのでしょうか、其れと、この先、将
軍でなければ、どの様にお呼びすればよいのでしょうか、私は、とても、お名前
をお呼びするなどと言う事は出来ません。」
彼は、あの第1小隊の小隊長だ、彼の意見は、他の小隊長達も同様だった。
「小隊長、有難う、私は、小隊長の意見に賛成です。
皆さん、そうでしょう、今まで、将軍とお呼びしていたんですよ、突然、辞め
られては、私も、大変困るのです。」
リッキー隊長も、小隊長の意見に賛成した、その時、司令官が来た。
「やぁ~、皆さん、お集まりですね。」
「司令官、今、私達は。」
「はい、私も、皆さんと同じですよ、突然、閣下の発言で、私も、驚いている
のです。」
「司令官、私は、将軍が、お辞めになる事に賛成は出来ません。」
「ロレンツ隊長、其れで、皆さんの意見は。」
「はい、今も、話をしておりましたが、私達よりも、農民さんが困られるので
はないかと思います。」
「はい、その様ですねぇ~、あの後、広場では、多くの農民さんが、代表選び
をされておられましたので。」
「其れで、司令官のお考えは。」
「フランド隊長、私は、当然、大反対ですよ、私も、閣下がおられる事で、農
民さん達が、安心されていると思いますからねぇ~。」
「ですがねぇ~、将軍の事ですから、一度、口に出されてですよ、我々もです
が、農民さん達からの反対で、では、そのまま、将軍を続けますとは、絶対に言
われないと思います。」
「私はねぇ~、今、言われた様に撤回はされないと思うのです。
では、どの様にすれば良いのか、其れを、皆さんにも考えて頂きたいと思うの
ですが、如何でしょうか。」
ロシュエが、将軍を辞すると発表した事で、農場の人達全員が動揺している。
司令官としては、どの様な方法を取っても、将軍を辞めると言う話を撤回させ
たいのだが、隊長達も、中隊長も小隊長も、何時に無く真剣に考えてはいるが、
余りにも突然な発表で答えが出せないので有る。
「司令官、数日の内に、農民さんと話し合いを行なえば、其処で、何かの答え
が出ると思いますが。」
「そうですねぇ~、私は、今の状態を何としても打開したのです。
今、言われた様に、先に、農民さん達と話し合いの機会を作りましょうか、そ
の時に、何らかのお話しが出ると思いますので。」
「では、私達も、其れまでに、何か良い方法が無いかを考えて置きたいと思い
ますが、皆さんの意見は如何でしょうか。」
「ロレンツ隊長、私も同感です。」
「今、フォルト隊長から賛成を頂ましたが。」
「ロレンツ隊長、皆さんも同じでしょうから、一度、隊に戻り、兵士達の意見
も聞かれては如何でしょうか。」
「はい、司令官、私は、別に異論は有りませんので、では、司令官の言われた
様に、一度、隊に戻り、兵士達からも意見を聞くと言う事で、一度、解散したい
と思います。
皆さん、大変ですが、何としても、将軍に撤回していただく様に考えて行きま
しょう。」
ロレンツの呼び掛けで、隊長をはじめ、中隊長、小隊長は、一度、隊に戻り、
兵士達と話し合いをする事に決まり、数日後、農民の代表達とも話し合いを持っ
たのだが、農民達からも、答えらしき発言も無く終わり。
数日後、大食堂で、議論する事になったのだが、今回の議題は、誰もが、一番
の関心ごとなので、農民だけで無く、兵士達も聞きたいと、其れは、大食堂に入
り切れないほどの人達が集まっている。
「では、只今より、会議と申しましょうか、先日、突然、閣下が、お辞めにな
ると発言され、我々、軍の関係者全員が驚いております。
今日は、閣下の処遇と言っては、大変、失礼だと思いますが、皆さんのご意見
をお聞きし、これから先の農場の有り方を話し合いたいと思いますので、農場の
代表の方々、よろしく、お願いします、では、最初に、この農場から、お願いし
ます。」
この農場とは、最初に造られた農場の事で、誰もが、農場と言えば、最初に造
られた農場の事だと思っている。
「はい、司令官、私は、将軍と共に、この地に着いた農民です。」
彼は、これまでの経緯を説明すので有る。
其れは、中には、後から来た農民達の中には、知らない人達も多く、何故、将
軍が必要なのかを訴えたので有る。
「今、説明しました様に、我々に取っては、将軍、有っての、我々と言う事で
すから、どんな理由を付けてでも、将軍を辞めさせる事は出来ないのです。」
彼の、話が終わると、大食堂の人達が拍手したので有る。
「そのとおりだ、将軍を、絶対に辞めさせるな。」
「そうだ、そうだ。」
と、あちら、此方が叫んでいる。
ロシュエは、自らの発言で、この様な大騒ぎになるとは、思っても見なかった
ので、驚きの表情をしている。
そのロシュエは、発言も出来ず、ただ、じ~っと、聞くだけなのだ。
「では、続いて、2番農場からの発言です。」
「はい、私は、あの大きな川の対岸から、司令官様達に助けられた者です。
私達の村では、あの軍隊が、毎年、収穫が終わった頃に来て、殆んどの小麦を
持って行くとと言うよしも、盗んで行くのです。
でも、あの当時、その地を離れても、我々には、行く当ても無く、ただ、辛抱
する毎日でした。
その時でした、川の方から、何時もの軍隊では無い兵隊さんが来られ、我々の
農場に来て下さいと、其れも、突然の話で、私達は、その兵隊さんの話を聞いた
んです。
兵隊さんは、我々の農場では、将軍と、言われる人物が、農民を一番大切にさ
れるので、何も心配する事は有りませんよ、でも、私達は、最初、信用出来ませ
んでしたよ、だって、そうでしょう、将軍様や、司令官様には悪いとは思います
が、我々、農民は、兵隊と言えば、何処の兵隊でも同じだと思っていましたの
で。」
確かに、この農民の言う事も間違いでは無かった。
毎年、収穫した穀物を略奪するのは軍隊で有り、兵隊崩れの野盗だった。
「ですが、その兵隊さんは、何度も、何度も、言われるんですよ、我々の、将
軍は、絶対に、その様な人物では無いので、私を信用して、一緒に、我々の農場
に来て下さいと、それに、もう直ぐ、奴らが来る頃だと思いましたからね、大き
な荷物は必要有りませんからと、司令官様、、オレ達も、その兵隊さんが、一生
懸命に言われるので、あの軍隊が来る前に、兵隊さんの言われる農場に行こうと
決まったんです。」
その兵士は、今、大食堂の外で、話を聞いている。
「はい、私も、あの当時の兵士も同じ気持ちですよ、彼はね、あの大きな川を
泳いで行ったんですよ。」
「やっぱりねぇ~、あの兵隊さんの言った話は本当だったんです。
私は、将軍様のお話を聞いていましたが、その将軍様に、お会いし、話を聞い
たんですが、兵隊さんから聞いた農場の人達は、将軍様が居られるから、自分達
は、今、元気で農作が出来るんだと言っておられます。
どうか、将軍様、私達、農民を助けると思って、絶対に辞めないで下さい、お
願いします。」
その時だ。
「ねぇ~、あんた達、何を、おとなしく言ってるのよ、そんな優しい言場で、
この将軍が、はい、分かりましたって、言うと思うの、みんな、聞いてよ、この
将軍はねぇ~、其れはもう~、頑固も頑固、頑固が将軍をやってるんだよ、其れ
にねぇ~、一度、口に出した事は、誰が、何と言うと、自分が正しいと思うとね
ぇ~、今のあんた達の様な、優しい言葉だったら、絶対に辞め無いよ、なぁ~、
将軍さん。」
其れは、テレシアだ、テレシアは、幼い頃からのロシュエを知っている。
「じゃ~、私が、言ってやるよ、将軍、あんた、将軍を辞めて、一体、どうす
るのよ、あんた、正か、農業をしたいとでも思ってるんじゃないだろうねぇ~、
あんたは、将軍なんだよ、将軍が行けば、みんなはどうすると思うの、誰でも、
将軍其れは駄目です、将軍に、そんな事をされては、我々が困りますって、何処
に行っても言われるんだよ、将軍、あんたは、将軍なんだから、まぁ~、何処に
行っても嫌われるんだ。
この将軍のね、お爺さんの時代からなんだよ、兵士は、農民を守るのが任務で
有る、農民を守るためには、どの様な方法を使ってでも敵から守れって、其れ
が、将軍の父親も同じだったのよ、だからね、今の将軍はねぇ~、まぁ~、お爺
さんからの命令なんだ、ねぇ~、将軍、あんたはねぇ~、死ぬまで辞める事は出
来ないよ、この私が保証してあげるよ。」
テレシアは、言いたい事だけを言って、何処かに消えた。
「将軍、辞められた後は、一体、何をされるんですか、正か、オレ達の仕事場
に来るんじゃないでしょうねぇ~、オレ達は、将軍が来られたら、お断りします
よ、だって、そうでしょう、将軍は、将軍なんですよ。」
それからは、同じ様な発言が出るが、それでも、ロシュエの意思は固いと思わ
れたので有る。
「皆さん、よろしいでしょうか。」
其れは、あの元城主の発言で有る。
「私は、皆さんがどの様に懇願されても、将軍のお気持ちは変わらないと思う
のです。」
「其れじゃ~、あんたは、将軍が辞めたっていいと思ってるのか。」
一人の農民が立ち上がり、怒った表情になっている。
「確かに、私は、新参者ですが、まぁ~、皆さん、私の提案を聞いていただき
たいのですが、その前に、将軍にお聞きしますが、私の、提案した内容を、此処
に居られる皆さんが賛成されますれば、将軍を、お辞めになっていただいても、
よろしいですが、如何されますか。」
「お~い、そんな話、誰が聞くもんか、将軍を辞めるって、オレは、反対
だらなぁ~。」
「駄目だ、それだけは、どんな事があっても許せないんだ。」
「まぁ~、まぁ~、皆さん、静かに、落ち着いて、私の、話を聞いて下さい
ね、で、将軍はどうされますか。」
「う~ん、だがよ~、その話の内容ってのが。」
「ええ、其れは、将軍次第ですよ、ですから、私の提案を、皆さんが、承諾さ
れましたら、将軍を辞めて頂きますからね。」
「それだけは、絶対に駄目だ、オレは、許さんぞ。」
怒号は暫く続き。
「よ~し、分かった、みんな聞いてくれ、オレは、どんな内容の話かは知らな
い、だがよ~、その提案ってのを皆さんが承諾するんだったら、オレは、何も異
論は無い、だから、その提案を聞いてくれ、頼む。」
そして、遂に爆弾発言が出た。
「皆さん、聞いて下さいね、私は、ホーガン隊長から聞きましたが、将軍は、
以前、女の子に聞いたそうですよ、お城が出来たら、どんな名前を付けたいかっ
て、で、その女の子が、ロジェンタと言ったそうです。」
「うん、其れは、俺も、聞いた事が有るよ。」
「うん、オレもだ。」
「皆さん、よろしいでしょうか。」
「いいよ、早く聞きたいんだから。」
「そうだ、早く言えよ。」
「はい、では、私の提案、その一、この巨大な農場を改めて、ロジェンタ帝国
と命名します。」
「えっ、なんだ、その帝国ってのは。」
農民達に、突然、帝国と言ったところで分かるはずも無い。
「帝国と、言われても、失礼ですが、殆んどの人達は、分からないと思います
が、私の、知っている限りでは、お城の数倍、いや、数十倍もの大きなものを帝
国と呼びます。」
「だったら、此処は、お城じゃ無いと言うのか。」
「そうですよ、この農場から、お城まで、普通に歩いても5日は掛かる聞いて
おります。
それ程、大きな城を持つのは、帝国の名に相応しいと、私は、思います。
次に、提案の、その二として、先日来、将軍は辞めると言われ、皆さんは辞め
ては駄目だと言われておりますので、私が、先程いいました、その提案ですが、
ロジェンタ帝国の初代、皇帝と申しますか、国王と申しますか、其れを、将軍に
なって頂ければ、皆さんに承諾して頂けると思いますが。」
「おい、おい、オレが、皇帝か、国王か知らんがよ~、何で、オレなんだ。」
「まぁ~、其れは、仕方御座いませんよ、将軍は、辞めたいと、でも、皆さん
は、それだけは駄目だと言われ、その様になれば、ロジェンタ帝国を誕生させ、
その皇帝陛下になって頂ければ、将軍を辞する事も出来、皆さんとも、問題も無
く、今までどおりに行けるとは思いますが、皆さんは、如何でしょうか。」
「う~ん、ロジェンタ帝国か、うん、オレは、気に言ったよ。」
「うん、俺もだ、将軍、いや、皇帝陛下か、国王陛下か、どちらでもいいけ
ど、俺は、大賛成だ。」
「うん、其れだったら、他の人達に説明しても納得して貰えるよ。」
「よ~し、みんなどうだ、昨日までは、将軍だったけど、今日の今からは、え
っ、一体、どの名前になるんだ、皇帝なのか、それとも、国王になるのか。」
「おい、おい、みんな少し待ってくれよ、オレの立場は、一体、どうなるん
だよ~。」
「だって、さっき言ったじゃないですか、オレは、何も異論は無いからって、
だったら、我々が承諾すれば、将軍を辞めて、皇帝になったと言う事になるんで
すよ。」
「だってよ~、このオレが、皇帝って顔かよ~。」
「いいえ、皇帝陛下は顔では御座いません。
これだけ、農民さんに達に賛成された皇帝陛下を、私は、今まで、聞いた事は
御座いませんから。」
「司令官よ~、何とか言ってくれよ、オレは、皇帝なんかにはなりたくは無い
んだよ~。」
とは、言っている、だが、大食堂の片隅で、テレシアは涙を流していた。
其れは、誰もが、夢に見る、国王なのだ、其れが、帝国の皇帝に、ロシュエが
なったので有る。
その姿を、テレシアは、何年も待ち続け、今、正に実現したので有る。
先々代と、先代が築き上げたものを、ロシュエが、自らの努力もあっての事な
のか、其れは、定かでは無い、だが、武力によるものでは無い事だけは確かな事
で有る。
「閣下と申し上げればよろしいのでしょうか、皇帝陛下と、申し上げればよい
のでしょうか、私には分かりませんが、農民さん達の総意ではないでしょう
かねぇ~。」
だが、司令官も、驚く事が起きたので有る。
「じゃ~よ~、オレがだよ、将軍を辞めたとしてだよ、やはり、次は、司令官
が、将軍になるのが当然だと思うんだがよ~。」
「将軍、いや、つい、何時もの癖で、司令官が、将軍になるのが、当たり前だ
と、オレ達も思いますよ。」
「えっ、私が、将軍にですか、その様な事を突然申されましても、私は。」
「司令官よ~、済まないよ~、まぁ~オレも諦めたんだから、将軍になるんだ
なぁ~。」
「そうだよ、司令官が、将軍になって、えっ、じゃ~、一体、誰が、司令官に
なるんだ。」
「これは、大変な事になった様ですねぇ~、私も、この様な事になるとは、全
く予想もしておりませんでしたよ。」
「おい、おい、あんたが、火を付けたんだぜ、一体、どうなるんだよ~。」
元城主も満足している、城主や、国王ともなれば、今までの様な農場だけを考
えるのでは無く、帝国全体の事を考えなければならず、元城主は、今となっては
少し不満も残るが、これから先の生活には、全く、不安も無く、のんびりと農作
業を続ければ食べ物には不安は無く、毎日の激務からは開放されると考えたので
有る。
「将軍。」
「何だ。」
二人が、返事するので、大食堂に居る農民や、兵士達も大笑いするので有る。
「閣下は、将軍では御座いませんよ。」
「へぇ~、と言う事は、将軍を引き受けたんだなぁ~。」
司令官は、思わず、口に出したのだが、其れが、決定的となり。
「お~い、みんな、今、元司令官が返事したからよ~、これからは、司令官じ
ゃ~無いぞ。」
「其れじゃ~、将軍も認めるんですよねぇ~、ロジェンタ帝国の初代皇帝
に。」
「う~ん。」
と、言ったが、今更、撤回する事も出来ず。
「分かったよ~、やりゃ~、いいんだろうよ、だがよ~、オレは、オレだか
ら、今までとおりだぜ。」
「はい、皇帝陛下。」
元司令官も、大食堂に集まった全員が、またも、大笑いをするので有る。
「先程は、間違いました、申し訳有りません。
で、先程、言われました、新しい司令官ですが、私は、ロレンツ隊長が、最適
だと思います。」
「えっ、何で、私が、その様な大役を、私には、とても無理ですから、お断り
致します。」
先日、ロレンツが、早く宿舎を出た後、3人の隊長達が考えていたので有る。
「ロレンツ隊長は、何が不満なんだ、オレだって、皇帝か、国王か知らないが
よ~、祭り上げられたんだぜ、みんなが、お前を認めているんだ、そうだろう、
リッキー隊長。」
「はい、そのとおりで御座います、普通の兵士ならば、司令官は無理として
も、中隊長や、隊長になる事が夢なんですよ。」
「リッキー隊長、私に、その様な大役が務められると思っておられるのです
か。」
「ロレンツ隊長は、司令官となられても、立派にこなせる人物だと、私もです
が、他の二人の隊長も言っておられますよ、仮にですよ、ロレンツ隊長が、反対
だと言われても、我々、3人がと言うよりも、あの時の中隊長も、小隊長達も全
員が異論無く賛成されているのですから、元将軍が、皇帝に、元司令官が、将軍
になられ、今は、司令官をロレンツ隊長になって頂く事が、最善の策だと思いま
す。
其れに、兵士達も全員が、ロレンツ司令官を認めているのですからねぇ~。」
「ロレンツ、もう、諦めるんだ、お前が司令官として任務に就くのを、この農
場の人達も賛成してくれるぜ、なぁ~、みんな。」
「うん、そうだよ、ロレンツ隊長が、司令官になっても、誰も文句は言わない
んだから。」
大工のおやっさんも同じで、暫くの沈黙が続き。
「はい、分かりました、では、私の出来る限りの事を致しますので、よろし
く、お願いします。」
「よ~し、これで、終わりにしたいんだが、ロレンツが司令官になったんでよ
~、第1大隊から、隊長を選ぶ必要が有るんだがなぁ~。」
この時、第1大隊の中隊長達も、小隊長達も、横を向いて、其れは、自分が隊
長に、中隊長になる事を拒否しているかの様で。
「お~い、第1大隊の中隊長に小隊長さんよ~、何故、横を向くんだよ~、そ
うか、お前達は、隊長や、中隊長になるのが嫌なんだ、よ~し、分かったよ~、
じゃ~、オレが決めてやるぜ、文句は無しだ、第1中隊長は、隊長に、第1中隊
の中隊長には、第1小隊の、小隊長を中隊長に決定する、文句は有るか。」
中隊長達も、小隊長達も、唖然としている。
「よ~し、これで、全部終わりだ、みんな解散してくれるか。」
「皇帝陛下、少し、お待ち下さい。」
「えっ、まだ、何か、有るのかよ~。」
「はい、これは、皆さんにとっても大切な話ですので、聞いて頂きたいので
す。」
「一体、何の話だ、もう、全部、決まったじゃないか。」
「ええ、ですが、これからは、ロジェンタ帝国と色々な問題が起きますので、
ロジェンタ帝国内の法律を作成する必要が有ると思いますが、皆さんは、如何で
しょうか、法律と言うのは、皆さんを守るためには、大切なものだと思いま
すので。」
今までは、ロシュエや、司令官を含め、その時々に合わせて話し合いと言うの
か、協議し、其れを全員に知らせていた、だが、これからは、ロジェンタ帝国と
して、数十年、いや、数百年もの長きを維持しなければならない。
そのためには、法律と言うものは大切だと言うので有る。
「だがよ~、そんなの今、決める事なんか出来ないぜ。」
「はい、其れは、勿論、承知しておりますので、私が、申し上げたいのは、皇
帝陛下の一存では無く、広く、農場の人達も、大工さん達も、兵士達も参加し、
法律を作ると言う話で、そのためには、今日、皆さんの中から選ばれた代表の人
達も参加する事を許可していただきたいと、私は、思っております。」
やはり、元城主だけであって見識と言うのか教養が高い。
「分かったよ~、オレは、何の異論も無いが、みんなも協力してくれるか。」
「将軍、あっ、間違った、皇帝陛下、オレは農民だけど、大賛成だよ。」
「うん、そうだ、まぁ~、それでも、皇帝が、最終決定するんだろうからなぁ
~。」
「いいえ、其れは、駄目ですよ、其れはね、皆さんのための法律ですからね、
今が大切なんですよ、私は、皇帝陛下が、独裁国家を目指しておられるとは決し
ておりません。
其れは、今まで、皆さんも知っておられると思いますよ、其れは、常に農場で
働く農民を中心とした話でしたので、今後も、其れは、維持されるものと、私
は、確信しておりますが、幾ら、皇帝陛下や、将軍が超人だと言っても、今後、
百年、二百年と生きられる事は有りません。
私の言いたいのは、その百年、二百年、いや、千年後まで続く、ロジェンタ帝
国のためだと言う事なのです。」
「えっ、ロジェンタ帝国は、千年も続くのかよ~。」
「はい、私は、確信しておりますが、私が、申し上げている法律とは、その時
のためだと言う事です。」
「よ~し、分かった、じゃ~、各農場から選ばれた代表、その他、大工さん達
からも選んで欲しいんだ、じゃ~、兵士達からも必要だなぁ~、よし、兵士達か
らも選んでくれよ。」
「さすがに、皇帝陛下の値打ちが有りますねぇ~、全部から平等にと考えられ
ましたから、其れと、私が居りました城から連れて来た者の中に、書き物が得意
な者達が居りますので、彼らを、皆さんの意見を書き写す仕事に就かせると言う
のは、如何でしょうか。」
「ほ~、其れは、大変、助かるよ。」
「では、その様に手配を致しますので。」
「じゃ~、あんたは、みんなの意見を聞いてだよ、まぁ~、相談役として来て
欲しいんだが。」
「はい、私で良ければ、参加させて頂きます。」
「じゃ~、決まりだ、みんな、長い時間有難うよ、じゃ~、解散するぜ。」
ロシュエも、宿舎に戻り、イレノアは、熱いスープを入れ。
「イレノア。」
「はい。」
「まぁ~、座ってくれよ。」
イレノアを見ると、何故か、不安そうな顔付きなのだ。
「なぁ~、イレノア、大変な事になったんだが、イレノアの気持ちを言って欲
しいんだ。」
「はい、私は、余りにも突然はお話で、言葉にならないのですが、私は、将軍
とか、皇帝となられる様なお方と、一緒にならせていただいたと思ってもおりま
せん。
私は、ただ、一人の男性を愛しただけの事ですから。」
「うん、オレもなんだ、何も、皇帝や、国王になりたいとは思っても無かった
んだ、だから、オレは、これからも変わらないからよ~。」
「はい、私は、勿論、承知しております。
話は、変わるのですが、先日、あのお姫様と言う女性が突然来られ、私の、服
が余りにもと言われ、新しい服を持って来られたのですが。」
「やはりなぁ~、だがよ~、其れは、イレノア自身が決める事なんだ、オレ
や、そのお姫さんが決める事じゃ無いと思ってるんだ。」
「では、私は、今までどおりで、よろしいのですか。」
「まぁ~、イレノアは、オレ以上に頑固だからなぁ~。」
「いいえ、私は、その様な頑固者では御座いません。」
「そうかなぁ~、だったらよ~、何故、その新しい服を着ないんだよ~、イレ
ノアは、どうしても嫌なんだろうなぁ~、と、オレは、思ってるんだぜ。」
「はい、そのとおりです。」
二人は、笑い。
「まぁ~、イレノアの気が済む様にすればいいんだから。」
その時、元司令官で、今は、将軍となった。
「皇帝陛下、私で、御座います。
フランチェスカも、一緒に参りました。」
「お~、司令官じゃ~無かった、将軍、これは、一体、どうしたんだよ~、フ
ランチェスカも一緒って。」
「はい、先程、私は、将軍になりましたと、言うよりも、将軍にさせられたと
言ったところ、彼女が、言うには、司令官や、将軍と、一緒になったのではな
い、一人の男性と結ばれたんだと、怒られましたのです。」
「ほ~、やはりかよ~、オレもなぁ~、さっき、同じ様に言われたんだよ、だ
から、オレは、これから先も、何も変わらないってね。」
イレノアは、フランチェスカの顔を見て。
「私達の気持ちは、今までも、これからも同じですから。」
「イレノア、オレも、将軍も、分かっているんだ、なぁ~、将軍、まぁ~、こ
れも、運命だと思って諦めるか。」
その時、新しい司令官となった、ロレンツと、第1番大隊の新隊長と、新しい
中隊長もやって来た。
「将軍、あっ、失礼しました。」
「いいんだって、オレだって、急に、皇帝陛下って言われてもだよ、全く、実
感が沸かないんだ、さっきもなっ、つい、司令官と言ったんだからよ~、まぁ
~、当分は、お互い間違っても仕方が無いんだからなぁ~。」
「ですが、何故、私が、司令官に選ばれたのかが分からないのですが。」
「ロレンツ司令官、私も、貴方が、司令官になられたのは妥当だと思います
よ、私、以上に3人の隊長達は、ロレンツ司令官を望んでいる様に聞いておりま
すから。」
「なぁ~、ロレンツ、其れに、君達もだが、みんなに選ばれる言う事は、大変
な名誉だと思って欲しいんだ。
オレも、あの駐屯地時代を、時々、思い出すんだが、オレの爺さんは、城の将
軍達に反発したんだ、其れはなぁ~、城の将軍達はよ~、兵隊と言うのは、農民
を守っているんだとは言わなかったんだ、其れよりも、城主に認めて欲しいと、
だから、戦の事ばかりを考え、領民の事などは、全く、無視に近かったんだ、其
れに反発した爺さんは、あの駐屯地に飛ばされたって聞いたんだ。」
「陛下、では、その頃からですか、農民と言いますか、領民を守ると言われて
おられたのは。」
「うん、そうなんだ、爺様は、オレによく言ってたよ、ロシュエ、お前は、決
して、領民を泣かせる様な事はするなって、だけど、その時は、まだ、オレも、
幼かったんで、分からなかったんだ、だがよ~、オレが、村の子供達と遊ぶ事に
は、反対どころか、大賛成だったんだ、だって、駐屯地と言っても、子供は、オ
レを含めて数人が居るだけなんだぜ。」
「私も、同じ経験をしておりましたよ、あの頃は、城の外に出していただけ無
かったのですから、本当に寂しかったですねぇ~。」
「ですが、将軍、あの城の周辺には村の様なものは無かったと思うのです
が。」
「いいえ、私が子供の頃には、数ヶ所は有ったのですが、ご存知の様に、今
の、1番から、5番農場を見ていただいても分かる様に、岩石ばかりで、とても
では有りませんが、作物を作れる様な土地では無かったのです。」
「将軍、私が、偵察に行きましたところなんですが、村が有った様な跡が有り
ましたが。」
「そうなんですよ、領民は、作物が出来ないので、少しづつですが、他の土地
を目指して行き、最後には、城だけとなったのですよ。」
「じゃ~、オレ達が、農場を造った事は知っていたのか。」
「はい、私も、新しい土地を探しておりましたが、作物が育つ様な土地は見つ
からずにおりましたが、誠に偶然と言えば、偶然なのです。
私達も、この農場が出来る以前に来たのですが、とても、作物が育つ様な土地
では無かったので諦めておりましたから。」
「じゃ~、あの時、城主は、当時の、司令官達が助かるのであればと思ってい
たんだなぁ~。」
「はい、当時の城主は、領民の事を考えられておられたのですが、作物が育た
ないのが致命的でした。
私も、あの当時の事を思い出しますと、この私が、将軍にさせていただく事な
ど、夢にも思いませんでした。」
「うん、やはり、みんな同じなんだなぁ~、だがよ~、オレも含めて、オレ達
は、今後も領民のために、任務に励まなければならないと、今、改めて思ってい
るんだ。」
「はい、私も、今からは、このロジェンタ帝国を千年以上続く様に領民さんを
支えたいと思います。」
その時、テレシアも来た。
「わぁ~、みんな居るんだ。」
「テレシア、一体、どうしたんだ、食堂で何かあったのか。」
「何にも無いよ、私はねぇ~、こんなに驚いた事は、私の、人生で初めてんだ
よ。」
「えっ、一体、何があったんだ。」
「何が、あったんじゃ無いよ、あんたが、皇帝陛下だって。」
「な~んだ、そんな事かよ~、オレは、また、大食堂で事故でもあったと思っ
たんだぜ。」
「何を、言ってるんだよ、あの駐屯地の司令官がだよ、気が付いたら、皇帝陛
下って呼ばれるんだものねぇ~、誰だって驚くわよ。」
「テレシア、このオレが一番驚いているんだぜ、オレは、今まで、そんな事、
一度だって考えた事も無かったんだからよ~。」
「まぁ~ね、だけど、これが運命って言うのかねぇ~、あの頃は、みんな必死
になって逃げて、何十日も経って、この土地に着いた時には、本当に良かったと
思ったのよ、其れがね、今は、何って言ったかなぁ~、そうだ、ロジェンタ帝国
だって、こんなに大きな、お城になるなんて、私は、今でも、夢を見ている様な
んだ。」
「テレシア、オレもなんだ、だって、この農場を造り上げるのによ~、みんな
本当によく頑張ったって思うんだ。」
テレシア自身、今も、驚きと言うより、この先、一体、どの様になって行くの
か、其れが心配なのかも知れない。
「でもねぇ~、一体、この先、どうなるんだろうねぇ~。」
「そんな事、オレに分かるはずが無いよ、だってよ~、今、此処に居る連中だ
って驚いているんだぜ。」
「そうだ、其れは、そうと、あの人達何だけどね、何か、いい仕事は無いのか
ねぇ~。」
テレシアが、言った、あの人とは、元城主の事で有る。
元城主を農作業に就かせるのは少し考えものであるとでも言いたいので有る。
「うん、其れなんだがよ~、オレはよ~、以前から考えてた事が有るんだ。」
「陛下、以前から、何を考えておられたのですか。」
ロシュエの考えていた事は、果たして何なのか、将軍となった、元司令官も早
く知りたいので有る。
「将軍は、以前、司令官時代に、あの城で生活してたんだ。」
「はい、私と、他に。」
「あ~、知ってるよ、以前、司令官の時代に、オレにだ、城に住んでくれって
言った事を覚えていると思うんだが、覚えているか。」
「はい、そのとおりで、御座います。」
「だがよ~、オレは、この農場を離れたくないんだ、だって、お城ってのはよ
~、全部が石で造られているんだぜ、オレはよ~、石の家になんかに住む気持ち
は無いんだ、でだよ、石で造られた城だったらよ~、巨大な倉庫になるって思っ
たんだ。」
「えっ、陛下は、あの城を倉庫にされるのですか。」
「いゃ~、な~に、簡単な話なんだ、技師長も大きな倉庫が必要になるって言
ってたんだ。
石造りの城だったらよ~、穀物の倉庫に最適だと思ってるんだ。」
ロシュエは、小麦を収穫すれば、次の年まで保管する場所が必要になると。
「ですが、城で、穀物を保管すれば、あっ、分かりましたよ、管理する人が必
要になると。」
「さすがだねぇ~、将軍にもなると、うん、そうなんだよ~、オレは、簡単に
言ってるがなぁ~、どんな物でも管理するってのは、大変だと思うんだ、だっ
て、テレシア達が、一体、何人分の食事を作ると思う、その時にだよ、オレだっ
たら、適当な分量で考えるが、女性ってのは、他の事も考えて作ると思うんだ、
みんなが、好きな様に使うとだ、穀物もだが、肉だって直ぐに無くなるんだぜ、
そのためには、見識が必要になってくると思うんだ。」
正か、その様な穀物管理までを、ロシュエが、考えているとは思わなかったの
で有る。
将軍ともなれば、他の国は別として、このロジェンタ帝国では、将軍と名乗っ
てはいても、農場の管理を考える事になるので有る。
「陛下は、あの元城主が、この農場に来られてから考えておられたのです
か。」
「いいや、もっと前からなんだ、司令官の時に言われたんだ。」
「えっ、その様な昔からでしたか。」
「だってよ~、オレは、住みたく無いって、じゃ~、司令官はと聞くと、正
か、私が、城主にとは参りませんって、だったらよ~、他に、何か別の使い道が
無いかを考えてたんだ、で、今回、あの人達に頼めばよいのではと、オレは、勝
手に考えているんだ。」
「其れならば、私も、賛成で御座いますよ、日中は、城で、穀物と、他に物の
管理を行ない、夜になると、えっ、では。」
「勿論だ、5番農場に家は建てるんだから、例外は無い、夜は、農場に戻って
来るって話なんだが、如何だろうかなぁ~。」
「はい、其れで有れば、私に、異論は御座いません。」
「うん、其れと、さっきも言ったと思うんだが、城の人達の中には、書く事が
出来る人達が居るんだ、その人達にも仕事が有るって話なんだ。」
「其れは、尚更、よろしいですねぇ~、我々、兵士は、書き物は苦手な者が多
いですので。」
「ねぇ~、じゃ~、皇帝も、将軍も、この農場に残るんだろうねぇ~。」
「ああ、オレも、イレノアも、この農場が一番好きなんだ。」
「はい、私は、勿論ですが、フランチェスカは如何ですか。」
「はい、私も、お城よりも、この農場の方が嬉しいです。」
「じゃ~、決まりだなぁ~。」
「では、私も、当然、残らせて頂きますので。」
ロレンツも、やはり、この農場が一番好きなんだと、ロシュエは思った。
「其れは、オレが決める事じゃ~無いんだ、今後の事も有るからよ~、将軍
と、他の隊長達とよ~く、話し合って欲しいんだ。」
「はい、分かりました。」
それからも、皇帝となった、ロシュエは、将軍や、司令官と、共に、改革を進
め、農民を中心とする、ロジェンタ帝国の発展に尽くすので有る。
元城主達も、異論は無く、城で、穀物をはじめ、色々な管理を任され、其れ
が、本職となって行くので有る。