第 20 話。 攻撃開始だ、奴らを一人残らず殺せ。
第1小隊が、農場を出発した頃敵軍では。
「皆の者、よ~く、聞け、我々は、無敵の軍隊で有る。
次の攻撃目標は、ウエス司令官の報告で、豊かな作物が出来ると言う巨大な農
場で有る。
この農場には偵察隊に報告では、狼の大群の侵入を防ぐための高い城壁が造ら
れているが、我々の様な軍隊は駐屯はしていない。
農場の入り口には、城は有るが、数百人程度の兵士は居るが問題では無い。
左側には森が有り、右側には、城壁が続き、城壁の内側には豊かに実った作物
が、我々の到着を待っている。
奥の農場まで行く途中には、大木が放置されているが、この大木は無視して農
場の本体へと進め、僅かな農民兵だけが居るが、農民兵は殺せ、其れと、反抗す
る者は全て殺せ、だが、今回は、皆殺しにはせずに行く、其れは、この農民に
は、我々のために作物を作らせる事にし、これからは、この農場を基点として、
近隣の諸国に侵攻を開始する事に決めた。
皆の者、準備は出来たか。」
「お~。」
3万人近い、軍勢の雄叫びが起こり。
「では、侵攻を開始する。」
大将軍が号令を発し、3万人の軍勢が動き出した。
その頃、第1小隊の偵察隊は、城を通り過ぎ、森に入った。
「小隊長、敵は、出発したでしょうか。」
「ええ、自分は、出発していると思いますよ、敵軍も、偵察を出していると思
いますので。」
小隊長は、敵の偵察隊が、どの付近まで来たのかは分からなくても、城の近く
までは着て、城壁は確認しているであろうとは思っている。
「敵は、城壁を見ているでしょうか。」
「多分ですが、確認はしていると思いますが、城壁を森の中から見ても、矢口
は発見されてはいないと思いますねぇ~。」
「では、城は。」
「城も、数十人の兵士は確認出来た程度だと思いますよ、だって、主力は、5
番の城壁内ですから、外側かは見ても分かりませんよ。」
「小隊長、大工さん達が作られた矢口を、私も見ましたが、何処に有るのか、
分からなかったですよ。」
「まぁ~、自分達は、知っておりますが、敵は、狼の攻撃を防ぐために木造で
造ったと思うでしょうからねぇ~。」
「じゃ~、この森を抜け、攻撃に来るのは、奥に有る農場だけを目標にでしょ
うか。」
「自分が、敵の将軍ならば、その様に行きますが、偵察隊の報告次第でしょう
ねぇ~、城には、数百人程度の兵士、木造の城壁は、狼の侵入を防ぐためで、軍
隊もいないと聞けば、自分でも、一番奥を目指しますよ。」
「私も同じですねぇ~、だから、我々の任務は大事なんですねぇ~。」
「そのとおりだと、自分は思いますよ、我々は、確実な情報を集め、将軍に知
らせる、将軍は、我々の情報を元に、作戦を考えると言う事は、我々の任務は、
農場の未来が掛かっていると言っても過言では無いと、自分は思っていますよ、
それ程、我々の任務は重要だと言う事です。
みんなも、この任務は危険ですが、今回の偵察任務は、我々、第1小隊だけに
しか出来ないと考えて下さいね、後少しで、森を抜けますが、森を抜けずに、右
側の林に入り、敵に近付きますので、全員、気を抜かずにお願いしますね。」
林の中を暫く進むと、辺り一面、枯れ草だけの丘陵地が続くところに出た。
「では、自分と、後、二人で、あの丘に行きますので、付近の警戒をお願いし
ます。」
小隊長と、部下の二人は、丘に登って行き、後、少しで頂上と言うところで。
「下馬、静かにね。」
一人が、馬を見て、小隊長と、部下一人だけが頂上に向かい、頂上に着き、遥
か遠くの丘を暫く見ていると。
「小隊長、やはり、敵は、向かって来ましたねぇ~。」
「そうですねぇ~、先頭は騎馬ですよ、其れから、歩兵が続いています。」
小隊長が、頂上に着いた頃は昼を過ぎていた。
「あの調子ならば、この丘を越え、今日は、森に入らず、林の付近で野営し、
明日の早朝出発すると思います。」
「はい、私も同じです、では、私が、先に将軍に知らせに行きたいのです。」
「そうですねぇ~、では、昼過ぎに、先頭の騎馬部隊が、二つ目の丘に指し掛
かり、今日は、森を抜けず、手前の林付近で野営すと思われます、と、伝えて下
さい。」
「はい、では、私は、先に行きますので。」
「自分は、暫く様子を見ていますと、みんなに伝えて下さい。」
「はい、了解しました。」
兵士は、腰を屈め、丘を下ると、小隊の仲間に伝え、その後、農場へと馬を走
らせた。
「将軍、第5番大隊は、城と、5番農場へ向け出発します。」
「リッキー隊長、よろしく、頼みます。」
リッキーは、ロシュエに敬礼し、答礼した、ロシュエは、大隊の全員が通り過
ぎるまで、答礼を続けた。
「将軍、第4番大隊も出発します。」
「フォルト隊長、よろしく、お願いします。」
ロシュエは、同じく、全員に答礼を続けた。
「将軍、我々、第1番大隊も出発します。」
「ロレンツ隊長、君の大隊が、最も、危険で有る、決して無理はするなよ。」
「はい、承知しました、では、出発します。」
「ロレンツ、頼んだぞ。」
ロシュエは、ロレンツ大隊を見送り。
「将軍、我々、狼犬部隊も出撃します。」
「ホーガン、無理を承知で頼む。」
「将軍、我々、狼に任せて下さい、では。」
狼犬部隊が、今日、最後の出発となった。
第3大隊は、明日の早朝出発する事になっている。」
「将軍。」
「えっ。」
ロシュエが、振り返ると、あの小国の元城主が立っていた。
「何か、御用でしょうか。」
「将軍、今の、私は、何も出来ず、自分自身に腹を立てております。」
「いいえ、その様な事は有りませんよ、警備隊には、今回の戦が、勝敗を左右
する、最も重要な任務に就いて貰いましたので。」
「そうですか、キムラッチ隊長が少しでも、お役に立てるのであれば、私は、
何も申し上げる事は有りません。」
元城主は、元警備隊長を信頼しているのだろうと、ロシュエは思ったのだが。
「我々も、本当ならば、戦争などを決して望んでいるので有りませんよ、です
が、今回は、別の意味を込めても、我々は、敵軍を完全に滅ぼすまで戦う事にな
っております。」
「将軍、私は、余り知らないのですが、その敵軍と言うのは、どの様な軍隊な
のでしょうか。」
「あの敵は、軍隊とは名ばかりで、野盗と同じですよ、村を襲っては、食料を
略奪し、女は犯し、その上、家は焼く払うと言う事を平気で行なうのですよ、小
国の軍隊では、あの敵軍の相手にはならないほど、強大な軍隊ですから。」
「その様に、人道にも劣る様な行為をするのですか。」
「ええ、この農場に逃げ込んだ農民の多くは、まだ、運が良かったと思ってお
りますから、我が軍は、今まで、数百、いや、数千人も殺された人達の怨みを晴
らすためにも、どんな方法を取っても、敵軍を一人残らず殺す覚悟です。」
「では、どの様な訳があったとしても、聞く耳は持たないのですか。」
「勿論ですよ、農民は、一番、弱い立場の人達なんですよ、其れに、女や子供
までも焼き殺す、この行為に対して、我々は、訳を聞く耳は持たないです。」
ロシュエは、この元城主は、全く、何も理解していないと思った。
「将軍、よろしいでしょうか。」
「フランド隊長、何か。」
フランドは、ロシュエの顔を見て、助け舟を出したのかも知れない。
「では、私は。」
「そうですか。」
ロシュエは、腹が立っていた。
「で、フランド隊長、何か。」
「いえ、何でも有りません。」
「そうか、有難う。」
ロシュエは、直ぐに分かった。
「そうだ、フランド隊長、あの作戦だがよ~、フォルト隊長と、上手くやって
くれよ。」
「はい、勿論です、第3番大隊は、明日の早朝に出発しますので。」
「そうか、みんなによろしく伝えてくれよ。」
「はい、では。」
フランドは、ニヤリとして宿舎に戻り、夕方近く。
「隊長、偵察隊の一名が馬を飛ばしてきます。」
「分かった、直ぐ、代え馬の準備だ。」
「はい、完了しています。」
「伝令で~す、代え馬を。」
「ご苦労。」
「有難う、御座います、では。」
伝令は、馬を代え、城壁内の通路を飛ばして行く。
「お~い、伝令だ、通路を空けろ。」
通路の4番大隊の兵士達は、伝令のために通路を空けて行く。
「将軍、伝令で~す。」
この頃になると、農場の門は開けた状態で。
「お~、入らせてくれ。」
「はい、了解です。」
「イレノア、頼むよ。」
「はい、直ぐに、用意します。」
ロシュエは、偵察隊員の食事を準備させていたのは、第1小隊が、偵察に向か
った数日後の事で有る。
其れは、何時来ても、食事だけは用意している。
「さぁ~、どうぞ、将軍がお待ちです。」
「はい、有難う。」
兵士は部屋に入ると。
「将軍。」
「お~、ご苦労さん、まぁ~、座ってくれ、イレノア、頼む。」
「は~い、今、直ぐに。」
「将軍、小隊長から伝言です。
小隊長の読まれたとおりで、敵は、移動を開始しておりました。」
「やはり、そうだったのか、で。」
「はい、私も、確認しておりますが、城をとおり、森から林を抜け、草原の丘
から移動中の敵軍を発見しました。
発見時は、丁度、太陽が殆んど、真上でしたので、昼頃です。」
「そうか、じゃ~、今日の内に森に入る事は無いなぁ~。」
「はい、そのとおりで、小隊長も、同じ事を言っておられました。
あの動きであれば、今夜は、林の近くで野営するだろうと、其れで、出発は、
明日の早朝だろうと、伝えてくれと、言われておられました。」
「そうか、で、その後は。」
「はい、其れで、小隊長は、暫く様子を見ると。」
「そうか、で、先頭は、やはり、騎馬兵なのか。」
「はい、そのとおりで、私は、騎馬兵だけを確認しましたので。」
「よ~し、分かった、大変、ご苦労だったなぁ~、イレノア、頼む。」
「は~い。」
イレノアは、出来立ての食事を運んできた。
「さぁ~、何も無いが、熱いスープも有るからよ~、腹、いっぱいになるまで
食べてくれよ。」
「はい、有難う、御座います。」
兵士は、満足そうに食べ始めた。
「お~い、当番さんよ~。」
「はい、此処に。」
「済まんが、司令官と、第1、第2大隊の隊長を呼んできて欲しいんだが。」
「はい、直ぐに。」
当番兵は、司令官と、二人の隊長を呼びに行った。
「君は、直ぐ戻る必要が有るのか。」
「いいえ、あの状態であれば、小隊長達も、直ぐ、移動されると思いますの
で。」
「そうか、じゃ~、司令官達が来るまで、此処にいてくれ。」
「はい。」
暫くして。
「閣下。」
「お~、司令官、ロレンツも、オーレンも、一緒か。」
ロレンツは、農場を出発していたが、城壁内を伝令が馬を飛ばして行くのを知
り、若しや、第1小隊からの伝令では無いか、第1小隊の伝令ならば自分にも呼
び出しが有るだろうと思い、農場に戻って着たのだ。
「はい。」
「まぁ~、みんな、座ってくれ、今、彼が、伝令として戻って着たんだが、や
はり、敵は移動を開始したそうだ。
小隊長は、多分だろうが、森の手前で野営をし、明日の早朝、出発すると考え
ているんだ。
オレも、小隊長に意見に賛成だ、でだ、明日、早朝出発すると言う事になれ
ば、先頭の騎馬兵が森を抜けるのが、早くて昼過ぎになると思うんだが、司令官
は、どの様に思う。」
「閣下、私も、同じ考えで御座います。
城に伝令として、早朝に出発すれば遅いと思いますので、如何でしょうか、今
夜中に伝令を出すと言うのは。」
「よし、分かった、ロレンツ、伝令は出せるか。」
「はい、直ぐに。」
ロレンツは、席を立つと、執務室を出、誰かに指示を出しているが、直ぐに戻
って着た。
「ロレンツ、話は就いたのか。」
「はい、今、伝令を出しましたので。」
「えっ、ロレンツ隊長は、兵士を同行されて来られたのですか。」
「はい、先程、城壁内を伝令は飛ばして行くのが分かり、若しや、第1小隊で
は思い、私は、数人の兵と共に戻り、状況の変化で、城に伝令を出す必要が有る
と思いましたので。」
ロシュエは、分かっていた、第1小隊は、自分の大隊から、偵察隊として出し
ており、ロレンツも、第1小隊の動きは読んでいた。
「じゃ~、少し遅くなっても、今夜中に伝わるんだなぁ~。」
「はい、私は、細かい事は聞いておりませんが、ただ、敵軍が、明日の早朝に
出発し、先頭の騎馬兵が森を抜けるのが、昼頃になるので、準備に入って下さ
い、其れだけです。」
「フランド隊長、明日の早朝出発してくれ。」
「はい、勿論です、ですが、何故、敵は、出発を早めたのでしょうか。」
「其れは、オレにも分からないんだ、まぁ~、何れにしても決定したんだ、奴
らは、この農場に攻撃を掛けると。」
「閣下、作戦は。」
「うん、あの方法で行くぜ、だってよ~、各大隊の兵士が決めたんだ、オレ
は、何も異論は無いよ。」
「はい、承知しました、其れとは別にですが、狼犬部隊の配置ですが、私は、
この農場よりも、城か、4番か、5番農地近くの森の中から攻撃をさせては如何
かと思うのですが。」
「司令官の考えた秘策の様だなぁ~。」
「はい、奴らの事ですから、我々の居る農場に突撃して来ると思っておりま
す。」
ロシュエも、狼犬部隊の配置を考えていた。
「司令官、実はなぁ~、オレも、考えていたんだ、よ~し、其れで行こうか、
じゃ~、狼犬部隊の配置を変更する。」
ロレンツも、狼犬部隊の配置変更を考えていた。
「やはりでしたか、はい。」
「じゃ~、今から、伝令だ、狼犬部隊も直ぐに出発だ、5番農地の森の中に潜
れと、攻撃は任せると。」
「はい、承知しました。」
ロレンツは、外に待たせていた兵士に、ロシュエの命令を伝え、兵士は走って
行く。
「将軍、1番大隊の場所も変更します。」
「そうか、じゃ~、よろしく、頼むぞ。」
この様にして、農場に残るのは、オーレン隊長の大隊のみとなった。
一方、第1小隊は、敵の動きに合わせ、林の中を通り、一度、森の中で様子を
見ている。
「小隊長、やはり、今日は、此処で野営の様ですねぇ~。」
「はい、その様です、我々は、先に森を抜け、城が見えるところまで移動しま
す。」
「了解です。」
第1小隊は、森を抜け、城の見えるところで野営する事になった。
そして、明くる日の早朝、敵軍は出発し、森の中へと進んで行く。
小隊は、林の中で監視を続け、昼近くなった頃、森の中から、先頭の騎馬兵が
出てきた。
小隊長は、袋の中から何やら取り出し。
「小隊長、何で、鏡なんか持ってるんですか。」
「まぁ~、説明は後でしますからね、見てて下さいよ。」
辺りは、冷えているが、太陽の温もりが有る。
小隊長は、鏡を陽に反射させ、城へと向けた。
「あっ。」
隊員が、小さな声を上げ。
「小隊長、分かりましたよ、合図に使うんですね。」
「はい、そのとおりですよ、今、送ったのは、準備せよと、言う意味で、次に
送る時は、火矢を放てと言う意味ですがね、この位置だと、丁度、騎馬兵を横に
見ていますので、よ~く、分かりますよ。」
森の中からは、次々と、騎馬兵が出て来る、其れは、小隊長が予想したとお
り、細くなっている。
「よ~し、これで、殆んど出ましたねぇ~。」
小隊長は、再び、城へと合図を送ったが、騎馬兵は、まだ、気付いていない。
「小隊長、遅いですねぇ~。」
「もう直ぐですからね。」
その時、突然、騎馬兵の頭上を火矢が飛んで来た、一瞬、驚いた騎馬兵達だ
が、頭上を飛んで行くのを見て安心したのか、整然と隊列を組んで行く。
その後も、次々と火矢は飛んで来るが、慌てる様子も無く、進むので有る。
「小隊長、風が吹きませんねぇ~。」
「そうですねぇ~、でも、自然が相手ですから仕方が有りませんよ。」
だが、森の中からは、小隊長も、騎馬兵達も気付かないほどの風が吹き出し。
火矢は、数本飛んで来るが、全てが頭上を飛んで行くので、騎馬兵達は安心し
ているが、やがて、枯れ草の火は大きくなり、その時、風が吹き出し、騎馬兵達
の後方から迫って来た。
馬は、人間よりも速く焼ける臭いに感付き、後方の馬が暴れだし、やがて、次
から、次へと枯れ草が燃え上がり、馬は、驚き、遂に馬は暴走を始めた。
馬が、一度、暴走を始めると、乗っている兵士では止める事も出来ず、馬にし
がみ付いている様子で、暴走は全ての騎馬に及び、暴走が城近くになると、第1
小隊の兵士が、裸馬を十数頭引き連れ、騎馬の前を走り出し、騎馬は裸馬の後ろ
を全力で走って行く。
そして、騎馬が、城に近付くと、城と森の中から、一斉にホーガン矢が飛んで
来た。
騎馬は暴走を続け、兵士に、ホーガン矢が次々と命中し落馬し、5番農場を過
ぎると、大木が横たわり、暴走の速度は落ちたが、今度は、城壁の内側からもホ
ーガン矢が飛んで来る。
その暴走も、4番農場の中ほどに張られたロープで、兵士達は、次々と落馬
し、大木に隠れた、1番大隊からもホーガン矢の連続攻撃を受け、殆んどの兵士
は倒れている。
敵の騎馬兵の武器は槍のために、接近戦には強いが、やはり、ホーガンと言う
武器には勝つ事は出来なかった。
「中隊長、全員、無事か、聞いて下さい。」
「はい、了解です。」
ロレンツの大隊は、最前戦で陣を張っている、そのために、全員の無事を確か
めるので有る。
其れは、狼犬部隊でも同じで、敵の騎馬兵は殆んど戦死しているが、まだ、数
十人は生きている。
「隊長、奴らは、まだ、生きていますよ。」
「もう、いいですよ、怪我をしているので、戦闘は無理ですからね、其れより
も、次は、多分、歩兵部隊だと思いますが、今の配置で行きますからね。」
「小隊長、騎馬兵はどうなったんでしょうか。」
「う~ん、此処からは分かりませんが、ロレンツ隊長の大隊ですから、まぁ
~、大丈夫ですよ。」
大木に傍には、数十頭の馬も犠牲になったのだろうか横たわっているが、最初
の騎馬は、殆んど、3番農場に入った。
その頃、敵軍も戦法を考えていた。
「大将軍、我が、騎馬兵が、どうやら全滅した模様です。」
「何だと、何故だ、情報だと農民兵だけだと聞いていた、其れが、何故、5百
もの騎馬が全滅するのだ、其れが、本当ならば、我が軍も戦法を変える。」
「大将軍、歩兵部隊も出撃しておりますが。」
「何、歩兵も出たのか、う~ん。」
「はい、既に、森に入っており、間も無く、先頭は森を抜けるかと思いま
す。」
「おい、誰でもよい、偵察隊長を呼べ。」
大将軍は、怒り心頭だ、今までは異常も無く進軍して来たのだが、大将軍も、
ウエスの報告を全て信用したのが大間違いだった、だが、今になってどの様な戦
法に変えるのだろうか。
「騎馬部隊を出せ、全軍突撃させるんだ。」
「はい、承知、致しました。」
暫くして。
「大将軍、偵察隊の隊長です。」
「おい、お前は、一体、何を見てきたんだ、先頭の騎馬隊が全滅したと報告を
受けたが。」
偵察隊隊長は、過去に何度も偵察任務に行ったが、今回だけは、ロシュエ達の
策略に騙されたので有る。
だが、偵察隊は、騙された事に気付いていなかった。
「えっ、本当なので、御座いますか、大将軍。」
「お前は、何も見ずに報告も適当だったのか。」
「大将軍、私達が見た時の事を全て報告しましたし、私は、何も作り話はして
おりません。」
「だが、全滅した事に間違いは無い、これは、全て、お前の責任だ、その場に
膝間付け、余が成敗してくれる。」
と、言った瞬間、偵察隊隊長の首は落とされ、偵察隊の兵士達の顔も青ざめ
た。
今まで、この様に責任を取らされ、そして、何人の隊長が、いや、兵士が打ち
首になったのだろうか。
一方、林の中で監視を続ける、第1小隊では。
「小隊長、我々は、何時、帰るのですか。」
「う~ん、自分も分かっているんですがね、何か分かりませんがね、予感がす
るんですよ。」
「えっ、小隊長、予感って、一体、何が有るんですか。」
「ええ、最初の騎馬隊は全滅したと思いますよ、其れは、既に、敵軍の将軍に
は報告が入っていると思います。」
「じゃ~、小隊長は、正規軍の騎馬部隊が出撃すると。」
その時、森の中から、歩兵部隊が出て来た。
「歩兵部隊ですねぇ~。」
「はい、でも、武器は槍だけの様ですが。」
「では、知らせますか、枯れ草も有りませんから、これからが本当の戦になり
ますからね、みんなも、注意する様にして下さいね。」
小隊長は、話を続けながらも鏡で、城に合図を送っている。
今度は、ホーガン矢だろう、やはり、混成部隊だが、小隊長は、正か、この
後、直ぐ、正規軍の騎馬部隊が来るとは思わなかった。
歩兵部隊には、城の前に狼犬部隊が潜んでいる。
「ホーガン隊長、歩兵ですよ。」
「うん、我々は、城から攻撃に入って、歩兵が、我々の方向に向かった時、一
斉、攻撃に入るぞ、全部、歩兵だが安心はするなよ。」
「お~。」
と、小さな声が聞こえた時だった、城から、一斉にホーガン矢が飛び出し、敵
の歩兵は次々と倒れて行く。
ホーガン矢は、普通の弓の倍は飛ぶ、ホーガン矢を避けようと、狼犬部隊が潜
んでいる森に近付いた瞬間、今度は、森の中からホーガン矢が放たれ、歩兵達
は、次々と倒れる。
それでも、数千人の歩兵は突撃して来る、5番と、4番農場からは、まだ、1
本も放たれていないが、付近には全滅した騎馬兵の死体で、一部の歩兵は大木に
隠れるのだが、4番農場からは狙い打ちの様相となり、歩兵達は、前にも進め
ず、後退する事も出来ない状態になっている。
4番農場の矢口からは歩兵の姿は見えるが、歩兵達は、一体、何処からホーガ
ン矢が飛んで来るのかも分からない。
「ゆっくりと、狙いを定めて討って下さいよ、奴らは、完全に足止め状態です
からね。」
4番大隊の兵士達も、急ぐ必要も無いと。
「小隊長、大変ですよ、正規軍です。」
「えっ、正か。」
「小隊長、正規軍の騎馬隊ですよ、武器は、弓を持っています。」
「分かりました、直ぐ知らせますので。」
小隊長は、鏡で知らせ様とするのだが、城近くまで行かなければ枯れ草は無
い。
「これは、大変だ、正規軍が飛ばして来るぞ~。」
だが、偵察隊には何も出来ない、僅かな人数で、5千の騎馬隊にホーガン矢を
討ったとしても、数人か、数十人を倒すだけで、小隊の位置が分かれば、小隊
は、間違い無く全滅すると、だが、その時、突然、火矢が騎馬隊の前方に飛んで
来た、其れは、城からで有る。
突然の火矢で、枯れ草は燃え上がり、騎馬隊は速度を落とすが、その後、火矢
は、次々と枯れ草を目掛け飛んで来る。
「小隊長、あれは。」
「これは、素晴らしいですよ、あの火矢で、騎馬隊は行き場を失ったも同然で
すから。」
「じゃ~、やはり。」
小隊の兵士達は、安堵し、馬は、突然、枯れ草が燃え上がったために驚き、其
れが原因なのか、数百人の兵士が落馬して行く。
馬は、乗り手が居なくなり、身軽のなったのか、四方八方に逃げて行く。
「よし、今だ、一斉攻撃開始。」
ホーガンの合図で、森の中からホーガン矢が飛んで来る、其れとは別に、城か
らも、5番農場からも、絶え間無くホーガン矢が飛び、正規軍の騎馬兵は、次々
と落馬し、当然、騎馬兵も馬上から弓矢を放つが、城壁の矢口は見えず、其れ
は、恐怖に近く、辺りか舞わず弓矢を放つので有る。
森からも、正確に飛んで来るため、馬上の兵士は、次々と落馬し、その兵士達
にもホーガンやは容赦無く命中するので有る。
「中隊長、火矢を討て。」
「はい、敵目掛けて、火矢を討て。」
火矢と、ホーガン矢が、絶え間無く飛び、馬もだが、兵士達も大混乱を起こし
ている。
「頭を出すな、倒れている馬体を盾にするんだ、応戦するんだ、城の上を狙
え。」
城の上からは、あの中隊の250人が、ホーガン矢を討っているが、弓を使っ
ていた時に癖なのか、上体を出して居る、騎馬兵達は、馬体に身を隠し、城の上
から攻撃する兵士達に弓矢を放つので有る。
リッキー隊長も、訓練の時に注意はしていたが、やはり、癖が出、中隊の兵士
は、一人、また、一人を倒れて行く、その様な戦闘状態が続き、今度は、正規軍
の歩兵部隊が進軍し、正規軍は、盾を持っているのでホーガン矢は防げるだろう
と、其れは、離れたところなればよかったのだが、ホーガンの威力は凄まじく、
城から、5番農場近くになると、ホーガン矢は盾を突き抜けて行く。
「伝令だ、フォルト隊長に作戦開始だと。」
「はい。」
伝令は、城壁内の通路を飛ばして行く。
「4番大隊作戦開始。」
隊長の命令が下り、3階から、1階へと連続した攻撃が開始された。
「3番大隊、作戦開始。」
フォルト隊長も命令を出し。
1階から、3階へと連続した攻撃が開始された。
「よ~し、我々も連続攻撃に入る、各中隊長、後は指揮を執れ。」
各中隊長の号令が入り、それからは、連続攻撃となり、森の中からも攻撃が開
始され、正規軍の騎馬兵と、歩兵部隊は三方からの攻撃を受け、敵軍は、身を隠
すところも無く、馬や、仲間の死体の影に隠れるが、其れは、正に、地獄の様
で、狙い撃ちされ敵兵は、次々と倒れて行く。
ロシュエの軍隊は容赦しなかった、夕方近くになると、殆んどと言っても良い
ほど反撃は無く、そのまま、夜を迎えたので有る。
「全員の無事を確かめてくれ。」
「負傷者は。」
「其れは、考えるから、先に調べてくれ。」
「はい。」
狼犬部隊も、戦死者はいないか、負傷者も気になる、ホーガンだ有る。
「中隊長、手分けして、負傷者の手当てに入って下さい。」
1番大隊でも調査を開始した。
「隊長。」
「如何しましたか。」
「我が中隊から戦死者が出ております。」
リッキーが心配した事が現実と成った。
「中隊長、何名ですか、其れと、負傷者も分かれば。」
「はい、戦死者、49名、負傷者、百名です。」
「えっ、戦死が、49名、負傷者が百名だと、一体、どうして、その様に多く
に戦死者が出たのですか。」
「はい、実は、隊長から言われていました注意事項を守らなかった様です。」
「では、身体を出して。」
「はい、その様で、殆んどの戦死者は、胸から上に矢が命中したいました。」
リッキーは、悔しかった、火矢を放った兵士達からも半分近くが戦死した。
初めての戦に、僅か、5百名の中隊から、49名の戦死者が出るとは全く予想
もしなかった。
だが、今となっては後悔しても仕方が無い。
「中隊長、負傷者の手当てと、戦死者は、別のところに運んで下さい。」
「はい。」
中隊長の後姿を見ると、落ち込みは相当なもので、だが、これが、戦争と言う
ものなのだ、幾ら、強力は武器を要しても、戦死者は出ると、だが、これ以上の
戦死者を出す事は出来ない、暫くして、中隊長が戻って着た。
「中隊長、残りの兵士に伝えて下さい。
戦死を望むのであれば、上半身を出して討て、生きていたければ、目の高さま
で姿勢を低くして討て、これを伝えて下さい。」
「はい、隊長。」
一方、敵軍は、大変な痛手を受けている、殆んどが戦死、若しくは、大怪我を
している。
落馬した兵士や、歩兵は、全く身動きが取れない状態で、夜を迎えるので有
る。
「大将軍、我々の負けの様です。
此処は、一度、引き上げ、兵を集めては如何でしょうか。」
「う~ん。」
大将軍の傍には、十数人の兵士が残っているだけで、これが、大将軍の最後になるかも知れない、兵士全員を
出撃させたために、大将軍は、護衛の兵士だが残り、この兵士達も、何時、戦死するか、本人達も分からない。
何処かで、血の臭いを嗅ぎ付けた狼の遠吠えが聞こえてくる。
「おい、オレ達は、これから、一体、どうなるんだ。」
「そんな事、オレが知るか。」
「だって、あれは、狼の。」
「そうだよ、この辺りは、狼の大群がいるって話を聞いたんだ。」
「えっ、狼の大群って、じゃ~、オレは、狼の餌食か。」
「まぁ~、今更、何を言っても仕方ないよ、オレは、もう諦めたよ、狼に殺さ
れるんだったら、この槍で、死ぬよ、その方が楽だからなぁ~。」
敵軍の兵士達は、暗闇の中で、狼の遠吠えを聞き、怯え出している。
その頃。
「司令官よ~、まだ、何も言ってこないのか。」
「閣下、私も待っているのですが。」
「オーレン隊長、何も分からないのか。」
「はい、今だ、伝令も来ておりませんので。」
その時。
「伝令、伝令、将軍に伝令。」
其れは、1番大隊からであった。
「分かった、直ぐ降りるからよ~。」
ロシュエは、大急ぎで城門まで行くと。
「将軍、ロレンツ隊長からです。
夕方近く、敵の正規軍と交戦に入り、騎馬隊、歩兵隊は全滅近しとの事で
す。」
「そうか、で、我々の中から戦死者は、負傷者は。」
「はい、1番大隊は無傷です。」
「そうか、全員無事なのか、で、他の大隊からは。」
「はい、詳しくは分かりませんので、隊長は、1番大隊だけの報告をと言われ
ましたので。」
「そうか、じゃ~、今、敵の状況は。」
「はい、まず、先頭の騎馬兵は全滅させ、馬も数十頭が犠牲になりましたが、
殆んど、3番農場に入っています。
次の歩兵部隊も全滅で、更に、正規軍の騎馬部隊ですが、張ったロープで、多
くの兵士が落馬し、この騎馬兵と、歩兵部隊は、今、暗闇の中で、狼の遠吠えを
聞いていると思われます。」
「じゃ~、戦死した兵士は別として、生き残った兵士は大変な恐怖を味わって
いるのか。」
「はい、隊長も、その様に言っておられました。」
「ご苦労さんでした、で、今からは。」
「はい、直ぐ戻りますので。」
「そうか、ロレンツ隊長にもよろしくと伝えてくれよ、気を付けて行くんだ
ぜ。」
「はい、有難う、御座います、では、私は。」
伝令兵は、直ぐ戻って行く。
その頃、リッキー隊長は、城に居た。
「中隊長、大変、残念だが、これが戦争なんだ、次の攻撃には残った兵士達に
伝えて下さい。
ホーガンは、弓とは違いますから、頭も全部出さなくても、狙いは定める事も
出来、討つ事も出来ますから、身体を出さない様に、其れと、戦死者と、負傷者
を農場に運びますから、馬車の準備をして下さい。」
「はい、申し訳有りませんでした。」
中隊長もだが、元警備隊の兵士達は、初めての戦で、多勢の仲間が戦死した事
実を受け止めてはいるが、どの兵士も顔も動揺した様子で有る。
「将軍に、伝令を、我が方で、戦死者、49名、負傷者、百名以上、戦死者
と、負傷者を農場に搬送します、と。」
「はい、了解しました。」
「其れと、敵軍は、現在、足止め状態だと思われますと。」
「はい、では、直ぐに。」
ロシュエには、各大隊から報告が次々と入って来る。
「3番大隊の伝令です。」
「そうか、ご苦労さん、で、全員無事なのか。」
「はい、3番大隊は、負傷者もおりません。」
「そうか、其れが、一番の報告だ、奴らの事なんかどうでもいいからよ~、隊
長には、決して無理はするなと伝えてくれ。」
「はい、有難う、御座います、将軍、敵軍ですが。」
「うん、言ってくれ。」
「はい、敵軍の最初の騎馬兵は全滅したと思われます。
馬も、殆んど、3番農場に収容しております。」
「そうか、やはり、1番大隊のあの兵士か。」
「はい、あの人は、馬を見事に誘導されました。」
「彼は、馬と、話が出来るんだなぁ~、大した兵士だよ、其れで、後方の歩兵
は。」
「はい、先程ですが、混成部隊も壊滅的な打撃を与えたと、隊長からの伝言で
す。」
「そうか、だがよ~、全滅じゃ無いと言う事だ、其れに、まだ、正規軍も温存
していると思われるんだ、まぁ~、隊長にはよろしく伝えてくれよ。」
「はい、では、私は、戻りますので。」
今回、敵軍からの攻撃は予想したとおりだった、だが、第1小隊の兵士は見事
に騎馬兵の馬を3番農場に誘導した。
其れは、この兵士が、馬の扱い方を熟知しているとしか表現の方法が無いので
有る。
「大将軍、この暗闇ですので、我が軍としても、動きが取れないのです。」
「司令官、其れは、敵軍も同じだ。」
「はい、其れとは、別の話ですが、やはり、城壁の前の森には、狼の大群がい
ると。」
「其れは、最初から分かっておる。」
「はい、ですが、兵士達の中には、狼の遠吠えに怯える者がおりまして。」
「司令官、我々の敵は狼では無い、明日の早朝、全軍突撃だ、どんな事があっ
ても、農場を奪い取れ、分かったのか。」
「はい、承知致しました。」
大将軍も、ウエスの報告で森の中には狼の大群がいると、誰でも、狼は恐ろし
いと思っているが、狼を敵と考えると、これからの戦に影響を与えるだろう、明
日の早朝、全軍突入せよと、大将軍の命令が出た、どの様な事があっても、農場
を奪い取れと至上命令で有る。
勿論、司令官も分かっている、今は、狼の遠吠えに怯える兵士がいる事も事実
なのだ。
一方、城壁内の通路では、食事の最中で有る。
「みんな、聞く様に、食事が終われば、交代で眠る様に、其れと、明日は、総
攻撃を掛けて来ると思うが、我々は、訓練どおりにやれば絶対に勝てる、全員、
気を緩めず、しっかりと対処する様に。」
「隊長、敵は、一体、何人くらいなんですか。」
「今は、分からないんだ、この暗闇だから、敵が、何人、生き残っているのさ
えも分からないんだ。」
「隊長、其れと、城壁前の生き残った敵は、明日にでも片付けるんですか。」
「いや、多分だが、戦闘意欲は無いと思うが、それでも、注意だけは怠るな
よ。」
「隊長、伝令がとおります。」
「あれは、5番大隊の。」
「伝令で~す、伝令で~す。」
5番大隊の伝令が広い通路を駆け抜けて行く。
「将軍に、伝令で~す。」
「よし、分かった。」
ロシュエは、何か不吉な予感がした。
「将軍、5番大隊隊長からの伝令です。」
「うん、ご苦労さん、で、全員無事なのか。」
「はい、其れが、はい、戦死、49名、負傷者、百名以上です。」
「何、戦死が、49名だと。」
「はい、戦死と、負傷者の全員が、城に配置されました、元警備隊です。」
ロシュエの、予感は的中した、だが、其れにしても、戦士、49名、負傷者、
百名以上が出たとは、一体、何が原因なのか。
「何故、そんな多勢が戦死した思う。」
「はい、私も、詳しくは分かりませんが、ホーガン矢を討って、次の装填が終
わるまで、少しの時間が掛かるんですが、装填中も、身体を敵に見せての状態だ
ったと思われます。」
「う~ん。」
ロシュエは、絶句した、彼ら、元警備隊は初めての戦に対し、混乱したのでは
ないだろうか、ホーガン矢を放つと、直ぐ、身体を隠せば何とも無いはずなの
に、と、ロシュエは、思ったのだが、やはり、彼らには過酷だったのか、だが、
これが戦争ななだ、敵だけが全滅し、見方には一人の犠牲者が出ないとは考えら
れないので有る。
「そうか、分かった、で、戦死者と、負傷者は。」
「はい、隊長が、農場に搬送する様にと言われ、間も無く到着すると思います
が。」
「よし、分かった、で、君は。」
「はい、私は、直ぐに戻ります。」
「じゃ~、リッキー隊長に、明日は、総攻撃を掛けて来ると思う、これ以上の
犠牲者は出したくないと。」
「はい、私も、その様に感じております。」
「ご苦労さん、リッキー隊長にも、みんなにもよろしくと伝えてくれよ。」
「はい、では、これで。」
伝令兵は、戻って行く。
「う~ん、49名の戦死か、其れも、あの警備隊からだけとは、う~ん。」
ロシュエは、暫く落ち込み考えた。
「オーレン隊長は。」
「はい、直ぐに。」
オーレン隊長は、暗闇の中に、兵士の立場で見張りに就いていたが、暫くし
て。
「将軍、お呼びでしょうか。」
「うん、今から、3番、4番農場へ向かうので一緒に来てくれ。」
「はい。」
ロシュエ将軍は、一体、何のために農場へ行くのか、オーレンは分からない。
「将軍。」
「うん。」
「何か、重要な事でも有るのですか。」
「うん、少しなぁ~、オーレン、あの警備隊から、49名の戦死者って報告が
入ったんだ。」
「えっ、49名戦死って、何故ですか、私は、安全な配置だと思ってたんです
よ、其れが、一体、何があったんですか。」
「うん、オレも、伝令の報告だけなんで、詳しくは分からないんだが、彼ら
は、ホーガンを弓と同じ様に考えてたらしいんだ。」
「でも、ホーガンの扱い方は、弓とは全く違うと、リッキー隊長は、説明され
ていると思いますが。」
「いや、オレも、リッキーの事だから、その点は、きっちりと説明していると
思うんだが、だがよ~、彼らは、今度が、最初の戦なんだ、其れでだよ、多分だ
と思うんだが、リッキーの説明を忘れて、今までとおり、上半身を出して討っ
てたんじゃないか、これは、オレの推測なんでよ~、何とも言えないんだが。」
その時、前方から、馬車が来る、ロシュエは、直ぐ馬車を止め。
「この馬車は。」
ロシュエは、馬車に近付き荷台を見ると、戦士した元警備隊の兵士達で有る。
「オーレン、オレの推測が。」
ロシュエと、オーレン隊長は、戦死した兵士の身体を見ると、殆んど、胸と、その下に矢を受けている。
「将軍の推測とおりですねぇ~。」
「何で、身体を、其れもだよ、上半身を見せて討つんだよ~。」
馬車の兵士達に対し、ロシュエと、オーレン隊長は、敬礼し、数十台の馬車が
とおり過ぎて行く。
後から来る馬車には負傷した兵士達が乗っている、負傷した兵士を見ると、戦
士した兵士達と同じだ、ただ、負傷兵は運が良かったのだろうか、腕や肩に矢を
受けているが、中には、何故か、足を負傷した兵士も数人いる。
今は、話を聞く必要も無い、農場に着けば、イレノア達が、傷の手当をするだ
ろう、負傷した兵士達にも、ロシュエは、敬礼し、その馬車がとおり過ぎ。
「オーレン、今見た兵士なんだが、何故、足を負傷したのか分かるか。」
「私は、全く理解が出来ませんよ、ロレンツ隊長の様に森に入っているのであ
れば、私もわかりますが。」
「うん、そうだなぁ~、オレも、全く理解に苦しむよ、だがよ~、今は、早
く、この戦を終わりにする事を考えているんだ。」
「将軍、勿論、私もですよ、私も、ロレンツ隊長も、戦死は望んではおりませ
んから。」
やはり、二人の隊長も同じ気持ちだったのか、あの駐屯地から逃れ、この地に
辿り着き、これからは平和な暮らしをしたいと願っていたのだが、ウエス達のた
めに、多くの仲間を失った、其れは、ロシュエも同じだ、早く、戦を終わり、平
和は農場生活に戻りたいと願うので有る。
やがて、2番農場を過ぎると、通路には、3番大隊の兵士達が仮眠を取ってい
る。
「隊長は。」
「あっ、将軍、隊長は、今、農場に入られて、馬の鞍を下ろしに、お呼びしま
しょうか。」
「別にいいんだ、オレが、勝手に来たんだから、其れよりも、敵の様子は。」
「はい、静かで、あの狼の遠吠えに怯えている様子ですが。」
「やはりなぁ~、其れでだ、兵達は、どの付近に多く居ると思う。」
「はい、この3番農場付近だと思いますが、何か。」
「いや、いいんだ、済まんがよ~、オレに、松明を貸してくれないか。」
「えっ、正か、将軍は、出られるのではないでしょうねぇ~。」
兵士は、驚いている、幾ら、静かだと言っても、まだ、戦闘は終わっていな
い、其れに、敵の兵士が、何処に、何人居るのかも分からない状態なのだ。
「オレはよ~、戦を早く終わりたいんだよ~。」
「将軍、其れは、大変危険です、私が、行きますので。」
「いや、これは、オレの考えなんだから。」
「将軍の考えを聞かせて下さい、私も、お供しますので。」
「よ~し、分かった、じゃ~、説明するか。」
この後、ロシュエは、オーレン隊長に説明すると。
「将軍、よ~く、分かりました、私も賛成です。」
「そうか、分かってくれたか、じゃ~、松明を。」
「お~い、今、起きている兵士は、松明と、ホーガンを持って、将軍の護衛に
就いて下さい。」
すると。
「オーレン隊長、私の、第1中隊が任に就かせて頂きます。」
「そうですか、隊長には、後で、私から。」
「オーレン隊長、私から伝えておきますので。」
「分かりました、では、開門をお願いします。」
頑丈な城門が開くと。
「第1中隊は、配置に。」
中隊の兵士達は、足早に出て行く。
「将軍。」
「お~、みんな、済まんなぁ~。」
松明を持った兵士が、数百人が城外で並び、待機するが、松明の灯りに浮かび
上がった敵の兵士達は大変な驚きで、殆んどの兵士は殺される思い、恐怖の表情
で、其処へ、ロシュエが来た。
「お~い、お前さん達、オレは、この農場を守っている、軍隊の指揮官だ、今
から、お前達に大切な話をするが、拒否するもいい、最後は、お前達の判断に任
せる、じゃ~、今から説明するからよ~、よ~く、聞くんだ。」
ロシュエは、敵の兵士達に向かって説明をはじめるので有る。
「だけど、オレ達は敵軍だよ、そんな、オレ達を助けると言って、後から、全
員を殺すに決まっているんだ。」
「オレは、此処の将軍だ、お前達を助けてやるんだよ~、別に、嫌ならいいん
だ、まぁ~、この森には、数千頭の狼がいるんだ、狼の餌食になりたければ、そ
れでもいいよ。」
「将軍様、本当に、オレを助けてくれるんですか。」
最初は、ロシュエの話しが嘘有り、今から、殺されると思っていた兵士達だ
が。
「オレが言ってるんだ信用しろ、但しだよ、オレ達に反抗する奴は、オレが殺
すんじゃない、この森の狼が殺してくれるからよ~、其れとだが、夜明けには、
お前達の仲間が、多分、一斉攻撃に入ってくる。」
「将軍様、オレ達は、奴らの仲間じゃ無いんだ、オレもだけど、此処に居る殆
んどの者は、仕方無く奴らの仲間になったんだ、将軍様、オレは死にたく無いん
だ。」
「よ~し、死にたい奴は残れ、死にたく無い者は、武器を持って、この城門か
ら入れ、其れも、夜明けまでだ、夜が明けると、この城門は閉め、残った者は、
狼の餌食になるんだ、分かったか。」
「将軍様、オレは、何でもするから、助けて下さい、お願いします。」
「オレもだ。」
「うん、オレも行くよ。」
「将軍、一体、何人くらい居るのでしょうか。」
「いや~、オレも、全く分からないんだ、お~い、中隊長、奴らを、4番農場
に入れてくれ。」
「はい、承知しました。」
その時、何も知らない、フォルト隊長が来た。
「将軍、如何されたのですか、大量の兵士が入って着ましたが。」
「お~、フォルトか、済まんなぁ~、実はよ~。」
ロシュエは、49名の戦死者と、百名以上の負傷者の話をし、何故、敵軍を助
けたのかを説明した。
「あ~、そうでしたか、私は、何も知りませんでしたので、少し驚きました
が、将軍の、お話で納得しました。
ですが、一体、何人居るのでしょうか。」
「まぁ~、千人は居ると思うんだが。」
「隊長、済まないが、4番農場の城門を開けて欲しいんだ。」
「はい、では、私が、フランド隊長に説明しますので、よろしいでしょう
か。」
「そうか、悪いが、頼むよ。」
「はい、承知しました。」
3番農場の城門からは次々と敵の兵士が入ってくる、中では、第1中隊の兵士
達が、武器を受け取り、4番農場へと向かわせるので有る。
「将軍、何人か分かりませんが、これだけの人数であれば、1番から、5番ま
での大池と、各農場内の小さな池を造るのに大助かりですよ。」
「そうなんだ、オレはよ~、この戦では、混成部隊もだが、正規軍だけは、全
滅させたいと思ってるんだ。」
「はい、私も、同感です、先程の兵士も言っておりましたが、好きで、敵軍に
入ったんじゃ無いんだと、私は、あの言葉が本当の気持ちだと思いますねぇ
~。」
「うん、オレも、そのとおりだと思ってるんだ、其れにだ、正規軍も森には、
狼の大群がいると思って、森には入って来ないと判断したんだ、明日に明け方に
は、敵は、総攻撃を掛けて来るぞ。」
「はい、将軍、私の大隊も参加したいのですが。」
「う~ん、こりゃ~、オレの判断は難しいなぁ~、お前は、行きたいんだろう
よ。」
「はい、城壁内は、3番大隊ですが、森の中には、ロレンツ隊長だけですの
で、私と、しましては是非にと。」
「分かってるよ、だがなぁ~。」
「将軍、敵も総力で来ると思いますので、私は、ロレンツ隊長と、同じ配置を
考えておりますのでお願いします。」
ロレンツと、オーレンとは、駐屯地から一緒に来た仲間なのだ、オーレン隊長
が行けば、最強のコンビになると。
「よ~し、分かったよ~、お前は最初から計画してたんだろうよ、後は、現地
で話し合ってくれ、だがよ~。」
「将軍、承知しております、任せて下さい。」
「よし、オーレン、行って来いよ。」
「はい。」
オーレンは、笑顔で農場へと馬を飛ばして行く。
ロシュエは分かっていた、この計画は、ロレンツが考えた、最初の戦闘は夕方
のは終わる、終われば、現地を見に行くだろう、其れは、ロレンツの考えたとお
りだ、だが、早朝には敵軍は総攻撃を掛けて来る、その様な時には、ロレンツ
と、オーレン達が共同で敵の半分は倒す、城壁からは、3番、4番、5番の各大
隊が一斉攻撃に入るだろう、道には、大木を配置しているので、簡単には進めな
い、敵軍は、前にも行けず、後退する事も簡単では無い。
そして、左右からの一斉攻撃を受け、昼頃には戦闘は終わるだろうと、ロシュ
エは考えている。
だが、問題は、敵の総指揮官が、何処まで進んで来るのか、それだけが分から
ないので有る。
その後も、次々と敵軍だった兵士達が、3番、4番農場の城門から入って来
る。
やがて、東の空が明るくなり始めた。
「さぁ~、急げよ、間も無く城門を閉めるぞ、走れ、ほら、走るんだよ~。」
「お~い、走れ、早く入れ、走れ、閉まるぞ。」
城門の入り口に居る、3番大隊と、4番大隊の兵士達も大声を出している。
敵軍だった兵士の中には大怪我をしている者達も居るが、仲間達の手助けで、
何とか入って来る、歩ける者は、負傷者を手助けして、4番農場に入って行く。
「隊長で、中で焚き火をさせたいのですが、よろしいでしょうか。」
「いいよ、適当にやってくれ。」
「は~い、了解しました、お~い、君達、身体の動かせる者は、付近に有る木
を切って、焚き火にするんですよ、寒いですからね。」
「はい、有難う、御座います、でも、狼が。」
「この中は、大丈夫ですよ、この農場の中には、一頭も、狼はいませんから
ね。」
「えっ、狼がいないって。」
「は~い、全部、私達の腹の中に入っているからね。」
兵士は、笑うが、それでも敵だった兵士は恐れている、狼がいなければ、此処
で殺されるんだと。
其れでも、ロシュエの話を入って来た全員が聞いたのでは無い、中には、何も
知らずに来た者達も大勢居る。
「ねぇ~、オレ達は、此処で殺されるんですか、だったら、早くやって下さい
よ。」
「えっ、じゃ~、あんた達は、何も聞いて無かったのか。」
「みんなが行くから来ただけなんだ。」
「そうか、何も、知らずに来たのか、じゃ~、説明するよ、我々の将軍が、君
達の命を助けると言われたんだ。」
「その話を、誰が信じると思う、オレ達を集めて、其処で全員を殺すんだ。」
「そうか、その様に思っているんだ。」
「だって、オレ達は、敵なんだぜ、敵を生かせて置くなんて、聞いた事が無い
から。」
「まぁ~、その様に思ってるんだったら、それでもいいが、我々の将軍は、絶
対に約束を守る人だ、信じるか、信じないかは別として、さぁ~、中に入って、
将軍が、後で、話をされると思う、その時、我々が、将軍の護衛には就かないと
思う、其れが、将軍のやり方だから、まぁ~、何も、心配せずに待っている事だ
ね。」
敵軍の兵士も言ってはいるが、戦闘意欲は全く無く、既に諦めている。
やがて、戦死者以外は全員入ったのだろうか、3番、4番農場の大きな城門は
閉められた。
東の空が明るくなる頃、敵の正規軍が森を出たところに集結し、今や、遅しと
攻撃開始の合図を待っている。
「ロレンツ隊長、では、我々も準備しましょうか。」
「うん、そうだなぁ~、じゃ~、君の大隊は予定の位置に。」
「はい、承知しました、第2大隊は、森の中に入れ。」
ロレンツと、オーレンの二人がどの様な作戦を立てたのか、ロシュエも知らな
い。
「お~い、狼犬部隊、準備は。」
「ホーガン隊長、準備完了で~す。」
森に入った、第1、第2大隊と、狼犬部隊の全員が、敵を迎え撃つ準備は出来
た。
一方、城壁内でも、3番から5番大隊が準備は整い、敵の進軍を待っている。
そして、正規軍の騎馬部隊が、馬を全力で走らせ突撃して来る。
「まだ、まだだぞ、まだ。」
先頭を走る騎馬兵達が、4番農場と、森の間に張られたロープで、次々と落馬
するのを見て。
「よし、今だ、ホーガン矢を討て。」
4番と、5番農場の城壁に作られた矢口から、ホーガン矢が次々と飛び出し、
騎馬兵に命中し、最初の百名近くがその場に倒れて行く。
それでも、騎馬兵は突入、狼犬部隊は、前をとおり過ぎた騎馬兵の背後からホ
ーガン矢を討つと、騎馬兵は又も、次々と落馬し倒れて行く。
時には、数十人が倒れ、やがて、半分以上が倒れたが、馬も同様で、数十、い
や、百頭以上が犠牲になった。
「隊長、倒れた馬を盾にしていますが。」
「まぁ~、奴らも、我々に殺される運命だ、確実に、一人ひとりを倒すん
だ。」
「はい、了解です。」
道に配置した大木の枝から、馬や、戦死した者達を盾とし、狙いを定め様とす
るのだが、第1大隊の兵士達は、倒れた馬から、顔を出すのを待って、少しでも
見えると、次に出すのを待っている。
敵も必死に応戦するが、何も見えないところへ、辺り構わず弓を引くが、矢
は、全く別の方向に飛んで行く。
敵の兵士達の命は、次の時には無い、それ程にも、ホーガン矢は直線で飛んで
行く。
そして、いよいよ、歩兵部隊が進撃を開始した。
騎馬兵達は、1番大隊と、3番大隊に任せ、狼犬部隊と、5番大隊が、一斉攻
撃に入った。
狼犬部隊と、5番部隊が放つ、ホーガン矢の威力は凄まじく、最初の攻撃で、
数百、いや、千人以上が大地に倒れ、歩兵部隊の前進を阻むので有る。
だが、歩兵部隊も必死で応戦するのだが、弓から放たれた矢の殆んどが届か
ず、其れが、かえって、仇となり、ホーガン矢の餌食となっている。
「お~い、今からは、狙いを定め、確実に倒すんだ、敵の動きに注意してくれ
よ。」
ホーガンは、敵をじっくりと見て、狙った敵は必ず殺せと命令した。
其れは、5番大隊でも同じで。
「敵を確実に倒す事、慌てる必要も無いですよ、今、敵は足止め状態なので、
的を絞って下さいよ。」
一方、1番大隊と、城壁からの攻撃をまともに受けている、騎馬部隊は、全
く、動きも取れず、完全な的になっている。
「隊長。」
「何ですか。」
「敵の奴ら、動きが止まってますねぇ~。」
「うん、だが、油断はするなよ、敵も必死だから。」
「はい、了解です。」
この後、騎馬部隊と、歩兵部隊は、確実に飛んで来る、ホーガン矢を受け、戦
死者は増える一方で有る。
その頃、敵の大将軍を探している、第1小隊は。
「小隊長、敵軍の中に、最高指揮官と思われる人物が見当たらないです。」
「うん、自分も、歩兵部隊の中に居ると思って見ているのですがねぇ~、一
体、何処に消えたのですかねぇ~。」
小隊は、歩兵部隊の動きを見ているが、大将軍は、一体、何処に居るのか。
一方で。
「大将軍、戦況は、我が軍に大変不利な状況です。」
「司令官、何故なんだ、何故、我が軍が苦戦するんだ、一体、敵は、どんな戦
法を使っているんだ。」
「はい、先程、伝令が有りましたが、我々の軍は、敵の軍隊が見えない状態だ
と申しましょうか、一体、何処に居るのかが分からないと。」
「何だと、敵軍が見えないだと、何を寝ぼけているんだ。」
大将軍もだが、司令官も、前戦の兵達も、ホーガン矢が飛び出すところが分か
らないと言うので有る。
城壁の矢口は見えず、森の中と、大木の枝の間から飛び出すホーガン矢の威力
の前では、今まで、連戦連勝がまるで嘘の様で有る。
「司令官、敵の人数も、武器も分からないのか。」
「はい、人数もですが、武器は、我々が、初めて遭遇すると思われる強力な武
器だと思われます。」
「何、初めてなのか、で、一体、どんな武器なんだ。」
「大将軍、其れが、全く分かりませんので。」
「では、全く進む事が出来ないのか。」
「はい、大変、申し上げにくいのですが、そのとおりで、御座います。」
大将軍は、全く前進が出来ないと聞き。
「お前は、何のための司令官だ、何が、新兵器だ、理由などは聞かぬ、全軍に
対し、突撃命令を出せ、突撃させるのだ、分かったのか。」
大将軍は、突撃命令を出したが。
「小隊長、あの林の中から、将校らしき兵士が出て来ましたよ。」
「あの兵士は将校です、行かせないように、森に入ったところで。」
「小隊長、私が行きます、任せて下さい。」
敵の、司令官は、大将軍の命令を受け前戦に向かったが。
「あの将校が林の中から出て来たと言う事は、あの付近に、敵軍の将軍が潜んでいると思いますので、将校を
やった後、林に向かいますので、全員準備に。」
「はい、小隊長、馬は。」
「此処に置いて行きます。」
その時、司令官が、前を通り過ぎた、だが、小隊の兵士が放ったホーガン矢が
命中し、司令官は、落馬し、起き上がる事も無かった。
小隊の兵士が行き、将校と思われる兵士を林の中に入れ、馬を確保し戻って着
た。
「如何でしたか。」
「はい、まだ、死んではいませんが、服を脱がせ、放置して置きました。」
「分かりました、では、静かに進みましょうか。」
小隊長を先頭に、小隊は林の中を進んで、暫くすると。
「小隊長、馬車です。」
小さな声で言うと。
「護衛の兵士の人数を確かめて下さい。」
「はい。」
一人の兵士が、草の中を進み、兵士の人数を確かめ、暫くして戻って着た。
「小隊長、護衛は5人で、まだ、我々には気付いていません。」
「分かった、では、君は、一番左の兵士を、君は。」
小隊長は、一人づつ、敵の兵士の的を絞って行き。
「では、自分が合図をするので、一斉に討って下さいね。」
小隊長が、手を上げ、手を下ろした時、馬車の周りに居た兵士が、一瞬の内に
倒れ、小隊長は、馬車に向かって飛び出し、他の兵士達も、馬車に向かった。
馬車の中には、一人の誰が見ても、敵軍の総司令官と思える軍人が居る。
「お前達は。」
「貴方は、この軍の総司令官ですか。」
小隊長は確かめ。
「そうだ、大将軍だ。」
「では、貴方を捕虜とします。」
遂に、敵軍の大将軍を確保したので有る。
「小隊長、この人物が、ウエスの兄と言うのでしょうか。」
「そうですねぇ~、多分だと思いますよ。」
大将軍は、何も語らずに居る。
「口に猿轡と、両手両足を動けない様に縛り付けて下さいね。」
大将軍は、抵抗もせず、小隊の兵士達は、大将軍の両手両足を縛り、口には猿
轡をして、馬車の中に縛り付け、兵士一人が監視のために就き、ゆっくりと馬車
を進めて行く、其れは、昼前の出来事で、司令官は戦死、大将軍は捕虜として身
柄を確保されたので有る。
第1小隊の大手柄となり、戦の行方が大きく変化するので有る。
捕虜となった、大将軍を乗せた馬車は、小隊長を先頭に時間を掛けて森の中を
進んで行く、やがて、森を抜けると、歩兵部隊が、足止めされた状態にいる。
「小隊長、大丈夫でしょうか。」
「自分も分かりませんが、このまま、城へと向かいます。」
「お~い、あれは、大将軍の馬車だ、其れに、あの兵士達は、敵のと言う事
は、あの中には。」
次々と兵士達は振り返り、馬車の進む方向を見ている。
「隊長、森から、馬車が向かってきま~す。」
「えっ、馬車が。」
「は~い、あれは、第1小隊だと思いますが。」
「早く、城門を開けろ。」
城の中からは、数百人の兵士が出て来た。
「確かに、第1小隊です、みんな援護を頼みま~す。」
再び、城門が大きく開かれ。
「それ~、早足で行け~。」
小隊長の号令が掛かり、第1小隊の兵士達と、馬車は速度を上げ、大急ぎで城
門へと向かって飛ばして行く。
敵の歩兵は唖然とし、一体、何が起きたのだと言う様な表情で有る。
馬車と、第1小隊は、城内へと消え、直ぐに城門は閉じられた。
「君達は。」
「はい、第1大隊の第1小隊です。」
小隊長は、大きな仕事を成し遂げたのか。
「ふ~。」
と、一息付いた。
「小隊長、この馬車は。」
「はい、中に、敵軍の総司令官と思われる人物がおりますので。」
「えっ、では、ウエスの。」
「はい、多分ですが、その様です。」
「これは、誰か、直ぐ、将軍に伝令だ、敵軍の総司令官と思われる人物の身柄
を、第1小隊が確保しましたと。」
「はい、承知しました、では。」
伝令の兵士は、馬に乗り、城から、5番農場の通路へと入り、農場の、ロシュ
エに伝えるべく、馬を飛ばすのだ。
その頃、敵の兵士達にも、大きな動揺が広がって行く。
そして、数時間後。
「伝令、将軍に伝令で~す。」
「将軍、伝令です。」
「よし、分かった。」
ロシュエは、何かを期待してはいたが、其れが、正かが起きた。
「将軍。」
「お~、入れよ。」
「はい、将軍、大変です。」
言葉とは違い、兵士の顔は喜びでいっぱいで。
「おい、おい、一体、如何したんだよ~。」
「はい、昼過ぎの頃、敵の大将を確保しました。」
「えっ、正か。」
「はい、その正かで、第1小隊が、敵の総司令官を捕虜として確保し、今、城
で拘束しております。」
「そうか、で、第1小隊は全員無事なのか。」
「はい、勿論です。」
「よし、分かった、今から城に向かうぞ。」
「はい、では、私は、城壁内の各大隊に伝えて行きます。」
「そうか、疲れているだろうが、頼むぜ。」
「はい。」
兵士は、馬を代え、また、戻って行く。
「イレノア。」
「は~い、只今。」
「聞いたか。」
「はい、よろしゅう、御座いました。」
「うん、で、今から城に向かうので、後は頼むぜ。」
「はい、承知、致しました。」
「お~い、当番さ~ん。」
「はい。」
「中隊長は。」
「はい、先程、城壁の上に上がられて行きました。」
「直ぐに呼んでくれ。」
「はい。」
暫くして、中隊長が降りてきた。
「将軍、如何されたのですか。」
「其れがよ~、敵の総大将が、第1小隊の大活躍でな、捕虜として、今、城で
拘束されていると、伝令が来たんだ。」
「えっ、其れは、本当ですか。」
中隊長の顔が、一瞬にして変わった。
「其れで、今から、森に入っている、第1、第2大隊と、狼犬部隊に伝令を送
って欲しいんだ、え~と、内容はだ、敵の将軍を捕らえた、直ちに、戦闘を中止
せよ。」
「はい、承知しました。」
「そうだ、敵軍にも伝えてやれ、お前達は、この戦に負けた、直ぐに武器を捨
て投降せよと。」
「はい、了解です、直ぐに行かせますので。」
「オレは、今から、城に向かうので、誰か、司令官にも伝えに行かせてく
れ。」
「はい、承知しました。」
その司令官はと言うと、宿舎で、一人、作戦を練っている。
「司令官、失礼します。」
中隊長が、直接、伝えに来たので。
「これは、中隊長、大きな変化があったのですね。」
「はい、先程、伝令が有りまして、敵の総大将を捕らえ、城にて拘束している
との事です。」
「えっ、其れは、誠ですか。」
「はい、私も、今、聞いたばかりなので、其れで、将軍は、城に向かわれました。」
「そうですか、其れは、大変でしたねぇ~、では、私も、直ぐに向かいますので。」
「はい、承知しました。」
農場で、守りに就いている中隊では、早くも、大騒ぎになっている。
「お~い、みんな、聞いたか、敵の総大将が捕まったと、今、伝令が来たぞ
~。」
「えっ、本当か、じゃ~、戦も終わりだ。」
「なぁ~、良かったよ、本当に良かった、良かった。」
あちら、此方で、騒ぎが起きている。
「テレシアさん。」
「あら、イレノアじゃないの、一体、如何したのよ。」
「はい、今、報告があって、敵の将軍が確保され、城え拘束されていると。」
「わぁ~、本当なの。」
イレノアも、ニコニコとして頷き、大食堂の女性達も大喜びしている。
「だけど、あの人達は、戦死したんだ、私は、こんなに悲しい事は無いお。」
テレシアは、農場に戻って着た、49名の戦死者の事を考えていた。
「テレシアさん、私も、気持ちは同じですよ、でも、其れよりも、私は、大怪
我をされている人達が、早く元気な姿になって欲しいと思います。」
イレノアは、百名以上の負傷者が、早く元気になる事を考えている。
「うん、そうだねぇ~、戦死した兵隊さんには悪いけど、私は、怪我人が早く
治って欲しいからねぇ~。」
他の女性達も頷いている。
その時、ハーナと、二キータと、其れに、城に居た侍女達が、新しい布を大量
に持ってきた。
「あの~、イレノアさん、これを使って下さい。」
「わぁ~、本当なの、助かります、ねぇ~、テレシアさん。」
「うん、本当だよ、これだけの怪我人が居るんだからね。」
「其れで、私達にもお手伝い出来る事があれば。」
「じゃ~、新しい布と交換して下さい。」
「はい。」
ハーナが先頭になり、負傷兵に新しい布と交換を始めた。
すると。
「お姫様。」
「いいのよ、其れに、私は、もう姫じゃ無いのよ。」
ハーナは、負傷兵にニコリとし、二キータ達も、負傷兵の傷を見ている。
「貴女は、お姫様だったの。」
「はい、でも、もう過去の話です、今の私は、普通の女性として、其れより
も、私に、今出来る事は、この人達が元気な姿になった欲しいと願っておりま
す。」
「うん、そうだね、じゃ~、此処は、お願いね。」
「はい、分かりました。」
ハーナは、今までの生活が一変したのだが、今は、負傷者を看護する事で、新
しい生活に入れる様な気持ちになり出したので有る。
其れは、二キータ達も同じで、十数名の侍女達も必死で看護に当たっている。
「閣下。」
「お~、司令官か、一体、如何したんだよ~、そんなに急いで。」
「閣下、私も、お供します。」
「そうか、じゃ~、一緒に、だがよ~、敵の大将がだよ、あの第1小隊に捕ま
ったと聞いた時には、オレは、本当に驚いたぜ。」
「閣下、私もです、閣下は別とですが、そんなに簡単に捕まったとは、私は、
信じる事が出来なかったのです。」
「そりゃ~、そうだろうよ、だって、敵の将軍だってよ~、周りには大勢の兵
士が護衛として居たと思うんだが。」
「確かに、そのとおりだと思いますが、敵は、油断していたのでは、御座いま
んせんか。」
「うん、オレも、同じだよ、だって、今までが、連戦戦勝だから、正か、敵
が、自分を襲うとは、夢にも思わなかっただろうからなぁ~、司令官は、話は後
だ、急ぐぞ。」
「はい、了解しました。」
ロシュエと、司令官、其れに数人の兵士は、城へと急ぎ、夕方近く、城に到着
した。
「リッキー隊長、ご苦労さん、で、敵の将軍ってのは、お~、その前にだよ、
第1小隊は、何処に居るんだ。」
「はい、今、その将軍のところにおります。」
「そうか、じゃ~、案内してくれるか。」
「はい、では、此方の方です。」
ロシュエ達は、リッキー達は、リッキー隊長の案内で、城の地下に入った。
「司令官、オレも、一度来たが、こんな地下が有るとは知らなかったぜ。」
「はい、地下には、食料に倉庫になっており、鍵が掛かる様になっております
ので。」
地下に降りて行き、そのまま進むと、ドアが有り、その前に、第1小隊が居
た。
「やぁ~、君達か、大変だったなぁ~。」
「将軍、自分は、別に。」
「いや、いいんだよ、本当にご苦労さんですた、で、敵の将軍ってのは。」
「はい、この中に。」
「そうか。」
ロシュエが、中に入ると、両手、両足、更に、猿轡をされた男が居た。
「小隊長、悪いが、猿轡を取って欲しいんだ。」
「はい。」
猿轡を取ると。
「お前さんが、ウエスの兄貴ってのか。」
「そうだ、其れが如何したと言うんだ。」
「まぁ~、あんたも、年貢の納め時って奴よ。」
「オレを、一体、如何する気なんだ。」
「お~、威勢のいい男だ、まぁ~、心配するなって、後で、ゆっくりと始末し
てやるからよ~。」
「オレを殺すのか。」
「いいや、オレは、お前を殺さないよ。」
「閣下、この男を生かせて置かれるのですか。」
「司令官、誰が生かせてやるって、ただ、オレは、殺さないって言っただけだ
よ、まぁ~、オレに任せてだ、其れよりも、リッキー隊長、外の奴らは。」
「はい、今は、身動きが取れない状態だと思いますが。」
「そうか、分かった、じゃ~、オレが、外に出て。」
「いや、将軍、其れは、駄目ですよ。」
「う~ん、やはり、駄目か、じゃ~、城門を少し開けて欲しいんだ。」
「はい、でも、何をなされるのですか。」
「オレか、オレはよ~、奴らに降伏する様に言ってやるんだよ~。」
「ですが、危険ですよ、其れに、降伏をさせれば、捕虜になりますので。」
「リッキー隊長、まぁ~、オレに任せてくれよ。」
「はい、承知しました。」
「じゃ~、行くぜ、あんたの事は、後の楽しみに取って置くよ、小隊長、有難
う。」
ロシュエは、一体、何を考えているのだ、敵を降伏させて、何をさせるのだろ
うか、大池造りにでも就かせるつもりなのか、司令官も、理解に苦しむ。
「第1、第2中隊は、城郭に上がり、敵の動きを監視せよ。」
第1、第2中隊の兵士は、大急ぎで城郭に上がり、何時でも、ホーガン矢を討
つ事が出来る様に配置に就いた。
「将軍、では、開きますので。」
大きな城門が少し開き、ロシュエが外にでた。
「将軍。」
「いいんだって、オレに任せろって。」
「はい、では、第3中隊は、外に出、将軍の護衛に就け。」
第3中隊の兵士達は、大急ぎで外に出た。
「お~い、お前達の将軍は、先程、我々の仲間が捕らえ、城の中に居るんだ、
其れでだ、お前達も降伏するんだ、分かったか。」
「何だと、我々の大将軍を捕らえただと。」
「本当だ、馬車を見ただろう、其れが、証拠だ。」
「其れで、我々が降伏するとでも思っているのか。」
「まぁ~、オレは、どちらでもいいぜ、お前達は、その場からは動く事も出来
ないからよ~、まぁ~、のんびりとしようか、お前達の周りは、我々が、取り囲
んでいるからよ~。」
「我々が降伏すれば、逃してくれるのか。」
「あ~、いいよ、だが、全員が武器を捨て、お前達が着ている鎧も脱げば許し
てやるよ。」
「将軍、奴らを逃がすのですか。」
「リッキー隊長、まぁ~なぁ~、我々が、奴らを殺す必要も無いんだ。」
ロシュエは、敵の全員を許すと言った、だが、何かを考えていると、司令官は思った。 「閣下、何か、お考えでも有るのですか。」
「うん、奴らが、武器と鎧を取り上げてからなぁ~、まぁ~、おい、決まった
のか。」
「分かった、我々が、武器と鎧を脱げばいいんだな。」
「そうだ、オレは、気が短いんだ、早く決めろ。」
「分かった、我々は降伏する、全員、武器と鎧を脱げ。」
「よ~し、リッキー隊長、大隊の全員を城外に集めてくれ。」
リッキー隊長も、理解に苦しんでいる、これだけの人数を捕虜にすれば、食料
が不足すると。
「将軍、捕虜にすれば、奴らにも食料が必要になりますが。」
「リッキー隊長、オレは、捕虜にするとは言ってないぜ。」
「では、何を。」
「お~い、如何だ。」
「今、武器は捨てた、で、鎧を脱いでいるところだ。」
「よ~し、大隊は、奴らの武器と、鎧を回収してくれ。」
大隊の兵士達は、敵の武器と、鎧の回収を始め、暫くすると。
「お~い、全部回収出来たのか。」
「将軍、後、少しで終わります。」
「よ~し、分かった、お前達、戦死した仲間の鎧も脱がせてやれよ、早くする
んだ。」
敵軍の兵士は、戦死した兵士の鎧を脱がせ。
「終わったよ。」
「じゃ~、戦死した仲間と一緒に森の中に入れ。」
「将軍、では、森の狼の。」
「リッキー隊長、オレは、本当に悪い将軍だぜ、奴らの処分は、森の狼に任せ
るんだ。」
「何故、我々が、森に入るんだ。」
「オレは、お前達を、殺すとは言って無いんだ、お前達全員は、狼の餌食にな
るんだよ~。」
「えっ、何だと、では、我々を許すと言ったのは。」
「オレは、何も嘘は言っていない、オレは、許すが、お前達のために殺された
大勢の農民が許してはくれないんだよ~、この辺りには、数千頭の狼がいるん
だ、狼も、食料不足なんだ、まぁ~、狼から逃げる事が出来れば、生き残れると
は思うんだがなぁ~。」
歩兵部隊の兵士は戦死した仲間の武器と鎧を脱がせ、数人掛かりで、森に運ん
で行く。
その森には、既に、血の臭いを嗅ぎ付けた、狼の大群が迫り、敵の兵士は、森
に入ると、戦死した仲間を直ぐ放置、落ちている棒を拾い、だが、その棒で狼と
戦うつもりなのだろうか、果たして、その様な棒で、あの恐ろしい、狼の攻撃を
防ぐ事が出来るのだろうか。
「司令官、オレは、何もしないが、狼が、奴らを血祭りに上げるだろう。」
司令官もリッキーも、其れに、城の兵士達も大変な驚きで、正か、狼の大群が
いる、森の中に入れるとは考えもしなかった。
「さぁ~、後は、あいつの処分だなぁ~。」
「閣下、狼の。」
「いや、あれだけの人数だ、其れに、奴を狼の餌食にする気持ちは無いぜ、奴
だけは、簡単には死んで貰うと困るんだ。」
「将軍、正か、石打の。」
「う~ん、オレも、今、考えているんだが、何か、方法は無いか。」
「閣下、私は、森の大木に吊るしては如何かと思いますが、この寒さでは、直
ぐに死ぬ事は有りませんが。」
「そうだなぁ~、奴だけは簡単に死なせる訳には行かないからなぁ~、司令官
の方法で行くか。」
ロシュエ達は、地下に入り。
「おい、お前、お前の部下は、今頃、狼の大群の餌食になっているぞ~。」
大将軍は、猿轡をされているので、何も言う事は出来ないが、表情だけは変わ
った。
「それでは、今からお前の処分を言い渡す、お前を処刑する事に決めた。
みんなで、この野郎の服を脱がせるんだ、裸にして、森の木に吊るすからよ
~。」
第1小隊の兵士が服を脱がし、また、両手両足を縛った。
「じゃ~、みんなで、森に連れて行くんだ。」
大将軍は、観念したのか、全く抵抗もせずに、担がれ、地下から出され、城門
を出、森に入ったところの大木に吊るされた。
「まぁ~、直ぐに死ぬ事は無いがよ~、お前だけは簡単に死なせる訳には行か
ないんでよ~。」
大将軍と言われた最後の生きた姿で有る。
「リッキー隊長、馬は、何頭くらい死んだんだ。」
「はい、50頭くらいだと思いますが。」
「司令官、馬は、放置せず、4番農場に連れて行く。」
「閣下、馬も食料に。」
「馬も犠牲者なんだ、だがよ~、馬を、狼の餌にはしたくは無いんだ、其れ
に、皮も使えるからよ~。」
「仕方が有りませんねぇ~、では、馬車の用意をします。」
「済まんが、頼むよ、其れとだが、敵軍の武器と、鎧を鍛冶屋に運ばせて欲し
いんだ。」
「はい、承知致しました。」
この後、4番と、5番大隊が戦死した50頭の馬を4番農場に運び。
やがて、太陽が、西の山に沈み、夜になって、森からは、狼の遠吠えと、
時々、兵士達の悲鳴が聞こえてくる。
敵の兵士の悲鳴は数十日間も続いた、果たして、何人の兵士が生き残ったの
か、狼も恐ろしいが、兵士達には武器も無く、食べる物も無い、其れに、この寒
さで、殆んどの兵士は凍死するかも知れないと、ロシュエは思った。
そして、戦争が終わった、二日後、戦死した、49名の葬儀が行なわれ、49
名の戦士は火葬にされ、農場の共同墓地に埋葬されたので有る。